説明

コンバインの刈取り部昇降構造

【課題】 走行機体の前部に上下揺動可能に配備した刈取り部を接地追従して昇降させるよう構成したコンバインの刈取り部昇降構造において、刈取り部の重量負荷を支持するバランス構造を小型化することができるとともに、刈取り部の移動開放も容易に行うことができるようにする。
【解決手段】 刈取り部3を弾性的に受け止め支持する弾性バランス機構50を装備し、刈取り作業域に下降された刈取り部3を弾性バランス機構50で分離可能に接当支持するよう構成し、刈取り部3を接当支持して変形した弾性バランス機構50の弾性復元力と刈取り部3の重量とが平衡した状態において、刈取り部3が走行地面Gよりも低く、かつ、機械的な下降限界mよりも高い位置nにあるよう設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前部に配備した刈取り部を接地追従させて昇降させるよう構成したコンバインの刈取り部昇降構造に関する。
【背景技術】
【0002】
刈取り部を接地追従させて昇降させるよう構成したコンバインの刈取り部昇降構造は、刈高さセンサからの検出情報に基づいて刈取り部昇降用の油圧シリンダを作動制御する、いわゆる自動刈高さ制御構造に比べて安価な構成で刈高さを安定維持することができるものであり、例えば、特許文献1に開示されているように、刈取り部と走行機体の前端部との間に支持ロッドを伸縮自在に架設するとともに、この支持ロッドに外嵌装着したバランス用のコイルバネで刈取り部の重量負荷を負担することで、刈取り部の接地荷重を軽減するよう構成されている。
【特許文献1】特開2004−267123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の刈取り部昇降構造においては、刈取り部と走行機体の前部との間にコイルバネ装着用の支持ロッドを架設して、刈取り部の昇降に応じて支持ロッドを伸縮させる構成が採用されているものであるために、支持ロッドは刈取り部の昇降範囲に対応した大きいストロークで伸縮できる大型のものにしておく必要があった。また、伸縮自在な支持ロッドの両端部を刈取り部と走行機体の前部にそれぞれ枢支連結するのに手数がかかるものとなっていた。
【0004】
近年、コンバインにおいては、エンジンの出力部やミッションケース周り、等の刈取り部で隠された機体内部周辺のメンテナンス性の向上が望まれており、刈取り部を走行機体から取外したり、刈取り部を機体横外方に旋回開放する、等して刈取り部で隠された機体内部周辺を大きく開放するものも実用化されている。
【0005】
このように、刈取り部を脱着したり旋回開放する構造を、刈取り部を接地追従式に構成した仕様の機種に導入しようとした場合、刈取り部昇降用の油圧シリンダと刈取り部との連結を解除するのみならず、コイルバネを装着した支持ロッドと刈取り部との連結をも解除する必要があり、刈取り部移動のための操作が煩わしいものになることが予測される。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、刈取り部を接地追従して昇降させるよう構成したコンバインの刈取り部昇降構造において、刈取り部の重量負荷を支持するバランス構造を小型化することができるとともに、刈取り部の移動開放も容易に行うことができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、走行機体の前部に上下揺動可能に配備した刈取り部を接地追従して昇降させるよう構成したコンバインの刈取り部昇降構造であって、
前記刈取り部を弾性的に受け止め支持する弾性バランス機構を装備し、刈取り作業域に下降された刈取り部を弾性バランス機構で分離可能に接当支持するよう構成し、
刈取り部を接当支持して変形した弾性バランス機構の弾性復元力と刈取り部の重量とが平衡した状態において、刈取り部が走行地面よりも低く、かつ、機械的な下降限界よりも高い位置にあるよう設定してあることを特徴とする。
【0008】
上記構成によると、圃場で刈取り部を下降させると、刈取り部は小さい接地圧で接地し、機体走行に伴って圃場面の凹凸に追従して昇降する。この場合、弾性バランス機構の弾性復元力と刈取り部の重量とが平衡した状態までは下降するが、それ以上に深い凹部には追従することはなく、刈取り部が機械的な下降限界まで下降することはない。
【0009】
弾性バランス機構は、刈取り作業高さ範囲に下降された刈取り部を接当支持するが、刈取り部が刈取り作業高さ範囲を越えて大きく上昇される時には弾性バランス機構から刈取り部が離されることになり(又は弾性バランス機構が機体から離されることになり)、刈取り部の昇降範囲全域において連動連結されたものに比べて前後に短いものとなる。
【0010】
従って、第1の発明によると、刈取り部が刈取り作業高さ範囲に下降された時だけ機能する小型のものに構成することができる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記弾性バランス機構を初期弾性変形状態で装備してあるものである。
【0012】
上記構成によると、弾性バランス機構を自由弾性状態で構成する場合に比べて弾性変位方向に短くコンパクトなものとなる。
【0013】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、
前記刈取り部を、その基端側の縦向き支点周りに横側方に旋回揺動可能に構成してあるものである。
【0014】
上記構成によると、刈取り部をメンテンスのために旋回開放させる場合、刈取り部(又は機体)との連結解除操作を要することなく刈取り部を移動させることができ、操作性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2に、自脱型のコンバインが示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に2条刈り仕様の刈取り部3が昇降および横移動自在に連結されるとともに、走行機体2に運転部4、脱穀装置5、および、穀粒回収タンク6、等が搭載された構造となっている。
【0016】
刈取り部3には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す左右一対の引起し装置7、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置8、刈取り穀稈を後方に掻き込む左右一対の補助搬送ベルト9、刈取り穀稈の株元を掻き込み合流す左右一対の回転パッカ10、刈取り穀稈を後方上方に向けて搬送する供給搬送装置11、等を備えて構成されており、刈取り部3全体が後部基端の横向き支点Pを中心に上下揺動自在に支持されるとともに、油圧シリンダ12で昇降駆動されるようになっている。
【0017】
前記供給搬送装置11は、株元挟持搬送機構13と穂先係止搬送機構14とから構成されており、供給搬送装置11全体を前記横向き支点Pを中心に上下揺動調節することで、刈取り穀稈に対する挟持位置を上下に変更して、脱穀装置4の横外側に備えられたフィードチェーン15への穀稈受渡し位置を稈長方向に変更調節する扱き深さ調節機能が備えられている。なお、供給搬送装置11は刈取り穀稈の稈長検出に基づいて図示されない駆動機構によって上下揺動駆動され、稈長にかかわらず脱穀装置5に挿入される穀稈長さを一定に維持する自動扱深さ制御が行われるようになっている。
【0018】
刈取り部3には、引起し装置7、刈取り装置8、補助搬送ベルト9、回転パッカ10、等を支持する角パイプ材からなる刈取り部フレーム17が前下がり傾斜姿勢で備えられており、この刈取り部フレーム17の後端基部が、走行機体2の前端部に配備された基台18の上部に前記横向き支点Pを中心として上下揺動可能に連結支持されている。前記油圧シリンダ12はプランジャ式の単動型シリンダが使用されており、その伸長作動によって刈取り部3が駆動上昇され、自由短縮作動によって刈取り部3が自重下降されるようになっている。
【0019】
図5,6に示すように、前記刈取りフレーム17の基部には前記横向き支点Pと同心の筒状に構成された横向き基端ボス部17aが備えられており、この横向き基端ボス部17aに左右に貫通されたカウンター軸19が、前記基台18の上部に配備された左右一対の軸受けブラケット21,22を介して回転自在に支架されている。なお、以後の説明における左右方向の呼称は機体に対する方向を示しており、図5,6の正面図では図上での左右方向と説明の呼称とが逆になる。
【0020】
前記カウンター軸19の右端には入力プーリ23が取り付けられており、走行用のミッションケース24に備えられたPTO軸(図示せず)とカウンター軸19とが、ベルトテンション式の刈取りクラッチを介してベルト連動されている。また、前記基端ボス部17aからは前方上方に向けて丸パイプ材からなる伝動ケース25が延出され、この伝動ケース25に挿通した伝動軸26とカウンター軸19とが基端ボス部17a内でベベルギヤ連動され、カウンター軸19から伝動軸26に伝達された動力で引起し装置7、刈取り装置8、補助搬送ベルト9、回転パッカ10が駆動されるようになっている。
【0021】
図4に示すように、左側の軸受けブラケット21から左外方に貫通突出されたカウンター軸19には、カウンター軸軸心周り、つまり、横向き支点P周りに回動可能にベベルギヤケース27が装備されるとともに、カウンター軸19にベベルギヤ連動された伝動軸28がベべルギヤケース27から斜め上方に延出され、この伝動軸28から取り出された動力で前記供給搬送装置11の株元挟持搬送機構13および穂先係止搬送機構14が駆動されるようになっている。
【0022】
なお、カウンター軸19に刈取り部駆動用動力を伝達する図示されない前記PTO軸は前進走行速度と同調した速度で駆動されるものであり、これによって、刈取り部3の各機構が走行速度と同調した速度で駆動されるようになっている。
【0023】
上記のように構成された刈取り部3は横移動および旋回開放可能に支持されており、以下にそれらの構造を図5〜図8に基づいて詳細に説明する。
【0024】
前記基台18の左側箇所には縦向き支点Xを中心に旋回可能な鋳造製の旋回ブラケット31が配備され、この旋回ブラケット31の上面に左側の軸受けブラケット21が連結固定されるとともに、旋回ブラケット31から右方向(機体内方)に向けて板金構造の旋回アーム32が延出されている。この旋回アーム32から更に右方向に突出された延長支持部32aに右側の軸受けブラケット22が支持され、この軸受けブラケット22が主フレーム16に立設した右側基台18aの上面にボルト33によって脱着自在に連結されている。
【0025】
前記旋回アーム32には刈取り部横移動機構34が装着されている。この刈取り部横移動機構34には、旋回アーム32に横向き支点a周りに揺動可能に支持された矩形ループ状の揺動支持枠35、この揺動支持枠35の左右アーム間に亘って横架支承されたネジ軸36、ネジ軸36に螺合装着された可動片37、揺動支持枠35に装備されたネジ軸駆動用の電動モータ38、等が備えられており、前記揺動支持枠35の下端横杆部35aに備えた連結片35bと前記油圧シリンダ12のプランジャ12aとが挿抜可能な連結ピン39で連結されている。なお、図14に示すように、連結ピン39には連結板39aと取っ手39bが備えられており、通常は連結板39aをボルト40によって連結片35bに締付け固定することでプランジャ12aとの連結状態が維持され、ボルト40を外して連結ピン39を抜き取ることで刈取り部横移動機構34とプランジャ12aとの連結が解除されるようになっている。
【0026】
刈取りフレーム部17の横向き基端ボス部17aは左右の軸受けブラケット21,22の間においてカウンター軸19に沿って左右にスライド移動可能に支持されるとともに、横向き支点P周りに自重下降揺動可能な刈取り部フレーム17が前記揺動支持枠35の下端横杆部35aに受け止め支持されており、油圧シリンダ12によって揺動支持枠35が横向き支点a周りに揺動されることで、この揺動支持枠35に受け止め支持された刈取り部3が横向き支点P周りに上下揺動されるようになっている。揺動支持枠35による刈取り部フレーム受止め箇所の上方において刈取り部フレーム17が前記可動片37に荷重を掛けることなく上方から係合されており、ネジ軸36が電動モータ38によって回転駆動されて可動片37が左右にネジ送り移動されることによって刈取り部3全体が一定ストロークで横移動されるようになっている。なお、揺動支持枠35には刈取り部フレーム17の上面近接位置を横切る規制ロッド41が横架固定されており、刈取り部フレーム17が揺動支持枠35の下端横杆部35aから浮き上がって可動片37から外れることが阻止されている。
【0027】
横移動可能な刈取り部3は、基本的には左右のストロークエンドのいずれか一方に移動されて使用されるものであり、通常の刈取り形態である回り刈り作業時には、刈取り部3を左側ストロークエンド(図6参照)まで移動させて、刈取り部3の左端を左側クローラ走行装置1の踏み代より左側に張り出した状態とする。また、圃場の中央を突っ切って刈取り収穫する中割り作業時には、刈取り部3を右側ストロークエンド(図5参照)に移動させて機体横幅内に位置させる。また、圃場外での移動走行、トラック荷台へ搭載しての移動、あるいは、ガレージへの格納、等の非作業時にも刈取り部3を右側ストロークエンドに移動させる。
【0028】
なお、図4に示すように、刈取り部3に装備された供給搬送装置11の前端部は、横向き支点Pを中心とする円弧状に形成されて立設固定された案内杆42に上下スライド可能に係合案内されて、供給搬送装置11が上下揺動して扱き深さ調節作動できるように構成されるとともに、刈取り部3が横移動されると供給搬送装置11が基端の伝動軸28の軸心b周りに相対的に横揺動されるようになっている。つまり、刈取り部3が横移動されると、案内杆42に前端部を係合支持された供給搬送装置11の前端部は常に引起し装置7の後方位置に在るよう追従移動するが、供給搬送装置11の後端部はフィードチェーン15の始端近傍位置に在り、これによって、刈取り部3の横移動位置にかかわらず引起し装置7から供給搬送装置11の始端部への穀稈受け渡し、および、供給搬送装置11の終端部からフィードチェーン15の始端部への穀稈受け渡しがそれぞれ円滑に行われるようになっている。
【0029】
刈取り部3の左外側部には、枕脱穀作業において手刈りした穀稈を仮置きする穀稈供給台45が装備されている。この穀稈供給台45は横移動可能に支持されており、詳細な構造の説明は省略するが、刈取り部3の横移動にかかわらずフィードチェーン15の始端部に対して穀稈供給台45が常に横方向一定位置に保持されるようになっている。
【0030】
このコンバインにおいては、通常の刈取り収穫作業において刈取り部3を地面高さに応じて追従昇降させて刈高さを一定にするために以下のような構造が備えられている。
【0031】
つまり、図9に示すように、刈取り部3が刈取り作業高さ域まで自重下降されると、前記刈取り部横移動機構34における揺動支持枠35の下端横杆部35aが、走行機体2の前端部に装着された弾性バランス機構50に弾性的に接当支持されるようになっている。
【0032】
この弾性バランス機構50は、図11に示すように、間隔変更可能に対向された前後一対のバネ受け部材51,52、両バネ受け部材51,52の間に初期圧縮されて挟持されたコイルバネ53、および、両バネ受け部材51,52の間隔拡大を阻止するよう両バネ受け部材51,52の中心に挿通装着された支持ロッド54とで独立した一つのユニット状に構成されている。前記支持ロッド54は前端を頭部としたボルト材で構成されており、この支持ロッド54を前方からねじ込み調節し、両バネ受け部51,52の最大間隔を調整することで、挟持されたコイルバ53の初期圧縮状態を調節することが可能となっている。各バネ受け部材51,52はコイルバネ53を位置決め外嵌するカップ状にプレス形成されるとともに、それぞれの外周部の対角位置には一対の支持突起51a,52aが屈曲延出され、各支持突起51a,52aに取付け孔55,56が形成されている。
【0033】
他方、走行機体2における機体フレーム16の前部には、前記弾性バランス機構50を装着するための2本の支持ロッド57がブラケット58を介して前向き片持ち状に固設されている。この支持ロッド57は前記取付け孔55,56のピッチに対応した間隔をもって配備されており、ユニット状の弾性バランス機構50を、前後の支持突起51a,52aにおける取付け孔55,56を介して支持ロッド57に前方から挿嵌することで、弾性バランス機構50が走行機体2の前部にやゝ前上りの前向き片持ち状に支持されるようになっている。
【0034】
前方のバネ受け部材51の前面が、刈取り部3に備えられた前記揺動支持枠35の下端横杆部35aを接当支持する受止め部sとして機能するようになっている。
【0035】
弾性バランス機構50の初期圧縮荷重は刈取り部3の重量より幾分小さい値となるように上記支持ロッド54の操作によって調整されており、刈取り部を接当支持して圧縮変形した弾性バランス機構50の弾性復元力と刈取り部3の重量とが平衡した状態において、走行地面Gよりも低い位置で、かつ、刈取り部3の機械的な下降限界mよりも高い位置n(図15参照)に在るように設定され、刈取り部3の前方下部に配備した橇状の接地体59が接地して受止められた状態では、接地体59が比較的小さい接地圧(例えば5〜25kgf)で地面に接地するように設定される。
【0036】
このように、刈取り部3を自重下降させて軽く接地支持させて刈取り走行を行うことで、圃場に起伏があったり、走行機体2の前後傾斜姿勢が変化しても、刈取り部3が圃場面に接地追従して刈り高さの安定が図られるのである。なお、前記弾性バランス機構50におけるコイルバネ53の周囲にはゴム製の泥除けカバー61が巻き付け装着されて、弾性バランス機構50への泥などの異物の付着および侵入が防止されている。
【0037】
図11に示すように、弾性バランス機構50とブラケット58との間に任意の厚さのシム板60を介在することで弾性バランス機構50における受け止め部sの位置を前後に変更調節することができる。この調節によって刈取り部3が接地した状態でのコイルバネ53の圧縮変形量を変更して接地体59の接地圧を圃場の硬軟に応じて設定調節することができる。なお、図12に示すように、シム板60は両支持ロッド57に係止されてその取付け姿勢が保持されている。
【0038】
このように、刈取り部3を自重下降させて軽く接地支持させて刈取り走行を行うことで、圃場に起伏があったり、走行機体2の前後傾斜姿勢が変化しても、刈取り部3が圃場面に接地追従して一定の刈り高さが維持されるのである。なお、前記弾性バランス機構50におけるコイルバネ53の周囲にはゴム製の泥除けカバー61が巻き付け装着されて、弾性バランス機構50への泥などの異物の付着および侵入が防止されている。
【0039】
図15に示すように、刈取り部昇降用の油圧シリンダ12は電磁制御弁80によって作動制御されるものであり、電磁制御弁80を制御する制御装置87には、運転部4に備えられた操作レバー81の操作位置を検知する多接点式のスイッチ機構82、操作レバー82の握り部あるいは図示されない操縦パネルに装備された押しボタン式の上昇スイッチ83と下降スイッチ84、操縦パネルに配備された接地刈りモード切換えスイッチ85、および、刈取り部3が所定の上限位置まで上昇されたことを検知する上限スイッチ86が接続されている。
【0040】
操作レバー82は中立復帰式に構成されており、「中立」、「上昇」、「下降」の各操作位置に操作されている間、電磁制御弁80が対応する位置に切換えられる。接地刈りモード切換えスイッチ85をオン操作すると電磁制御弁80は「下降」に維持され、自重下降状態(フローティング)の刈取り部3は上記のように接地追従する接地刈りモードとなる。この接地刈りモードでの刈取り収穫作業において、機体が一行程の刈取り走行を終えて枕地に至ると、上昇スイッチ83を1回押し操作することで接地刈りモードが中断されて電磁制御弁80が「上昇」に切換えられる。刈取り部3が上昇されて上限に至ったことが上限スイッチ86で検知されると電磁制御弁80が「中立」に切換え保持され、刈取り部3が上限位置に保持され、この上昇状態で枕地走行や機体方向転換を行う。次の刈取り開始位置において下降スイッチ84を1回押し操作することで接地刈りモードに復帰され、電磁制御弁80は再び「下降」に維持されて刈取り部3が接地追従する。
【0041】
接地追従させないで任意の刈り高さでの刈取り収穫を行う場合には、接地刈りモード切換えスイッチ85をオフ操作して、操作レバー81によって刈取り部3を任意の高さに維持すればよい。
【0042】
上記のように構成された刈取り部3は、点検整備のために左横外側方に旋回揺動することが可能となっている。つまり、図7に示すように、右側の軸受けブラケット22および旋回アーム32の遊端部を基台18aに連結しているボルト33を外すと、旋回アーム32と旋回ブラケット31とが一体に縦向き支点X周りに旋回可能となり、この旋回アーム32に支持されている刈取り部3が刈取り部横移動機構34と共に旋回可能となる。
【0043】
図5,図6に示すように、軸受けブラケット21には操作ロッド65が横スライド可能に挿通支持され、この操作ロッド65の右側貫通端部に下降ロック用のブロック部材66が連結されている。操作ロッド65の左側端部は延出されて操作ノブ67が取り付けられており、機体横外方から操作ロッド65を押し引き操作できるようになっている。なお、通常は操作ロッド65が機体外方に引き出し操作されて、ブロック部材66は旋回ブラケット31の上面端部より左側に寄ったロック解除位置ur(図5参照)に載置保持されている。
【0044】
刈取り部3を図3(イ)に示す通常の収穫用位置から、図3(ロ)に示すように、機体の左横外側方に旋回開放するには、先ず、刈取り部3を所定高さ以上に上昇させた状態で左側ストロークエンドまで横移動させる。次に、操作ロッド65を機体内方に移動限界まで押し込み操作してブロック部材66を前記ロック解除位置urから旋回ブラケット31の端部近くの下降ロック位置r(図6参照)に移動させる。次に、刈取り部3を下降(自重下降)させて、刈取り部フレーム17の基部に連結固定した接当金具68と旋回ブラケット31の上面との間にブロック部材66を挟持して、それ以上に刈取り部3が下降されるのを阻止する(図13参照)。このようにブロック部材66を介して下降が阻止された状態では刈取り部3は地上から少し浮き上がった高さで保持されることになる。
【0045】
なお、前記接当金具68には横向の支点y周りに揺動可能な牽制金具69が枢支連結されており、接当金具68をブロック部材66の上面に載せ掛けた状態において牽制金具69を振り下げ揺動操作して、図13中の仮想線で示すように、機体右方への移動が阻止されたブロック部材66の左外側に重複係合させることで、刈取り部3が機体右側に不用意に横移動されることが阻止されるようになっている。
【0046】
次に、刈取り部フレーム7と油圧シリンダ12のプランジャ12aとを連結していた連結ピン39を引き抜いてその連結を解除するとともに、右側の軸受けブラケット22および旋回アーム32の遊端部を基台8に連結していたボルト33を外す。これによって刈取り部3を地面から少し浮かした状態のまま縦向き支点X周りに揺動開放することができる。
【0047】
なお、刈取り部3が左側ストロークエンドまで移動されていない状態では、前記接当金具68が旋回ブラケット31から右横方向に外れていて、上記のようにロック部材66を介して下降ロックを行って刈取り部3を地面から浮上保持しておくことができないので、上記のように油圧シリンダ12との連結を外して刈取り部3を旋回開放することができないものとなる。
【0048】
〔他の実施例〕
【0049】
(1)刈取り部3が重量の大きい3条以上の刈取り条数の仕様の場合、弾性バランス機構50を、コイルバネを左右に2組並列配備したものや、コイルバネを内外2重に配備して弾発力の大きいものにすればよい。又、弾性バランス機構50を刈取り部3に片持ち状に支持させて、弾性バランス機構50と機体フレーム16の前部とが接当するように構成してもよい。
【0050】
(2)上記実施例では刈取り部3を旋回開放する仕様のものを例示したが、刈取り部3の基端を機体に脱着自在に支持して、メンテナンス時には刈取り部3を前方に離反移動させるよう構成した仕様のものに本発明を適用することもできる。
【0051】
(3)図15に示す、スイッチ機構82、上昇スイッチ83、下降スイッチ84、接地刈りモード切換えスイッチ85及び上限スイッチ86を廃止し、電磁制御弁80を機械式に構成して、操作レバー81と制御弁80とを機械的に連係してもよい。
このように構成すると、操作レバー80を下降位置に操作して刈取り部3を下降させた後、操作レバー80を中立位置に操作して刈取り部3を停止させると、その位置が刈取り部3の接地追従の下限となる。この後、操作レバー80を下降位置に操作すれば、下限を下降限界mに近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】自脱型コンバインの全体側面図
【図2】自脱型コンバインの全体平面図
【図3】刈取り部の旋回開放作動を示す平面図
【図4】刈取り部の基部を示す側面図
【図5】旋回操作不能位置に横移動された刈取り部の基部を示す正面図
【図6】旋回操作可能位置に横移動された刈取り部の基部を示す正面図
【図7】刈取り部の基部を示す平面図
【図8】刈取り部の横移動構造を示す側面図
【図9】刈取り部の弾性バランス支持構造を示す側面図
【図10】弾性バランス機構の正面図
【図11】弾性バランス機構の横断平面図
【図12】弾性バランス機構の支持構造を示す正面図
【図13】刈取り部の浮上受止め状態を示す側面図
【図14】油圧シリンダ連結部の縦断正面図
【図15】油圧シリンダ駆動系のブロック図
【符号の説明】
【0053】
2 走行機体
3 刈取り部
16 機体フレーム
50 弾性バランス機構
m 下降限界
n 位置
X 縦向き支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に上下揺動可能に配備した刈取り部を接地追従して昇降させるよう構成したコンバインの刈取り部昇降構造であって、
前記刈取り部を弾性的に受け止め支持する弾性バランス機構を装備し、刈取り作業域に下降された刈取り部を前記弾性バランス機構で分離可能に接当支持するよう構成し、
刈取り部を接当支持して変形した弾性バランス機構の弾性復元力と刈取り部の重量とが平衡した状態において、刈取り部が走行地面よりも低く、かつ、機械的な下降限界よりも高い位置にあるよう設定してあることを特徴とするコンバインの刈取り部昇降構造。
【請求項2】
前記弾性バランス機構を初期弾性変形状態で装備してある請求項1記載のコンバインの刈取り部昇降構造。
【請求項3】
前記刈取り部を、その基端側の縦向き支点周りに横側方に旋回揺動可能に構成してある請求項1または2記載のコンバインの刈取り部昇降構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−89418(P2007−89418A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280140(P2005−280140)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】