コンクリート構造物の電気化学的脱塩方法
【課題】 脱塩対象のコンクリート構造物の状況に即した脱塩を可能ならしめ、経済的に最大の脱塩効果を得ることができる脱塩方法を提供する。
【解決手段】 コンクリート構造物の電気化学的脱塩を行なうにあたり、該コンクリート構造物より採取したコンクリートサンプル45を模擬脱塩することにより、あらかじめ通電条件と脱塩の効果との関係を解析し、この解析結果に基づいて設定した通電条件によってコンクリート構造物の脱塩を行うことを特徴とする。
【解決手段】 コンクリート構造物の電気化学的脱塩を行なうにあたり、該コンクリート構造物より採取したコンクリートサンプル45を模擬脱塩することにより、あらかじめ通電条件と脱塩の効果との関係を解析し、この解析結果に基づいて設定した通電条件によってコンクリート構造物の脱塩を行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材を内部に含むコンクリート構造物の電気化学的脱塩方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの鉄筋やPC鋼材などの鋼材周辺に多量の塩化物が存在すると、鋼材表面の不動態皮膜が破壊され、鋼材の腐食が始まり、コンクリート構造物の耐久性が低下する。このようにコンクリート内部に存在する塩化物イオンによって、コンクリート中の鋼材が錆び、耐久性が低下する現象はコンクリートの塩害と呼ばれる。
【0003】
電気化学的脱塩工法は、コンクリートの塩害の原因となる塩化物イオンを直流電流によりコンクリート外へ排出させる工法であり、塩化物イオンを排出し、鋼材の腐食環境を改善することにより、塩害を生じたコンクリート構造物の耐久性の低下を抑えることに極めて有効な工法である。
【0004】
例えば非特許文献1には電気化学的脱塩工法における設計・施工方法に関して記載されており、標準的な通電処理条件として1A/m2の電流密度で2ヶ月通電することが示されている。
【0005】
【非特許文献1】土木学会「電気化学的防食工法 設計施工指針(案)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の脱塩設計施工マニュアルには、設計にあたって構造物の調査を行なうことや、電流密度、通電処理期間、電気回路の条件を決定しなければならないことが示されているものの、具体的な設計および施工管理方法は示されていない。
【0007】
このため、これまでの脱塩工法の設計および施工管理は施工者の経験によるもので、必ずしも施工対象となる構造物の状況に即したものではなかった。また、具体的な設計および施工管理方法が確立されていないため、施工期間も暫定的なものとなり、工法の効果や経済性も十分評価されていなかった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決し、脱塩対象のコンクリート構造物の状況に即した脱塩を可能ならしめ、経済的に最大の脱塩効果が得られるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、対象構造物からコンクリートサンプルを採取し、模擬脱塩を行ない、対象構造物の脱塩に関する特性値を把握することにより、実施工時の塩化物の経時的な移動を予測でき、必要とされる積算電流量などの具体的な設計および施工管理が可能であるとの知見を得て本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、コンクリート構造物の電気化学的脱塩を行なうにあたり、該コンクリート構造物より採取したコンクリートサンプルを模擬脱塩することにより、あらかじめ通電条件と脱塩の効果との関係を解析し、この解析結果に基づいて設定した通電条件によって前記コンクリート構造物の脱塩を行うことを特徴とする。
また、前記解析は、前記コンクリートサンプルの塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を求めることによって行われることを特徴とする。
また、前記解析結果に基づく通電条件の設定は、少なくとも積算電流量を設定するものであることを特徴とする。
また、前記解析結果に基づいて設定した通電条件によって前記コンクリート構造物の脱塩を行い、この脱塩中に、前記コンクリート構造物から抜き出された塩化物イオンの計測を行い、この計測結果に基づいて通電条件の補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気化学的脱塩方法によれば、コンクリート構造物より採取したコンクリートサンプルを模擬脱塩し、例えば塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を求め、あらかじめ通電条件と脱塩の効果との関係を解析し、この解析結果に基づいて、コンクリート構造物の内部における通電時の塩化物濃度分布の経時変化の具体的な設計を行ない、あらかじめ実施工における通電条件(電流密度、通電期間、通電方法(通電にあたっての表面処理方法を包含する。))を設定し、この設定した通電条件によってコンクリート構造物の脱塩を行う。これにより、脱塩対象のコンクリート構造物の状況に即した脱塩が可能であり、経済的に最大の脱塩効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例を説明するが、本発明はかかる形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で適宜の変更を加えることができる。
【0013】
本発明の電気化学的脱塩方法では、実際の脱塩の前工程として、以下の工程を行う。
(1)コンクリートサンプルを採取する工程
(2)コンクリートサンプルを模擬脱塩することにより、対象コンクリート構造物の通電条件と脱塩の効果との関係を解析する工程
(3)模擬脱塩による解析結果から、コンクリート構造物の内部における通電時の塩化物濃度分布の経時変化の設計を行い、実施工時の通電条件を設定する工程
以下、上記の各工程について詳細に説明する。
【0014】
(1)コンクリートサンプルの採取
コンクリートサンプルは、脱塩対象のコンクリート構造物から採取する。通常、コンクリートのサンプルは該コンクリート構造物から切り取ったコンクリートコアを用いる。コンクリートコアの径には特に制約はないが、十分なデータを得るためには、直径は50mm以上であることが望ましい。なお、コンクリートサンプルは必ずしもコンクリートコアである必要はなく、他の方法で切り取ったものでもよい。サンプルの採取深さはコンクリート表面から該コンクリート構造物内部の鉄筋に相当する深さ以上であることが好ましい。
【0015】
(2)コンクリートサンプルの模擬脱塩
一つのコンクリートサンプルは、深さごとに適切な間隔で切断し、その切断されたサンプル毎に塩化物イオンの量を測定しておく。塩化物イオンの量は、通常、深さごとのサンプルを粉状に砕き、硝酸などで溶かした後、電位差滴定法などにより測定された塩化物濃度から、コンクリートの単位体積あたりの塩化物イオン量に換算した値を用いる。塩化物濃度の測定方法は硝酸で溶かされた溶液中の正確な塩化物濃度が測定できれば、必ずしも電位差滴定法による必要はなく、X線や他の分析手法によって測定が可能であれば、そのような方法によってもよい。
【0016】
次に、他のコンクリートサンプル(先のサンプルとは出来るだけ近接した部分から採取したものであるのが好ましい。)に対し、任意の期間で電気化学的脱塩(模擬脱塩)を施す。模擬脱塩の実施中は電圧と電流の関係から、予備データとしてコンクリートの抵抗値も求めておくとよい。模擬脱塩を行った後のコンクリートサンプルを分析し、脱塩後のコンクリートサンプルに残された塩化物イオン量を測定する。この測定方法は、前述した測定方法と同様でよい。
【0017】
コンクリートサンプルに対する模擬脱塩の結果から、対象コンクリート構造物の通電条件と脱塩の効果との関係を解析する。具体的には、塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を、対象コンクリート構造物の特性値として求める。なお、積算電流量とは流した電流と期間の積分値である。
【0018】
(3)実施工時における通電条件の設定
模擬脱塩による解析結果から、脱塩対象のコンクリート構造物の内部における通電時の塩化物濃度分布の経時変化の設計を行うことにより、実施工時の通電条件を設定する。具体的には、脱塩対象のコンクリート構造物の脱塩対象断面を、適切な方法で塩化物イオンの移動量評価が可能な電気回路としてモデル化する。そのモデルにコンクリートサンプルに対する模擬脱塩から求められた特性値を代入して解析を行い、検討断面のある特定の位置における塩化物イオン量がある値となる積算電流量を求めることにより、該コンクリート構造物の電気化学的脱塩に必要な電流と通電期間が求められる。
【0019】
脱塩対象のコンクリート構造物への実際の電気化学的脱塩は、以上の前工程を経て設定された通電条件にしたがって実施する。これによって、従来、コンクリート表面積あたりの電流密度1A/m2通電期間2ヶ月として一義的に定められていた電気化学的脱塩の施工を、該コンクリート構造物に適したものにすることができ、経済的に最大の脱塩効果を得ることができる。
【0020】
また、本発明においては、前記解析結果に基づいて設定した通電条件によってコンクリート構造物の脱塩を行い、この脱塩中に、コンクリート構造物から抜き出された塩化物イオンの時間的変化の計測を行い、この計測結果に基づいて通電条件の補正を行うことが好ましい。具体的には、コンクリート構造物から抜き出された塩化物イオンの計測結果が模擬脱塩の結果と異なる場合には、設計に用いた前記特性値を実際と合うように修正すれば、従来のように2ヶ月を待つことなく、施工の比較的初期の段階で施工計画の修正が可能となる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施例を説明する。
【0022】
(1)コンクリートサンプルの採取
脱塩対象のコンクリート構造物からφ50mm×100mm程度(対象構造物に悪影響のない範囲で大きい方が望ましい。)のコンクリートサンプル3本(供試体A,B,Cとする)を採取する。具体的には、図1に示すように、コアサンプルドリル12を用いて対象構造物11から採取する。
【0023】
供試体Aは脱塩前の塩化物イオン量の把握を目的とし、深さごとの塩化物イオン量を測定する。このため、供試体Aは深さ方向にコンクリートカッターなどで分割する。分割数は分析に必要な量より決定するが、1分割面の量で塩化物イオン量を測定可能な量以上として特に限定しない。本実施例では図2に示すように5分割し、深さごとのサンプルを粉状に砕き、硝酸で溶かしたのち、電位差滴定法より塩化物濃度を測定した。
【0024】
(2)コンクリートサンプルの模擬脱塩による通電条件と脱塩効果との関係の解析
供試体B,Cは模擬脱塩に使用する。模擬脱塩は相対する2面に電流を流し、コンクリートサンプル中の電流量、通電時間と塩化物イオン濃度の変化性状を把握するものである。1本しか採取できない場合は、サンプルを分割し複数のサンプルを作成する。図3に2分割する例を示す。
【0025】
模擬脱塩状況を図4(斜視図)及び図5(模試的断面図)に示す。模擬脱塩は陽極41と電解質溶液42を入れた容器43に、上面に陰極44を設置した供試体45を立て込み、陽極と陰極の間に電流を流すものである。模擬脱塩用の供試体は相対する2面間に電流が流れるように、他の面(側面)は塗装材料などを用いて絶縁処理を施す。また、供試体45と電解質溶液中の陽極41が接する事がないようにスペーサー46で保持する。供試体45の向きは対象構造物に即した向きとし、対象構造物のコンクリート表面側が陽極側、コンクリート内部側が陰極側となるように立て込む。
【0026】
本例では陽極材にチタンメッシュ、陰極材に鋼板、電解質溶液にはホウ酸リチュウム、スペーサーにはモルタルブロックを用いた。なお、これらの各材料は模擬脱塩の目的や実施工に応じたものを使用し、特に限定はしない。
【0027】
本例では供試体B,CをそれぞれB時間,C時間(C>B)通電し、通電終了後に、供試体B,Cを供試体Aと同じように5分割し、各層の塩化物イオン量を測定した。供試体B,Cの分割数は1分割面の量で各イオン量を測定可能な量以上として特に限定しないが、脱塩前に分析を行った供試体Aと合わせておくのが良い。
【0028】
本実施例の模擬脱塩前(供試体A)と模擬脱塩後(供試体B,C)の塩化物イオン量を図6に示す。図6においては、5分割した供試体Aの表面側からA1〜A5、同じく5分割した供試体B,Cの表面側からそれぞれB1〜B5およびC1〜C5として示している。
【0029】
図6の塩化物イオン量の変化と積算電流量から、単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量(kg/m3・A・h)と塩化物イオン量(kg/m3)の関係を求めた。その結果を図7に示す。
【0030】
図7において、YBNとYCN(Nは1〜5の整数)はそれぞれ下式によって求めた単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量である。
YBN=(AN−BN)/AB
YCN=(BN−CN)/AC
ここで、ABは供試体Bの積算電流量、ACは供試体Cの積算電流量から供試体Bの積算電流量を引いたものである。
【0031】
図7に示すように、本実施例では、単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量yと塩化物イオン量xは、y=0.0011・x2.988、の関係式で表すことができることが判った。なお、本実施例では模擬脱塩を供試体B,Cの2本で実施したが、模擬脱塩を行う供試体の数は単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量yと塩化物イオン量xの関係を所用の精度で求めることを目的としているため、数を限定するものではない。
【0032】
(3)実施工時における通電条件の設定
電気化学的脱塩の目的は、コンクリート中の鋼材腐食の原因となる塩化物イオンをコンクリートの外に排出させることであるから、現在コンクリート中に存在する塩化物イオンが、どの程度の電流密度や通電期間でどれだけ排出されるかを推定する必要がある。一方、上記の関係式が得られれば、対象構造物の内部における塩化物濃度分布の経時変化などの具体的な設計を行なうことができ、あらかじめ実施工における通電条件(電流密度や通電期間、通電方法)を設定して、脱塩量の推移に関する施工管理が可能である。その一具体例を以下に説明する。
【0033】
対象構造物は図8に示すように離散化したモデルとして取り扱う。モデル化する範囲および分割するブロック数は制限されない。コンクリートは電気抵抗体とみなすことができ、図9に示す電気回路としたモデルとして取り扱いが可能なことが知られている。
【0034】
モデル化した抵抗Rは、
【0035】
【数1】
で示され、コンクリート中の塩化イオン濃度により変化する。ここで、α、βは、模擬脱塩時に予備データとして測定したコンクリートの抵抗値に基づく定数(もしくはコンクリートの種類に応じて経験的に求めた定数)であり、本実施例ではα=550、β=1.0、を採用した。Sはモデル化した各ブロックの断面積(m2)、Lはモデル化した各ブロック間の距離(m)である。
【0036】
Δt時間にI(A)の電流を通電したコンクリートの塩化物イオンの減少量は、模擬脱塩から求めた図7の関係式により、
ΔCl-(x)=0.0011×[Cl-]2.988×I×Δt
で示される。ここで、ΔCl-(x)はΔt時間の間に減少する塩化物イオン量を示す。[Cl-]はΔt時間の通電を行う前の塩化物イオン量を示す。
【0037】
図9に示す鉄筋位置以外の任意の節点の塩化物イオン量は、質量保存の法則から、
Cl-(x)=[Cl-](x)+ΔCl-(y)−ΔCl-(x)
となる。ここで、
Cl-(x):着目する要素の塩化物イオン量
ΔCl-(y):隣接した要素から流入する塩化物イオン量
ΔCl-(x):隣接した要素に流出する塩化物イオン量
【0038】
脱塩は、通常鉄筋と外部電極間には一定の電流を流すことから、図9の回路に流れる電流の総和は、I13+I14+I15、となる。
【0039】
回路の抵抗は塩化物イオン量により変化するが、Δt時間の間は一定と仮定して、塩化物イオン量より各回路の抵抗を求め、回路の抵抗および電流の総和の関係から、各回路に流れる電流Inを算出する。各回路間のInが求まると、Δt時間の各要素間の塩化物イオンの流入・流出が求まり、前記式から脱塩に伴う塩化物イオンの挙動を計算することができる。
【0040】
具体的な計算方法としては、通電時間のΔtを1時間として、通電前の各要素の塩化物イオン量を初期値として、繰り返し計算する。計算ごとに塩化物イオン量は変化するため、回路の抵抗はその変化に応じた抵抗を用いる。
【0041】
本実施例における設計の妥当性を確認するために、脱塩前後に対象コンクリート構造物の塩化物イオン量を測定した。図10に脱塩前の塩化物イオン量(kg/m3)の分布を示す。また、図11に脱塩26日後(624A・h/m2)と脱塩79日後(1896A・h/m2)の設計値(括弧内の数値)と実際に測定した塩化物イオン量(kg/m3)を示す。また、図12に鉄筋位置での設計値と実測値の比較を示す。これらの結果から、実際の電気化学的脱塩において、検討断面のある特定の位置における塩化物イオン量がある値まで低下するのに必要な積算電流量を設定することが可能であることが分かる。
【0042】
なお、塩化物イオン量と塩化物イオン減少量の関係や、コンクリートの抵抗と塩化物イオン量の関係は直線的な関係ではないため、上記の計算の精度は、Δtの設定に影響される。Δtを短く設定すれば計算精度は向上するが、計算時間が長くなり、Δtを長く設定すると計算精度は低下するが、計算時間は短くなる。本実施例ではΔtを1時間で計算し、図11、12に示す程度の計算結果が得られた。
【0043】
以上説明したように、本実施例によれば、模擬脱塩によって塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を求め、この関係に基づいてコンクリート構造物の内部における通電時の塩化物濃度分布の経時変化の具体的な設計を行ない、あらかじめ実施工における通電条件(本実施例では積算電流量)を設定し、この設定した通電条件によってコンクリート構造物の脱塩を行う。これにより、脱塩対象のコンクリート構造物の状況に即した脱塩が可能であり、経済的に最大の脱塩効果を得ることができる。なお、実施工における通電条件の設定は、積算電流量の設定に限らず、例えば通電にあたっての表面処理方法などの通電方法も含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】コンクリートサンプルの採取方法を説明するための模式図である。
【図2】コンクリートサンプルの分割の様子を示す図である。
【図3】コンクリートサンプルの分割の様子を示す図である。
【図4】本発明の実施例における模擬脱塩状況を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の実施例における模擬脱塩状況を説明するための模試的断面図である。
【図6】本発明の実施例における模擬脱塩前後の塩化物イオン量を示す図である。
【図7】本発明の実施例における単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量と塩化物イオン量の関係を示す図である。
【図8】本発明の実施例における対象構造物の離散化したモデルを示す図である。
【図9】本発明の実施例における対象構造物をモデル化した電気回路図である。
【図10】本発明の実施例における対象構造物の脱塩前の塩化物イオン量の分布を示す図である。
【図11】本発明の実施例における対象構造物の脱塩後の塩化物イオン量の設計値と実測値を示す図である。
【図12】本発明の実施例における対象構造物の鉄筋位置での塩化物イオン量の設計値と実測値の比較を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
11:コンクリート構造物
12:コアサンプルドリル
41:陽極
42:電解質溶液
43:容器
44:陰極
45:供試体
46:スペーサー
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材を内部に含むコンクリート構造物の電気化学的脱塩方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの鉄筋やPC鋼材などの鋼材周辺に多量の塩化物が存在すると、鋼材表面の不動態皮膜が破壊され、鋼材の腐食が始まり、コンクリート構造物の耐久性が低下する。このようにコンクリート内部に存在する塩化物イオンによって、コンクリート中の鋼材が錆び、耐久性が低下する現象はコンクリートの塩害と呼ばれる。
【0003】
電気化学的脱塩工法は、コンクリートの塩害の原因となる塩化物イオンを直流電流によりコンクリート外へ排出させる工法であり、塩化物イオンを排出し、鋼材の腐食環境を改善することにより、塩害を生じたコンクリート構造物の耐久性の低下を抑えることに極めて有効な工法である。
【0004】
例えば非特許文献1には電気化学的脱塩工法における設計・施工方法に関して記載されており、標準的な通電処理条件として1A/m2の電流密度で2ヶ月通電することが示されている。
【0005】
【非特許文献1】土木学会「電気化学的防食工法 設計施工指針(案)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の脱塩設計施工マニュアルには、設計にあたって構造物の調査を行なうことや、電流密度、通電処理期間、電気回路の条件を決定しなければならないことが示されているものの、具体的な設計および施工管理方法は示されていない。
【0007】
このため、これまでの脱塩工法の設計および施工管理は施工者の経験によるもので、必ずしも施工対象となる構造物の状況に即したものではなかった。また、具体的な設計および施工管理方法が確立されていないため、施工期間も暫定的なものとなり、工法の効果や経済性も十分評価されていなかった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決し、脱塩対象のコンクリート構造物の状況に即した脱塩を可能ならしめ、経済的に最大の脱塩効果が得られるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、対象構造物からコンクリートサンプルを採取し、模擬脱塩を行ない、対象構造物の脱塩に関する特性値を把握することにより、実施工時の塩化物の経時的な移動を予測でき、必要とされる積算電流量などの具体的な設計および施工管理が可能であるとの知見を得て本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、コンクリート構造物の電気化学的脱塩を行なうにあたり、該コンクリート構造物より採取したコンクリートサンプルを模擬脱塩することにより、あらかじめ通電条件と脱塩の効果との関係を解析し、この解析結果に基づいて設定した通電条件によって前記コンクリート構造物の脱塩を行うことを特徴とする。
また、前記解析は、前記コンクリートサンプルの塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を求めることによって行われることを特徴とする。
また、前記解析結果に基づく通電条件の設定は、少なくとも積算電流量を設定するものであることを特徴とする。
また、前記解析結果に基づいて設定した通電条件によって前記コンクリート構造物の脱塩を行い、この脱塩中に、前記コンクリート構造物から抜き出された塩化物イオンの計測を行い、この計測結果に基づいて通電条件の補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気化学的脱塩方法によれば、コンクリート構造物より採取したコンクリートサンプルを模擬脱塩し、例えば塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を求め、あらかじめ通電条件と脱塩の効果との関係を解析し、この解析結果に基づいて、コンクリート構造物の内部における通電時の塩化物濃度分布の経時変化の具体的な設計を行ない、あらかじめ実施工における通電条件(電流密度、通電期間、通電方法(通電にあたっての表面処理方法を包含する。))を設定し、この設定した通電条件によってコンクリート構造物の脱塩を行う。これにより、脱塩対象のコンクリート構造物の状況に即した脱塩が可能であり、経済的に最大の脱塩効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例を説明するが、本発明はかかる形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で適宜の変更を加えることができる。
【0013】
本発明の電気化学的脱塩方法では、実際の脱塩の前工程として、以下の工程を行う。
(1)コンクリートサンプルを採取する工程
(2)コンクリートサンプルを模擬脱塩することにより、対象コンクリート構造物の通電条件と脱塩の効果との関係を解析する工程
(3)模擬脱塩による解析結果から、コンクリート構造物の内部における通電時の塩化物濃度分布の経時変化の設計を行い、実施工時の通電条件を設定する工程
以下、上記の各工程について詳細に説明する。
【0014】
(1)コンクリートサンプルの採取
コンクリートサンプルは、脱塩対象のコンクリート構造物から採取する。通常、コンクリートのサンプルは該コンクリート構造物から切り取ったコンクリートコアを用いる。コンクリートコアの径には特に制約はないが、十分なデータを得るためには、直径は50mm以上であることが望ましい。なお、コンクリートサンプルは必ずしもコンクリートコアである必要はなく、他の方法で切り取ったものでもよい。サンプルの採取深さはコンクリート表面から該コンクリート構造物内部の鉄筋に相当する深さ以上であることが好ましい。
【0015】
(2)コンクリートサンプルの模擬脱塩
一つのコンクリートサンプルは、深さごとに適切な間隔で切断し、その切断されたサンプル毎に塩化物イオンの量を測定しておく。塩化物イオンの量は、通常、深さごとのサンプルを粉状に砕き、硝酸などで溶かした後、電位差滴定法などにより測定された塩化物濃度から、コンクリートの単位体積あたりの塩化物イオン量に換算した値を用いる。塩化物濃度の測定方法は硝酸で溶かされた溶液中の正確な塩化物濃度が測定できれば、必ずしも電位差滴定法による必要はなく、X線や他の分析手法によって測定が可能であれば、そのような方法によってもよい。
【0016】
次に、他のコンクリートサンプル(先のサンプルとは出来るだけ近接した部分から採取したものであるのが好ましい。)に対し、任意の期間で電気化学的脱塩(模擬脱塩)を施す。模擬脱塩の実施中は電圧と電流の関係から、予備データとしてコンクリートの抵抗値も求めておくとよい。模擬脱塩を行った後のコンクリートサンプルを分析し、脱塩後のコンクリートサンプルに残された塩化物イオン量を測定する。この測定方法は、前述した測定方法と同様でよい。
【0017】
コンクリートサンプルに対する模擬脱塩の結果から、対象コンクリート構造物の通電条件と脱塩の効果との関係を解析する。具体的には、塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を、対象コンクリート構造物の特性値として求める。なお、積算電流量とは流した電流と期間の積分値である。
【0018】
(3)実施工時における通電条件の設定
模擬脱塩による解析結果から、脱塩対象のコンクリート構造物の内部における通電時の塩化物濃度分布の経時変化の設計を行うことにより、実施工時の通電条件を設定する。具体的には、脱塩対象のコンクリート構造物の脱塩対象断面を、適切な方法で塩化物イオンの移動量評価が可能な電気回路としてモデル化する。そのモデルにコンクリートサンプルに対する模擬脱塩から求められた特性値を代入して解析を行い、検討断面のある特定の位置における塩化物イオン量がある値となる積算電流量を求めることにより、該コンクリート構造物の電気化学的脱塩に必要な電流と通電期間が求められる。
【0019】
脱塩対象のコンクリート構造物への実際の電気化学的脱塩は、以上の前工程を経て設定された通電条件にしたがって実施する。これによって、従来、コンクリート表面積あたりの電流密度1A/m2通電期間2ヶ月として一義的に定められていた電気化学的脱塩の施工を、該コンクリート構造物に適したものにすることができ、経済的に最大の脱塩効果を得ることができる。
【0020】
また、本発明においては、前記解析結果に基づいて設定した通電条件によってコンクリート構造物の脱塩を行い、この脱塩中に、コンクリート構造物から抜き出された塩化物イオンの時間的変化の計測を行い、この計測結果に基づいて通電条件の補正を行うことが好ましい。具体的には、コンクリート構造物から抜き出された塩化物イオンの計測結果が模擬脱塩の結果と異なる場合には、設計に用いた前記特性値を実際と合うように修正すれば、従来のように2ヶ月を待つことなく、施工の比較的初期の段階で施工計画の修正が可能となる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施例を説明する。
【0022】
(1)コンクリートサンプルの採取
脱塩対象のコンクリート構造物からφ50mm×100mm程度(対象構造物に悪影響のない範囲で大きい方が望ましい。)のコンクリートサンプル3本(供試体A,B,Cとする)を採取する。具体的には、図1に示すように、コアサンプルドリル12を用いて対象構造物11から採取する。
【0023】
供試体Aは脱塩前の塩化物イオン量の把握を目的とし、深さごとの塩化物イオン量を測定する。このため、供試体Aは深さ方向にコンクリートカッターなどで分割する。分割数は分析に必要な量より決定するが、1分割面の量で塩化物イオン量を測定可能な量以上として特に限定しない。本実施例では図2に示すように5分割し、深さごとのサンプルを粉状に砕き、硝酸で溶かしたのち、電位差滴定法より塩化物濃度を測定した。
【0024】
(2)コンクリートサンプルの模擬脱塩による通電条件と脱塩効果との関係の解析
供試体B,Cは模擬脱塩に使用する。模擬脱塩は相対する2面に電流を流し、コンクリートサンプル中の電流量、通電時間と塩化物イオン濃度の変化性状を把握するものである。1本しか採取できない場合は、サンプルを分割し複数のサンプルを作成する。図3に2分割する例を示す。
【0025】
模擬脱塩状況を図4(斜視図)及び図5(模試的断面図)に示す。模擬脱塩は陽極41と電解質溶液42を入れた容器43に、上面に陰極44を設置した供試体45を立て込み、陽極と陰極の間に電流を流すものである。模擬脱塩用の供試体は相対する2面間に電流が流れるように、他の面(側面)は塗装材料などを用いて絶縁処理を施す。また、供試体45と電解質溶液中の陽極41が接する事がないようにスペーサー46で保持する。供試体45の向きは対象構造物に即した向きとし、対象構造物のコンクリート表面側が陽極側、コンクリート内部側が陰極側となるように立て込む。
【0026】
本例では陽極材にチタンメッシュ、陰極材に鋼板、電解質溶液にはホウ酸リチュウム、スペーサーにはモルタルブロックを用いた。なお、これらの各材料は模擬脱塩の目的や実施工に応じたものを使用し、特に限定はしない。
【0027】
本例では供試体B,CをそれぞれB時間,C時間(C>B)通電し、通電終了後に、供試体B,Cを供試体Aと同じように5分割し、各層の塩化物イオン量を測定した。供試体B,Cの分割数は1分割面の量で各イオン量を測定可能な量以上として特に限定しないが、脱塩前に分析を行った供試体Aと合わせておくのが良い。
【0028】
本実施例の模擬脱塩前(供試体A)と模擬脱塩後(供試体B,C)の塩化物イオン量を図6に示す。図6においては、5分割した供試体Aの表面側からA1〜A5、同じく5分割した供試体B,Cの表面側からそれぞれB1〜B5およびC1〜C5として示している。
【0029】
図6の塩化物イオン量の変化と積算電流量から、単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量(kg/m3・A・h)と塩化物イオン量(kg/m3)の関係を求めた。その結果を図7に示す。
【0030】
図7において、YBNとYCN(Nは1〜5の整数)はそれぞれ下式によって求めた単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量である。
YBN=(AN−BN)/AB
YCN=(BN−CN)/AC
ここで、ABは供試体Bの積算電流量、ACは供試体Cの積算電流量から供試体Bの積算電流量を引いたものである。
【0031】
図7に示すように、本実施例では、単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量yと塩化物イオン量xは、y=0.0011・x2.988、の関係式で表すことができることが判った。なお、本実施例では模擬脱塩を供試体B,Cの2本で実施したが、模擬脱塩を行う供試体の数は単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量yと塩化物イオン量xの関係を所用の精度で求めることを目的としているため、数を限定するものではない。
【0032】
(3)実施工時における通電条件の設定
電気化学的脱塩の目的は、コンクリート中の鋼材腐食の原因となる塩化物イオンをコンクリートの外に排出させることであるから、現在コンクリート中に存在する塩化物イオンが、どの程度の電流密度や通電期間でどれだけ排出されるかを推定する必要がある。一方、上記の関係式が得られれば、対象構造物の内部における塩化物濃度分布の経時変化などの具体的な設計を行なうことができ、あらかじめ実施工における通電条件(電流密度や通電期間、通電方法)を設定して、脱塩量の推移に関する施工管理が可能である。その一具体例を以下に説明する。
【0033】
対象構造物は図8に示すように離散化したモデルとして取り扱う。モデル化する範囲および分割するブロック数は制限されない。コンクリートは電気抵抗体とみなすことができ、図9に示す電気回路としたモデルとして取り扱いが可能なことが知られている。
【0034】
モデル化した抵抗Rは、
【0035】
【数1】
で示され、コンクリート中の塩化イオン濃度により変化する。ここで、α、βは、模擬脱塩時に予備データとして測定したコンクリートの抵抗値に基づく定数(もしくはコンクリートの種類に応じて経験的に求めた定数)であり、本実施例ではα=550、β=1.0、を採用した。Sはモデル化した各ブロックの断面積(m2)、Lはモデル化した各ブロック間の距離(m)である。
【0036】
Δt時間にI(A)の電流を通電したコンクリートの塩化物イオンの減少量は、模擬脱塩から求めた図7の関係式により、
ΔCl-(x)=0.0011×[Cl-]2.988×I×Δt
で示される。ここで、ΔCl-(x)はΔt時間の間に減少する塩化物イオン量を示す。[Cl-]はΔt時間の通電を行う前の塩化物イオン量を示す。
【0037】
図9に示す鉄筋位置以外の任意の節点の塩化物イオン量は、質量保存の法則から、
Cl-(x)=[Cl-](x)+ΔCl-(y)−ΔCl-(x)
となる。ここで、
Cl-(x):着目する要素の塩化物イオン量
ΔCl-(y):隣接した要素から流入する塩化物イオン量
ΔCl-(x):隣接した要素に流出する塩化物イオン量
【0038】
脱塩は、通常鉄筋と外部電極間には一定の電流を流すことから、図9の回路に流れる電流の総和は、I13+I14+I15、となる。
【0039】
回路の抵抗は塩化物イオン量により変化するが、Δt時間の間は一定と仮定して、塩化物イオン量より各回路の抵抗を求め、回路の抵抗および電流の総和の関係から、各回路に流れる電流Inを算出する。各回路間のInが求まると、Δt時間の各要素間の塩化物イオンの流入・流出が求まり、前記式から脱塩に伴う塩化物イオンの挙動を計算することができる。
【0040】
具体的な計算方法としては、通電時間のΔtを1時間として、通電前の各要素の塩化物イオン量を初期値として、繰り返し計算する。計算ごとに塩化物イオン量は変化するため、回路の抵抗はその変化に応じた抵抗を用いる。
【0041】
本実施例における設計の妥当性を確認するために、脱塩前後に対象コンクリート構造物の塩化物イオン量を測定した。図10に脱塩前の塩化物イオン量(kg/m3)の分布を示す。また、図11に脱塩26日後(624A・h/m2)と脱塩79日後(1896A・h/m2)の設計値(括弧内の数値)と実際に測定した塩化物イオン量(kg/m3)を示す。また、図12に鉄筋位置での設計値と実測値の比較を示す。これらの結果から、実際の電気化学的脱塩において、検討断面のある特定の位置における塩化物イオン量がある値まで低下するのに必要な積算電流量を設定することが可能であることが分かる。
【0042】
なお、塩化物イオン量と塩化物イオン減少量の関係や、コンクリートの抵抗と塩化物イオン量の関係は直線的な関係ではないため、上記の計算の精度は、Δtの設定に影響される。Δtを短く設定すれば計算精度は向上するが、計算時間が長くなり、Δtを長く設定すると計算精度は低下するが、計算時間は短くなる。本実施例ではΔtを1時間で計算し、図11、12に示す程度の計算結果が得られた。
【0043】
以上説明したように、本実施例によれば、模擬脱塩によって塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を求め、この関係に基づいてコンクリート構造物の内部における通電時の塩化物濃度分布の経時変化の具体的な設計を行ない、あらかじめ実施工における通電条件(本実施例では積算電流量)を設定し、この設定した通電条件によってコンクリート構造物の脱塩を行う。これにより、脱塩対象のコンクリート構造物の状況に即した脱塩が可能であり、経済的に最大の脱塩効果を得ることができる。なお、実施工における通電条件の設定は、積算電流量の設定に限らず、例えば通電にあたっての表面処理方法などの通電方法も含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】コンクリートサンプルの採取方法を説明するための模式図である。
【図2】コンクリートサンプルの分割の様子を示す図である。
【図3】コンクリートサンプルの分割の様子を示す図である。
【図4】本発明の実施例における模擬脱塩状況を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の実施例における模擬脱塩状況を説明するための模試的断面図である。
【図6】本発明の実施例における模擬脱塩前後の塩化物イオン量を示す図である。
【図7】本発明の実施例における単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量と塩化物イオン量の関係を示す図である。
【図8】本発明の実施例における対象構造物の離散化したモデルを示す図である。
【図9】本発明の実施例における対象構造物をモデル化した電気回路図である。
【図10】本発明の実施例における対象構造物の脱塩前の塩化物イオン量の分布を示す図である。
【図11】本発明の実施例における対象構造物の脱塩後の塩化物イオン量の設計値と実測値を示す図である。
【図12】本発明の実施例における対象構造物の鉄筋位置での塩化物イオン量の設計値と実測値の比較を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
11:コンクリート構造物
12:コアサンプルドリル
41:陽極
42:電解質溶液
43:容器
44:陰極
45:供試体
46:スペーサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の電気化学的脱塩を行なうにあたり、該コンクリート構造物より採取したコンクリートサンプルを模擬脱塩することにより、あらかじめ通電条件と脱塩の効果との関係を解析し、この解析結果に基づいて設定した通電条件によって前記コンクリート構造物の脱塩を行うことを特徴とする電気化学的脱塩工法。
【請求項2】
前記解析は、前記コンクリートサンプルの塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を求めることによって行われることを特徴とする請求項1に記載の電気化学的脱塩工法。
【請求項3】
前記解析結果に基づく通電条件の設定は、少なくとも積算電流量を設定するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学的脱塩工法。
【請求項4】
前記解析結果に基づいて設定した通電条件によって前記コンクリート構造物の脱塩を行い、この脱塩中に、前記コンクリート構造物から抜き出された塩化物イオンの計測を行い、この計測結果に基づいて通電条件の補正を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学的脱塩工法。
【請求項1】
コンクリート構造物の電気化学的脱塩を行なうにあたり、該コンクリート構造物より採取したコンクリートサンプルを模擬脱塩することにより、あらかじめ通電条件と脱塩の効果との関係を解析し、この解析結果に基づいて設定した通電条件によって前記コンクリート構造物の脱塩を行うことを特徴とする電気化学的脱塩工法。
【請求項2】
前記解析は、前記コンクリートサンプルの塩化物イオン濃度と単位積算電流量あたりの塩化物イオン減少量との関係を求めることによって行われることを特徴とする請求項1に記載の電気化学的脱塩工法。
【請求項3】
前記解析結果に基づく通電条件の設定は、少なくとも積算電流量を設定するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学的脱塩工法。
【請求項4】
前記解析結果に基づいて設定した通電条件によって前記コンクリート構造物の脱塩を行い、この脱塩中に、前記コンクリート構造物から抜き出された塩化物イオンの計測を行い、この計測結果に基づいて通電条件の補正を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学的脱塩工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−327910(P2006−327910A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157043(P2005−157043)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000237134)株式会社富士ピー・エス (20)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000237134)株式会社富士ピー・エス (20)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】
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