説明

コンデンサ高電圧充電器

【課題】コンデンサ高電圧充電器のインバータ回路の制御において、充電完了付近での1回のパルス出力による充電により充電電圧が充電電圧値を超過することを抑止し電圧精度を向上させ、充電電圧のばらつきを抑制し安定させる。
【解決手段】充電電圧設定値とコンデンサ充電電圧検出値とが入力される差動増幅回路と、コンパレータからなる電圧比較回路と、電圧比較回路からの出力値が入力されるスイッチ部を有するリミッタ回路とを備え、リミッタ回路が、差動増幅回路からの出力値と、電圧比較回路からの出力がスイッチ部を介して出力された出力制限電圧値とのダイオードOR回路を構成し、充電電圧検出値が電圧比較回路の電圧規定値を超えると、ダイオードOR回路の出力と三角波発生回路の出力とを比較するPWM制御回路により、インバータ回路へのパルス幅を最小にして充電完了手前付近から充電完了までの間の充電電力を抑えて充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本装置は、パルス成形回路を使用した変調器であり、レーザ装置や電子ビーム装置等に適用されるコンデンサ高電圧充電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高電圧パルス発生装置のコンデンサの充電電圧を、精度よく目標設定電圧に一致させる事例として、コンデンサの充電電圧を予測する回路と、その予測電圧と充電電圧指令値とが一致するときに、電力変換パルス出力を抑止する回路を備えたパルス電源(特許文献1参照)や、目標設定電圧より低い所定の範囲内の電圧まで充電されたとき、第一の充電電源による充電を停止し、第二の充電電源により目標設定電圧に略一致するまで充電させる電源装置(特許文献2参照)がある。
コンデンサ高電圧充電器の構成は、充電電圧検出回路により充電完了電圧付近では、PWM制御ICによりパルス幅を調整して充電しているが、充電完了付近では1回のパルス出力による充電により、充電電圧が充電設定電圧値を超過し電圧精度が悪くなる。上記事例では、その解決のために充電設定電圧を超えないようにリアクトルの保持電流を検出して充電電圧を予測する回路を設けていることや、電源を2種類必要とする等の構成が複雑になるという問題があった。
【特許文献1】特開平7−231678号公報
【特許文献2】特開2005−150526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来例で使用されている制御回路のブロック図を図4に示す。電源は交流入力を受電し整流回路1と平滑回路2にて直流に変換し、その直流電圧を高周波でスイッチングするインバータ回路3と昇圧用の高周波変圧器と該高周波変圧器の2次側の整流器とで構成された高圧回路4にて高電圧を出力し、コンデンサ負荷に高電圧を充電する。また、出力電圧は制御回路5にて制御する。
【0004】
次に動作を説明する。
高周波でスイッチングするインバータは半導体スイッチ素子としてIGBT等を使用したインバータ構成とし、昇圧用の高周波変圧器に高周波電圧を印加して、高周波変圧器2次側の整流器を介してコンデンサ負荷に高電圧を充電する。
コンデンサ負荷の電圧を充電電圧検出回路6にて変換したモニタ電圧と、充電電圧設定回路7の出力電圧とを差動増幅回路8にて増幅した値と、三角波発生回路9の出力とを比較するPWM制御回路10にてパルス幅を調整し、インバータ用半導体素子用のゲート回路11よりパルス幅信号を出力して所定の充電電圧に充電する。
【0005】
さて、コンデンサ高電圧充電器は、起動時より最大電力およびPWM制御により高速充電させるが、充電完了手前から充電完了までの間は最小パルス幅にて制御し所定の高精度充電電圧とする高精度な安定度が必要である。
従来の構成であれば、充電電圧検出回路6のモニタ電圧により充電完了付近でPWM制御回路10のパルス幅を狭くして充電しているが、1回のパルス出力による充電により、コンデンサ充電電圧が充電設定電圧値を超過することがあり、電圧精度が悪くなり、また充電電圧のバラツキが発生し、安定度に問題があった。
【0006】
上記のような問題を有していたために、構成が容易で、より高精度で、電圧安定度の高い電源が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するもので、交流入力を直流に変換する整流回路および平滑回路と、該直流を高周波に変換するインバータ回路と、該高周波を昇圧して整流する高周波変圧器と整流器とからなり、コンデンサを高電圧に充電する高圧回路と、前記コンデンサの電圧を所定値に制御する制御回路とを備えたコンデンサ高電圧充電器において、
コンデンサ充電電圧設定値とコンデンサ充電電圧検出値とが入力される差動増幅回路と、前記充電電圧検出値が入力されるコンパレータからなる電圧比較回路と、該電圧比較回路からの出力値が入力されるスイッチ部を有するリミッタ回路とを備え、該リミッタ回路が、前記差動増幅回路からの出力値と、前記電圧比較回路からの出力がスイッチ部を介して出力される出力制限電圧値とのダイオードOR回路を構成し、前記充電電圧検出値が前記電圧比較回路の電圧規定値を超えると、前記ダイオードOR回路の出力と三角波発生回路の出力とを比較するPWM制御回路により、前記インバータ回路へのパルス幅を最小にして充電完了付近から充電完了までの間の充電電力を抑えて充電することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
充電電圧検出回路6にてモニタ電圧に変換し、充電電圧設定回路7と差動増幅回路8の差動増幅器27にて増幅した値と、充電電圧検出回路6と電圧比較回路12により電圧規定値以上において信号を出力するコンパレータ26を経てリミッタ回路13のスイッチ部28より出力する出力制限電圧値とのダイオードOR回路を構成したことにより、リミッタ動作させて出力値を制限し、三角波発生回路9の出力と比較するPWM制御回路10によるパルス幅を制限して、充電完了付近から充電完了までの間の充電電力を抑えて充電することにより、出力電圧の安定度向上を図ることができる。
すなわち、従来例で構成される制御回路に、電圧比較回路、リミッタ回路を追加することにより、構成が容易で、高精度化が図れ、かつ、充電電圧の安定化も実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明によるコンデンサ高電圧充電器のブロック図、図2は本発明による回路構成図、図3はコンデンサ高電圧充電器の動作波形を示す。
【0010】
図1において、交流入力にて受電し、整流回路1と平滑回路2にて直流に変換し、その直流電圧を高周波でスイッチングするインバータ回路3と昇圧用の高周波変圧器と高周波変圧器2次側の整流器25による高圧回路4にて高電圧を出力し、コンデンサ負荷に高電圧を充電する。また、出力電圧は制御回路5にて制御する。
【0011】
また、充電電圧検出回路6と電圧比較回路12により電圧規定値以上(充電完了付近)において信号を出力してリミッタ回路13を動作させ、差動増幅回路8の出力値をリミッタ回路13にて調整し、PWM制御回路10によるパルス幅制限をして充電完了付近から充電完了までの間の充電電力を抑えて充電する。
【実施例】
【0012】
図1のブロック図と図2の回路構成について説明する。
交流入力にて受電し、ダイオードブリッジ20にて構成した整流回路1と、リアクトル21とコンデンサ22による平滑回路2にて直流に変換し、その直流電圧を高周波でスイッチングするフルブリッジ方式のインバータ回路3と、昇圧用の高周波変圧器24による高圧回路4にて高電圧を発生させ出力する。また、出力電圧は制御回路5にて制御する。
高周波でスイッチングするインバータは半導体スイッチ素子としてIGBT23を使用したフルブリッジ方式のインバータ構成とし、昇圧用の高周波変圧器24に高周波電圧を印加して、高周波変圧器2次側の整流器25を介してコンデンサ負荷に高電圧を充電する。
なお、半導体スイッチ素子としてGTOサイリスタ、MOSFET等の素子を用いても同様の機能を持たせることができる。
【0013】
制御回路5は、充電電圧検出回路6にて変換したモニタ電圧と充電電圧設定値とを差動増幅回路8の差動増幅器27にて増幅した値と、充電電圧検出回路6と電圧比較回路12により電圧規定値以上において信号を出力するコンパレータ26を経てリミッタ回路13のスイッチ部28より出力する出力制限電圧値とを、ダイオードOR回路によりリミッタ動作させて出力値を調整する。三角波発生回路9の出力と比較するPWM制御回路10によるパルス幅制限をして充電完了付近から充電完了までの間の充電電力を抑えて充電する。
【0014】
次に、図3の動作波形について説明する。
充電電圧検出回路6からのモニタ電圧Aと三角波発生回路9の波形電圧Bにおいて、三角波発生回路9の波形電圧Bが差動増幅回路8の出力電圧A’より高いときにPWM制御回路にてパルス幅制限したゲートパルスをゲート回路に出力する。
従来のパルス波形は、電圧比較回路とリミッタ回路がないため、コンデンサ電圧が電圧規定値を超えても、差動増幅回路8の出力電圧A’と三角波発生回路9の波形電圧Bとの電圧比較により、ゲートパルス幅が決まる。図3の従来波形Dのアの時点において、従来の例では、5μs間充電を継続するため、充電電圧値を超え、充電電圧が高くなる。
本発明によれば、まず、コンデンサ電圧が電圧規定値に到達するまでは、従来例と同様にゲートパルス幅が決まり、充電する。
次に、充電完了手前から充電完了までの間は、差動増幅回路8の出力電圧A’とリミッタ回路13により制限された出力制限電圧CとのダイオードOR回路の機能により、出力C’となることにより、従来のパルス波形Dに対し、本実施例のパルス波形はパルス波形Eとなり、ゲートパルス幅を、最小パルス幅2μsに調整し、従来例の約2/5の充電時間に低減して充電電力を抑えて充電する。
【0015】
出力制限電圧は、差動増幅回路8の出力A’の充電電圧値より10%程度低い電圧値に設定するのがよい。出力制限電圧を低く設定することによりゲートパルス幅を約2μsのパルス幅に調整できる。さらに、充電電圧値になる直前には、ダイオードOR回路の差動増幅回路8の出力A’の電圧が出力制限電圧より高くなって、差動増幅回路8の出力電圧A’によりゲートパルス幅が制御できるように切り替わる。充電電圧値に到達後は放電等による電圧低下を防止するために、最少のゲートパルスを出力できるようになる。
【0016】
また、電圧規定値は、充電電圧値の98%程度の電圧に設定するのが好適である。それより低い電圧に設定すると充電時間がかかり、高い電圧になるとコンデンサ充電電圧にバラツキが生じる。
なお、充電電圧検出回路6のモニタ電圧Aと差動増幅回路8の出力値A’とは、図3に示す関係になるためには、図2に示した差動増幅回路8には図示していない信号反転回路、クランプ回路等が必要であるが、公知の回路を用いればよい。
【0017】
上記のように、パルス幅を最小パルス幅にて制御し、充電電力を抑えて充電することにより、充電電圧変動を最小とし、充電完了付近の電圧を高精度で安定した電圧とすることができる。
【0018】
また、実施例では電圧比較回路は1個で説明したが、複数個として複数の電圧規定値以上において信号を出力し、PWM制御による複数のパルス幅リミッタ制御を追加して充電完了までの間の充電電力を複数段階にて抑えて充電し、さらに充電時間短縮や、精度向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるブロック図である。
【図2】本発明による回路構成図である。
【図3】本発明による動作波形である。
【図4】従来例によるブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
1 整流回路
2 平滑回路
3 インバータ回路
4 高圧回路
5 制御回路
6 充電電圧検出回路
7 充電電圧設定回路
8 差動増幅回路
9 三角波発生回路
10 PWM制御回路
11 ゲート回路
12 電圧比較回路
13 リミッタ回路
20 ダイオードブリッジ
21 リアクトル
22 コンデンサ
23 IGBT
24 高周波変圧器
25 整流器
26 コンパレータ
27 差動増幅器
28 スイッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流入力を直流に変換する整流回路および平滑回路と、該直流を高周波に変換するインバータ回路と、該高周波を昇圧して整流する高周波変圧器と整流器とからなり、コンデンサを高電圧に充電する高圧回路と、前記コンデンサの電圧を所定値に制御する制御回路とを備えたコンデンサ高電圧充電器において、
コンデンサ充電電圧設定値とコンデンサ充電電圧検出値とが入力される差動増幅回路と、前記充電電圧検出値が入力されるコンパレータからなる電圧比較回路と、該電圧比較回路からの出力値が入力されるスイッチ部を有するリミッタ回路とを備え、該リミッタ回路が、前記差動増幅回路からの出力値と、前記電圧比較回路からの出力がスイッチ部を介して出力される出力制限電圧値とのダイオードOR回路を構成し、前記充電電圧検出値が前記電圧比較回路の電圧規定値を超えると、前記ダイオードOR回路の出力と三角波発生回路の出力とを比較するPWM制御回路により、前記インバータ回路へのパルス幅を最小にして充電完了付近から充電完了までの間の充電電力を抑えて充電することを特徴とするコンデンサ高電圧充電器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate