説明

コンクリート打設用ホース

【課題】内面ゴム層に突出した部分が生じるような状態を検出できる、簡単な構成の確認構造を備えたコンクリート打設用ホースを提供する。
【解決手段】コンクリート打設用ホース1を、内面ゴム層と、この内面ゴム層の外側に金属ワイヤを巻き付けて形成した補強ワイヤ層と、この補強ワイヤ層の外側に配置した外面ゴム層11と、から構成する。ホース1の外面(外面ゴム層11の外面)に、ホース1の全長又はほぼ全長に沿って、切断確認テープ21を貼り付ける。切断確認テープ21を、自然長の10%だけ伸びると切断してしまうように形成しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築又は建設現場などで、コンクリートを圧送して打設するために用いられるコンクリート打設用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場で所定の型枠内にコンクリート(生コン)を流し込んで打設する場合には、コンクリートを移送又は圧送できるように構成されたコンクリート打設用ホースが用いられる。このコンクリート打設用ホースは、金属製の補強ワイヤ層や補強布層を内面ゴム層と外側層とで覆った構成を有していて、先端部を作業員が抱えて型枠位置に配置し、移送又は圧送されてきたコンクリートを型枠内に流し込むようにして用いられるものであるが、ホース先端部の配置位置を適宜変更できるように、あるいは、別の場所又は個所にホースを簡単に移動させることができるように、十分な可撓性を有するように構成しておくのが効果的である。
【0003】
コンクリート打設用ホースの可撓性を高めるためには、補強層の編角又は巻角を、例えば60度程度に大きく設定しておけばよい(例えば特許文献1参照)。そして、補強層の編角又は巻角を大きく設定すれば、ホースの伸縮性又は伸長性が高くなり、例えば、圧送コンクリートがホース内で詰まってしまった場合でも、ホースが直ちに破裂することなく伸びるので、作業員がホース破裂前に圧送用ポンプを停止できる時間的余裕が確保されるといった利点も生じることとなる。しかしながら、補強層の編角又は巻角を大きくしてコンクリート打設用ホースの伸縮性又は伸長性を増大させると、コンクリートが圧送されるときに加わる内圧によってホースが伸びたままとなってしまう。特に、近年では、流動性に劣る高強度生コンが高圧で移送されるので、ホースはかなり大きく伸びることとなる。そして、ホースが伸びれば、補強ワイヤ層の金属ワイヤが小径化し、この補強ワイヤ層の内側に配置されている内面ゴム層に食い込み、そして食い込まれた内面ゴム層の部分が内側に突出する。内面ゴム層の内側に突出した部分は、ホース内を流れるコンクリートによって擦られ、早期に磨耗するが、磨耗が補強ワイヤ層まで達すると、ホースは破裂してしまう。特に、高強度生コンが使用される場合には、内面ゴム層に突出した部分があると、コンクリート打設用ホースの磨耗が激しい。
【0004】
そこで、コンクリート打設用ホースに、磨耗を検知する磨耗検知手段を構成しておき、この磨耗検知手段によりホースの寿命を確認し、使用中にホースが破裂するといったことがないようにすることが考えられる(磨耗検知手段に関しては例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平4−35660号公報
【特許文献2】特許第3440658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のような磨耗検知手段は構造が複雑である。また、磨耗量を検出するよりは、磨耗又は激しい磨耗が生じる状態を検出し、磨耗が生じない状態に復帰させることのほうが効果的である。
【0006】
そこで本発明は、内面ゴム層に突出した部分が形成されるような状態を検出できる、簡単な構成の確認構造を備えたコンクリート打設用ホースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明のコンクリート打設用ホースは、内面ゴム層と、この内面ゴム層の外周側に、金属製ワイヤを巻き付けて形成した補強ワイヤ層と、この補強ワイヤ層の外周側に設けられた外側層と、を備え、コンクリートを圧送(又は移送)して打設するのに用いられるコンクリート打設用ホースであって、前記外側層の外面に、この外側層の長さ方向の伸びを目視により確認できるマークを設けたものである。マークにより外側層の長さ方向の伸び、すなわちホースの長さ方向の伸びが確認できる。確認したホースの伸びが、内面ゴム層に金属ワイヤが食い込み、内面ゴム層に又は内面ゴム層の内面に内側への突出した部分が生じる程度のものである場合には、例えば、コンクリート圧送ポンプの出力を下げてホースの伸びを抑える。ホースの伸びが小さくなれば、内面ゴム層の内面の平滑度が高まり、ホース内部が早期に磨耗してしまうことが防止される。
【0008】
マークを、外側層の外面に、長さ方向に沿って貼り付けられた切断確認テープとすることができ、この切断確認テープを、切断長さだけ伸長したときに、あるいは所定の長さ伸長したときに、切断されてしまうように形成しておく。すなわち、内面ゴム層の内面に、早期に磨耗するような突出した部分が生じてしまうホースの伸び(自然長からの伸び分)を切断長さ又は所定の長さとして設定する。そして、切断確認テープの切断を目視により確認したとき、ホースの伸びが好ましくない領域に達していると判断する。切断長さは、切断確認テープの自然長の5%乃至15%の範囲内で設定することができ、あるいは10%とすることができる。このように構成することにより、ホース内面の磨耗を効果的に防止することが可能となる。切断確認テープは、外側層の外面に、周方向に間隔を設けて複数本貼り付けておくことができる。このような構成により、どのような方向からでも、切断確認テープの切断の有無を目視できる。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように、本発明では、マークによりホースの伸びを確認できるので、使用時にホースが伸び過ぎて、内面ゴム層が早期に磨耗するといったことを効果的に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明に係るコンクリート打設用ホースの積層構造を示すための斜視図である。
【0012】
コンクリート打設用ホース1は、最内層の内面ゴム層3と、この内面ゴム層3の外側に細長い第1の補強布5を巻き付けて形成された第1の補強布層と、この第1の補強布層の外側に金属ワイヤ7を巻き付けて形成された補強ワイヤ層と、この補強ワイヤ層の外側に細長い第2の補強布9を巻き付けて形成された第2の補強布層と、この第2の補強布層の外側に配置された、最外層の外面ゴム層11と、から構成されている積層構造を備えていて、第2の補強布層は、第2の補強布9を巻いて形成された布層を複数積層して形成されている。第1の補強布層、補強ワイヤ層及び第2の補強布層はそれぞれ、巻角が静止角よりも大きい60度に設定されていて、圧送するコンクリートから内圧を受けた場合に、軸方向に伸びて変形しやすいように形成されている。第1の補強布層と補強ワイヤ層とは、巻き方向が同じであるが、第2の補強布層(それぞれの布層の巻き方向は同じ)は、第1の補強布層及び補強ワイヤ層と巻き方向が逆である。
【0013】
図2は、コンクリートを圧送する前のコンクリート打設用ホース1の断面図、図3は、コンクリートを圧送しているときのコンクリート打設用ホース1の断面図である。
【0014】
コンクリート圧送前では、コンクリート打設用ホース1の内面ゴム層3の内面(ホース内面)は平滑に形成されているが(図2参照)、コンクリートを圧送しているときには、圧送しているコンクリートからの内圧を受けて、第1の補強布層(符号5参照)、補強ワイヤ層(符号7参照)及び第2の補強布層(符号9参照)がそれぞれ、したがってホース1が長さ方向に伸長している。補強ワイヤ層の金属ワイヤ7は、長さ方向への伸長にともなって径が小さくなるように変形し、第1の補強布層を介して内面ゴム層3を径方向内側に押圧する。したがって、コンクリートからの内圧が大きくなってホース1が長さ方向に大きく伸長すると、内面ゴム層3の内面(ホース内面)には、金属ワイヤ7に対応して螺旋状の突出部15が形成されることとなる。この突出部15は、圧送しているコンクリートに擦られて早期に磨耗するおそれがあるが、圧送しているコンクリートが高強度生コン(設計基準強度が普通コンクリートで36N/平方mm以上60N/平方mm以下の範囲、軽量コンクリートで36N/平方mmを超える範囲のコンクリート)の場合には、突出部15が粘性の大きな高強度生コンに強く擦られて、第1の補強布層が露出するまで簡単に磨耗してしまう。したがって、図3に示すような突出部15が内面ゴム層3の内面に形成されないような態様でコンクリート打設用ホース1を使用することが好ましいが、ホース1の長さ方向の伸長がホース1の自然長の10%未満にとどまっていれば、図3に示すような突出部15は生じない。
【0015】
図4は、コンクリート打設用ホース1の全体を示す正面図、図5は、コンクリート打設用ホース1の側面図である。
【0016】
コンクリート打設用ホース1の一端部には、吐出用口金17が嵌め込まれ、締め付けリング19で固定されているが、ホース1の外面(外面ゴム層11の外面)には、ホース1の全長又はほぼ全長に沿って、3本の切断確認テープ21が貼り付けられている。この切断確認テープ21は、所定の長さ(切断長さ)、ここでは自然長の10%、だけ伸びると切断されるように、例えば樹脂材料を用いて形成されていて、周方向に等間隔(ここでは120度間隔)で、外面ゴム層11に加硫接着されているが、接着剤を用いて外面ゴム層11に貼り付けてもよい。すなわち、切断確認テープ21は、ホース1の自然長からの伸びが自然長の10%未満である間は、ホース1に追随して伸長するが、ホース1の自然長からの伸びが自然長の10%に達すると、切断されてしまう。また、切断確認テープ21は、ホース1の全長又はほぼ全長に貼り付けるものなので、幅約20mmの細長い帯状体に形成され、ホース1の外面から大きく突出しないように、厚みが30μm乃至50μm程度に形成されている。さらに、切断確認テープ21は、ホース1の伸縮や曲がりに追随でき、かつ、ホース1の外面の曲率に沿って変形できる柔軟性を備えている。なお、切断確認テープ21をホース1に加硫接着する場合には、未加硫のホース1の外面に、切断確認テープ21を接着剤を用いて貼り付け、切断確認テープ21の上から布を巻き付けてホース1を加硫し、加硫後に、布を取り去るといったようにすればよい。
【0017】
図6は、コンクリート打設用ホース1が10%以上伸張したときの状態を示す図である。
【0018】
ホース1が、圧送しているコンクリートからの内圧を受けて、自然長から10%以上長さ方向に伸長すると、切断確認テープ21も自然長から10%以上長さ方向に伸長するような外力を受けることとなる。そして、切断確認テープ21は、自然長から10%だけ長さ方向に伸長したときに切断され、この切断確認テープ21の切断により、ホース1が10%以上伸張し、内面ゴム層3の内面に突出部15が生じていることを確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のコンクリート打設用ホースは、例えば、高層建造物の基礎や高速道路の橋脚などに高強度生コンを打設するのに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係るコンクリート打設用ホースの積層構造を示すための斜視図である。
【図2】図2は、コンクリートを圧送する前のコンクリート打設用ホースの断面図である。
【図3】図3は、コンクリートを圧送しているときのコンクリート打設用ホースの断面図である。
【図4】図4は、コンクリート打設用ホースのほぼ全体を示す正面図である。
【図5】図5は、コンクリート打設用ホースの側面図である。
【図6】図6は、コンクリート打設用ホースが10%以上伸張したときの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 コンクリート打設用ホース
3 内面ゴム層
7 金属ワイヤ
11 外面ゴム層
21 切断確認テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面ゴム層と、この内面ゴム層の外周側に、金属製ワイヤを巻き付けて形成した補強ワイヤ層と、この補強ワイヤ層の外周側に設けられた外側層と、を備え、コンクリートを圧送して打設するのに用いられるコンクリート打設用ホースであって、
前記外側層の外面に、この外側層の長さ方向の伸びを目視により確認できるマークを設けた、ことを特徴とするコンクリート打設用ホース。
【請求項2】
前記マークは、前記外側層の前記外面に、長さ方向に沿って貼り付けられた切断確認テープであり、この切断確認テープは、切断長さだけ伸長したときに切断されてしまうように形成されている、ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート打設用ホース。
【請求項3】
前記切断長さは、前記切断確認テープの自然長の10%である、ことを特徴とする請求項2記載のコンクリート打設用ホース。
【請求項4】
前記切断確認テープは、前記外側層の外面に、周方向に間隔を設けて複数本貼り付けられている、ことを特徴とする請求項2又は3記載のコンクリート打設用ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−249016(P2008−249016A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90689(P2007−90689)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】