説明

コンクリート製品の製造方法

【課題】温度条件の変動があっても、低振動で充填性の良い成形が可能で、早期強度と表面美観に優れたコンクリート製品を製造できる方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される単量体由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体(A)と、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)と、水硬性粉体と、水とを含有し、重合体(A)を水硬性粉体100重量部に対し0.02〜0.28重量部含有するコンクリートからコンクリート製品を製造する際に、10G以下の振動を掛けて打設する。
2C=CHCOOCH2CH2OH (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製品を製造する際に、振動機(バイブレーター)を使用して振動をかける場合があり、通常、コンクリートの流動性(スランプ値)が小さくなるほど、振動容量を多く必要とする。振動が大きくなると騒音の問題に加え、コンクリート製品の表面美観(水路の発生等)の面でも問題が生じる。振動を低減するために、例えば、コンクリートの流動性を高めて振動機を不要とする研究が始まっているが、単純に水や減水剤を添加して流動性を高めるだけでは材料分離が生じ、粗骨材がからみあって充填性が悪くなり、均一なコンクリートが得られないことから強度低下をきたす。
【0003】
特許文献1には、振動出力を小さくしても表面美観に効果のある製造法が提案されている。また、特許文献2には、振動成型で製造されるコンクリート製品において、充填性と表面美観を高い水準で両立できるコンクリートが得られるモルタル組成物が提案されている。また、特許文献3にも、ポリカルボン酸系重合体とリン酸エステル系重合体とを含有する分散剤により、表面美観に優れたコンクリート製品を与えるコンクリート組成物を提供できることが開示されている。
【特許文献1】特開2001−220195号公報
【特許文献2】特開2001−233655号公報
【特許文献3】特開2007−210877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート製品製造時の温度条件の変動は、コンクリート製品の品質に影響を及ぼすため、年間を通じて安定な品質の製品を得ることは当業界の課題の一つである。また、コンクリート製品製造時には、低振動でも、充填性といった作業性に優れることが望まれる。そして、こうした条件を満足した上で、得られたコンクリート製品が早期強度(例えば、24時間後の強度)と表面美観に優れることが望まれる。上記特許文献では、これらを全て満足する点については言及されていない。
【0005】
本発明の課題は、製造時間と温度条件の変動があっても、低振動で充填性の良い成形が可能で、早期強度と表面美観に優れたコンクリート製品を製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(1)で表される単量体由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体(A)〔以下、(A)成分という〕と、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)〔以下、(B)成分という〕と、水硬性粉体と、水とを含有するコンクリートを、10G以下の振動を掛けて打設する工程を有する、コンクリート製品の製造方法であって、前記コンクリートが、重合体(A)を水硬性粉体100重量部に対し0.02〜0.28重量部含有する、コンクリート製品の製造方法に関する。
2C=CHCOOCH2CH2OH (1)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造時間と温度条件の変動があっても、低振動で充填性の良い成形が可能で、早期強度と表面美観に優れたコンクリート製品を製造できる、コンクリート製品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
〔コンクリート〕
本発明では、(A)成分、(B)成分、水硬性粉体、水を含有するコンクリートが用いられる。以下、かかるコンクリートに用いられる成分等について説明する。
【0009】
<(A)成分>
(A)成分は、構成単位の70重量%以上が上記式(1)で表される単量体〔以下、単量体(1)という〕由来の構成単位である重合体である。(A)成分は構成単位の75重量%以上、更に85重量%以上、より更に90重量%以上が単量体(1)由来の構成単位であることが好ましい。構成単位中の単量体(1)由来の構成単位の割合がこの範囲にある(A)成分を(B)成分と併用することで、 低振動(例えば10G以下の振動加速度)でも流れ性が良く、隅々まで充填することができる。なお、(A)成分の構成単位中に中和された酸又は塩基の塩がある場合は、その構成単位は、中和前の酸型又は塩基型の重量で換算して、式(1)で表される単量体由来の構成単位の重量%を計算する。
【0010】
(A)成分の重量平均分子量は1000〜100000が好ましく、より好ましくは3000〜80000であり、さらに好ましくは5000〜60000である。この範囲の重量平均分子量を有する(A)成分は、製造時間(打設時間)によらず低振動で充填するのに好適である。(A)成分の重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(GPC)を使用し、RI検出器並びに検量物質としてポリスチレンを使用することにより測定されたものである。測定条件は後述の合成例1の通りである。
【0011】
(A)成分は公知の重合方法で得ることができ、工業的な観点から重合濃度10重量%以上であることが好ましい。重合方法は、ラジカル重合、リビングラジカル重合、イオン重合等の方法で行うことが可能であり、好ましくはラジカル重合する方法である。重合溶媒としては、モノマーが可溶であれば限定されないが、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0012】
重合開始剤としてはアゾ系開始剤、パーオキシド系開始剤、マクロ開始剤、レドックス系開始剤等の公知の開始剤を使用してよい。水を含む重合溶媒の場合、重合開始剤としては、過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が挙げられる。水を含まない重合溶媒の場合、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物等が挙げられる。
【0013】
さらに必用に応じて分子量調整剤等の目的で連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0014】
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、更に、一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
【0016】
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
重合温度については限定されないが、好ましくは重合溶媒の沸点までの領域で制御すればよい。
【0018】
(A)成分は、単量体(1)以外の単量体を構成単量体とすることができる。例えば、(i)(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸又はそれらの塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはそれらのエステル(例えば単量体(1)以外のアクリル酸エステル、あるいはメタクリル酸エステル)が挙げられる。さらに、例えば、(ii)マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はその無水物もしくは塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはエステルが挙げられる。これらの中でも好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味である(以下同様)。
【0019】
<(B)成分>
(B)成分は、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物であり、コンクリートの流動性の観点から、重量平均分子量は200000以下が好ましく、100000以下がより好ましく、80000以下が更に好ましく、50000以下がより好ましい。また、重量平均分子量は1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、4000以上がさらに好ましく、5000以上がより好ましい。したがって、1000〜200000が好ましく、3000〜100000がより好ましく、4000〜80000が更に好ましく、5000〜50000がより更に好ましい。(B)成分のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は酸の状態あるいは中和物であってもよい。
【0020】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の製造方法は、例えば、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得る方法が挙げられる。前記縮合物の中和を行っても良い。また、中和で副生する水不溶解物を除去しても良い。具体的には、ナフタレンスルホン酸を得るために、ナフタレン1モルに対して、硫酸1.2〜1.4モルを用い、150〜165℃で2〜5時間反応させてスルホン化物を得る。次いで、該スルホン化物1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.95〜0.99モルとなるようにホルマリンを85〜95℃で、3〜6時間かけて滴下し、滴下後95〜105℃で縮合反応を行う。要すれば縮合物に、水と中和剤を加え、80〜95℃で中和工程を行う。中和剤は、ナフタレンスルホン酸と未反応硫酸に対してそれぞれ1.0〜1.1モル倍添加することが好ましい。また中和による生じる水不溶解物を除去、好ましくは濾過により分離しても良い。これらの工程によって、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩の水溶液が得られる。この水溶液はそのまま或いは他の成分を適宜添加して(B)成分して使用することができる。該水溶液の固形分濃度は用途にもよるが、(B)成分としては、30〜45重量%が好ましい。更に必要に応じて該水溶液を乾燥、粉末化して粉末状のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩を得ることができ、これを粉末状の(B)成分として用いてもよい。乾燥、粉末化は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
【0021】
<水硬性粉体>
水硬性粉体とは、水と反応して硬化する性質をもつ粉体、及び単一物質では硬化性を有しないが、2種以上を組み合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する粉体のことである。水硬性粉体として、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)のセメントが挙げられる。また、本発明に用いられるコンクリートには、セメント以外の水硬性粉体として、石膏、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等が含まれてよい。
【0022】
<骨材>
また、本発明に用いられるコンクリートは骨材を含有してもよい。骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。本発明に用いられるコンクリートは、骨材として細骨材と粗骨材とを含有することが好ましい。
【0023】
さらに、コンクリートを構成する細骨材として特定の粒度分布を有するものを使用すると、低W/Pのコンクリートの粘性がさらに低減できる。
【0024】
即ち、コンクリートの細骨材として、粒度分布が、JIS A 1102で用いられる呼び寸法0.3mmのふるいの通過率(以下、0.3mm通過率という)が1重量%以上10重量%未満で、かつ、粗粒率が2.5〜3.5である細骨材(以下、細骨材Aという)を用いることが好ましい。
【0025】
細骨材Aは、より好ましくは、0.3mmを超えるふるい呼び寸法における通過率が標準粒度分布の範囲内にあることである。
【0026】
本発明において、細骨材Aの0.3mm通過率は、コンクリートの流動性の観点から、10%未満が好ましく、より好ましくは9%以下、さらに好ましくは7%以下である。コンクリートの材料分離抵抗性の点から、0.3mm通過率は1%以上が好ましく、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上である。
【0027】
従って、コンクリートの流動性保持と材料分離抵抗性の観点から、0.3mm通過率は1%以上10%未満が好ましく、より好ましくは3%以上9%以下、更に好ましくは5%以上7%以下である。
【0028】
以上の要件に加え、細骨材Aは、粗粒率(JIS A0203-3019)が2.5〜3.5であることが好ましく、より好ましくは2.6〜3.3で、更に好ましくは2.7〜3.1である。粗粒率が2.5以上では、コンクリートの粘性が低減され、粗粒率が3.5以下では、材料分離抵抗性も良好となる。
【0029】
さらに、細骨材AのJIS A 1102で用いられる呼び寸法0.3mmを超えるふるいの通過率が、JIS A 5308付属書1表1の砂の標準粒度の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、呼び寸法0.15mmのふるいの通過率が2重量%未満であり、更に好ましくは1.5重量%未満である。ただし、材料分離抵抗性の観点から、0.5重量%以上であることが好ましい。呼び寸法0.3mmを超えるふるいについては、1つ以上の呼び寸法で、通過率が標準粒度の範囲内にあればよいが、好ましくは全部について標準粒度の範囲内にあることである。
【0030】
細骨材Aとしては、上記の粒度分布と粗粒率を満たす限り、砂、砕砂等、公知のものを適宜組み合わせて使用できる。本発明に使用できる細骨材としては、中国福建省ミン江等、特定地域の川砂が挙げられる。細孔が少なく、吸水性が低く、同じ流動性を付与するのに少量の水でよい点から、海砂よりも川砂、山砂、砕砂が好ましい。また、細骨材Aは、絶乾比重(JIS A 0203:番号3015)が2.56以上であることが好ましい。
【0031】
<その他の成分>
本発明に用いられるコンクリートは、材料分離の防止、または環境面からリサイクルの目的で、水硬性粉体以外の粉体を含有することができる。水硬性粉体以外の粉体としては、コンクリートに配合することが適切な粉体で、前記の目的に合うものが使用され、具体的には、炭酸カルシウム、石粉及びゴミ焼却灰から選ばれる1種以上の粉体が好ましい。水硬性粉体以外の粉体は、平均粒径が0.1〜200μm、更に1〜100μmのものが好ましい。
【0032】
また、その他に、本発明に用いられるコンクリートは、AE剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、増粘剤、防水剤、消泡剤、収縮低減剤、膨張剤、水溶性高分子、界面活性剤等を含有することができる。
【0033】
<コンクリートの組成等>
本発明に用いられるコンクリートは、水硬性粉体100重量部に対して、(A)成分を0.02〜0.28重量部、好ましくは0.03〜0.26重量部、より好ましくは0.05〜0.20重量部含有する。この範囲で(A)成分を含有することで、製造時間(打設時間)によらず低振動で充填でき、コンクリート表面の美観が良好となる。
【0034】
また、本発明に用いられるコンクリートは、水硬性粉体100重量部に対して、(B)成分を0.1〜1.6重量部、更に0.2〜1.2重量部、より更に0.3〜0.8重量部含有することが好ましい。
【0035】
また、本発明に用いられるコンクリートが水硬性粉体以外の粉体を含有する場合、水硬性粉体と水硬性粉体以外の粉体の合計100重量部に対して、0.1〜1.6重量部、更に0.2〜1.2重量部、より更に0.3〜0.8重量部含有することが好ましい。
【0036】
また、本発明に用いられるコンクリートにおいては、(A)成分と(B)成分の重量比率は、(A)/(B)=5/95〜45/55、更に10/90〜40/60、より更に10/90〜30/70であることが、コンクリートの流動性と保持性の観点から好ましい。
【0037】
本発明に用いられるコンクリートの水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記されることがある。〕は、10〜60重量%、更に10〜50重量%、更に10〜40重量%、より更に10〜35重量%であってもよい。W/Pの値が小さいほど、コンクリートが有する低い粘性特性が顕著になるため、締め固め性の効果も顕著となる。
【0038】
本発明に用いられるコンクリートは、細骨材及び粗骨材を含有することが好ましく、その場合、細骨材率(s/a)が35〜55体積%、更に40〜50体積%であることが好ましい。s/aは、細骨材(S)と粗骨材(G)の体積に基づき、s/a=〔S/(S+G)〕×100(体積%)で算出されるものである。また、細骨材を未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、600〜800kg、更に650〜750kg、粗骨材を未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、800〜1200kg、更に900〜1100kg含有することが好ましい。
【0039】
〔コンクリート製品の製造方法〕
本発明では、上記特定のコンクリートを、10G以下という低振動の振動加速度を掛けて打設する工程を有する。打設に用いる振動方法はテーブル、型枠、内部、表面等のいずれの振動方法でも良く、流動性の高いコンクリートであれば、無振動で打設することもできる。また、10Gより強い振動を掛けると「騒音」が激しく、安全性に欠けるばかりでなく、コンクリートが分離して製品に水路が発生し、商品価値を損なう。尚、振動加速度(G)は2π2×(振幅cm)×(周波数Hz)2/981より求める。
【実施例】
【0040】
〔(A)成分〕
(A)成分として以下の合成例の重合体を用いた。
【0041】
<合成原料>
・ヒドロキシエチルアクリレート:Aldrich(有効分96%)〔単量体(1)〕
・アクリル酸:Aldrich(有効分99%)
・メルカプトプロピオン酸:Aldrich
・ペルオキソ二硫酸アンモニウム:和光純薬工業(株)
【0042】
<合成例>
合成例1
反応容器の4つ口フラスコにイオン交換水84.2gを仕込み、脱気後窒素雰囲気下にした。アクリル酸(以下、AAと表記する)20.2gとヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAと表記する)83.5gを混合し、単量体液を調製した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.3gをイオン交換水26.4gに溶解し開始剤水溶液(1)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸2.6gをイオン交換水25gに溶解し連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を80℃にして単量体液、開始剤水溶液(1)及び連鎖移動剤水溶液を同時に90分かけて滴下した。その後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.3gをイオン交換水6.6gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分掛けて滴下し、更に80℃で60分間反応させた。反応終了後に常温にして、48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH5(20℃)の重合体A−1の水溶液を得た。
仕込み組成比:
AA/HEA=19.5/80.5(重量比)(HEA80.5重量%)
AA/HEA=28.0/72.0(モル比)
重量平均分子量:34500
AA:反応率97%(HPLC)
HEA:反応率98%(HPLC)
分子量の測定は以下のGPC条件で行った。
[GPC条件]
標準物質:ポリスチレン換算
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0043】
合成例2
反応容器の4つ口フラスコにイオン交換水85.6gを仕込み、脱気後窒素雰囲気下にした。AA11.7gとHEA92.1gを混合し、単量体液を調製した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.3gをイオン交換水25.2gに溶解し開始剤水溶液(1)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸2.5gをイオン交換水25gに溶解し連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を80℃にして単量体液、開始剤水溶液(1)及び連鎖移動剤水溶液を同時に90分かけて滴下した。その後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.3gをイオン交換水6.3gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分掛けて滴下し、更に80℃で60分間反応させた。反応終了後に常温にして、48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH5(20℃)の重合体A−2の水溶液を得た。
仕込み組成比:
AA/HEA=11.3/88.7(重量比)(HEA88.7重量%)
AA/HEA=17.0/83.0(モル比)
重量平均分子量:30600
AA:反応率97%(HPLC)
HEA:反応率98%(HPLC)
GPCの測定条件は合成例1と同様である。
【0044】
合成例3
反応容器の4つ口フラスコにイオン交換水224.5gを仕込み、脱気後窒素雰囲気下にした。ペルオキソ二硫酸アンモニウム4.4gをイオン交換水90gに溶解し開始剤水溶液(1)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸10.2gをイオン交換水80gに溶解した連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を80℃にしてHEA280gの単量体液、開始剤水溶液(1)及び連鎖移動剤水溶液を同時に90分かけて滴下した。その後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.6gをイオン交換水10gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分掛けて滴下し、更に80℃で60分間反応させた。反応終了後に常温にして、48%水酸化ナトリウム水溶液で攪拌しながら中和した。pH5(20℃)の重合体A−3の水溶液を得た。
仕込み組成比:HEA100モル%(100重量%)
重量平均分子量:14200
HEA:反応率96%(HPLC)
GPCの測定条件は合成例1と同様である。
【0045】
〔(B)成分〕
(B)成分として、マイテイ150〔ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物系混和剤、花王(株)製〕を用いた。これをB−1とした。
【0046】
〔コンクリートの調製及び評価〕
上記(A)成分、(B)成分を、表1の配合の成分に対して、表2、3の添加量で用いてコンクリートを調製し、以下の評価を行った。結果を表2、3に示す。なお、評価は、コンクリート温度30℃と20℃についてそれぞれ行い、表2にはコンクリート温度30℃での結果を、表3には、コンクリート温度20℃での結果を示した。
【0047】
【表1】

【0048】
表1中の使用材料は以下のものである。
W(水):水道水
C(セメント):普通ポルトランドセメント〔太平洋セメント(株)製普通ポルトランドセメント/住友大阪セメント製普通ポルトランドセメント=1/1(重量比)の混合セメント〕、密度=3.16(g/cm3
S(細骨材):岐阜県揖斐川産川砂、密度=2.60(g/cm3
G(粗骨材):兵庫県家島山産砕石、密度=2.60(g/cm3
【0049】
(性能評価)
(1)コンクリートのスランプ評価方法
60L練り二軸ミキサーに表1のコンクリート配合の30L分、全材料と表2、3の(A)成分、(B)成分を投入して90秒間混練りした。混練終了直後と30分後のコンクリートについて、スランプを測定した。
【0050】
(2)圧縮強度の評価方法
(1)で調製したコンクリートの30分のスランプを測定後、JIS A 1132の突き棒を用いる場合に準拠して、内径10cm、高さ20cmの円柱プラモールドに充填し、評価温度で気中養生を行い、24時間後に脱型し強度測定を行った。24時間後に指で押さえて変形する供試体を未硬化と評価した。
【0051】
(3)表面美観の評価方法
(1)で調製したコンクリートの30分のスランプを測定後、縦10cm、横20cm、高さ40cmの鋼製型枠に充填し、テーブル式バイブレーター(振幅0.15mm)の周波数により表2、3の振動加速度を負荷して、30秒間振動した。前置き2時間後に昇温18℃/hr、保持65℃×4時間、以後放冷の蒸気養生を行い、24時間後に脱型した。この供試体表面(20×40=800cm2)の気泡数(粒径が5mm以上のもの)と過分散による水路の状態を肉眼で観察を行い、裏、表の2面の平均からコンクリート肌面の表面美観として評価した(表中「試験系」と表記)。なお、(B)成分のみを添加したコンクリートについても同様に気泡数(粒径が5mm以上のもの)を測定した。(B)成分のみの場合からの気泡の減少数が大きいほど、気泡数の低減効果に優れることを意味する。また、水路の状態の観察結果から、以下の基準で水路のありなしで水路判定を評価した。
(水路判定)
A:なし
B:極僅かにあり
C:あり
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
表2、3中、添加量は、水硬性粉体100重量部に対する、有効分としての重量部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される単量体由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体(A)と、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)と、水硬性粉体と、水とを含有するコンクリートを、10G以下の振動を掛けて打設する工程を有する、コンクリート製品の製造方法であって、前記コンクリートが、重合体(A)を水硬性粉体100重量部に対し0.02〜0.28重量部含有する、コンクリート製品の製造方法。
2C=CHCOOCH2CH2OH (1)
【請求項2】
前記コンクリートが、さらに、骨材を含有する請求項1記載のコンクリート製品の製造方法。
【請求項3】
(A)成分と(B)成分との重量比率が、(A)/(B)=5/95〜45/55である、請求項1又は2記載のコンクリート製品の製造方法。

【公開番号】特開2010−30795(P2010−30795A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191917(P2008−191917)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】