説明

コンデンサ用フィルム

【課題】信頼性の高いコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサ及びその製造方法を提供することである。また、誘電体フィルムの巻回後の含浸工程を要しない簡略された製造方法を可能とし、製造コストを低くできるコンデンサ用フィルム、そのコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサ及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】誘電体フィルムと金属薄膜とそれらに密着して形成された樹脂薄膜とからなるコンデンサ用フィルムであって、樹脂薄膜は、高周波領域で低誘電率及び低誘電正接を有する硬化物を形成可能な低溶融粘度のAステージ樹脂の薄膜であるコンデンサ用フィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサ用のフィルム、そのフィルムを用いたコンデンサ及びその製造方法に関するものであり、特に、フィルム中の樹脂薄膜の材料として、高周波領域における電気特性において、低誘電率及び低誘電正接性能を有する硬化物を形成可能な所定溶融粘度のAステージ樹脂を用フィルムコンデンサ用のフィルム、そのフィルムを用いたコンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムコンデンサは、たとえばアルミニウム等の金属を蒸着して形成されたコンデンサ電極膜を有する1対の誘電体フィルムを所定長さ巻回し、誘電体フィルムの巻回終端部を熱溶着等により端末処理した後、液状エポキシ樹脂等の含浸剤に浸漬させることによりその内部に含浸剤を含浸させ、その端面の絶縁処理を行い、耐湿性や耐電圧性を向上させて製造されていた。
【0003】
誘電体フィルム巻回後の樹脂含浸は、耐湿性等を向上させるために必要不可欠な工程であるが、誘電体フィルム同士の密着や樹脂の含浸性等から、コンデンサ素子の幅方向中央部にまで樹脂を到達させるのは困難である。その結果、コンデンサ素子本体内部に残留したエアーによりコンデンサ内部でコロナ放電が発生する場合もあり、フィルムコンデンサの十分な信頼性を確保できず、また、誘電体フィルムの巻回後の樹脂含浸工程を必要とすることは、結果として工程数を多くし、フィルムコンデンサの製造コストを高くさせる原因となっていた。そのため、近年、誘電体フィルム巻回後の含浸工程を必要としないフィルムコンデンサの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−13268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の製造方法では、誘電体フィルムを重ね合わせた後で、巻回する直前に、各誘電体フィルムに絶縁性樹脂を滴下等により塗布することにより、誘電体フィルム巻回後の巻回体の両端面から絶縁性樹脂をはみ出させ、はみ出した絶縁性樹脂により巻回体の端面の絶縁処理を行うため、巻回体における誘電体フィルム間に塗布された絶縁性樹脂には斑を生じ、電極膜を覆う有効な絶縁性樹脂薄膜を形成できず、さらには、残留するエアー等により、巻回体に用いられる誘電体フィルムの微細な加工も困難であった。その結果、信頼性の高いフィルムコンデンサを製造することができなかった。
【0005】
また、近年、通信情報量の急増に伴い、通信機の小型化、軽量化、高速化が強く望まれており、これに対応できる低誘電性電気絶縁材料が要求されている。特に、自動車電話、デジタル携帯電話機等の携帯移動体通信、衛星通信に使用される電波の周波数帯域はメガからギガ帯の高周波帯域のものが使用されていることから優れた高周波電送性と低誘電性とを合わせもつ電気絶縁材料が要求されている。
【0006】
さらに、高周波領域の通信分野において信号の誤動作を少なくするため、誘電損失及び電気抵抗による発熱を抑制することが要求されている。
【0007】
本発明は、上述の問題点及び要求に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、信頼性の高いコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサ及びその製造方法を提供することである。第2の目的は、誘電体フィルムの巻回後の含浸工程を要しない簡略された製造方法を可能とするコンデンサ用フィルム、そのコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサ及びその製造方法を提供することである。そして、第3の目的は、製造コストが低くできるコンデンサ用フィルム、そのコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するため、本願発明に係るコンデンサ用フィルムは、誘電体フィルムと金属薄膜とそれらに密着して形成された樹脂薄膜とからなるコンデンサ用フィルムであって、樹脂薄膜は、高周波領域で低誘電率及び低誘電正接を有する硬化物を形成可能な所定溶融粘度のAステージ樹脂の薄膜であることを特徴とする。また、本願発明に係るコンデンサ及び本願発明に係るコンデンサの製造方法は、上述のコンデンサ用フィルムを用いることを特徴とする。
【0009】
具体的には、本願発明に係るコンデンサ用フィルムは、
所定の幅及び厚さを有する長尺の誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの上面に前記誘電体フィルムの長手方向に延びる第一の幅に形成された金属薄膜と、前記誘電体フィルム及び前記金属薄膜に密着して形成された樹脂薄膜とからなるコンデンサ用フィルムであって、
前記樹脂薄膜は、前記金属薄膜が形成された誘電体フィルムの表面と第二の幅で、かつ、前記金属薄膜が形成された誘電体フィルムの表面と対向する金属薄膜の表面と第三の幅で密着して形成され、
前記樹脂薄膜は、高周波領域で低誘電率及び低誘電正接を有する硬化物を形成可能な所定溶融粘度のAステージ樹脂の薄膜である、
ことを特徴とする。
【0010】
上述した発明によれば、樹脂薄膜は、高周波領域で低誘電率及び低誘電正接を有する硬化物を形成可能なAステージ樹脂の薄膜であることから、コンデンサ用フィルムを巻回し熱硬化させたコンデンサは誘電損失及び電気抵抗による発熱を抑制することが可能となるため、高周波領域の通信分野において信号の誤動作を少なくすることができる。
【0011】
また、コンデンサ用フィルムを巻回し熱硬化させた後、樹脂薄膜は、コンデンサにおける金属薄膜が水分と反応して侵食が進むことを防止することできる。したがって、コンデンサ特性が劣化するのを防止することができる。
【0012】
そして、樹脂薄膜は、硬化物を形成可能な所定溶融粘度のAステージ樹脂の薄膜であることから、所定温度等の条件の下で流れ性を制御できるため、高圧による熱圧着を行うことなく低圧の圧着により、誘電体フィルム表面に形成された金属薄膜による凹凸に対して、Aステージ樹脂の良好な埋め込みが可能となり、Aステージ樹脂により誘電体フィルムと金属薄膜とを内部に封止したコンデンサを製造することができる。したがって、コンデンサ用フィルムを巻回した後のコンデンサ内部にエアーが残留することはなくなり良好な密着性を有するフィルムコンデンサを製造することができ、エアーに起因するコロナ放電が発生することも防止できる。
【0013】
さらに、樹脂薄膜としてAステージ樹脂の薄膜を用いていることから、誘電体フィルム及び金属薄膜への貼り付けが容易に行えるだけでなく、密着させた後もAステージ状態である場合は、誘電体フィルム及び金属薄膜接着フィルムからの剥離も容易に行うことができる。
【0014】
ここで、「誘電体フィルム」とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の誘電体フィルムをいう。また、「金属薄膜」の材質としては、アルミニウム、亜鉛などをいう。
【0015】
「Aステージ樹脂」とは、架橋反応開始前の樹脂組成物をいい、具体的には、樹脂組成物と硬化剤とを混合し、有機溶剤に溶解しうる状態の樹脂組成物をいう。例えば、エポキシ樹脂組成物等を含む所定の樹脂組成物を溶剤で希釈し、支持体の表面に塗布して乾燥させた未硬化状態の樹脂組成物をいう。「溶剤」としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、更に、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等の低沸点溶媒等が挙げられる。
【0016】
Aステージ樹脂としては、(A)以下の一般式(1)で示されるビニル化合物と、
【化3】


【化4】


(式中、
、R、R、R、R、R、Rは同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はフェニル基であり、
−(O−X−O)−は構造式(2)で示され、ここで、R、R、R10、R14、R15は、同一又は異なってもよく、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、R11、R12、R13は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、
−(Y−O)−は構造式(3)で示される1種類の構造、又は構造式(3)で示される2種類以上の構造がランダムに配列したものであり、ここで、R16、R17は同一又は異なってもよく、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、R18、R19は同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、
Zは炭素数1以上の有機基であり、場合により酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含むこともあり、
a、bは少なくともいずれか一方が0でない、0〜300の整数を示し、
c、dは0又は1の整数を示す。)
(B)ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーと、
を含む熱硬化性樹脂組成物を主成分とする樹脂組成物が好ましい。
【0017】
また、Aステージ樹脂として、
(C)フェノール骨格とビフェニル骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、及び重量平均分子量が10,000〜200,000であり、かつ水酸基を有する二官能性直鎖状エポキシ樹脂よりなる群から選択される1種以上のエポキシ樹脂、並びに
(D)フェノール性水酸基の少なくとも一部を脂肪酸でエステル化した変性フェノールノボラック、を含むエポキシ樹脂組成物を主成分とする樹脂組成物も好ましい。
【0018】
本願発明に係るコンデンサ用フィルムとして、樹脂薄膜の第三の幅は、金属薄膜の第一の幅より小さい、ことが好ましい。
【0019】
上述した発明によれば、樹脂薄膜の第三の幅は、金属薄膜の第一の幅より小さいことから、コンデンサ用フィルムを用いてコンデンサを製造するために2枚のコンデンサ用フィルムを交互に積み重ねて巻回した際、巻回体の両端面に金属薄膜が露出するとともに、らせん状の凹部が表れるため、コンデンサの端子を形成した際、密着性を向上させることができる。また、Aステージ樹脂は、所定条件の下、流れ性を制御できることから、コンデンサ用フィルムを巻回するだけで巻回体の両端面に表れる凹部にAステージ樹脂を押し出すことができる。その結果、樹脂薄膜の厚さと、第一、第二及び第三の幅とを調整するだけでコンデンサの容量を制御でき、金属薄膜の十分な封止が可能となり、コロナ放電や侵食等を防止でき、信頼性の高いコンデンサ用フィルム及びコンデンサを製造することができる。
【0020】
本願発明に係るコンデンサ用フィルムとして、樹脂薄膜の第三の幅は、金属薄膜の第一の幅である、ことも望ましい。
【0021】
上述した発明によれば、樹脂薄膜の第三の幅は、金属薄膜の第一の幅であることから、Aステージ樹脂の薄膜により、誘電体フィルム及び金属薄膜の十分な封止が可能となり、コロナ放電や侵食等を防止でき、信頼性の高いコンデンサ用フィルム及びコンデンサを製造することができる。
【0022】
また、本願発明に係るコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサは、
第一のコンデンサ用フィルム及び第二のコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサであって、
前記第一のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムの面のうち、前記金属薄膜が形成された面と対向する面と、前記第二のコンデンサ用フィルムの樹脂薄膜の面のうち、前記金属薄膜が密着する面と対向する面とを密着して積み重ね、前記第一及び第二のコンデンサ用フィルムの露出した金属薄膜が前記コンデンサ用フィルムの長手方向中心線に対して対称に設け、前記第二のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムを中心に、積み重ねた前記第一及び第二のコンデンサ用フィルムを巻回して熱硬化させたコンデンサ用フィルムの巻回体と、
巻回された前記コンデンサ用フィルムの金属薄膜ごとに導通可能に設けられた端子と、
を含み、
前記第一のコンデンサ用フィルム及び第二のコンデンサ用フィルムは上述のコンデンサ用フィルムである、
ことを特徴とする。
【0023】
上述した発明によれば、第一のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムの面のうち、金属薄膜が形成された面と対向する面と、第二のコンデンサ用フィルムの樹脂薄膜の面のうち、金属薄膜が密着する面と対向する面とを密着して積み重ね、第一及び第二のコンデンサ用フィルムの露出した金属薄膜が前記コンデンサ用フィルムの長手方向中心線に対して対称に設けることから、上述したコンデンサ用フィルムを交互に積み重ねた単純な構造が可能となるため、同一コンデンサ用フィルムを量産することでコンデンサを量産することが可能となる。したがって、長尺の誘電体フィルムから所定の幅を有する同一のコンデンサ用フィルムを製造することで、コンデンサ用フィルム及びそのフィルムを用いたコンデンサの量産が可能となり、さらに、コンデンサを小型化することで、コンデンサ用フィルムの幅も小さくなるため、さらなる量産が可能となる。
【0024】
また、第二のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムを中心に、積み重ねた第一及び第二のコンデンサ用フィルムを巻回したコンデンサ用フィルムの巻回体となることから、巻回体の外表面はAステージ樹脂の樹脂薄膜により覆われ、熱硬化させた後は防湿性に優れたコンデンサを製造することができる。
【0025】
そして、本願発明に係るコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサの製造方法は、
上述のコンデンサ用フィルムを第一のコンデンサ用フィルムと第二のコンデンサ用フィルムとして用いたコンデンサの製造方法であって、
前記第一のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムの面のうち、前記金属薄膜が形成された面と対向する面と、前記第二のコンデンサ用フィルムの樹脂薄膜の面のうち、前記金属薄膜が密着する面と対向する面とを密着して積み重ね、かつ、前記第一及び第二のコンデンサ用フィルムの露出した金属薄膜が前記コンデンサ用フィルムの長手方向中心線に対して対称に設けられる工程と、
前記第二のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムを中心に、積み重ねた前記第一及び第二のコンデンサ用フィルムを巻回する工程と、
前記巻回されたコンデンサ用フィルムの巻回体を熱硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする。
【0026】
上述した発明によれば、第二のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムを中心に、積み重ねた第一及び第二のコンデンサ用フィルムを巻回する工程と、巻回されたコンデンサ用フィルムの巻回体を熱硬化させる工程と、を含むことから、Aステージ樹脂の樹脂薄膜により、エアーを残存させることなく、誘電体フィルム及び金属薄膜が封止できることから、コンデンサ製造工程において巻回体をエポキシ樹脂等の含浸剤に含浸する必要がなく、製造工程を簡略したコストの低い製造が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
上述した発明によれば、高周波領域で低誘電率及び低誘電正接を有する硬化物を形成可能なAステージ樹脂の樹脂薄膜により、コンデンサ用フィルムを巻回し熱硬化させたコンデンサは誘電損失及び電気抵抗による発熱を抑制することが可能となるため、高周波領域の通信分野において信号の誤動作を少なくすることができる。また、コンデンサ用フィルムを巻回し熱硬化させた後、樹脂薄膜は、コンデンサにおける金属薄膜が水分と反応して侵食が進むことを防止することできる。したがって、コンデンサ特性が劣化するのを防止することができる。
【0028】
さらに、硬化物を形成可能な所定溶融粘度のAステージ樹脂の樹脂薄膜により、所定温度等の条件の下で流れ性を制御できるため、高圧による熱圧着を行うことなく低圧の圧着により、誘電体フィルム表面に形成された金属薄膜による凹凸に対して、Aステージ樹脂の良好な埋め込みが可能となり、Aステージ樹脂により誘電体フィルムと金属薄膜とを内部に封止したコンデンサを作製することができる。したがって、コンデンサ用フィルムを巻回した後のコンデンサ内部にエアーが残留することはなくなり良好な密着性を有するフィルムコンデンサを製造することができ、エアーに起因するコロナ放電が発生することも防止できる。
【0029】
したがって、信頼性の高いコンデンサ用フィルム及びこれを用いたコンデンサを製造することができる。また、上述のコンデンサ用フィルムを用いることで、誘電体フィルム巻回後の含浸工程を要しない簡略された製造方法が可能となり、その結果、製造コストが低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1〜図2を用いて、本発明の実施形態に係るコンデンサ用フィルムについて、図面を参照しつつ説明する。さらに、図3〜図7を用いて、本発明の実施形態に係るコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサ及びそのコンデンサの製造方法を説明する。本発明の実施形態に係るコンデンサ用フィルムは、長尺の誘電体フィルムと、誘電体フィルムの上面に誘電体フィルムの長手方向に延びる所定の幅に形成された金属薄膜と、誘電体フィルム及び金属薄膜に密着して形成された樹脂薄膜とからなる3層構造のフィルムである。そして、コンデンサは、2枚の上記フィルム用コンデンサを密着して積み重ねて巻回することにより製造される。
【0031】
図1(a)は本発明の第1実施形態に係るコンデンサ用フィルム100の概念断面図であり、図1(b)は図1(a)のコンデンサ用フィルム100の概念斜視図である。図2(a)は本発明の第2実施形態に係るコンデンサ用フィルム200の概念断面図であり、図2(b)は図2(a)のコンデンサ用フィルム200の概念斜視図である。図3〜図6は、第1実施形態に係るコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサの製造方法を説明するための図であり、図3(a)は誘電体フィルム330の表面にスリット状に蒸着されたアルミニウム薄膜320に対して、Aステージ樹脂薄膜310をアルミニウム薄膜320表面の中央部付近が露出するようにスリット状にAステージ樹脂を塗布したコンデンサ用フィルム300の概念断面図であり、図3(b)は図3(a)のコンデンサ用フィルム300の概念斜視図である。図4は破線により切断線を表したコンデンサ用フィルム300の概念断面図である。図5(a)は切断後のコンデンサ用フィルム300の概念断面図であり、図5(b)は図5(a)の切断後のコンデンサ用フィルム300の概念斜視図である。図6(a)は2つのコンデンサ用フィルムを積み重ねたコンデンサ用フィルムの概念断面図であり、図6(b)は積み重ねたコンデンサ用フィルムの概念斜視図である。図7はコンデンサ用フィルム巻回後のコンデンサ400の概要図である。
【0032】
<<コンデンサ用フィルム>>
<第1実施形態>
図1(a)及び図1(b)に示すように、第1実施形態に係るコンデンサ用フィルム100は、所定の幅及び厚さを有する長尺の誘電体フィルム130と、誘電体フィルム130の上面に誘電体フィルム130の長手方向に延びる第一の幅に形成された金属薄膜120と、誘電体フィルムとは第二の幅で密着し、かつ、金属薄膜120とは第三の幅で密着して形成された樹脂薄膜110とから構成される。図1(a)及び図1(b)は、コンデンサ用フィルムを説明するために誇張した図であり、例えば、樹脂薄膜110の幅(第二の幅+第三の幅)は8mm、金属薄膜表面からの厚さは1.5〜2.5μmであり、金属薄膜120の幅(第一の幅)は8mm、誘電体フィルム表面からの厚さは数十nmであり、誘電体フィルム130の幅(第一の幅+第二の幅)は9mm、厚さは4.4μmである。
【0033】
第1実施形態に係るコンデンサ用フィルムでは、樹脂薄膜110の樹脂として、Aステージ樹脂、具体的には、(C)フェノール骨格とビフェニル骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、及び重量平均分子量が10,000〜200,000であり、かつ水酸基を有する二官能性直鎖状エポキシ樹脂よりなる群から選択される1種以上のエポキシ樹脂、並びに、(D)フェノール性水酸基の少なくとも一部を脂肪酸でエステル化した変性フェノールノボラック、を含むエポキシ樹脂組成物を主成分とする樹脂組成物を用いた。金属薄膜120の材料としてアルミニウムを、誘電体フィルム110の材料としてPETフィルムを用いた。
【0034】
上記Aステージ樹脂の溶融粘度は、100℃で約100Pa・s、150℃で約1000Pa・s、180℃で約29000Pa・sであった。第1実施形態に係るフィルム用コンデンサを用いてフィルムコンデンサを製造する際の温度条件により、Aステージ樹脂の流れ性を制御することが可能となり、所望形態のAステージ樹脂の樹脂薄膜を有するコンデンサ用フィルムを製造することができる。さらに、熱硬化前のコンデンサ用フィルムの巻回体においても、Aステージ樹脂の樹脂薄膜の流れ性を制御できるため、巻回体の形態・構成に応じて要求される樹脂流れ性に制御して、所望のフィルムコンデンサを製造することができる。
【0035】
ここで、上記Aステージ樹脂、具体的には、Aステージ樹脂の硬化物に関する誘電率や誘電正接などに関する物性を、表1に示す。誘電特性については、支持体である離型剤付フィルム(シリコーン系離型剤、PETフィルム)上に、ドクターコーター、スロットダイコーター又はマイクログラビヤコーターを用いて、硬化後の厚みが2〜90μmとなるよう塗布し、乾燥後、未硬化のフィルムを得た。その後、80℃で30分、100℃で60分、150℃で60分、180℃で60分の条件で硬化させ、支持体を剥した後、150℃に加熱したガラス板ではさみ平らな状態にしたフィルムを得た。この硬化フィルムに、さらに同じ組成の未硬化のフィルムをスタックし、真空加熱硬化を行った。得られたフィルムを幅1.5mm、長さ80mm、厚さ0.5mmに加工し、試料とした。試料を、室温で、空洞共振器(機器名:摂動法誘電体測定装置、関東電子応用開発(株)製)を用いて、誘電率、誘電正接を測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示されるように、上記Aステージ樹脂は、誘電特性に優れた硬化物を形成できることが確認された。一方、従来の組成物によるフィルムは、その特性は、誘電率(5GHz)では3.0以上、誘電正接(5GHz)は0.02以上であった。また、フィルム厚が、2μmと薄いものであっても、表1に示した充分な電気的・物理的特性を有することが確認された。
【0038】
したがって、樹脂薄膜110が高周波領域で低誘電率及び低誘電正接を有する硬化物を形成可能なAステージ樹脂の薄膜であることから、コンデンサ用フィルムを巻回し熱硬化させたコンデンサは誘電損失及び電気抵抗による発熱を抑制することが可能となるため、高周波領域の通信分野において信号の誤動作を少なくすることができる。
【0039】
また、上記Aステージ樹脂と一般的なポリイミド樹脂組成物との硬化物に関し、85℃/85%RHの条件で1000時間経過後の誘電率及び誘電正接の変化を比較した。この結果、例えば、5GHzの場合、上記Aステージ樹脂に関する硬化物の誘電率は、比較試験開始時は約2.7で、開始時から1000時間経過後は約3.0に変化するに止まったが、ポリイミド樹脂組成物に関する硬化物の誘電率は、比較試験開始時は約3.8で、開始時から1000時間経過後は約6.0にまで変化した。さらに、誘電正接に関しては、同じ条件下で、上記Aステージ樹脂に関する硬化物の誘電正接は、比較試験開始時は約0.01で、開始時から1000時間経過後は約0.015に変化するに止まったが、ポリイミド樹脂組成物に関する硬化物の誘電正接は、比較試験開始時は約0.01で、開始時から1000時間経過後は約0.04にまで変化した。したがって、上記Aステージ樹脂の硬化物に関して、耐湿性をも有することが確認された。
【0040】
さらに、コンデンサ用フィルムを巻回し熱硬化させた後、樹脂薄膜110がコンデンサにおける金属薄膜が水分と反応して侵食が進むことを防止することできるため、コンデンサ特性が劣化するのを防止することができる。
【0041】
そして、樹脂薄膜110が硬化物を形成可能な所定溶融粘度のAステージ樹脂の薄膜であることから、所定温度等の条件の下で流れ性を制御できるため、高圧による熱圧着を行うことなく低圧の圧着により、誘電体フィルム表面に形成された金属薄膜による凹凸に対して、Aステージ樹脂の良好な埋め込みが可能となり、Aステージ樹脂により誘電体フィルムと金属薄膜とを内部に封止したコンデンサを製造することができる。したがって、コンデンサ用フィルムを巻回した後のコンデンサ内部にエアーが残留することはなくなり良好な密着性を有するフィルムコンデンサを製造することができ、エアーに起因するコロナ放電が発生することも防止できる。
【0042】
さらに、樹脂薄膜としてAステージ樹脂の薄膜を用いていることから、誘電体フィルム及び金属薄膜への貼り付けが容易に行えるだけでなく、密着させた後もAステージ状態である場合は、誘電体フィルム及び金属薄膜接着フィルムからの剥離も容易に行うことができる。
【0043】
ここで、第1実施形態に係るコンデンサ用フィルムは、長手方向に、樹脂薄膜110と、金属薄膜120と、誘電体フィルム130とから順に構成される3層構造と、樹脂薄膜110と、誘電体フィルム130とから構成され、金属薄膜120が露出しない2層構造とからなる端面が形成される。また、金属薄膜120の幅が、樹脂薄膜110が金属薄膜120と密着している幅より大きいため、樹脂薄膜110から誘電体フィルム130の方向にコンデンサ用フィルムを観察した場合、樹脂薄膜110の端部において長手方向に金属薄膜120が露出する。したがって、第1実施形態に係るコンデンサ用フィルムを図6のように2枚交互に積み重ねることで、凹部を有する5層構造の2つの端面を形成することができる。
【0044】
したがって、積み重ねたコンデンサ用フィルム100を巻回した際、巻回体の両端面に金属薄膜が露出するとともに、らせん状の凹部が表れるため、コンデンサの端子を形成した際、密着性を向上させることができる。また、Aステージ樹脂は、流れ性が良いことから、コンデンサ用フィルムを巻回するだけで巻回体の両端面に表れる凹部にAステージ樹脂を押し出すことができるため、樹脂薄膜110の厚さと、金属薄膜120の幅(第一の幅)、誘電体フィルム130と密着している樹脂薄膜110の幅(第二の幅)及び金属薄膜120と密着している樹脂薄膜110の幅(第三の幅)とを調整するだけで、コンデンサの容量を制御でき、金属薄膜120の十分な封止が可能となり、コロナ放電や侵食等を防止でき、信頼性の高いコンデンサ用フィルム及びコンデンサを製造することができる。
【0045】
なお、樹脂薄膜110の樹脂として、上記Aステージ樹脂に限定されず、高周波領域で低誘電率及び低誘電正接を有する硬化物を形成可能な所定溶融粘度のAステージ樹脂であれば、本実施形態に適用することができる。例えば、(A)以下の一般式(1)で示されるビニル化合物と、
【化5】


【化6】


(式中、R、R、R、R、R、R、Rは同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はフェニル基であり、−(O−X−O)−は構造式(2)で示され、ここで、R、R、R10、R14、R15は、同一又は異なってもよく、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、R11、R12、R13は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、−(Y−O)−は構造式(3)で示される1種類の構造、又は構造式(3)で示される2種類以上の構造がランダムに配列したものであり、ここで、R16、R17は同一又は異なってもよく、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、R18、R19は同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、Zは炭素数1以上の有機基であり、場合により酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含むこともあり、a、bは少なくともいずれか一方が0でない、0〜300の整数を示し、c、dは0又は1の整数を示す。)(B)ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーと、を含む熱硬化性樹脂組成物を主成分とする樹脂組成物も用いることができる。
【0046】
また、上記Aステージ樹脂の硬化物に関して、85℃/85%RHの条件下、例えば、5GHzの場合、誘電率は、比較試験開始時は約2.55で、開始時から1000時間経過後は約2.57に変化し、誘電正接は、比較試験開始時は約0.0021で、開始時から1000時間経過後は約0.0034に変化した。したがって、上記Aステージ樹脂の硬化物も耐湿性を有する。
【0047】
<第2実施形態>
図2(a)及び図2(b)に示すように、第2実施形態に係るコンデンサ用フィルム200は、第1実施形態に係るコンデンサ用フィルム100と同様に、所定の幅及び厚さを有する長尺の誘電体フィルム230と、誘電体フィルム230の上面に誘電体フィルム230の長手方向に延びる第一の幅に形成された金属薄膜220と、誘電体フィルムとは第二の幅で密着し、かつ、金属薄膜220とは第三の幅で密着して形成された樹脂薄膜210とから構成される。第1実施形態に係るコンデンサ用フィルム100と第2実施形態に係るコンデンサ用フィルム200との違いは、金属薄膜220の幅が、樹脂薄膜210が金属薄膜220と密着している幅と同じ、すなわち、樹脂薄膜230の第三の幅と金属薄膜220の第一の幅とが同じであることである。したがって、第2実施形態に係るコンデンサ用フィルム200を2枚交互に積み重ねることで、凹部を有さない5層構造の2つの端面を形成することができる。
【0048】
この結果、Aステージ樹脂の樹脂薄膜210により、誘電体フィルム230及び金属薄膜220の十分な封止が可能となり、コロナ放電や侵食等を防止でき、信頼性の高いコンデンサ用フィルム及びコンデンサを製造することができる。
【0049】
<<コンデンサ>>
図6及び図7を参照して、上記第1実施形態及び第2実施形態に係るコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサを、第1実施形態に係るコンデンサ用フィルム100を用いて説明する。図7に示すように、製造されるコンデンサ400は、2枚のコンデンサ用フィルムの巻回体410の端面において、コンデンサ用フィルムの樹脂薄膜であるAステージ樹脂を巻回体410の両端面にはみ出させ、はみ出たAステージ樹脂420により巻回体410の両端面の絶縁処理を行ったものである。フィルムコンデンサとして機能させるため、例えば、コンデンサ用フィルム巻回開始の際にコンデンサ用フィルムの末端処理を行い、コンデンサ用フィルムの金属薄膜ごとに導通可能にコンデンサ端子430を設ける。
【0050】
ここで、図6に示されるように、第1の実施形態に係るコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサは、2枚のコンデンサ用フィルム300,302を交互に積み重ね、巻回したものである。具体的には、コンデンサ用フィルム300の誘電体フィルム310と、コンデンサ用フィルム302の樹脂薄膜312とを密着して積み重ね、コンデンサ用フィルム300,302の露出した金属薄膜320,322が長手方向中心線に対して対称となるように構成されたものをコンデンサ用フィルム302の誘電体フィルム332を中心に巻回して熱硬化させた巻回体を含む。
【0051】
したがって、同一のコンデンサ用フィルム300,302を交互に積み重ねた単純な構造が可能となるため、同一コンデンサ用フィルムを量産することでコンデンサを量産することが可能となる。この結果、長尺の誘電体フィルムから所定の幅を有する同一のコンデンサ用フィルムを製造することで、コンデンサ用フィルム及びそのフィルムを用いたコンデンサの量産が可能となり、さらに、コンデンサを小型化することで、コンデンサ用フィルムの幅も小さくなるため、さらなる量産が可能となる。
【0052】
また、コンデンサ用フィルム302の誘電体フィルム332を中心に、積み重ねたコンデンサ用フィルム300,302を巻回したコンデンサ用フィルムの巻回体となることから、巻回体の外表面はAステージ樹脂の樹脂薄膜により覆われ、熱硬化させた後は防湿性に優れたコンデンサを製造することができる。
【0053】
<<コンデンサ用フィルム及びそれを用いたコンデンサの製造方法>>
<コンデンサ用フィルム製造工程>
上述したとおり、本実施形態に係るコンデンサは、2枚の同一構造のコンデンサ用フィルムの巻回体を用いている。したがって、コンデンサ用フィルム製造方法においては、所定の幅の誘電体フィルム330の表面上に、所定の幅で均等なスリット状に蒸着された金属薄膜320を形成した後、Aステージ樹脂を所定の幅で均等なスリット状に塗布する。誘電体フィルム330の表面にスリット状に蒸着されたアルミニウム薄膜320に対して、Aステージ樹脂薄膜310をアルミニウム薄膜320表面の中央部付近が露出するようにスリット状にAステージ樹脂を塗布したコンデンサ用フィルム300の概念断面図を図3(a)に、概念斜視図を図3(a)に示す。
【0054】
Aステージ樹脂を塗布する方法は、特に限定されないが、薄膜化・膜厚制御の観点から、マイクログラビア法、スロットダイ法が好ましい。マイクログラビア法を採用した場合、セル容積の小さいグラビアロールの選択等により、20μm以下の厚みの樹脂薄膜310を得ることができる。
【0055】
そして、Aステージ樹脂を塗布した後、乾燥させる。乾燥条件は、有機溶剤の種類や量、塗布の厚み等に応じて、適宜、設定することができ、例えば、80〜120℃で、1〜30分程度とすることができる。このようにして得られたコンデンサ用フィルムは未硬化の状態であり、さらに硬化させることができる。
【0056】
<切断工程>
図4、図5(a)及び図5(b)を参照して切断工程を説明する。図4は破線により切断線を表したコンデンサ用フィルム300の概念断面図である。図4に示すように、コンデンサ用フィルムの樹脂薄膜310の中央部と、樹脂薄膜310どうし間で露出する金属薄膜320の中央部、すなわち、樹脂薄膜310どうし間の中央部とを切断する。このように切断することによって、切断間隔を狭くすることで、コンデンサ用フィルムの量産が可能となる。具体的には、図5(a)及び図5(b)に示すとおり、左右対称な同一のコンデンサ用フィルムを同時に製造することが可能となる。
【0057】
<積み重ね工程>
図6(a)及び図6(b)に示すとおり、2枚のコンデンサ用フィルム300,302を交互に積み重ねる。具体的には、コンデンサ用フィルム300の誘電体フィルム310と、コンデンサ用フィルム302の樹脂薄膜312とを密着して積み重ね、コンデンサ用フィルム300,302の露出した金属薄膜320,322がコンデンサ用フィルムの長手方向中心線に対して対称となるように積み重ねて圧着する。
【0058】
<巻回工程>
積み重ねられた2枚のコンデンサ用フィルム300,302を、コンデンサ用フィルム302の誘電体フィルム332を中心に巻回して巻回体とする。その際、樹脂薄膜310,312のAステージ樹脂には流れ性があることから、巻回体の円周面を含む巻回体の外表面がAステージ樹脂の樹脂薄膜により覆われ、熱硬化させた後は防湿性に優れたコンデンサを製造することができる。特に、樹脂薄膜の厚さや幅や、巻回圧力・速度等を調整するだけで、巻回体端面に押し出されるAステージ樹脂量を調整することができる。
【0059】
<熱硬化工程>
Aステージ樹脂の硬化物に関する低誘電率、低誘電正接、耐湿性等を発揮させるため、巻回されたコンデンサ用フィルムの巻回体を熱硬化させる。硬化条件は、適宜、設定することができ、例えば、150〜250℃で、10〜150分程度とすることができる。
【0060】
したがって、コンデンサ用フィルム302の誘電体フィルム332を中心に、積み重ねたコンデンサ用フィルム300,302を巻回する工程と、巻回されたコンデンサ用フィルムの巻回体を熱硬化させる工程とにより、Aステージ樹脂の樹脂薄膜310,312により、エアーを残存させることなく、誘電体フィルム330,332及び金属薄膜320,322が封止できることから、コンデンサ製造工程において巻回体をエポキシ樹脂等の含浸剤に含浸する必要がなく、製造工程を簡略したコストの低い製造が可能となる。
【0061】
なお、コンデンサ端子については、例えば、コンデンサ用フィルム巻回開始の際にコンデンサ用フィルムの末端処理を行い、コンデンサ用フィルムの金属薄膜ごとに導通可能にコンデンサ端子を設けるようにすることができる。
【0062】
以上のとおり、本実施形態によれば、高周波領域で低誘電率及び低誘電正接を有する硬化物を形成可能なAステージ樹脂の樹脂薄膜により、コンデンサ用フィルムを巻回し熱硬化させたコンデンサは誘電損失及び電気抵抗による発熱を抑制することが可能となるため、高周波領域の通信分野において信号の誤動作を少なくすることができる。また、コンデンサ用フィルムを巻回し熱硬化させた後、樹脂薄膜は、コンデンサにおける金属薄膜が水分と反応して侵食が進むことを防止することできる。したがって、コンデンサ特性が劣化するのを防止することができる。
【0063】
さらに、硬化物を形成可能な所定溶融粘度のAステージ樹脂の樹脂薄膜により、所定温度等の条件の下で流れ性を制御できるため、高圧による熱圧着を行うことなく低圧の圧着により、誘電体フィルム表面に形成された金属薄膜による凹凸に対して、Aステージ樹脂の良好な埋め込みが可能となり、Aステージ樹脂により誘電体フィルムと金属薄膜とを内部に封止したコンデンサを製造することができる。したがって、コンデンサ用フィルムを巻回した後のコンデンサ内部にエアーが残留することはなくなり良好な密着性を有するフィルムコンデンサを製造することができ、エアーに起因するコロナ放電が発生することも防止できる。
【0064】
したがって、信頼性の高いコンデンサ用フィルム及びこれを用いたコンデンサを製造することができる。また、上述のコンデンサ用フィルムを用いることで、誘電体フィルム巻回後の含浸工程を要しない簡略された製造方法が可能となり、その結果、製造コストが低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1(a)】本発明の第1実施形態に係るコンデンサ用フィルム100の概念断面図である。
【図1(b)】図1(a)のコンデンサ用フィルム100の概念斜視図である。
【図2(a)】本発明の第2実施形態に係るコンデンサ用フィルム200の概念断面図である。
【図2(b)】図2(a)のコンデンサ用フィルム200の概念斜視図である。
【図3(a)】誘電体フィルム330の表面上のスリット状の金属薄膜320に対してスリット状にAステージ樹脂を塗布したコンデンサ用フィルム300の概念断面図である。
【図3(b)】図3(a)のコンデンサ用フィルムの概念斜視図である。
【図4】切断線を表したコンデンサ用フィルム300の概念断面図であるである。
【図5(a)】切断後のコンデンサ用フィルム300の概念断面図である。
【図5(b)】図5(a)の切断後のコンデンサ用フィルム300の概念斜視図である。
【図6(a)】2つのコンデンサ用フィルムを積み重ねたコンデンサ用フィルムの概念断面図である。
【図6(b)】積み重ねたコンデンサ用フィルムの概念斜視図である。
【図7】コンデンサ用フィルム巻回後のコンデンサの概要図である。
【符号の説明】
【0066】
100、200、300、302 コンデンサ用フィルム
110、210、310、312 樹脂薄膜
120、220、320、322 金属薄膜
130、230、330、332 誘電体フィルム
400 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅及び厚さを有する長尺の誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの上面に前記誘電体フィルムの長手方向に延びる第一の幅に形成された金属薄膜と、前記誘電体フィルム及び前記金属薄膜に密着して形成された樹脂薄膜とからなるコンデンサ用フィルムであって、
前記樹脂薄膜は、前記金属薄膜が形成された誘電体フィルムの表面と第二の幅で、かつ、前記金属薄膜が形成された誘電体フィルムの表面と対向する金属薄膜の表面と第三の幅で密着して形成され、
前記樹脂薄膜は、高周波領域で低誘電率及び低誘電正接を有する硬化物を形成可能な所定溶融粘度のAステージ樹脂の薄膜である、
ことを特徴とするコンデンサ用フィルム。
【請求項2】
前記樹脂薄膜の第三の幅は、前記金属薄膜の第一の幅より小さい、
請求項1記載のコンデンサ用フィルム。
【請求項3】
前記樹脂薄膜の第三の幅は、前記金属薄膜の第一の幅である、
請求項1記載のコンデンサ用フィルム。
【請求項4】
第一のコンデンサ用フィルム及び第二のコンデンサ用フィルムを用いたコンデンサであって、
前記第一のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムの面のうち、前記金属薄膜が形成された面と対向する面と、前記第二のコンデンサ用フィルムの樹脂薄膜の面のうち、前記金属薄膜が密着する面と対向する面とを密着して積み重ね、前記第一及び第二のコンデンサ用フィルムの露出した金属薄膜が前記コンデンサ用フィルムの長手方向中心線に対して対称に設け、前記第二のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムを中心に、積み重ねた前記第一及び第二のコンデンサ用フィルムを巻回して熱硬化させたコンデンサ用フィルムの巻回体と、
巻回された前記コンデンサ用フィルムの金属薄膜ごとに導通可能に設けられた端子と、
を含み、
前記第一のコンデンサ用フィルム及び第二のコンデンサ用フィルムは前記請求項1〜3のいずれか一項記載のコンデンサ用フィルムである、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項5】
前記請求項1〜3のいずれか一項記載のコンデンサ用フィルムを第一のコンデンサ用フィルムと第二のコンデンサ用フィルムとして用いたコンデンサの製造方法であって、
前記第一のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムの面のうち、前記金属薄膜が形成された面と対向する面と、前記第二のコンデンサ用フィルムの樹脂薄膜の面のうち、前記金属薄膜が密着する面と対向する面とを密着して積み重ね、かつ、前記第一及び第二のコンデンサ用フィルムの露出した金属薄膜が前記コンデンサ用フィルムの長手方向中心線に対して対称に設けられる工程と、
前記第二のコンデンサ用フィルムの誘電体フィルムを中心に、積み重ねた前記第一及び第二のコンデンサ用フィルムを巻回する工程と、
前記巻回されたコンデンサ用フィルムの巻回体を熱硬化させる工程と、
を含む、
ことを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記Aステージ樹脂は、
(A)以下の一般式(1)で示されるビニル化合物と、
【化1】


【化2】


(式中、
、R、R、R、R、R、Rは同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はフェニル基であり、
−(O−X−O)−は構造式(2)で示され、ここで、R、R、R10、R14、R15は、同一又は異なってもよく、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、R11、R12、R13は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、
−(Y−O)−は構造式(3)で示される1種類の構造、又は構造式(3)で示される2種類以上の構造がランダムに配列したものであり、ここで、R16、R17は同一又は異なってもよく、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、R18、R19は同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、
Zは炭素数1以上の有機基であり、場合により酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含むこともあり、
a、bは少なくともいずれか一方が0でない、0〜300の整数を示し、
c、dは0又は1の整数を示す。)
(B)ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーと、
を含む熱硬化性樹脂組成物を主成分とする樹脂組成物である、
前記請求項1〜3のいずれか一項記載のコンデンサ用フィルム。
【請求項7】
前記Aステージ樹脂は、
(C)フェノール骨格とビフェニル骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、及び重量平均分子量が10,000〜200,000であり、かつ水酸基を有する二官能性直鎖状エポキシ樹脂よりなる群から選択される1種以上のエポキシ樹脂、並びに
(D)フェノール性水酸基の少なくとも一部を脂肪酸でエステル化した変性フェノールノボラック、を含むエポキシ樹脂組成物を主成分とする樹脂組成物である、
前記請求項1〜3のいずれか一項記載のコンデンサ用フィルム。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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