説明

コンタクトおよび電気コネクタ

【課題】 電気的接続が途切れ難く、接触アームが変位する範囲が拡大され、かつ、製造が容易なコンタクトおよび電気コネクタを提供する。
【解決手段】 コネクタハウジングに取り付けられ、相手側コンタクトと接触するコンタクト1において、互いに対向して前方Fに延び、相手側コンタクトを左右方向両側LRから挟む一対の接触アーム21,22、および一対の接触アームを支持する支持部23を有するコンタクト部2と、コンタクト部を間に挟む左右に位置し、コネクタハウジングに圧入される一対の圧入部3,4と、上下UDに向いた破断面Cを有し支持部23の左右LR両側からそれぞれ帯状に延びた後、破断面Cを上下UDに向けたまま上下UD方向に延びる中心軸Pの回りに左右LR外向きに湾曲し後方Bに延びて一対の圧入部それぞれに繋がった、弾性変形によりコンタクト部2を左右方向に変位自在に支持する一対のばね部5,6とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側コンタクトに接触して電気的に結合するコンタクトおよび電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなコンタクトとして、従来より、相手側コンタクトが相対的に移動しても接触状態を保持できるように、相手側コンタクトを挟むばね部をコンタクト部に有するフローティングタイプのコンタクトが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図10は、従来技術のコンタクトを示す斜視図である。
【0004】
図10に示す従来技術のコンタクト800は、U字型のコンタクト部801と、回路基板に接続される一対の脚部802と、コンタクト部801に設けられた一対の自由端803のそれぞれから、途中2箇所ずつで180°に折れ曲がって脚部802まで延びる一対の板状のばね部804とを有している。脚部802は回路基板にはんだ接続され、U字型のコンタクト部801は相手側コンタクト(図示せず)を挟んで電気的に結合する。
【0005】
コンタクト800では、相手側コンタクトの両側に配置される2つの自由端803が、別々のばね部804にそれぞれ直接繋がっている。このため、相手側コンタクトに振動や衝撃が加わると、2つの自由端803と相手側コンタクトとの間に瞬間的に隙間が生じ、電気的接続が途切れてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、一対の接触アームを支持部によって支持し、この支持部を一対のばね部によって変位自在に支持する構造のコンタクトが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
図11は、図10とは別の従来技術のコンタクトを示す斜視図である。図11のパート(A)は、コンタクト900の正面側を斜め上方から見た斜視図であり、パート(B)は背面側を斜め上方から見た斜視図である。
【0008】
図11に示すコンタクト900は、互いに対向して前方に延びた一対の接触アーム902,903と、接触アーム902,903を支持する板状の支持部904と、支持部の対向方向である左右方向両側から折れ曲がって延びた一対のばね部905,906と、ばね部905,906の先端に設けられた圧入片908,909とを備えている。コンタクト900は、コネクタのカバー(図示せず)に圧入片908,909が圧入されることによって、カバーに固定される。相手側コンタクト(図示せず)を挟む接触アーム902,903は相手側コンタクトに追従して支持部904ごと変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−19296号公報
【特許文献2】特開2008−98052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図11に示すコンタクト900における圧入片908,909は、接触アーム902,903が支持部904から延びた先の部分と同様に、前方に配置されている。しかも、圧入片908,909は、互いに対向する接触アーム902,903が相手側コンタクトを両側から挟む左右方向において、接触アーム902,903の先端部と並んでいる。すなわち、2つの圧入片908,909は、それらの間に接触アーム902,903の先端部を挟んだ状態で配置されている。このため、接触アーム902,903の先端が左右方向に変位可能な範囲は、圧入片908,909の間の範囲(より厳密には、コンタクト900が設置されるカバーの、圧入片908,909が圧入される部分の肉厚分だけさらに狭まった範囲)に制限される。このことは、換言すれば、接触アーム902,903の先端が相手側コンタクトに追従して変位する範囲を、圧入片908,909との干渉を避けつつ確保しようとすると、2つの圧入片908,909を、間隔を広げて配置する必要がある。したがって、コンタクトを複数並べて配置する場合に、コンタクト同士のピッチを狭めて配置することができない。
【0011】
また、図10および図11に示すコンタクトは、基本的な構造を形成するために、互いに異なる方向に延びた軸の回りに折り曲げを行う必要があり、製造機械で折曲げ加工する場合の操作が複雑になる。
【0012】
本発明は上記問題点を解決し、電気的接続が途切れ難く、接触アームが変位する範囲が拡大され、かつ、製造が容易なコンタクト、およびそのコンタクトを備えた電気コネクタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明のコンタクトは、
板金部材の打抜き加工および折曲げ加工により形成された、コネクタハウジングに取り付けられ相手側コンタクトと接触するコンタクトであって、
互いに対向して前方に延び、上記相手側コンタクトを左右方向両側から挟む一対の接触アーム、およびこの一対の接触アームを支持する支持部を有するコンタクト部と、
上記コンタクト部を間に挟む左右に位置し、上記コネクタハウジングに圧入される一対の圧入部と、
上下に向いた破断面を有し上記支持部の左右両側からそれぞれ前方に折れ曲がって帯状に延びた後、破断面を上下に向けたまま上下方向に延びる中心軸の回りに上記コンタクト部から離れる左右外向きに湾曲し後方に延びて上記一対の圧入部それぞれに繋がった、弾性変形により上記コンタクト部を左右方向に変位自在に支持する一対のばね部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明のコンタクトは、接触アームを支持する支持部がばね部によってさらに支持されているので、電気的接続が途切れ難い。また、ばね部が、前方に延びた接触アームを支持する支持部から前方に延びた後にさらに後方に延びて圧入部に繋がった構造であり、接触アームの先端と圧入部との干渉が避けられるため、接触アームの変位が圧入部による制限から解放される。したがって、接触アームが変位する範囲が拡大する。さらに、本発明のコンタクトは、ばね部の湾曲した形状と、ばね部が支持部から前方に折れ曲がった形状との双方が、コンタクトの製造工程において、互いに平行な関係にある複数の軸の回りに湾曲ないし折れ曲がるように折曲げ加工することで形成できるので、製造機械等で折曲げ加工することが容易である。
【0015】
ここで、上記本発明のコンタクトにおいて、
上記圧入部が、上下に延びたものであり、
上記一対のばね部のそれぞれが、
上下に向いた破断面を有し上記支持部から前方に向かって帯状に延びた第1延長部と
上記第1延長部の先から上記中心軸の回りに湾曲した第1U字部と、
上記第1U字部から上方に向かって延び、さらに後方に曲がって下方に向かって延びた第2U字部と、
上記第2U字部の下方に向かって延びた下端と上記圧入部の下端とを繋ぐ繋ぎ部とを有するものであり、
上記接触アームが、上記支持部の、上記一対のばね部よりも上方における上記左右方向両側から前方に折れ曲がって前方斜め下方に延びさらに前方斜め上方に延びたものであって、
上記第1延長部が、上記接触アームとの接触を避けて前方斜め下方に延びさらに前方斜め上に延びた形状を有することが好ましい。
【0016】
ばね部のそれぞれが第1U字部と第2U字部を有することによって、圧入部を接触アームの先端よりも後方に配置しつつばね部の長さを確保し、ばね部の弾性変形範囲を十分に確保することができる。さらに、第1U字部は、破断面を上下に向けたまま上下に延びる中心軸の回りに湾曲する形状を有するので、例えば破断面を前後に向け、前後に延びる中心軸の回りに湾曲する形状に比べて上下方向の寸法が縮まる。ここで、第1U字部は、第1延長部の先から湾曲した部分である。このため、第1延長部を、前方斜め下方に延びさらに前方斜め上方に延びた接触アームとの接触を避けて、前方斜め下方に延びさらに前方斜め上に延びた形状とすることができる。この結果、接触アームのアーム長さを維持したまま、この接触アームが収まる前後寸法を縮めることができる。したがって、接触アームが変位する範囲を維持したまま、コンタクトを小型化することができる。
【0017】
上記目的を達成する本発明の電気コネクタは、板金部材の打抜き加工および折曲げ加工により形成された、相手側コンタクトと接触するコンタクトと、このコンタクトが取り付けられるハウジングを備えた電気コネクタであって、
上記コンタクトが、
互いに対向して前方に延び、上記相手側コンタクトを左右方向両側から挟む一対の接触アーム、およびこの一対の接触アームを支持する支持部を有するコンタクト部と、
上記コンタクト部を間に挟む左右に位置し、上記コネクタハウジングに圧入される一対の圧入部と、
上下に向いた破断面を有し上記支持部の左右両側からそれぞれ前方に折れ曲がって帯状に延びた後、破断面を上下に向けたまま上下方向に延びる中心軸の回りに上記コンタクト部から離れる左右外向きに湾曲し後方に延びて上記一対の圧入部それぞれに繋がった、弾性変形により上記コンタクト部を左右方向に変位自在に支持する一対のばね部とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の電気コネクタは、接触アームを支持する支持部がばね部によりさらに支持されているので、電気的接続が途切れ難い。また、コンタクトにおける接触アームの変位が圧入部による制限から解放される。したがって、接触アームが変位する範囲が拡大し、又はコンタクトをより狭ピッチで配置できる。さらに、製造が容易なコンタクトを備えた電気コネクタの製造もまた容易である。
【0019】
ここで、上記本発明の電気コネクタにおいて、上記ハウジングが、相手コンタクトを上方から受け入れる挿入開口を有し、当該ハウジングが、上記支持部の上端から離れてこの上端を前後から挟み、この支持部の前後方向への傾動を規制する傾動規制壁を有するものであることが好ましい。
【0020】
支持部の前後方向への傾動が規制されることで支持部から前方に延びた接触アームの上下方向への過度の捻りが抑えられる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、電気的接続が途切れ難く、接触アームが変位する範囲が拡大され、かつ、製造が容易なコンタクトおよび電気コネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態であるコンタクトの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態であるコンタクトの投影図である。
【図3】図2に示すコンタクトの3−3線断面を示す断面図である。
【図4】図1に示すコンタクトを製造する工程を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態である電気コネクタの外観を示す斜視図である。
【図6】相手側コネクタの外観を示す斜視図である。
【図7】カバーにコンタクトが取り付けられる様子を示す分解斜視図である。
【図8】コネクタの、コンタクトの1つの中央を通る縦断面を示す断面図である。
【図9】図8に示すコネクタの一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図10】従来技術のコンタクトを示す斜視図である。
【図11】図10とは別の従来技術のコンタクトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照して本発明のコンタクトおよび電気コネクタの実施の形態を説明する。
【0024】
図1および図2は、本発明の第1実施形態であるコンタクトの外観図である。図1のパート(A)は、コンタクト1を相手側コンタクトを受容する正面側を斜め上方から見た斜視図であり、図1のパート(B)は背面側を斜め下方から見た斜視図である。また、図2のパート(A)はコンタクト1の平面図であり、パート(B)は正面図であり、パート(C)は底面図であり、パート(D)は右側面図である。
【0025】
コンタクト1は、例えばプリント回路基板の導体パターンに半田接続されるとともに、後述する相手側コンタクトに接触して電気的に結合する部品であり、コンタクト部2と、一対の圧入部3,4と、一対のばね部5,6と、一対の基板接続部7,8とを有する。コンタクト1は、板金部材である金属板を打抜き加工および折曲げ加工することによって製造されたものであり、コンタクト部2、圧入部3,4、ばね部5,6、および基板接続部7,8は一体に形成されている。
【0026】
コンタクト部2は、互いに対向して延びた一対の接触アーム21,22と、接触アームに連結されて接触アームを支持する板状の支持部23を有する。接触アーム21,22は、支持部23の接触アーム21,22が対向する左右方向LRにおける両側から90°に折れ曲がって延びている。ここで、コンタクト1において、接触アーム21,22が支持部23から延びる向きを前方Fとし、その反対の向きを後方Bとする。また、接触アーム21,22が互いに対向する向きを右Rおよび左Lとし、接触アーム21,22が対向する左右方向LRを対向方向LRとも称する。また、圧入部3,4が延びる向きを上方Uとし、その反対の向きを下方Dとする。
【0027】
一対の接触アーム21,22は、支持部23の左右方向LRにおける両側から折れ曲がって前方Fに延びており、接触アーム21,22の先端には球面状の接触片21a,22aが設けられている。接触片21a,22aの隙間は、相手側コンタクト331(図6参照)の厚さよりも狭く設定されている。板状の相手側コンタクトが接触アーム21,22の間に挿入されると、接触アーム21,22が弾性変形して、接触片21a,22aの間が広がり相手側コンタクトを受け入れるとともに、接触片21a,22aで相手側コンタクトを左右方向LRにおける両側から挟む。接触片21a,22aの双方が相手に向かって球面状に膨らんだ曲面を有することで、接触片21a,22aの間に挟まれた相手側コンタクトの削れが抑えられる。また、接触アーム21,22は、支持部23の左右方向LRにおける両側から折れ曲がって前方Fに延びた形状であるため、相手側コンタクトを支持部23の位置まで後方Bすなわち奥側に受け入れることができる。支持部23の中央部には、印圧加工により後方Bに膨らんだ、上下方向UDに延びた凸条23bが形成されており、支持部23の曲げに対する強度が高められている。また、支持部23の上端には、突出片23aが形成されている。
【0028】
ばね部5,6は、板金部材の打抜き加工によって形成された破断面Cが、上下UDのそれぞれを向いた帯状に延びた部分であり、支持部23と圧入部3,4とを繋いでいる。具体的には、ばね部5,6は、支持部23の左右方向LR両側からそれぞれ前方Fに折れ曲がって帯状に延びた後、破断面Cを上下UDに向けたまま、上下方向UDに延びる中心軸Pの回りにコンタクト部2から離れる左右LR外向きに湾曲し後方Bに延びて一対の圧入部3,4それぞれに繋がっている。より詳細には、ばね部5,6のそれぞれは、上下UDに向いた破断面Cを有し支持部23から前方Fに向かって帯状に延びた第1延長部5a,6aと、第1延長部5a,6aの先から、中心軸Pの回りにコンタクト部2から離れる左右LR外側に湾曲した第1U字部5b,6bと、第1U字部5b,6bから上方Uに向かって延び、さらに後方Bに曲がって下方Dに向かって延びた第2のU字部5c,6cと、第2U字部5c,6cの下方Dに向かって延びた下端と圧入部3,4の下端とを繋ぐ繋ぎ部5d,6dとを有する。接触アーム21,22のそれぞれは、支持部23の、ばね部5,6よりも上方Uにおける左右方向LR両側から前方Fに折れ曲がって前方Fに向かって延びている。
【0029】
図3は、図2に示すコンタクト1の3−3線断面を示す断面図である。図3に示されるように、接触アーム22は、前方F斜め下方Dに延びさらに前方F斜め上方Uに延びている。このことは、接触アーム22の反対側に配置された接触アーム21についても同様である。また、第1延長部5aは、接触アーム22との接触を避けて前方F斜め下方Dに延びさらに前方F斜め上方Uに延びた形状を有する。このことは、第1延長部5aの反対側に配置された第1延長部6aについても同様である。破断面Cを上下に向けたまま、上下UDに延びる中心軸P(図1参照)の回りに湾曲する第1U字部5b,6bの形状は、例えば、破断面を前後FRに向け、前後に延びる中心軸の回りに湾曲した形状の場合に比べて、湾曲部分が下ではなく前に張り出すため、上下方向UDの寸法が縮まる。このため、第1U字部5b,6bに続く第1延長部5a,6aは、前方F斜め下方Dに延びさらに前方F斜め上方Uに延びた接触アーム21,22との接触を避けて、前方F斜め下方Dに延びさらに前方F斜め上Uに延びた形状となることができる。この結果、接触アーム21,22は、アームの長さを維持したまま、この接触アーム21,22の前端である接触片21a,22aの前端から、支持部23までの前後方向FBの寸法が縮まっている。したがって、接触アーム21,22が左右方向LRに変位する範囲を維持したまま、コンタクト1が小型化する。
【0030】
再び図1および図2を参照して説明を続けると、圧入部3,4は、繋ぎ部5d,6dの端から上方Uに向かって延びている。圧入部3,4には、圧入後の抜け止めのためのバーブ3a,4aが形成されている。コンタクト1は、圧入部3,4が、後述する電気コネクタのカバーに圧入されることによって、そのカバーに固定される。コンタクト部2は、圧入部3,4がカバーに圧入された状態では、この圧入部3,4に繋がり弾性変形するばね部5,6によって左右方向LRに変位自在に支持される。図2のパート(A)によりよく示されるように、繋ぎ部5d,6dは、左右方向LRの外側に僅かに曲げられており、圧入部3,4は左右方向LRにおける外側に離れた位置に配置されている。これによって、後に説明するカバーの固定溝部223(図7参照)の肉厚分が調整される。
【0031】
基板接続部7,8は、回路基板等に半田接続される部分であり、圧入部3,4の下端から後方Bに延びており、先端が90°に左右方向LRに沿った内方へ折れ曲がっている。
【0032】
コンタクト1は、ばね部5,6が弾性変形することによって、コンタクト部2を接触アーム21,22ごと左右方向LRに変位可能に支持する。したがって、コンタクト1が接触アーム21,22で相手側コンタクトを挟んだ状態において、相手側コンタクトが外力によって左右方向LRに移動した場合には、ばね部5,6が弾性変形し、接触アーム21,22の双方が支持部23ごと、相手側コンタクトの移動に追従して変位する。
【0033】
例えば、図10に示す従来技術のコンタクト800では、相手側コンタクトの両側に配置される2つの自由端803が、別々のばね部804にそれぞれ直接繋がっている。このため、相手側コンタクトに振動や衝撃が加わると、2つのばね部804のうちの一方の動きに他方が追従できず、2つの自由端803と相手側コンタクトとの間に瞬間的に隙間が生じ電気的接続が途切れてしまうおそれがある。
【0034】
これに対し、上述した実施形態のコンタクト1では、一対の接触アーム21,22が共に支持部23に繋がり、一対のばね部5,6もこの支持部23に繋がった構造である。このため、一対の接触アーム21,22は、ばね部5,6に支持された支持部23ごと一体となって移動する。したがって、衝撃が加わった場合にも、接触アーム21,22が相手側コンタクトを挟んだ状態が維持され、電気的接続が途切れ難い。またさらに、コンタクト1は、ばね部5,6が圧入部3,4よりも前方Fに延びた後にさらに後方Bに延びて圧入部3,4それぞれに繋がった構造を有しており、圧入部3,4が接触アーム21,22の先端の接触片21a,22aよりも後方Bに位置している。このため、接触アーム21,22の先端の接触片21a,22aと圧入部3,4との干渉が避けられる。したがって、図11に示すような、圧入部が接触片と並んで前方に配置された従来の構造に比べ、接触アーム21,22の左右方向LRに変位可能な範囲が大きい。また、本実施形態のコンタクト1は、接触片21a,22aが球面状の膨らみを有しているため、相手側コンタクトを間に挟んだ状態での、接触アーム21,22の先端の左右方向LRにおける端から端までの幅は、相手側コンタクトの厚みに、球面状の接触片21a,22aの膨らみ高さが加わったものとなる。この接触アーム21,22の先端が相手側コンタクトに追従して変位するには、上記の相手コネクタの厚みおよび接触片21a,22aの膨らみの高さに、接触アーム21,22の先端の変位幅を加えた幅の空間が確保されている必要がある。本実施形態のコンタクト1は、圧入部3,4と接触アーム21,22の先端の接触片21a,22aとの干渉が避けられており、接触片21a,22aが曲面を有していても、変位のための空間が十分に確保される。
【0035】
続いて、コンタクト1を製造する工程を説明する。
【0036】
図4は、図1に示すコンタクトを製造する工程を示す図である。図4には、コンタクトを製造する工程がパート(A)からパート(C)まで順に示されている。
【0037】
コンタクト1は、導電性の板金部材を打抜き加工および折曲げ加工することにより製造される。板金部材としては、例えば、銅合金といった高弾性を有する導電性薄板が用いられる。金属板からの打抜き加工および接触片21a,22aの曲げ加工によって、図4のパート(A)に示すコンタクト材料100が得られる。コンタクト材料100には、板金部材からの打抜き加工によって、破断面Cが形成される。図4のパート(A)では、破断面Cにハッチングが施されている。また、コンタクト材料100には、印圧加工による凸条23bも形成されている。なお、コンタクト材料100は、板金部材から、キャリアに繋がった状態で複数個並んで打ち抜かれ、キャリアに繋がった状態で図4のパート(A)からパート(C)までに示す折り折曲げが施され、最後に切り離されるが、図ではキャリアは省略し、1個のコンタクトに対応する部分のみ図示する。なお、パート(A)に示すコンタクト材料の接続片23aは、キャリアに繋がり、最終段階で切り離され、支持部23の上端に突出して設けられた突出片23a(図1参照)になる部分である。
【0038】
まず、コンタクト材料100を線aおよび線bに沿って90°に折り曲げて接触アーム21,22およびばね部5,6を形成する(パート(A))。また、必要に応じ、圧入部3,4の付け根部分も折り曲げる。図4のパート(A)に示すように、ばね部5,6は、破断面Cが、上下UDのそれぞれを向いた帯状に延びた部分である。
【0039】
次に、コンタクト材料100を、コンタクトが完成した状態での上下方向UDに延びる中心軸Pの回りに180°に折り曲げて、第1U字部5b,6bを形成する(パート(B))。図4のパート(C)に示すように、第1U字部5b,6bは、破断面Cを上下UDに向けたまま、上下UDに延びる中心軸P(図1参照)の回りに湾曲した形状となる。さらに必要に応じて、基板接続部7,8が折り曲げられる。なお、第2U字部5c,6c(図1参照)の曲がった形状は、金属板から打抜かれた形状として形成されている。このようにして、コンタクト1が完成する。
【0040】
図1に示すコンタクト1において、接触アーム21,22が相手側コンタクトを左右方向LR両側から挟む構造および、ばね部5,6の前方Fに向かって延びた第1延長部5a,6aの構造は、図4に示すコンタクト材料を、上下方向UDに延びる線aおよび線bに沿って1回ずつ90°に折り曲げることで得られる。また、左右外側に折れ曲がった第1U字部5b,6bの形状は、コンタクト材料を上下方向UDに延びる中心軸Pの回りに1回ずつ180°に折り曲げることで得られる。このように、コンタクト1は、製造中における180°の折り曲げが左右1回ずつで済むので、図10に示す従来技術のコンタクト800に比べ製造が容易である。またさらに、ばね部5,6が前方Fに延びた形状と、第1U字部5b,6bが左右外側に折れ曲がった形状とのそれぞれは、互いに平行な関係にある線a、線b、および、中心軸Pの回りに湾曲ないし折れ曲がるように折曲げ加工することで形成される。このため、製造機械で折曲げ加工することが容易である。
【0041】
続いて、本発明の第2実施形態を説明する。
【0042】
図5は、本発明の第2実施形態である電気コネクタの外観を示す斜視図である。図5のパート(A)は、電気コネクタ200(以下、電気コネクタを単にコネクタという。)を相手側コネクタが接続される側から見た斜視図であり、パート(B)は、コネクタ200をパート(A)とは反対側から見た斜視図である。また、図6は、相手側コネクタの外観を示す斜視図である。
【0043】
コネクタ200は、図6の相手側コネクタ300が接続される部品であり、第1実施形態で説明したコンタクト1が3個と、コンタクト1を取り囲んで保護するドーム状のカバー220とを有している。コネクタ200は、例えば、携帯電話機の内部に取り付ける薄型電池ユニットに使用されるものであり、薄型電池ユニット内の回路基板にはんだ接続され、携帯電話機に設けられた相手側コネクタ(図6参照)に結合するコネクタとして使用される。カバー220は電池ユニットの筐体の一部となる。カバー220が本発明にいうコネクタハウジングの一例に相当する。図5のパート(B)には、回路基板が取り除かれた状態の電気コネクタの底面が示されている。
【0044】
一方、図6に示す相手側コネクタ300は、互いに略平行に配置された金属材料からなる3つの板状の相手側コンタクト331と、この相手側コンタクト331を固定する絶縁性材料からなる固定部材302とを有している。
【0045】
図5に戻ると、カバー220には、3つのコンタクト収容室221が設けられており、それぞれのコンタクト収容室221毎に挿入開口222が形成されている。図5のパート(A)に示すように挿入開口222のそれぞれは、カバー220の前面から上面に亘って設けられている。このカバー220の挿入開口222は、前方、上方、および、斜め上方のいずれの方向からも相手側コネクタ300のコンタクト331を受け入れる。カバー220内に受け入れられた相手側コネクタ300のコンタクト331は、コンタクト1と電気的に結合する。
【0046】
図7は、カバーにコンタクトが取り付けられる様子を示す分解斜視図である。
【0047】
図7に示すように、コンタクト収容室221を区画する壁には、固定溝部223が形成されている。コンタクト1がコンタクト収容室221に収容される際に、圧入部3,4が固定溝部223に圧入される。
【0048】
コンタクト1は、例えば図2を参照して説明したように、圧入部3,4が接触アーム21,22の先端の接触片21a,22aよりも後方Bに位置している。このため、圧入部が接触片と並んで前方に配置された従来の構造に比べ、接触アームが左右方向LRに変位可能な範囲が大きい。また、変位可能な範囲を従来の構造と同程度に維持する場合には、一対の圧入部の間隔を狭めることによって、3個のコンタクト1をコネクタ200に、間隔を狭めて配置することが可能である。この場合には、コンタクトの狭ピッチ化によってコネクタやコネクタが取り付けられる部品の小型化が図られる。またさらに、例えば図2を参照して説明したように、コンタクト1の接触アーム21,22は、アーム長さを維持したまま、接触アーム21,22の前後方向FB寸法、すなわち、この接触アーム21,22の前方Fに設けられた接触片21a,22aの前端から、支持部23までの前後方向FBの寸法が縮まっている。そして、コンタクト1の接触アーム21,22の寸法が縮まった分、コンタクト1を内蔵したコネクタ200の前後方向FBの寸法を縮めることができる。前後方向FBが、コネクタ200が設けられる例えば薄型電池ユニットの厚み方向である場合には、薄型電池ユニットの厚みが薄型化できる。
【0049】
また、図8は、コネクタの、コンタクトの1つの中央を通る縦断面を示す断面図である。また、図9は、図8に示すコネクタの一部を拡大して示す拡大断面図である。
【0050】
図8に示すように、カバー220は、コンタクト1の支持部23の上端から離れてこの上端を前後FBから挟む傾動規制壁225を有する。傾動規制壁225は、より詳細には、図9に示すように、コンタクト1の支持部23の上端に設けられた突出片23aから離れて突出片23aを前後FBから挟む位置に設けられており、支持部23の前後方向FBへの傾動を規制する。なお、傾動規制壁225及び突出片23aが互いに離間しているので、支持部23の左右方向LRの移動を阻害しない。
【0051】
相手側コネクタ300のコンタクト331(図6)が、コンタクト1の接触アーム21,22の間に前方Fの斜め上方Uから入り込んできた場合には、接触アーム21,22(図1参照)の先端には、上下方向UDに力が掛かる。しかし、支持部23の前後方向FBへの傾動は傾動規制壁225によって規制されているため、支持部23に繋がった接触アーム21,22の上下方向UDへの傾動が規制される。このため、接触アーム21,22の対向方向LR(図1参照)への変位以外の、コンタクト1における、不適切な捻りや変形が抑えられる。
【0052】
なお、上述した第1実施形態のコンタクト1においては、線a,b以外に、圧入部3,4の付け根部分や基板接続部7,8も折曲げ加工されているが、本発明のコンタクトはこれに限られるものではなく、回路基板やカバーのレイアウトのための付加的な折曲げ加工を省略したものであってもよい。また、第2実施形態において、コンタクト1の数は3個であったが、4個又は5個等の3以外の数であってもよい。
【0053】
また、上述した第2実施形態のコネクタ200においては、傾動規制壁225が、支持部23の上部から突出した突出片23aを前後FBから挟む位置に設けられているが、本発明のコネクタはこれに限られるものではなく、例えば、支持部23には、突出した部分は設けられておらず、傾動規制壁225が、支持部23の上部を挟む位置に設けられているものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 コンタクト
2 コンタクト部
3,4 圧入部
5,6 ばね部
5a,6a 第1延長部
5b,6b 第1U字部
5c,6c 第2U字部
5d,6d 繋ぎ部
7,8 基板接続部
21,22 接触アーム
23 支持部
23a 突出片
200 電気コネクタ
220 カバー
221 コンタクト収容室
225 傾動規制壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金部材の打抜き加工および折曲げ加工により形成された、コネクタハウジングに取り付けられ相手側コンタクトと接触するコンタクトであって、
互いに対向して前方に延び、前記相手側コンタクトを左右方向両側から挟む一対の接触アーム、および該一対の接触アームを支持する支持部を有するコンタクト部と、
前記コンタクト部を間に挟む左右に位置し、前記コネクタハウジングに圧入される一対の圧入部と、
上下に向いた破断面を有し前記支持部の左右両側からそれぞれ前方に折れ曲がって帯状に延びた後、破断面を上下に向けたまま上下方向に延びる中心軸の回りに前記コンタクト部から離れる左右外向きに湾曲し後方に延びて前記一対の圧入部それぞれに繋がった、弾性変形により前記コンタクト部を左右方向に変位自在に支持する一対のばね部とを備えたことを特徴とするコンタクト。
【請求項2】
前記圧入部が、上下に延びたものであり、
前記一対のばね部のそれぞれが、
上下に向いた破断面を有し前記支持部から前方に向かって帯状に延びた第1延長部と
前記第1延長部の先から前記中心軸の回りに湾曲した第1U字部と、
前記第1U字部から上方に向かって延び、さらに後方に曲がって下方に向かって延びた第2U字部と、
前記第2U字部の下方に向かって延びた下端と前記圧入部の下端とを繋ぐ繋ぎ部とを有するものであり、
前記接触アームが、前記支持部の、前記一対のばね部よりも上方における前記左右方向両側から前方に折れ曲がって前方斜め下方に延びさらに前方斜め上方に延びたものであって、
前記第1延長部が、前記接触アームとの接触を避けて前方斜め下方に延びさらに前方斜め上に延びた形状を有することを特徴とする請求項1記載のコンタクト。
【請求項3】
板金部材の打抜き加工および折曲げ加工により形成された、相手側コンタクトと接触するコンタクトと、このコンタクトが取り付けられるハウジングを備えた電気コネクタであって、
前記コンタクトが、
互いに対向して前方に延び、前記相手側コンタクトを左右方向両側から挟む一対の接触アーム、および該一対の接触アームを支持する支持部を有するコンタクト部と、
前記コンタクト部を間に挟む左右に位置し、前記コネクタハウジングに圧入される一対の圧入部と、
上下に向いた破断面を有し前記支持部の左右両側からそれぞれ前方に折れ曲がって帯状に延びた後、破断面を上下に向けたまま上下方向に延びる中心軸の回りに前記コンタクト部から離れる左右外向きに湾曲し後方に延びて前記一対の圧入部それぞれに繋がった、弾性変形により前記コンタクト部を左右方向に変位自在に支持する一対のばね部とを備えたことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングが、相手コンタクトを上方から受け入れる挿入開口を有し、当該ハウジングが、前記支持部の上端から離れて該上端を前後から挟み、該支持部の前後方向への傾動を規制する傾動規制壁を有するものであることを特徴とする請求項3記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−33412(P2012−33412A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172816(P2010−172816)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】