説明

コントロールケーブル

【課題】チェンジレバーの操作抵抗を低減できる構造を持ったコントロールケーブルを提供する。
【解決手段】チェンジレバーに連結される室内側ロッド20と、トランスミッションレバーに連結される室外側ロッド30と、これら両ロッドを連結するインナケーブル50及び該インナケーブルを被覆するアウタケーブル60と、室外側ロッド30とアウタケーブル60との間を液密封止するブーツ部材70と、を含むコントロールケーブル10において、ブーツ部材70による封止空間71と中空インナケーブルの空洞51とに連通する通気孔32を室外側ロッド30に設けると共に、中空インナケーブルの空洞51と運転室内とに連通する通気孔22を室内側ロッド20に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のトランスミッション(変速装置)に関し、特に、運転室内のチェンジレバーとトランスミッションとを連結するコントロールケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
キャブオーバー型のトラックにおいては、トランスミッションが運転室から離れた位置に配置されるため、運転室内のチェンジレバーと運転室外のトランスミッションとの連結にワイヤ式のコントロールケーブルを使用している(たとえば特許文献1〜3参照)。このコントロールケーブルの従来構造を図2に示している。
従来のコントロールケーブル1は、運転室のチェンジレバーに連結される室内側ロッド2と、トランスミッションに設けられるトランスミッションレバーに連結される室外側ロッド3と、これら室内側ロッド2及び室外側ロッド3の間を連結するケーブル4と、を含んでいる。両ロッド2,3は中実棒状体で、その端面に嵌合穴2a,3aが凹設されている。ケーブル4は、インナケーブル5とこれを被覆するアウタケーブル6とからなり、ピアノ線からなるインナケーブル5の端部がロッド2,3の嵌合穴2a,3aに嵌着され両ロッド2,3を連結している。アウタケーブル6は、室内側及び室外側の両端部に形成されたフランジ6a,6bにより、車両に設けられた所定の固定部材に固定される。また、室外側ロッド3とアウタケーブル6の室外側端部との間は、弾性材からなる蛇腹状のブーツ部材7にて覆われ、水分がアウタケーブル6内へ浸入しないように液密封止されている。
【特許文献1】実開昭62−044732号公報
【特許文献2】特開2001−254824号公報
【特許文献3】特開2003−341377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図2に示すような従来のコントロールケーブル1は、チェンジレバーの操作に従い室内側ロッド2、インナケーブル5、室外側ロッド3がプッシュ・プル動作する。この時にブーツ部材7は収縮することになるが、該ブーツ部材7により形成される封止空間7aに逃げ場のない空気があるために、固定されているアウタケーブル6に対する室外側ロッド3のプッシュ・プル動作で図示の点線のように大きく変形する。このブーツ部材7の変形に伴う抵抗が大きく、チェンジレバーの操作抵抗として影響している。
【0004】
また、キャブオーバー型のトラックにおいては運転室とトランスミッションとが離れているので、コントロールケーブルも長くなり、特にインナケーブルの重量が操作抵抗として影響している。
本発明はこのような課題に着目したもので、チェンジレバーの操作抵抗を低減できるコントロールケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、チェンジレバーに連結される室内側ロッドと、トランスミッションレバーに連結される室外側ロッドと、これら両ロッドを連結するインナケーブル及び該インナケーブルを被覆するアウタケーブルと、室外側ロッドとアウタケーブルとの間を液密封止するブーツ部材と、を含むコントロールケーブルにおいて、そのインナケーブルを中空とし、ブーツ部材による封止空間と中空にしたインナケーブルの空洞とに連通する通気孔を室外側ロッドに設けると共に、そのインナケーブルの空洞と運転室内とに連通する通気孔を室内側ロッドに設けたことを特徴とする。
【0006】
このようにすることで、室外側ロッドの通気孔−インナケーブル空洞−室内側ロッドの通気孔を介する空気の出入り口が、ブーツ部材により形成される封止空間と運転室内との間に開通するので、封止空間内の空気の逃げ道が形成される。従ってブーツ部材の大きな変形が抑止され、これによる抵抗を低減させることができる。
また特に、インナケーブルを中空化し、室外側ロッド及び室内側ロッドの各通気孔をその中空化したインナケーブルの空洞に連通させることで、アウタケーブル内での空気の十分な流れ道を確保できることに加え、インナケーブルの中空化により、インナケーブルの軽量化も同時に達成することができる。
【0007】
この場合具体的には、室外側ロッド及び室内側ロッドの各貫通孔を、各ロッド端面に凹設された嵌合穴に開口するものとして、該嵌合穴に嵌着されるインナケーブルの空洞に連通させるようにすると良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコントロールケーブルは、ブーツ部材による封止空間と運転室内との間に空気の流通路を開通させたことにより、ブーツ部材の変形を抑止して操作抵抗を低減させることができる。また、その空気の通路は運転室内に開口しているので、雨水等の水分が入る心配もない。さらに、アウタケーブル内の空気の通路として、中空化したインナケーブルの空洞を利用することで、ブーツ部材変形の抑止による操作抵抗の低減効果でチェンジレバーのより良い操作感を実現することが可能なうえに、インナケーブルの軽量化も同時に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に、本発明に係るコントロールケーブルの好適な実施形態を示す。
このコントロールケーブル10は、運転室のチェンジレバーに連結される室内側ロッド20と、トランスミッションに設けられるトランスミッションレバーに連結される室外側ロッド30と、これら室内側ロッド20及び室外側ロッド30の間を連結するケーブル40と、を含んでいる。
【0010】
両ロッド20,30は中実棒状体で、その端面に嵌合穴21,31が凹設されている。ケーブル40は、インナケーブル50とこれを被覆するアウタケーブル60とからなり、ピアノ線からなる中空のインナケーブル50の端部がロッド20,30の嵌合穴21,31に嵌着され両ロッド20,30を連結している。アウタケーブル60は、室内側及び室外側の両端部に形成されたフランジ61,62により、車両に設けられた所定の固定部材に固定される。本例のアウタケーブル60内には、内部のインナケーブル50が摺動し易いように、グリスが入れられている。また、インナケーブル50は中空で、従来品に比べ強度を損なうことなく軽量に出来ており、動きがスムースで操作抵抗が低いものとなっている。
【0011】
室外側ロッド30とアウタケーブル60の室外側端部との間は、ゴム等の弾性材からなる蛇腹状のブーツ部材70にて覆われ、水分がアウタケーブル60内へ浸入しないように液密封止されている。このブーツ部材70により封止空間71が形成されているが、本例の場合、その封止空間71とアウタケーブル60内とに連通する通気孔32が室外側ロッド30に設けられている。すなわち通気孔32は、一端が封止空間71に開口すると共に他端が嵌合穴31に開口しており、封止空間71とアウタケーブル60内とを結ぶ空気の通路となっている。この嵌合穴31には中空のインナケーブル50が嵌着されているので、嵌合穴31に開口する通気孔32は、アウタケーブル60内のインナケーブル50に空いている空洞51に連通することになる。この構造により、アウタケーブル内60における十分な空気の通路が確保される。
【0012】
一方の室内側ロッド20においては、アウタケーブル60内と運転室内とに連通する通気孔22が設けられている。すなわち、通気孔22は、一端が嵌合穴21に開口すると共に他端が運転室内に開口しており、アウタケーブル60内と運転室内とを結ぶ空気の通路となっている。嵌合穴21には中空のインナケーブル50が嵌着されているので、嵌合穴21に開口する通気孔22は、アウタケーブル60内のインナケーブル50に空いた空洞51に連通することになる。従って、インナケーブル50の空洞51を通じて通気孔22と通気孔32とが連通し、封止空間71から運転室内に至る空気の通路が形成される。
【0013】
このように、室外側ロッド30の通気孔32−インナケーブル空洞51−室内側ロッド20の通気孔22を介する空気の出入り口が、ブーツ部材70により形成される封止空間71と運転室内との間に開通しているので、封止空間71内の空気の逃げ道が形成される。その結果、コントロールケーブル10のプッシュ・プル動作に伴うブーツ部材70の大きな変形が抑止され、これによる抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のコントロールケーブルを示した断面図。
【図2】従来のコントロールケーブルを示した断面図。
【符号の説明】
【0015】
10 コントロールケーブル
20 室内側ロッド
21 嵌合穴
22 通気孔
30 室外側ロッド
31 嵌合穴
32 通気孔
40 ケーブル
50 インナケーブル
51 空洞
60 アウタケーブル
61,62 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェンジレバーに連結される室内側ロッドと、トランスミッションレバーに連結される室外側ロッドと、前記両ロッドを連結するインナケーブル及び該インナケーブルを被覆するアウタケーブルと、前記室外側ロッドと前記アウタケーブルとの間を液密封止するブーツ部材と、を含むコントロールケーブルにおいて、
前記インナケーブルを中空とし、前記ブーツ部材による封止空間と前記インナケーブルの空洞とに連通する通気孔を前記室外側ロッドに設けると共に、前記インナケーブルの空洞と運転室内とに連通する通気孔を前記室内側ロッドに設けたことを特徴とするコントロールケーブル。
【請求項2】
前記室外側ロッドの貫通孔及び前記室内側ロッドの貫通孔を、前記各ロッドの端面に凹設された嵌合穴に開口するものとして、該嵌合穴に嵌着される前記インナケーブルの空洞に連通させることを特徴とする請求項1記載のコントロールケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−183834(P2006−183834A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380539(P2004−380539)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(504334865)日産ライトトラック株式会社 (60)
【Fターム(参考)】