説明

コンクリートテストピース用型枠

【課題】組み立てやバラシ、清掃が容易であると共にキャッピングを不要とすることができる。
【解決手段】内部にコンクリートCが供給される円筒状の円筒部2と、円筒部2の軸方向の両方の端部にそれぞれ着脱可能に設けられた一対の蓋部3と、一対の蓋部3と円筒部2とを固定するゴムバンド(固定具)5とを備える。円筒部2には、外周面の端部2a、2b側にそれぞれ円筒部2の先端に向って径寸法が小さくなるテーパ面(第一のテーパ面)6が形成されている。蓋部3は、円筒部2の端部2a、2bの開口部を塞ぐ板部材7と、板部材7から突出する円筒状の側部材8とからなる。側部材8には、内周面に板部材7側から突出方向に向かって径寸法が大きくなるテーパ面(第二のテーパ面)9が形成されて、円筒部2は、テーパ面6を側部材8のテーパ面9と面接触させて蓋部3に嵌合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートテストピース用型枠に関し、特に、コンクリートを打設する現場において簡易的にコンクリート強度を確認する場合に使用されるコンクリートテストピースを製作するための型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートテストピース用型枠として、円筒部が2つの半円筒状の部材からなり、これらの半円筒状の部材がボルトなどの締結手段で固定可能なものが使用されている(例えば、特許文献1参照)。また、サミット缶などのように、軽量で使い捨てタイプのコンクリートテストピース用型枠も使用されている。これらのコンクリートテストピース用型枠でコンクリートテストピースを製作する際には、載荷面となる天端をセメントペーストなどで平らに仕上げるキャッピングを行う必要がある。
これに対し、キャッピングが不要なコンクリートテストピース用型枠として、円筒部の軸方向を水平方向として設置する横詰式のものが使用されている。横詰式とすることで載荷面を平滑に仕上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−78384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の2つの半円筒状の部材からなる円筒部を備えるコンクリートテストピース用型枠や、横詰式のコンクリートテストピース用型枠は、構造が複雑で、組み立てやバラシ、清掃に手間がかかり、扱いにくいという問題があった。
また、サミット缶などの使い捨てタイプのコンクリートテストピース用型枠は、清掃の必要がなく扱い易いが、使い捨てタイプのため廃棄物が増えてしまう。
また、コンクリートテストピースの製作の際にキャッピングが必要となると、キャッピングに労力や費用がかかり、コンクリートテストピースの製作コストが高くなると共に、製作に時間がかかってしまう。
【0005】
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたもので、組み立てやバラシ、清掃が容易であると共にキャッピングを不要とすることができるコンクリートテストピース用型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリートテストピース用型枠は、内部にコンクリートが供給される円筒状の円筒部と、前記円筒部の軸方向の両方の端部にそれぞれ着脱可能に設けられた一対の蓋部と、前記一対の蓋部が前記円筒部に装着された状態を固定する固定具とを備え、前記円筒部には、外周面の両方の端部側にそれぞれ前記円筒部の先端に向って径寸法が小さくなる第一のテーパ面が形成されていて、前記蓋部は、前記円筒部の端部の開口部を塞ぐ板部材と、前記板部材から突出し前記円筒部の外周面の端部側を覆う円筒状の側部材とからなり、前記側部材には、内周面に前記板部材側から突出方向に向かって径寸法が大きくなる第二のテーパ面が形成されて、前記円筒部は、前記第一のテーパ面を前記第二のテーパ面と面接触させて前記蓋部に嵌合されることを特徴とする。
【0007】
本発明では、円筒部には、外周面の両方の端部側にそれぞれ円筒部の先端に向って径寸法が小さくなる第一のテーパ面が形成されていて、蓋部は、円筒部の端部の開口部を塞ぐ板部材と、板部材から突出し円筒部の外周面の端部側を覆う円筒状の側部材とからなり、側部材には、内周面に板部材側から突出方向に向かって径寸法が大きくなる第二のテーパ面が形成されて、円筒部は、第一のテーパ面を第二のテーパ面と面接触させて蓋部に嵌合されることにより、容易に円筒部を蓋部に嵌合させることができ、また外す作業も行いやすいので、コンクリートテストピース用型枠の組み立てやバラシが行いやすい。
また、第一のテーパ面と第二のテーパ面とが面接触して円筒部と蓋部材とが嵌合していると共に、固定具によって蓋部が円筒部に装着された状態が保持されるので、円筒部の内部に供給されたコンクリートが漏れることがない。これにより、コンクリートが充填されたコンクリートテストピース用型枠を横にすることができるので、キャッピングが不要となる。
また、コンクリートテストピース用型枠は円筒部と蓋部とに分かれるので容易に清掃を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係るコンクリートテストピース用型枠では、前記固定具は、前記円筒部に装着された一対の前記蓋部に巻きかけられて、前記蓋部を前記円筒部側に押圧するゴムバンドで、前記蓋部は、前記ゴムバンドが当接する位置に欠き込み部を備えることが好ましい。
本発明では、固定具は、円筒部に装着された一対の蓋部に巻きかけられて、蓋部を円筒部側に押圧するゴムバンドで、蓋部は、ゴムバンドが当接する位置に欠き込み部を備えることにより、ゴムバンドの位置が安定し、安定した状態で円筒部に蓋部を装着させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組み立てやバラシ、清掃が容易であると共にキャッピングを不要とすることができるので、コンクリートテストピースの製作にかかる労力やコストの軽減や、製作時間の短縮を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の実施の形態によるコンクリートテストピース用型枠の一例を示す正面図兼後面図、(b)は側面図、(c)は上面図兼下面図である。
【図2】(a)は図1(b)のA−A線断面図、(b)は(a)の拡大図である。
【図3】コンクリートテストピースの製造方法の工程を説明する図である。
【図4】図3の工程に続くコンクリートテストピースの製造方法の工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態によるコンクリートテストピース用型枠について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1および図2に示す本実施の形態によるコンクリートテストピース用型枠1は、簡易的にコンクリートテストピースを製造するための型枠である。本実施の形態によるコンクリートテストピース用型枠1は、内部にコンクリートCが供給される円筒状の円筒部2と、円筒部2の軸方向の両端部2a、2bに着脱可能な蓋部3と、蓋部3に取り付けられた取手4と、取手4に掛けられる所定の幅W1を有するリング状のゴムバンド5とから概略構成される。
【0012】
図2(a)、(b)に示すように、円筒部2は、外周面の両方の端部2a、2b側に、先端2cに向って径寸法が小さくなるテーパ面6(図2(b)参照)が形成されている。
蓋部3は、円筒部2の端部の開口部を塞ぐ円板状の板部材7と、板部材7と連結し板部材7から突出して円筒部2の外周面の端部2a、2b側を覆う円筒状の側部材8とから構成される。側部材8の内周面には、板部材7側から突出方向に向かって径寸法が大きくなるテーパ面9(図2(b)参照)が形成されている。テーパ面6とテーパ面9とは面接触して嵌合可能である。
円筒部2および蓋部3は鋼板を加工して形成されている。
【0013】
図1および図2に示すように、取手4は、蓋部3の板部材7から突出し、両端部が板部材7に連結された略U字型状の部材で、円筒部2の軸方向における端部には、切欠き部10が形成されている。切欠き部10はゴムバンド5の幅W1よりもやや大きい幅W2に形成されていて、コンクリートテストピースの製作時にゴムバンド5が掛けられる部分である。
【0014】
次に、上述したコンクリートテストピース用型枠を使用したコンクリートテストピースの製造方法について図面を用いて説明する。
まず、図3(a)に示すように、円筒部2の一方の端部2bに蓋部3を取り付け、この蓋部3が下側となるように円筒部2および蓋部3を設置する。このとき、図2(b)に示す円筒部2のテーパ面6と蓋部3の側部材8のテーパ面9とを面接触させ、円筒部2を蓋部3に嵌合させる。
円筒部2および蓋部3の側部材8にテーパ面6、9が形成されていることにより、円筒部2と蓋部3との装着が行い易い。
【0015】
続いて、図3(b)に示すように、円筒部2内にコンクリートCを2層に分けて詰め、突き棒で突いて充填し、天端を均す。
そして、図3(c)に示すように、円筒部2の上側に位置する他方の端部2a側に蓋部3を取り付ける。円筒部2の下側と同様に、図2(b)に示す円筒部2のテーパ面6と蓋部3の側部材8のテーパ面9とを面接触させ、円筒部2を蓋部3に嵌合させる。このとき、上下の蓋部3の取手4の向きを揃える。
続いて、図3(d)に示すように、上下の取手4の切欠き部10にゴムバンド5を掛けて、円筒部2とその両側の蓋部3とを密着させる。
【0016】
続いて、図4(a)に示すように、コンクリートCが充填されたコンクリートテストピース用型枠1をその軸方向が水平方向となるように倒し、蓋部3の板部材7を木ハンマーなどで叩いて板部材7とコンクリートCとの間のエアを上方へ移動させる。この作業により、硬化したコンクリートテストピースC1の端面が平滑になる。
【0017】
コンクリートCの硬化した後に、図4(b)に示すように、ゴムバンド5はずし、図4(c)に示すように、円筒部2の両端部2a、2bにそれぞれ取り付けられた蓋部3を外す。そして、図4(d)に示すように、コンクリートCが硬化して形成されたコンクリートテストピースC1を円筒部2から取り出すことでコンクリートテストピースC1が製造される。
コンクリートテストピースC1を円筒部2から取り出した後、円筒部2および蓋部3を清掃する。
【0018】
次に、上述したコンクリートテストピース用型枠の作用について図面を用いて説明する。
本実施の形態によるコンクリートテストピース用型枠1では、円筒部2の外周面の端部2a、2b側にテーパ面6が形成され、蓋部3の側部材8の内周面にテーパ面9が形成されていることにより、円筒部2を蓋部3に着脱し易いと共に、円筒部2のテーパ面6と蓋部3のテーパ面9とを面接触させて密着させて隙間をなくすことができる。
また、コンクリートCが充填されたコンクリートテストピース用型枠1の円筒部2と蓋部3とをゴムバンド5で固定することにより、蓋部3が円筒部2に押圧されて円筒部2と蓋部3との間に隙間が生じないので、コンクリートテストピース用型枠1の内部から外部にコンクリートCがもれることを防ぐことができる。そして、コンクリートCが充填されたコンクリートテストピース用型枠1を横向きに設置することができ、充填されたコンクリートCは、両端面が板部材7と接触すると共に、板部材7との間のエアが上方に移動するので、両端面が平滑に仕上がり、従来のようにキャッピングを行う必要がない。
また、コンクリートテストピース用型枠1は、簡単な形状の円筒部2および蓋部3から構成されているので、清掃が行いやすい。そして、コンクリートテストピース用型枠1は繰り返し使用できるので、従来の使い捨て用のコンクリートテストピース用型枠と比べて廃棄物の量を減らすことができる。
【0019】
本実施の形態によるコンクリートテストピース用型枠1では、組み立てやバラシ、清掃が容易であり、また、キャッピングを不要とすることができるので、コンクリートテストピースC1の製作にかかる労力やコストを軽減できると共に、製作時間を短縮できる効果を奏する。
【0020】
以上、本発明によるコンクリートテストピース用型枠1の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、取手4が設けられて取手4に切欠き部10が形成されているが、取手4を設けずに蓋部3の板部材7に切欠き部10を設け、この切欠き部10にゴムバンド5を掛ける構成としてもよい。
また、上記の実施の形態では、固定具としてゴムバンド5を使用しているが、ゴムバンド5に代わってクランプなどを用いて円筒部2と蓋部3とを固定してもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 コンクリートテストピース用型枠
2 円筒部
3 蓋部
5 ゴムバンド(固定部材)
6 テーパ面(第一のテーパ面)
7 板部材
8 側部材
9 テーパ面(第二のテーパ面)
10 切欠き部
C コンクリート
C1 コンクリートテストピース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にコンクリートが供給される円筒状の円筒部と、
前記円筒部の軸方向の両方の端部にそれぞれ着脱可能に設けられた一対の蓋部と、
前記一対の蓋部が前記円筒部に装着された状態を固定する固定具とを備え、
前記円筒部には、外周面の両方の端部側にそれぞれ前記円筒部の先端に向って径寸法が小さくなる第一のテーパ面が形成されていて、
前記蓋部は、前記円筒部の端部の開口部を塞ぐ板部材と、前記板部材から突出し前記円筒部の外周面の端部側を覆う円筒状の側部材とからなり、前記側部材には、内周面に前記板部材側から突出方向に向かって径寸法が大きくなる第二のテーパ面が形成されて、前記円筒部は、前記第一のテーパ面を前記第二のテーパ面と面接触させて前記蓋部に嵌合されることを特徴とするコンクリートテストピース用型枠。
【請求項2】
前記固定具は、前記円筒部に装着された一対の前記蓋部に巻きかけられて、前記蓋部を前記円筒部側に押圧するゴムバンドで、前記蓋部は、前記ゴムバンドが当接する位置に欠き込み部を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートテストピース用型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−183558(P2011−183558A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47868(P2010−47868)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】