説明

コンテナ用除菌装置及びコンテナ

【課題】安全かつ使用者の手間がかからないコンテナ用除菌装置及びこれを備えたコンテナを提供する。
【解決手段】コンテナユニット(1)は、貯水タンク(31)内の水中でストリーマ放電を生起する電極対と、電極対に直流電圧を印加する直流電源とを有し、電極対の間におけるストリーマ放電によって貯水タンク(31)内の水中で過酸化水素を発生させて、過酸化水素を含む処理水(W)を生成する水中放電装置(4)を備える。そして、水中放電装置(4)により生成した処理水(W)を噴霧装置(32)からコンテナ(2)内に噴霧してコンテナ(2)内を除菌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ内を除菌するためのコンテナ用除菌装置及びこれを備えたコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば農産物、水産物などの生鮮品の貯蔵庫を除菌するための除菌装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されている除菌装置では、水素イオン濃度(pH)及び有効塩素濃度が調整された電解水を例えば輸送用コンテナなどの貯蔵庫内に噴霧することにより、貯蔵庫内を除菌し、生鮮品が腐敗したり、生鮮品にカビが発生したりすることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−228817号公報(段落0045,0049,0080欄)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に開示された除菌装置では、使用者が各自で電解水を生成した後、この電解水を除菌装置に供給しなければならず、使用者の手間がかかってしまう。また、電解水の生成時には、人体に有害な塩素ガスが発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安全かつ、使用者の手間がかからないコンテナ用除菌装置及びこれを備えたコンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、処理水(W)が貯留される貯水タンク(31)と、該貯水タンク(31)から供給された処理水(W)をコンテナ(2)内に噴霧する噴霧装置(32)とを備え、該噴霧装置(32)から噴霧された処理水(W)によってコンテナ(2)内を除菌するコンテナ用除菌装置を対象とし、前記貯水タンク(31)内の水中でストリーマ放電を生起する電極対(41,42)と、該電極対(41,42)に直流電圧を印加する直流電源(43)とを有し、前記電極対(41,42)の間におけるストリーマ放電によって前記貯水タンク(31)内の水中で過酸化水素を発生させて、過酸化水素を含む処理水(W)を生成する水中放電装置(4)を備え、前記水中放電装置(4)により生成した処理水(W)を前記噴霧装置(32)からコンテナ(2)内に噴霧してコンテナ(2)内を除菌することを特徴とする。
【0008】
過酸化水素は、殺菌力を有しているため、上記のように、過酸化水素を含む処理水(W)をコンテナ(2)内に噴霧することで、コンテナ(2)内を除菌することができる。そして、上記第1の発明では、この過酸化水素を含む処理水(W)が貯水タンク(31)内で水中放電装置(4)により生成されるから、貯水タンク(31)内に水(例えば水道水)を入れておく作業のみを行えば処理水(W)が生成される、使用者の手間がかからないコンテナ用除菌装置を実現することができる。また、過酸化水素は、水と酸素ガスに分解されるだけであるので安全である。
【0009】
第2の発明は、コンテナを対象とし、第1の発明のコンテナ用除菌装置(3)を備えていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、コンテナ(2)が第1の発明のコンテナ用除菌装置(3)を備えているから、コンテナ用除菌装置(3)によりコンテナ(2)内を良好に除菌することができる。従って、第2の発明に係るコンテナは、例えば農産物や水産物などの生鮮品を内部に収容して輸送する輸送用コンテナに好適である。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記コンテナ用除菌装置(3)は、前記コンテナ(2)内に噴霧された処理水(W)を回収して循環させるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
こうすることで、貯水タンク(31)に貯留する水量を少なくすることができ、ひいては貯水タンク(31)の大きさを小さくすることができるから、コンテナ用除菌装置(3)がかさばることを回避できる。
【0013】
第4の発明は、第2又は3の発明において、前記コンテナ(2)内には、除湿機(6)が設置されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によると、コンテナ(2)内の湿度を除湿機(6)により調整することができる。これにより、例えば生鮮品をコンテナ(2)内に収容する場合に、生鮮品の保存に最適な湿度範囲に調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、過酸化水素を含む処理水(W)が貯水タンク(31)内で水中放電装置(4)により生成されるから、貯水タンク(31)内に水(例えば水道水)を入れておく作業のみを行えば処理水(W)が生成される、使用者の手間がかからないコンテナ用除菌装置を実現することができる。また、過酸化水素は、水と酸素ガスに分解されるだけであるので安全である。
【0016】
また、本発明では、直流電源(43)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えばパルス電源と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(43)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0017】
上記第2の発明によれば、コンテナ(2)が第1の発明に係るコンテナ用除菌装置(3)を備えているため、コンテナ用除菌装置(3)によりコンテナ(2)内を良好に除菌することができる。
【0018】
上記第3の発明によれば、貯水タンク(31)の大きさを小さくすることができるから、コンテナ用除菌装置(3)がかさばることを回避できる。
【0019】
上記第4の発明によれば、コンテナ(2)内の湿度を除湿機(6)により調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施形態1に係るコンテナユニットの全体構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る水中放電装置の全体構成図であり、過酸化水素生成動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングを示す斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る水中放電装置の全体構成図であり、過酸化水素生成動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係る水中放電装置の全体構成図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングを示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る水中放電装置の全体構成図であり、過酸化水素生成動作を開始する前の状態を示すものである。
【図8】図8は、実施形態2に係る水中放電装置の全体構成図であり、過酸化水素発生動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【図10】図10は、その他の実施形態に係るコンテナユニットの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
〈コンテナユニットの全体構成〉
図1は、本発明の実施形態1に係るコンテナユニット(1)の全体構成図である。このコンテナユニット(1)は、例えば農産物、水産物などの生鮮品(F)を輸送するための輸送用コンテナ(2)と、該コンテナ(2)の内部を除菌するためのコンテナ用除菌装置(3)とを備えている。
【0022】
コンテナ(2)は、矩形状の箱体であり、その内部に生鮮品(F)が収容される。
【0023】
コンテナ用除菌装置(3)は、水(W)を貯留する貯水タンク(31)と、該貯水タンク(31)から供給された水(W)をコンテナ(2)内に噴霧する噴霧装置(32)と、貯水タンク(31)と噴霧装置(32)とを接続する流出管(33)と、コンテナ(2)と貯水タンク(31)とを接続する流入管(34)とを備えている。
【0024】
貯水タンク(31)には、図2に示すように、給水口(31a)が設けられていて、この給水口(31a)から貯水タンク(31)内に水(例えば水道水)を供給可能になっている。貯水タンク(31)の底部には、水中放電装置(4)が配設されている。
【0025】
水中放電装置(4)は、詳しくは後述するが、貯水タンク(31)内の水中でのストリーマ放電により殺菌力のある過酸化水素を発生させ、過酸化水素を含む処理水(W)を生成する装置である。
【0026】
噴霧装置(32)は、流出管(33)の先端に接続されていると共に、コンテナ(2)の天井に取り付けられている。噴霧装置(32)の噴霧口は、下方に向けられている。
【0027】
流出管(33)の一端は、貯水タンク(31)の水中に位置している一方、流出管(33)の他端は、前述したように噴霧装置(32)に接続されている。流出管(33)には、流出ポンプ(35)が介設されていて、この流出ポンプ(35)を作動させることにより、貯水タンク(31)内の上記処理水(W)が噴霧装置(32)に移送され、噴霧装置(32)からコンテナ(2)内に噴霧されるようになっている。これにより、コンテナ(2)内が除菌され、コンテナ(2)内の生鮮品(F)が腐敗したり、生鮮品(F)にカビが発生したりすることが防止されるようになっている。
【0028】
流入管(34)の一端は、貯水タンク(31)の側部に接続されている一方、流入管(34)の他端は、コンテナ(2)の底部に接続されている。そして、噴霧装置(32)からコンテナ(2)内に噴霧された処理水(W)が、コンテナ(2)の底部から流入管(34)に流れ込むようになっている。この流入管(34)には、流入ポンプ(36)が介設されていて、この流入ポンプ(36)を作動させることにより、流入管(34)に流れ込んだ処理水(W)が貯水タンク(31)まで移送されて、貯水タンク(31)内に再び貯留されるようになっている。
〈水中放電装置の詳細構造〉
次に、水中放電装置(4)の詳細構造について説明する。
【0029】
水中放電装置(4)は、放電電極(41)及び対向電極(42)とからなる電極対(41,42)と、この電極対(41,42)に電圧を印加する電源部(43)と、放電電極(41)を内部に収容する絶縁ケーシング(44)とを備えている。
【0030】
電極対(41,42)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。放電電極(41)は、絶縁ケーシング(44)の内部に配置されている。放電電極(41)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(41)は、電源部(43)の正極側に接続されている。放電電極(41)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0031】
対向電極(42)は、絶縁ケーシング(44)の外部に配置されている。対向電極(42)は、放電電極(41)の上方に設けられている。対向電極(42)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(45)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(42)は、放電電極(41)と略平行に配設されている。対向電極(42)は、電源部(43)の負極側に接続されている。対向電極(42)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0032】
電源部(43)は、電極対(41,42)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。即ち、電源部(43)は、電極対(41,42)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(41,42)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(43)のうち、対向電極(42)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(43)には、電極対(41,42)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0033】
絶縁ケーシング(44)は、貯水タンク(31)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(44)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(44)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(46)と、該ケース本体(46)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(47)とを有している。
【0034】
ケース本体(46)は、角型筒状の側壁部(46a)と、該側壁部(46a)の底面を閉塞する底部(46b)とを有している。放電電極(41)は、底部(46b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(44)では、蓋部(47)と底部(46b)との間の上下方向の距離が、放電電極(41)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(41)と蓋部(47)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(44)の内部では、放電電極(41)とケース本体(46)と蓋部(47)との間に空間(S)が形成される。
【0035】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(44)の蓋部(47)には、該蓋部(47)を厚さ方向に貫通する1つの開口(48)が形成されている。この開口(48)により、放電電極(41)と対向電極(42)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(47)の開口(48)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(48)は、電極対(41,42)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0036】
以上のように、絶縁ケーシング(44)は、電極対(41,42)のうちの一方の電極(放電電極(41))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(48)を有する絶縁部材を構成している。
【0037】
加えて、絶縁ケーシング(44)の開口(48)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(44)の開口(48)は、該開口(48)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0038】
−水中放電装置の運転動作−
水中放電装置(4)の運転の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(44)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(43)から電極対(41,42)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(41,42)の間に電界が形成される。放電電極(41)の周囲は、絶縁ケーシング(44)で覆われている。このため、電極対(41,42)の間での漏れ電流が抑制されるとともに、開口(48)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0039】
開口(48)内の電流密度が上昇すると、開口(48)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(44)では、開口(48)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(48)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(42)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(41)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、放電電極(41)と対向電極(42)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(41)と対向電極(42)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(41,42)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0040】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、貯水タンク(31)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。これにより、貯水タンク(31)内で活性種や過酸化水素を含む処理水(W)が生成される。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって貯水タンク(31)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、貯水タンク(31)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0041】
−実施形態1の効果−
実施形態1では、過酸化水素を含む処理水(W)を噴霧装置(32)からコンテナ(2)内に噴霧している。ここで、過酸化水素は、殺菌力を有しているため、コンテナ(2)内を除菌することができる。また、使用者が貯水タンク(31)内に水(例えば水道水)を入れておく作業のみを行えば、処理水(W)が貯水タンク(31)内で水中放電装置(4)により生成されるから、使用者の手間はかからない。さらに、処理水(W)に含まれる過酸化水素は、水と酸素ガスに分解されるだけであるので安全である。
【0042】
また、実施形態1では、噴霧装置(32)からコンテナ(2)内に噴霧された処理水(W)をコンテナ(2)の底部から流入管(34)を介して貯水タンク(31)に回収して循環させているから、貯水タンク(31)に貯留しておく水量を少なくすることができ、ひいては貯水タンク(31)の大きさを小さくすることができる。その結果、コンテナ用除菌装置(3)がかさばることを回避できる。
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(44)の蓋部(47)に1つの開口(48)が形成されている。しかしながら、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(44)の蓋部(47)に複数の開口(48)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(44)の蓋部(47)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(47)に複数の開口(48)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(41)及び対向電極(42)は、全ての開口(48)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0043】
この変形例においても、各開口(48)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(43)から電極対(41,42)に直流電圧が印加されると、各開口(48)の電流密度が上昇し、各開口(48)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
《発明の実施形態2》
実施形態2に係るコンテナユニット(1)は、上述した実施形態1と水中放電装置(4)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0044】
図7に示すように、実施形態2の水中放電装置(4)は、貯水タンク(31)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の水中放電装置(4)は、放電電極(41)と対向電極(42)と絶縁ケーシング(44)とが一体的に組立てられている。
【0045】
実施形態2の絶縁ケーシング(44)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(44)は、ケース本体(46)と蓋部(47)とを有している。
【0046】
実施形態2のケース本体(46)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(46)は、円筒状の基部(49)と、該基部(49)から貯水タンク(31)側に向かって突出する筒状壁部(50)と、該筒状壁部(50)の外縁部から更に貯水タンク(31)側に向かって突出する環状凸部(51)とを有している。また、ケース本体(46)には、環状凸部(51)の先端側に先端筒部(52)が一体に形成されている。基部(49)の軸心部には、円柱状の挿入口(49a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(50)の内側には、挿入口(49a)と同軸となり、且つ挿入口(49a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0047】
実施形態2の蓋部(47)は、略円板状に形成されて環状凸部(51)の内側に嵌合している。蓋部(47)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(47)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(47)を上下に貫通する円形状の1つの開口(48)が形成されている。
【0048】
放電電極(41)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(41)は、基部(49)の挿入口(49a)に嵌合している。これにより、放電電極(41)は、絶縁ケーシング(44)の内部に収容されている。実施形態2では、放電電極(41)のうち貯水タンク(31)とは反対側の端部が、外部に露出される状態となる。このため、貯水タンク(31)の外部に配置される電源部(43)と、放電電極(41)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0049】
放電電極(41)のうち貯水タンク(31)側の端部(41a)は、絶縁ケーシング(44)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図7に示す例では、放電電極(41)の端部(41a)が、挿入口(49a)の開口面よりも上側(貯水タンク(31)側)に突出しているが、この端部(41a)の先端面を挿入口(49a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(41a)を挿入口(49a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(41)は、実施形態1と同様、開口(48)を有する蓋部(47)との間に所定の間隔が確保されている。
【0050】
対向電極(42)は、円筒状の電極本体(42a)と、該電極本体(42a)から径方向外方へ突出する鍔部(42b)とを有している。電極本体(42a)は、絶縁ケーシング(44)のケース本体(46)に外嵌している。鍔部(42b)は、貯水タンク(31)の壁部に固定されて水中放電装置(4)を保持する固定部を構成している。水中放電装置(4)が貯水タンク(31)に固定された状態では、対向電極(42)の電極本体(42a)の一部が浸水された状態となる。
【0051】
対向電極(42)は、電極本体(42a)よりも小径の内側筒部(42c)と、該内側筒部(42c)と電極本体(42a)との間に亘って形成される連接部(42d)とを有している。内側筒部(42c)及び連接部(42d)は、貯水タンク(31)内の水中に浸漬している。内側筒部(42c)は、その内部に円柱空間(53)を形成している。内側筒部(42c)の軸方向の一端は、蓋部(47)と当接して該蓋部(47)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(42a)と内側筒部(42c)と連接部(42d)の間には、ケース本体(46)の先端筒部(52)が内嵌している。内側筒部(42c)の軸方向の他端側には、円柱空間(53)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(54)が設けられている。この漏電防止材(54)は、対向電極(42)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(54)は、貯水タンク(31)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(53)の内側から外側への漏電を防止している。
【0052】
対向電極(42)は、電極本体(42a)の一部が貯水タンク(31)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(43)と対向電極(42)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0053】
−水中放電装置の運転動作−
水中放電装置(4)の運転の開始時には、図7に示すように、絶縁ケーシング(44)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(43)から電極対(41,42)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(48)の内部の電流密度が上昇していく。
【0054】
図7に示す状態から、電極対(41,42)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(48)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図8を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(48)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(53)内の負極側の水と、放電電極(41)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(41)と対向電極(42)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、貯水タンク(31)内の水中では、水酸ラジカルや過酸化水素が発生し、過酸化水素を含む処理水(W)が生成される。
【0055】
〈実施形態2の変形例〉
上記実施形態2では、円板状の蓋部(47)の軸心に1つの開口(48)を形成しているが、この蓋部(47)に複数の開口(48)を形成してもよい。図9に示す例では、蓋部(47)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(48)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(47)に複数の開口(48)を形成することで、各開口(48)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0056】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0057】
〈コンテナユニットの構成〉
上記実施形態において、図1の1点鎖線で示すように、コンテナ(2)内に、除湿機(6)を設置すると共に、除湿機(6)を流入管(34)と接続してもよい。これにより、コンテナ(2)内の湿度を除湿機(6)により生鮮品の保存に最適な湿度範囲に調整することができると共に、除湿機(6)のタンクに溜まった処理水(W)を流入管(34)を介して貯水タンク(31)に回収することができる。
【0058】
上記実施形態では、噴霧装置(32)からコンテナ(2)内に噴霧された処理水(W)をコンテナ(2)の底部から流入管(34)を介して貯水タンク(31)に回収して循環させる、いわゆる循環噴霧型のコンテナユニット(1)としているが、図10に示すような、いわゆる一過噴霧型のコンテナユニット(1)としてもよい。この一過噴霧型のコンテナユニット(1)は、流入管(34)及び流入ポンプ(36)を備えておらず、噴霧装置(32)からコンテナ(2)内に噴霧された処理水(W)は貯水タンク(31)に回収されない。尚、この場合においても、コンテナ(2)内に、除湿機(6)を設置してもよい。
【0059】
〈水中放電装置の構成>
上述した各実施形態の電源部(43)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0060】
また、上述した各実施形態では、電源部(43)の正極に放電電極(41)を接続し、電源部(43)の負極に対向電極(42)を接続している。しかしながら、電源部(43)の負極に放電電極(41)を接続し、電源部(43)の正極に対向電極(42)を接続することで、電極対(41,42)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、安全かつ、使用者の手間がかからないコンテナ用除菌装置を得ることができ、このコンテナ用除菌装置を例えば農産物、水産物などの生鮮品を輸送するための輸送用コンテナに備えることで、コンテナ内を良好に除菌し、生鮮品が腐敗したり、生鮮品にカビが発生したりすることを防止できる点で有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 コンテナユニット
2 コンテナ
3 コンテナ用除菌装置
31 貯水タンク
32 噴霧装置
4 水中放電装置
41 放電電極(電極対)
42 対向電極(電極対)
43 電源部(直流電源)
6 除湿機
W 処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水(W)が貯留される貯水タンク(31)と、該貯水タンク(31)から供給された処理水(W)をコンテナ(2)内に噴霧する噴霧装置(32)とを備え、該噴霧装置(32)から噴霧された処理水(W)によってコンテナ(2)内を除菌するコンテナ用除菌装置であって、
前記貯水タンク(31)内の水中でストリーマ放電を生起する電極対(41,42)と、該電極対(41,42)に直流電圧を印加する直流電源(43)とを有し、前記電極対(41,42)の間におけるストリーマ放電によって前記貯水タンク(31)内の水中で過酸化水素を発生させて、過酸化水素を含む処理水(W)を生成する水中放電装置(4)を備え、
前記水中放電装置(4)により生成した処理水(W)を前記噴霧装置(32)からコンテナ(2)内に噴霧してコンテナ(2)内を除菌することを特徴とするコンテナ用除菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテナ用除菌装置(3)を備えていることを特徴とするコンテナ。
【請求項3】
請求項2に記載のコンテナにおいて、
前記コンテナ用除菌装置(3)は、前記コンテナ(2)内に噴霧された処理水(W)を回収して循環させるように構成されていることを特徴とするコンテナ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のコンテナにおいて、
前記コンテナ(2)内には、除湿機(6)が設置されていることを特徴とするコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−76772(P2012−76772A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222465(P2010−222465)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】