説明

コンダクタロール偏摩耗低減方法

【課題】電気メッキラインで用いられるコンダクタロールの偏摩耗をより一層低減する。
【解決手段】コンダクタロール3の外周面に接触している金属帯1を当該コンダクタロール3の軸線方向に揺動する際、例えば金属帯1の中央の軌跡が、周期が長い低周波振動と周期が短く且つ振幅が周期的に変化する高周波振動との重畳振動波形を描くように、例えばステアリングロール4の傾きをシリンダ5で調整して金属帯1の通板状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄工場の電気メッキラインで用いられるコンダクタロールの偏摩耗を低減する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンダクタロールは、電気メッキラインのメッキセルの入側と出側に設けられて、通板される金属帯に通電を行うために用いられる。このとき、通板される金属帯の幅が同じであるほど、コンダクタロールに偏摩耗が生じる。金属帯の幅は、生産計画によって決まっているので、偏摩耗が生じるからといって変更することはできない。そこで、下記特許文献1に記載されるコンダクタロール偏摩耗低減方法では、一定の振幅且つ一定の周期で、コンダクタロールの外周面に沿って金属帯を当該コンダクタロールの軸線方向に揺動することにより、金属帯とコンダクタロールとの接触位置を変化させて偏摩耗を低減しようとしている。なお、この特許文献1には、金属帯の揺動中心位置も定期的に変更することが開示されている。
【特許文献1】特開平7−113196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に記載されるコンダクタロール偏摩耗低減方法では、コンダクタロールの偏摩耗を多少低減することができるものの、その低減代には未だ改善余地がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、コンダクタロールの偏摩耗をより一層低減することが可能なコンダクタロール偏摩耗低減方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に係るコンダクタロール偏摩耗低減方法は、電気メッキラインで金属帯をガイドするコンダクタロールの偏摩耗低減方法であって、周期が長い低周波振動と周期が短く且つ振幅が周期的に変化する高周波振動とを重畳した振動波形になるように、コンダクタロールの外周面に沿って金属帯を当該コンダクタロールの軸線方向に揺動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
而して、本発明のうち請求項1に係るコンダクタロール偏摩耗低減方法によれば、電気メッキラインで金属帯をガイドするコンダクタロールの偏摩耗低減方法であって、周期が長い低周波振動と周期が短く且つ振幅が周期的に変化する高周波振動とを重畳した振動波形になるように、コンダクタロールの外周面に沿って金属帯を当該コンダクタロールの軸線方向に揺動することにより、金属帯の搬送方向と交差する方向の端部がコンダクタロールの外周面の特定の箇所に接触する時間をより短くし且つその接触領域を広範囲に広げることができるので、コンダクタロールの偏摩耗をより一層低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明のコンダクタロール偏摩耗低減方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のコンダクタロール偏摩耗低減方法を展開した電気メッキラインの概略構成図である。図中の符号1は鋼板等の金属帯であり、符号2は、金属帯1にメッキ処理を施すメッキセルである。メッキセル2の入側及び出側には、金属帯1に通電するためのコンダクタロール3が配設されており、その入側及び出側には、夫々、ステアリングロール4が配設されている。このステアリングロール4は、シリンダ5によって傾きを調整できるようになっており、ステアリングロール4の傾きが変わると金属帯1の通板方向が変わる。このステアリングロール4は、本来、金属帯1の中央位置を合わせるものであるが、本実施形態では、このステアリングロール4を用いて、コンダクタロール3の外周面に接触している金属帯1を当該コンダクタロール3の軸線方向に揺動する。
【0007】
図2は、ステアリングロール4の傾きを調整するためのシリンダ5の伸縮状態を制御するシステム概略構成図である。シリンダ5の伸縮状態、つまりシリンダロッドの位置は位置発信器7で検出されている。また、金属帯1の搬送方向と交差する方向の端部、つまり幅方向の両端部に相当する右端部及び左端部の位置はCCDカメラ等の位置検出器6で検出されている。従って、例えば加減算器8で、金属帯1の左端位置から右端位置を減算すると金属帯1の幅が得られ、その半分の値を右端位置に加算すると金属帯1の中央位置が得られる。この金属帯1の中央位置及び位置発信器で検出されたシリンダ5の伸縮位置が金属帯揺動制御装置9に入力される。金属帯揺動制御装置9には、別途、通板速度を規定する中央ライン速度及び金属帯1の幅に相当する板幅が入力される。そして、金属帯揺動制御装置9では、後述する金属帯揺動指令値と前記金属帯中央位置に応じた中央位置合わせ指令値とを合わせて目標金属帯位置指令値が出力される。この目標金属帯位置指令値が入力されるシリンダ伸縮制御装置10では、当該目標金属帯位置指令値に応じた目標シリンダ伸縮位置に対し、位置発信器7で検出されたシリンダ5の伸縮位置をフィードバックしながらシリンダ5の伸縮制御を行う。
【0008】
金属帯揺動制御装置9では、例えば図3に示すような金属帯揺動指令値を設定する。図に実線で示す振動波形が例えば金属帯の中央位置の揺動軌跡となるような金属帯揺動指令値に相当する。この振動波形は、周期が長い低周波振動(図の白抜き線)と周期が短く且つ振幅が周期的に変化する高周波振動とを重畳したものである。図では、高周波振動の振幅が大きいときに周期が短く、振幅が小さいときに周期が長くなっているが、これに限定されるものではなく、例えば振幅が大きいときに周期が長く、振幅が小さいときに周期が短くなる、即ち金属帯1の揺動速度が一定になるようにしてもよい。
【0009】
本願発明者らは、例えば図4に示すように、周期が短く且つ振幅が周期的に変化する高周波振動のみによる金属帯の揺動についても比較検討したが、この揺動形態では、コンダクタロール3の偏摩耗を十分に低減することができなかった。即ち、本実施形態の金属帯の揺動形態では、金属帯1の幅方向端部がコンダクタロール3の外周面の特定の箇所に接触する時間をより短くし且つその接触領域を広範囲に広げることができるので、コンダクタロール3の偏摩耗をより一層低減することができるのである。
なお、コンダクタロールとステアリングロールのレイアウト、及びコンダクタロールとメッキセルのレイアウトは、前記実施形態に限定されるものではなく、あらゆる電気メッキラインのコンダクタロールに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のコンダクタロール偏摩耗低減方法を適用した電気メッキラインの概略構成図である。
【図2】図1のシリンダの伸縮状態を制御するシステム構成図である。
【図3】図2の金属帯揺動制御装置で設定する金属帯揺動指令値の振動波形図である。
【図4】金属帯揺動指令値の振動波形図の比較例である。
【符号の説明】
【0011】
1は金属帯
2はメッキセル
3はコンダクタロール
4はステアリングロール
5はシリンダ
6は位置検出器
7は位置発信器
8は加減算器
9は金属帯揺動制御装置
10はシリンダ伸縮制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気メッキラインで金属帯をガイドするコンダクタロールの偏摩耗低減方法であって、周期が長い低周波振動と周期が短く且つ振幅が周期的に変化する高周波振動とを重畳した振動波形になるように、コンダクタロールの外周面に沿って金属帯を当該コンダクタロールの軸線方向に揺動することを特徴とするコンダクタロール偏摩耗低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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