説明

コンデンサ

【課題】長期間に亘って電気特性の安定性を維持することが可能なコンデンサを提供する。
【解決手段】ケース20内にコンデンサ素子30が収納されるとともに、コンデンサ素子30を浸漬する電解液50が注入されたコンデンサ10であって、ケース20内で発生したガスを放出する放出弁40をケース20の内側に設けるとともに、ケース20内部のうち電解液50が充填されない空間で、且つ、放出弁40とコンデンサ素子30との間に液体吸収材60を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンデンサ素子と電解液がケース内に収容されたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、二次電池や電気二重層コンデンサは内部に電解液が充填されている。この電解液は、電極へイオンを供給するために不可欠なものであるが、水分や酸素等と反応するとフッ化水素や多量の分解ガスが発生し、二次電池や電気二重層コンデンサの電気特性に影響を与えるため、密閉空間に収納する必要がある。従来、密閉空間を形成するために、二次電池や電気二重層コンデンサの外装ケースとして金属製の筐体が用いられることが多かったが、二次電池や電気二重層コンデンサの小型化、軽量化のため、近年ではラミネートフィルムが用いられるようになってきた。
【0003】
ラミネートフィルムは、アルミニウム等の金属箔をプラスチックフィルムで挟み込むことで形成されており、水分遮断性と熱融着性を備え、密閉空間を容易に形成することができ、電解液を安定した状態で保持することができる。
【0004】
ところで、上記に示すような二次電池や電気二重層コンデンサは、高い電圧で長時間使用していると、外装ケース内部の電解液が電気分解を起こす等して、外装ケース内部に分解ガス(例えば一酸化炭素や二酸化炭素)が生じることがある。このときラミネートフィルムによって形成された外装ケースは、内圧に対する応答性が過敏であるため、少量の分解ガスの発生であっても外装ケースが膨れる場合があるとともに、破壊耐圧が低いため、外装ケースの膨張によって密閉性が損なわれる虞があり、このため長時間の使用における信頼性に難点があった。
【0005】
そこで、図3に示すように、内圧の増加を抑える方法として、外装ケース100にガス放出弁101を設けることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−128199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、ガス放出弁101を設けることで、ケース100内部で発生した分解ガスをケース100外に放出することができ、内圧の増加を抑えることが可能となる。しかしながら、定格電圧を遥かに超える電圧がコンデンサ素子102に印加された場合、電解液103の電気分解が急激に進み、それに伴って発生した多量の分解ガスとともに、開口状態のガス放出弁101から電解液103が漏出する可能性があるという新たな問題を生じていた。電解液103が漏出すると、析出した塩が、雰囲気中の湿気と反応してフッ化水素等の金属腐食性の生成物を生じ、外装ケース100外の電極端子や部品等を劣化させる虞があった。
【0008】
そこで、本発明のコンデンサは、上記の不具合を解消して、長期間に亘って電気特性の安定性を維持することが可能なコンデンサの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のコンデンサは、ケース20内にコンデンサ素子30が収納されるとともに、コンデンサ素子30を浸漬する電解液50が注入されたコンデンサ10であって、ケース20内で発生したガスを放出する放出弁40をケース20の内側に設けるとともに、ケース20内部のうち電解液50が充填されない空間で、且つ、放出弁40とコンデンサ素子30との間に液体吸収材60を設けたことを特徴としている。
【0010】
また、液体吸収材60とコンデンサ素子30との間に、液体吸収材60とコンデンサ素子30との接触を防止する接触防止材70を設けている。
【発明の効果】
【0011】
この発明のコンデンサにおいては、ガスを放出する放出弁と電解液が浸漬されたコンデンサ素子との間に液体吸収材を設けているため、定格電圧を超える電圧が印加され、ガスによって電解液の液面が上昇しても、液面が放出弁に到達する以前に、液体吸収材によって電解液を吸収させることができ、放出弁からの電解液の漏出を防止することができる。
【0012】
また、液体吸収材とコンデンサ素子との間に接触防止材を設けたことによって、平常時に液体吸収材と電解液とが接触するのを防止でき、液体吸収材が必要以上に電解液を吸収するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施形態に係るコンデンサを示した部分断面図である。
【図2】同じくそのコンデンサの製造過程を示した断面図である。
【図3】従来のコンデンサの異常電圧印加時を示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係るコンデンサ10は、図1に示すように、ケース20内に収納されたコンデンサ素子30と、ケース20内側に設けられた放出弁40との間に電解液50を吸収可能な液体吸収材60を設けることでなる。
【0015】
ケース20は、図1及び図2に示すように、アルミニウム等の金属箔をプラスチックフィルムで挟み込んで形成された一対のラミネートフィルム21、21からなり、一方のラミネートフィルム21は、コンデンサ素子30を収納するための凹部22が形成されて断面略ハット型となっている。また、他方のラミネートフィルム21は略平板状に形成されており、一方のラミネートフィルム21に重ね合わせて外周端を熱融着することで、密閉空間を形成できるようになっている。また、凹部22が形成されたラミネートフィルム21においては、コンデンサ10として使用する際に電解液50と接触することの無い、すなわち上方に位置する凹部側壁23に、分解ガスを放出するためのガス放出孔24が形成されている。なお、ガス放出孔24の位置は、電解液50に触れない位置であれば良く、コンデンサ10の使用状態によって適宜変更可能とする。
【0016】
コンデンサ素子30は、電極積層体に電解液50を浸漬させることで形成されている。電極積層体は、例えばアルミニウム等の金属箔上に活性炭を直接塗布した正極及び負極の間に、樹脂等の絶縁体からなるセパレータを介在させて交互に積層することでなる。なお、正極及び負極には、図示しない外部接続端子の一方端部が接続されており、外部接続端子の他方端部がケース20外方に延出されて、電子機器等とコンデンサ素子30とを外部接続端子を介して接続できるようになっている。また、電解液50としては、有機系、水系のどちらでも適用可能である。
【0017】
放出弁40は、ケース20の内圧に応じてガス放出孔24を開閉するものであって、図1に示すように、平常時はガス放出孔24を塞ぎ、異常電圧印加時はガス放出孔24を開いて、ケース20の膨張や破裂を防止する。放出弁40の構成としては、中央部に通気孔41を有した略ハット型の保持部材42の凹部43に、通気孔41を塞ぐ封止板44を嵌め込み、ばね45等で封止板44を通気孔41の方向に付勢してなるものであって、平常時は、ばね45に付勢された封止板44が通気孔41を塞いで、水分や酸素等のケース20内部への侵入や、電解液50のケース20外への漏出を防止する。異常電圧印加時においては、分解ガスによって、ばね45の付勢力より内圧が大となった時に、通気孔41から封止板44が離れて開口状態となり、分解ガスの通気孔41及びガス放出孔24の通過を許容する。なお、放出弁40は上記に示すもの以外に、公知の種々の構造のものが使用可能である。
【0018】
液体吸収材60は、例えばポリマー等の吸液性を有するものであって、ケース20内部にある電解液50が充填されていない空間、すなわちケース20の上端部近傍において、放出弁40と電解液50との間で電解液50ともコンデンサ素子30とも接触することなく配設されて、異常電圧印加等で電解液50の液面が上昇した際に、上昇分の電解液50を吸収して、電解液50が放出弁40内に侵入するのを防止するとともに、開口状態の放出弁40を通じてケース20外へ漏出するのを防止する。また、液体吸収材60の下方には、液体吸収材60と電解液50とを隔てる接触防止材70が配設されている。
【0019】
接触防止材70は、例えばPP(ポリプロピレン)等の不透液膜であって、図1及び図2に示すように、電解液50と液体吸収材60との間に介在するようにして、ケース20内に接着剤等で接着されており、平常時に電解液50が液体吸収材60と接触するのを防止する。異常電圧印加時においては、分解ガスの圧力によって接着部分が外れ、電解液50の液面の上昇を許容する。この際、接触防止材70を通過した液面は、接触防止材70の上面に配設された液体吸収材60に接触、吸収されるため放出弁40に至ることはない。なお、接触防止材70のケース20(ラミネートフィルム21)への取り付けにあたっては、接着剤で接着するに限らず、熱融着等、種々の取り付け方法を用いて良い。また、接着部分が外れることで、電解液50の上昇を許容する他にも、接触防止材70自体が破れることで、電解液50の上昇を許容するようにしても良い。
【0020】
次に、この発明の一実施形態に係るコンデンサ10の製造過程について説明する。まず、図2(a)に示すように、凹部22の形成されたラミネートフィルム21の凹部側壁23に微小な径の孔(ガス放出孔24)を形成するとともに、このガス放出孔24を覆うようにして放出弁40を接着剤等で接着する。次に、図2(b)に示すように、ラミネートフィルム21の放出弁40近傍の凹部底壁25及び左右に位置する凹部側壁23、23に接触防止材70を接着剤等で接着する。この際、接触防止材70は、ラミネートフィルム21の凹部22を、放出弁40が接着された側と放出弁40が接着されていない側とに区画して、電解液50が、放出弁40が接着された側に流れていかないようにする。
【0021】
接触防止材70によってラミネートフィルム21の凹部22を区画した後、図2(c)に示すように、放出弁40が接着されていない側の凹部22に、電解液50が浸漬されたコンデンサ素子30を収納するとともに、放出弁40の接着された側の凹部22に、液体吸収材60を収納する。液体吸収材60の収納にあたっては、液体吸収材60が放出弁40に接触しないように隙間を設けて配設する。これは、電解液50が毛細管現象によって液体吸収材60から放出弁40へと伝い流れるのを防止するためである。
【0022】
そして、接触防止材70の上端部に接着剤を塗布した後、図2(d)に示すように、上方から蓋となる略平板状のラミネートフィルム21を、凹部22の形成されたラミネートフィルム21に重ね合わせて、外周端を熱融着してコンデンサ10の製造を完了する。この際、接触防止材70の上端部は、蓋となる略平板状のラミネートフィルム21と接着されて、放出弁40が接着された側と、放出弁40が接着されていない側とを区画して、放出弁40が接着された側への電解液50の移動を規制する。
【0023】
上記構成のコンデンサ10によれば、放出弁40と電解液50が浸漬されたコンデンサ素子30との間に液体吸収材60を設けているため、異常電圧印加等で電解液50の液面が上昇した際に、上昇分の電解液50を吸収して、電解液50が放出弁40内に侵入するのを防止するとともに、開口状態の放出弁40を通じてケース20外へ漏出するのを防止することができ、長期間に亘って電気特性の安定性を維持することが可能となる。また、電解液50を浸漬したコンデンサ素子30と液体吸収材60との間に、接触防止材70を介在させたことで、コンデンサ10の運搬や電気機器等への取り付けに際して、電解液50が液体吸収材60と接触することが無く、液体吸収材60が必要以上に電解液50を吸収するのを防止することができる。
【0024】
以上に、この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、接触防止材70は、上記実施形態のように、必ずしも隔壁として機能する必要は無く、接触防止材70に複数の孔を設けて、異常電圧印加時に上昇してくる電解液50を通過させるようにしても良い。また、電解液50の粘性が高く、さらに正極及び負極間で電解液50が確実に保持されている場合、すなわち、コンデンサ10の運搬や取り付けにあたって電解液50が液体吸収材60に接触しない場合には、接触防止材70を設けなくても良い。
【符号の説明】
【0025】
20・・ケース、30・・コンデンサ素子、40・・放出弁、50・・電解液、60・・液体吸収材、70・・接触防止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(20)内にコンデンサ素子(30)が収納されるとともに、コンデンサ素子(30)を浸漬する電解液(50)が注入されたコンデンサであって、ケース(20)内で発生したガスを放出する放出弁(40)をケース(20)の内側に設けるとともに、ケース(20)内部のうち電解液(50)が充填されない空間で、且つ放出弁(40)とコンデンサ素子(30)との間に液体吸収材(60)を設けたことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
液体吸収材(60)とコンデンサ素子(30)との間に、液体吸収材(60)とコンデンサ素子(30)との接触を防止する接触防止材(70)を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−82241(P2011−82241A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231264(P2009−231264)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(390022460)株式会社指月電機製作所 (99)
【Fターム(参考)】