説明

コンバインの刈り高さ検出装置

【課題】コンバインの刈り高さ制御用の接地センサを、圃場に接地したまま機体を後進させても破損しないものとする。
【解決手段】刈取装置の下部にセンサ取付体(1)の前部を横軸(1a)で上下回動自在に軸支し、該センサ取付体(1)の後部に圃場面に接地する接地体(3)を縦軸(4)で左右回動自在に軸支し、該接地体(3)の接地によってセンサ取付体(1)が刈取装置に対して上下回動した角度を検出するセンサ(8)とする。また、接地体(3)を側面視で円弧状に湾曲した帯状体とし、該接地体(3)の接地点から後方の部位を圃場面から離間させる。また、接地体(3)の後部を簾状に切り欠く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの刈取装置の圃場面からの高さを検出する刈り高さ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの刈取装置は圃場の状態や穀稈の成長度合いによってオペレータが上下に調節しながら収穫作業を行う。この刈取装置はあまり下げすぎると分草杆を圃場に突っ込ませて泥刈りになり、刈取装置を上げ過ぎると穀粒のついた穂先を刈り残すことになるために、最適上下移動限界を設定し、その上下移動限界内で昇降できるようにしている。
【0003】
そして、刈取装置の地上高さを検出するために、例えば、下記特許文献1には、刈取装置の先端下部に接地体を圃場面に接触させて接地体の上下動で刈取装置の高さを検出する接地センサを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−204144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバインの刈取収穫作業中には、刈取装置を降下させて接地センサを接地した状態のままで後進することがあるが、この後進時には接地センサに通常とは逆の力が働くので、接地センサに無理な力が作用して破損しないようにしなければならない。
【0006】
このために、上記特許文献1には、刈取装置の下部に、前支点を中心に上下揺動して接地追従する接地体とこの接地体の揺動を検知する角度センサを支持した検知ケースを配備し、前記接地体を後方下方に向けて延出してその後端部を接地点として圃場面の凹凸に接地追従して揺動するよう構成し、前記検知ケースを下方の検知用位置と上方の退避位置との間を移動可能に後支軸で支持し、前記接地体の接地部に後方から前向きの外力が作用すると検知ケースが前記検知用位置から前記退避位置に移動して破損を防ぐように構成してある。
【0007】
この構成は、前支点を中心に上下揺動して接地追従する接地体を設けた検知ケースが後支軸で軸支されて、接地体を軸支した検知ケースの前側が下方の検知用位置と上方の退避位置との間で移動可能に支持させた構成であるために、旋回しながら後進して機体を斜め後方へ移動すると、接地体に真後以外の外力が作用することになって、検知ケースが上方の退避位置に移動し難く破損することがある。
【0008】
そこで、本発明では、コンバインの刈取装置の下部に接地センサを設けた構成で、接地センサを圃場に接地したままで機体を斜め後方へ移動しても破損しないようにしたコンバインの刈り高さ検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、刈取装置の下部にセンサ取付体(1)の前部を横軸(1a)で上下回動自在に軸支し、該センサ取付体(1)の後部に圃場面に接地する接地体(3)を縦軸(4)で左右回動自在に軸支し、該接地体(3)の接地によってセンサ取付体(1)が刈取装置に対して上下回動した角度を検出するセンサ(8)を設けたことを特徴とするコンバインの刈り高さ検出装置とした。
【0010】
この構成で、機体を前進させると接地体(3)が圃場面の凹凸に沿って上下動してセンサ取付体(1)を横軸(1a)回りに上下回動させ、このセンサ取付体(1)の刈取装置に対する上下回動角度をセンサ(8)で刈取装置の地上高として検出する。そして、接地体(3)が接地したままでコンバインを後進させて接地体(3)に後方から前向きに外力が作用すると、接地体(3)が縦軸(4)を中心に左右回動して外力を逃がすようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記接地体(3)を側面視で円弧状に湾曲した帯状体とし、該接地体(3)の接地点から後方の部位を圃場面から離間させたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの刈り高さ検出装置とした。
【0012】
この構成で、コンバインの後進時に接地体(3)が圃場に突き刺さりにくく、接地体(3)の圃場面に接触する面積が少なく後方からの外力を受けて縦軸(4)中心の左右回動が円滑になる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記接地体(3)の後部を簾状に切り欠いたことを特徴とする請求項2に記載のコンバインの刈り高さ検出装置とした。
この構成で、接地体(3)に藁屑等が溜まりにくくなり、刈取装置の地上高検出を円滑に継続できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によると、接地体(3)を圃場面に接触させたままでコンバインを後進或いは旋回させて接地体(3)に後方や斜め後方から外力が作用しても、接地体(3)が縦軸(4)回りに回動して外力を逃がし、刈り高さ検出装置の破損を防ぐことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、コンバインの後進時に接地体(3)が圃場面に突き刺さりにくくなり、接地体(3)を圃場面に接触させたままでコンバインを後進或いは旋回させた際に、接地体(3)に作用する外力が過大なものとなりにくく、刈り高さ検出装置の破損を防ぐことができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によると、上記請求項2に記載の発明の効果に加え、接地体(3)に藁屑等が溜まりにくくなり、刈り高さの検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体正面図である。
【図3】一部の拡大側断面図である。
【図4】一部の拡大側面図である。
【図5】一部の拡大平面図である。
【図6】一部の拡大説明図である。
【図7】別実施例の一部拡大側断面図である。
【図8】制御信号の流れを示す制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
本明細書では、左側及び右側とは、コンバインが前進する方向に向いたときの方向(コンバインに搭乗するオペレータにとっての向き)を指す。
【0019】
図1と図2に示すように、コンバインの車体10の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ11を有するクローラ走行装置12を配設し、車体10の前端側に分草杆6や刈刃13等を備えた刈取装置7が設けられている。刈取装置7の後方には操縦席14を備えたキャビン15があり、また車体10の上方には刈取装置7から搬送されてくる穀桿を引き継いで搬送して脱穀・選別する脱穀装置16がキャビン15の左後方に設けられ、該脱穀装置16で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク17が脱穀装置16の右側でキャビン15の後に配置されている。グレンタンク17の後部にオーガ18を連接して、グレンタンク17内の穀粒をコンバインの外部に排出する構成としている。
【0020】
オーガ18は、螺旋を内装した基部側の元筒18aと先端側の先筒18bからなり、穀粒の排出時に元筒18aと先筒18bを一体的にオーガ受20から起伏させると共に先筒18bを元筒18aに対して伸縮させて先端の排出シュート19の位置をトラック上の穀粒タンク上に移動させるようにしている。
【0021】
上記コンバインはオペレータが操縦席14に着座して左前側に立設する操縦レバー21を左右に倒すとその倒した側方へ旋回し前後に倒すと刈取装置7を昇降するようにして、左右の走行クローラ11,11に動力を伝動して任意の速度で走行する。穀稈の収穫を行う場合には、刈取装置7の刈取クラッチを入りにし脱穀レバーを脱穀クラッチ入にして脱穀装置16を駆動しながら走行すると、刈取装置7で刈り取った穀稈が搬送装置で脱穀装置16に送り込まれ、穀粒が脱穀され、脱穀した穀粒がグレンタンク17に溜められる。
【0022】
刈取装置7は、車体10に立設した支持台23に刈取メインフレーム22を枢軸24で軸支し、この枢軸24を中心にして前側下部の分草杆6の部分を刈取昇降シリンダ25図4では表示していないで上下に昇降するようにしている。また、刈取メインフレーム22と枢軸24から前方へ延ばした連結フレーム26で分草杆6の後から斜め後上方設ける引起し装置27を支持している。連結フレーム26の前端には引起し装置27を駆動する伝動ケース28を取り付けている。
【0023】
刈取装置7の先端下部には、刈刃13の地上高すなわち穀稈の刈取高さを検出する刈り高さ検出装置を設けて、自動で刈取高さを上下一定範囲内に維持するようにしているが、その刈り高さ検出装置として、図4乃至図7に示す構造としている。
【0024】
刈取装置7の先端に設ける分草杆6の下側のセンサ取付部材60に、側面視で先端を尖らせたセンサ取付体1を横軸1aで後部が上下に揺動するように軸支し、巻きばね状のばね1bでセンサ取付体1の後部を下方に付勢している。そして、センサ取付体1の揺動角度をポテンショメータ式のセンサ8で検出して刈取装置7の地上高に換算している。前記ばね1bは、横軸1aの周囲に巻き掛け、一端部をセンサ取付部材60側に一体のピン60aに当接させ、他端部センサ取付体1側に係止し、該ばね1bの弾発力でセンサ取付体1を下降回動側に常時付勢する。該センサ取付体1の下降回動位置を規制するピン60bを前記センサ取付部材60側から一体に設けている。
【0025】
このセンサ取付体1の後部を側面視でコ字状に切り欠いた形状として接地体取付具2を挟み込み、縦軸4で接地体取付具2が左右に揺動するように軸支する。そして、この縦軸4の周囲にトーションばね9を取り付け、このトーションばね9の両端部間にセンサ取付体1側に一体のピン9aと接地体取付具2側に一体のピン9bを挟む。これにより、接地体取付具2を直後方へ向かう姿勢に保持するよう付勢している。
【0026】
接地体取付具2には円弧状に湾曲した帯鉄からなる接地体3を後方に向けて取り付けている。この接地体3の後部は上方に巻き上げ、後方に向けて一部を切り欠いて簾状に形成している。簾状にすることで、藁屑等が引っ掛り難くなる。なお、接地体取付具2をピアノ線で構成しても良い。
【0027】
接地体3が圃場面の凹凸で上下すると、センサ取付体1の後部が上下に回動しこれをセンサ8で検出し後述のマイクロコンピュータ30で刈取装置7の地上高に換算できるようになるのである。
【0028】
接地体3を圃場面に接地させたままで機体を後進或いは後進旋回すると、接地体3に後方或いは斜め後方から外力が加わるが、接地体3は、縦軸4を中心に回動して外力を逃がすようになって破損することがない。
【0029】
また、前記ピン60bによってセンサ取付体1の下降回動位置を規制することで、刈取装置7を非刈取作業高さに上昇させた際に、センサ取付体1及び接地体3が過度に下降回動するのを防ぎ、刈取装置7を刈取作業高さに下降させた際に、接地体3が圃場面に突っ込むことを防止できる。
【0030】
尚、上述の刈り高さ検出装置は、刈取装置7の左右両端の分草杆6,6に夫々取り付けてもよく、左右方向中間部の分草杆6に取り付けてもよい。
図7に示す別実施例は、センサ8を泥水の付着し難い分草杆6の高い位置に取り付けて、このセンサ8の検出アーム8aとセンサ取付体1のセンサアーム1cを連結ロッド52或いはワイヤで連結し、センサ取付体1の動きをセンサ8で検出する。
【0031】
次に、刈取装置7の昇降制御について説明する。
図8は刈取装置の昇降制御信号の流れを示す制御ブロック図で、マイクロコンピュータ30に入力する信号は、キャビン15内の設定パネルに設けた定点停止スイッチ46からのオン・オフ信号、操縦レバー21からの刈取装置7を上昇・下降させる信号、刈取上・下限設定スイッチ39からの設定信号、刈取上限界センサ48での上昇許容最大位置信号と刈取下限界センサ49からの降下許容最低信号、センサ8からの刈取装置7の地上高、対機体高さセンサ34からの車体10に対する刈取装置7の高さ、左右水平センサ35からの車体10の左右傾き、前後水平センサ36からの車体10の前後傾き、刈高さ自動スイッチ37からのオン・オフ信号、脱穀クラッチスイッチ38からの脱穀装置16のオン・オフ信号、刈取上・下限設定スイッチ39の刈取装置7の上限と下限の設定値、刈取上限センサ48と刈取下限センサ49の刈取装置7検出信号が第一入力インターフェース31を介して入力する。
【0032】
さらに、車体左ストロークセンサ42の伸び位置信号、車体右ストロークセンサ43の伸び位置信号、車体前後ストロークセンサ44の伸び位置信号、超音波センサ45の距離検出信号、エンジン回転センサ50のエンジン回転数が、第二入力インターフェース32を介して入力する。
【0033】
マイクロコンピュータ30から出力される信号は、出力インターフェース33を介して刈取上昇ソレノイド40と刈取下降ソレノイド41への作動信号で、刈取昇降シリンダ25を作動させて刈取装置7を昇降させる。
【0034】
刈高さ自動スイッチ37をON操作し、刈取装置7を刈取作業高さまで下降させ、接地体3が接地してセンサ8からの検出信号がマイクロコンピュータ30に入力されると、このセンサ8による検出値と、マイクロコンピュータ30側に予め設定した設定値(所定の幅(範囲)を有する)とが比較され、センサ8による検出値がマイクロコンピュータ30側の設定値に収まるように、マイクロコンピュータ30から刈取上昇ソレノイド40又は刈取下降ソレノイド41へ出力がなされ、刈取昇降シリンダ25が伸縮作動して、刈取装置7が昇降調節される。
【0035】
刈取装置7が下降限界以下に降下した際に再度刈取り作業を続行するには、定点停止スイッチ46をオフにして刈取装置7を通常の作業位置へ上昇させる。すると、操縦レバー47の操作で、刈取装置7が刈取上・下限設定スイッチ39で設定した上下範囲を昇降するようになる。このように、刈取装置7の降ろし過ぎを防ぐ為に定点停止スイッチ46をオンしておけば誤操作による泥刈りや刈取装置7の破損を防止出来る。
【0036】
エンジントラブルで駆動が停止して刈取装置7が接地した後に、エンジントラブルを解消してエンジンを再起動すると、刈取装置7が作業範囲に戻ろうとするが、定点停止スイッチ46をオンしておけば、刈取装置7が刈取下降限界まで僅かに上昇して停止するので、安全である。
【0037】
センサ8を左右中央の分草杆6に取り付け、このセンサ8の検出する地上高と左右水平センサ35が検出する機体の左右傾きで左右最外側の分草杆6の地上高を演算するようにすれば、センサ8を一個にすることが出来る。なお、左右水平センサ35を刈取装置7に取り付けると、より正確な左右最外側の分草杆6の地上高を演算出来る。
【0038】
また、左右水平センサ35や前後水平センサ36の検出する傾斜度が一定以上であったり、車体左ストロークセンサ42と車体右ストロークセンサ43の検出差や車体前後ストロークセンサ44の検出差が所定値以上であったりすると、圃場が湿田であると判断できるので、制御の応答性を敏感にする。また、前記で圃場が湿田であると判断できれば、超音波センサ45で検出する地上高を採用して制御する方がより正確に制御できる。
【符号の説明】
【0039】
1 センサ取付体
1a 横軸
3 接地体
4 縦軸
8 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置の下部にセンサ取付体(1)の前部を横軸(1a)で上下回動自在に軸支し、該センサ取付体(1)の後部に圃場面に接地する接地体(3)を縦軸(4)で左右回動自在に軸支し、該接地体(3)の接地によってセンサ取付体(1)が刈取装置に対して上下回動した角度を検出するセンサ(8)を設けたことを特徴とするコンバインの刈り高さ検出装置。
【請求項2】
前記接地体(3)を側面視で円弧状に湾曲した帯状体とし、該接地体(3)の接地点から後方の部位を圃場面から離間させたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの刈り高さ検出装置。
【請求項3】
前記接地体(3)の後部を簾状に切り欠いたことを特徴とする請求項2に記載のコンバインの刈り高さ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−200197(P2011−200197A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72680(P2010−72680)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】