説明

コンデンサマイクロホンアレイチップ

【課題】反りを軽減したコンデンサマイクロホンアレイチップを提供する。
【解決手段】厚さ方向に貫通する複数の開口が形成された基板の一方の主面上の前記開口の外側に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層の上に形成され前記開口の上に張り渡された第一電極層と、前記開口の外側において前記第一電極層の上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層の上に形成され前記第一電極層と空隙を介して対向する第二電極層と、を有する構造体と前記基板とを備え、前記基板の一方の主面上において前記開口に合わせて前記構造体が複数形成され互いに並列接続されているコンデンサマイクロホンアレイチップであって、前記構造体の平面視における外周の少なくとも橋部を除く部分に、少なくとも前記第二絶縁層の一部が除去されている溝部が形成されており、前記橋部は、複数の前記構造体の前記第二電極層同士を接続する前記第二電極層からなる配線を含んで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)トランスデューサアレイチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のMEMSコンデンサマイクロホンを用いて一つのマイクロホンを構成する手法が知られている。特許文献1〜3には、複数のマイク構造が1つのチップに一体に形成されている構成が記載されている。また、複数のコンデンサマイクロホンを並列接続することで、SN比を改善する手法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−110204号公報
【特許文献2】特開2007−124449号公報
【特許文献3】特開2008−245267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの基板上に複数のMEMSコンデンサマイクロホンの構造体を形成する場合、アレイ化によってチップ面積が大きくなると、次の理由から基板の反りが大きくなる。
コンデンサマイクロホンは、ダイヤフラム(振動電極)やプレート(静止電極)に導電性の多結晶シリコンを用い、基板・ダイヤフラム・プレートの各層の間に、絶縁材料のシリコン酸化膜を用いることが知られている。シリコン酸化膜は低応力のプラズマCVD法により厚膜化が可能である。感度性能確保のためにダイヤフラムの応力を緩和するためのアニール処理が必要で、このアニール処理により多結晶シリコンのダイヤフラムの引っ張り応力が緩和され高感度の音響性能を得ることができる。しかし、そのアニール処理によってシリコン酸化膜の応力は強い圧縮側に変化することが分かっており、基板の反りの拡大や、堆積膜の座屈破壊につながる可能性がある。なお、反りや座屈破壊を抑制するためにシリコン酸化膜を厚く形成しない場合、所望の音響性能が得られない。
本発明は上記課題にかんがみてなされたもので、反りを軽減したコンデンサマイクロホンアレイチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するためのコンデンサマイクロホンアレイチップは、厚さ方向に貫通する複数の開口が形成された基板の一方の主面上の各前記開口の外側に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層の上に形成され各前記開口の上に張り渡された第一電極層と、各前記開口の外側において前記第一電極層の上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層の上に形成され前記第一電極層と空隙を介して対向する第二電極層と、を有する構造体と前記基板とを備え、前記基板の一方の主面上において各前記開口に合わせて前記構造体が複数形成され互いに並列接続されているコンデンサマイクロホンアレイチップであって、前記構造体の平面視における外周の少なくとも橋部を除く部分に、少なくとも前記第二絶縁層の一部が除去されている溝部が形成されており、前記橋部は、複数の前記構造体の前記第二電極層同士を接続する前記第二電極層からなる配線を含んで構成されている。
【0006】
本発明のコンデンサマイクロホンは、音波を受けて振動する振動電極と音波を受けても振動しない静止電極の一対の対向電極を有しており、各コンデンサマイクロホンの静止電極同士が電気的に接続されるとともに各コンデンサマイクロホンの振動電極同士が電気的に接続されることによって、各対向電極が並列接続されている。第一電極層と第二電極層のうちのいずれか一方が静止電極、他方が振動電極に相当する。一対の対向電極同士をそれぞれ並列接続することにより一つのマイクロホンとして出力信号のSN比を改善することができる。
【0007】
また、アレイ化することによりチップ面積が大きくなりチップが反りやすくなるが、本発明では、各構造体の平面視における外周の少なくとも橋部を除く位置に少なくとも第二絶縁層の一部が除去されている溝部が形成されていることにより、アレイチップの反りを軽減することができる。すなわち、コンデンサマイクロホンアレイチップの製造工程において振動電極を構成する第一電極層あるいは第二電極層の応力緩和のために行うアニール処理によって、第一絶縁層あるいは第二絶縁層の応力が増加してしまい、チップ全体に反りが生じる。しかし本発明のように、少なくとも第二絶縁層の一部が除去されている溝部が形成されていることにより、その反りを軽減することができる。なお、溝部は少なくとも第二絶縁層の一部(表層)が除去されることにより形成された凹部であればよい。したがって、溝部は第二絶縁層と第一絶縁層の一部が除去されることにより形成された凹部であってもよい。また、もちろん第一絶縁層と第二絶縁層の両方が除去され、溝部の底部において基板の一方の主面が露出していてもよい。この場合、例えば溝部の底部に残存している第二絶縁層の一部または第一絶縁層の一部の厚さが薄いほどより基板の反りを軽減することができ、溝部の底部において基板の一方の主面が露出している場合に基板の反りを最も軽減することができる。なお、本明細書において「平面視」とは、基板の厚さ方向に平行な方向から見る場合を意味する。
【0008】
また、本発明では、各構造体における対向する二つの電極層のうち第二電極層同士の接続はワイヤボンディングではなく、第二電極層からなる薄膜の配線で実現している。すなわち、第二電極層のエッチング時に配線を形成することができる。そのため、ボンディングワイヤ接続の場合よりも製造コストを低減することができる。
【0009】
(2)上記目的を達成するためのコンデンサマイクロホンアレイチップにおいて、前記橋部は、前記配線を支持する前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とを含んで構成されていてもよい。この場合、第二電極層からなる薄膜の配線が第一絶縁層と第二絶縁層によって支持されているので、配線が断線しにくい。
【0010】
(3)上記目的を達成するためのコンデンサマイクロホンアレイチップにおいて、前記橋部においては、前記配線と前記基板との間の前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とが除去されていてもよい。すなわち、配線と基板との間に空隙が出来ていてもよい。この場合、構造体の外周を全域にわたって囲んで溝部が形成されることとなる。そのため、アレイチップの反りをより軽減することができる。
【0011】
(4)上記目的を達成するためのコンデンサマイクロホンアレイチップにおいて、前記基板は単結晶シリコンからなり、前記第一電極層は前記基板に導通し、前記第一電極層同士は前記基板を介して電気的に接続されていてもよい。
この場合、各構造体の第一電極層同士を接続する配線を新たに形成する必要がないため、コンデンサマイクロホンアレイチップの構造をシンプルにすることができる。例えばワイヤボンディングで接続する構成と比較すると製造コストを低減することができる。また、構造がシンプルであるため、信頼性が向上する。
【0012】
(5)上記目的を達成するためのコンデンサマイクロホンアレイチップにおいて、前記構造体の各前記開口内の空気室は他の前記構造体の前記空気室と繋がっていてもよい。
この構成によると、空気室が他の構造体の空気室と繋がっているため、各マイクロホンで一つの大きな空気室を共有している。空気室は大きいほど、ダイヤフラムの振動を妨げにくくすることができるので、マイクロホンとしての感度を向上させることができる。
【0013】
尚、請求項において「〜上に」というときは、技術的な阻害要因がない限りにおいて「上に中間物を介在させずに」と「〜上に中間物を介在させて」の両方を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(1A)は第一実施形態にかかるコンデンサマイクロホンアレイチップの上面図、(1B)〜(1D)はその断面図。
【図2】(2A)は第一実施形態にかかるコンデンサマイクロホンアレイチップの一つのコンデンサマイクロホンに対応する構造体の上面図、(2B)および(2C)はその断面図。
【図3】構造体の各層の形状を示す模式図。
【図4】(4A)〜(4E)は第一実施形態にかかる製造工程を示す断面図。
【図5】(5A)〜(5E)は第一実施形態にかかる製造工程を示す断面図。
【図6】(6A)〜(6C)は他の実施形態にかかる断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0016】
1.第一実施形態
1−1.構成
図1は本発明の一実施形態にかかるコンデンサマイクロホンのアレイチップを示す図である。図1Aはアレイチップの上面図、図1Bは図1Aの1B−1B線における断面図、図1Cは図1Aの1C−1C線における断面図、図1Dは図1Aの1D−1D線における断面図である。本実施形態においてアレイチップには、基板層10の上に9つの構造体が形成されている。図2Aはその構造体単体の上面図、図2Bおよび図2Cは、図2Aにおける2B−2B線と2C−2C線のそれぞれ断面図である。なお、図3は単体の構造体の各層の形状を示す模式図である。なお、図1A,図2Aおよび図3において表層の絶縁層20、パッシベーション層22は省略されている。アレイチップは図示しない回路LSI(インピーダンス変換回路などを備える)とともに、図示しないパッケージに収容されている。アレイチップはMEMS製造プロセスを用いて形成される積層構造体である。
【0017】
アレイチップに形成されている9つの構造体のそれぞれは、例えば基板層10と次に述べる複数の層が順に積層されて構成されている。以降では主に単体の構造体1の構造について説明する。基板層10は厚さ200μm〜600μmの単結晶シリコンからなる。基板層10には開口100aが形成されている。第一絶縁層11は厚さ1.0〜2.0μmのシリコン酸化膜からなる。第一絶縁層11は、円周上に等間隔に配列された複数のダイヤフラム支持部102と、ダイヤフラム支持部102よりも内側において円周上に等間隔に配列された複数のガードスペーサ103と、ガードリング125cおよびガードリード125dを基板層10から絶縁している環状の環状部101とを構成している。
【0018】
第一電極層12は厚さ0.5〜1.5μmの層で、P等の不純物が導入された多結晶シリコンからなる。第一電極層12はガード電極125aとガードコネクタ125bとガードリング125cとガードリード125dとからなるガード部127と、ダイヤフラム123とを構成している。ガード部127はコンタクトホール11cにおいて基板層10と接続しており、ダイヤフラム123はコンタクトホール11bにおいて基板層10と接続している。したがって基板層10とガード部127とダイヤフラム123とは同電位となる。第一電極層12には電極パッド123eが接続している。電極パッド123eおよび後述する電極パッド162eはAlSi等の導電性の堆積膜であるパッド導電層21からなる。電極パッド123e,162eの側壁を保護するパッシベーション層22は厚さ1.0〜2.0μmのシリコン窒化膜からなる。
【0019】
第二絶縁層14は厚さ2.0〜10μmのシリコン酸化膜からなる。第二絶縁層14は、円周上に配列された複数のプレートスペーサ131と、プレートスペーサ131の外側に位置しエッチストッパリング161を支持しプレートリード162dとガードリード125dとを絶縁する環状の環状部132と、を構成している。
【0020】
第二電極層18は厚さ1.0〜3.0μmの層でありP等の不純物が導入された多結晶シリコンからなる。第二電極層18は、プレート162と、プレートリード162dと、エッチストッパリング161とを構成している。絶縁層20は厚さ0.1〜0.5μmのシリコン酸化膜からなり、エッチストッパリング161の外側に形成されている。プレート162は電極パッド162eと接続している。
【0021】
ダイヤフラム123は、中央部123aと、中央部123aから外側に放射状に伸びる複数の腕部123cとを備える。ダイヤフラム123はその外縁近傍の複数箇所に接合されている複数の柱形のダイヤフラム支持部102によってプレート162との間と基板層10との間とにそれぞれ空隙を挟んでプレート162から絶縁して支持され、基板層10と平行に張り渡されている。ダイヤフラム支持部102は、ダイヤフラム123のそれぞれの腕部123cの先端部近傍に接合されている。それぞれの腕部123cには通孔であるダイヤフラム孔123bが複数形成されている。
【0022】
複数のダイヤフラム支持部102は空気室C1の開口100aの周囲において開口100aの周方向に等間隔に配列されている。それぞれのダイヤフラム支持部102は絶縁性の堆積膜からなり柱形である。ダイヤフラム123は、その中央部123aが空気室C1の開口100aを覆うように、これらのダイヤフラム支持部102によって基板層10の上に支持されている。基板層10とダイヤフラム123との間にはダイヤフラム支持部102の厚さに相当する空隙C2が形成されている。空隙C2は空気室C1の気圧を大気圧と平衡させるために必要である。空隙C2はダイヤフラム123を振動させる音波が空気室の開口100aに至るまでの経路における最大の音響抵抗を形成するように、ダイヤフラム123の径方向の長さが長く形成されている。ダイヤフラム123の基板層10と対抗する面には複数のダイヤフラムバンプ123fが形成されている。このダイヤフラムバンプ123fはダイヤフラム123が基板層10に吸着(スティッキング)することを防止するための突起物である。
【0023】
プレート162は、中央部162bと、中央部162bから外側に放射状に伸びる腕部162aとを備える。プレート162はその外縁近傍の複数箇所に接合されている複数の柱形のプレートスペーサ131に支持されている。またプレート162はその中心がダイヤフラム123の中心と重なるようにダイヤフラム123と平行に張り渡されている。プレート162には通孔であるプレート孔162cが複数形成されている。プレート孔162cはダイヤフラム123に音波を伝搬させる通路として機能する。
【0024】
プレートスペーサ131はダイヤフラム123と同じ層に位置するガード電極125aに接合されている。複数のプレートスペーサ131は空気室C1の開口100aの周囲に等間隔に配列されている。それぞれのプレートスペーサ131はダイヤフラム123の腕部123cと腕部123cとの間の切り欠きの領域に位置する。プレート162はそれぞれがガードスペーサ103とガード電極125aとプレートスペーサ131とによって構成される柱形の複数のプレート支持部129によって基板層10上に支持されている。すなわち本実施形態においてプレート支持部129は複層の堆積膜からなる構造である。プレート支持部129によって、プレート162とダイヤフラム123との間には空隙C3が形成され、プレート162と基板層10との間には空隙C3と空隙C2とが形成されている。ガードスペーサ103とプレートスペーサ131とが絶縁性を有するためプレート162は基板層10から絶縁されている。
【0025】
プレート162のダイヤフラム123と対向する面には複数の突起(プレートバンプ)162fが設けられている。プレートバンプ162fはプレート162を構成する第二電極層18に接合された絶縁層17と、絶縁層17に接合された導電層15とからなる。プレートバンプ162fはダイヤフラム123がプレート162に吸着(スティッキング)することを防止する。導電層15は厚さ0.5〜2.0μmの多結晶シリコンからなる。絶縁層17は厚さ0.1〜0.2mのシリコン窒化膜からなる。
【0026】
各構造体1の間には、構造体1同士を連結する橋部Bを除く位置に溝部H3が形成されている。溝部H3の底面には基板層10が露出している。すなわち溝部H3によって、第一絶縁層11,第二絶縁層14,絶縁層20が分断されている。各構造体1のプレート162(第二電極層18)同士は橋部Bを構成する第二電極層18(配線)で接続されている。本実施形態において橋部Bは、基板層10上に形成された第一絶縁層11と第二絶縁層14と第二電極層18と絶縁層20からなる。ダイヤフラム123(第一電極層12)は基板層10を介して他の構造体のダイヤフラム123と接続している。したがって各構造体の対向電極(プレート162とダイヤフラム123)は並列接続されている。一対の対向電極同士をそれぞれ並列接続することにより一つのマイクロホンとして出力信号のSN比を改善することができる。
【0027】
また、対向電極を平面に複数配置してアレイ化することにより、チップ面積が大きくなる。チップ面積が大きくなると、後述する製造方法の過程でチップが反り易くなる。しかし上記のように各構造体の外周に溝部H3が形成されていることにより、アレイチップの反りを軽減することができる。
【0028】
また、橋部Bを構成する第二電極層18からなる薄膜の配線によって各構造体のプレート162同士を接続する構成は、各プレートをワイヤボンディング接続する構成と比較すると製造コストを低減することができる。また本実施形態において橋部Bを構成する配線は、第一絶縁層11および第二絶縁層14に支持されているため、断線しにくい。また、本実施形態では、ダイヤフラム123同士の接続を基板層10を介して行っているので、例えばワイヤボンディングでダイヤフラム123同士を接続する構成と比較すると、製造コストを低減することができる。また構造がシンプルであるため、信頼性も向上する。
【0029】
1−2.製造方法
図4および図5を用いてアレイチップの製造方法を説明する。図4および図5において、左側の断面図は図2Aの2B−2B線の各工程における断面図を示しており、右端の断面図は図2Aの2C−2C線の各工程における断面図を示している。まず図4Aに示すように、単結晶シリコンからなるウエハ(基板層10)の第一の主面上に第一絶縁層11としてシリコン酸化膜をプラズマCVD法により成膜し、その後、フォトレジストからなる図示しないマスクを用いて第一絶縁層11の表面にディンプル11aを形成する。また、図示しないマスクを用いてコンタクトホール11b,11cを形成する。基板層10と第一電極層の接触抵抗を下げるためにコンタクトホールで開口された基板層10に不純物ドープを施してもよい。
【0030】
続いて図4B示すように、第一絶縁層11の表面上に第一電極層12として多結晶シリコン膜を減圧CVD法などにより形成する。ディンプル11aは第一電極層12で埋められ、ダイヤフラムバンプ123fとなる。コンタクトホール11b、11cも第一電極層12で埋められ、次のパターニングによって形成されるダイヤフラム123とガード部127とが基板層10と接続する部分となる。なおこのとき同時に基板層10の第二の主面上にも導電層13が形成される。そして、図示しないマスクを用いて第一電極層12をパターニングし、ダイヤフラム123、ダイヤフラム孔123b、ガード部127を形成する。
【0031】
続いて図4Cに示すように、第一電極層12および第一絶縁層11の表面上に第二絶縁層14としてシリコン酸化膜をプラズマCVD法により成膜し、図示しないマスクを用いて第二絶縁層14上にディンプル14aを形成する。
続いて図4Dに示すように、ディンプル14aにプレートバンプ162fを形成する。具体的には、第二絶縁層14の表面上に導電層15として多結晶シリコン膜を形成する。このとき同時に導電層13の表面上にも導電層16が形成される。そしてディンプル14aの部分を残して導電層15を除去し、第二絶縁層14およびプレートバンプ162fの表面上に、絶縁層17としてのシリコン窒化膜を減圧CVD法によって成膜し、ディンプル14aの部分に残存している導電層15と接する部分を除いて絶縁層17を除去する。
【0032】
続いて、図4Eに示すように、第二絶縁層14と絶縁層17の表面上に第二電極層18として多結晶シリコン膜を減圧CVD法により成膜する。このとき導電層16の表面上にも導電層19(多結晶シリコン)が形成される。そして図示しないマスクを用いて第二電極層18をエッチングすることによりプレート162とプレートリード162dとエッチストッパリング161とを形成する。またこのとき橋部Bを構成する第二電極層18も残存させる。その後、基板層10の第二の主面上に堆積している導電層13、導電層16、導電層19を除去する。
【0033】
続いて、図5Aに示すように、コンタクトホールH1を形成するとともに溝部H3を、図示しないマスクを用いて第一絶縁層11や第二絶縁層14をエッチングすることにより形成する。コンタクトホールH1は、第二絶縁層14に開口を形成することによって開口の底部において第一電極層12を露出させている。溝部H3は、図1Aに示すように一つの構造体の領域の外周の橋部Bを除く位置に形成される溝であり、第一絶縁層11および第二絶縁層14に開口を形成することにより開口の底部において基板層10を露出させている。溝部H3は橋部Bの部分を残して形成される。溝部H3を形成した後、ウエハを800℃〜1000℃でアニール処理を施す。
【0034】
このアニール処理により、第一電極層12の成膜時に生じた引っ張り応力を緩和することができる。そのため、第一電極層12で構成されるダイヤフラム123が、音波を受けたときに振動しやすくなり、すなわちマイクロホンとしての感度を向上させることができる。一方、このアニール処理によりシリコン酸化膜からなる第一絶縁層11および第二絶縁層14において圧縮応力が大きくなってしまう。基板層10についでシリコン酸化膜の厚さは厚く、また第一の主面に占める面積も大きいため、シリコン酸化膜の応力はウエハ全体の変形(反り)に影響を与える。そのため、溝部H3が形成されていない場合はウエハは大きく反る。ウエハの反りが大きいと、その後の工程において不具合が生じやすくなる。例えばフォトレジストマスクの露光不良等である。また、ウエハの搬送時にウエハが破損しやすい。また、そのウエハをダイシングして形成されるアレイチップも反りが生じた状態となる。
【0035】
そこで本実施形態では、アニール処理の前にコンタクトホールH1を形成する同工程において溝部H3も形成する。その結果、図1に示すように、溝部H3によって基板層10上のシリコン酸化膜が分割される。その結果、溝部H3を形成しない状態でアニール処理を行う場合と比較すると、ウエハの反りを少なくすることができる。なお、溝部H3はコンタクトホールを形成する工程において形成できるので、溝部H3を形成するための新たな工程が追加されるわけではないので、製造コストの増加を抑えることができる。
【0036】
続いて、第二絶縁層14および第二電極層18の表面上に絶縁層20としてシリコン酸化膜をプラズマCVD法によって成膜する。このとき溝部H3の底部やコンタクトホールH1の底部にも絶縁層20が堆積する。続いて図5Bに示すように、図示しないマスクを用いて絶縁層20をエッチングすることにより、コンタクトホールH1の底部や溝部H3の底部の絶縁層20を除去するとともに、コンタクトホールH4を形成する。コンタクトホールH4の底部においては第二電極層18が露出している。
【0037】
続いて、図5Cに示すように、コンタクトホールH1,H4にパッド導電層21からなる電極パッド123e、162eを形成した後、パッシベーション層22を形成し、絶縁層20および第二電極層18にプレート孔162cを形成する。その後、Nアニール処理を行いメタル−シリコン界面を合金化する。続いて、基板層10の第二の主面を研削し、基板層10を200〜600μm程度の厚さにする。
【0038】
続いて図5Dに示すように、絶縁層20に開口20aを形成して第二電極層18を露出させ、その後、基板層10に開口100aを形成する。続いて図5Eに示すように、開口20aで囲まれている部分の外側の部分をフォトレジストからなるマスクRで覆い、等方性エッチングにより、プレート162およびプレートリード162dの上にある余分な絶縁層20を除去し、さらに第二絶縁層14の一部を除去して環状部132、プレートスペーサ131および空隙C3を形成し、第一絶縁層11の一部を除去してガードスペーサ103、ダイヤフラム支持部102、環状部101および空隙C2を形成する。このときエッチャントはマスクRの開口H5と基板層10の開口100aそれぞれから進入する。エッチングが終了した後、マスクRを除去する。そして、アレイチップごとに溝部H3においてダイシングし、各アレイチップに分割する。
【0039】
2.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態で示した材質や寸法や成膜方法やパターン転写方法はあくまで例示であるし、当業者であれば自明である工程の追加や削除や工程順序の入れ替えについては説明が省略されている。また、コンデンサマイクロホンを構成しうる物性を持つ膜材料の組み合わせや、膜厚や、要求される輪郭形状精度などに応じて適宜選択されるものであって、特に限定されない。
【0040】
上記実施形態で説明したアレイチップは、基板層10の第二の主面側がパッケージの底部30などに接着層29を介して接合されるわけであるが、例えば図6Aに示すように、各マイクロホンの構造体の空気室C1が互いに繋がっていてもよい。すなわち、アレイチップの内側に位置する基板層10の厚さを、アレイチップの外周を構成する基板層10より薄くし、外周を構成する基板層10の底面(第二の主面)を接着層29を介してパッケージの底部30に接合する。このようにして、大きな空気室を共有することにより、マイクロホンとしての感度を向上させることができる。
【0041】
なお、図6Aに示すように、各構造体の第一電極層12同士は基板層10を介して接続されていなくても、例えば橋部Bを構成する層の一つとしての第一電極層12で直接に接続されていてもよい。この場合、図4Aの工程でコンタクトホール11bを形成せず、図4Bの工程で例えばガード部127とダイヤフラム123とが分離されないようにパターニングする。また、寄生容量を低減するために、基板層10とダイヤフラム123およびガード部127とは同電位とするため、第一電極層12と接続する電極パッド123eとは別に、基板層10に接続する電極パッドを設け、それらの電極パッドを同電位とするようにする。なお、プレートがダイヤフラムより基板層10に近い構成である場合は、寄生容量低減のためにプレートと基板層10を同電位にする。なお、各構造体のダイヤフラム123同士は、図6Bに示すように電極パッド123eを構成するパッド導電層21と基板層10とを介して接続されていてもよい。
【0042】
また、図6Cに示すように、橋部Bにおいては第一絶縁層11と第二絶縁層14とをエッチングにより除去し、橋部Bの第二電極層18と基板層10との間を空洞にしてもよい。そうすると、構造体の外周を全域にわたって囲んで溝部H3が形成されることとなる。そのため、アレイチップの反りをより緩和することができる。
なお、上記実施形態では、溝部H3においては第一絶縁層11および第二絶縁層14が除去され底部に基板の第一の主面が露出している構成を示したが、溝部H3の底部には第一絶縁層11が一部残存していてもよいし、第二絶縁層14が一部残存していてもよい。上述した図5Aに示す工程において例えばエッチング時間を調整することによって溝部H3の深さを調節することができる。
【符号の説明】
【0043】
1:構造体、10:基板層、11:第一絶縁層、11a:ディンプル、11b:コンタクトホール、11c:コンタクトホール、12 第一電極層、13:導電層、14:第二絶縁層、14a:ディンプル、15:導電層、16:導電層、17:絶縁層、18:第二電極層、19:導電層、20:絶縁層、20a:開口、21:パッド導電層、22:パッシベーション層、29:接着層、30:底部、100a:開口、101:環状部、102:ダイヤフラム支持部、103:ガードスペーサ、123:ダイヤフラム、123a:中央部、123b:ダイヤフラム孔、123c:腕部、123e,162e:電極パッド、123f:ダイヤフラムバンプ、125a:ガード電極、125b:ガードコネクタ、125c:ガードリング、125d:ガードリード、127:ガード部、129:プレート支持部、131:プレートスペーサ、132:環状部、161:エッチストッパリング、162:プレート、162a:腕部、162b:中央部、162c:プレート孔、162d:プレートリード、162f:プレートバンプ、B:橋部、C1:空気室、C2,C3:空隙、H1,H4:コンタクトホール、H3:溝部、H5:開口、R:マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通する複数の開口が形成された基板の一方の主面上の前記開口の外側に形成された第一絶縁層と、
前記第一絶縁層の上に形成され前記開口の上に張り渡された第一電極層と、
前記開口の外側において前記第一電極層の上に形成された第二絶縁層と、
前記第二絶縁層の上に形成され前記第一電極層と空隙を介して対向する第二電極層と、
を有する構造体と前記基板とを備え、前記基板の一方の主面上において前記開口に合わせて前記構造体が複数形成され互いに並列接続されているコンデンサマイクロホンアレイチップであって、
前記構造体の平面視における外周の少なくとも橋部を除く部分に、少なくとも前記第二絶縁層の一部が除去されている溝部が形成されており、
前記橋部は、複数の前記構造体の前記第二電極層同士を接続する前記第二電極層からなる配線を含んで構成されている、
コンデンサマイクロホンアレイチップ。
【請求項2】
前記橋部は、前記配線を支持する前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とを含んで構成されている、
請求項1に記載のコンデンサマイクロホンアレイチップ。
【請求項3】
前記橋部においては、前記配線と前記基板との間の前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とが除去されている、
請求項1に記載のコンデンサマイクロホンアレイチップ。
【請求項4】
前記基板は単結晶シリコンからなり、
前記第一電極層は前記基板に導通し、前記第一電極層同士は前記基板を介して電気的に接続されている、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコンデンサマイクロホンアレイチップ。
【請求項5】
前記構造体の前記開口内の空気室は他の前記構造体の前記空気室と繋がっている、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のコンデンサマイクロホンアレイチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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