説明

コンクリート材料

【課題】通常のコンクリートとの比較において製造工程の複雑化を招いたり製造に際して特有の部材が必要となったりすることなく、蓄光性を有するコンクリート部材を得ることができ、環境・エコロジーに対して積極的に貢献することができるコンクリート材料を提供すること。
【解決手段】コンクリート材料として、セメント1と、水2と、骨材3と、混和剤4と、粉末状の蓄光性蛍光体5とを含む材料が所定の比率で混合されることにより生成されるコンクリート材料10を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の縁石や建築資材や景観部材等に用いられるコンクリート材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、道路において縁石等の夜間の視認性を高めるためや、夜間における建築物等の景観性を高めるため、あるいは非常の停電時等において避難経路を示すために、コンクリートを発光させることが行われている。コンクリートを発光させる技術としては、例えば、コンクリートに電球や発光ダイオード等の照明器具が埋め込まれることや、コンクリートの表面に蛍光性を有するシールや反射板等の蛍光部材が取り付けられることや、コンクリートの表面に蛍光塗料が塗布されることが挙げられる。
【0003】
しかし、前記のような従来技術では、次のような問題がある。すなわち、コンクリートに照明器具が埋め込まれることによれば、照明器具に電力を供給するための維持費やメンテナンス作業の必要が生じたり、照明器具のためのスペース確保の必要性からコンクリートについて十分な強度を確保することが困難となったりする。また、コンクリートの表面に蛍光部材が取り付けられたり蛍光塗料が塗布されたりすることによれば、コンクリート表面の破損や摩耗等によって発光状態の維持が困難となる。また、他の問題としては、コンクリートに対して照明器具を埋め込んだり蛍光部材を取り付けたり蛍光塗料を塗布したりする作業が必要となって製造や施工のための作業が面倒となることや、発光する部分がコンクリート表面の一部に限られること等が挙げられる。
【0004】
そこで、これらの問題を解消するため、コンクリート部材自体に蓄光性を持たせ、コンクリート部材自体を発光させる技術がある(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3参照。)。ここで、蓄光性とは、自然光や人工光を蓄え、暗所や夜間等においても発光を続ける性質である。
【0005】
特許文献1には、コンクリート層とその表面に形成される蓄光性層とを有するコンクリート部材についての技術が開示されている。この蓄光性層は、樹脂や砂利等の混合物に蓄光性粉末等が焼成されること等によって生成される蓄光骨材が用いられている。また、特許文献2においては、コンクリートの表面が、撥水性等を有する樹脂に蓄光機能を有する物質が添加されたもので覆われることにより、蓄光性を有するコンクリート部材が得られている。
【0006】
特許文献1および特許文献2において、コンクリート部材に蓄光性を備えさせるための蓄光性材料は、いずれも樹脂等と混合されることにより用いられている。このように蓄光性材料が樹脂等と混合されて用いられることは、特許文献1および特許文献2にも示されているように、蓄光性材料について、水と反応することで低下する蓄光機能を保持するためと考えられる。つまり、一般に用いられている蓄光性材料は、水分に弱く、水と反応する状態で用いることが蓄光性を維持する観点から困難であると考えられている。したがって、従来、水分を有するコンクリート材料に蓄光性材料が混合されることは、困難であると考えられている。
【0007】
また、特許文献3においては、表面に蓄光性粒状物が埋設されているコンクリート部材が開示されている。そして、コンクリート材料に対する蓄光性粒状物の埋設に際して、水分等により粘着力が減少する粘着剤層を介して多数の蓄光性粒状物が保持された型枠が用いられている。つまり、蓄光性粒状物が保持された型枠に対してコンクリート材料が打設されることにより、型枠側に保持されていた蓄光性粒状物が、コンクリート材料中の水分によってコンクリート材料側に移行することでコンクリート表面に埋設される。ここで用いられる蓄光性粒状物には、粉末状の蓄光性蛍光体それ自体や、粉末状の蓄光性蛍光体が透明樹脂に混練されて粒状化されたものが含まれる。
【0008】
ところで、近年、「環境・エコロジー」ということが様々な分野で取り沙汰されている。こうした環境・エコロジーに貢献するためには、前述のような自然光を利用することができる蓄光性を有するコンクリート部材が有用となる。そして、蓄光性を有するコンクリート部材が、環境・エコロジーへの貢献のためにより実用的に用いられるためには、できるだけ簡単な工程によって製造することができ、汎用性に優れることが必要となる。
【0009】
このような観点から、特許文献1および特許文献2のコンクリート部材は、一般に使用されている通常のコンクリートとの比較において製造工程が複雑となる。すなわち、特許文献1および特許文献2のコンクリート部材の製造に際しては、通常のコンクリートに対して、蓄光性材料が樹脂等と混合される工程等が必要となることから、製造工程が比較的複雑となる。この点、特許文献3には、前記のとおり粉末状の蓄光性蛍光体自体がコンクリート材料に対して埋設されることが記載されている。確かに、粉末状の蓄光性蛍光体がそのまま用いられることで、蓄光性材料が樹脂等と混合される工程等が省略される。しかし、特許文献3のコンクリート部材の製法によれば、通常のコンクリートの製造に際しては用いられることのない特有な部材として、多数の蓄光性粒状物が保持された型枠が必要となる。
【0010】
以上のように、従来の技術においては、蓄光性を有するコンクリート部材を得るに際して、通常のコンクリートの場合との比較において、製造工程が複雑となったり、特有な部材が必要となったりするため、環境・エコロジーに対して積極的に貢献することが困難であると考えられる。
【特許文献1】特開2000−27114号公報
【特許文献2】特開2001−163687号公報
【特許文献3】特開平9−254111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、通常のコンクリートとの比較において製造工程の複雑化を招いたり製造に際して特有の部材が必要となったりすることなく、蓄光性を有するコンクリート部材を得ることができ、環境・エコロジーに対して積極的に貢献することができるコンクリート材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
すなわち、請求項1においては、コンクリート材料であって、セメントと、水と、骨材と、混和剤と、粉末状の蓄光性蛍光体とを含む材料が所定の比率で混合されることにより生成されるものである。
【0014】
請求項2においては、請求項1に記載のコンクリート材料において、前記蓄光性蛍光体の含有量が、10〜40重量%程度であるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、通常のコンクリートとの比較において製造工程の複雑化を招いたり製造に際して特有の部材が必要となったりすることなく、蓄光性を有するコンクリート部材を得ることができ、環境・エコロジーに対して積極的に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明は、コンクリートの製造に際して、セメントに対して、通常用いられる水や骨材等とともに、粉末状の蓄光性蛍光体を混合させることにより、蓄光性を有するコンクリート部材を得ようとするものである。したがって、本発明に係るコンクリート材料が用いられ、所定の形状が保持された状態で養生が行われることで得られるコンクリート部材は、自然光や人工光を蓄えてそれをエネルギー源として発光するという蓄光性を有する。
【0017】
本実施形態のコンクリート材料10は、図1(a)に示すように、セメント1と、水2と、骨材3と、混和剤4と、粉末状の蓄光性蛍光体5とを含む材料が所定の比率で混合されることにより生成される。そして、図1(b)に示すように、コンクリート材料10が用いられ、所定の形状が保持された状態で養生が行われることで、蓄光性を有するコンクリート部材11が得られる。本実施形態のコンクリート部材11は、所定の形状として円柱状の形状を有する。
【0018】
セメント1としては、特に限定されるものではなく、各種のセメント粉末が用いられる。セメント1としては、例えば、ポルトランドセメントが用いられる。骨材3としては、特に限定されるものではなく、天然または人工の骨材が用いられる。骨材3としては、例えば、川砂、山砂、海砂等の細骨材や、砂利、砕石等の粗骨材が用いられる。
【0019】
混和剤4としては、セメントに混和可能な材料であれば特に限定されるものではなく、無機質系のものや有機質系のものが用いられる。混和剤4には、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、硬化促進剤、流動化剤、凝結遅延剤等、セメントに混和されることで、コンクリートに所定の機能を付与することで作業性(ワーカビリティ)を向上させたりコンクリートの物性を改善したりすることができる各種の材料が含まれる。
【0020】
粉末状の蓄光性蛍光体5としては、特に限定されるものではなく、特定波長の光を吸収してそれをエネルギーとして蓄え、別の波長の光を発光する性質を有する粉末材料が用いられる。また、粉末状の蓄光性蛍光体5は、平均粒径が数μmから60μm程度の大きさとなる。粉末状の蓄光性蛍光体5の平均粒径は、好ましくは30μm程度である。蓄光性蛍光体5としては、例えば、アルミン酸ストロンチウム(SrAl、SrAl1425、アルミン酸カルシウム(CaAl)、アルミン酸バリウム(BaAl)を主成分(母結晶)とし、賦活剤としてユーロピウム(Eu)、ジスプロニウム(Dy)等が添加されたものが用いられる。
【0021】
コンクリート材料の物性を示す重要な要素として、強度(呼び強度、設計基準強度)とスランプがある。つまり、コンクリート材料については、その用途等に応じて、適切な強度およびスランプの値がある。例えば、建築資材として用いられるコンクリート材料については、強度は呼び強度で24N/mm、スランプは15〜18cm等の各値が、適正な値として用いられる。
【0022】
これらの強度およびスランプの値は、コンクリート材料10に混合される水の比率(水セメント比)が大きく影響する。そして、水と反応する粉末状の蓄光性蛍光体5については、コンクリート材料10における含有量が多くなるほど、コンクリート材料10の強度は低下し、スランプは長くなる。一方で、コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量が少な過ぎると、コンクリート材料10が用いられて構成されるコンクリート部材が有する蓄光性による発光量(以下単に「発光量」という。)が十分に得られない。
【0023】
そこで、本実施形態のコンクリート材料10は、蓄光性蛍光体5の含有量が、10〜40重量%程度である。つまり、コンクリート材料10において、蓄光性蛍光体5の含有量が10〜40重量%程度であることにより、十分な強度、適正なスランプ、十分な発光量が得られる。コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量がこのような範囲に設定されることについて、図2を用いて具体的に説明する。
【0024】
図2は、コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量と、コンクリート材料10の各種物性等との関係を表すグラフを示すものである。図2に示すデータは、コンクリート材料10、およびコンクリート材料10が用いられて製造される所定の試験体(テストピース)についてのものである。本実施形態では、次のようなコンクリート材料10および試験体が用いられている。
【0025】
コンクリート材料10を構成する材料について、セメント1として、普通ポルトランドセメントが用いられている。また、骨材3として、細骨材である川砂、山砂、海砂と、粗骨材である砂利(最大寸法25mm)、砕石(最大寸法20mm)等とが用いられている。ここで、細骨材の塩化物量としては、NaClが0.04%以下となっている。また、混和剤4として、AE剤等が用いられている。これらの材料が所定の比率で混合されるものに対し、蓄光性蛍光体5が混合される。そして、蓄光性蛍光体5の含有量が変化させられることにより、図2に示す各グラフが得られる。蓄光性蛍光体5としては、アルミン酸ストロンチウム(SrAl、SrAl1425)を主成分(母結晶)とし、賦活剤としてユーロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)が添加されたものが用いられている。
【0026】
また、試験体としては、前記のような材料が混合されたコンクリート材料10が、スチーム養生により、径10cm、長さ20cmの円柱形状に硬化され形成されたものが3〜5個程度用いられる。つまり、試験体が用いられて測定されるコンクリート材料10の物性については、複数の試験体についての測定値から平均値や適正値等が適宜用いられる。
【0027】
図2中、二点鎖線で示されるグラフG1は、蓄光性蛍光体5の含有量(重量%、以下単に「%」と記載する。)と発光量との関係を表す。グラフG1からわかるように、発光量の値は、蓄光性蛍光体5の含有量の値の増加に対して比例的に増加する。
【0028】
図2中、実線で示されるグラフG2は、蓄光性蛍光体5の含有量と強度との関係を表す。ここで、強度は、設計基準強度(N/mm)である。つまり、設計基準強度は、コンクリート材料10が用いられて形成される試験体について圧縮試験等が行われることにより測定される。設計基準強度については、コンクリート部材として用いられる場合の許容範囲がある(強度許容範囲Pr1参照)。強度許容範囲Pr1は、コンクリート材料10が建築資材として用いられる場合等についてのものであり、21〜27N/mm程度の値となる。
【0029】
グラフG2からわかるように、設計基準強度の値は、蓄光性蛍光体5の含有量の値が0%から約28%の範囲では略一定となる。ここで略一定となる設計基準強度の値は、強度許容範囲Pr1の上限値に対応する。設計基準強度の値は、蓄光性蛍光体5の含有量の値が約28%から増加するにしたがって比例的に減少する。
【0030】
図2中、破線で示されるグラフG3は、蓄光性蛍光体5の含有量とスランプ(cm)との関係を表す。スランプについては、コンクリート材料10が用いられる際の作業性等から許容範囲がある(スランプ許容範囲Pr2参照)。スランプ許容範囲Pr2は、コンクリート材料10が建築資材として用いられる場合等についてのものであり、15〜18cm程度の値となる。
【0031】
グラフG3からわかるように、コンクリート材料10のスランプの値は、蓄光性蛍光体5の含有量の値が0%から約30%の範囲では略一定となる。ここで略一定となるスランプの値は、スランプ許容範囲Pr2の下限値に対応する。スランプの値は、蓄光性蛍光体5の含有量の値が約30%から増加するにしたがって比例的に増加する。
【0032】
また、図2中、一点鎖線で示されるグラフG4は、蓄光性蛍光体5の含有量とコンクリート材料10の材料コストとの関係を表す。グラフG4からわかるように、コンクリート材料10の材料コストは、蓄光性蛍光体5の含有量の値の増加にともなって増加し、蓄光性蛍光体5の含有量の値が約10%でピークとなる。そして、蓄光性蛍光体5の含有量の値が約10%よりも大きくなると、その含有量の増加にともなってコストダウンが図られる。
【0033】
以上のようなコンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量と、コンクリート材料10の各種物性との関係から、コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量について10〜40%程度であることが導かれる(図2中、矢印範囲R参照)。
【0034】
すなわち、設計基準強度の値が強度許容範囲Pr1内となる蓄光性蛍光体5の含有量の値は、40%程度よりも小さくなる(グラフG2参照)。言い換えると、蓄光性蛍光体5の含有量の値が40%程度よりも小さいことにより、設計基準強度が許容される値となる。これにより、コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量の数値範囲についての上限側の値が導かれる。なお、蓄光性蛍光体5の含有量の値が40%程度よりも小さい範囲では、コンクリート材料10のスランプは、スランプ許容範囲Pr2内となる(グラフG3参照)。
【0035】
一方、蓄光性蛍光体5の含有量の値が10%程度よりも小さくなると、発光量について十分な値が得られない(グラフG1参照)。これにより、コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量の数値範囲についての下限側の値が導かれる。つまり、コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量の数値範囲についての下限側の値は、発光量に基づいて規定される。そして、コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量としては、少なくとも10%程度であれば、蓄光性を有するコンクリート部材としての所望の発光量が得られる。
【0036】
このように、コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量は、10〜40%程度であり、蓄光性蛍光体5の含有量が多い方が、発光量の面では有利になるが、強度が小さく、スランプが大きくなる。一方、蓄光性蛍光体5の含有量が少ないと、強度、スランプの面では安定するが、十分な発光量が得られなくなる。
【0037】
なお、コンクリート材料10における蓄光性蛍光体5の含有量についての数値範囲である10〜40%程度とは、図2から明らかなように、かかる数値範囲における上限側の値および下限側の値それぞれについて、10±数%の値および40±数%の値を含む趣旨である。
【0038】
以上のように、本実施形態のコンクリート材料10によれば、通常のコンクリートとの比較において製造工程の複雑化を招いたり製造に際して特有の部材が必要となったりすることなく、蓄光性を有するコンクリート部材を得ることができ、環境・エコロジーに対して積極的に貢献することができる。
【0039】
すなわち、本実施形態のコンクリート材料10によれば、通常用いられているコンクリート材料に対して、蓄光性蛍光体5が所定の含有量で混合されるだけであり、混合される材料の種類が一つ増えるだけである。このため、蓄光性を有するコンクリート部材を得るに際し、蓄光性材料が樹脂等と混合される工程等が別途必要となったり、特有の部材が必要となったりすることがなく、既存のコンクリートの製造装置をそのまま利用することが可能となる。このように、本実施形態のコンクリート材料10によれば、極めて簡単な方法により、蓄光性を有するコンクリート部材を得ることができる。
【0040】
また、本実施形態のコンクリート材料10は、通常用いられているコンクリート材料と同様にして製造、使用ができることから、蓄光性を有するコンクリート部材を得るに際して汎用性に優れる。つまり、少なくとも通常用いられているコンクリート材料の用途については、本実施形態のコンクリート材料10を用いることができる。また、本実施形態のコンクリート材料10によれば、コンクリート部材を発光させるためだけのエネルギー(例えば電気エネルギー)が必要とされることなく、太陽からの光である自然光や、照明器具等から人工的に放たれている人工光が利用されることで、コンクリート部材を発光させることができる。これらのことから、本実施形態のコンクリート材料10によれば、環境・エコロジーに対して積極的に貢献することができる。
【0041】
また、本実施形態のコンクリート材料10によれば、コンクリート部材そのものが蓄光機能を有することとなるため、コンクリート表面の破損や摩耗等によっても発光状態が損なわれることがなく、維持費やメンテナンスが不要であり、施工作業も通常のコンクリートと同様に行うことができる。
【0042】
本実施形態では、蓄光性を有するコンクリート部材を得るために、コンクリート材料10において蓄光性蛍光体5が混合されているが、建築資材として用いられる仕上塗材についても、上述した実施形態の場合と同様にして蓄光性を備えさせることができる。
【0043】
具体的には、仕上塗材として、アクリル共重合樹脂エマルジョンが挙げられる。すなわち、上述した実施形態におけるコンクリート材料10と同様にして、仕上塗材に蓄光性を備えさせる場合においては、アクリル共重合樹脂エマルジョン等の仕上塗材に対して、蓄光性蛍光体5が、10〜40%程度で混合される。これにより、蓄光性を有する仕上塗材が生成される。この場合、仕上塗材としては、市販の製品として、ジョリパット(アイカ工業(株)、商品名)が好適に用いられる。
【実施例1】
【0044】
本発明の実施例1を示す。本実施例では、コンクリート材料を構成するセメントとして、普通ポルトランドセメントを用いた。また、水として、地下水、上澄水を用いた。また、骨材として、細骨材である砂(平均粒径5mm)、および粗骨材である砕石(粒径5〜20mm)を用いた。ここで、細骨材の塩化物量は、0.005%である。また、混和剤として、AE減水剤:ポゾリスNo.70(BASFポゾリス(株)、商品名)を用いた。そして、これら各材料の配合は次の表のとおりである。
【0045】
【表1】

【0046】
上記のように各材料が所定の比率で混合された本実施例のコンクリート材料は、呼び強度が27N/mm、スランプが15cmとなる。このようなコンクリート材料に対して、蓄光性蛍光体を約10%で混合した。蓄光性蛍光体としては、根本特殊化学工業株式会社製の商品名「N夜光 ルミノーバ G−300(化学組成SrAl:Eu,Dy)」を用いた。また、蓄光性蛍光体の平均粒径は約30μmとした。このようなコンクリート材料を、所定の形状を保持した状態でスチーム養生を行うことで、蓄光性を有するコンクリート部材を得た。
【実施例2】
【0047】
本発明の実施例2を示す。本実施例では、コンクリート材料を構成する材料としては、実施例1と同様の材料を用いた。そして、各材料の配合は次の表のとおりである。
【0048】
【表2】

【0049】
上記のように各材料が所定の比率で混合された本実施例のコンクリート材料は、呼び強度が21N/mm、スランプが18cmとなる。このようなコンクリート材料に対して、実施例1と同様の蓄光性蛍光体を約10%で混合した。このようなコンクリート材料を、所定の形状を保持した状態でスチーム養生を行うことで、蓄光性を有するコンクリート部材を得た。
【0050】
以上の各実施例のコンクリート材料によれば、適正なスランプが確保できるとともに、十分な強度および発光量を有するコンクリート部材を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の活用例としては、道路の縁石や建築資材や景観部材はもちろんのこと、非常の停電時等における避難経路、道路のガードレール、トンネルの壁面、プールの側面、コンクリートブロックとしての販売等、工夫次第で様々な用途が考えられる。また、本発明のコンクリート材料は、コンクリート部材を発光させるためのエネルギー消費が0であることから、環境・エコロジーへの貢献だけではなく、インフラの行き届かない過疎地帯や、途上国への生活基盤への応用が視野に含まれる。さらに、本発明のコンクリート材料によれば、建物自身等のコンクリート部分そのものが光を放つことになるため、都市計画やランドスケープデザインから土木インフラの構築等のあらゆる分野への波及の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート材料の構成を示す図。
【図2】粉末状の蓄光性蛍光体の含有量とコンクリート材料の物性との関係を示す図。
【符号の説明】
【0053】
1 セメント
2 水
3 骨材
4 混和剤
5 蓄光性蛍光体
10 コンクリート材料
11 コンクリート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、水と、骨材と、混和剤と、粉末状の蓄光性蛍光体とを含む材料が所定の比率で混合されることにより生成されるコンクリート材料。
【請求項2】
前記蓄光性蛍光体の含有量が、10〜40重量%程度である請求項1に記載のコンクリート材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−19001(P2010−19001A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180413(P2008−180413)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508209738)株式会社アルファ建築設計事務所 (1)
【Fターム(参考)】