説明

コンクリート製品成形用型枠及びその製造方法

【課題】 複雑な形状の製品を安価に製造でき、また、強度、剛性にも優れるコンクリート製品成形用型枠を開発する。
【解決手段】 金属製本体の一部に切欠部分を設け、該切欠部分にパンチングメタル、エキスパンドメタルなど多数の穴を有する金属製面材でなる芯材を固着し、該芯材を覆って樹脂製部分を形成する。金属製部分によって強度、剛性が確保される。樹脂部分は複雑な形状を容易に成形でき、芯材によって強度、剛性も十分なものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のセメントコンクリート製品、レジンコンクリート(樹脂コンクリート)製品等のコンクリート製品を成形する型枠、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なコンクリート製品の成形用型枠は、鋼材を切断、折り曲げ、削り加工したパーツを溶接などで一体に組み立てた鋼製型枠である。このような型枠には、運搬、据え付け、又搬送ラインに乗せるなどの便宜のため、通常架台が設けられ、型枠本体は架台に溶接して完全に一体化されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、鋼製の外型の底部に樹脂製の成形型部を設け、その成形型部の内部に補強プレートを設ける型枠が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】実公平6−30406号公報
【特許文献2】特許第3021410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の鋼製型枠は、摩耗に強くて耐久性があり、またコンクリートの蒸気養生の際の熱変形も少ない点で優れている。しかし、鋼材を加工するため、成形できる形状に制限があり、複雑な形状を成形するためには鉄の塊を削り加工した部品を使用しなければならず、きわめて高コストとなっていた。
【0005】
上記の、鋼製の外型の底部に樹脂製の成形型部を設ける型枠は、鋼製の外型が必要なためにコスト高であり、底部の樹脂部分は複雑な形状の成形が可能であるが、側面部分は鋼製であるために複雑な形状を成形することができなかった。
【0006】
また、型枠は一般に架台と、その上に固定されたキャビティーを有する本体とからなるが、架台と本体とは完全に一体化されていたので、製品のモデルチェンジに対応するためには、架台付の本体を新たに作り直さなければならない。また、大きさの異なる多種の製品を製造する場合には、それぞれの種類の型枠を揃えなければならないので、高コストとなるばかりでなく、多くの材料資源を必要として環境負荷も大きかった。
【0007】
本発明は、従来の型枠よりも複雑な形状の製品を安価に製造でき、また、蒸気養生の際の熱変形も少ないコンクリート製品用型枠を開発することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、キャビティーの成形面が金属製部分と樹脂製部分を組み合わせてなる型枠であって、金属製本体の一部に切欠部分を設け、該切欠部分にパンチングメタル、エキスパンドメタルなど多数の穴を有する金属製面材でなる芯材を固着し、該芯材を覆って樹脂製部分を形成したことを特徴とするコンクリート製品成形用型枠である。
【0009】
また本発明は、キャビティーの成形面が金属製部分と樹脂製部分を組み合わせてなる型枠の製造方法であって、一部に切欠部分を有する金属製本体を形成する工程と、前記切欠部分にパンチングメタル、エキスパンドメタルなど多数の穴を有する金属製面材でなる芯材を固着する工程と、該芯材を覆って樹脂製部分を形成する工程を有することを特徴とするコンクリート製品成形用型枠の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の型枠は、金属製部分と樹脂製部分を組み合わせて形成しているので、金属製部分によって強度、剛性が保持されると共に熱による変形が防止され、樹脂部分で複雑な形状を容易に成形することができる。樹脂部分は肉厚内に補強用の金属製芯材を有し、芯材は型枠本体の金属製部分に固着されるので、樹脂製部分であっても相当の強度や剛性を有し、コンクリートを蒸気養生したときに、樹脂が熱膨張するのが防止され、製品の品質や寸法精度に悪影響を及ぼさない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のコンクリート製品成形用型枠は、本体を架台に着脱自在に取り付けることが望ましい。製品のモデルチェンジがあったときに、本体のみを製作し、架台に付け替えればよいので、低コストで対応でき、資源を節約できる。本発明において、樹脂材料は特に限定されず、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。架台はL形鋼、I形鋼、C形鋼、H形鋼、フラットバー、鉄板などの適宜の鋼材を加工して台状に組み立てることができ、その形状、構造は自由である。
【0012】
本発明の型枠は具体的には、例えば、本体を、幅方向の断面が概略U字状の樋状に形成し、その開放している両端を閉塞する2枚の側板を架台に蝶着して設けることができる。この場合、側板を、架台に蝶着した金属製の側板台部とその内面に着脱自在に取り付けた樹脂製の成形型部とから構成すると、架台に確実に固定でき、複雑な側面形状の製品を容易に成形でき、モデルチェンジの際の成形型部の取り替えも容易である。成形型部の肉厚内に補強用の金属製芯材を埋設し、本体と成形型部の芯材に、相互に凹凸嵌合して本体と成形型部を組み立てたときの位置決めをする位置決め手段を固着すると、本体と側板を接合して型枠を組み立てたときに、本体と側板とが一体化し、完全に位置決めされる。側板の成形型部の本体の端面と接する部分に、コンクリートの漏れを防止するためのパッキンを装着する溝を、成形型部の成形時に形成しておくことができる。このようにすることで、成形型部の成形後に溝を彫る加工をする必要がなくなる。
【0013】
本体の金属部分をアルミニウム又はアルミニウム合金製とした場合、コンクリートのアルカリ成分による腐食を防止するため、金属部分の少なくともコンクリートと接する面にアルカリ耐食処理を施すことが望ましい。アルカリ耐食処理は、簡易な化成処理法、アルマイト処理法、メッキ法、塗装被覆法、セラミックコーティング法、溶射法、乾式コーティング法などの単独、又はこれらの組み合わせが考えられる。これらの方法の中で、特に簡便で効果が大きいのは、化成処理法の一種で、アルミニウム(合金)表面にベーマイト被膜を形成する方法である。
【0014】
ベーマイトは AlOOH、γ−AlOOH 又は α−Al・HO であり、80℃程度あるいはそれ以上の温度の純水中にアルミニウム又はアルミニウム合金の成形品を浸漬することで、次の(1)式又は(2)式により被膜が生成される。
(1) 2Al+4HO → 2AlOOH+3H
(2) 2Al+3HO → 3Al・3H
【0015】
ベーマイト被膜の厚さは、80℃以上の熱水で反応させる場合、0.2〜0.5μm程度で、反応時間も15分以上要するが、反応促進剤であるアンモニア水、トリエタノールアミン(TEA)等のアルカリ性添加剤を0.5〜5%の範囲で添加し、消耗量の適時管理を行うことにより反応時間を1/2から1/10に短縮可能であり、かつ、生成されるベーマイト被膜の厚さも2倍〜3倍(厚さ2μm程度まで)に厚くできる。これは微量のアルカリ性添加剤がベーマイト生成時、Al表面を活性化しやすいため、ベーマイト生成→局部的に一部活性化→局部的にベーマイト生成・・・の繰り返し反応が起きているものと考えられる。なお、反応促進剤としては、上記のアルカリ性添加剤に限らず、有機、無機を含め各種の界面活性剤を適宜単独又は併用して用いることができる。
【0016】
ベーマイト被膜は、優れた電気絶縁性を示し、アルミニウムがアルカリ腐食するのを防止する。万一、コンクリート打設の衝撃により、一部の被膜が剥落しても、その剥落して素地が露出した部分にセメントコンクリート中のアルカリ成分による新たな化学被膜(アルミン酸アルカリ塩、水酸化アルミのゾル・ゲル状物質)が繰り返し生成され、結局長期間のアルカリ耐食性を発揮するものである。
【0017】
上記のようにベーマイト被膜を形成した後、1気圧以上の蒸気処理を行うと、被膜が一層緻密なベーマイト層となり、アルカリ耐食性が向上する。
【0018】
また、ベーマイト被膜に、珪酸カルシウム又は酸化ジルコニウムの微粉末をバインダー(例えば水溶性等の有機バインダー)と混合して塗布し、被膜表面に珪酸カルシウム又は酸化ジルコニウムを存在させておくと、万一機械的衝撃でベーマイト被膜が破損してAl表面が露出しても、耐アルカリ性の強力な上記2者は露出部近傍においてもアルカリ腐食反応(アルミン酸アルカリ塩、水酸化アルミの生成)を抑制する効果があり、アルカリ耐食性が向上する。なお、この処理は前記の蒸気処理と併用することができ、アルカリ耐食性を一層向上させることができる。
【0019】
本体や成形型部の樹脂材料に予め離型剤を混合しておくことができる。このようにすることでコンクリート製品製造時に離型剤を殆ど使用せずに、コンクリート製品の脱型(型抜き)が可能となる。このことは、鋼製型枠で成形した製品に比べ表面が鏡面状にきれいに仕上がると共に、離型剤の使用料を大幅に低減し、製造作業場の環境向上にも寄与する。離型剤としては、例えば「R−X」の一般式で表されるものを使用できる。ここにおいて、RはC15〜20のアルキル基を表し、Xは水素基、カルボキシル基又はグリシルエーテル基を表す。炭素原子数C17のアルキル基としては、C17ステアリルアルコール、ステアリル酸、ステアリルグリシルエーテルが、C18のアルキル基としてはノナデカノール、オレイン酸、ノナデカノールグリシルエーテルが揚げられる。
(参考例)
【0020】
図2〜9は本体全体を樹脂製とした参考例の型枠10に関する。型枠10は図1の車止ブロック1を成形するためのものである。車止ブロック1は概略台形柱状をなし、上部に2個所の凹部2を備え、各凹部2には筒状のホルダー3(プラスチック製)を埋設することで貫通孔が形成されている。貫通孔からはアンカーボルトを打ち込んで車止ブロック1を固定する。その後、凹部2にはリフレクターを兼ねたキャップ(図示せず)を装着する。前面中央はネームステッカーを貼る表示部4(曲面)が形成され、その左右両側には滑り止めと意匠効果を兼ねた多数の横溝5が形成されている。左右の側面には手掛部6が凹設されている。
【0021】
図2に示すように、型枠10は架台11、本体12及び側板13を有する。架台11は2本のコ字形鋼17を平行に配置し、その上に2本の梁材18(鉄板をコ字形に曲げ加工したもの)を架け渡し、溶接固定したものである。架台11の上には2個の本体12が着脱自在に取り付けられる。また、架台11の左右両側面には側板13が蝶番16によって蝶着されている。側板13は、鉄板を加工した側板台部14に樹脂製の2個の成形型部15が着脱自在に取り付けられている。側板13を起立させると、成形型部15が本体12の開放状態となっている両端を閉塞し、キャビティーが形成される。キャビティーにコンクリートを充填し、コンクリートの上面をコテで均し、蒸気養生を行い、側板を倒して脱型(ブロックの取り出し)を行う。
【0022】
図4に示すように、本体12は断面が概略U字状の樋状をなし、樹脂製(ウレタン樹脂など)で、そのほぼ全域に金属製の芯材19が埋め込まれている。樹脂には離型剤が練り込まれている。図5、6に示すように、芯材19はパンチングメタルを樋状に加工したもので、両端外側に全長に亘るパイプ22を溶接により固着し、下面に2個のナット20と4個のナット21を、上面には前記ナット20の上部にボス20aを溶接により固着している。
【0023】
パイプ22の両端は、本体12の側面に開口し、側板13を起立させて成形型部15で本体12の側面を閉塞する場合、成形型部のガイドピン25(図7)がパイプ22に嵌合し、位置決めされる。すなわち、パイプ22及びガイドピン25は相互に嵌合して本体と成形型部の位置決めを行う位置決め手段である。ナット20、21は本体12を架台に取り付けるための固定手段で、本体12の下面に露出する。すなわち、図9に示すように、本体12を架台11の梁材18上に載置し、下側からワッシャ−を介してボルト28、29で締め付けて固定する。ボルトを外せば簡単に本体を取り外すことができる。ボス20aは筒状の部材で、本体12の内底面に開口する。ボス20aには、図4に鎖線で示すように、筒状のホルダー3をその頭部を嵌着して立設する。筒状のホルダー3がコンクリート中に埋め込まれることで車止ブロックに貫通孔が形成される。
【0024】
成形型部15は、概略台形状の板で、樹脂製(ウレタン樹脂など)で、そのほぼ全域に金属製の芯材24が埋め込まれている。樹脂には離型剤が練り込まれている。図7に示すように、成形型部15の内面側の外周部には、コンクリートの漏れを防止するためのパッキン(図示せず)を装着する溝27が、成形型部の成形時に形成されている。溝27にはひも状のパッキンを装着し、成形型部15で本体12の端面を閉塞しキャビティーを形成すると、パッキンが本体12の側面に密着し、コンクリート漏れを防ぐことができる。なお、このパッキン用の溝は本体端面に設けても同様の効果が得られる。
【0025】
図8に示すように、芯材24はパンチングメタルを加工したもので、内面側に2個のガイドピン25(位置決め手段)、外面側に4個のナット26(固定手段)が溶接により固着されている。成形型部15は、図2に示すように、側板台部14にセットし、側板の裏側からボルト(図示せず)をナット26に螺着することで、着脱自在に取り付けられる。
【実施例】
【0026】
図10、11は、前記の参考例を改良し、本体12Aを金属と樹脂を組み合わせて形成した実施例を示している。本体12Aの基本形状及び使用方法は前記参考例の本体12と同様である。本体12Aの大部分は鋼板を加工して製作した金属製部分30であるが、図10において斜線を施した部分、すなわち複雑な形状の部分のみが樹脂製部分31となっている。この本体は、例えば次のようにして製造することができる。金属製部分30は、樹脂製とする部分を切り欠いて製作してある。その切欠部分の裏側に芯材36(パンチングメタル等)を溶接などで固着する。芯材にはナット20及びボス20aを溶接で固定しておく。その後、図12に示すように、芯材36の表側及び裏側に樹脂型37、38を取り付け、注入孔39から樹脂を注入して樹脂製部分31を成形する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の型枠は、車止めブロックのほか、歩車道境界ブロック、地先境界ブロック、花壇用縁石、境界杭、側溝用蓋、桝用蓋、舗装ブロック、基礎ブロック、積みブロック、護岸ブロック、各種擬木製品、各種擬石製品など、種々のコンクリート製品の成形に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】車止ブロック1の斜視図である。
【図2】型枠10の分解説明図である。
【図3】型枠10の側板を取り除いた斜視図である。
【図4】本体12の平面図及びAA線断面図である。
【図5】芯材19の平面図及び側面図である。
【図6】芯材19の斜視図である。
【図7】成型型部の正面図及び底面図である。
【図8】芯材24の平面図及び正面図である。
【図9】架台11に本体12を取り付ける説明図である。
【図10】本体12Aの平面図である。
【図11】図10におけるBB線断面図である。
【図12】本体12Aの製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 車止ブロック
2 凹部
3 ホルダー
4 表示部(ネームステッカー)
5 横溝
6 手掛部
10 型枠
11 架台
12 本体
13 側板
14 側板台部
15 成形型部
16 蝶番
17 コ字形鋼
18 梁材
19 芯材
20 ナット
20a ボス
21 ナット
22 パイプ
24 芯材
25 ガイドピン
26 ナット
27 溝
28 ボルト
29 ボルト
30 金属製部分
31 樹脂製部分
32 雌ねじ
33 雌ねじ
34 穴
35 ガイド穴
36 芯材
37 樹脂型
38 樹脂型
39 注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティーの成形面が金属製部分と樹脂製部分を組み合わせてなる型枠であって、金属製本体の一部に切欠部分を設け、該切欠部分にパンチングメタル、エキスパンドメタルなど多数の穴を有する金属製面材でなる芯材を固着し、該芯材を覆って樹脂製部分を形成したことを特徴とするコンクリート製品成形用型枠。
【請求項2】
キャビティーの成形面が金属製部分と樹脂製部分を組み合わせてなる型枠の製造方法であって、一部に切欠部分を有する金属製本体を形成する工程と、前記切欠部分にパンチングメタル、エキスパンドメタルなど多数の穴を有する金属製面材でなる芯材を固着する工程と、該芯材を覆って樹脂製部分を形成する工程を有することを特徴とするコンクリート製品成形用型枠の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−272976(P2006−272976A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194047(P2006−194047)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【分割の表示】特願2004−93959(P2004−93959)の分割
【原出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(390039505)株式会社サイコン工業 (10)
【Fターム(参考)】