説明

コンバインの伝動構造

【課題】搬送スクリュによる搬送で穀粒が損傷することに起因した穀粒品質の低下を防止することにある。
【解決手段】エンジン72からの動力を複数の被駆動機器Dに伝達する伝動手段Bを備えたコンバインの伝動構造において、伝動手段Bを、エンジン72からの動力を複数の被駆動機器Dのうちの唐箕21に伝達し、唐箕21の唐箕軸51にて高速伝動系Hと低速伝動系Lとに分岐し、低速伝動系Lからの低速動力を複数の被駆動機器Dのうちの搬送スクリュ60,62,65に伝達するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの動力を複数の被駆動機器に伝達する伝動手段を備えたコンバインの伝動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコンバインの伝動構造としては、エンジンからの動力を第1カウンター軸などを介してカウンタケースの第2出力軸に伝達し、第2出力軸から一方の伝動ベルトを介して脱穀装置に備えた被駆動機器である唐箕及び補助ブロアに伝達し、又、第2出力軸から他方の伝動ベルトを介して、脱穀装置に備えた被駆動機器である1番物搬送用の横送りスクリュコンベア、2番物搬送用の横送りスクリュコンベア、補助ブロア、揺動選別ケースの揺動駆動軸、チョッパ、及び排塵ブロアに伝達するように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−266670号公報(段落番号0022〜0024、図4〜5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の伝動構造では、第2出力軸に伝達したエンジンからの動力を、他方の伝動ベルトを介して、風力選別用の強い選別風を得るためや高い細断能力を得るために高速回転させる補助ブロアやチョッパなどとともに各横送りスクリュコンベアに伝達するように構成していることから、各横送りスクリュコンベアに伝達する動力を十分に減速することが難しくなっている。そのため、各横送りスクリュコンベアをそのスクリュによる穀粒の損傷が生じ難い低速で駆動することが難しくなり、各横送りスクリュコンベアによる搬送の際に穀粒が損傷する不都合を招く虞があり、特に比較的軟らかくて損傷し易い大豆などを収穫対象とするコンバインにおいては改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、搬送スクリュによる搬送で穀粒が損傷することに起因した穀粒品質の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段では、
エンジンからの動力を複数の被駆動機器に伝達する伝動手段を備えたコンバインの伝動構造において、
前記伝動手段を、前記エンジンからの動力を前記複数の被駆動機器のうちの唐箕に伝達し、前記唐箕の唐箕軸にて高速伝動系と低速伝動系とに分岐し、前記低速伝動系からの低速動力を前記複数の被駆動機器のうちの搬送スクリュに伝達するように構成してある。
【0007】
この課題解決手段によると、エンジンからの動力を低速伝動系により十分に減速した後に搬送スクリュに伝達することができ、これにより、搬送スクリュをそのスクリュによる穀粒の損傷が生じ難い低速で駆動することが可能になり、搬送スクリュによる搬送で穀粒が損傷する虞を防止することができる。
【0008】
従って、搬送スクリュによる搬送で穀粒が損傷することに起因した穀粒品質の低下を防止することができる。
【0009】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記伝動手段を、前記エンジンからの動力を前記唐箕軸の一端部に伝達し、かつ、前記唐箕軸の一端部から前記低速伝動系を分岐するように構成してある。
【0010】
この課題解決手段によると、唐箕軸の一端部に伝達したエンジンからの動力を唐箕軸の他端部から低速伝動系を分岐する場合に比較して唐箕軸に掛かる負荷を軽減することができる。
【0011】
その結果、エンジンからの動力を唐箕軸を経由して各被駆動機器に伝達する構成でありながら唐箕軸の耐久性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1又は2の課題解決手段において、
前記低速伝動系を、前記唐箕軸から第1減速機構を介してアイドラ軸に減速伝動し、前記アイドラ軸から第2減速機構を介して前記搬送スクリュに減速伝動する2段減速式に構成してある。
【0013】
この課題解決手段によると、唐箕軸から単一の減速機構を介して搬送スクリュに減速伝動する場合に比較して、各減速機構での変速比を小さくすることができ、各減速機構に備える伝動回転体として小径のものを採用することができ、伝動回転体などの他物との干渉を容易に回避することができる。
【0014】
これにより、唐箕軸から搬送スクリュへの減速伝動が行い易くなるとともに、唐箕軸から他の被駆動機器への伝動も行い易くなり、結果、伝動手段の組み付け性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第4の課題解決手段では、上記第1〜3の課題解決手段のいずれか一つにおいて、
前記複数の被駆動機器として、前記搬送スクリュとしての1番物搬送用の1番搬送スクリュ及び2番物搬送用の2番搬送スクリュと、粗選別用の選別風を供給する副唐箕及び2番物選別用の選別風を供給する2番唐箕とを備え、
前記伝動手段を、前記低速伝動系からの低速動力を前記1番搬送スクリュ及び前記2番搬送スクリュに伝達し、前記高速伝動系からの高速動力を前記副唐箕及び前記2番唐箕に伝達するように構成してある。
【0016】
この課題解決手段によると、1番搬送スクリュ及び2番搬送スクリュを、それらのスクリュによる穀粒の損傷が生じ難い低速で駆動することができ、1番搬送スクリュ及び2番搬送スクリュによる搬送で穀粒が損傷する虞を防止することができる。その結果、1番搬送スクリュ及び2番搬送スクリュによる搬送で穀粒が損傷することに起因した穀粒品質の低下を防止することができる。
【0017】
又、副唐箕及び2番唐箕を唐箕とともに高速回転駆動させることができ、これらの各唐箕から強い選別風を発生させることができる。その結果、風力選別による選別精度の向上を図ることができる。
【0018】
本発明の第5の課題解決手段では、上記第1〜4の課題解決手段のいずれか一つにおいて、
前記伝動手段に、前記低速伝動系からの低速動力を前記複数の被駆動機器のうちの扱胴に伝達する扱胴伝動系を装備してある。
【0019】
この課題解決手段によると、低速伝動系からの低速動力で負荷の大きい扱胴を駆動することができ、扱胴伝動系での変速比を変更することにより、扱胴の回転速度を、比較的硬くて損傷し難い稲や麦などに扱き処理を施すのに適した高速と、比較的軟らかくて損傷し易い大豆などに扱き処理を施すのに適した低速とに切り換えることができる。
【0020】
つまり、損傷し難い稲や麦などを収穫する場合には、扱胴の回転速度を稲麦用の高速に切り換えることによって処理能力の向上を図ることができ、損傷し易い大豆などを収穫する場合には、扱胴の回転速度を大豆用の低速に切り換えることによって扱き処理時の損傷による品質の低下を防止することができる。
【0021】
そして、このように扱胴の回転速度を切り換えるようにしても、搬送スクリュへは低速伝動系からの一定の低速動力を伝達することから、扱胴用の伝動機構での変速比の変更にかかわらず搬送スクリュの駆動速度を一定に維持することができる。
【0022】
その結果、扱胴の回転速度を大豆用の低速に切り換えた場合であっても、その切り換えに伴って搬送スクリュの駆動速度が低速になって搬送スクリュの搬送性能が低下する不都合の発生を防止することができる。
【0023】
本発明の第6の課題解決手段では、上記第5の課題解決手段において、
前記伝動手段に、穀稈を刈り取って脱穀装置に搬送する刈取搬送装置に前記低速伝動系からの低速動力を伝達する刈取搬送伝動系を前記扱胴伝動系と並列に装備してある。
【0024】
この課題解決手段によると、低速伝動系からの低速動力で負荷の大きい刈取搬送装置を駆動することができる。そして、前述したように扱胴伝動系での変速比を変更して扱胴の回転速度を切り換えるようにしても、刈取搬送装置へは扱胴用の伝動機構を介さずに伝動することから、扱胴伝動系での変速比の変更にかかわらず刈取搬送装置の駆動速度を一定に維持することができる。
【0025】
その結果、扱胴の回転速度を大豆用の低速に切り換えた場合であっても、その切り換えに伴って刈取搬送装置の駆動速度が低速になって刈取搬送装置での刈り取り性能や搬送速度が低下する不都合の発生を防止することができる。
【0026】
本発明の第7の課題解決手段では、上記第5の課題解決手段において、
前記伝動手段に、穀稈を刈り取って脱穀装置に搬送する刈取搬送装置に前記低速伝動系からの低速動力を伝達する刈取搬送伝動系を備え、前記刈取搬送伝動系の伝動方向下手側に前記扱胴伝動系を直列に連動連結してある。
【0027】
この課題解決手段によると、低速伝動系からの低速動力で負荷の大きい刈取搬送装置を駆動することができる。そして、前述したように扱胴伝動系での変速比を変更して扱胴の回転速度を切り換えるようにしても、刈取搬送装置への伝動には扱胴伝動系を介していないことから、扱胴伝動系での変速比の変更にかかわらず刈取搬送装置の駆動速度を一定に維持することができる。
【0028】
その結果、扱胴の回転速度を大豆用の低速に切り換えた場合であっても、その切り換えに伴って刈取搬送装置の駆動速度が低速になって刈取搬送装置での刈り取り性能や搬送速度が低下する不都合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】普通型コンバインの全体左側面図である。
【図2】普通型コンバインの全体平面図である。
【図3】脱穀装置の縦断左側面図である。
【図4】各カバーを取り外した脱穀装置の左側面図である。
【図5】伝動構造を示す脱穀装置の正面図である。
【図6】脱穀装置の上部側背面図である。
【図7】普通型コンバインの伝動構成を示す概略図である。
【図8】扱胴用の伝動機構の構成を示す要部の縦断正面図である。
【図9】扱胴用の入力軸と刈り取り搬送用の入力軸とアイドラ軸の支持構造を示す要部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を普通型(全稈投入型)コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1及び図2に示すように、普通型コンバインは、走行車体1の走行に伴って収穫対象の穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送装置2を走行車体1から前方に向けて昇降揺動可能に延出した状態で装備し、刈取搬送装置2からの刈取穀稈に扱き処理を施し、扱き処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置3を走行車体1の左半部に搭載し、脱穀装置3での扱き処理及び選別処理で得た単粒化穀粒を貯留して籾袋への詰め込みを可能にする袋詰装置4を走行車体1の右半部に搭載して構成してある。
【0032】
走行車体1は、車体フレーム5の下部に左右一対のクローラ式走行装置6を装備し、車体フレーム5の前部右側領域に搭乗運転部7を形成して構成してある。
【0033】
刈取搬送装置2は、走行車体1の走行に伴って、その前部の左右両端に配備したデバイダ8により未刈り穀稈を収穫対象の穀稈と収穫対象外の穀稈とに梳き分け、刈取搬送装置2の前部上方に配備した回転リール9により収穫対象穀稈の穂先側を後方に掻き込み、刈取搬送装置2の底部に装備したバリカン型の切断機構10により収穫対象穀稈の株元側を切断して収穫対象穀稈を取り込む。そして、取り込んだ収穫対象穀稈である刈取穀稈を、切断機構10の後方に配備したスクリュ搬送式のオーガ11により左右方向の所定箇所に寄せ集めて後方に送り出し、その所定箇所から脱穀装置3にわたるように架設した掻上げ搬送式のフィーダ12により脱穀装置3に供給搬送する。
【0034】
刈取搬送装置2の昇降揺動は、車体フレーム5とフィーダ12とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ13の伸縮作動により、刈取搬送装置2における脱穀装置3との接続端部となるフィーダ12の後端部に配備した左右向きのフィーダ駆動軸14を支点にして行う。
【0035】
図3〜6に示すように、脱穀装置3は、車体フレーム5に連結する脱穀フレーム15を上下に2分割可能に構成してある。脱穀フレーム15の上側フレーム部15Aには、フィーダ12が供給する刈取穀稈に扱き処理を施す脱穀部3Aを備えてある。脱穀フレーム15の下側フレーム部15Bには、脱穀部3Aでの扱き処理で得た選別対象の処理物に選別処理を施す選別部3B、及び、その選別処理で得た回収対象の処理物を回収する回収部3Cを備えてある。
【0036】
脱穀部3Aは、上側フレーム部15Aに前後方向視U字状の受網16などを装備して形成した扱室17に、前後向きの扱胴軸18を中心に正面視右回りに回転することで刈取搬送装置2からの刈取穀稈に扱き処理を施すバータイプの扱胴19を配備して構成してある。
【0037】
選別部3Bは、受網16から漏下した処理物を後方に移送しながら揺動選別する揺動選別手段20、揺動選別手段20に精選別用の選別風を供給する唐箕21、揺動選別手段20に粗選別用の選別風を供給する副唐箕22、及び、揺動選別手段20に2番物選別用の選別風を供給する2番唐箕23、などを脱穀部3Aの下方に配備して構成してある。
【0038】
回収部3Cは、揺動選別手段20の下方に、揺動選別手段20の前部側から漏下して唐箕21からの選別風を受けながら流下する単粒化穀粒を1番物として回収する1番回収部24と、揺動選別手段20の後部側から漏下して2番唐箕23からの選別風を受けながら流下する枝梗付き穀粒や二股粒などを2番物として回収する2番回収部25とを、その順で前後に並ぶように配備して構成してある。
【0039】
脱穀部3Aにおいて、扱室17は、扱胴19を下方から覆う受網16、扱胴19の上部を開閉可能に上方から覆う上部カバー26、扱胴軸18の前端部を回転可能に支持する前側縦板部材27、扱胴軸18の後端部を回転可能に支持する後側縦板部材28、及び、フィーダ12からの刈取穀稈を受網16に案内する案内面29Aをフィーダ12の後端から受網16の前端にわたる後上がり傾斜姿勢で備えた穀稈案内板29、などによって区画形成してある。そして、前側縦板部材27と穀稈案内板29との間に、フィーダ12が掻上げ搬送した刈取穀稈の扱室17への供給を可能にする供給口30を形成してある。又、受網16の後端を支持する板状の後側支持部材31と後側縦板部材28との間に、扱き処理後の刈取穀稈である脱粒穀稈などの排出物の扱室17からの排出を可能にする排稈口32を形成してある。
【0040】
図3に示すように、扱胴19は、扱胴19の前端部を形成する掻込部33と扱胴19の後部側を形成する扱き処理部34とを、それらが前後に連なる状態で扱胴軸18を中心に正面視右回りに一体回転するように扱胴軸18に連結して構成してある。
【0041】
掻込部33は、前細りの円錐台状に形成した胴部分35の外周面に掻き込み搬送用の2枚の螺旋羽根36を装備して、扱胴軸18を中心に正面視右回りに回転することで、穀稈案内板29が案内するフィーダ12からの刈取穀稈の全体を、2枚の螺旋羽根36によって後方の受網16や上部カバー26と扱き処理部34との間の扱き処理空間S1に掻き入れるスクリュ搬送式に構成してある。尚、掻込部33としては、胴部分35に螺旋羽根36に代えて整梳歯や扱歯などの異なる掻込部材を備えたものであってもよい。
【0042】
扱き処理部34は、その前端又は後端を形成する円盤状の支持板37,38を、前端用の支持板37が掻込部33の後端に連接し、後端用の支持板38が後側縦板部材28の直前に位置するように扱胴軸18に装備してある。又、円盤状の仕切板39を、扱き処理部34の前後中間部位となる前後の支持板37,38の中間又は略中間に位置するように扱胴軸18に装備してある。そして、これらの支持板37,38及び仕切板39の各外周部に、前後の支持板37,38にわたる長さを有する複数(例えば6本)の棒状部材40を、扱胴軸18に沿う前後向き姿勢で扱胴軸18から等距離の位置に扱胴19の周方向に等間隔で並ぶように連結し、かつ、各棒状部材40に、複数の扱歯41を棒状部材40から扱胴19の外方に向けて突出する姿勢で前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備してある。これにより、扱室17の内部に扱室17に連通する内部空間S2が形成されたバータイプ処理胴を構成してある。
【0043】
これにより、扱き処理部34は、扱胴軸18を中心に正面視右回りに回転することで、受網16や上部カバー26との間の扱き処理空間S1に位置する刈取穀稈に扱歯41の打撃や扱歯41の梳き込みなどによる扱き処理を施し、この扱き処理で得た処理物の内部空間S2への入り込みを許容し、扱き処理空間S1の処理物と内部空間S2の処理物とを攪拌しながら、これらの処理物に棒状部材40及び扱歯41の打撃や扱歯41の梳き込みなどによる扱き処理を施すように構成してある。
【0044】
そして、扱き処理部34の内部空間S2を扱き処理用の処理空間に使用することにより、大量の刈取穀稈を扱室17に供給した場合であっても、処理空間での処理物の滞留や処理空間の飽和を回避することができ、これにより、処理物の滞留や処理空間の飽和に起因して十分な扱き処理が行われないまま処理物が受網16から漏下する、あるいは、扱き処理に要する負荷が増大して扱胴19に対する伝動系が損傷する、などの不都合の発生を防止することができる。
【0045】
仕切板39は、扱き処理部34に形成した内部空間S2の上手側部分を後側から塞ぐように扱胴軸18を中心にして配備した円板で構成してあり、これにより、脱穀処理物量が減少する扱き処理部34の前後中間部位においては、仕切板39が、扱き処理部34の内部空間S2での脱穀処理物の脱穀処理方向下手側への流動を阻止し、扱き処理部34の回転とともに脱穀処理物を扱き処理部34の周囲に導いて、脱穀処理物に対する扱歯41などの打撃や梳き込みなどによる脱穀や、単粒化穀粒の受網16からの漏下を促すようになることから、脱穀処理物に含まれる単粒化穀粒や未脱粒穀稈などが扱き処理部34の内部空間S2を素通りして、脱粒穀稈とともに脱穀処理方向下手側端部の排稈口32から排出されることに起因した3番ロスの発生を阻止することができる。
【0046】
又、複数の扱歯41だけでなく複数の棒状部材40までもが、扱室内の処理物に作用する扱き処理部材として機能することから、脱穀性能や脱穀効率の向上を図ることができる。
【0047】
尚、棒状部材40には、丸パイプ鋼材、角パイプ鋼材、丸棒鋼材、角棒鋼材、アングル材、又はチャンネル材などを採用することができる。各扱歯41には、丸棒鋼材、角棒鋼材、丸パイプ鋼材、又は角パイプ鋼材などを採用することができる。
【0048】
上部カバー26の内部には、扱胴19が扱胴軸18を中心に正面視右回りに回転するのに伴って扱室17の上部に移動した刈取穀稈や処理物を車体後方に案内する複数の送塵弁42を、前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備してある。
【0049】
図3に示すように、揺動選別手段20は、その後下部に備えた偏心カム式の揺動駆動機構43の作動で前後揺動するシーブケース44を備え、そのシーブケース44の上部に、粗選別用のグレンパン45と粗選別体46とストローラック47とを、その順でシーブケース44の前端から後方に向けて連なるように配備し、シーブケース44の下部に、精選別用のグレンパン48とグレンシーブ49とをその順で前後に連接配備し、かつ、グレンシーブ49の後方にグレンシーブ49と連なるように2番物選別用の2番選別体50を配備して構成してある。
【0050】
粗選別用のグレンパン45は、縦断側面形状が鋸刃状になるように屈曲形成した板金材で構成してあり、その上面が副唐箕22の副唐箕軸53よりも低い位置に位置する状態で配備してある。そして、シーブケース44とともに前後揺動することで、受網16の前端部から漏下してグレンパン45に堆積する穀粒含有率の高い処理物を比重差選別して比重の小さい稈屑などの塵埃と比重の大きい穀粒とに上下に層分けしながら後方の粗選別体46に移送する。これにより、粗選別体46での穀粒の漏下を促進させることができる。
【0051】
粗選別体46には、複数のチャフリップ板46Aを左右向きの姿勢で前後方向に設定間隔をあけて整列配備して構成したチャフシーブ46を採用してある。チャフシーブ46は、シーブケース44とともに前後揺動することで、受網16の前部側及びグレンパン45からの処理物に篩い選別処理を施して、穀粒などをチャフリップ板46Aの間から漏下させながら、チャフリップ板46Aの間から漏下しなかった処理物を後方のストローラック47に移送する。
【0052】
尚、チャフシーブ46としては、複数のチャフリップ板46Aを前後方向に連動揺動可能に連結して開度調節可能に構成した可動式のものであってもよく、又、複数のチャフリップ板46Aを所定の後傾斜姿勢で固定して開度調節不能に構成した固定式のものであってもよい。又、粗選別体46として、チャフシーブ46に代えて、単一の平板に複数の漏下孔及び選別片を設定間隔をあけて整列形成して構成した選別プレートを採用してもよく、又、鋸刃状に形成した複数のラック板を前後向きの姿勢で左右方向に設定間隔をあけて整列配備して構成したストローラックを採用してもよい。
【0053】
ストローラック47は、鋸刃状に形成した複数のラック板47Aを後上がりの傾斜姿勢で後向きに延出する片持ち状態で左右方向に設定間隔をあけて整列配備して構成してある。そして、シーブケース44とともに前後揺動することで、受網16の後部側及び粗選別体46からの処理物に各ラック板47Aの左右の振れによるほぐし作用を施して、穀粒などをラック板47Aの間から漏下させながら、ラック板47Aの間から漏下しなかった処理物をストローラック47の後端から流下させる。
【0054】
精選別用のグレンパン48は、副唐箕22からの選別風による風力搬送の妨げになり難いように、粗選別体46の前部側の下方に後下がり傾斜姿勢で配備した全長にわたって凹凸のない平坦な平板状の板金材で構成してある。そして、シーブケース44とともに前後揺動することで、粗選別体46の前部側から漏下する穀粒含有率の高い処理物をグレンシーブ49に案内する。
【0055】
グレンシーブ49は、粗選別体46の後部側の下方に後上がり傾斜姿勢で配備したクリンプ網又は樹脂網などから構成してある。そして、シーブケース44とともに前後揺動することで、粗選別体46及び精選別用のグレンパン48からの穀粒含有率の高い処理物に篩い選別処理を施して、単粒化穀粒を1番物として漏下させながら、漏下しない枝梗付き穀粒や二股粒などを2番物として稈屑などとともに後方の2番選別体50に移送する。
【0056】
2番選別体50には、複数のチャフリップ板50Aを左右向きの姿勢で前後方向に設定間隔をあけて整列配備して構成した2番チャフシーブ50を採用してある。2番チャフシーブ50は、その後端がシーブケース44の後縦壁44Aに近接するように後上がりの傾斜姿勢でシーブケース44の後部に配備してあり、シーブケース44とともに前後揺動することで、受網16の後端部、ストローラック47、及びグレンシーブ49からの処理物に篩い選別処理を施して、枝梗付き穀粒や二股粒などを2番物としてチャフリップ板50Aの間から漏下させながら、チャフリップ板50Aの間から漏下しない長い稈屑などの処理物をシーブケース44の後方に移送する。
【0057】
グレンシーブ49と2番チャフシーブ50とは側面視で前後に一直線上に並ぶように配備し、チャフシーブ46と2番チャフシーブ50とは、2番チャフシーブ50の前端部がチャフシーブ46の後端部よりも低い配置高さとなるように段差をつけた状態で前後に配備してある。
【0058】
尚、2番チャフシーブ50としては、複数のチャフリップ板50Aを前後方向に連動揺動可能に連結して開度調節可能に構成した可動式のものであってもよく、又、複数のチャフリップ板50Aを所定の後傾斜姿勢で固定して開度調節不能に構成した固定式のものであってもよい。
【0059】
唐箕21は、揺動選別手段20の前下方に配備してあり、左右向きの唐箕軸51を中心に左側面視左回りに回転することで選別風を発生させるとともに、この選別風を、唐箕ケース52の後下部に形成した吹出口52Aから、後上方のグレンシーブ49と1番回収部24との間、グレンシーブ49の全域、及び、グレンシーブ49と2番チャフシーブ50との間、を吹き抜ける精選別用として供給するように構成してある。
【0060】
唐箕21の吹出口52Aには、唐箕21からの選別風を、グレンシーブ49及びグレンシーブ49の底面近くを吹き抜ける上層風と、1番回収部24の上方近傍を吹き抜ける下層風とに分ける風向板52Bを配備してある。風向板52Bは、上層風の流速を高めるための絞り面52Baを上部に備え、下層風の吹き出し方向を水平又は水平近くに修正する風向部52Bbを後端部から後下方向きに延出させてある。
【0061】
これにより、唐箕21からの選別風を、グレンシーブ49から漏下して1番回収部24に流下する処理物、及び、グレンシーブ49による篩い選別中の処理物に前下方から作用させて、それらの処理物から比重の小さい稈屑などの塵埃を吹き分けて後上方に風力搬送する風力選別を行うことができ、この風力選別により、稈屑などの塵埃の1番回収部24への混入を防止しながらグレンシーブ49から漏下する単粒化穀粒を1番回収部24に回収する1番回収処理を精度良く行なうことができる。
【0062】
特に、グレンシーブ49から漏下した直後の処理物には、流速を高めた上層風が作用することにより、比較的大きい稈屑などを効率良く風力選別することができ、比較的大きい稈屑などが取り除かれて1番回収部24の近くまで流下した処理物には、1番回収部24の上方近傍を水平又は略水平に吹き抜ける下層風が作用することにより、この処理物に残留する比較的小さい稈屑などを精度良く風力選別することができる。
【0063】
副唐箕22は、扱胴19の掻込部33を下方から覆うように配備した穀稈案内板29と前記唐箕との間における揺動選別手段20よりも前側の空間に配備してあり、左右向きの副唐箕軸53を中心に左側面視左回りに回転することで選別風を発生させるとともに、この選別風を、副唐箕ケース54の後下部に形成した吹出口54Aから、粗選別用のグレンパン45の底面に備えた後下がり傾斜姿勢の上側風向板55と精選別用のグレンパン48から前方に水平に延出した下側風向板56との間、チャフシーブ46と精選別用のグレンパン48及びグレンシーブ49との間、並びに、ストローラック47と2番チャフシーブ50との間、を吹き抜ける粗選別用として供給するように構成してある。尚、副唐箕22の側面視での外径(回転直径)は唐箕21の側面視での外径(回転直径)の1/2(又は略1/2)に設定してある。
【0064】
これにより、副唐箕22からの選別風を、上側風向板55と下側風向板56との間の後窄みの空間を通して流速を高めた状態で、チャフシーブ46を漏下して精選別用のグレンパン48及びグレンシーブ49に流下する処理物や、受網16の後端部及びストローラック47から流下する処理物に効果的に作用させることができ、その結果、それらの処理物から比重の小さい稈屑などの塵埃を吹き分けて後上方に風力搬送する風力選別を良好に行うことができ、この風力選別により、稈屑などの塵埃のグレンシーブ49や2番チャフシーブ50への流下をより確実に抑制することができ、グレンシーブ49及び2番チャフシーブ50での選別効率や選別精度の向上を図ることができる。
【0065】
又、副唐箕22からの選別風がチャフシーブ46のチャフリップ板46Aの間を通過し難くなることから、副唐箕22からの選別風がチャフシーブ46のチャフリップ板46Aの間を勢いよく通過することに起因してチャフシーブ46からの漏下が抑制されて後方のストローラック47に移送される処理物が増えることによる選別効率の低下を防止することができる。
【0066】
2番唐箕23は、2番チャフシーブ50の前下方における1番回収部24と2番回収部25との間に配備してあり、左右向きの2番唐箕軸57を中心に左側面視左回りに回転することで選別風を発生させるとともに、この選別風を、2番唐箕ケース58の後上部に形成した吹出口58Aから、2番チャフシーブ50の下方を通過して2番チャフシーブ50の後端部から後上方に吹き抜ける2番選別用として、揺動選別手段20の後縦壁であるシーブケース44の後縦壁44Aに向けて供給するように構成してある。又、吹出口58Aは、その吹き出し方向下手側の端部が2番チャフシーブ50の前端と前後方向で一致又は略一致するように後方側に延出してあり、しかも、その上側及び下側の案内面が吹き出し方向下手側ほど上下間隔が狭くなる先窄み形状に形成してある。尚、吹出口58Aの上側の案内面は、側面視で逆V字状に屈曲した形状に形成してある。
【0067】
つまり、2番唐箕23からの選別風を先窄み形状の吹出口58Aにより流速を高めた状態で2番チャフシーブ50の前端近くから吹き出させることができ、これにより、2番唐箕23からの選別風を2番チャフシーブ50を漏下して2番回収部25に流下する処理物に効果的に作用させることができ、その結果、その処理物から比重の小さい稈屑などの塵埃を吹き分けて、チャフリップ板50Aとの引っ掛かりで2番チャフシーブ50の後端部上に滞留する長い稈屑などとともに、2番チャフシーブ50の後端部から後上方に風力搬送する風力選別を良好に行うことができ、この風力選別により、稈屑などの塵埃の2番回収部25への混入を防止しながら2番チャフシーブ50から漏下する枝梗付き穀粒や二股粒などを2番回収部25に回収する2番回収処理を精度良く行なうことができる。
【0068】
又、2番唐箕23からの選別風が2番チャフシーブ50の前部側に配備したチャフリップ板50Aの間を通過し難くなることから、チャフシーブ46の後端部付近で合流した唐箕21及び副唐箕22からの選別風に影響を及ぼし難くなるとともに、2番唐箕23からの選別風が2番チャフシーブ50の前部側のチャフリップ板50Aの間を勢いよく通過することに起因して2番チャフシーブ50の前部側からの漏下が抑制されてシーブケース44の後方に移送される穀粒が増えることによる穀粒回収効率の低下を防止することができる。
【0069】
回収部3Cにおいて、1番回収部24はグレンシーブ49から漏下した1番物を底部の1番物搬出領域に流下案内する側面視底窄まり形状に形成してある。2番回収部25は、2番チャフシーブ50から漏下した2番物を底部の2番物搬出領域に流下案内する側面視底窄まり形状に形成してある。又、2番回収部25の前部上方には、2番唐箕ケース58の吹出口58Aが前方側から覆うように延出している。
【0070】
1番回収部24の底部には、左右向きの1番スクリュ軸59を中心に左側面視左回りに回転することで、1番回収部24の1番物搬出領域まで流下した1番物を右方に搬送する1番搬送スクリュ60を配備してある。2番回収部25の底部には、左右向きの2番スクリュ軸61を中心に左側面視左回りに回転することで、2番回収部25の2番物搬出領域まで流下した2番物を右方に搬送する2番搬送スクリュ62を配備してある。
【0071】
1番搬送スクリュ60の右端部には、1番搬送スクリュ60が搬送した1番物を袋詰装置4の上部に揚送するバケット式の揚送コンベヤ63を連動連結してある。2番搬送スクリュ62の右端部には、2番搬送スクリュ62が搬送した2番物に再び扱き処理を施す再処理機構64、及び、この再処理機構64による再処理後の2番物を粗選別用のグレンパン45に還元搬送するスクリュ式の2番還元スクリュ65を連動連結してある。
【0072】
脱穀装置3の後端下部には、扱き処理に伴って排稈口32から流出した脱粒穀稈や選別処理によって揺動選別手段20の後方に搬出した長い稈屑などを細断して機外に排出するチョッパ66を配備してある。チョッパ66は、脱穀装置3の後端下部に連結した排稈カバー67の内部において、左右方向に一定間隔をあけて整列配備した複数の固定刃68に対して、左右向きのチョッパ軸69にその周方向及び左右方向に所定間隔をあけて整列装備した複数の回転刃70がチョッパ軸69を中心に左側面視左回りに回転することで脱粒穀稈などを細断するように構成してある。
【0073】
図2及び図7に示すように、このコンバインでは、搭乗運転部7における運転座席71の下方にエンジン72を配備してあり、このエンジン72からの動力を、エンジン72から左方に延出した出力軸73において走行用と作業用とに分岐してある。
【0074】
図7に示すように、走行用の動力は、エンジン72の出力軸73から走行用の伝動手段Aを介して左右のクローラ式走行装置6に伝達する。走行用の伝動手段Aは、ベルト伝動式の伝動機構74、静油圧式無段変速装置75、及び、トランスミッションケース76に内蔵したギア式伝動機構(図示せず)、などから構成してある。
【0075】
図4、図5及び図7に示すように、作業用の動力は、エンジン72の出力軸73から作業用の伝動手段Bを介して刈取搬送装置2及び脱穀装置3に伝達する。刈取搬送装置2には、エンジン72からの動力で駆動される被駆動機器Cとして、回転リール9、切断機構10、オーガ11、及びフィーダ12を備えている。脱穀装置3には、エンジン72からの動力で駆動される被駆動機器Dとして、扱胴19、揺動選別手段20、唐箕21、副唐箕22、2番唐箕23、1番搬送スクリュ60、2番搬送スクリュ62、揚送コンベヤ63、再処理機構64、2番還元スクリュ65、及びチョッパ66、を備えている。
【0076】
作業用の伝動手段Bは、エンジン72からの動力を、エンジン72の出力軸73からベルト伝動式の伝動機構77を介して唐箕軸51の右端部に減速伝達し、その唐箕軸51の伝動方向上手側の端部となる右端部において高速伝動系Hと低速伝動系Lとに分岐してある。
【0077】
高速伝動系Hは、唐箕軸51の回転動力を、唐箕軸51の伝動方向下手側の端部となる左端部からベルト伝動式の第1伝動機構78を介して副唐箕軸53の左端部と2番唐箕軸57の左端部と中継軸79とに増速伝達し、中継軸79からベルト伝動式の第2伝動機構80を介してチョッパ軸69の左端部に増速伝達するように構成してある。
【0078】
低速伝動系Lは、唐箕軸51の回転動力を、唐箕軸51の右端部からベルト伝動式の第1減速機構81を介して左右向きのアイドラ軸82の右端部に減速伝達し、アイドラ軸82の左端部からベルト伝動式の第2減速機構83を介して1番スクリュ軸59の左端部と2番スクリュ軸61の左端部とに減速伝達する2段減速式に構成してある。又、2番スクリュ軸61の回転動力を、ベルト伝動式の第3伝動機構84を介して揺動選別手段20の揺動軸85に減速伝達するように構成してある。
【0079】
つまり、作業用の伝動手段Bでは、エンジン72からの動力を伝達する唐箕軸51の右端部において高速伝動系Hと低速伝動系Lとに分岐することにより、唐箕軸51の左端部において高速伝動系Hと低速伝動系Lとに分岐する場合に比較して唐箕軸51に掛かる負荷を軽減することができる。
【0080】
そして、唐箕21、副唐箕22、及び2番唐箕23を高速回転駆動させることができ、これにより、これらの各唐箕21〜23から強い選別風を発生させることができ、結果、風力選別による選別精度の向上を図ることができる。又、チョッパ66も高速回転駆動させることができ、結果、チョッパ66として高い細断性能を確保することができる。
【0081】
一方、1番搬送スクリュ60及び2番搬送スクリュ62を、それらのスクリュによる穀粒の損傷が生じ難い低速で駆動することができ、結果、1番搬送スクリュ60及び2番搬送スクリュ62による搬送で穀粒が損傷することに起因した穀粒品質の低下を防止することができる。又、揺動選別手段20を低速で揺動駆動することができ、これにより、揺動選別手段20の高速揺動駆動で穀粒が飛び跳ねることに起因した穀粒回収効率の低下や3番ロスの発生を防止することができる。
【0082】
しかも、低速伝動系Lを2段減速式に構成することにより、第1減速機構81及び第2減速機構83などでの変速比を小さくすることができ、第1減速機構81及び第2減速機構83などに備える各プーリ81A,81B,83A〜83Cとして小径のものを採用することができる。これにより、各プーリ81A,81B,83A〜83Cなどの他物との干渉を容易に回避することができ、唐箕軸51から各搬送スクリュ60,62などへの減速伝動が行い易くなる。その結果、作業用の伝動手段Bの組み付け性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0083】
作業用の伝動手段Bには、エンジン72からの動力を扱胴軸18に伝達する扱胴伝動系L1と刈取搬送装置2の入力軸であるフィーダ駆動軸14に伝達する刈取搬送伝動系L2とを並列に備えている。
【0084】
扱胴伝動系L1は、唐箕軸51及び中継伝動軸としてのアイドラ軸82を経由したエンジン72からの動力を、アイドラ軸82の左端部から扱胴用の伝動機構86を介して扱胴用の入力軸として伝動ケース87に備えた左右向きの伝動軸88の左端部に伝達し、伝動軸88の右端部からベベルギア式の伝動機構89を介して扱胴軸18に伝達するように構成してある。伝動ケース87は、脱穀フレーム15における上側フレーム部15Aの前端上部に連結してある。伝動軸88は、その左端部が伝動ケース87の左端部から横外方に延出するように伝動ケース87の左半部に装備してある。ベベルギア式の伝動機構89は伝動ケース87の左右中央部に内蔵してある。
【0085】
刈取搬送伝動系L2は、唐箕軸51及びアイドラ軸82を経由したエンジン72からの動力を、アイドラ軸82の左端部から刈り取り搬送用の伝動機構90を介してフィーダ駆動軸14の左端部に伝達するように構成してある。刈り取り搬送用の伝動機構90には、アイドラ軸82からフィーダ駆動軸14への伝動の断続を可能にするベルトテンションクラッチを採用してある。
【0086】
フィーダ駆動軸14に伝達した動力は、チェーン式の第1伝動機構91を介して左右向きの第1中継軸92に伝達し、第1中継軸92から連係機構93を介して切断機構10に伝達し、かつ、第1中継軸92からチェーン式の第2伝動機構94を介して左右向きのオーガ軸95に伝達し、オーガ軸95からチェーン式の第3伝動機構96を介して左右向きの第2中継軸97に伝達し、第2中継軸97からベルト伝動式の第4伝動機構98を介して左右向きのリール軸99に伝達するように構成してある。
【0087】
伝動ケース87の右半部には、ベベルギア式の伝動機構89に備えた逆回転動力取り出し用のベベルギア89Aと一体回転する左右向きの逆回転軸100を、逆回転軸100の右端部が伝動ケース87の右端部から横外方に延出するように装備してある。そして、逆回転軸100の右端部とフィーダ駆動軸14の右端部とにわたって、逆回転軸100からフィーダ駆動軸14への逆回転動力の伝達を可能にする逆回転用の伝動機構101を架設してある。逆回転用の伝動機構101には、逆回転軸100からフィーダ駆動軸14への伝動の断続を可能にするベルトテンションクラッチを採用してある。
【0088】
つまり、収穫作業時には、刈り取り搬送用の伝動機構90を伝動状態とし、逆回転用の伝動機構101を遮断状態とすることにより、刈取搬送装置2を正回転駆動することができ、穀稈を刈り取り搬送することができる。又、刈取搬送装置2において詰まりが発生した場合には、刈り取り搬送用の伝動機構90を遮断状態に切り換え、逆回転用の伝動機構101を伝動状態に切り換えることにより、刈取搬送装置2を逆回転駆動することができ、刈取搬送装置2に詰まった穀稈を簡単に取り除くことができる。
【0089】
図4、図5及び図7〜9に示すように、扱胴伝動系L1の伝動軸88は、前述したように脱穀フレーム15における上側フレーム部15Aの前端上部に連結した伝動ケース87の左半部に装備してある。フィーダ駆動軸14は、脱穀フレーム15における上側フレーム部15Aの前端下部に左右一対の軸受部材102を介して連結してある。アイドラ軸82は、脱穀装置3における刈取搬送装置2との接続端である前端の外側で、唐箕軸51と副唐箕軸53との間における唐箕軸51よりも副唐箕軸寄りの位置に位置するように、脱穀フレーム15における下側フレーム部15Bの前端上部に左右一対の軸受部材103を介して連結してある。
【0090】
つまり、扱胴用の入力軸である伝動軸88と刈取搬送装置2の入力軸であるフィーダ駆動軸14とアイドラ軸82とが、その順で脱穀装置3の上部から下部に向けて、アイドラ軸82を伝動軸88及びフィーダ駆動軸14に近づけた状態で、かつ、脱穀装置3の前端に略沿った状態で上下方向に並ぶように配備してある。これにより、アイドラ軸82と伝動軸88とを連動連結する扱胴用の伝動機構86、及び、アイドラ軸82とフィーダ駆動軸14とを連動連結する刈り取り搬送用の伝動機構90を、刈取搬送装置2と脱穀装置3との接続箇所に、前後幅の狭い上下向きでその上下長さを極力短くした状態でコンパクトに配備することができる。
【0091】
図4、図5及び図8に示すように、扱胴用の伝動機構86は、大小一対の伝動回転体86A,86Bとして小径の第1プーリ86Aと大径の第2プーリ86Bとを備え、それらのプーリ86A,86Bを伝動ベルト86Cにより巻き掛け連動するベルト伝動式に構成してある。第1プーリ86Aは、アイドラ軸82の左端部にアイドラ軸82と一体回転するように外嵌したボス部86Aaと、このボス部86Aaと一体回転するようにボス部86Aaに左外側からボルト連結する小径の外周部86Abとから構成してある。第2プーリ86Bは、伝動軸88の左端部に伝動軸88と一体回転するように外嵌したボス部86Baと、このボス部86Baと一体回転するようにボス部86Baに左外側からボルト連結する大径の外周部86Bbとから構成してある。各ボス部86Aa,86Ba及び各外周部86Ab,86Bbは、各ボス部86Aa,86Baに対する各外周部86Ab,86Bbの付け替えが可能となるように、各ボス部86Aa,86Ba及び各外周部86Ab,86Bbの嵌合径及び連結箇所などが一致するように構成してある。
【0092】
この構成により、扱胴用の伝動機構86は、各ボス部86Aa,86Baに対する各外周部86Ab,86Bbの付け替えで、扱胴19に対する伝動状態を、アイドラ軸82と一体回転するボス部86Aaに小径の外周部86Abをボルト連結し、かつ、伝動軸88と一体回転するボス部86Baに大径の外周部86Bbをボルト連結した大豆用の低速伝動状態と、アイドラ軸82と一体回転するボス部86Aaに大径の外周部86Bbをボルト連結し、かつ、伝動軸88と一体回転するボス部86Baに小径の外周部86Abをボルト連結した稲麦用の高速伝動状態とに切り換え可能に構成してある。
【0093】
図4、図5、図7及び図8に示すように、フィーダ駆動軸14、アイドラ軸82、及び伝動軸88は、それぞれ、それらの各左端部が走行車体1の左側端に位置するように左外方に向けて延出させてある。アイドラ軸82の左端部には、刈取搬送伝動系L2での伝動方向最上手側の伝動回転体である刈り取り搬送用の伝動機構90の出力プーリ90Aをキー連結でアイドラ軸82と一体回転するように外嵌してある。出力プーリ90Aの右端部には第2減速機構83の出力プーリ83Aを一体形成してある。出力プーリ90Aの左端部には第1プーリ86Aのボス部86Aaを一体形成してある。
【0094】
図1及び図2に示すように、脱穀装置3の左側部には、脱穀装置3の左外側前端部に配備した扱胴用の伝動機構86及び刈り取り搬送用の伝動機構90などを左外側から覆う第1カバー104と第2カバー105、脱穀装置3の左外側下部に配備した第1伝動機構78、第2伝動機構80、第2減速機構83、及び第3伝動機構84などを第2カバー105とともに左外側から覆う第3カバー106を着脱可能に装備し、かつ、脱穀部3Aの左側部を左外側から覆う第4カバー107をその後端部に備えた縦軸芯を支点にした開閉揺動操作が可能となるように装備してある。
【0095】
上記の構成から、作業用の伝動手段Bは、脱穀装置3の左側部から第1カバー104と第2カバー105とを取り外して、走行車体1の左側端部に位置する扱胴用の伝動機構86における各ボス部86Aa,86Baに対する各外周部86Ab,86Bbの付け替えを行うことにより、扱胴19に対する伝動状態を稲麦用の高速伝動状態と大豆用の低速伝動状態とに簡単に切り換えることができ、その結果、損傷し難い稲や麦などを収穫する場合には、扱胴19に対する伝動状態を稲麦用の高速伝動状態に切り換えることによって処理能力の向上を図ることができ、損傷し易い大豆などを収穫する場合には、扱胴19に対する伝動状態を大豆用の低速伝動状態に切り換えることによって扱き処理時の損傷による品質の低下を防止することができる。
【0096】
そして、扱胴19に対する伝動状態の切り換えにかかわらず、刈取搬送装置2を正回転駆動する際の駆動速度、並びに、揺動選別手段20、各唐箕21〜23、各搬送スクリュ60,62,65、及びチョッパ66の各駆動速度を一定に維持することができ、これにより、扱胴19に対する伝動状態の切り換えに起因した刈取搬送装置2での刈取搬送性能の低下、選別部3Bでの選別性能や選別効率の低下、各搬送スクリュ60,62,65の搬送性能の低下、及び、チョッパ66の細断性能の低下、などを防止することができる。
【0097】
尚、作業用の伝動手段Bにおいては、上記の構成に代えて例えば以下のように構成することも可能である。
〔1〕高速伝動系Hを、唐箕軸51の回転動力を、唐箕軸51の伝動方向上手側の端部である右端部から副唐箕軸53の右端部と2番唐箕軸57の右端部とチョッパ軸69の右端部とに増速伝達するように構成する。
〔2〕低速伝動系Lを、唐箕軸51の回転動力を、唐箕軸51の伝動方向上手側の端部である右端部から1番スクリュ軸59の右端部と2番スクリュ軸61の右端部と揺動軸85の右端部とに減速伝達するように構成する。
〔3〕扱胴伝動系L1を、唐箕軸51の右端部又は左端部あるいはアイドラ軸82の右端部から扱胴19に伝動するように構成する。
〔4〕刈取搬送伝動系L2を、唐箕軸51の右端部又は左端部あるいはアイドラ軸82の右端部から刈取搬送装置2に伝動するように構成する。
〔5〕高速伝動系Hの第1伝動機構78と第2伝動機構80、及び、低速伝動系Lの第1減速機構81と第2減速機構83などにチェーン伝動式のものを採用する。あるいは、低速伝動系Lの第1減速機構81にギア伝動式のものを採用する。
〔6〕扱胴用の伝動機構86及び刈り取り搬送用の伝動機構90としてチェーン伝動式のもの又はギヤ伝動式のものを採用する。
〔7〕扱胴用の伝動機構86を、この伝動機構86を介して連動連結する伝動方向下手側の伝動軸(アイドラ軸82又は唐箕軸51)と伝動方向下手側の伝動軸88とに対する大小一対の伝動回転体86A,86B(ボス部86Aa,86Baと外周部86Ab,86Bbとを一体形成したもの)そのものの付け替えで扱胴19に対する伝動を高低2段に切り換えるように構成する。又は、扱胴用の伝動機構86を介して連動連結する伝動方向下手側の伝動軸(アイドラ軸82又は唐箕軸51)と伝動方向下手側の伝動軸88とに対するコンバインに付属した低速伝動専用の一対の伝動回転体(ボス部と外周部とを一体形成したもの)と高速伝動専用の一対の伝動回転体(ボス部と外周部とを一体形成したもの)との交換で扱胴19に対する伝動を高低2段に切り換えるように構成する。あるいは、扱胴用の伝動機構86を介して連動連結する伝動方向下手側の伝動軸(アイドラ軸82又は唐箕軸51)と伝動方向下手側の伝動軸88とのそれぞれに高低伝動兼用に構成した伝動回転体のボス部を一体回転するように外嵌し、これらの各ボス部に対するコンバインに付属した低速伝動専用の一対の伝動回転体の外周部と高速伝動専用の一対の伝動回転体の外周部との交換で扱胴19に対する伝動を高低2段に切り換えるように構成する。
〔8〕逆回転動力取り出し用のベベルギア89A、逆回転軸100、及び、逆回転用の伝動機構101を装備しないことで、刈取搬送装置2の逆回転駆動を行えないように構成する。
【0098】
図1、図4及び図5に示すように、車体フレーム5における脱穀装置3の直前箇所には、アイドラ軸82の下方空間を利用して作動油タンク108を配備してある。
【0099】
図3に示すように、揺動選別手段20は、その前端上部に配備する粗選別用のグレンパン45の前後長さを短くして前方への延出長さを短くすることで、その前端の前方への揺動限界位置が前後方向で受網16の前端(扱胴19の扱き処理部34の前端)と一致(略一致でも可)するように構成してある。又、受網16の前端を支持する支持部材に利用する穀稈案内板29の後端部と揺動選別手段20の前端とにわたって揺動選別手段20の前方への処理物の漏出を防止する漏出防止手段109を装備してある。漏出防止手段109は、穀稈案内板29の後端部から下方に垂下した上側漏出防止板109Aと、シーブケース44の前端に立設した下側漏出防止板109Bとから構成してある。各漏出防止板109A,109Bには帆布やゴム板などを採用してある。
【0100】
この構成から、揺動選別手段20が受網16の前端位置よりも前方に不必要に揺動することを防止することができ、これにより、唐箕21と穀稈案内板29との間における揺動選別手段20の前方に大きい空間を確保することができ、この空間を利用してより大型の副唐箕22を装備することで、大量の処理物に対してより十分な選別風を確保することができる。
【0101】
又、揺動選別手段20の前方への揺動限界が受網16の前端位置又は前端位置の近くになるように構成しながらも、受網16の前端部から漏下する処理物を揺動選別手段20に確実に供給することができ、処理物が揺動選別手段20の前方に漏出することに起因した穀粒回収率の低下を防止することができる。
【0102】
図3に示すように、揺動選別手段20は、その後端であるシーブケース44の後端が受網16の後端よりも後方で扱胴19の後端(扱き処理部34の後端)寄りの位置に位置するようにシーブケース44の後端側を後方に延出させてある。又、2番チャフシーブ50は、その前端がチャフシーブ46の後端と前後方向で一致又は略一致するように前端側を前方に延出し、かつ、その後端側をシーブケース44の後端まで延出してある。
【0103】
つまり、揺動選別手段20の後端が受網16の後端よりも扱胴19の後端(扱き処理部34の後端)寄りに位置する状態となるように揺動選別手段20を扱胴19(扱き処理部34)に対して後側寄りに配備した構成となっており、これにより、受網16の後端部から漏下する処理物を揺動選別手段20に確実に供給することができ、処理物が揺動選別手段20の後方に漏出することに起因した穀粒回収率の低下を防止することができる。又、2番チャフシーブ50の処理面積(漏下面積)が大きくなることから2番チャフシーブ50の2番処理物に対する選別処理能力を向上させることができる。
【0104】
尚、図3において実線で示す揺動選別手段20の状態(位置)は、揺動選別手段20の前端が前方の揺動限界位置に達している状態であり、図3において仮想線(二点鎖線)で示す揺動選別手段20の後端部の状態(位置)は、揺動選別手段20の後端が後方の揺動限界位置に達している状態である。
【0105】
図3及び図6に示すように、後側支持部材31には、その下部から揺動選別手段20の後方に向けて後下がり傾斜姿勢で延出して、排稈口32から流下する脱粒穀稈や長い稈屑などの排出物を揺動選別手段20の後方に配備したチョッパ66に案内する排稈案内板110を装備してある。これにより、受網16から漏下せずに排稈口32から流下する脱粒穀稈や長い稈屑などの排出物が2番チャフシーブ50に供給されることに起因した2番チャフシーブ50での選別効率や選別精度の低下などを防止することができる。
【0106】
図3に示すように、チャフシーブ46は、扱胴19の扱き処理部34の前後中間部位に配備した仕切板39からチャフシーブ46の前端までの前後長さLaが仕切板39からチャフシーブ46の後端までの前後長さLbよりも長くなるように仕切板39に対して前側に偏倚した状態で配備してある。つまり、この揺動選別手段20では、チャフシーブ46における仕切板39よりも前側の処理面積(漏下面積)を大きく確保するようにしてあり、これにより、仕切板39によって扱き処理後の処理物の多くが揺動選別手段20の前部側に漏下するようになったとしても、その処理物をチャフシーブ46によって効率良く粗選別することができる。
【0107】
尚、粗選別用のグレンパン45の前後長さは、仕切板39からチャフシーブ46の前端までの前後長さLaと略同じ長さ(又は仕切板39からチャフシーブ46の前端までの前後長さLaよりも短い長さ)に設定してあり、粗選別用のグレンパン45の後端部及びチャフシーブ46の前端部が前端用の支持板37と仕切板39との前後中間部に位置するように構成してある。
【0108】
図4及び図5に示すように、脱穀フレーム15における下側フレーム部15Bの前部には、脱穀部3Aの前部側を支持する左右一対の前側支柱部材111と左右一対の後側支柱部材112とを唐箕ケース52の左右両端部に形成した唐箕用の吸気口52Cを前後から挟むように立設してある。そして、左右同じ側に位置する前側支柱部材111の下部側と後側支柱部材112の下部側とにわたって唐箕軸51の左右の端部を回転可能に支持する前後向きの唐箕支持部材113を唐箕用の吸気口52Cを横断するように架設してある。又、左右同じ側に位置する前側支柱部材111の上部側と後側支柱部材112の上部側とにわたって副唐箕軸53の左右の端部を回転可能に支持する前後向きの副唐箕支持部材114を副唐箕ケース54の左右両端部に形成した副唐箕用の吸気口54Bを横断するように架設してある。
【0109】
つまり、脱穀部3Aの前部側を支持するために高い強度を有するように構成した左右一対の前側支柱部材111と左右一対の後側支柱部材112とを利用して唐箕21及び副唐箕22を支持するようにしていることから、支持構造の簡素化を図ることができる。
【0110】
図4に示すように、左右の各副唐箕支持部材114には、副唐箕軸53を挟んだ前後の位置に副唐箕用の補助吸気口114Aを形成してある。これにより、副唐箕用の吸気口54Bを副唐箕支持部材114が横断することによって不足し易くなる副唐箕22に対する吸気量を改善することができ、副唐箕22からの選別風による風力選別を良好に行うことができる。
【0111】
図3に示すように、唐箕21は、その唐箕軸51の直上近傍方位置(直上方位置でも可)に揺動選別手段20の前端の前方への揺動限界位置が位置するように配備してある。又、前述したように、揺動選別手段20の前端の前方への揺動限界位置は前後方向で受網16の前端と一致(略一致でも可)させてある。そして、このように揺動選別手段20の前端の前方への揺動限界位置を設定し、かつ、受網16及び唐箕21を配備することにより、唐箕21の前半部の直上方位置に収容空間を形成してあり、この収容空間に、唐箕21の前端と副唐箕22の前端とが前後方向で略一致(一致でも可)させた状態で副唐箕22を配備してある。
【0112】
つまり、揺動選別手段20の前端の前方への揺動限界位置と唐箕21の唐箕軸21と受網16の前端とが略鉛直線上(鉛直線上でも可)に並ぶように構成してあり、これにより、揺動選別手段20が受網16の前端位置よりも前方に不必要に揺動することを防止するとともに、唐箕21の前半部の上方で揺動選別手段20の前方に大きい収容空間を確保することができ、この収容空間を利用してより大型の副唐箕22を装備することができ、結果、大量の処理物に対してより十分な選別風を確保することができる。
【0113】
図3に示すように、唐箕21及び副唐箕22は、それらの前端が脱穀フレーム15における上側フレーム部15Aの内部に装備する扱胴19の前端と前後方向で略一致(一致でも可)するように脱穀フレーム15の下側フレーム部15Bに装備してある。これにより、揺動選別手段20の前下方に配備する唐箕21をその前端が扱胴19の前端よりも後方に位置するように後方寄りに配備する場合に比較して、揺動選別手段20の下部に配備するグレンシーブ49の前後長さを長くすることができ、グレンシーブ49の処理面積(漏下面積)を大きく確保できることから、グレンシーブ49での穀粒回収効率の向上を図ることができる。又、副唐箕22を脱穀フレーム15の前端から前方に張り出さない状態でコンパクトに配備することができ、副唐箕22を装備することに起因した脱穀選別構造の大型化を防止することができる。
【0114】
尚、脱穀装置3の脱穀選別構造においては、上記の構成に代えて例えば以下のように構成することも可能である。
〔1〕副唐箕22からの選別風がチャフシーブ46のチャフリップ板46Aの間を積極的に通過するように副唐箕22からの選別風を揺動選別手段20に供給する。
〔2〕揺動選別手段20の後端の後方への揺動限界位置が扱胴19の後端(扱き処理部34の後端)と前後方向で一致又は略一致するように揺動選別手段20の後端側を受網16の後端よりも後方に延出する。
【0115】
〔別実施形態〕
〔1〕コンバインとしては、刈取穀稈の着粒部のみに扱き処理を施すように構成した自脱型のものであってもよい。
【0116】
〔2〕エンジン72からの動力を、唐箕軸51の伝動方向下手側の端部である左端部において高速伝動系Hと低速伝動系Lとに並列に分岐するように構成してもよく、又、エンジン72からの動力を、唐箕軸51の伝動方向上手側の端部である右端部においてアイドラ軸82を介さずに直接的に高速伝動系Hと低速伝動系Lとに並列に分岐するように構成してもよい。
【0117】
〔3〕扱胴伝動系L1の伝動方向下手側に刈取搬送伝動系L2を直列に連動連結するように構成してもよい。この場合、扱胴伝動系L1を唐箕軸51の伝動方向下手側の端部である左端部に連動連結してもよく、又、扱胴伝動系L1を唐箕軸51の伝動方向上手側の端部である右端部においてアイドラ軸82を介さずに直接的に連動連結してもよい。
【0118】
〔4〕刈取搬送伝動系L2の伝動方向下手側に扱胴伝動系L1を直列に連動連結するように構成してもよい。この場合、刈取搬送伝動系L2を唐箕軸51の伝動方向下手側の端部である左端部に連動連結してもよく、又、刈取搬送伝動系L2を唐箕軸51の伝動方向上手側の端部である右端部においてアイドラ軸82を介さずに直接的に連動連結してもよい。
【0119】
〔5〕扱胴用の入力軸である伝動軸88と刈取搬送装置2の入力軸であるフィーダ駆動軸14とアイドラ軸82とを単一のベルト伝動式の伝動機構で連動連結するように構成してもよい。
【0120】
〔6〕扱胴19として円筒状の扱き処理部を備えたドラム式のものを採用するようにしてもよい。
【0121】
〔7〕扱胴19としては、左右向きの扱胴軸18を中心に回転するように走行車体1に左右向きに装備して、その左右一端部に供給される刈取搬送装置からの刈取穀稈に扱き処理を施すように構成したものであってもよい。この場合、扱き処理での搬送方向上手側となる左右一端側が扱胴19(脱穀装置3)の前方側となり、搬送方向下手側となる左右他端側が扱胴19(脱穀装置3)の後方側となる。
【0122】
〔8〕2番選別体50として、鋸刃状に形成した複数のラック板を前後向きの姿勢で左右方向に設定間隔をあけて整列配備して構成したストローラックを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明に係るコンバインの伝動構造は、刈取穀稈の全体に扱き処理を施すように構成した普通型コンバイン、及び、刈取穀稈の着粒部のみに扱き処理を施すように構成した自脱型コンバインに適用することができる。
【符号の説明】
【0124】
2 刈取搬送装置
3 脱穀装置
19 扱胴に
21 唐箕
22 副唐箕
23 2番唐箕
51 唐箕軸
60 搬送スクリュ(1番搬送スクリュ)
62 搬送スクリュ(2番搬送スクリュ)
65 搬送スクリュ(2番還元スクリュ)
72 エンジン
81 第1減速機構
82 アイドラ軸
83 第2減速機構
B 伝動手段
D 被駆動機器
H 高速伝動系
L 低速伝動系
L1 扱胴伝動系
L2 刈取搬送伝動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を複数の被駆動機器に伝達する伝動手段を備えたコンバインの伝動構造において、
前記伝動手段を、前記エンジンからの動力を前記複数の被駆動機器のうちの唐箕に伝達し、前記唐箕の唐箕軸にて高速伝動系と低速伝動系とに分岐し、前記低速伝動系からの低速動力を前記複数の被駆動機器のうちの搬送スクリュに伝達するように構成してあるコンバインの伝動構造。
【請求項2】
前記伝動手段を、前記エンジンからの動力を前記唐箕軸の一端部に伝達し、かつ、前記唐箕軸の一端部から前記低速伝動系を分岐するように構成してある請求項1に記載のコンバインの伝動構造。
【請求項3】
前記低速伝動系を、前記唐箕軸から第1減速機構を介してアイドラ軸に減速伝動し、前記アイドラ軸から第2減速機構を介して前記搬送スクリュに減速伝動する2段減速式に構成してある請求項1又は2に記載のコンバインの伝動構造。
【請求項4】
前記複数の被駆動機器として、前記搬送スクリュとしての1番物搬送用の1番搬送スクリュ及び2番物搬送用の2番搬送スクリュと、粗選別用の選別風を供給する副唐箕及び2番物選別用の選別風を供給する2番唐箕とを備え、
前記伝動手段を、前記低速伝動系からの低速動力を前記1番搬送スクリュ及び前記2番搬送スクリュに伝達し、前記高速伝動系からの高速動力を前記副唐箕及び前記2番唐箕に伝達するように構成してある請求項1〜3のいずれか一つに記載のコンバインの伝動構造。
【請求項5】
前記伝動手段に、前記低速伝動系からの低速動力を前記複数の被駆動機器のうちの扱胴に伝達する扱胴伝動系を装備してある請求項1〜4のいずれか一つに記載のコンバインの伝動構造。
【請求項6】
前記伝動手段に、穀稈を刈り取って脱穀装置に搬送する刈取搬送装置に前記低速伝動系からの低速動力を伝達する刈取搬送伝動系を前記扱胴伝動系と並列に装備してある請求項5に記載のコンバインの伝動構造。
【請求項7】
前記伝動手段に、穀稈を刈り取って脱穀装置に搬送する刈取搬送装置に前記低速伝動系からの低速動力を伝達する刈取搬送伝動系を備え、前記刈取搬送伝動系の伝動方向下手側に前記扱胴伝動系を直列に連動連結してある請求項5に記載のコンバインの伝動構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−60968(P2012−60968A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209871(P2010−209871)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】