説明

コンバイン

【課題】前処理部の昇降に基づき刈刃装置の上下位置を変更するので、大幅なコストアップを伴うことなく、正確かつ確実に刈刃装置の上下位置を常に適正に変更することができる。
【解決手段】刈刃装置30の高さを制御する制御部60は、マイクロコンピュータで構成され、その入力側に前処理高さ検出センサ15と、刈刃高さ検出センサ55が接続され、出力側に、刈刃上下移動モータ51が接続されている。制御部60は、前処理高さ検出センサ15の出力により、前処理部が作業位置にあるか否かを判定すると共に、前処理部が作業位置にある場合、刈刃装置の目標値を設定し、該目標値に合わせて刈刃上下移動モータ51を作動させ、刈刃装置の高さを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前方に昇降自在に支持された前処理部の底部に、穀稈を刈取る刈刃装置が配置されたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
前処理部のデバイダフレームに一対のアクチュエータを介して刈刃装置を昇降自在に支持し、前記刈刃装置の両端側に所定の間隔で配置されかつ超音波センサで形成された一対の対地高さセンサと、前記刈刃装置の中央部に配置された傾斜センサとの出力に基づいて、前記刈刃装置の対地高さを制御するようにしたコンバインが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−102228号公報(第2−3頁 図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にコンバインにおいては、超音波センサで構成された対地高さセンサで圃場面を検出し、前処理装置を上昇させた時、刈刃装置を相対的に下降させ、前処理装置を下降させた時、刈刃装置を相対的に上昇させて、穀稈を根元から刈取るように構成されている。しかし、圃場がコンバインの沈込む湿田である場合、対地高さセンサの検出精度がでないため、刈刃装置が下位置のままで泥噛みを生じ、刈刃装置の動きが悪くなったり、耐久性が低下することがあった。
【0005】
前記の事情に鑑み、本発明は、前処理装置の昇降移動に基づいて刈刃装置の上下位置を常に適正に変更することができるようにしたコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、走行機体(3)の前方に前処理部(5)を昇降自在に支持し、該前処理部(5)の底部に、穀稈を刈取る刈刃装置(30)を配置したコンバイン(1)において、
前記前処理部(5)の昇降に基づき、該前処理部(5)に対する前記刈刃装置(30)の上下位置を変更する刈刃移動手段(50)を備え、
前記前処理部(5)が上昇すると前記刈刃装置(30)が上方に移動することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記前処理部(5)は、前記走行機体(3)の配置された横軸を中心とした回動により昇降され、
前記刈刃移動手段(50)により、前記刈刃装置(30)の刈刃先端位置が、前記前処理部底部(5)の下面位置より高くなるように変更されてなる、
請求項1記載のコンバインにある。
【0008】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明によると、従来必要であった刈刃装置移動用の対地高さセンサが不要であり、かつ刈刃装置の上下位置変更が必要となる湿田においては、超音波センサ等の対地高さセンサは精度がでずに、刈刃装置が下位置のままで泥噛みを生じる虞があるが、前処理部の昇降に基づき刈刃装置の上下位置を変更するので、大幅なコストアップを伴うことなく、正確かつ確実に刈刃装置の上下位置を常に適正に変更することができる。
【0010】
請求項2に係る本発明によると、刈刃装置の刈刃先端位置が、常に、前処理部底部の下面位置より高くなるように制御されるので、前処理部が上昇方向に回動しても、刈刃装置が泥噛みを生じることがなく、湿田等の圃場状態に拘りなく、常に確実に穀稈の刈取り作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1乃至図6は、本発明の実施の形態を示すもので、図1は、コンバインの斜視図、図2は、コンバインの側面図、図3は、コンバインに配置された前処理部上部の鳥瞰図、図4は、前処理部の底部に配置される刈刃装置の鳥瞰図、図5は、制御装置を示すブロック線図、図6は、制御装置で行われる制御過程を示すプログラムフローチャートである。
【0013】
図1乃至図2に示すように、コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2、2に支持された走行機体3と、該走行機体3の前方左側に昇降自在に配置され、穀稈の刈取りを行う前処理部5と、該走行機体3の前方右側に配置され、コンバイン1の運転操作を行う運転席6と、前記走行機体3の中央部左側に配置され、前記前処理部5で刈取った穀稈の脱穀を行う脱穀部7と、前記走行機体3の後部左側に、前記脱穀部7の後方に位置するように配置され、穀粒が脱穀された後の排藁を処理する排藁処理部8と、前記脱穀部7に沿って配置され、前記前処理部5で刈取った穀稈を前記脱穀部7に沿って搬送するフィードチェーン10と、前記走行機体3の中央部右側に配置され、前記脱穀部7で脱穀した穀粒を一時的に貯留するグレンタンク11と、前記走行機体3の後部右側に配置され、前記グレンタンク11に貯留された穀粒を排出するオーガ12等を有している。
【0014】
前記前処理部5は、前記走行機体3の前部上方に回転可能に配置され、かつ一端に前処理高さ検出センサ(ポテンショメータ)15が配置された軸(図示せず)に固定されたフレーム16に支持されている。従って、前記前処理部5は、前記軸を中心とした揺動により上下方向に移動し、その移動量は、前記前処理高さ検出センサ15により検出される。
【0015】
前記前処理部5は、前記フレーム16に支持され、穀稈の分草を行う複数のデバイダー17と、該デバイダ17で分草された穀稈を引起す複数(図1、図2では一対)の引起し装置18と、前記フレーム16に揺動可能に支持され、該引起し装置18で引起された穀稈を切断して刈取る刈刃装置30と、該刈刃装置30で刈取られた穀稈を前記フィードチェーン10に向けて搬送する扱深さ搬送装置20(図3参照)とを有している。
【0016】
図3に示すように、前記引起し装置18の伝動部には、それぞれ所定長さのガイド21(パイプ)が設置され、該ガイド21に逆U字状の連結フレーム22が上下方向に移動可能に支持されている。前記連結フレーム22で前記一対の引起し装置18の上部を連結することにより、刈取り部回転時の振動を抑制することができる。また、前記連結フレーム22を上下方向に移動可能にすることにより、刈取る穀稈の長さに対応して該連結フレーム22の位置を調整することができる。
【0017】
また、前記連結フレーム22は、前記扱深さ搬送装置20の穂先センサ等を取り付けるUパイプフレーム23とそれぞれボールジョイント25を介してロッド26で連結し、Uパイプフレーム23と連結フレーム22とを連動させることにより、刈取る穀稈の長さの変化に対する適応性を向上させることができる。
【0018】
図4に示すように、前記刈刃装置30は、左右1対の回動軸31、31を一体に固定し、該回動軸31、31を介して前記前処理部5のフレーム16に回動自在に支持された固定刃32と、該固定刃32に所定の間隔で固定されたガイド33と、前記固定刃32とガイド33の間に形成される間隙に摺動自在に装着された可動刃35と、該可動刃に固定されたブラケット36と、該ブラケット36に溝が略垂直方向を向くように固定されたガイド37とを有し、駆動装置40により、可動刃35が矢印A方向に往復駆動されて穀稈の刈取りを行うようになっている。なお、前記刈刃装置30の回動軸31、31は、前記前処理部5の底部の下面位置より高くなるように配置されている。
【0019】
前記駆動装置40は、図示しない支持部材を介して前記フレーム16に支持されたモータ41と、該モータ41の出力軸に固定された円盤42と、該円盤42の偏心位置に回転自在に支持され、かつ前記ガイド37の溝に移動可能に嵌合するローラ43とを有し、前記円盤42の回転により前記可動刃35を往復駆動する。
【0020】
前記刈刃装置30を上下方向に移動させる刈刃移動手段50は、前記前処理部5のフレーム16に支持された刈刃上下移動モータ51と、該刈刃上下移動モータ51の出力軸に固定された扇形歯車52と、前記回動軸31の一端に固定され、かつ前記扇形歯車52と噛合う歯車53とから成り、前記刈刃上下移動モータ51の作動により前記回動軸31、31を回動させ、前記刈刃装置30の固定刃32及び可動刃35の刃先を上下移動させるようになっている。なお、前記刈刃上下移動モータ51には、前記扇形歯車52の回動量、即ち、前記刈刃装置30の上下移動量を検出する刈刃高さ検出センサ55が配置されている。
【0021】
図5に示すように、前記刈刃装置30の高さを制御する制御部60は、マイクロコンピュータで構成され、その入力側に前記前処理高さ検出センサ15と、刈刃高さ検出センサ55が接続され、出力側に、前記刈刃上下移動モータ51が接続されている。
【0022】
前記の構成で、コンバイン1の沈み込みがない場合には、前処理部5を所定の位置へ移動させ、刈刃装置30を前処理装置5の底部より下方に突出させた状態で穀稈の刈取りを行う。湿田等で、図2に示すように、コンバイン1のクローラ走行装置2、2の一部が圃場面より沈下した場合、前処理部5を圃場面より上方に移動させ穀稈の刈取りを行う。このとき、泥噛み等を防止するため、前処理部5の上昇に連動して刈刃装置30も圃場面の上方(前処理部5の底部より上方)に移動させることが必要になる。
【0023】
刈刃装置30の移動制御の手順を、図6に示すプログラムフローチャートに基づいて説明する。前処理高さ検出センサ15の値Xを読込む(図6のステップS1、以下、単にステップS○という)。読込まれた前処理高さ検出センサ15の値Xが所定の値以上か否かを判定する(ステップS2)。前記ステップS2では、前処理部5の高さが刈取り作業で使用される高さであるか否かを判定し、前処理部5が刈取り作業で使用される高さ以上に上昇した場合、刈刃装置30の移動制御を停止する。
【0024】
前記ステップS2で、前処理高さセンサ15の値Xが所定値以下の場合、即ち、前処理部5が刈取り作業高さにある場合、前処理高さセンサ15の値に応じて、刈刃高さの目標値Yを設定する(ステップS3)。
【0025】
即ち、コンバイン1の沈み込みが発生しない場合、圃場面に対して前処理部5は低く、刈刃装置30の高さも、穀稈を根元から切断するように前処理部5の低部よりさらに低く設定される。また、コンバイン1に沈み込みが発生する場合、圃場面に対して前処理部5は高く、刈刃装置30の高さも前処理部5の底部より高くなるように目標値Yが設定される。
【0026】
刈刃高さ検出センサ55の値Zを読込む(ステップS4)。前記ステップS3で設定した目標値Yと、前記ステップS4で読込んだ刈刃高さ検出センサ55の値Zを比較する(ステップS5)。
【0027】
前記ステップS5で、刈刃高さセンサ55の値Zが目標値Yより大きい(刈刃装置30が高い)場合、刈刃上下移動モータ51を刈刃装置30が下降する方向に作動させる(ステップS6)。前記ステップS5で、刈刃高さセンサ55の値Zと目標値Yとが同一である場合、刈刃上下移動モータ51の停止状態を維持する(ステップS7)。前記ステップS5で、刈刃高さセンサ55の値Zが目標値Yより小さい(刈刃装置30が低い)場合、刈刃上下移動モータ51を刈刃装置30が上昇する方向に作動させる(ステップS8)。
【0028】
前述のように、前処理部5の高さに基づいて刈刃装置30の高さを上下制御することにより、正確かつ確実に刈刃装置30の上下位置を設定することができ、コンバイン1の沈み込む湿田等においても、刈刃装置30の泥噛み等の不具合を発生させることなく穀稈の刈取り作業を確実に行うことができる。
【0029】
前記の実施の形態においては、前処理高さ検出センサ15と刈刃高さ検出センサ55の検出値に基づいて刈刃装置30の高さを制御する場合について説明したが、コンバイン1の運転席6に配置されている湿田スイッチ(図示せず)と前処理高さ検出センサ15の出力によって刈刃装置30の高さを制御するように構成しても良い。また、前処理部5と刈刃装置30の上下動を機構的に連動するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】コンバインの斜視図である。
【図2】コンバインの側面図である。
【図3】コンバインに配置された前処理部上部の鳥瞰図である。
【図4】前処理部の底部に配置される刈刃装置の鳥瞰図である。
【図5】制御装置を示すブロック線図である。
【図6】制御装置で行われる制御過程を示すプログラムフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 コンバイン
3 走行機体
5 前処理部
30 刈刃装置
50 刈刃移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前方に前処理部を昇降自在に支持し、該前処理部の底部に、穀稈を刈取る刈刃装置を配置したコンバインにおいて、
前記前処理部の昇降に基づき、該前処理部に対する前記刈刃装置の上下位置を変更する刈刃移動手段を備え、
前記前処理部が上昇すると前記刈刃装置が上方に移動することを特徴とする、
コンバイン。
【請求項2】
前記前処理部は、前記走行機体の配置された横軸を中心とした回動により昇降され、
前記刈刃移動手段により、前記刈刃装置の刈刃先端位置が、前記前処理部底部の下面位置より高くなるように変更されてなる、
請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−89520(P2007−89520A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285525(P2005−285525)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】