説明

コントローラの冷却方法

【課題】 簡単な方法によって、耳障りな音が発生することなく、しかも、電子素子を効率よく冷却することで、電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制することができるコントローラの冷却方法を提供する。
【解決手段】 成形機Sと、この成形機Sに付設される成形品取出機1に制御信号を出力して、その運転を制御するコントローラCの冷却を実行する方法であって、コントローラCを常態温度がコントローラCよりも低温である成形機SのベッドBの立面b1に取付けて冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラの冷却方法に係り、詳しくは、生産機器と、この生産機器に付設される付帯機器の少なくとも1つの機器に制御信号を出力して、前記少なくとも1つの機器の運転を制御するコントローラの冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、図8に示す成形機Sに付設した成形品取出機1は、生産機器である成形機Sによって成形された成形品を取り出す付設機器として機能する。この成形品取出機1の運転は、成形機S近傍の床面に配置したボックス12またはスタンド(図示省略)の載置面に載置される載置式のコントローラCから出力される信号によって制御される(たとえば特許文献1)。また、図9に示す携行可能な第1のハンディ式コントローラ100あるいは該コントローラ100よりも大きい外形寸法を有した投影平面形状が正方形あるいは長方形を呈する携行可能な第2のハンディ式コントローラ(図示省略)から制御信号を出力して成形品取出機1の運転を制御する方式も周知である。
【0003】
特許文献1に記載されている成形品取出機1は、成形機Sの固定プラテン2に基部が固定されて成形機Sの幅方向(矢印W)にのびる横行フレーム3と、該横行フレーム3に支持されて、たとえばサーボモータなどの電動モータからなる第1駆動源4により前記幅方向(矢印W)に進退する第1走行体5と、この第1走行体5に設けられて成形機Sの長手方向(矢印L)にのびる引抜きフレーム6と、該引抜きフレーム6に支持されて、たとえばサーボモータなどの電動モータからなる第2駆動源7により前記長手方向(矢印L)に進退する第2走行体8と、この第2走行体8に支持されて、たとえばサーボモータなどの電動モータまたはエアーシリンダー装置からなる第3駆動源9により昇降(矢印Z)するヘッド昇降ユニット10と、該ヘッド昇降ユニット10に設けられて成形品を把持する成形品把持ヘッド11とを備えている。
【0004】
前記構成の成形品取出機1によれば、固定プラテン2に取付けられている固定金型K1と、可動プラテン2aに取付けられている可動金型(図示省略)の型開時に、第2駆動源7と第3駆動源9との複合作動によって、ヘッド昇降ユニット10および成形品把持ヘッド11を金型間に進入下降させ、前記可動金型に保持されている樹脂成形品(図示省略)を成形品把持ヘッド11で把持したのち、第3駆動源9によってヘッド昇降ユニット10および成形品把持ヘッド11を上昇させながら、横行フレーム3基部側基準位置にある第1走行体5を、第1駆動源4により横行フレーム3先端側の成形品解放位置まで前進させ、ここでは第3駆動源9によってヘッド昇降ユニット10および成形品把持ヘッド11を下降させ、その下限位置で成形品把持ヘッド11を水平な成形品解放姿勢に反転して樹脂成形品を解放する。成形品把持ヘッド11が樹脂成形品を解放すると、第3駆動源9の作動によってヘッド昇降ユニット10および成形品把持ヘッド11を上限位置まで上昇させながら第1駆動源4によって第1走行体5を成形品解放位置から前記基準位置に後退復帰させる動作を繰り返して樹脂成形品を順次取り出す。
【0005】
図8に示した載置式のコントローラCおよび図9に示した第1のハンディ式コントローラ100は、たとえば図10に示すように、樹脂製の筐体20の内部に、CPUと、プログラムを記憶するROMと、作業データを記憶しているRAMなどを主とした成形品取出機1運転制御用の複数の電子素子21を実装したプリント基板22が格納され、筐体20の表面には、図9のように、複数個(たとえば9個)のアイコン(図示省略)を成形品取出機1の操作メニューとして表示する液晶表示部110と、4方向走査を行う4つの走査キー111A〜111Dを周囲に配置し、その中心部にエンターキー(確定キー)111Eを配置したスクロールキー111と、0〜9の数字を表示した10個の数字キー112とを備え、表示部には、前記図示されていない9個のアイコンを個別に取り囲む表示枠(図示省略)が表示されている。131は操作体系特定キーであり、たとえば、モニターメニュー、ティーチングメニュー、金型読出しメニューおよび全メニューの4つの操作体系に分類して特定するモニターキー131A,ティーチングメニューを特定するティーチングキー131B,金型読出しメニューを特定する金型読出しキー131および全メニューを特定する全メニューキー131Dを備えている。図中、113は非常停止ボタンを示し、200は電源スイッチを示す。
【0006】
【特許文献1】特開2002−326258公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載の載置式コントローラC、第1のハンディ式コントローラ100および第2のハンディ式コントローラでは、筐体20に格納されている各電子素子21が発熱する。しかも、各電子素子21の高性能化に伴って発熱量が増大する傾向にある。各電子素子が発熱するにもかかわらず、筐体20は、一般に、熱伝導率の低い樹脂によって成形されているため筐体20からの放熱が期待できない。したがって、経時により内部が高温化されて各電子素子21に悪影響をおよぼす。そのため、前記特許文献1に記載のコントローラC、図示していない前記第2のハンディ式コントローラでは、筐体20の適所に冷却用フアンを取付けて排熱することで、筐体20内部の高温化を抑制して各電子素子への熱的な悪影響を回避するようにしている。
【0008】
ところで、クリーンルームは、室内空気の浄化は勿論、僅かな異音でもその発生を避けることが望まれる空間である。そのため、クリーンルームに成形品取出機1を付設した成形機Sを設置して、成形品取出機1の運転制御を前記筐体20の適所に冷却用フアンを取付けたコントローラCまたは筐体20の適所にフアンを取付けた図示していない前記第2のハンディ式コントローラによって行うと、冷却用フアンの音が耳障りになって好ましくない。一方、冷却用フアンの取付けが困難な小型の前記第2のハンディ式コントローラ100は、耳障りなフアンの音が発生しない反面、電子素子に熱的な悪影響をおよぼすおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するものであって、その目的とするところは、簡単な方法によって、耳障りな音が発生することなく、しかも、電子素子を効率よく冷却することで、電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できるコントローラの冷却方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係るコントローラの冷却方法は、生産機器と、この生産機器に付設される付帯機器の少なくとも1つの機器に制御信号を出力して、前記少なくとも1つの機器の運転を制御するコントローラの冷却方法であって、前記コントローラを前記生産機器に取付けて冷却することを特徴としている。
【0011】
これによれば、生産機器には常態温度がコントローラよりも低温の部位が存在するので、この低温の部位を選択して当該部位にコントローラを取付ける簡単な方法によって、高温のコントローラと生産機器の前記低温の部位との熱交換作用によってコントローラを冷却できる。そのため、耳障りな音が発生することなく、しかも、電子素子を効率よく冷却して電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。ここで、生産機器における常態温度がコントローラよりも低温の部位として、たとえば、ベッドの立面を推奨できる。
【0012】
本発明に係るコントローラの冷却方法は、前記コントローラを、前記生産機器または前記付帯機器に備えたサイレント冷却手段によって冷却することを特徴としている。これによると、サイレント冷却手段の熱輸送作用によって、耳障りな音が発生することなく、電子素子をより一層積極的に、しかも効率よく冷却して電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。
【0013】
また、前記サイレント冷却手段は、ヒートパイプ式とヒートシンク式のいずれかまたはこれらの複合構造からなることを特徴としている。これによると、小型化および構造が簡素化されたサイレント冷却手段によって、無音または略無音状態で電子素子を効率よく冷却して、電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るコントローラの冷却方法によれば、簡単な方法によって、耳障りな音が発生することなく、しかも、電子素子を効率よく冷却することで、電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示し、コントローラを生産機器である成形機Sに取付けた状態の概略縦断側面図である。図1では、たとえば図8に示す成形機S近傍の床面に配置したボックス12または図示していないスタンドの載置面に載置される載置式のコントローラCの冷却例が示され、このコントローラCは、所定の制御終了時において、成形機SにおけるベッドBの1つの立面b1を常態温度がコントローラCよりも低温の部位23として選択し、立面b1に予め設けてあるたとえば上下2段の保持金具25を利用して、筐体20に設けた前述の液晶表示部、スクロールキー、数字キーおよび操作体系特定キーなどを表面に指向させ、筐体20の裏面を立面b1に対向させて横方向から(図1では、紙面方向または反紙面方向)嵌合することで、筐体20の裏面を立面b1に当接または密着あるいは略密着した状態で保持金具25に保持して立面b1に取付ける。
【0016】
成形機SのベッドBは、たとえばL形鋼からなる骨組b2と、ビスなどの締結部材(図示省略)によって骨組b2に取付けられて該骨組b2の表面を覆う鋼板製のカバーb3からなる中空構造であるので、前記所定の制御を終了して発熱しているコントローラCよりも常態温度が低い。したがって、低温の部位23として好適であるといえる。
【0017】
このように、発熱しているコントローラCを常態温度が該コントローラCよりも低温の低温の部位23に取付ける簡単な方法によって、高温のコントローラCにおける筐体20の裏面と立面b1との間で熱交換がなされるので、耳障りな音が発生することなくコントローラCを効率よく冷却して、各電子素子21(図10参照)に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。経時により、コントローラCが冷却されたならば、コントローラCを立面b1から取り外して、前記ボックス12またはスタンドの載置面に戻してつぎの制御を待機すればよい。このような冷却方法を第2のハンディ式コントローラの冷却に適用すれば、前記コントローラCと同様に効率よく冷却して、各電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。
【0018】
前記第1のハンディ式コントローラ100も、コントローラCおよび第2のハンディ式コントローラと同様に、その筐体20の裏面を立面b1に脱抜可能に当接または密着あるいは略密着した状態で保持金具25に保持して立面b1に取付けることができ、これによって、第1のハンディ式コントローラ100を耳障りな音が発生することなく効率よく冷却して、各電子素子21(図8参照)に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。
【0019】
たとえば、図2,図3のように、複数本のヒートパイプ30を筐体40の上体部40a下面と下体部40b上面に振り分けて取付け、各ヒートパイプ30の入熱部30aを筐体20の内部に位置決めし、放熱部30bを筐体20の外部に臨ませたヒートパイプ式のサイレント冷却手段24を構成する。このサイレント冷却手段24は、予め、図4に示すように、成形機SにおけるベッドBの1つの立面b1に予め設けてある上下2段の保持金具25の間に鉛直姿勢で取付けておく。そして、所定の制御を終了したコントローラCの筐体20の裏面をサイレント冷却手段24の上体部40aに当接または密着あるいは略密着させた状態で保持金具25に保持する。
【0020】
前記構成によれば、サイレント冷却手段24の熱輸送作用によって、耳障りな音が発生することなく、コントローラCの電子素子をより一層積極的に、しかも効率よく冷却して電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。ヒートパイプ式のサイレント冷却手段24を採用することにより、小型化および構造が簡素化されたサイレント冷却手段24によって、無音または略無音状態で前記電子素子を効率よく冷却して、当該電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。このような冷却方法を第2のハンディ式コントローラの冷却に適用すれば、前記コントローラCと同様に効率よく冷却して、各電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。また、前記第1のハンディ式コントローラ100に適用することで、当該第1のハンディ式コントローラ100をコントローラCと同様に効率よく冷却して、各電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。
【0021】
一方、図5に示すように、ボックス12の載置面12aに、前記ヒートパイプ式のサイレント冷却手段24を載置固定しておき、このサイレント冷却手段24にコントローラCを載置すれば、当該コントローラCは、所定の制御実行時においてサイレント冷却手段24の熱輸送作用によって、耳障りな音が発生することなく、電子素子をより一層積極的に、しかも効率よく冷却して電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。
【0022】
他方、図6,図7のように、入熱部31aと、この入熱部31aから複数のフインを突出させて放熱面積を大きくした放熱部31bとを備えたヒートシンク31の入熱部31aをビスやボルトなどの締結手段33により筐体40に締結したヒートシンク式のサイレント冷却手段24を構成し、このヒートシンク式のサイレント冷却手段24を前述したヒートパイプ式のサイレント冷却手段24に代えて保持金具25の間に鉛直姿勢で取付けるか、あるいは、ボックス12の載置面12aに載置して、コントローラCの筐体20の裏面をヒートシンク式のサイレント冷却手段24の上体部40aに当接または密着あるいは略密着させることによって、前記ヒートパイプ式のサイレント冷却手段24による冷却方法と同様に、サイレント冷却手段24の熱輸送作用によって、耳障りな音が発生することなく、コントローラCの電子素子をより一層積極的に、しかも効率よく冷却して電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。また、ヒートシンク式のサイレント冷却手段24であっても、小型化および構造が簡素化されたサイレント冷却手段24によって、無音または略無音状態で前記電子素子を効率よく冷却して、当該電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。
【0023】
図4のヒートパイプ式のサイレント冷却手段24に代えて、ヒートシンク式のサイレント冷却手段24を成形機SにおけるベッドBの1つの立面b1に予め設けてある上下2段の保持金具25の間に鉛直姿勢で取付けておき、所定の制御を終了したコントローラCの筐体20の裏面をヒートシンク式のサイレント冷却手段24の上体部40aに当接または密着あるいは略密着させた状態で保持金具25に保持しても、前記ヒートパイプ式のサイレント冷却手段24による冷却方法と同様の作用・効果を奏して、コントローラC,第1のハンディ式コントローラ100および第2のハンディ式コントローラを冷却することができる。さらに、図5のヒートパイプ式のサイレント冷却手段24に代えて、ヒートシンク式のサイレント冷却手段24をボックス12の載置面12に載置して、コントローラCの筐体20の裏面をヒートシンク式のサイレント冷却手段24の上体部40aに当接または密着あるいは略密着させることによって、前記ヒートパイプ式のサイレント冷却手段24による冷却方法と同様に、ヒートシンク式のサイレント冷却手段24の熱輸送作用によって、耳障りな音が発生することなく、コントローラCの電子素子をより一層積極的に、しかも効率よく冷却して電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。
【0024】
前記実施形態では、ヒートパイプ式のサイレント冷却手段24とヒートシンク式のサイレント冷却手段24とを個別に使用しているが、これらを複合した複合構造からなるサイレント冷却手段24によって冷却してもよい。また、ヒートパイプ式のサイレント冷却手段24におけるヒートパイプ30は、筐体40の表面に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態を示す概略縦断側面図である。
【図2】サイレント冷却手段の第1実施形態を示す平面図である。
【図3】図2のIII〜III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す概略縦断側面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す斜視図である。
【図6】サイレント冷却手段の第2実施形態を示す平面図である。
【図7】図6のVII〜VII線に沿う断面図である。
【図8】従来例の斜視図である。
【図9】他の従来例の説明平面図である。
【図10】筐体の内部を示す図9の概略横断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 成形品取出機(付設機器)
23 低温の部位
24 サイレント冷却手段
C1 コントローラ
S 成形機(生産機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産機器と、この生産機器に付設される付帯機器の少なくとも1つの機器に制御信号を出力して、前記少なくとも1つの機器の運転を制御するコントローラの冷却方法であって、
前記コントローラを前記生産機器に取付けて冷却することを特徴とするコントローラの冷却方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコントローラの冷却方法において、
前記コントローラは、前記生産機器または前記付帯機器に備えたサイレント冷却手段によって冷却することを特徴とするコントローラの冷却方法。
【請求項3】
請求項2に記載のコントローラの冷却方法において、
前記サイレント冷却手段は、ヒートパイプ式とヒートシンク式のいずれかまたはこれらの複合構造からなることを特徴とするコントローラの冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−269101(P2009−269101A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119383(P2008−119383)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000138473)株式会社ユーシン精機 (117)
【Fターム(参考)】