説明

コンバイン

【課題】可変容積型油圧ポンプ及び可変容積型油圧モータを有する走行用HSTと機械式の多段変速装置とが走行系伝動経路に直列的に介挿され、前記走行用油圧モータが走行モード切替操作部材への人為操作に基づき選択的に小容積状態又は大容積状態とされるコンバインにおいて、低速走行させる必要がある場合における走行安全性を向上させる。
【解決手段】制御装置は、副変速検出センサからの信号に基づき前記多段変速装置が最低速段に係合していると判断する場合には、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータが大容積状態となるように走行モード切替作動機構を強制的に作動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からクローラ等の走行装置へ至る走行系伝動経路に、双方が可変容積型とされた走行用油圧ポンプ及び走行用油圧モータを有する走行用HSTと機械式の多段変速装置とが直列に介挿されたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
走行系伝動経路に、可変容積型油圧ポンプ及び可変容積型油圧モータを有する走行用HSTと機械式の多段変速装置とが直列に介挿されているコンバインは、従前から公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、前記油圧ポンプのポンプ側容積調整機構は、主変速操作部材への人為操作に基づいて作動されるように構成されており、主変速装置として作用している。
前記多段変速装置は、副変速操作部材への人為操作に基づいて前記走行用HSTからの回転動力を変速するように構成されており、前記主変速装置による変速領域(変速幅)を変更する第1副変速装置として作用している。
さらに、前記油圧モータのモータ側容積調整機構は、走行モード切替操作部材への人為操作に基づいて該油圧モータを選択的に小容積状態(高速モード状態)又は大容積状態(低速モード状態)とさせ得るように構成されており、前記主変速装置による変速領域(変速幅)を変更する第2副変速装置として作用している。
【0004】
即ち、前記特許文献1に記載のコンバインは、前記多段変速装置によって前記主変速装置における変速領域(変速幅)の変更を行うことに加えて、前記モータ側容積調整機構によっても前記主変速装置における変速領域(変速幅)の変更を行えるように構成されており、前記コンバインを走行させたままで停止させることなく前記コンバインの走行モードを低速モード及び高速モード間でスムース切り替えることができる。
【0005】
さらに、前記特許文献1に記載のコンバインにおいては、前記油圧モータが小容積状態(高速モード状態)とされると、制御装置が刈取部の駆動を停止すると共に、走行装置の駆動も停止するように構成されている。
前記コンバインは、斯かる構成を備えることにより、高速走行モードで刈取作業を行った場合に生じ得る搬送部や脱穀部における詰まりを防止できると共に、未刈穀稈を踏み倒すことを防止できる点で有効であるが、下記点においては問題があった。
【0006】
即ち、前記コンバインを低速で走行させる必要がある場合には、前記多段変速装置は低速伝動状態とされる。
さらに、前記コンバインの要低速走行時のうちトラックへの前記コンバインの積み降ろし時や畦越え時には、前記刈取部は駆動停止状態とされている。
前記従来のコンバインにおいては、このような刈取駆動停止状態で低速走行させる必要がある場合に、操縦者が意に反して前記走行モード切替操作部材を操作してしまうと、前記油圧モータが小容積状態(高速モード状態)及び大容積状態(低速モード状態)間で切り替わって前記コンバインの走行速度が急激に変化し、前記コンバインの脱輪等を招くという恐れがある。
【0007】
又、前記従来のコンバインにおいては、前述の通り、刈取作業中に操縦者が意に反して前記走行モード切替操作部材に触れてしまうと、前記刈取部及び前記走行装置が停止状態となる。従って、刈取作業を再開する為には、何らかの人為操作が必要となり、刈取作業効率の観点では問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−195490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、駆動源からクローラ等の走行装置へ至る走行系伝動経路に介挿された、双方が可変容積型とされた走行用油圧ポンプ及び走行用油圧モータを有する走行用HSTと機械式の多段変速装置とを備え、前記走行用油圧モータが走行モード切替操作部材への人為操作に基づき選択的に小容積状態(高速モード状態)又は大容積状態(低速モード状態)とされ、且つ、前記多段変速装置が副変速操作部材への人為操作に基づき多段変速を行うように構成されたコンバインにおいて、低速走行させる必要がある場合における走行安全性を向上させ得るコンバインの提供を、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成する為に、駆動源に作動連結された可変容積型の走行用油圧ポンプ及び前記走行用油圧ポンプに流体接続された可変容積型の走行用油圧モータを有する走行用HSTと、前記走行用HSTから回転動力を入力する機械式の多段変速装置と、人為操作可能な主変速操作部材と、前記主変速操作部材への人為操作に基づき前記走行用油圧ポンプの走行用油圧ポンプ側容積調整機構を作動させる主変速作動機構と、人為操作可能な走行モード切替操作部材と、前記走行用油圧モータの走行用油圧モータ側容積調整機構を介して該走行用油圧モータを小容積状態又は大容積状態に切り替える走行モード切替作動機構と、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に基づき前記走行モード切替作動機構の作動制御を行う制御装置と、人為操作可能な副変速操作部材と、前記副変速操作部材への人為操作に基づき前記多段変速装置の伝動状態を切り替える副変速作動機構とを備えたコンバインであって、前記多段変速装置の伝動状態を直接又は間接的に検出する副変速検出センサを備え、前記制御装置は、前記副変速検出センサからの信号に基づき前記多段変速装置が最低速段に係合していると判断する場合には、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータが大容積状態となるように前記走行モード切替作動機構を強制的に作動制御するコンバインを提供する。
【0011】
一形態においては、前記多段変速装置は、低速変速段,標準変速段及び高速変速段の3変速段を有し、前記走行用油圧モータが小容積状態で且つ前記多段変速装置が標準変速段に係合している場合の前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構による変速可能範囲が、前記走行用油圧モータが大容積状態で且つ前記多段変速装置が高速変速段に係合している場合の前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構による変速可能範囲よりも高くなるように、前記走行用油圧モータの小容積及び大容積並びに前記多段変速装置の変速比が設定される。
斯かる構成において、前記制御装置は、前記副変速検出センサからの信号に基づき前記多段変速装置が高速変速段に係合していると判断する場合には、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータが大容積状態となるように前記走行モード切替作動機構を強制的に作動制御し、且つ、前記副変速検出センサからの信号に基づき前記多段変速装置が標準変速段に係合していると判断する場合には、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に基づいて前記走行用油圧モータの容積が変更されるように前記走行モード切替作動機構を作動制御するように構成される。
【0012】
好ましくは、前記駆動源から作動的に回転動力が伝達される刈取装置と、前記駆動源から前記刈取装置への動力伝達を選択的に係脱する刈取クラッチと、前記駆動源から前記刈取装置への動力伝達状態を検出する刈取検出センサとを備え、前記制御装置は、前記刈取検出センサからの信号に基づき前記刈取装置が作動状態にあると判断した場合には、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータが大容積状態に固定されるように前記走行モード切替作動機構を強制的に作動制御するように構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコンバインによれば、多段変速装置が最低速段に係合している場合には、制御装置が走行モード切替操作部材への人為操作に拘わらず走行用油圧モータが大容積状態となるように走行モード切替作動機構を強制的に作動制御するように構成されているので、畦際での刈取作業時やトラックへのコンバインの積み降ろし時、又は、湿田での刈取作業時等のように、前記コンバインを低速走行させる必要がある場合に意に反して走行モードが低速モードから高速モードへ移行することを確実に防止でき、これにより、低速走行させる必要がある場合における走行安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るコンバインの正面図である。
【図2】図2は、前記コンバインの側面図である。
【図3】図3は、前記コンバインの平面図である。
【図4】図4は、前記コンバインの伝動模式図である。
【図5】図5は、前記コンバインにおけるトランスミッションの伝動模式図である。
【図6】図6は、前記トランスミッションの油圧回路図である。
【図7】図7は、前記コンバインにおける運転席の斜視図である。
【図8】図8は、前記コンバインにおける主変速操作部材近傍の斜視図である。
【図9】図9は、前記コンバインにおける制御装置に記憶された制御プログラムの一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい一実施の形態に係るコンバインについて、添付図面を参照しつつ説明する。
図1〜図4は、それぞれ、本実施形態に係るコンバイン1の正面図,側面図,平面図及び伝動模式図である。
【0016】
図1〜図4に示すように、前記コンバイン1は、機体2と、前記機体2に支持された駆動源として作用するエンジン9と、前記機体2に連結された左右一対の走行装置(本実施の形態においては、クローラ式走行装置)10と、前記エンジン9からの回転動力を変速して前記一対の走行装置10へ出力するトランスミッション100と、前記機体2の前方において昇降可能に支持された刈取装置30と、前記刈取装置30によって刈り取られた穀稈を前記機体2の左側方において後方へ搬送するフィードチェーン装置20と、前記フィードチェーン装置20によって搬送される穀稈に対して脱穀処理を行うように、前記機体の左部分に配設された脱穀装置40と、前記脱穀装置40の下方に配設された揺動選別装置50と、前記機体2の右前方部分に配設された運転席5と、前記揺動選別装置50によって選別された穀粒を収容するグレンタンク6であって、前記運転席5の後方に配設されたグレンタンク6と、前記フィードチェーン装置20から脱穀済の排藁を受け継ぎ、該排藁を後方へ搬送する排藁搬送装置60とを備えている。
【0017】
まず、前記コンバイン1における伝動経路について説明する。
前記コンバイン1は、図4に示すように、前記エンジン9からの回転動力を前記トランスミッション100を介して前記一対の走行装置10へ伝達する走行系伝動経路と、前記エンジン9からの回転動力を脱穀系プーリ伝動機構200を介して前記フィードチェーン装置20,前記脱穀装置40,前記揺動選別装置50及び前記排藁搬送装置60へ伝達する脱穀系伝動経路と、前記エンジン9からの回転動力を刈取系プーリ伝動機構250を介して前記刈取装置30へ伝達する刈取系伝動経路とを含んでいる。
【0018】
図5及び図6に、それぞれ、前記トランスミッション100の伝動模式図及び油圧回路図を示す。
図5及び図6に示すように、前記トランスミッション100は、前記エンジン9に作動連結された走行用HST120及び旋回用HST130と、前記走行用HST120からの回転動力を多段的に変速する機械式の多段変速装置150と、前記多段変速装置150及び前記旋回用HST130からの回転動力を合成して、左右一対の出力軸11にそれぞれ出力する左右一対の第1及び第2差動機構170a,170bと、前記多段変速装置150からの回転動力を前記第1及び第2差動機構170a,170bに同一回転方向で伝達する走行系伝動機構180と、前記旋回用HST130からの回転動力を前記第1及び第2差動機構170a,170bの一方には正転方向に伝達し且つ他方には逆転方向で伝達する旋回系伝動機構190とを有している。
【0019】
前記走行用HST120は、図5及び図6に示すように、前記エンジン9に作動連結された可変容積型の走行用油圧ポンプ120Pと、前記走行用油圧ポンプ120Pによって流体的に駆動される可変容積型の走行用油圧モータ120Mとを備えている。
【0020】
前記可変容積型の走行用油圧ポンプ120Pは、前記エンジン9に作動連結された走行用ポンプ軸121と、前記走行用ポンプ軸121に相対回転不能に支持された走行用油圧ポンプ本体122と、前記走行用油圧ポンプ本体122の容積量を変更させる走行用油圧ポンプ側容積調整機構123とを備えている。
本実施の形態においては、前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構123は、走行用油圧ポンプ側可動斜板と、前記走行用油圧ポンプ側可動斜板を傾転させる走行用油圧ポンプ側制御軸とを有している。
【0021】
前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構123は、主変速操作部材310への人為操作に基づき前記走行用油圧ポンプ本体122の容積量を変更させるように構成されている。
詳しくは、前記コンバイン1は、人為操作可能な前記主変速操作部材310と、前記主変速操作部材310への人為操作に基づき前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構123を作動させる主変速作動機構320とを備えている。
【0022】
図7に前記運転席5の斜視図を示す。
図7に示すように、前記運転席5の一側方にはサイドコラム8が設けられており、前記主変速操作部材310は、前記サイドコラム8に設けられたレバーガイドによってガイドされた状態で車輌幅方向に沿った操作軸回り揺動可能とされている。
【0023】
図8に、前記主変速操作部材310近傍の斜視図を示す。
詳しくは、前記主変速操作部材310は、前記レバーガイドに挿通されたレバーロッド311と、前記レバーロッド311の上端部に設けられた把持部312とを備えている。
なお、本実施の形態においては、前記主変速操作部材310は、前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構123の作動状態を変更する主変速操作に加えて、前記コンバイン1に備えられた他の機能を操作し得るように構成されている。
【0024】
具体的には、前記主変速操作部材310には、下記左右一対の機体昇降用油圧装置562a,562bを操作する為の機体傾斜スイッチ313と、下記刈取昇降用油圧装置561を操作する為の刈取装置昇降スイッチ314と、刈取穀稈の穂先位置を前記脱穀装置40における扱胴に対して調整する為の扱き深さスイッチ315と、前記刈取昇降用油圧装置561によって前記刈取装置30を所定の非作業位置まで上昇させる為の刈取装置オートリフトスイッチ316と、前記刈取昇降用油圧装置561によって前記刈取装置30を所定の作業位置に自動設定する為の刈取装置オートセットスイッチ317と、前記走行用油圧モータ120Mを選択的に小容積状態又は大容積状態にする為の走行モード切替操作部材318とが付設されている。
【0025】
本実施の形態においては、前記主変速作動機構320は、前記主変速操作部材310への人為操作に基づいて前記コンバイン1に備えられる制御装置400によって作動制御されるようになっている。
【0026】
即ち、前記コンバイン1は、図6に示すように、さらに、前記主変速操作部材310の操作位置を検出する操作側主変速センサ410と、前記走行用油圧ポンプ側可動斜板の傾転位置を直接又は間接的に検出する作動側主変速センサ415とを備えており、前記制御装置400が、前記操作側主変速センサ410及び前記作動側主変速センサ415からの信号に基づき前記主変速作動機構320の作動制御を行うように構成されている。
【0027】
前記主変速作動機構320は、図6に示すように、走行用油圧ポンプ側ピストン装置321と、前記走行用油圧ポンプ側ピストン装置321への作動油の給排を切り換える走行用油圧ポンプ側電磁弁322とを有している。
【0028】
斯かる構成において、前記制御装置400は、前記操作側主変速センサ410及び前記作動側主変速センサ415からの信号に基づき、前記走行用油圧ポンプ側電磁弁322の位置制御を行い、これにより、前記走行用油圧ポンプ側ピストン装置321が前記制御軸を介して前記走行用油圧ポンプ側可動斜板を前記主変速操作部材310の操作位置に応じた傾転位置に位置させるようになっている。
【0029】
前記走行用油圧ポンプ側ピストン装置320の作動油は、図6に示すように、前記走行用HST120及び前記旋回用HST130のチャージ油源として前記コンバイン1に備えられる第1補助ポンプ501から供給される。
【0030】
なお、前記操作側主変速センサ410として回転角センサが用いられる場合には、前記制御装置400は前記主変速操作部材310の中立位置を初期値として記憶し且つ前記初期値を基準にして前記主変速操作部材310が操作される毎に操作方向及び操作角を累積的に記憶することで、その時点での前記主変速操作部材310の操作位置を認識し得るようになっている。
【0031】
本実施の形態においては、前記主変速作動機構320は、前記電磁弁322によって給排制御される作動油の油圧を利用して前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構123を作動させるように構成されているが、これに代えて、電動モータを採用することも可能である。
又、前記ピストン装置321及び前記電磁弁322の組み合わせ又は前記電動モータ等のように前記制御装置400によって電気的に作動制御される構成に代えて、前記主変速操作部材310と前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構123とを作動連結する機械リンク機構によって前記主変速作動機構320を形成することも可能である。
【0032】
前記可変容積型の走行用油圧モータ120Mは、前記走行用油圧ポンプ本体122と一対の第1及び第2走行側HSTライン129a,129b(図6参照)を介して流体接続された走行用油圧モータ本体127と、前記走行用油圧モータ本体127を相対回転不能に支持する走行用モータ軸126と、前記走行用油圧モータ本体127の容積量を変更させる走行用油圧モータ側容積調整機構128とを備えている。
本実施の形態においては、前記走行用油圧モータ側容積調整機構128は、走行用油圧モータ側可動斜板と、前記走行モータ側可動斜板を傾転させる走行用油圧モータ側制御軸とを有している。
【0033】
前記走行用油圧モータ側容積調整機構128は、前記走行モード切替操作部材318への人為操作に基づき、前記走行用油圧モータ本体127の容積量をそれぞれ小容積及び大容積とさせ得るように構成されている。
【0034】
詳しくは、前記コンバイン1は、図6に示すように、人為操作可能な前記走行モード切替操作部材318と、前記走行用油圧モータ側容積調整機構128を作動させる走行モード切替作動機構330とを備えており、前記制御装置400が前記走行モード切替操作部材318への人為操作に基づいて前記走行モード切替作動機構330の作動制御を行うことで前記走行用油圧モータ120Mを選択的に小容積状態及び大容積状態とさせ得るように構成されている。
【0035】
前述の通り、本実施の形態においては、前記走行モード切替操作部材318は、前記主変速操作部材310の前記把持部312に付設されている(図8参照)。
前記走行モード切替操作部材318は、人為操作に応じて前記制御装置400へ高速モード選択信号(小容積選択信号)又は低速モード選択信号(大容積選択信号)を出力するように構成されている。
【0036】
前記走行モード切替作動機構330は、図6に示すように、走行用油圧モータ側ピストン装置331と、前記第1補助ポンプ501から前記走行用油圧モータ側ピストン装置331への作動油の給排を切り換える走行用油圧モータ側電磁弁332とを有している。
【0037】
前記制御装置400は、前記走行モード切替操作部材318からの走行モード選択信号に応じて前記電磁弁332の位置制御を行い、これにより、前記走行用油圧モータ側ピストン装置331が前記走行用油圧モータ側容積調整機構128を介して前記走行用油圧モータ120Mを小容積状態又は大容積状態とさせるようになっている。
【0038】
即ち、前記電磁弁332によって給排制御される作動油によって前記走行用油圧モータ側ピストン装置331のピストンロッドが軸線方向一方側へ押動されると、前記走行用油圧モータ側制御軸を介して走行用油圧モータ側可動斜板が揺動軸線回り中立側の小容積位置に位置し、これにより、前記走行用油圧モータ120Mが高速回転出力を行う小容積状態となる。
一方、前記電磁弁332によって給排制御される作動油によって前記ピストンロッドが軸線方向他方側へ押動されると、前記走行用油圧モータ側制御軸を介して走行用油圧モータ側可動斜板が揺動軸線回り中立側とは反対側の大容積位置に位置し、これにより、前記走行用油圧モータ120Mが低速回転出力を行う大容積状態となる。
【0039】
なお、本実施の形態においては、前記走行モード切替操作部材318は、押圧操作される毎に、高速モード選択信号及び低速モード選択信号を順次出力するように構成されている。即ち、前記コンバイン1の前記エンジン9を始動させた初期状態においては、前記制御装置400は、前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態となるように前記走行モード切替作動機構330を作動させる。そして、この初期状態から前記走行モード切替操作部材318が操作されると、該走行モード切替操作部材318から前記制御装置400へ高速モード選択信号が送信され、これにより、前記制御装置400は、前記走行用油圧モータ120Mが小容積状態となるように前記走行モード切替作動機構330を作動させる。さらに、この状態から前記走行モード切替操作部材318が操作されると、該走行モード切替操作部材318から前記制御装置400へ低速モード選択信号が送信され、これにより、前記制御装置400は、前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態となるように前記走行モード切替作動機構330を作動させる。
当然ながら、斯かる構成に代えて、前記走行モード切替操作部材318をトグルスイッチやシーソースイッチとすることも可能である。
【0040】
又、本実施の形態においては、前記走行モード切替作動機構330は、油圧の作用を利用して前記走行用油圧モータ側容積調整機構128を作動させるように構成されているが、これに代えて、電動モータを採用することも可能である。
【0041】
前記旋回用HST130は、図5及び図6に示すように、前記エンジン9に作動連結された旋回用油圧ポンプ130Pと、前記旋回用油圧ポンプ130Pによって流体的に駆動される旋回用油圧モータ130Mとを備えている。
【0042】
前記旋回用油圧ポンプ130P及び前記旋回用油圧モータ130Mは少なくとも一方が可変容積型とされている。
本実施の形態においては、図5及び図6に示すように、前記旋回用油圧ポンプ130Pが可変容積型とされ、且つ、前記旋回用油圧モータ130Mは固定容積型とされている。
【0043】
可変容積型の前記旋回用油圧ポンプ130Pは、前記エンジン9に作動連結された旋回用ポンプ軸131と、前記旋回用ポンプ軸131に相対回転不能に支持された旋回用油圧ポンプ本体132と、前記旋回用油圧ポンプ本体132の容積量を変更させる旋回用油圧ポンプ側容積調整機構133とを備えている。
本実施の形態においては、前記旋回用油圧ポンプ側容積調整機構133は、旋回用油圧ポンプ側可動斜板と、前記旋回用油圧ポンプ側可動斜板を傾転させる旋回用油圧ポンプ側制御軸とを有している。
【0044】
固定容積型の前記旋回用油圧モータ130Mは、前記旋回用油圧ポンプ本体132と一対の旋回側第1及び第2HSTライン139a,139bを介して流体接続された旋回用油圧モータ本体137と、前記旋回用油圧モータ本体137を相対回転不能に支持する旋回用モータ軸136と、前記旋回用油圧モータ本体137の容積量を固定する固定斜板(図示せず)とを有している。
【0045】
前記旋回用油圧ポンプ側容積調整機構133は、ステアリングハンドル等の旋回操作部材350への人為操作に基づき前記旋回用油圧ポンプ130Pの容積量を変更させるように構成されている。
【0046】
詳しくは、前記コンバイン1は、図6及び図7に示すように、人為操作可能な前記旋回操作部材350と、前記旋回操作部材350への人為操作に基づき前記旋回用油圧ポンプ側容積調整機構133を作動させる旋回作動機構360とを備えている。
【0047】
本実施の形態においては、前記旋回作動機構360は、前記旋回操作部材350への人為操作に基づいて前記制御装置400によって作動制御されるようになっている。
【0048】
即ち、前記コンバイン1は、図6に示すように、さらに、前記旋回操作部材350の操作位置を検出する操作側旋回センサ420と、前記旋回用油圧ポンプ側可動斜板の傾転位置を直接又は間接的に検出する作動側旋回センサ425とを備えており、前記制御装置400が、前記操作側旋回センサ420及び前記作動側旋回センサ425からの信号に基づき前記旋回作動機構360の作動制御を行うように構成されている。
【0049】
前記旋回作動機構360は、図6に示すように、旋回用油圧ポンプ側ピストン装置361と、前記第1補助ポンプ501から前記旋回用油圧ポンプ側ピストン装置361への作動油の給排を切り換える旋回用油圧ポンプ側電磁弁362とを有している。
【0050】
斯かる構成において、前記制御装置400は、前記操作側旋回センサ420及び前記作動側旋回センサ425からの信号に基づき、前記旋回用油圧ポンプ側電磁弁362の位置制御を行い、これにより、前記旋回用油圧ポンプ側ピストン装置361が前記制御軸を介して前記旋回用油圧ポンプ側可動斜板を前記旋回操作部材350の操作位置に応じた傾転位置に位置させるようになっている。
【0051】
なお、前記操作側旋回センサ420として回転角センサが用いられる場合には、前記制御装置400は前記旋回操作部材350の直進位置を初期値として記憶し且つ前記初期値を基準にして前記旋回操作部材350が操作される毎に操作方向及び操作角を累積的に記憶することで、その時点での前記旋回操作部材350の操作位置を認識し得るようになっている。
【0052】
本実施の形態においては、前記旋回作動機構360は、前記電磁弁362によって給排制御される作動油の油圧を利用して前記旋回用油圧ポンプ側容積調整機構133を作動させるように構成されているが、これに代えて、電動モータを採用することも可能である。
又、前記ピストン装置361及び前記電磁弁362の組み合わせ又は前記電動モータ等のように前記制御装置400によって電気的に作動制御される構成に代えて、前記旋回操作部材350と前記旋回用油圧ポンプ側容積調整機構133とを作動連結する機械リンク機構によって前記旋回作動機構360を形成することも可能である。
【0053】
前記多段変速装置150は前記走行用HST120からの回転動力を多段変速して前記一対の第1及び第2差動機構170a,170bに向けて出力するように構成されている。
【0054】
詳しくは、前記多段変速装置150は、図5に示すように、前記走行用モータ軸126に作動連結された駆動軸151と、前記走行系伝動機構180を介して前記第1及び第2差動機構170a,170bに作動連結された従動軸152と、前記駆動軸151及び前記従動軸152に支持された複数のギヤ列153と、前記複数のギヤ列153の何れか一のギヤ列を選択的に伝動状態とさせ得る切替シフタ154とを有している。
【0055】
本実施の形態においては、図5に示すように、前記多段変速装置150は、前記複数のギヤ列153として、低速ギヤ列153a,標準ギヤ列153b及び高速ギヤ列153cを有しており、3段の変速を行えるように構成されている。
そして、前記切替シフタ154は、前記低速ギヤ列153aを伝動状態とさせる低速位置,前記標準ギヤ列153bを伝動状態とさせる標準位置及び両ギヤ列153a,153bを共に動力遮断状態とさせる中立位置を選択的にとり得る低速/標準用切替シフタ154aと、前記高速ギヤ列153cを選択的に伝動状態又は動力遮断状態とさせる高速用切替シフタ154bとを含んでいる。
【0056】
前記多段変速装置150は、副変速操作部材370への人為操作に基づき変速動作を行うように構成されている。
即ち、前記コンバイン1は、人為操作可能な前記副変速操作部材370(図7及び図8参照)と、前記副変速操作部材370への人為操作に基づき前記切替シフタ154a,154bを作動させる副変速作動機構(図示せず)とを備えている。
【0057】
前記副変速作動機構は、前記副変速操作部材370への人為操作に基づき、前記切替シフタ154を作動させて前記低速ギヤ列153a,前記標準ギヤ列153b及び前記高速ギヤ列153cの何れか一のギヤ列を選択的に伝動状態とさせ得る限り、種々の形態をとり得る。
即ち、前記副変速作動機構として、機械式リンク機構を採用することも可能であるし、前記制御装置400によって電気的に制御可能な油圧ピストン及び電磁弁の組み合わせ若しくは電動モータを採用することも可能である。
【0058】
ところで、前記コンバイン1においては、前記主変速操作部材310への人為操作に基づいて前記主変速作動機構320が前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構123を作動させることで、走行速度が無段変速するようになっており、前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構123が主変速装置として作用している。
【0059】
そして、前記走行モード切替操作部材318への人為操作に基づいて前記走行モード切替作動機構330によって作動制御される前記走行用油圧モータ側容積調整機構128及び前記副変速操作部材370への人為操作に基づいて前記副変速作動機構によって作動制御される前記多段変速装置150の双方が、前記主変速装置による変速可能範囲(変速幅)を変更する副変速装置として作用している。
【0060】
即ち、本実施の形態においては、前記走行用油圧モータ側容積調整機構128の作動状態及び前記多段変速装置150の伝動状態の組み合わせによって、前記主変速装置による変速可能範囲(変速幅)が変更される。
【0061】
本実施の形態においては、前記走行用油圧モータ120Mが小容積状態で且つ前記多段変速装置150が標準変速段に係合している場合の前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構123による変速可能範囲(以下、主変速範囲という)が、前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態で且つ前記多段変速装置150が高速変速段に係合している場合の主変速範囲よりも高くなるように、前記走行用油圧モータ120Mの小容積及び大容積並びに前記多段変速装置150の前記ギヤ列の変速比が設定されている。
【0062】
つまり、前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態で且つ前記多段変速装置150が低速変速段に係合している場合の主変速範囲が最も低速な第1範囲となり、前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態で且つ前記多段変速装置150が標準変速段に係合している場合の主変速範囲が前記第1範囲よりも高速領域を含む第2範囲となり、前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態で且つ前記多段変速装置150が高速変速段に係合している場合の主変速範囲が前記第2範囲よりも高速領域を含む第3範囲となる。
そして、前記走行用油圧モータ120Mが小容積状態で且つ前記多段変速装置150が標準変速段に係合している場合の主変速範囲が前記第3範囲よりも高速領域を含む第4範囲となり、前記走行用油圧モータ120Mが小容積状態で且つ前記多段変速装置150が高速変速段に係合している場合の主変速範囲が前記第4範囲よりも高速領域を含む第5範囲となる。
【0063】
前記第1及び第2差動機構170a,170bの各々は、図5に示すように、サンギヤ171と、前記サンギヤ171の回りを公転し得るように該サンギヤ171に噛合された遊星ギヤ172を相対回転自在に支持し且つ前記遊星ギヤ172と共に前記サンギヤ171の回りを公転するキャリア173と、前記遊星ギヤ172と噛合するインターナルギヤ174とを含む第1〜第3要素を備えている。
【0064】
前記走行系伝動機構180は、図5に示すように、前記多段変速装置150からの回転動力を同一方向で前記第1及び第2差動機構170a,170bの第1要素に伝達している。
前記旋回系伝動機構190は、図5に示すように、前記旋回用HST130からの回転動力を前記第1及び第2差動機構170a,170bの第2要素に互いに対して反対方向で伝達している。
そして、前記第1及び第2差動機構170a,170bは、それぞれ、前記第1及び第2要素の回転動力を合成して、該合成回転動力を前記第3要素から対応する前記出力軸11に出力している。
本実施の形態においては、前記サンギヤ171,前記インターナルギヤ174及び前記キャリア173が、それぞれ、前記第1要素,前記第2要素及び前記第3要素として作用している。
【0065】
なお、本実施の形態においては、図5に示すように、前記トランスミッション1は、さらに、前記多段変速装置150の前記従動軸152に作動的に制動力を付加し得る走行側ブレーキ装置140と、前記旋回用モータ軸136に作動的に制動力を付加し得る旋回側ブレーキ装置145と、前記旋回用モータ軸136から前記第1及び第2差動機構170a,170bへの動力伝達を系脱する旋回側クラッチ装置146とを備えている。
【0066】
前記脱穀系プーリ伝動機構200には、図4に示すように、脱穀クラッチ210が介挿されている。
前記脱穀クラッチ210は、前記運転席5の近傍に配設された作業クラッチレバー380(図7及び図8参照)への人為操作に基づいて作動制御されるように構成されている。
【0067】
本実施の形態においては、前記脱穀クラッチ210は、前記作業クラッチレバー380への人為操作に基づき前記制御装置400によって作動制御されている。
詳しくは、前記コンバイン1は、図6に示すように、前記制御装置400によって作動制御される脱穀クラッチ作動機構510を有している。
【0068】
前記脱穀クラッチ作動機構510は、図6に示すように、脱穀クラッチ用ピストン装置511と、前記第1補助ポンプ501から前記脱穀クラッチ用ピストン装置511への作動油の給排を切り換える脱穀クラッチ用電磁弁512とを有している。
【0069】
斯かる構成において、前記制御装置400は、前記作業クラッチレバー380の操作位置に応じて前記脱穀クラッチ用電磁弁512の位置制御を行い、これにより、前記脱穀クラッチ用ピストン装置511が前記脱穀クラッチ210による動力伝達を選択的に係合又は遮断させるようになっている。
【0070】
前記刈取系プーリ伝動機構250は、図4に示すように、車速と同調した回転速度を有する回転動力を前記刈取装置30へ伝達する車速同調側刈取系プーリ伝動機構260と、前記エンジン9からの定速回転動力を前記刈取装置30へ伝達する定速側刈取系プーリ伝動機構270とを含んでいる。
【0071】
前記車速同調側刈取系プーリ伝動機構260は、図5に示すように、前記走行用HST120の前記走行用モータ軸126から作動的に回転動力を取り出して、前記刈取装置30へ伝達するように構成されている。
【0072】
前記車速同調側刈取系プーリ伝動機構260には、図4に示すように、車速同調側刈取クラッチ265が介挿されている。
前記車速同調側刈取クラッチ265は、前記作業クラッチレバー380への人為操作に基づいて作動制御される。
即ち、前記作業クラッチレバー380は、前記脱穀クラッチ210及び前記車速同調側刈取クラッチ265の双方の操作部材として作用している。
【0073】
本実施の形態においては、前記車速同調側刈取クラッチ265は、前記作業クラッチレバー380への人為操作に基づき前記制御装置400によって作動制御されている。
詳しくは、前記コンバイン1は、図6に示すように、前記制御装置400によって作動制御される車速同調側刈取クラッチ作動機構520を有している。
【0074】
前記車速同調側刈取クラッチ作動機構520は、図6に示すように、車速同調側刈取クラッチ用ピストン装置521と、前記第1補助ポンプ501から前記車速同調側刈取クラッチ用ピストン装置521への作動油の給排を切り換える車速同調側刈取クラッチ用電磁弁522とを有している。
【0075】
斯かる構成において、前記制御装置400は、前記作業クラッチレバー380の操作位置に応じて前記車速同調側刈取クラッチ用電磁弁522の位置制御を行い、これにより、前記車速同調側刈取クラッチ用ピストン装置521が前記車速同調側刈取クラッチ365による動力伝達を選択的に係合又は遮断させるようになっている。
【0076】
前記定速側刈取系プーリ伝動機構270は、図4に示すように、前記脱穀系プーリ伝動機構200から定速回転動力を取り出して、前記刈取装置300へ伝達するように構成されている。
詳しくは、前記定速側刈取系プーリ伝動機構270は、前記脱穀クラッチ210より伝動方向下流側において前記脱穀系プーリ伝動機構200から定速回転動力を取り出している。
【0077】
前記定速側刈取系プーリ伝動機構270には、図4に示すように、定速側刈取クラッチ275が介挿されている。
前記定速側刈取クラッチ275は、前記運転席5の近傍に配設されたクラッチペダル等の定速側刈取クラッチ操作部材(図示せず)への人為操作に基づいて作動制御される。
【0078】
本実施の形態においては、前記定速側刈取クラッチ275は、前記定速側刈取クラッチ操作部材への人為操作に基づき前記制御装置400によって作動制御されている。
詳しくは、前記コンバイン1は、図6に示すように、前記制御装置400によって作動制御される定速側刈取クラッチ作動機構530を有している。
【0079】
前記定速側刈取クラッチ作動機構530は、図6に示すように、定速側刈取クラッチ用ピストン装置531と、前記第1補助ポンプ501から前記定速側刈取クラッチ用ピストン装置531への作動油の給排を切り換える定速側刈取クラッチ用電磁弁532とを有している。
【0080】
斯かる構成において、前記制御装置400は、前記定速側刈取クラッチ操作部材の操作位置に応じて前記定速側刈取クラッチ用電磁弁532の位置制御を行い、これにより、前記定速側刈取クラッチ用ピストン装置531が前記定速側刈取クラッチ275による動力伝達を選択的に係合又は遮断させるようになっている。
【0081】
なお、前記コンバイン1は、図6に示すように、前記刈取装置30を昇降させる前記刈取昇降用油圧装置561と、前記機体2の左側及び右側をそれぞれ独立して昇降させる左右一対の前記機体昇降用油圧装置562a,562bと、前記グレンタンク6に付設されたオーガを作動させる為のオーガ作動用油圧装置563と、これらの油圧装置に対する作動油の油圧源として作用する第2補助ポンプ502とを備えている。
【0082】
前述の通り、前記制御装置400は、前記走行モード切替操作部材318からの人為操作信号に基づき前記走行モード切替作動機構330の作動制御を行って、前記走行用油圧モータ120Mを選択的に小容積状態又は大容積状態とさせるように構成されているが、本実施の形態に係る前記コンバイン1においては、これに加えて、前記多段変速装置150が最低速段(本実施の形態においては低速変速段)に係合している場合には、前記制御装置400は前記走行モード切替操作部材318からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態となるように前記走行モード切替作動機構330を強制的に作動制御するように構成されている。
【0083】
詳しくは、前記コンバイン1は、図6に示すように、前記多段変速装置150の伝動状態を直接又は間接的に検出する副変速検出センサ440を備えている。
前記副変速検出センサ440は、例えば、前記副変速操作部材370の操作位置を検出するセンサ、又は、前記切替シフタ154a,154bの作動位置を検出するセンサとすることができる。
【0084】
前記制御装置400は、演算処理を実行するCPU及び後述する制御プログラム401が格納された記憶手段を有しており、前記走行モード切替操作部材318及び前記副変速センサ440からの信号を入力して前記制御プログラム401に基づき前記走行モード切替作動機構330へ制御信号を出力するように構成されている。
【0085】
図9に、前記制御装置400に記憶された前記制御プログラム401のフローチャートを示す。
前記制御プログラム401は、前記エンジン9の駆動開始に伴ってスタートする。
前記制御装置400は、初期状態においては前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態となるように(即ち、前記コンバイン1が低速モードとなるように)、前記走行モード切替作動機構330に低速モード制御信号を出力する(ステップ10)。
【0086】
前記制御装置400は、ステップ11において、前記副変速センサ440からの信号に基づき前記多段変速装置150が最低速段(本実施の形態においては低速変速段)に係合しているか否を判断する。
【0087】
ステップ11においてYESの場合(即ち、前記多段変速装置150が低速変速段に係合している場合)には、前記制御装置400は、前記走行モード切替操作部材318からの人為操作信号に拘わらず、ステップ12において、前記走行モード切替作動機構330に低速モード制御信号を出力し、これにより、前記走行用油圧モータ120Mを大容積状態として前記コンバイン1を低速モードとする。
その後、ステップ13において、前記エンジン9が停止されたか否かを判断し、NOの場合には前記ステップ11へ戻り、YESの場合には前記制御プログラム401が終了する。
【0088】
ステップ11においてNOの場合には、前記制御装置400は、ステップ21において、前記副変速センサ440からの信号に基づき前記多段変速装置150が最高速段(本実施の形態においては高速変速段)に係合しているか否を判断する。
【0089】
ステップ21においてYESの場合(即ち、前記多段変速装置150が高速変速段に係合している場合)には、前記制御装置400は、前記走行モード切替操作部材318からの人為操作信号に拘わらず、ステップ12に移行して、前記走行モード切替作動機構330に低速モード制御信号を出力し、これにより、前記走行用油圧モータ120Mを大容積状態として前記コンバイン1を低速モードとする。
【0090】
ステップ21においてNOの場合には、前記制御装置400は、ステップ31において、前記副変速センサ440からの信号に基づき前記多段変速装置150が標準変速段に係合しているか否を判断する。
【0091】
ステップ31においてNOの場合(即ち、前記多段変速装置150が何れの変速段にも係合しない中立状態の場合)には、前記制御装置400は、ステップ13へ移行する。
【0092】
一方、ステップ31においてYESの場合(即ち、前記多段変速装置150が標準変速段に係合している場合)には、前記制御装置400は、ステップ32において、前記刈取装置30が非作動状態か否かを判断する。
【0093】
前記刈取装置30が非作動状態か否かの判断は、前記コンバイン1に備えられる刈取センサ450(図6参照)からの信号に基づき行われる。
前記刈取センサ450は、例えば、前記刈取装置30の入力軸31(図4参照)の回転有無を検出するセンサ、前記車速同調側刈取クラッチ265の作動位置を検出するセンサ及び前記定速側刈取クラッチ275の作動位置を検出するセンサを含むセンサ、又は、前記作業クラッチレバー380の操作位置を検出するセンサ及び前記定速側刈取クラッチ操作部材の操作位置を検出するセンサを含むセンサとすることができる。
【0094】
ステップ32においてNOの場合(即ち、前記刈取装置30が作動状態の場合)には、前記制御装置400は、前記走行モード切替操作部材318からの人為操作信号に拘わらず、ステップ12に移行して、前記走行モード切替作動機構330に低速モード制御信号を出力し、これにより、前記走行用油圧モータ120Mを大容積状態として前記コンバイン1を低速モードとする。
【0095】
ステップ32においてYESの場合(即ち、前記刈取装置30が非作動状態の場合)には、前記制御装置400は、ステップ33において、前記走行モード切替操作部材318から低速モードを選択する人為操作信号が入力されているか否かを判断する。
【0096】
ステップ33においてYESの場合(即ち、前記走行モード切替操作部材318から低速モード選択信号が入力されている場合)には、前記制御装置400は、ステップ12へ移行して、前記走行モード切替操作部材318への人為操作に従って前記走行モード切替作動機構330に低速モード制御信号を出力し、これにより、前記走行用油圧モータ120Mを大容積状態として前記コンバイン1を低速モードとする。
【0097】
ステップ33においてNOの場合には、前記制御装置400は、ステップ41において、前記走行モード切替操作部材318から高速モードを選択する人為操作信号が入力されているか否かを判断する。
【0098】
ステップ41においてNOの場合(即ち、前記走行モード切替操作部材318から走行モード選択信号が入力されていない場合)には、前記制御装置400はステップ13へ移行する。
【0099】
ステップ41においてYESの場合(即ち、前記走行モード切替操作部材318から高速モード選択信号が入力されている場合)には、前記制御装置400は、ステップ42へ移行して、前記走行モード切替操作部材318への人為操作に従って前記走行モード切替作動機構330に高速モード制御信号を出力し、これにより、前記走行用油圧モータ120Mを小容積状態として前記コンバイン1を高速モードとする。
その後、前記制御装置400は、ステップ13へ移行する。
【0100】
このように、本実施の形態に係る前記コンバイン1においては、前記多段変速装置150が最低速段(本実施の形態においては低速変速段)に係合している場合には、前記制御装置400は、前記走行モード切替操作部材318からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態となるように前記走行モード切替作動機構330を強制的に作動制御して前記コンバイン1を低速モードに固定するように構成されている。
従って、畦際での刈取作業時やトラックへのコンバインの積み降ろし時、又は、湿田での刈取作業時等のように前記コンバイン1を低速走行させる必要がある為に前記多段変速装置150を最低速段に係合させている際に、操縦者が意に反して前記走行モード切替操作部材318を操作した場合であっても、前記コンバイン1が高速モードへ移行することを確実に防止でき、これにより、低速走行させる必要がある場合における走行安全性を向上させることができる。
【0101】
さらに、本実施の形態においては、前述の通り、前記多段変速装置150が最高速段(本実施の形態においては高速変速段)に係合している場合には、前記制御装置400は、前記走行モード切替操作部材318からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータ120Mが大容積状態となるように前記走行モード切替作動機構330を強制的に作動制御して前記コンバイン1を低速モードに固定するように構成されている。
つまり、前記制御装置400は、前記多段変速装置150が最高速段に係合している状態においては前記走行モード切替操作部材318への人為操作に拘わらず前記走行用油圧モータ120Mを強制的に大容積状態(低速モード状態)に保持している。
斯かる構成によれば、前記多段変速装置150及び前記走行用油圧モータ120Mの双方が高速状態になることを防止でき、前記コンバイン1の走行速度が不必要に高速化することを確実に防止できる。
【0102】
さらに、前記多段変速装置150が最低速段及び最高速段の何れにも係合しておらず、前記走行モード切替操作部材318による走行モードの切替が許容される状態(即ち、前記多段変速装置150が最低速段及び最高速段以外の変速段(本実施の形態においては標準変速段)に係合している状態)であっても、前記刈取装置30が作動状態とされている場合には、前記制御装置400は、前記走行モード切替操作部材318への人為操作に拘わらず前記走行用油圧モータ120Mを強制的に大容積状態(低速モード状態)に保持している。
斯かる構成によれば、刈取作業中に走行モードが低速モードから高速モードへ移行することを確実に防止でき、これにより、前記刈取装置30や前記フィードチェーン装置20に刈取穀稈が詰まる等の不都合を有効に防止することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 コンバイン
9 エンジン(駆動源)
30 刈取装置
120 走行用HST
120P 走行用油圧ポンプ
123 走行用油圧ポンプ側容積調整機構
120M 走行用油圧モータ
128 走行用油圧モータ側容積調整機構
150 多段変速装置
265 車速同調側刈取クラッチ
275 定速側刈取クラッチ
310 主変速操作部材
318 走行モード切替操作部材
320 主変速作動機構
330 走行モード切替作動機構
370 副変速操作部材
400 制御装置
440 副変速検出センサ
450 刈取検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に作動連結された可変容積型の走行用油圧ポンプ及び前記走行用油圧ポンプに流体接続された可変容積型の走行用油圧モータを有する走行用HSTと、前記走行用HSTから回転動力を入力する機械式の多段変速装置と、人為操作可能な主変速操作部材と、前記主変速操作部材への人為操作に基づき前記走行用油圧ポンプの走行用油圧ポンプ側容積調整機構を作動させる主変速作動機構と、人為操作可能な走行モード切替操作部材と、前記走行用油圧モータの走行用油圧モータ側容積調整機構を介して該走行用油圧モータを小容積状態又は大容積状態に切り替える走行モード切替作動機構と、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に基づき前記走行モード切替作動機構の作動制御を行う制御装置と、人為操作可能な副変速操作部材と、前記副変速操作部材への人為操作に基づき前記多段変速装置の伝動状態を切り替える副変速作動機構とを備えたコンバインであって、
前記多段変速装置の伝動状態を直接又は間接的に検出する副変速検出センサを備え、
前記制御装置は、前記副変速検出センサからの信号に基づき前記多段変速装置が最低速段に係合していると判断する場合には、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータが大容積状態となるように前記走行モード切替作動機構を強制的に作動制御することを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記多段変速装置は、低速変速段,標準変速段及び高速変速段の3変速段を有し、
前記走行用油圧モータが小容積状態で且つ前記多段変速装置が標準変速段に係合している場合の前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構による変速可能範囲が、前記走行用油圧モータが大容積状態で且つ前記多段変速装置が高速変速段に係合している場合の前記走行用油圧ポンプ側容積調整機構による変速可能範囲よりも高くなるように、前記走行用油圧モータの小容積及び大容積並びに前記多段変速装置の変速比が設定されており、
前記制御装置は、前記副変速検出センサからの信号に基づき前記多段変速装置が高速変速段に係合していると判断する場合には、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータが大容積状態となるように前記走行モード切替作動機構を強制的に作動制御し、且つ、前記副変速検出センサからの信号に基づき前記多段変速装置が標準変速段に係合していると判断する場合には、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に基づいて前記走行用油圧モータの容積が変更されるように前記走行モード切替作動機構を作動制御することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記駆動源から作動的に回転動力が伝達される刈取装置と、前記駆動源から前記刈取装置への動力伝達を選択的に係脱する刈取クラッチと、前記駆動源から前記刈取装置への動力伝達状態を検出する刈取検出センサとを備え、
前記制御装置は、前記刈取検出センサからの信号に基づき前記刈取装置が作動状態にあると判断した場合には、前記走行モード切替操作部材からの人為操作信号に拘わらず前記走行用油圧モータが大容積状態に固定されるように前記走行モード切替作動機構を強制的に作動制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−178631(P2010−178631A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22397(P2009−22397)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】