説明

コンバイン

【課題】ナローガイド操作レバーと分草具調整レバーと注油操作レバーを必要時に操作忘れをすることなく、身体をあまり動かさなくても全て調整操作が行えるようにして操作性を良くすると共に、潤滑油切れによって刈取装置が作動不良になることを防止する。
【解決手段】ナローガイド(7)を作用位置と収納位置に切り換えるナローガイド操作レバー(1)と、分草体(12)を左右回動調節する分草体操作レバー(2)と、刈取装置(13)の各作動部に注油する注油操作レバー(3)を、コンバイン(8)の運転台(15)に搭乗した作業者が操作可能な穀稈引起し装置(4)の上部に集中配置する。また、ナローガイド操作レバー(1)の操作範囲または分草体操作レバー(2)の操作範囲に注油操作範囲を設け、このナローガイド操作レバー(1)または分草体操作レバー(2)に注油操作レバー(3)を兼ねさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインにおいて、運転座席側部のレバーガイドに設けたナローガイド操作レバーの操作によって、機体左側部の未刈地側に設けるナローガイドを機体の側方へ張り出して植立穀稈を走行装置が捲き込まないように側方へ案内する作用姿勢と機体側に引き寄せて沿わせた格納姿勢とに切換可能に構成する技術が特開2006−166860号公報に記載されている。
【0003】
また、刈取装置の前側に設けて穀稈の株元を分ける分草体の先端を左右に移動して刈取幅を調整する分草体調整レバーを運転台の床近くに設ける技術が実開昭63−36232号公報に記載されている。
【0004】
さらに、引起し装置や刈取装置の注油箇所に設ける注油ノズルに注油タンクから潤滑油を送るポンプを駆動する注油操作レバーを運転台の前側の引起し装置機枠に設ける技術が特開2005−21083号公報に記載されている。
【特許文献1】特開2006−166860号公報
【特許文献2】実開昭63−36232号公報
【特許文献3】特開2005−21083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のナローガイド操作レバーと分草体調整レバーと注油操作レバーは、刈取装置を良好に機能させるために調整操作するためのものであるが、各レバーの配置位置がまちまちでそれらのレバーを全て操作するためには、運転台上の作業者が前後に移動したり身体を曲げたりして大きく動かさなければならなく操作が面倒で、特に注油操作レバーの注油操作を忘れてオイル切れで刈取装置が不調になることがある。
【0006】
そこで、本発明では、ナローガイド操作レバーと分草体調整レバーと注油操作レバーを必要時に操作忘れをすることなく、身体をあまり動かさなくても全て調整操作が行えるようにして操作性を良くすると共にオイル切れによって刈取装置が作動不良になることを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明では、ナローガイド(7)を作用位置と収納位置に切り換えるナローガイド操作レバー(1)と、分草体(12)を左右回動調節する分草体操作レバー(2)と、刈取装置(13)の各作動部に注油する注油操作レバー(3)を、コンバイン(8)の運転台(15)に搭乗した作業者が操作可能な穀稈引起し装置(4)の上部に集中配置したことを特徴とするコンバインとした。
【0008】
この構成で、運転台15に搭乗した作業者が穀稈引起し装置4上に身体を伸び出した姿勢で、ナローガイド操作レバー1を操作してナローガイド7の張り出しと収納を行い、分草具操作レバー2を操作して分草具12の左右回動調節を行い、注油操作レバー3を操作して引起し装置4などの刈取装置13の各作動部へ注油することができる。
【0009】
請求項2記載の発明では、ナローガイド操作レバー(1)の操作範囲または分草体操作レバー(2)の操作範囲に注油操作範囲を設け、このナローガイド操作レバー(1)または分草体操作レバー(2)に注油操作レバー(3)を兼ねさせたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインとした。
【0010】
この構成で、注油操作レバー3を省略できてコストダウンになる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明では、運転台15上の作業者は、身体を穀稈引起し装置4上に伸び出した姿勢で、ナローガイド操作レバー1と分草体操作レバー2と注油操作レバー3を操作して刈取作業の準備を行え、同時に各作動部への潤滑油の供給も容易に行えるので、刈取作業の能率を向上させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、注油操作レバー3を省略できてコストダウンになると共にレバー類が少なくなることでデザインのシンプル化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
本明細書では、左側及び右側とはコンバインが前進する方向に向いたときの側を言う。
図1と図2に示すように、コンバインの車体10の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ11を有するクローラ走行装置9を装着し、車体10の前端側に分草具12を備えた刈取装置13と穀稈引起し装置4が設けられている。刈取装置13の後方には操縦席14を備えた運転台15があり、また車体10の上方には刈取装置13から搬送されてくる穀桿を引き継いで搬送して脱穀・選別する脱穀装置16が運転台15の左後方に設けられ、この脱穀装置16で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク17が脱穀装置16の右側に配置されている。グレンタンク17の後部にオーガ18を起伏可能に連接して、このオーガ18でグレンタンク17内の穀粒をコンバインの外部に排出する構成としている。脱穀装置16の後部にはカッター80を設けている。
【0014】
運転台15の前側に操向レバー6を立設し、この操向レバー6を前後に傾倒することで刈取装置13と穀稈引起し装置4を一体的に昇降させ、左右に傾倒操作することにより傾けた側へ旋回して走行をすることができる。すなわち、操向レバー6をコンバイン8を旋回させようとする左右のどちらかへ傾倒操作することにより、左右の走行クローラ11,11に速度差或いは逆回転が与えられて走行方向の変更が行われる構成としている。
【0015】
刈取装置13は、横長のバリカン刃19とこのバリカン刃19の前側で穀稈の株元を分ける複数個の分草具12a〜12bが設けられ、刈取装置13の上に穀稈を引起すラグ付きチェンからなる引起し装置4を立設している。複数の分草具12a〜12bの内で右端に設ける分草具12aは、その前端が左右に移動するように構成し、左端に設ける分草体12dの外側から機体の中間あたりまでに穀稈を機体の左外側方へガイドするナローガイド7を設けている。
【0016】
右端の分草体12aを左右に移動させる分草体操作レバー2とナローガイド7を側方張り出しの作用位置と機体に沿わせる収納位置に移動させるナローガイド操作レバー1を穀稈引起し装置4の右上端の取付フレーム20,28に設けている。尚、分草体操作レバー2の下側には刈取装置13と穀稈引起し装置4の潤滑部にオイルを送る注油操作レバー3を設けて、運転台15上の作業者が穀稈引起し装置4上へ身体を乗り出して、ナローガイド操作レバー1と分草体操作レバー2と注油操作レバー3を操作できるようにしている。
【0017】
図3と図4に分草体操作レバー2と注油操作レバー3の取付構成を示している。分草体操作レバー2の取付板26はピン24で前後に回動するように取付フレーム20に枢支すると共に右端分草体12aに連結するワイヤ25を連結している。また、注油操作レバー3は、注油操作レバー3の取付板27をピン22で取付フレーム20に枢支して引起し装置4の右側方へ突出し、この取付板27と注油ポンプ21の軸23を連結して、注油操作レバー3を上下に動かすと注油ポンプ21を駆動してオイルタンク(図示省略)のオイルを吸引して刈取装置13と引起し装置4の潤滑部に設けるノズルから噴射させる。
【0018】
図5と図6にナローガイド操作レバー1の取付構成を示している。ナローガイド操作レバー1の基部は左右に分岐してその左右端部にナローガイド7の動作部に連結するワイヤ30,31を連結し、基部中央をピン29で取付フレーム28に枢支し、ピン29に巻装するばね32でナローガイド操作レバー1を後方へ押し付けている。ナローガイド操作レバー1が取付フレーム28から突出する部分に左右方向に長いガイド溝33を形成し、このガイド溝33の左右端の引掛け段部でナローガイド操作レバー1を係止するようにしている。ナローガイド操作レバー1を右側にするとナローガイド7が機体に沿わせた収納位置になり、左側にするとナローガイド7が側方へ張り出した作用位置になる。
【0019】
図7に示す実施例では、ナローガイド操作レバー1を引起し装置4の左側部で取付フレーム28へピン29で枢支して上下に回動すると二本のワイヤ30,31のどちらかを引いてナローガイド7が作用姿勢と収納姿勢に切り換わり、ナローガイド操作レバー1をさらに大きく下へ回動するとナローガイド操作レバー1のノブ34取付側と反対側の作用片35が注油ポンプ21の軸23を押してオイルを送り出すようにしていて、注油忘れを無くするようにしている。
【0020】
図8と図9に示す実施例では、分草体操作レバー2で注油ポンプ21を操作出来るようにしている。取付板26にピン24で枢支した分草体操作レバー2の取付板26が当たる位置に注油ポンプ21の軸23を位置させて設け、分草体操作レバー2を大きく下へ回動すると取付板26が注油ポンプ21の軸23を押してオイルを送り出すようにしている。
【0021】
図10から図12には、ナローガイド操作レバー1とナローガイド7の連動構成を示している。ナローガイド7は、前端を最左側の分草体12dの側部に緩く取り付けた前ナローガイド7aと後部を車体10に緩く取り付けた後ナローガイド7bを連結部7cで屈曲可能に連結し、側方へ張り出すとこの連結部7cが最も側方へ張り出すようになる。
【0022】
前ナローガイド7aの前後中間部にリンク43,44を連結している。このリンク43,44の連結部には一方のリンク44に固定片45を設けて、ナローガイド7を側方へ張り出すためにリンク43,44を伸ばして180°以上にした状態では固定片45でリンク43,44がそれ以上に折れ曲げなく伸ばした状態で保持するようになる。
【0023】
刈取装置13側のリンク43は、図11に示す如く、伝動ケース36に固定のブラケット37にピン47,48で取り付けた可動取付具42のボス部49へ回動可能に取り付けている。可動取付具42は、一方のピン47でブラケット37に枢支し他方のピン48を長孔50で遊動するように取り付けていて、可動取付具42の長孔50側の上下にワイヤ39とばね41を取り付け、ワイヤ39を引くとピン48が長孔50で動きを許容される可動範囲で可動取付具42が上方に傾くことでリンク43が持ち上がって、リンク43,44で支持されたナローガイド7が上方へ移動し長い穀稈を側方へガイドするに適した状態になる。ワイヤ39はナローガイド操作レバー1の近くに設けるナローガイド上下調整レバー46に連結しているので、このナローガイド上下調整レバー46を操作してナローガイド7の上下位置を調整するのである。
【0024】
リンク43のボス部49から下方へ突出した部分に固定した回動板51に前記ナローガイド操作レバー1に連結したワイヤ30,31を連結し、ナローガイド操作レバー1を操作すると、回動板51を回してリンク43が回って前ナローガイド7aが動き、ナローガイド7を側方へ張り出したり収納したりするようになる。ボス部49の上側には、カバー板52を設けて、藁屑が回動部に入り込み難くしている。
【0025】
なお、可動取付具42を取り付けるブラケット37は、伝動ケース36と一体整形にしても良い。
また、前記実施例では、リンク43を平面視で右回りでナローガイド7を張り出しているが、図13に示す如く、引起し伝動パイプ53の左側でリンク43を平面視で左回りに動いて前ナローガイド7aを動かすようにすれば、リンク43の回動角度を小さく出来、機体側部材との干渉が無く、藁屑が溜まり難い。
【0026】
図14から図18には、刈取装置13と穀稈引起し装置4の駆動速度を高・低に切り換える機構を示している。運転台15の側部に設けるサイドパネル55に前後回動するように設けた前処理変速レバー54にワイヤ56を連結し、このワイヤ56を横伝動ケース58の変速ケース57のシフト軸63に固着のシフタアーム59の一端に連結している。シフタアーム59の他端にはワイヤ56の引きに抗する引張ばね60を張設している。シフタアーム59のワイヤ56を連結する連結軸61を下方へ伸ばしてその下端を変速ケース57に形成した長穴62に差し込んでいる。従って、シフタアーム59の回動は連結軸61が長穴62内で許容される動きに規制される。
【0027】
変速ケース57内には、クラッチギア65を挟んで低速ギア66と高速ギア67が設けられ、シフト軸63が回動するとシフタ64がクラッチギア65を低速ギア66と高速ギア67のどちらかに噛み合って伝動するようになっている。クラッチギア65と低速ギア66と高速ギア67の対向面に設けるクラッチ爪の噛み合いは、前記シフタアーム59の動き規制によってクラッチ爪の先端が相手のクラッチ爪底に当たらないようになる。このことによって、クラッチ爪やシフト軸63の磨耗を防ぎ、クラッチ爪底のかじりを防ぎ、変速操作力の低減が図られる。
【0028】
図19は、刈取装置13で株元を切り取られ穀稈引起し装置4で引き起こした穀稈を脱穀装置16の横送りフィードチェン69に受け渡す穀稈搬送装置76の斜視図で、穀稈の株元側を株元チェン75と株元挟把杆72で挟んで送り、穀稈の穂先側を穂先ラグ74と穂先ガイド73で挟んで送り作用する。株元挟把杆72は穂先ケース70から伸ばすガイドアーム71の下端に株元チェン75に対して押圧弾発して保持し、穂先ガイド73はガイドアーム71に固着している。株元チェン75と穂先ラグ74の先端で起立姿勢で受け取った穀稈を終端で寝かせてフィードチェン69に受け渡すために、穂先ラグ74が終端部で株元チェン75から遠ざかる位置関係になり、穂先ガイド73も穂先ラグ74に沿わせている。
【0029】
以上の構成で、穀稈の収穫を行う場合には、脱穀装置16を駆動しながら走行し、刈取装置13を駆動して穀稈を刈り取ると共に穀稈引起し装置4で穀稈を引き起こし、その穀稈を株元チェン75と穂先ラグ74で脱穀装置16のフィードチェン69に送り脱穀装置16で穀粒を脱穀してグレンタンク17に溜め、脱穀済穀稈をカッター80で細断して圃場へ散布する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施例のコンバイン全体右側面図である。
【図2】本実施例のコンバイン全体正面図である。
【図3】一部の拡大正面図である。
【図4】一部の拡大左側面図である。
【図5】一部の拡大正断面図である。
【図6】一部の拡大左側面図である。
【図7】一部の拡大正断面図である。
【図8】一部の拡大正断面図である。
【図9】一部の拡大左側断面図である。
【図10】本実施例のコンバイン一部平面図である。
【図11】一部の拡大左側断面図である。
【図12】一部の拡大右側面図である。
【図13】一部の拡大平面図である。
【図14】別実施例の一部拡大右側面図である。
【図15】別実施例の一部拡大平面図である。
【図16】別実施例の一部拡大平断面図である。
【図17】別実施例の一部拡大右側断面図である。
【図18】別実施例の一部拡大平面図である。
【図19】一部の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ナローガイド操作レバー
2 分草体操作レバー
3 注油操作レバー
4 穀稈引起し装置
7 ナローガイド
8 コンバイン
12 分草体
15 運転台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナローガイド(7)を作用位置と収納位置に切り換えるナローガイド操作レバー(1)と、分草体(12)を左右回動調節する分草体操作レバー(2)と、刈取装置(13)の各作動部に注油する注油操作レバー(3)を、コンバイン(8)の運転台(15)に搭乗した作業者が操作可能な穀稈引起し装置(4)の上部に集中配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
ナローガイド操作レバー(1)の操作範囲または分草体操作レバー(2)の操作範囲に注油操作範囲を設け、このナローガイド操作レバー(1)または分草体操作レバー(2)に注油操作レバー(3)を兼ねさせたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2009−148165(P2009−148165A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326205(P2007−326205)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】