説明

コンタクトレンズ洗浄保存パック

【課題】
コンタクトレンズを洗浄する際に、コンタクトレンズを包み込みして落下の虞がなく、手指に付着した体脂質や雑菌が洗浄時にコンタクトレンズに付着することがなく、コンタクトレンズを装着しない場合はコンタクトレンズを保存することができるコンタクトレンズ洗浄保存パックを提供する。
【解決手段】
パック10は出入部16を有する袋部14を備え、袋部14がその内面を形成する洗浄層18を有し、かつ洗浄層18を覆って、手指の体脂質及び雑菌の浸入を防止する浸入防止層20を有する。洗浄者は袋部14内にコンタクトレンズ,洗浄液を袋部14内に入れて袋部14の外部から指を使用してコンタクトレンズを擦り洗いする。擦り洗い時に浸入防止層20により袋部14の内部への手指の体脂質及び雑菌の浸入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンタクトレンズを洗浄することができるとともに保存することができるコンタクトレンズ洗浄保存パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、化粧品、体脂質、種々の汚染物質や微生物等がレンズ上に付着することから、定期的に洗浄を行う必要がある。そのため、従来、コンタクトレンズのケアのために、コンタクトレンズを洗浄するための洗浄シート等の洗浄クリーナが特許文献1〜4に示すように提案されている。
【0003】
特許文献1では、洗浄クリーナとしてのパッドが、熱可塑性の重合体からなる不織繊維ウエブで形成され、該ウエブに界面活性剤が含浸されている。そして、例えば、前記ウエブを人指し指等に巻き付けてコンタクトレンズに対して擦ることにより、コンタクトレンズの洗浄を行うようしている。
【0004】
特許文献2では、タンパク質に親和性を有する繊維に洗浄液を含有せしめた洗浄クリーナが開示されている。この洗浄クリーナは、長方形、正方形、三角形などの方形状、円形状等の形状をした不織布シートで構成され、このシート上にコンタクトレンズをこすりつけることにより、コンタクトレンズ上のタンパク質を除去するようにしている。
【0005】
特許文献3では、不織布からなる吸水性シート材に対して塩化ナトリウムや塩化カリウムのいずれかと、防腐剤と洗浄液とを含浸させることにより、洗浄クリーナが構成されている。そして、特許文献3では、クリーナを防水性の包装に入れて持ち運ぶことが開示されている。
【0006】
特許文献4のコンタクトレンズの洗浄クリーナは、筒状に形成された樹脂多孔体から構成されている。そして、この筒状の洗浄クリーナを指に装着して洗浄液を含浸させた状態でコンタクトレンズにこすり合わせることによりコンタクトレンズを洗浄するようにしている。
【0007】
なお、特許文献5には、手が挿入可能な防水性袋の外面に掻き取り素材と拭き取り素材が配置された清掃用布体が開示されている。
【特許文献1】特公平1−46047号公報
【特許文献2】特開2000−19464号公報
【特許文献3】特開2002−296550号公報
【特許文献4】特開2004−126042号公報
【特許文献5】特開平10−14840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1〜4の洗浄クリーナは、手指、爪によるレンズへの傷混入、及び手指からコンタクトレンズへの汚れの付着を完全に防止することができない。例えば、特許文献1〜3では、洗浄クリーナがシート状に形成されていると、洗浄時にコンタクトレンズを把持しそこなった際に、直接手指がコンタクトレンズに触れてしまい、手指の体脂質が付着することがある。
【0009】
又、特許文献1〜3では、不織布や、不織繊維で形成されていることから、手指に付着した体脂質や雑菌が不織布や不織繊維を透過してしまい、透過した体脂質や雑菌により洗浄時にコンタクトレンズが汚染する虞もある。
【0010】
さらに、特許文献1〜3では、洗浄クリーナがシート状に形成されているため、洗浄時にコンタクトレンズを覆うことはできず、空いているところからコンタクトレンズを落下させる虞がある。又、特許文献4では、親指や人指し指にそれぞれ洗浄クリーナを装着した状態で、コンタクトレンズを両指で挟み、擦り洗いをすることから、この場合、洗浄液等が洗浄クリーナに含浸されているため、コンタクトレンズを掴みそこねて落下させる虞もある。コンタクトレンズを落下させてしまうと、コンタクトレンズに傷が混入したり、レンズが損傷したり、レンズへの雑菌の付着等の虞がある。
【0011】
なお、特許文献5で開示された清掃用布体は、台所回りのレンジや壁等を清掃する際に使用されるものであって、本願発明と構成及び使用目的が異なる。
本発明は、コンタクトレンズを洗浄する際に、コンタクトレンズを包み込みして落下の虞がなく、手指に付着した体脂質や雑菌が洗浄時にコンタクトレンズに付着することがなく、しかも、コンタクトレンズを装着しない場合はコンタクトレンズを保存することができるコンタクトレンズ洗浄保存パックの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、外部と連通可能な出入部を有する袋部を備え、前記袋部が、その内面を形成する洗浄層を有し、かつ、前記洗浄層を覆って、手指の体脂質及び雑菌の浸入を防止する浸入防止層を有することを特徴とするコンタクトレンズ洗浄保存パックを要旨とするものである。
【0013】
請求項1の発明によれば、洗浄者は、袋部内に予め洗浄液を入れて洗浄層に含浸せしめ、或いは、コンタクトレンズとともに洗浄液を袋部内に入れてコンタクトレンズを袋部に収納した状態で袋部の外部から指を使用してコンタクトレンズを擦り洗いする。洗浄者による擦り洗い時には、浸入防止層により袋部の内部への手指の体脂質及び雑菌の浸入が防止され、又、洗浄液の袋部外部への漏出が防止される。
【0014】
又、袋部の外部からコンタクトレンズが擦り洗いされることにより、洗浄者自身の手指、爪によるコンタクトレンズへの傷の混入が防止され、又、袋部内にコンタクトレンズが収納された状態で洗浄が行われることからコンタクトレンズの落下が、従来と異なり、抑制される。又、擦り洗いの終了後は、洗浄者は洗浄液を出入部から排出し、新しい洗浄液(保存液)を入れてコンタクトレンズを袋部に収納した状態で保存する。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1において、前記洗浄層及び浸入防止層が可撓性を有し、前記袋部内に収納されたコンタクトレンズが袋部外部から擦り洗い可能にされていることを特徴とする。請求項2の発明によれば、洗浄層及び浸入防止層が可撓性を有することから、袋部に収納されたコンタクトレンズの形状に応じて洗浄層や浸入防止層が変形されるため、コンタクトレンズに対する洗浄層の擦り洗い時の洗浄性が高められる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記洗浄層が、不織布から構成されていることを特徴とする。請求項3の発明によれば、洗浄液が袋部に入れられると洗浄層が洗浄液を好適に含浸し、コンタクトレンズ洗浄時に、コンタクトレンズの洗浄が良好に行われる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記出入部には、同出入部を閉鎖する閉鎖手段を備えていることを特徴とする。請求項4の発明によれば、閉鎖手段により出入部が閉鎖されて、コンタクトレンズの洗浄時及び保存時において、完全に包み込みするため、コンタクトレンズや、洗浄液が外部へ出ることがなくなる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項4において、前記閉鎖手段が、前記出入部に設けられたファスナーで形成されていることを特徴とする。請求項5によれば、ファスナーにより、請求項4の作用を容易に実現できる。
【0019】
請求項6の発明は、請求項4において、前記閉鎖手段が、前記出入部に取着されるクリップであることを特徴とする。請求項6によれば、クリップにより、請求項4の作用を容易に実現できる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項4において、前記出入部が折り畳みされることにより、前記閉鎖手段が構成されることを特徴とする。請求項7によれば、出入部が折り畳みされることにより、請求項4の作用を容易に実現できる。
【0021】
請求項8の発明は、請求項7において、前記出入部が折り畳みされた状態を保持する保持手段を備えていることを特徴とする。請求項8によれば、保持手段により、前記出入部が折り畳みされた状態に保持され、すなわち、閉塞状態に保持される。
【0022】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項において、前記浸入防止層が、不滑性材質からなることを特徴とする。請求項9によれば、浸入防止層が不滑性材質から形成されているため、浸入防止層を介して袋部の外部から袋部内に収納されたコンタクトレンズを手指で擦り洗いする際に、手指が浸入防止層から滑ることがなく、良好にコンタクトレンズを擦り洗いすることができる。
【0023】
請求項10の発明は、請求項4乃至請求項9のうちいずれか1項において、前記袋部には、前記閉鎖手段により前記出入部が閉鎖された袋部を破り始めるための引裂開始部が縁部に設けられていることを特徴とする。
【0024】
請求項10によれば、引裂開始部により、出入部が閉鎖された袋部を破ることができ、容易に、袋部に保存されたコンタクトレンズを取り出すことができる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、コンタクトレンズを洗浄する際に、コンタクトレンズを包み込みして落下の虞がなく、手指に付着した体脂質や雑菌が洗浄時にコンタクトレンズに付着することがなく、しかも、コンタクトレンズを装着しない場合はコンタクトレンズを保存することができる。
【0026】
請求項2の発明によれば、袋部に収納されたコンタクトレンズの形状に応じて洗浄層や浸入防止層が変形されるため、コンタクトレンズに対する洗浄層の擦り洗い時の洗浄性を高めることができる。
【0027】
請求項3の発明によれば、洗浄液が袋部に入れられると洗浄層が洗浄液を好適に含浸し、コンタクトレンズ洗浄時に、コンタクトレンズの洗浄を良好に行うことができる。
請求項4の発明によれば、閉鎖手段により出入部が閉鎖されて、コンタクトレンズの洗浄時及び保存時において、コンタクトレンズや、洗浄液が外部へ出ることがなくなる。
【0028】
請求項5の発明によれば、ファスナーにより、請求項4の効果を容易に実現できる。
請求項6の発明によれば、クリップにより、請求項4の効果を容易に実現できる。
請求項7の発明によれば、出入部が折り畳みされることにより、請求項4の効果を容易に実現できる。
【0029】
請求項8によれば、保持手段により、前記出入部が閉塞状態に保持でき、洗浄液或いは保存液、並びにコンタクトレンズが袋部から外へ出ることが防止できる。
請求項9の発明によれば、浸入防止層が不滑性材質から形成されているため、浸入防止層を介して袋部の外部から袋部内に収納されたコンタクトレンズを手指で擦り洗いする際に、手指が浸入防止層から滑ることがなく、良好にコンタクトレンズを擦り洗いすることができる。
【0030】
請求項10の発明によれば、引裂開始部により、出入部が閉鎖された袋部を容易に破ることができ、袋部に保存されたコンタクトレンズを簡単に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明のコンタクトレンズ洗浄保存パック(以下、単にパックという)を具体化した第1実施形態を図1〜図3を参照して説明する。
パック10は、長方形をなす一対の積層シート12が4辺のうち3辺にて接着されることにより形成された袋部14を有する。袋部14の周辺のうち、接着されていない辺には、出入部16が形成されている。すなわち、本実施形態では、出入部16は、積層シート12の長手方向Aに位置する一方の辺縁部に出入部16が設けられて、積層シート12の短手方向Bに延出されている。
【0032】
積層シート12は、袋部14の内面を形成する洗浄層18と、同洗浄層18の外面側に積層された浸入防止層20とから形成されている。
洗浄層18は、不織布からなる。洗浄層18は、操作がしやすい厚さ、例えば、0.1〜5mm、好ましくは、0.1〜1mmの厚さを有する。不織布は、繊維ウエブを形成する単量体の重合体及び共重合体からなる材料から形成され、可撓性を有する。これらの重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリアルキレン、ポリ塩化ビニルや、種々のナイロン等のポリアミド、ポリスチレン、ポリアリールスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリエーテルポリウレタン等のポリウレタン等がある。不織布は、微細繊維及びけん縮ステープルフアイバーの均質ブレンドである組合せで構成されていてもよい。
【0033】
ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル及び他のウエブ形成繊維は、非常に低い毛羽発生を与えるために公知のエンボシング及びピローシングの方法で加工できる。
【0034】
不織布の繊維直径は、重合体の特性がコンタクトレンズをひっかき得ないように、かつ、タンパク質、脂質、及び生物学的由来の汚染物質をコンタクトレンズから除くために、非常に小さいものが好ましい。不織布の繊維直径は、平均直径が50μm以下、好ましくは、20μm以下、さらに好ましくは、10μm程度のものがよい。なお、図1、図2では、説明の便宜上、洗浄層18、浸入防止層20の厚さは誇張して示されている。
【0035】
浸入防止層20は、不滑性材質として天然ゴムや、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムからなり、可撓性を有する。これらの不活性材質から浸入防止層20が形成される場合は、洗浄時にその表面に指当てした場合、指が滑らなくて好ましい。前記ゴム以外に、浸入防止層20は、PVC樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエステル樹脂(PET)等の合成樹脂にて形成して、可撓性を有していてもよい。浸入防止層20は、洗浄液が外に漏れ出るのを防ぐ防水機能及び手指の体脂質や雑菌等が内部に浸入するのを防止するため、十分な厚さ、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.05mm〜2.0mmの厚さを有する。
【0036】
浸入防止層20は、ゴム又は樹脂のフィルム、溶液、ペースト、又はストレートなどを用いて、カレンダリング、コーティング等の公知の方法によって洗浄層18に積層されている。なお、浸入防止層20を形成するこれらのゴム又は樹脂には、安定剤、可塑剤、着色剤、紫外線吸収剤等の他の機能付与剤が含まれていてもよい。
【0037】
パック10(すなわち、袋部14)を形成する場合、一対の積層シート12の洗浄層18が互いに対向するように面合わせされた状態で、一辺を残して3辺がヒートシール或いは接着剤を使用して接合される。
【0038】
さて、上記のように構成されたパック10の作用を説明する。
図1、図2に示すように、洗浄者は出入部16を介してコンタクトレンズCL及び界面活性剤を含む洗浄液Sを袋部14内に入れる。なお、洗浄者は、コンタクトレンズCLを入れる前に洗浄液Sを袋部14内に予め入れて洗浄層18に含浸させてもよい。この状態で、図3(a)に示すように、洗浄者は出入部16を閉じた状態にし、図3(b)に示すように、積層シート12の出入部16側の辺縁部を1回以上巻回するようにして折り畳む。なお、図3(a)、(b)では、各積層シート12は説明の便宜上、2層(洗浄層18,浸入防止層20)分を1層分として図示されている。
【0039】
この折り畳んだ状態で、図3(b)で示すようにクリップ22で折り畳まれた部分を挟み込みし出入部16を閉じた状態にして密封保持する。
本実施形態では、出入部16の辺縁部が折り畳まれること及びクリップ22がそれぞれ閉鎖手段に相当する。
【0040】
なお、クリップ22は底壁22aと、底壁22aの両側縁から延びる一対の側壁22bにより横断面が略コ字状に形成され、両側壁22bは間隔は先端へ行くほどが幅狭となるようにして弾性を有している。又、クリップ22はその長さがパック10の長さと略同一に形成され、前記出入部16側の辺縁部の折り畳まれた部位を挟み込みした際に、両側壁22bにて同折り畳まれた部位を全長に亘って弾性的に包持することにより、洗浄液Sが袋部14から外部への漏出を防止する。このクリップ22は、長さ方向(すなわち、図3(a)において、紙面に直交する方向)の両端が開口されている。
【0041】
クリップ22の前記折り畳まれた部位への装着は、前記両側壁22bの長さ方向のいずれか一方の開口する部分から、折り畳まれた部分を抜き差し可能に挿入するか、或いは、図3(b)に示すように折り畳まれた部位に対して両側壁22bをその弾性に抗して開いた状態にして、咬着するようにしてはめ込むことにより行われる。
【0042】
上記のようにして洗浄者は出入部16を閉塞状態に保持し、この状態で、袋部14の外部から指を当て、すなわち、洗浄層18をコンタクトレンズCLに当て擦り洗いをする。この擦り洗い時において、浸入防止層20が不滑性材質であるゴムで形成されている場合には、指が浸入防止層20から滑ることがなく、良好にコンタクトレンズCLを擦り洗いすることができる。
【0043】
擦り洗いが終了した場合、洗浄者は、クリップ22を取り外して、折り畳まれた部位の出入部16を開口して、袋部14内の洗浄液Sを外部へ排出し、必要がある場合、新たな洗浄液を袋部14に入れてすすぎ洗いをし、この後、すぐにコンタクトレンズCLを使用する場合は、コンタクトレンズCLをパック10から取り出して眼に装用する。又、すぐにコンタクトレンズCLを使用しない場合には、洗浄者は袋部14内に生理食塩水等の保存液や或いは洗浄液を入れ、洗浄時と同様に、出入部16の辺縁部を折り畳みした状態でクリップ22を装着して密封し、この状態で保存する。
【0044】
このようにしてクリップ22は、出入部16の辺縁部を巻回状態に保持する保持手段に相当する。
さて、上記の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
【0045】
(1) 本実施形態のパック10は、外部と連通可能な出入部16を有する袋部14を備え、袋部14が、その内面を形成する洗浄層18を有し、かつ、洗浄層18を覆って、手指の体脂質及び雑菌の浸入を防止する浸入防止層20を有する。このため、洗浄者は、袋部14内に予め洗浄液Sを入れて洗浄層18に含浸せしめ、或いは、コンタクトレンズCLとともに洗浄液Sを袋部14内に入れてコンタクトレンズCLを袋部14に収納した状態で袋部14の外部から指を使用してコンタクトレンズCLを擦り洗いできる。そして、洗浄者による擦り洗い時には、浸入防止層20により袋部14の内部への手指の体脂質及び雑菌の浸入が防止され、又、洗浄液Sの袋部14外部への漏出が防止できる。又、袋部14の外部からコンタクトレンズCLが擦り洗いされることにより、洗浄者自身の手指、爪によるコンタクトレンズCLへの傷の混入が防止でき、又、袋部14内にコンタクトレンズCLが収納された状態で洗浄が行われることからコンタクトレンズCLの落下が、従来と異なり、抑制される。又、擦り洗いの終了後は、洗浄者は洗浄液を出入部16から排出し、新しい洗浄液(保存液)を入れてコンタクトレンズCLを袋部14に収納した状態で保存できる。
【0046】
この結果、コンタクトレンズCLを洗浄する際に、コンタクトレンズCLを包み込みして落下の虞がなく、手指に付着した体脂質や雑菌が洗浄時にコンタクトレンズCLに付着することがなく、しかも、コンタクトレンズCLを装着しない場合はコンタクトレンズCLを保存することができる。
【0047】
(2) 本実施形態のパック10は、洗浄層18及び浸入防止層20が可撓性を有し、袋部14内に収納されたコンタクトレンズCLが袋部14外部から擦り洗い可能にされている。この結果、洗浄層18及び浸入防止層20が可撓性を有することから、袋部14に収納されたコンタクトレンズCLの形状に応じて洗浄層18や浸入防止層20が変形できるため、コンタクトレンズCLに対する洗浄層18の擦り洗い時の洗浄性が高められる。
【0048】
(3) 本実施形態のパック10は、洗浄層18が、不織布から構成されている。この結果、本実施形態では洗浄液Sが袋部14に入れられると洗浄層18が洗浄液を好適に含浸し、コンタクトレンズ洗浄時に、コンタクトレンズCLの洗浄が良好に行うことができる。
【0049】
(4) 本実施形態のパック10は、出入部16には、同出入部16を閉鎖する閉鎖手段として、出入部16に取着されるクリップ22を備える。この結果、クリップ22により出入部16が閉鎖されて、コンタクトレンズCLの洗浄時及び保存時において、コンタクトレンズCLや、洗浄液S(保存液)が外部へ出ることがなくなる。特に本実施形態では、出入部16を密封できるため、上記効果をより高めることができる。
【0050】
(5) 又、本実施形態のパック10は、出入部16が折り畳みされることにより、出入部16を閉塞する閉鎖手段が構成される。この結果、折り畳みされることにより出入部16が閉鎖されて、コンタクトレンズCLの洗浄時及び保存時において、コンタクトレンズCLや、洗浄液S(保存液)が外部へ出ることがなくなる。又、本実施形態では、クリップ22にて、折り畳みされた部位の折り畳み状態を保持できるため、洗浄液S(又は保存液)の外部の漏出がなく、コンタクトレンズCLを長期に亘って良好に保存することができる。
【0051】
(6) 本実施形態のパック10は、出入部16が折り畳みされた状態を保持するクリップ22(保持手段)を備えているため、洗浄時や保存時に出入部16が折り畳みされた状態に保持でき、すなわち、閉塞状態に保持でき、洗浄液或いは保存液、並びにコンタクトレンズが袋部14から外へ出ることが防止できる。
【0052】
(7) 本実施形態のパック10は、浸入防止層20が、不滑性材質からなるため、浸入防止層20を介して袋部14の外部から袋部14内に収納されたコンタクトレンズCLを手指で擦り洗いする際に、手指が浸入防止層20から滑ることがなく、良好にコンタクトレンズCLを擦り洗いすることができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図4を参照して説明する。なお、第2実施形態を含めて以下で説明する他の実施形態において、第1実施形態と同一構成、及び相当する構成については第1実施形態の構成と同一符号を付してその詳細な説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。なお、図4(a)、(b)では、各積層シート12は説明の便宜上、2層(洗浄層18,浸入防止層20)分を1層分として図示されている。
【0054】
第2実施形態のパック10は、出入部16の辺縁部において、一方の積層シート12には両面粘着テープ24が出入部16の積層シート12の短手方向B(図4(a)において、紙面に直交する方向)に延びるようにして貼着されている。なお、図4(a)においては、パック10を使用する前は、両面粘着テープ24を取着する積層シート12と反対側の粘着面には、剥離シート26が貼着されている。
【0055】
このパック10を使用して、コンタクトレンズCLを洗浄する場合、洗浄者は袋部14内に第1実施形態と同様に洗浄液SやコンタクトレンズCLを入れた状態にし、剥離シート26を両面粘着テープ24から剥離する。そして、洗浄者は、図4(b)に示すように、積層シート12の出入部16側の辺縁部を1回転巻回するようにして折り畳みし、剥離シート26が貼着されていた両面粘着テープ24の粘着面を積層シート12に貼着する。このようにすると、出入部16が密封状態に保持される。この状態で第1実施形態と同様に洗浄者は、袋部14の外部から指を当て、すなわち、洗浄層18をコンタクトレンズCLに当て擦り洗いをする。
【0056】
擦り洗いした後は、洗浄者は両面粘着テープ24の一方の積層シート12に対する貼着及び積層シート12の出入部16側の辺縁部の巻回を解除して出入部16を開口する。この後、洗浄者は第1実施形態と同様にしてコンタクトレンズCLを眼に装用するか、或いは、袋部14に保存液を入れて再び出入部16側の辺縁部を前記と同様に巻回して両面粘着テープ24で巻回状態を保持し、コンタクトレンズCLを保存する。
【0057】
このように、両面粘着テープ24は、出入部16の辺縁部を巻回状態に保持する保持手段に相当する。
第2実施形態では、第1実施形態の(1)〜(3),(5),(7)と同様の効果を奏する他に下記の特徴がある。
【0058】
(1) 本実施形態のパック10は、第1実施形態のクリップ22の代わりに、両面粘着テープ24を設けることにより、第1実施形態のクリップが果たした(4),(6)と同様の効果を奏する。
【0059】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図5を参照して説明する。第3実施形態のパック10は、出入部16の辺縁部の積層シート12は、短手方向B(長手方向Aと直交する方向)の全長に亘って、洗浄層18が除かれて、互いに対向する浸入防止層20の内面には、レールファスナー28が設けられている。レールファスナー28は、一方の積層シート12の浸入防止層20内面に対して形成された雄型レール28aと、他方の積層シート12の浸入防止層20内面に対して形成された雌型レール28bからなり、雄型レール28a,雌型レール28bとが互いに嵌合離脱可能になっている。そして、雄型レール28a,雌型レール28bとが嵌合された際に、出入部16が密閉される。
【0060】
このように第3実施形態では、レールファスナー28が設けられていることにより、出入部16を密閉状態と開放状態とが選択的にできる。レールファスナー28は、閉鎖手段に相当する。
【0061】
又、本実施形態では、長手方向Aにおいて、袋部14を挟んで出入部16とは反対側の端面に引裂開始部としての切り欠き30が形成されている。すなわち、この切り欠き30は、積層シート12同士が接着された辺縁部に対して切り欠き形成され、切り欠き方向はその延長した直線上に、袋部14が位置することが好ましい。そして、コンタクトレンズCLが保存された状態で、コンタクトレンズCLを使用する必要がある場合、使用者が切り欠き30を引裂開始点としてパック10の端部を持って引っ張ると切り欠き30から引き裂かれて、袋部14が破れ、保存収納されたコンタクトレンズCLを容易に取り出すことができる。
【0062】
従って、第3実施形態では、第1実施形態の(1)〜(3),(7)と同様の効果を奏する他に下記の特徴がある。
(1) 本実施形態のパック10は、出入部16には、同出入部16を閉鎖する閉鎖手段として、レールファスナー28を備える。この結果、レールファスナー28により出入部16が閉鎖されて、コンタクトレンズCLの洗浄時及び保存時において、コンタクトレンズCLや、洗浄液S(保存液)が外部へ出ることがなくなる。
【0063】
(2) 本実施形態のパック10は、切り欠き30(引裂開始部)により、出入部16が閉鎖された袋部14を破ることができ、容易に、袋部14に保存されたコンタクトレンズを取り出すことができる。
【0064】
なお、本発明の実施形態は、前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように構成を変更してもよい。
○ 前記各実施形態では、積層シート12は、長方形に形成したが、長方形に限定されるものではなく、正方形、三角形、多角形、円形、楕円形に形成してもよい。この場合,同形にカットされた一対の積層シートを洗浄層18が互いに対向するように配置して、周辺のうち一部に出入部を残すようにして残りの周縁部を互いに接着するようにすればよい。
【0065】
○ 前記各実施形態において、浸入防止層20と洗浄層18との間に、さらに他の樹脂層が介在されていてもよい。
○ 第1実施形態において、洗浄する際、出入部16の周縁部を折り畳んだ状態を保持するためにクリップ22を使用したが、クリップ22を使用せずに、手で折り畳んだ状態を保持るようにしてもよい。
【0066】
○ 第3実施形態では、引裂開始部として、切り欠き30を設けたが、袋部14に達しないように、積層シート12同士が接着された辺縁部に対してミシン目を形成し、同ミシン目を引裂開始部としてもよい。
【0067】
○ 第3実施形態において、レールファスナー28の代わりに他の形式のファスナー、例えば面ファスナー等を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態のパック10の概略斜視図。
【図2】同じくパック10の断面図。
【図3】(a)は、同じくパック10の出入部16の閉じた状態の側面図、(b)は出入部16を折り畳みした状態の側面図。
【図4】(a)は、第2実施形態のパック10の出入部16の閉じた状態の側面図、(b)は出入部16を折り畳みした状態の側面図。
【図5】(a)は、第3実施形態のパック10の出入部16の閉じた状態の側面図、(b)は出入部16を折り畳みした状態の側面図、(c)は、第3実施形態のパック10の概略斜視図。
【符号の説明】
【0069】
10…パック、12…積層シート、14…袋部、16…出入部、
18…洗浄層、20…浸入防止層、
22…クリップ(閉鎖手段、保持手段)、22a…底壁、
22b…側壁、24…両面粘着テープ(保持手段)、
26…剥離シート、28…レールファスナー(閉鎖手段)、
A…長手方向、B…短手方向、CL…コンタクトレンズ、S…洗浄液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と連通可能な出入部を有する袋部を備え、前記袋部が、その内面を形成する洗浄層を有し、かつ、前記洗浄層を覆って、手指の体脂質及び雑菌の浸入を防止する浸入防止層を有することを特徴とするコンタクトレンズ洗浄保存パック。
【請求項2】
前記洗浄層及び浸入防止層が可撓性を有し、前記袋部内に収納されたコンタクトレンズが袋部外部から擦り洗い可能にされていることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ洗浄保存パック。
【請求項3】
前記洗浄層が、不織布から構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンタクトレンズ洗浄保存パック。
【請求項4】
前記出入部には、同出入部を閉鎖する閉鎖手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載のコンタクトレンズ洗浄保存パック。
【請求項5】
前記閉鎖手段が、前記出入部に設けられたファスナーで形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコンタクトレンズ洗浄保存パック。
【請求項6】
前記閉鎖手段が、前記出入部に取着されるクリップであることを特徴とする請求項4に記載のコンタクトレンズ洗浄保存パック。
【請求項7】
前記出入部が折り畳みされることにより、前記閉鎖手段が構成されることを特徴とする請求項4又は請求項6に記載のコンタクトレンズ洗浄保存パック。
【請求項8】
前記出入部が折り畳みされた状態を保持する保持手段を備えていることを特徴とする請求項7に記載のコンタクトレンズ洗浄保存パック。
【請求項9】
前記浸入防止層が、不滑性材質からなることを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項に記載のコンタクトレンズ洗浄保存パック。
【請求項10】
前記袋部には、前記閉鎖手段により前記出入部が閉鎖された袋部を破り始めるための引裂開始部が縁部に設けられていることを特徴とする請求項4乃至請求項9のうちいずれか1項に記載のコンタクトレンズ洗浄保存パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−109892(P2009−109892A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284057(P2007−284057)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】