説明

コンクリート製品の製造方法

【課題】 型枠に打ち込み後、短時間でコンクリートの強度を高め、早期に脱型を可能とするコンクリート製品の製造方法を提供する。
【解決手段】 水とセメントを先に練り合わせてセメントペーストを作って静置し、静置後の先練りしたセメントペーストに減水剤を加えて流動性を復元させ、前記セメントペーストを使ってコンクリートを練り混ぜてから硬化促進剤を加え、型枠に打ち込むことで、型枠に打ち込み後のコンクリートの強度を短時間で高め、常圧蒸気養生を行った後に脱型を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短時間に脱型可能なコンクリート製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にコンクリート製品の脱型強度としては、製品の大きさにもよるが5〜10N/mm2程度必要とされる。従来、コンクリート製品を短時間で脱型しようとした場合には、蒸気養生を利用し、以下の養生条件1で行われている。
【0003】
[養生条件1]
養生条件1では、型枠にコンクリートを充填したあと、15℃で1時間の前置き養生を行い、その後、水蒸気を送入し、20℃/時間の昇温速度で75℃まで昇温し、この温度を2〜3時間保持する。その後、水蒸気の供給を停止して自然冷却させてから、脱型してコンクリート製品とする。
【0004】
例えば、一般的なコンクリート製造における各種のコンクリート材料の配合割合によりコンクリート製品を短時間で脱型しようとした場合には、表1の参考例1に示すように普通ポルトランドセメント(以下の説明目では普通セメントと称す)365kg/m3、砕砂781kg/m3、六号砕石633kg/m3、五号砕石422kg/m3、水158.81kg/m3、混和剤2.19kgを練混ぜ、さらに高性能減水剤を0.6%を添加して練混ぜる。そして、型枠に練混ぜたコンクリートを充填したあとは、上記した養生条件1で行われている。
【0005】
しかしながら、この従来の方法では依然としてコンクリートの打ち込みから脱型までの時間が長くかかり、同じ型枠での製造サイクルは1日に1〜2サイクルが限度であった。
【0006】
また、特に早強性が求められる場合には早期に強度発現するセメントを使用したり、凝結硬化促進剤を添加して凝結速度を速める等の方法が採られている。但し、この方法も早く強度をだそうとして凝結硬化促進剤の添加量を増やすと材料費が高くつくという懸念がある。
【0007】
また、スランプ0cm以下の一次コンクリートを練り混ぜた後に、この一次コンクリートを適当量計り取り水、減水剤、凝結促進剤(材)を添加して二次コンクリートを作成して型枠に打ち込みをする方法がある。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平11−90918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
蒸気養生を利用する方法では同じ型枠での製造サイクルが1日に1〜2サイクルの為、どうしても型枠の個数を多く必要とする為、コスト引き下げの為に型枠の回転効率を上げて生産性を改善することが強く求められていた。また、特許文献1に記載されている方法では一次コンクリートの練り置きの為には多くのスペースを確保しなければならず、例え、ベルトコンベア上に放置したとしても、設備的に大がかりになる事が予想される。尚、一次コンクリートはスランプ0cmコンクリートであるので、パサパサの状態であり、練り置き時に進行するセメント粒子からの各種イオンの溶出が進行し難い。また、二次コンクリートを練る際に、再度一次コンクリートを計量しなくてはならず、手間がかかる等の問題点がある。
【0009】
本発明は、型枠に打ち込み後、短時間でコンクリートの強度を高め、早期に脱型を可能とするコンクリート製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、水とセメントを先に練り合わせてセメントペーストを作って静置し、静置後の先練りしたセメントペーストに減水剤を加えて流動性を復元させ、前記セメントペーストを使ってコンクリートを練り混ぜてから硬化促進剤を加え、型枠に打ち込むことで、型枠に打ち込み後のコンクリートの強度を短時間で高め、常圧蒸気養生を行った後に脱型を可能としたことを特徴とするコンクリート製品の製造方法である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、水・セメント比が27〜32%のセメントペーストを先練りしておく工程、先練りしたセメントペーストを1〜2時間静置する工程、静置したセメントペーストに減水剤を加え流動性を復元させる工程、流動性を復元したセメントペーストに骨材と二次水を加え、コンクリートを練り混ぜる工程、練り混ぜたコンクリートに硬化促進剤を加えコンクリートを練り混ぜる工程、コンクリートを型枠に打ち込みする工程、型枠を65〜80度の水蒸気にて常圧蒸気養生を行った後に脱型する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリート製品の製造方法によれば、先練り時はセメントペーストのみであるので、練り置きのスペースをあまり必要とせず、また練り混ぜ時間を短縮できる事や計量の二度手間を防げる等の利点を有し、セメントペーストの先練りの効果と硬化促進剤の併用により型枠に打ち込み後、コンクリートの強度を短時間で高め、早期に脱型を可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係るコンクリート製品の製造工程のチャート図である。図1において、第1工程S1で先ず、一定量のセメント、水を計量しセメントペーストを練り混ぜる。(以下、この水とセメントペーストを練り混ぜることをペースト先練りという)。なお、第1工程S1で使用するセメントペーストの水WとセメントCの比は、27〜32%の範囲がよいが、望ましくはW/C=29%程度が適当である。
【0014】
第2工程S2では、セメントペーストを容器に排出後、1〜2時間の間、静置する。この場合、セメントペーストは撹絆しつづけるよりも、静置していた方が強度的に良好である。
【0015】
第3工程S3では、セメントペーストを別のミキサーに移し、減水剤を加え、流動性を復元する。第3工程S3で使用する減水剤はナフタレン系、メラミン系の高性能減水剤が適当である。高性能減水剤はナフタレンスルホン酸塩やメラミンスルホン酸塩などを主成分としており電気的反発力が大きい為、高い減水性が得られる。その結巣、単位水量を大幅に減少する事ができ、高強度なコンクリートを製造する事ができる。
【0016】
第4工程S4では、砂、砕石(砂利)、二次水を加えてコンクリートを練り混ぜる。
【0017】
第5工程S5では、硬化促進剤を加え練り混ぜる。この時、所定の流動性と異なる場合は、減水剤により調整する。
【0018】
第6工程S6では、コンクリートを型枠に打ち込む。
【0019】
第7工程S7では、打ち込み後、直ちに蒸気養生を開始する。蒸気養生の温度は65℃〜80℃が適当である。(後述する実験では蒸気養生の温度は75℃で行った。)
【0020】
第8工程S8では、65℃〜80℃での蒸気養生において養生条件別に定めた養生時間経過後、型枠を養生槽より取出して脱型する。以上が、本発明に係るコンクリート製品の製造工程である。
【0021】
ここで、本発明におけるセメントペーストの先練りについて説明しておく。セメントが水と接すると、セメントの主要な化合物のうち、ますアルミネート相(C3A)が水和反応しエトリンガイトを形成する。この反応が進むとセメントペーストは徐々にこわばっていく過程である凝結とよばれる状態に突入する。凝結が終わると、強度的にさらに強固な硬化と呼ばれる過程に進む。凝結・硬化の過程でセメントの強度発現の主要な担い手であるエーライト(C3S)の水和反応が活発化し、水酸化カルシウムやけい酸カルシウム水和物を生成する。
【0022】
このように、セメントペーストの先練りは、型枠に打ち込む前にエーライト(C3S)が反応活性となるまえの誘導期間である凝結の過程を進行させる。これにより、型枠に打ち込み後、速やかに強度発現の加速期に移行する事によりコンクリートの硬化を速め、製品の脱型時間の短縮を計ることができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を異なる養生条件1〜3で実験した実施例1〜4で詳細に説明するが、これらに限られたものではない。表1〜3に示す実験では、異なる養生条件1〜3で圧縮強度用試供体となる直径15cm、高さ30cmの円柱形のコンクリート製品を製造した。養生条件1と2は通常のコンクリート製品の養生方法に従ったものであるが、最高温度でのキープ(温度維持)時間が、それぞれ異なる。養生条件3は早期の脱型を目的とした条件である。養生条件2と3の詳細については後述する。
【0024】
表1には前記の養生条件1で実験で製造したコンクリート製品における各種のコンクリート材料の配合割合を示し、表2には養生条件2で実験で製造したコンクリート製品における各種のコンクリート材料の配合割合を示し、表3には養生条件3で実験で製造したコンクリート製品における各種のコンクリート材料の配合割合を示した。なお、各実験は小型のミキサーで30リットル分のコンクリートを練って行った。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
表1〜3において、脱型時に必要なコンクリートの強度としては圧縮強度で表示した。脱型強度は、脱型可能になるコンクリート硬化体の強度であり、圧縮強度に換算して10N/mm2あれば問題なく脱型できる(小型の製品、或いは製品形状によっては5N/mm2程度でも脱型できる)。一般的な構造物のコンクリートの強度の基準は28日(四週)を基準にしているが、表1においては、実施例、参考例における圧縮強度は全て養生終了直後に行ったものであり、脱型出来るか否かの判断の基準として示した。また、表1〜3に示した砕砂、六号砕石、五号砕石等の骨材は、表面水が無く、骨材粒の内部の空隙が全て水で満たされている表乾状態のものを基準として示した。また、表1〜3の二次水は、高性能減水剤、凝結硬化促進剤を含めないで示した。
【0029】
また、表1〜3において、練り上がりの目標スランプを8土2,5cmとして、ペースト先練りを行った実施例とペースト先練りを行わない比較例とを比較した。ペースト先練りを行った実施例とペースト先練りを行わない比較例で、配合を同じにした場合、ペースト先練りを行った実施例の方が練り上がりが硬くなり、スランプは小さくなる。従って、目標スランプを合わせようとすると単位水量(W)か、高性能減水剤量が変わる。また、単位水量が変わった場合は、1m3当りの容積は各配合で等しくしなくてはならないので、単位水量が変わった容積分、その他の砂、砕石等の容積を変えてある。
【0030】
また、表1〜3において、参考例1は一般的なコンクリート製造における各種のコンクリート材料の配合割合を示す。実施例1〜4は、先練りしてコンクリート製品を脱型する製造方法による各種のコンクリート材料の配合割合を示す。なお、実施例1,2,4では2時間の練り混ぜ時間でペースト先練りを行い、実施例3では1.5時間の練り混ぜ時間でペースト先練りを行った。また、比較例1〜9は、従来の先練りをしないでコンクリート製品を脱型する製造方法による各種のコンクリート材料の配合割合を示す。
【0031】
次に、養生条件1で実験した実施例1、比較例1〜5について詳細に説明する。
【0032】
実施例1は、表1に示す配合割合でセメントペーストの先練りが行なわれたものである。この先練りでは、普通セメント450kg/m3と、水WとセメントCの比が、W/C=29%であるように先練水130.5kg/m3を計量しセメントペーストを練り混ぜるようにした。この場合、以下の砂、砕石、二次水を加えてコンクリートを練り混ぜる工程で、使用する砂が濡れている場合には、先練水130.5kg/m3に砂に含まれている水を加えた上で、総水量が155.95kg/m3となるように二次水を加えるようにする。
【0033】
また、表面に水が付着していない砂を使用した場合に、先練水130.5kg/m3に対して、総水量が155.95となるように二次水を25.45kg/m3加えるようにしているが、コンクリートを練り混ぜる工程で使用する砂の表面に水が付着して砂が濡れている場合には、濡れている砂に含まれる骨材の表面水量を以下の式
骨材の表面水量=(表面水率×表乾質量)/100
により計算して、砂に含まれる水量(骨材の表面水量)を二次水の25.45kg/m3から差し引かなければならないので、二次水が少なくなる。
【0034】
コンクリートを練り混ぜる工程で、加える二次水があまりにも少ないとコンクリートが硬く練り上がってしまうので、コンクリートを練り混ぜる工程で、使用する砂が濡れている場合には、その前工程の先練り工程で、水WとセメントCの比が、W/C=27%となるように先練水を少なめに計量して、セメントペーストを練り混ぜるようにしておき、その後のコンクリートを練り混ぜる工程で、使用する砂が濡れていても、二次水を十分に加えられるようにすると良い。
【0035】
また、コンクリートを練り混ぜる工程で、使用する砂が乾いている場合には、先練りしたセメントペーストに砂を加えるとセメントペーストの水分を砂が吸い取ってしまうため、セメントペーストの流動性が悪くなる。このような場合には、その前工程の先練り工程で、水WとセメントCの比が、例えば、W/C=32%となるように先練水を多めに計量して、セメントペーストを軟らかめに練り混ぜるようにしておき、その後のコンクリートを練り混ぜる工程で、セメントペーストに乾いている砂を加えてもセメントペーストの流動性が悪くならないようにして、二次水を加えられるようにすると良い。
【0036】
そして、セメントペーストを容器に排出後、1〜2時間の間、静置する。その後、先練りしたセメントペーストを別のミキサーに移し、減水剤を2.0%(セメント比)加え、流動性を復元する。そして、砕砂740kg/m3、六号砕石601kg/m3、五号砕石401kg/m3を練混ぜ、二次水25.45kg/m3を加えてコンクリートを練り混ぜる。さらに、硬化促進剤2.0%(セメント比)を加え練り混ぜる。そしてコンクリートを型枠に打ち込む。そして型枠に練混ぜたコンクリートを充填したあとは、前記の養生条件1でコンクリート製品の製造が行われている。
【0037】
表1の配合による各種コンクリートを使用して養生条件1によりコンクリート製品を製造した。比較例5は実施例1と配合が全く同じ条件で、その他の条件は実施例1と目標スランプを合わせた条件である。実験結果を表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
表4に示すように、通常のコンクリート製品の配合例である参考例1では、総養生時間6時間で圧縮強度が約7.43N/mm2、7時間で圧縮強度が8.96N/mm2程度である。
【0040】
実施例1では、スランプが10.0cm、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度21.11N/mm2、75℃で3時間の養生終了直後の圧縮強度23.28N/mm2であった。
【0041】
また、比較例1は実施例1と単位セメント量、細骨材率(S/a)を同じにした配合であるが、硬化促進剤、高性能減水剤は使用しておらず、水のみでスランプを合わせた条件である。スランプが7.5cm、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度10.78N/mm2、75℃で3時間の養生終了直後の圧縮強度12.49N/mm2であった。参考例1よりは強度が高くなっており、W/Cが参考例1より低い為であると思われる。実施例1との比較では強度は劣っている。
【0042】
また、比較例2は実施例1と単位セメント量、細骨材率(s/a)、単位水量(W)を同じにした配合であるが、硬化促進剤は使用しておらず、スランプを合わせた条件である。スランプが7.0cm、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度14.42N/mm2、75℃で3時間の養生終了直後の圧縮強度16.56N/mm2であった。比較例1よりは強度が高くなっており、W/Cが比較例1より低い為であると思われる。実施例1との比較では強度は劣っている。
【0043】
また、比較例3は実施例1と単位セメント量、細骨材率(s/a)、単位水量(W)、硬化促進剤量を同じにした配合であり、高性能減水剤量を減らしてスランプを合わせた条件ある。スランプが6.0cm、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度16.73N/mm2、75℃で3時間の養生終了直後の圧縮強度18.85N/mm2であった。比較例2より強度が高くなっており、硬化促進剤の効果が現われていると思われる。実施例1との比較では強度は劣っている。
【0044】
また、比較例4は実施例1と単位セメント量、細骨材率(s/a)、硬化促進剤量、高性能減水剤量を同じにした配合であり、単位水量(W)を減らしてスランプを合わせた条件である。スランプが11.0cm、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度22.78N/mm2、75℃で3時間の養生終了直後の圧縮強度24.80N/mm2であった。比較例3より強度が高くなっており、W/Cが比較例3より低い為であると思われる。実施例1との比較では同程度の強度水準である。
【0045】
また、比較例5は実施例1と全く同じ配合であり、先練りしていない為に、スランプが大きくなっている。スランプが24.0cm、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度16.78N/mm2、75℃で3時間の養生終了直後の圧縮強度20.07N/mm2であった。比較例3と同程度の強度であり、実施例1との比較では強度は劣っている。
【0046】
次に、養生条件2で実験した実施例2、比較例6について詳細に説明する。
【0047】
実施例2は、表2に示すように実施例1と同じ配合割合でセメントペーストの先練り、コンクリートの練り混ぜが行われており、型枠に練混ぜたコンクリートを充填するまでの工程は、実施例1と同じであるのでその説明は省略する。実施例2では型枠に練混ぜたコンクリートを充填したあとは、以下の養生条件2でコンクリート製品の製造が行われる。
【0048】
[養生条件2]
養生条件2では、型枠にコンクリートを充填したあと、15℃で1時間の前置き養生を行い、その後、水蒸気を送入し、20℃/時間の昇温速度で75℃まで昇温したら、直ちに水蒸気の供給を停止して脱型して自然冷却させてコンクリート製品とするか、または、75℃の温度を1時間保持し、その後直ちに、水蒸気の供給を停止して脱型して自然冷却させてコンクリート製品とする。
【0049】
表2の配合によるコンクリートを使用して養生条件2によりコンクリート製品を製造した実験結果を表5に示す。
【0050】
【表5】

【0051】
表5に示すように、実施例2は実施例1と同じ配合であり、スランプが11.5cm、75℃昇温後、直ちに水蒸気の供給を停止した直後の圧縮強度6.84N/mm2であったが、75℃の1時間の養生終了直後の圧縮強度15.68N/mm2であった。
【0052】
比較例6は比較例4と同じ配合であり、実施例2とスランプを合わせた条件である。比較例6では、スランプが13.0cm、75℃昇温後、直ちに水蒸気の供給を停止した直後の圧縮強度4.34N/mm2、75℃の1時間の養生終了直後の圧縮強度14.04N/mm2であった。実施例2と比較すると総養生時間4時間の時、強度が低く実施例2の63%である。
【0053】
次に、養生条件3で実験した実施例3,4、比較例7〜9について詳細に説明する。
【0054】
実施例3、4は、表3に示すように実施例1と同じ配合割合でセメントペーストの先練り、コンクリートの練り混ぜが行われており、型枠に練混ぜたコンクリートを充填するまでの工程は、実施例1と同じであるのでその説明は省略する。実施例3では型枠に練混ぜたコンクリートを充填したあとは、以下の養生条件3でコンクリート製品の製造が行われている。
【0055】
[養生条件3]
養生条件3では、型枠にコンクリートを充填したあと、前置き養生を行わず、直ちに75℃の温度の水蒸気を送入し、75℃の温度を保持して1.5時間または2時間の養生時間経過後、水蒸気の供給を停止して脱型して自然冷却させてコンクリート製品とする。
【0056】
表3の配合によるコンクリートを使用して養生条件3によりコンクリート製品を製造した実験結果を表6に示す。
【0057】
【表6】

【0058】
表6に示すように、実施例3は実施例1と同じ配合であり、スランプが10.0cm、75℃の1.5時間の養生終了直後の圧縮強度5.42N/mm2、また、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度8.59N/mm2であった。
【0059】
また、実施例4は実施例3と同様に実施例1と同じ配合であり、実施例4の方がペースト先練り時間が30分長く、その分の強度が高くなっており、スランプが9.0cm、75℃の1.5時間の養生終了直後の圧縮強度6.05N/mm2、また、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度9.53N/mm2であった。
【0060】
また、比較例7は比較例3と同じ配合であり、スランプが6.0cm、75℃の1.5時間の養生終了直後の圧縮強度2.02N/mm2、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度4.12N/mm2であった。実施例3、4との比較では強度は劣っている。養生条件1の例に比較して実施例との強度の差が大きい。
【0061】
また、比較例8は、比較例4、6と同じ配合であり、スランプが13.0cm、75℃の1.5時間の養生終了直後の圧縮強度2.36N/mm2、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度5.94N/mm2であった。実施例3、4との比較では強度は劣っている。養生条件1、2の例に比較して実施例との強度の差が大きい。
【0062】
また、比較例9は比較例5と同じ配合であり、スランプが24.0cm、75℃の1.5時間の養生終了直後の圧縮強度0.67N/mm2、75℃の2時間の養生終了直後の圧縮強度3.10N/mm2であった。実施例3、4との比較では強度は劣っている。養生条件1に比較して実施例との強度の差が大きい。
【0063】
養生条件3では、型枠にコンクリートを充填したあと、前置き養生を行わず、直ちに75℃の温度の水蒸気を送入し、75℃の温度を保持して1.5時間または2時間の短い養生時間経過後、水蒸気の供給を停止して脱型して自然冷却させてコンクリート製品を製造しているが、ペースト先練りの実施例は養生時間が短い時、また、養生直後から高温で養生した場合に、ペースト先練りを行わない場合と比べて強度が高くなっている。特に2時間の養生終了直後の圧縮強度は実施例3で8.59N/mm2であり、実施例4で9.53N/mm2である。
【0064】
養生条件3では、前置き養生を行わないがペースト先練りをしておくことで実施例3、4の結果の通り、2時間の養生終了直後の圧縮強度が約10N/mm2であるので、殆どのコンクリート製品の脱型が可能な水準となっている。
【0065】
したがって、型枠に打ち込む前に予め水とセメントを先に練り合わせてセメントペーストを作って静置しておき、静置後の先練りしたセメントペーストに減水剤を加えて流動性を復元させて、前記セメントペーストを使ってコンクリートを練り混ぜてから硬化促進剤を加え、型枠に打ち込むことで、従来は型枠に打ち込み後に必要だった前置き養生を省略しても2時間の養生終了直後には脱型が十分に可能である。
【0066】
また、高性能減水剤で先練りしたセメントペーストの流動性が復元する範囲であれば、先練り後、静置する時間を長くすることによって脱型時に必要な圧縮強度(脱型強度)を上げることも可能である。また、セメントペーストの先練りは硬化促進剤の種類に影響されず、種々の硬化促進剤との併用が可能である。
【0067】
このように、本発明はセメントペーストの先練りを行うことで、コンクリート製品の製造を養生条件3で実施してよく、先練りの効果と硬化促進剤の併用により型枠に打ち込み後、コンクリート製品は2時間程度の従来の半分の養生時間で、脱型時に必要な圧縮強度となり、コンクリート製品の脱型時間の短縮を計ることができる。また、先練り時はセメントペーストのみであるので、練り置きのスペースをあまり必要とせず、また練り混ぜ時間を短縮できる事や計量の二度手間を防げる等の利点を有する等実用的なものである。
【0068】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することがなければ、種々の設計変更が可能であり、前記実施例に限定されないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る実施例1のコンクリート製品の製造工程のチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とセメントを先に練り合わせてセメントペーストを作って静置し、静置後の先練りしたセメントペーストに減水剤を加えて流動性を復元させ、前記セメントペーストを使ってコンクリートを練り混ぜてから硬化促進剤を加え、型枠に打ち込むことで、型枠に打ち込み後のコンクリートの強度を短時間で高め、常圧蒸気養生を行った後に脱型を可能としたことを特徴とするコンクリート製品の製造方法。
【請求項2】
水・セメント比が27〜32%のセメントペーストを先練りしておく工程、先練りしたセメントペーストを1〜2時間静置する工程、静置したセメントペーストに減水剤を加え流動性を復元させる工程、流動性を復元したセメントペーストに骨材と二次水を加え、コンクリートを練り混ぜる工程、練り混ぜたコンクリートに硬化促進剤を加えコンクリートを練り混ぜる工程、コンクリートを型枠に打ち込みする工程、型枠を65〜80度の水蒸気にて常圧蒸気養生を行った後に脱型する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート製品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−305748(P2006−305748A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127624(P2005−127624)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000199212)千代田技研工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】