説明

コンバインの安全装置

【課題】コンバインと補助作業者の位置を平面的な地図上に表示することでコンバインと補助作業者の距離を認識し易くして作業の安全性を向上させる。
【解決手段】コンバイン11に備えたGPS受信装置2の地図情報で自機11の位置をディプレイ10の平面地図上に表示すると共に、コンバイン11の周辺の補助作業者16を感知してその補助作業者16までの距離を計測する計測手段Aからの情報で前記ディスプレイ10の平面地図上に補助作業者16を重ねて表示し、コンバイン11と補助作業者16が所定距離に接近すると警報すべくしてコンバインの安全装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの収穫作業中において、周辺に居る作業補助者の位置をコンバインのオペレータに知らせて注意を促がすと共に補助作業者がコンバインに巻き込まれて危険に陥ることを防止する安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車等において、超音波センサのような物体検出器を車両の左右や前後に取り付けて、車両の周辺に物体が位置するときは警報音により運転者に注意を促がす安全システムが存在する。また、CCDカメラのような撮像装置を車両に取り付けて運転者の死角となる範囲を撮影した映像を車内の表示装置で表示することにより、運転者の死角を無くすシステムも存在する。
【0003】
例えば、特開2006−282465号公報には、車外の人体を検出する人体検出手段を設けて、人体を検出するとその映像を優先的にディスプレイに表示することで安全運転を図る技術が記載されている。
【特許文献1】特開2006−282465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の人体検出手段で検出した映像をディスプレイに表示するシステムをコンバインに利用することが考えられるが、ディスプレイに表示される立体的な映像は、距離感がつかみ難い。このために、コンバイの収穫作業中に近くで補助作業をしている作業者が危険な範囲に近づいているかの判断が遅れる場合があることが考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、コンバインと補助作業者の位置を平面的な地図上に表示することでコンバインと補助作業者の距離を認識し易くして危険回避を図れるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、コンバイン(11)に備えたGPS受信装置(2)の地図情報で自機(11)の位置をディプレイ(10)の平面地図上に表示すると共に、コンバイン(11)の周辺の補助作業者(16)を感知してその補助作業者(16)までの距離を計測する計測手段(A)からの情報で前記ディスプレイ(10)の平面地図上に補助作業者(16)を重ねて表示し、コンバイン(11)と補助作業者(16)が所定距離に接近すると警報する構成としたことを特徴とするコンバインの安全装置とした。
【0007】
この構成によると、コンバイン11機体と近くに居る補助作業者16の距離がディプレイ10の平面地図で明らかになり、補助作業者16がコンバイン11に近づき過ぎると警報でオペレータに報知する。
【0008】
請求項2の発明は、コンバイン(11)の近くで補助作業を行う補助作業者(16)に送信器(40)を持たせ、この送信器(40)からの信号をコンバイン(11)に設ける受信器(41)で受信し、補助作業者(16)がコンバイン(11)に近づき過ぎた場合にコンバイン(11)のオペレータに警報する構成としたことを特徴とするコンバインの安全装置とした。
【0009】
この構成によると、補助作業者16が持っている送信器40の信号をコンバイン11側の受信器41で受信してコンバイン11への接近を判断する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、コンバイン11と補助作業者16の距離がディプレイ10の平面地図上で明確に表示されるので、確実に補助作業者16の安全を確保できる。
また、請求項2の発明によると、コンバイン11と補助作業者16との距離が、送信器40と受信器41の簡単な構成で確実に計測されて、確実に補助作業者16の安全を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明を具備したコンバインの全体側面図である。
コンバイン11は、機体2の下部に左右一対のクローラ走行装置4,5を具備し、その機体2上に脱穀装置6を搭載している。この脱穀装置6の前側で機体2の最前部に刈取装置1を設けている。この刈取装置1は刈取り作業中は地面近くに降下させているが、路上走行時には上昇させて地面から離した状態にする。脱穀装置6の右側部前側に運転席7を設け、その後側にグレンタンク9を設け、脱穀装置6の上側に穀粒排出オーガ8を起伏及び伸縮するように設けている。
【0012】
米や麦などの穀物を収穫する場合は、オペレータが運転席7に乗って、刈取装置1を地面近くに位置させてクローラ走行装置4,5を駆動して前進し、穀稈を刈取装置1で刈り取って脱穀装置6へ送り穀粒を脱穀してグレンタンク8に溜める。グレンタンク8の穀粒が満杯になれば、穀稈の刈り取りを中断して道路端に止めているトラックに近づき、グレンタンク8内の穀粒を穀粒排出オーガ8でトラック上の穀粒タンクへ排出する。
【0013】
コンバイン11のグレンタンク9の上面には測位衛星電波を受けるGPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信装置2を設け、このGPS受信装置2で受けた地上位置情報を運転席7の前側に設けるパネル3のディスプレイ10(図3参照)に自機11の平面地図情報として表示する。このディスプレイ10には、地図情報が登録されていて圃場の区画17も表示されている。また、コンバイン11の前後と左右側部には赤外線センサ12,13,14,15からなる計測手段Aを設けて、周辺で作業をしている補助作業者16の動きを監視し、この補助作業者16の位置もディスプレイ10に表示するようにしている。
【0014】
なお、補助作業者16の位置は、コンバイン11に受信器41を備え、補助作業者16が持っている携帯電話等の送信器40の発信信号を受信して自機11に対する方向と距離を把握するようにしても良い。
【0015】
コンバイン11の機体と補助作業者16の距離は、常に警戒管理して、所定距離以内に補助作業者16が近づくとディスプレイ10に設ける警告灯18を点滅したり、音声で警告したり、運転席7を振動させたり、さらには、コンバイン11の駆動を停止したりして、オペレータに注意を促すようにしている。
【0016】
携帯電話で補助作業者16を認識する場合は、携帯電話の番号で補助作業者16を認識し、その番号以外の人間がコンバイン11に近づいてくると、より遠い警戒範囲で警報を出すようにすることで安全性を高められる。
【0017】
図4から図7に示す構成は、運転席7の周りをキャビン20で覆ったコンバイン11を示している。
コンバイン11の機体前方と後方へ向けて赤外線カメラ21,23を設け、刈取装置1から脱穀装置6への穀稈引継部にも赤外線カメラ22を設け、これらの赤外線カメラ21,22,23で写したフロント映像とバック映像29及び引継部映像30をキャビン20の天井に設置したプロジェクタ25でフロントガラス24に投射する。投射する映像の切り換えは切換ボタン28で切換えるようにしている。
【0018】
このような赤外線カメラ21,22,23の映像は、特に夜間の収穫作業において有効である。
さらに、プロジェクタ25からは、従来のフロントパネルに表示していた作業スピードやエンジンオイルの状況を示す走行パネル26や刈取装置1や脱穀装置6の作動状況を示す作業パネル27をフロントガラス24に投射するようにして、従来のフロントパネルを無くしてキャビン20内を広く使えるようにしている。なお、走行パネル26と作業パネル27は、キャビン20の左側或いは右側のサイドガラスに投射するようにしても良い。
【0019】
図8は、コンバイン11の走行制御に関する説明図で、コンバインを移動する場合には刈取装置1を上昇させてこの刈取装置1が地面に当たらないようにするが、畦越えの場合やコンバインをトラックに乗せる場合に機体が大きく傾いて転倒の危険性があるので、前後傾斜センサ31を設けて、後傾角が一定値(例えば、15°)を超えると上昇していた刈取装置1を地面近く(例えば、5cm)まで降下させ、後傾角が小さくなるにしたがって刈取装置1を元の上昇位置に戻すように自動制御する。これによって、畦越え時に機体が大きく動くことを防ぐことが出来る。
【0020】
また、前後傾斜センサ31と機体の前後速度センサを設けて、機体が25°以上傾きかつ前後速度センサが進行方向と逆の移動を検出すると刈取装置1を降下させて地面に接地させて滑り落ちを防止するようにも出来る。
【0021】
図9は、左右傾斜角センサ33を設け、機体が例えば左に30°以上傾けば、脱穀装置6の側部に設けるフィードチェンケース32を自動的に横に張り出して固定して、機体の転倒を防止する構成である。
【0022】
上記のほかに、クローラ走行装置4,5の前後位置に回転方向が横方向の車輪を、伸縮可能に支持して機体が前後に傾いた場合に傾いた側の車輪を自動的に伸ばして傾きが大きくなるのを防いだり、左右に張り出し可能に支持して機体が傾いた側の車輪を自動的に張り出して傾きが大きくなるのを防いだりすることも出来る。
【0023】
コンバイン11はベルト伝動で動力の伝動しているので、ベルトが駆動している時にベルトカバーを外すと危険である。そのため、ベルトカバーの着脱を感知するセンサを設け、ベルとカバーが外されるとエンジンの駆動が停止され再起動出来ないようにしている。また、ベルト伝動部を監視する光電センサを設けて、手等の人体を感知するとエンジンの駆動が停止され再起動出来ないようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明実施例のコンバインの全体側面図
【図2】本発明実施例のコンバインの全体平面図
【図3】一部の拡大正面図
【図4】別実施例の一部側面図
【図5】別実施例の拡大正面図
【図6】別実施例の全体側面図
【図7】別実施例の拡大正面図
【図8】別実施例の全体側面図
【図9】別実施例の全体正面図
【符号の説明】
【0025】
A 計測手段(赤外線センサ12,13,14,15)
2 GPS受信装置
10 ディスプレイ
11 コンバイン
16 補助作業者
40 送信器
41 受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバイン(11)に備えたGPS受信装置(2)の地図情報で自機(11)の位置をディプレイ(10)の平面地図上に表示すると共に、コンバイン(11)の周辺の補助作業者(16)を感知してその補助作業者(16)までの距離を計測する計測手段(A)からの情報で前記ディスプレイ(10)の平面地図上に補助作業者(16)を重ねて表示し、コンバイン(11)と補助作業者(16)が所定距離に接近すると警報する構成としたことを特徴とするコンバインの安全装置。
【請求項2】
コンバイン(11)の近くで補助作業を行う補助作業者(16)に送信器(40)を持たせ、この送信器(40)からの信号をコンバイン(11)に設ける受信器(41)で受信し、補助作業者(16)がコンバイン(11)に近づき過ぎた場合にコンバイン(11)のオペレータに警報する構成としたことを特徴とするコンバインの安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−106197(P2009−106197A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281966(P2007−281966)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】