説明

コンクリートブロック成形用型枠

【課題】脱型作業が容易で、作業能率を向上させうるようにしたコンクリートブロック成形用型枠を提供する。
【解決手段】下部ブロックと、それより左右寸法の小さな上部ブロックとからなる断面形がほぼ凸状のコンクリートブロックを成形する型枠であって、この型枠9は、前記上部ブロックを成形する下面が開口された下部型孔10aと、この下部型孔10aの上端に連続して形成された、下部ブロックを成形する上面が開口された上部型孔10bとを有する型枠本体11と、この型枠本体11の下面に着脱可能に取付けられた下部型孔10aの開口下端を閉塞する基板12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路、路肩、駐車場等に敷設される、断面形がほぼ凸状をなすコンクリートブロックを成形する際に使用される型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、上記のようなコンクリートブロック(舗石ブロック)案出し、先に特許出願している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−146438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の凸状断面をなすコンクリートブロックは、図11に記載されているような型枠を用いて成形していた。すなわち、型枠Aに、左右寸法が大小異なる有底かつ上方に開口する逆凸状断面の型孔Bを設け、この型孔Bに、混練されたコンクリート原料を上方より投入して成形していた。
【0005】
このような有底の型孔Bを有する型枠Aを用いると、コンクリート原料の固化後において、型枠Aを上下反転させて脱型する際の型抜き抵抗が大きく、脱型に時間がかかって作業能率が悪いという問題があった。
【0006】
特に、型枠に複数の型孔を設け、一つの型枠で複数のコンクリートブロックを成形しようとすると、型抜き抵抗がさらに大きくなるため、脱型に多くの時間を要する。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、脱型作業が容易で、作業能率を向上させうるようにしたコンクリートブロック成形用型枠を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のコンクリートブロック成形用型枠は、
下部ブロックと、それより左右寸法の小さな上部ブロックとからなる断面形がほぼ凸状のコンクリートブロックを成形する型枠であって、
前記上部ブロックを成形する下面が開口された下部型孔と、この下部型孔の上端に連続して形成され、前記下部ブロックを成形する上面が開口された上部型孔とを有する型枠本体と、
前記型枠本体の下面に着脱可能に取付けられた少なくとも前記下部型孔の開口下端を閉塞する基板と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、下部型孔の下面を開口してあるので、コンクリート原料の固化後において型枠を上下反転させ、基板を取り外せば、成形後のコンクリートブロックにおける上部ブロックの上面が型枠本体より露呈する。従って、上部ブロックの上面を直接叩くことが可能となり、成形後のコンクリートブロックを型枠本体より容易に脱型することができ、作業能率が向上する。
【0009】
本発明の請求項2に記載のコンクリートブロック成形用型枠は、請求項1に記載のコンクリートブロック成形用型枠であって、
前記型枠本体を耐熱性の合成樹脂により、前記基板を金属板によりそれぞれ形成したことを特徴としている。
この特徴によれば、型枠本体が軽量化するので、その取り扱いが容易となる。また、基板を加熱することが可能となるので、コンクリート原料の固化時間が短縮され、コンクリートブロックの生産性が向上する。
【0010】
本発明の請求項3に記載のコンクリートブロック成形用型枠は、請求項1または2に記載のコンクリートブロック成形用型枠であって、
前記下部型孔の下端部内に、前記上部ブロックの上面成形用のプレート型を着脱可能に嵌合したことを特徴としている。
この特徴によれば、型枠を上下反転させて脱型する際、プレート型の上面を叩くことができ、従って上部ブロックの上面に打痕が形成されることがなくなる。
【0011】
本発明の請求項4に記載のコンクリートブロック成形用型枠は、請求項3に記載のコンクリートブロック成形用型枠であって、
前記プレート型を金属板により形成したことを特徴としている。
この特徴によれば、プレート型に打痕が形成されにくくなるので、これを繰り返し何度でも使用することができる。また、基板を加熱した際、プレート型に熱が効果的に伝達されるので、コンクリート原料の固化が早まる。
【0012】
本発明の請求項5に記載のコンクリートブロック成形用型枠は、請求項3または4に記載のコンクリートブロック成形用型枠であって、
前記プレート型の外周部を、漸次外上方に向かってテーパー状に拡開する逆ハ字状断面としたことを特徴としている。
この特徴によれば、成型後の上部ブロックの上部外周部に、プレート型の外周部と補形をなすテーパー状の面取り部が形成されるので、成形時にバリが発生したとしても、このバリは上部ブロックの上面より上方に突出することがなくなる。すなわちバリは、コンクリート原料が、下部型孔とプレート型との対向面間の僅かな隙間より下方に流動することにより形成され、成形後の上部ブロックの面取り部や端面には形成されないからである。上部ブロックの上面以外に形成されたバリは、コンクリートブロック敷設時の盛土により隠蔽されるので、そのバリを除去する必要はない。
【0013】
本発明の請求項6に記載のコンクリートブロック成形用型枠は、請求項3ないし5のいずれかに記載のコンクリートブロック成形用型枠であって、
前記プレート型を、前記基板の上面に一体的に突設したことを特徴としている。
この特徴によれば、部品点数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の型枠を用いて成形されたコンクリートブロック(舗石ブロック)1と、その敷設例を示す斜視図、図2は、同じくコンクリートブロック1を下方より見た拡大斜視図である。コンクリートブロック1は、扁平なほぼ四角柱状の下部ブロック2と、その中央部上面に一体成形された、下部ブロック2よりも左右寸法の小さな四角柱状の上部ブロック3とからなり、全体に廃瓦4が混入されている。
【0015】
下部ブロック2の互いに隣接する2側面には、凸部5、5と、凹部6、6が形成されている。これらの凸部5と凹部6は、隣接して敷設される各コンクリートブロック1同士の位置決めに用いられる。下部ブロック2の下面には、敷設した後の移動を防止する十文字状の上向凹条7が形成されている。また、上部ブロック3の上端の外周部には、テーパー状の面取り部8が形成されている。
【0016】
図3は、上記コンクリートブロック1を成形する型枠の第1の実施形態の斜視図、図4は、図3のIV-IV線に沿う拡大縦断側面図である。
【0017】
この第1の実施形態の型枠9は、縦断面略凸状をなす上記コンクリートブロック1を上下反転させた状態で成形するもので、中央部に型孔10を有する扁平な直方体状の型枠本体11と、その下端部に着脱可能に嵌合される上向きコ字状断面の基板12とからなり、型枠本体11は、耐熱性と強度を有するウレタン樹脂等により、基板12は、スチール等の金属により、それぞれ形成されている。
【0018】
型枠本体11の型孔10は、コンクリートブロック1の上部ブロック3成形用の、それと補形をなす下面が開口された下部型孔10aと、この下部型孔10aの上端に連続して形成された、下部ブロック2を成形用の、それと補形をなす上面が開口された上部型孔10bとからなっている。下部型孔10aと上部型孔10bの内面は、固化して成形されたコンクリートブロック1の脱型を容易とするために、上方に若干拡開するテーパー面としてある。
【0019】
下部型孔10aの下端部には、上部ブロック3の面取り部8成形用の逆ハ字状のテーパー面13が形成され、また上部型孔10bの互いに隣接する内面には、下部ブロック2の凸部5と凹部6を成形するための凹面14と凸面15が形成されている。型枠本体11の上面には、コンクリートブロック1の下面の凹条7を形成するための十文字状の凹条形成具17(図5参照)の端部が嵌合される4個の嵌合溝16が形成されている。
【0020】
上記型枠9を用いてコンクリートブロック1を成形するには、型枠本体11の下面に基板12を嵌合して、下部型孔10aの開口下端を閉塞した後、離型剤を塗布した型孔10の上方よりコンクリート原料を流し込み、型枠本体11の上面に形成された4個の嵌合溝16に、コンクリートブロック1の下面の上向凹条7を形成するための十文字状の凹条形成具17(図5参照)を嵌合し、コンクリート原料の上面を押圧する。
【0021】
次いで、コンクリート原料が固化するのを待ってから、図5に示すように、型枠9を上下反転させ、基板12と凹条形成具17を取り外す。なお、コンクリート原料の固化時間を短縮するために、金属製の基板12を加熱してもよい。
【0022】
基板12を取り外すと、下部型孔10aの上端の開口面より、固化した上部ブロック3の上面が露呈するので、この上面を直接叩くことができるばかりか、型孔10の上下面が開放されることで型孔10の内面と固化した上部ブロック3の外面との間に空気が入り込みやすくなるため、成形後のコンクリートブロック1を容易に脱型することができる。
【0023】
図6は、本発明の第2の実施形態の型枠を示すもので、この実施形態の型枠18は、上記と同様の型枠本体11の下部型孔10aの下端部内に、コンクリートブロック1における上部ブロック3の上面を形成するための金属製のプレート型19を、下面が基板12の上面に当接するようにして着脱可能に嵌合したものである。
【0024】
プレート型19の外周部は、上部ブロック3の面取り部8を形成するために、漸次外上方に向かって拡開する逆ハ字状断面のテーパー面20としてある。
【0025】
このように、下部型孔10aの下端部内にプレート型19を嵌合すると、成形後の上部ブロック3の上面上に、バリが形成されるのを防止することができる。すなわち、型孔10に流し込まれたコンクリート原料は、下部型孔10aとプレート型19との対向面間の僅かな隙間より下方に流動するので、図7に示すように、バリ21は、成形後の上部ブロック3における面取り部8の下端に形成され、上端には形成されない。このように、上部ブロック3の上面より下方に形成されるバリ21は、コンクリートブロック1の敷設時の盛土により隠蔽されるので、それを除去する必要はない。さらに、テーパー面20を形成することで、成形後の上部ブロック3の上面周縁が面取りされるため、上面に車等の荷重が加わっても破損しにくくなる。
【0026】
このようなプレート型19を用いると、成形後のコンクリートブロック1を脱型する際、プレート型19を叩くことができるので、上部ブロック3の上面に打痕が形成されるのが防止される。また、プレート型19は金属製であるので、叩いても打痕が形成されにくく、それを繰り返し何度でも使用することができる。
【0027】
さらに、基板12を加熱した際、プレート型19に熱が効果的に伝達されるので、コンクリート原料の固化を早めることができる。
【0028】
図8は、本発明の第3の実施形態の型枠を示すもので、この型枠22は、上記と同形のプレート型19を、基板12の上面に一体的に突設したものである。このようにすると、部品点数を削減することができる。また、型枠本体11の下面に基板12を嵌合するのと同時に、プレート型19も下部型孔10aに嵌合しうるので、作業能率が向上する。
【0029】
なお、上記プレート型19は、外周部に、上部ブロック3の面取り部8形成用のテーパー面20を有するものとしたが、上部ブロック3に面取り部8を形成しないときには、図9のようなフラットな形状のプレート型23を、下部型孔10bに着脱可能に嵌合してもよい。このようなプレート型23を用いても、これを叩いてコンクリートブロック1を容易に脱型しうるとともに、上部ブロック3の上面に打痕が形成されるのが防止される。
【0030】
上記実施形態の型枠は、いずれも、一つの型枠で1個のコンクリートブロック1を成形するものであるが、図10に示すように、同形の複数(例えば4個)の型孔10を有する型枠24にも適用することができる。このような複数取りの型枠24を用いても、成形後のコンクリートブロックを容易に脱型することができる。
【0031】
本発明の技術的思想は、ほぼ凸状断面をなすコンクリートブロックであれば、上記四角柱状のコンクリートブロック1以外に、例えば円柱状や、四角柱以上の多角形柱状等の形状のコンクリートブロックを成形する際にも適用することができる。
【0032】
さらに、上記プレート型19の形状を種々に変形させることにより、上面の形態が異なるコンクリートブロックを成型することが可能となる。
【0033】
また、上記実施形態の型枠は、凸部5、凹部6、及び上向凹条7を有するコンクリートブロック1を成形するものとしたが、凸部5、凹部6、及び上向凹条7のないコンクリートブロックを成形する際にも適用しうることは勿論である。
【0034】
また、上記実施形態のコンクリートブロック1は、原材料としてコンクリートに廃瓦4が混入されたものが使用されているが、例えば鉄鋼生産の製銑過程で生成する鉄鋼スラグに、高炉スラグ(鉄鋼生産の製銑過程で生成するスラグを水により急冷微粒化した後、乾燥・微粉砕して得られた微粉末)を添加して水とともに混ぜたものを使用してもよく、固化させることにより鉄鋼スラグ水和固化体が得られる。
【0035】
詳しくは、例えばリサイクル材である鉄鋼スラグに高炉スラグを添加するとともに、さらに約3cm以下の大きさに租砕した廃瓦4を金型に投入して水とともに混ぜ、これを振動・加圧成型することにより上記形状に形成されてなる。尚、固化させる際において、同じくリサイクル材である高炉水砕スラグ(鉄鋼生産の製銑過程で生成するスラグを水により急冷微粒化したもの)やフライアッシュ(微粉炭燃焼ボイラーで発生する微粉炭)や消石灰などのアルカリ刺激材を追加して配合することにより、硬化が促進され、製造時間の短縮が図れるとともに、強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の型枠により形成されたコンクリートブロックの斜視図である。
【図2】同じく、下方より見た拡大斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の型枠の分解斜視図である。
【図4】同じく、組付時の図3のVI-VI線に沿う拡大縦断側面図である。
【図5】同じく、コンクリートブロックの脱型要領を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の型枠の縦断側面図である。
【図7】同じく、成形後の上部ブロックの上部の断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の型枠の縦断側面図である。
【図9】他のプレート型を用いた型枠の縦断側面図である。
【図10】本発明が適用可能な複数の型孔を有する型枠の斜視図である。
【図11】従来のコンクリートブロック成形用型枠の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 コンクリートブロック
2 下部ブロック
3 上部ブロック
4 廃瓦
5 凸部
6 凹部
7 上向凹条
8 面取り部
9 型枠
10 型孔
10a 下部型孔
10b 上部型孔
11 型枠本体
12 基板
13 テーパー面
14 凹面
15 凸面
16 嵌合溝
17 凹条形成具
18 型枠
19 プレート型
20 テーパー面
21 バリ
22 型枠
23 プレート型
24 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ブロックと、それより左右寸法の小さな上部ブロックとからなる断面形がほぼ凸状のコンクリートブロックを成形する型枠であって、
前記上部ブロックを成形する下面が開口された下部型孔と、この下部型孔の上端に連続して形成され、前記下部ブロックを成形する上面が開口された上部型孔とを有する型枠本体と、
前記型枠本体の下面に着脱可能に取付けられた少なくとも前記下部型孔の開口下端を閉塞する基板と、
を備えることを特徴とするコンクリートブロック成形用型枠。
【請求項2】
前記型枠本体を耐熱性の合成樹脂により、前記基板を金属板によりそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロック成形用型枠。
【請求項3】
前記下部型孔の下端部内に、前記上部ブロックの上面成形用のプレート型を着脱可能に嵌合したことを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリートブロック成形用型枠。
【請求項4】
前記プレート型を金属板により形成したことを特徴とする請求項3に記載のコンクリートブロック成形用型枠。
【請求項5】
前記プレート型の外周部を、漸次外上方に向かってテーパー状に拡開する逆ハ字状断面としたことを特徴とする請求項3または4に記載のコンクリートブロック成形用型枠。
【請求項6】
前記プレート型を、前記基板の上面に一体的に突設したことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のコンクリートブロック成形用型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−214403(P2009−214403A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59951(P2008−59951)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(594176969)株式会社オーシマ・デザイン設計 (7)
【出願人】(595089835)株式会社ノジマ (1)
【Fターム(参考)】