説明

コンバインの袋詰め作業部

【課題】デッキへの乗降が容易にでき、穀粒の袋詰め作業の作業性を向上できるコンバインの袋詰め作業部を実現する。
【解決手段】デッキ8,40の上方に、袋詰め用ホッパー20の前部から機体外方側に延出され機体外方側の端部から後方に延出された前部補助具50Fと、袋詰め用ホッパー20の後部から機体外方側に延出され機体外方側の端部から前方に延出された後部補助具50Rとを備え、前部及び後部補助具50F,50Rを、機体横外方側に張り出した使用姿勢と、機体内方側に格納した格納姿勢とに姿勢変更可能に構成すると共に、前部補助具50Fの後端部と後部補助具50Rの前端部との間に、作業者が通過可能な通路Wを形成して、コンバインの袋詰め作業部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒を貯留する袋詰め用ホッパーと、袋詰め用ホッパーの下方に位置するデッキとを備えたコンバインの袋詰め作業部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、前方支柱(特許文献1の図3の9)の上部に連結された支持部材(特許文献1の図3の12)に、機体内外に姿勢変更自在な背もたれ(特許文献1の図3の19)を備え、機体横外方側に延出されたデッキ(特許文献1の図3の16)に乗った作業者が下方へ揺動した背もたれを使って体勢を安定させながら、ホッパー(特許文献1の図3の2)に貯留された穀粒の袋詰め作業ができるように構成されたコンバインの穀粒回収装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】実公平6−31878号公報(図1〜図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコンバインの穀粒回収装置では、背もたれがホッパーの前端部からホッパーの前後中間位置付近に延出されており、ホッパーの前後中間位置付近からホッパーの後端部には背もたれが設けられていなかった。その結果、作業者がデッキの後部で穀粒の袋詰め作業を行う場合には背もたれを使って体勢を安定させることができず、デッキの後部での穀粒の袋詰め作業の作業性が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1の背もたれの機体前後方向に延出された部分をデッキの後部にまで延出して、デッキの後部で背もたれを使って体勢を安定させることができるように構成することが考えられる。しかし、特許文献1の背もたれの機体前後方向に延出された部分をデッキの後部にまで延出すると、例えば複数の作業者がデッキの上に乗って穀粒の袋詰め作業を行う場合に、デッキの前部で穀粒の袋詰め作業を行う作業者は、デッキの上を前後に行き来してデッキの後部から乗降する必要がある。その結果、デッキへの乗降がし難くなって、穀粒の袋詰め作業の作業性が悪くなるおそれがある。
【0006】
また、デッキの前部で穀粒の袋詰め作業を行う作業者がデッキに乗降する際には、デッキの後部で穀粒の袋詰め作業を行う作業者が穀粒の袋詰め作業を中断してデッキから降りて、デッキの前部で穀粒の袋詰め作業を行う作業者の移動する通路を確保する必要がある。その結果、デッキの後部で穀粒の袋詰め作業を行う作業者は穀粒の袋詰め作業を連続的に行うことができず、穀粒の袋詰め作業の作業性が悪くなるおそれがある。
本発明は、デッキへの乗降が容易にでき、穀粒の袋詰め作業の作業性を向上できるコンバインの袋詰め作業部を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、コンバインの袋詰め作業部を、次のように構成することにある。
穀粒を貯留する袋詰め用ホッパーと、前記袋詰め用ホッパーの下方に位置するデッキとを備えると共に、
前記デッキの上方に、前記袋詰め用ホッパーの前部から機体外方側に延出され機体外方側の端部から後方に延出された前部補助具と、前記袋詰め用ホッパーの後部から機体外方側に延出され機体外方側の端部から前方に延出された後部補助具とを備え、
前記前部及び後部補助具を、機体横外方側に張り出した使用姿勢と、機体内方側に格納した格納姿勢とに姿勢変更可能に構成すると共に、
前記前部補助具の後端部と前記後部補助具の前端部との間に、作業者が通過可能な通路を形成する。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、作業者がデッキの前部で穀粒の袋詰め作業を行う場合には、使用姿勢での前部補助具を使って体勢を安定させることができ、作業者がデッキの後部で穀粒の袋詰め作業を行う場合には、使用姿勢での後部補助具を使って体勢を安定させることができる(前部又は後部補助具を握って体勢を安定させることができると共に、前部又は後部補助具にもたれかかって体勢を安定させることができる)。その結果、デッキの前部及び後部で、前部及び後部補助具を使って体勢を安定させながら、穀粒の袋詰め作業を行うことができる。
【0009】
本発明の第1特徴によると、デッキで穀粒の袋詰め作業を行う作業者は、前部補助具の後端部と後部補助具の前端部との間に形成された通路を通ってデッキに乗降することができる。その結果、例えばデッキの後部(又は前部)から乗降する場合に比べ、穀粒の袋詰め作業を行う位置に近い位置から迅速に乗降することができ、デッキへの乗降がし易くなる。また、例えばデッキの前部(又は後部)で穀粒の袋詰め作業を行う作業者がデッキに乗降する際に、デッキの後部(又は前部)で穀粒の袋詰め作業を行う作業者が作業を中断してデッキから降りなくてもよくなって、デッキの後部(又は前部)で穀粒の袋詰め作業を行う作業者が連続的に穀粒の袋詰め作業を行うことができる。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、穀粒の袋詰め作業の作業性を向上させることができ、コンバインによる収穫作業の作業性を向上できる。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のコンバインの袋詰め作業部において、次のように構成することにある。
前記前部補助具と前記後部補助具とを、それぞれ独立して姿勢変更可能に構成する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、例えばデッキの前部で穀粒の袋詰め作業を行う場合には、前部補助具のみを使用姿勢に姿勢変更して穀粒の袋詰め作業を行うことができ、デッキの後部で穀粒の袋詰め作業を行う場合には、後部補助具のみを使用姿勢に姿勢変更して穀粒の袋詰め作業を行うことができる。その結果、穀粒の袋詰め作業の作業形態に応じて前部及び後部補助具を使い分けることができ、前部及び後部補助具の使い勝手をよくすることができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、穀粒の袋詰め作業の作業性を更に向上させることができ、コンバインによる収穫作業の作業性を更に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔普通型コンバインの全体構成〕
図1〜図3に基づいて、コンバインの一例である普通型コンバインの全体構成について説明する。図1〜図3は、コンバインの全体左側面図、全体右側面図及び全体平面図をそれぞれ示す。図1〜図3に示すように、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の上部に、軸流型の脱穀装置3及び穀粒回収部4が左右に並列して配備されており、穀粒回収部4の前方に運転部5が配備されている。
【0015】
脱穀装置3の前部には支点X周りに上下揺動自在に刈取り穀稈搬送用のフィーダ6が連結され、このフィーダ6の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取り部7が連結されている。
【0016】
刈取り部7は、左右一対の分草フレーム11に亘って設けられたバリカン型の刈取装置12と、左右一対の分草フレーム11に亘って架設されたオーガ13とを備えて構成されており、刈取装置12により刈り取った穀稈をオーガ13によって左右中央部に横送りしてフィーダ6に供給できるように構成されている。
【0017】
フィーダ6には、巻回張設された左右のチェーン14aに亘って搬送バー14bを横架連結した掻き揚げコンベア14が内装されており、フィーダ6から供給された穀稈をフィーダ6の底面に沿って搬送して、脱穀装置3に供給できるように構成されている。脱穀装置3により脱穀された穀粒は、脱穀装置3と後述する袋詰め用ホッパー20とに亘って設けられた穀粒搬送機構9を介して、袋詰め用ホッパー20に供給されるように構成されている。
【0018】
走行機体2における主デッキ8(デッキに相当)の前部とフィーダ6の下部とに亘って油圧シリンダ15が配設されており、この油圧シリンダ15を伸縮することにより、刈取り部7及びフィーダ6を支点X周りに上下揺動駆動できる。
【0019】
刈取り部7の前部上方に、植立した穀稈を後方に掻き込んで引き上げる掻き込みリール16が装備されている。左右の分草フレーム11の後端部に、支点Y周りに上下揺動自在な左右の支持アーム17が枢支連結されており、この支持アーム17の前部に掻き込みリール16が支持ブラケット18を介して枢支連結されている。
【0020】
分草フレーム11と支持アーム17とに亘って油圧シリンダ19が配設されており、この油圧シリンダ19によって支持アーム17を上下揺動することで掻き込みリール16の掻き込み作用高さを変更することができるとともに、支持ブラケット18を支持アーム17に沿ってスライド調節して掻き込み作用位置を前後に調節することができるように構成されている。
【0021】
〔袋詰め用ホッパー及び支持フレームの詳細構造〕
図4〜図6に基づいて、袋詰め用ホッパー20の詳細構造について説明する。図4は、袋詰め用ホッパー20付近の背面図を示し、図5及び図6は、袋詰め用ホッパー20付近の側面図及び平面図を示す。
【0022】
図4〜図6に示すように、袋詰め用ホッパー20は、平面視が前後に長い長方形状で角柱状の上部ホッパー21と、この上部ホッパー21の下部に位置する四角錐状の前後の下部ホッパー22を溶接成形して構成されており、袋詰め用ホッパー20の上面側は、着脱可能な上面板23で覆われている。
【0023】
下すぼまり状に形成された下部ホッパー22の下部には、下方に開放した穀粒取出口24が形成されており、この穀粒取出口24の下部に、ブラケット25を介してスライド式のシャッター装置26が装着されている。シャッター装置26は、板状のシャッター26Aを袋詰め用ホッパー20の右側から左右方向に押し引きすることで、穀粒取出口24を開放及び閉塞できるように構成されており、穀粒取出口24の下方に穀粒袋Fを装着してシャッター装置26を操作することで、袋詰め用ホッパー20からの穀粒を袋詰めすることができる。
【0024】
シャッター装置26下部の外周部には、ナイロン製の飛散防止カバー27が装着されており、この飛散防止カバー27によって穀粒取出口24から落下した穀粒の飛散を防止できる。
【0025】
袋詰め用ホッパー20の上部ホッパー21の右側面には、内面側から透明なアクリル板により構成されたのぞき窓28が装備されており、こののぞき窓28から袋詰め用ホッパー20の内部に貯留された穀粒の貯留量を目視で確認できるように構成されている。
【0026】
袋詰め用ホッパー20上部の右端部には、背面視での形状が三角形状の切り欠き部20Aが形成されており、後述する補助具50を格納姿勢に姿勢変更した状態で、この切り欠き部20Aによって袋詰め用ホッパー20と補助具50の第2パイプ51Bとの間に所定の隙間が確保されるように構成されている。
【0027】
このように構成することにより、補助具50の第2パイプ51Bを手で握って補助具50を格納姿勢又は使用姿勢から使用姿勢又は格納姿勢に姿勢変更する際に、第2パイプ51Bを無理なく握ることができ、かつ、格納姿勢での補助具50をコンバインの走行等の妨げになり難いように袋詰め用ホッパー20に沿った位置(背面視で格納姿勢での補助具50の第1パイプ51Aが袋詰め用ホッパー20と重なる位置)に位置させることができる。
【0028】
前側の下部ホッパー22と後側の下部ホッパー22とに亘って、前後に長い帯板状のステー29が固着されており、このステー29に照射角度を変更調節可能な作業灯10が取り付けられている。作業灯10には、スイッチ(図示せず)が装着されており、夕方や夜間等にこのスイッチを操作して作業灯10を点灯させ、穀粒の袋詰め作業を行う作業者の手元付近を広角に照らすことで、夕方や夜間等における袋詰め作業の作業性を向上できるように構成されている。
【0029】
クローラ走行装置1の上部に主デッキ8が搭載されており、この主デッキ8のデッキ面8Aに支持フレーム30が締め付け固定されている。支持フレーム30は、袋詰め用ホッパー20の前部を支持する前部支持フレーム30Fと、袋詰め用ホッパー20の後部を支持する後部支持フレーム30Rとによって構成されている。
【0030】
前部及び後部支持フレーム30F,30Rは、上下に長い角パイプ状の2本の縦フレーム31と、左右に長い角パイプ状の横フレーム32とを備えて構成されており、2本の縦フレーム31の上部に横フレーム32が固着されている。2本の縦フレーム31の下端部及び横フレーム32の左側端部には、支持板33が固着されており、この支持板33が主デッキ8のデッキ面8A及び脱穀装置3の右側板3Aに締め付け固定されている。
【0031】
前部支持フレーム30Fの後面側及び後部支持フレーム30Rの前面側には、横断面形状がコ字状のブラケット34が固着されており、この前後のブラケット34に亘って、袋詰め用ホッパー20からの穀粒を袋詰めする穀粒袋Fを支持する袋支持具35が上方から取り付けられている。
【0032】
袋支持具35は、前後に長い丸パイプの両端部を下方側に折り曲げ成形した本体パイプ35Aと、この本体パイプ35Aから右方に延出され少し外方上方に傾けて固着された4つの支持ロッド35Bとによって構成されており、この支持ロッド35Bに穀粒袋Fを装着すると、穀粒袋Fの前後中間位置が袋詰め用ホッパー20の穀粒取出口24の位置に位置するように配設されている。
【0033】
下方に折り曲げ成形された袋支持具35の前後両端部を、前後のブラケット34に上方から装着することで、袋支持具35を前部及び後部支持フレーム30F,30Rに固定することができる。
【0034】
前側の下部ホッパー22の前面側及び後側の下部ホッパー22の後面側には、板材を折り曲げ成形した前後の支持ブラケット36が締め付け固定されており、この前後の支持ブラケット36が前部及び後部支持フレーム30F,30Rの横フレーム32の上面側に締め付け固定されて、袋詰め用ホッパー20が前部及び後部支持フレーム30F,30Rを介して主デッキ8に固定されている。
【0035】
前部及び後部支持フレーム30F,30Rの横フレーム32の右側端部には、プレート37が固着されており、このプレート37に形成された左右向きの穴部に、手摺38が外方側から締め付け固定されている。手摺38は、前後に長い丸パイプの両端部を斜め下方に折り曲げ成形し、その先端部を左右方向にプレス成形した形状に成形されており、プレス成形した先端部に左右向きの取付穴38Aが加工されている。
【0036】
手摺38の先端部に形成した取付穴38Aとプレート37の穴部とに亘ってボルト39を締め付け固定することで、手摺38を前部及び後部支持フレーム30F,30Rに固定できる。手摺38は、前部支持フレーム30Fと後部支持フレーム30Rを連結する連結フレームとして機能するように構成されており、左側の端部が脱穀装置3に固定された前部及び後部支持フレーム30F,30Rの右側部の強度を、手摺38によって確保できるように構成されている。
【0037】
主デッキ8の右側端部には、主デッキ8から右外方側に張り出した作業姿勢と、上方に揺動した非作業姿勢とに姿勢変更自在な補助デッキ40(デッキに相当)が揺動自在に支持されている。補助デッキ40は、作業姿勢での床面40Aが主デッキ8の床面8Aと略水平で主デッキ8の床面8Aと略面一になるように構成されており、非作業姿勢での床面40Aが主デッキ8の床面8Aと略垂直になるように構成されている。
【0038】
補助デッキ40は、作業姿勢に姿勢変更した状態における平面視での形状が、長方形状に形成されており、作業者が補助デッキ40の上で無理なく作業できる広さに設定されている。
【0039】
補助デッキ40は、その前端部及び後端部がヒンジ41を介して主デッキ8の上面側に連結されており、ヒンジ41の左右方向の軸心b周りで所定角度β上下に揺動可能に支持されている。前部及び後部支持フレーム30F,30Rの右側の縦フレーム31には、保持具(図示せず)が装備されており、非作業姿勢に姿勢変更した補助デッキ40をこの保持具に連結することで、補助デッキ40を非作業姿勢で保持できるように構成されている。
【0040】
〔補助具(前部及び後部補助具)の詳細構造〕
図4〜図9に基づいて、補助具50(前部及び後部補助具50F,50R)の詳細構造について説明する。図7及び図8は、後部補助具50Rの取付部の側面図及び背面図をそれぞれ示す。図9は、後部補助具50Rの取付部の斜視図を示す。なお、図7〜図9の説明においては、後部補助具50Rを例にするが、前部補助具50Fの取付部の構造も勝手が異なる以外の他の構成は後部補助具と同様である。
【0041】
図4〜図6に示すように、補助具50は、前部支持フレーム30Fに取り付けられた前部補助具50Fと、後部支持フレーム30Rに取り付けられた後部補助具50Rとを備えて構成されている。前部及び後部補助具50F,50Rは、それぞれ別々に前部及び後部支持フレーム30F,30Rに揺動自在に支持されており、前部及び後部補助具50F,50Rのそれぞれが外方側に張り出し前部及び後部支持フレーム30F,30Rの横フレーム32に沿った方向に延出された使用姿勢と、内方側に格納し袋詰め用ホッパー20の右側面に沿った格納姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。
【0042】
前部及び後部補助具50F,50Rは、パイプ材をL字状に折り曲げた補助具本体51と、この補助具本体51の先端部に装着された先端カバー52と、補助具本体51の根元部に固着された連結ピン53とを備えて構成されている。先端カバー52は、弾性のある樹脂製で、補助具本体51の先端部に嵌め込み装着されている。連結ピン53は、補助具本体51の根元部に形成された前後向きの貫通穴に内嵌された状態で、補助具本体51の根元部に固着されている。
【0043】
補助具本体51は、前部又は後部支持フレーム30F,30Rに枢支連結された第1パイプ51Aと、この第1パイプ51Aの先端部から折り曲げ成形された第2パイプ51Bとによって構成されており、第1パイプ51Aの長さは、作業姿勢での補助デッキ40の左右方向の幅に合わせて設定されている。第2パイプ51Bの長さは、前側の補助具本体51の第2パイプ51Bと、後側の補助具本体51の第2パイプ51Bとの間に、作業者が無理なく通ることができる通路Wが確保できるような長さに設定されている。
【0044】
補助具50を前部補助具50Fと後部補助具50Rとに2分割することにより、第2パイプ51Bの長さを短く設定することができ、前部及び後部補助具50F,50Rに曲げモーメントが作用し難くなる。その結果、例えば前部又は後部補助具50F,50Rに作業者がもたれかかって、前部又は後部補助具50F,50Rに大きな曲げモーメントが作用して、前部又は後部補助具50F,50Rが破損することを防止できる。また、前部及び後部補助具50F,50Rの重さを軽く設定することができ、前部及び後部補助具50F,50Rの操作性を向上できる。
【0045】
図7〜図9に示すように、後部支持フレーム30Rの横フレーム32の右側端部には、前後向きのボス部材32Aが固着されており、このボス部材32Aに補助具本体51に固着された連結ピン53が内嵌されて、ワッシャ54で前後方向の移動が規制された状態で、後部補助具50Rが連結ピン53の左右方向の軸心a周りに所定角度α揺動可能に支持されている(図4参照)。
【0046】
後部支持フレーム30Rの横フレーム32の右側端部の上面側には、縦断面形状が上向きに開口したコ字状のブラケット55が固定されており、このブラケット55に前後向きの貫通穴が加工されている。ブラケット55の貫通穴に、丸棒をL字状に折り曲げ成形した操作具56が、バネ57及びワッシャ58を外嵌した状態で装着されている。操作具56の先端部は、球状に湾曲した形状に成形されており、この先端部を補助具本体51の根元部に形成された前後向きの固定穴51Cに係入することで、後部補助具50Rを格納姿勢に保持できるように構成されている。
【0047】
操作具56の握り部56Aをバネ57のバネ反力に抗して前方に引っ張ることで、操作具56の先端部の補助具本体51の固定穴51Cへの係合が解除されて、後部補助具50Rを格納姿勢から使用姿勢に姿勢変更することができ、操作具56の握り部56Aをバネ57のバネ反力に抗して引っ張った状態で、後部補助具50Rを使用姿勢から格納姿勢に姿勢変更し、後部補助具50Rを格納姿勢に姿勢変更した位置で操作具56の握り部56Aから手を離すと、バネ57のバネ反力によって操作具56が後方へ移動して操作具56の先端部が補助具本体51の固定穴51Cに係入し、補助具51を格納姿勢に保持できる。
【0048】
なお、ブラケット55の側部には、位置決めストッパ(図示せず)が固定されており、後部補助具50Rを上方へ揺動させると、後部補助具50Rの第1パイプ51Aの根元部がこの位置決めストッパに接当して、固定穴51Cの位置が操作具56の先端部の位置に位置決めされて、迅速に後部補助具50Rを格納姿勢に位置決めできるように構成されている。
【0049】
後部支持フレーム30Rの横フレーム32の右側端面には、プレート37が固着されており、このプレート37の後部上部に形成された切り欠き部37Aに、アングル形状のストッパ59が少し外方上方に傾斜させた状態で固着されている。後部補助具50Rを格納姿勢から使用姿勢に姿勢変更すると、後部補助具50Rの補助具本体51の根元部がこのストッパ59に接当して、後部補助具50Rがストッパ59に沿って少し外方上方に傾斜した使用姿勢に位置決めされるように構成されている。
【0050】
後部補助具50Rが使用姿勢に位置決めされた状態で、後部補助具50Rの根元部の下面側がストッパ59の全長に亘って接当するように構成されており、例えば作業者が使用姿勢での後部補助具50Rにもたれかかって後部補助具50Rに上下向きの力が作用したとしても、この上下向きの力をストッパ59によって受け止めて、後部補助具50Rに無理な力が働いて破損することがないように構成されている。
【0051】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、前部及び後部補助具50F,50Rを、前部及び後部支持フレーム30F,30Rに揺動自在に支持することにより、使用姿勢と格納姿勢とに姿勢変更可能に構成した例を示したが、使用姿勢と格納姿勢とに姿勢変更する構成として異なる構成を採用してもよく、例えば前部及び後部補助具50F,50Rを、スライド移動させることにより、使用姿勢と格納姿勢に姿勢変更可能に構成してもよい。
【0052】
具体的には、例えば前部及び後部補助具50F,50Rを前部及び後部支持フレーム30F,30Rの横フレーム32に沿ってスライド移動させることにより、前部及び後部補助具50F,50Rが、前部及び後部支持フレーム30F,30Rの横フレーム32から機体横外方側(右側)に突出した使用姿勢と、前部及び後部支持フレーム30F,30Rの横フレーム32の側部に格納された格納姿勢とに姿勢変更するように構成してもよい。このように構成することにより、格納姿勢での前部及び後部補助具50F,50Rを、前部及び後部支持フレーム30F,30Rの横フレーム32に沿ってコンパクトに格納することができる。
【0053】
また、前部及び後部支持フレーム30F,30R等にブラケット等の固定具(図示せず)を設けて、この固定具に使用姿勢での前部及び後部補助具50F,50Rを着脱及び固定可能に構成し、この固定具に固定した使用姿勢での前部及び後部補助具50F,50Rを固定具から取り外して、内方側(袋詰め用ホッパー20の下部等)に格納するように構成してもよい。このように構成することにより前部及び後部補助具50F,50Rの構造を簡素化でき、製造コストを削減できる。
【0054】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、前部及び後部補助具50F,50Rを、前部及び後部支持フレーム30F,30Rに揺動自在に支持した例を示したが、前部及び後部補助具50F,50Rを取り付ける位置は異なる位置であってもよく、例えば袋詰め用ホッパー20や、袋詰め用ホッパー20を前部及び後部支持フレーム30F,30Rに支持する支持ブラケット36等に前部及び後部補助具50F,50Rを取り付ける構成を採用してもよい。
【0055】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、前部補助具50Fと後部補助具50Rとを、それぞれ独立して姿勢変更可能に構成した例を示したが、前部補助具50Fと後部補助具50Rとが一体で姿勢変更可能に構成してもよく、このように構成することにより前部及び後部補助具50F,50Rを同時に姿勢変更することができ、前部及び後部補助具50F,50Rの操作性を向上できる。
【0056】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、コンバインの一例として普通型コンバインの袋詰め作業部に、前部及び後部補助具50F,50Rを設けた例を示したが、自脱型コンバインの袋詰め作業部に装着する前部及び後部補助具50F,50Rにおいても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】コンバインの全体左側面図
【図2】コンバインの全体右側面図
【図3】コンバインの全体平面図
【図4】袋詰め用ホッパー付近の構造を示す背面図
【図5】袋詰め用ホッパー付近の構造を示す右側面図
【図6】袋詰め用ホッパー付近の構造を示す平面図
【図7】後部補助具の取付部の構造を示す側面図
【図8】後部補助具の取付部の構造を示す背面図
【図9】後部補助具の取付部の構造を示す斜視図
【符号の説明】
【0058】
8 主デッキ(デッキ)
20 袋詰め用ホッパー
40 補助デッキ(デッキ)
50F 前部補助具
50R 後部補助具
W 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を貯留する袋詰め用ホッパーと、前記袋詰め用ホッパーの下方に位置するデッキとを備えると共に、
前記デッキの上方に、前記袋詰め用ホッパーの前部から機体外方側に延出され機体外方側の端部から後方に延出された前部補助具と、前記袋詰め用ホッパーの後部から機体外方側に延出され機体外方側の端部から前方に延出された後部補助具とを備え、
前記前部及び後部補助具を、機体横外方側に張り出した使用姿勢と、機体内方側に格納した格納姿勢とに姿勢変更可能に構成すると共に、
前記前部補助具の後端部と前記後部補助具の前端部との間に、作業者が通過可能な通路を形成してあるコンバインの袋詰め作業部。
【請求項2】
前記前部補助具と前記後部補助具とを、それぞれ独立して姿勢変更可能に構成してある請求項1記載のコンバインの袋詰め作業部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−263885(P2008−263885A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112943(P2007−112943)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】