説明

コンバイン

【課題】必要に応じてグレンタンクの容量を増大させることができ、かつ、グレンタンクが損傷することを防止することができるコンバインを提供する。
【解決手段】穀粒を移送する縦搬送装置80を設け、各板状部材82b〜85bを起立させた状態において、穀粒を縦搬送装置80の上部の排出口80aからグレンタンクF内に供給する作業姿勢と、各板状部材82b〜85bを折り畳んだ状態において、縦搬送装置80の排出口80aが作業姿勢での縦搬送装置80の排出口80aよりも低くなる格納姿勢とに、縦搬送装置80を姿勢変更可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒を貯留するグレンタンクと、穀粒を移送して上部の排出口からグレンタンク内に供給する縦スクリューと、を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンバインでは、グレンタンクの側面に横外方に張り出す張出姿勢とグレンタンク内に引退する引退姿勢とに姿勢変更可能な補助タンクを設けているものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
補助タンクを張出姿勢に姿勢変更することにより、必要に応じてグレンタンクの容量を増大させることができ、穀粒の排出作業を行う回数を減らす等、作業効率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3302613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
補助タンクを引退姿勢から張出姿勢に姿勢変更してコンバインを運転するときに、作業者が、補助タンクが張出姿勢であることを忘れてしまうことがある。このとき、畦際を刈取走行するときに、横外方に張り出した補助タンクが畦際に立つ樹木等に接触したり、路上走行するときに、横外方に張り出した補助タンクが道路の側部に立つ電柱等に接触して、グレンタンクが損傷することがある。
【0006】
通常、補助タンクを引退姿勢にした状態でコンバインを運転することが多く、作業者は、補助タンクを引退姿勢にしたときの車両感覚が身に付いている。このため、補助タンクを引退姿勢から張出姿勢に姿勢変更してコンバインを運転するときに、作業者が、補助タンクが張出姿勢であることを認識していたとしても、補助タンクを張出姿勢にしたときの車両感覚をすぐにはつかむことができないことがある。このとき、畦際を刈取走行するときに、横外方に張り出した補助タンクが畦際に立つ樹木等に接触したり、路上走行するときに、横外方に張り出した補助タンクが道路の側部に立つ電柱等に接触して、グレンタンクが損傷することがある。
【0007】
本発明の目的は、必要に応じてグレンタンクの容量を増大させることができ、かつ、グレンタンクが損傷することも防止することができるコンバインを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンバインの第1特徴構成は、グレンタンクの各側壁部の上部に板状部材を夫々揺動可能に設け、前記各板状部材を内方側に向けて折り畳むことにより、前記各板状部材が前記グレンタンクの天井部を構成すると共に、前記各板状部材を上方に向けて起立させて前記グレンタンクの上部を開放することにより、前記各板状部材が前記グレンタンクの側壁部を構成して前記グレンタンクの容量を増大させるように構成してあり、穀粒を移送する縦搬送装置を設け、前記各板状部材を起立させた状態において、穀粒を前記縦搬送装置の上部の排出口からグレンタンク内に供給する作業姿勢と、前記各板状部材を折り畳んだ状態において、前記縦搬送装置の排出口が前記作業姿勢での縦搬送装置の排出口よりも低くなる格納姿勢とに、前記縦搬送装置を姿勢変更可能に構成してある点にある。
【0009】
コンバインを運転するときには、各板状部材を上方に向けて起立させるとともに、縦搬送装置を作業姿勢に姿勢変更する。これにより、各板状部材がグレンタンクの側壁部を構成でき、グレンタンクの容量を増大させることができる。よって、穀粒の排出作業を行う回数を減らす等、作業効率の向上を図ることができる。
【0010】
しかも、グレンタンクの上下高さを高くすることにより、グレンタンクの容量を増大させるので、特許文献1のようにグレンタンクの側面を横外方に張り出させる必要が無くなる。よって、畦際を刈取走行するときに、グレンタンクの側面が畦際に立つ樹木等に接触したり、路上走行するときに、グレンタンクの側面が道路の側部に立つ電柱等に接触して、グレンタンクが損傷することがなくなる。
【0011】
コンバインを納屋等の建物に格納するときには、各板状部材を内方側に向けて折り畳むとともに、縦搬送装置をその排出口が作業姿勢での縦搬送装置の排出口よりも低くなる格納姿勢に姿勢変更する。これにより、各板状部材がグレンタンクの天井部を構成でき、グレンタンク内に塵埃が侵入することを防止できる。
【0012】
しかも、各板状部材を折り畳むとともに、格納姿勢での縦搬送装置の排出口を作業姿勢での縦搬送装置の排出口よりも低くすることにより、縦搬送装置の上下高さを低くすることができる。よって、例えば、コンバインを建物に格納するときに、縦搬送装置が邪魔にならない等、コンバインを容易に格納することができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記縦搬送装置の途中で該縦搬送装置の下側部分に対し該縦搬送装置の上側部分を折り曲げ可能に構成してあり、前記上側部分と前記下側部分とを上下方向に沿った直線状にすることにより、前記縦搬送装置を作業姿勢に切り換え、前記下側部分に対して前記上側部分を横向きとした屈曲状にすることにより、前記縦搬送装置を格納姿勢に切り換えるように構成してある点にある。
【0014】
縦搬送装置を格納姿勢に切り換えたときに、縦搬送装置の上側部分を横向きに折り曲げることにより、縦搬送装置を格納姿勢に切り換えたときの縦搬送装置の上下高さを十分に低くすることができる。
【0015】
また、上側部分を上方に向けることにより、縦搬送装置を作業姿勢に切り換えることができ、上側部分を横向きに折り曲げることにより、縦搬送装置を格納姿勢に切り換えることができる。つまり、上側部分を上方に向けたり、横向きに折り曲げるだけの簡単な操作で、縦搬送装置を作業姿勢と格納姿勢とに切り換えることができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、前記各板状部材を折り畳んだ状態において、前記上側部分を前記天井部に載置した姿勢を、前記格納姿勢としてある点にある。
【0017】
縦搬送装置を格納姿勢に切り換えたときに、縦搬送装置の上側部分を横向きに折り曲げて天井部に載置することにより、縦搬送装置を格納姿勢に切り換えたときの縦搬送装置の上下高さを十分に低くすることができる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、前記縦搬送装置を伸縮可能に構成してあり、前記縦搬送装置を上方に伸長することにより、前記縦搬送装置を前記作業姿勢に切り換え、前記縦搬送装置を下方に短縮することにより、前記縦搬送装置を前記格納姿勢に切り換えるように構成してある点にある。
【0019】
縦搬送装置を格納姿勢に切り換えたときに、縦搬送装置を下方に短縮することにより、縦搬送装置を格納姿勢に切り換えたときの縦搬送装置の上下高さを十分に低くすることができる。しかも、縦搬送装置の上側部分を横向きに折り曲げる構成に比して、格納姿勢での縦搬送装置自身のコンパクト化を図ることができる。
【0020】
また、縦搬送装置を上方に伸長することにより、縦搬送装置を作業姿勢に切り換えることができ、縦搬送装置を下方に短縮することにより、縦搬送装置を格納姿勢に切り換えることができる。つまり、縦搬送装置を上方に伸長したり、下方に短縮するだけの簡単な操作で、縦搬送装置を作業姿勢と格納姿勢とに切り換えることができる。
【0021】
本発明の第5特徴構成は、前記各板状部材を上方に向けて起立させた状態で、隣接する前記各板状部材の側端部同士の間の隙間を塞ぐ塞ぎ部材を設けてある点にある。
【0022】
塞ぎ部材によって隣接する各板状部材の側端部同士の間の隙間を塞ぐので、各板状部材の側端部同士の間の隙間から穀粒がこぼれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンバインを示す側面図である。
【図2】コンバインを示す平面図である。
【図3】作業姿勢(直線状態)の縦搬送装置および各板状部材を起立させた状態のグレンタンクを示す後面図である。
【図4】格納姿勢(屈曲状態)の縦搬送装置および各板状部材を折り畳んだ状態のグレンタンクを示す後面図である。
【図5】(a)は、格納姿勢の縦搬送装置および各板状部材を折り畳んだ状態のグレンタンクを示す斜視図である。(b)は、作業姿勢の縦搬送装置および各板状部材を起立させた状態のグレンタンクを示す斜視図である。
【図6】(a)は、作業姿勢における縦搬送装置の要部を示す縦断面図である。(b)は、格納姿勢における縦搬送装置の要部を示す縦断面図である。
【図7】第2実施形態における作業姿勢(最も伸長した状態)の縦搬送装置および各板状部材を起立させた状態のグレンタンクを示す後面図である。
【図8】第2実施形態における格納姿勢(最も短縮した状態)の縦搬送装置および各板状部材を折り畳んだ状態のグレンタンクを示す後面図である。
【図9】第2実施形態における縦搬送装置の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係るコンバインについて説明する。
【0025】
〔全体構成〕
図1、図2に示すように、この普通型コンバインは、左右一対のクローラ式走行装置Aを装備した機体フレームB(機体の一例)の前部に穀稈を刈り取る刈取部Cおよび作業者が運転する運転部Dを装備するとともに、その機体フレームBの後部左側に刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部Eを装備し、機体フレームBの後部右側に脱穀した穀粒を貯留するグレンタンクFおよび貯留した穀稈を排出する穀粒排出部Gを装備して構成してある。
【0026】
(グレンタンク)
図1〜図5に示すように、グレンタンクFは、機体フレームBの後部の右側に配設されている。グレンタンクFは、断面形状が略V字状の底面部81と、前側の側壁部材82aと、後側の側壁部材83aと、左側の側壁部材84aと、右側の側壁部材85aと、を備えて、上方が開口する箱状に構成してある。
【0027】
前側の側壁部材82aの上部には、左右のヒンジ121を介して前側の板状部材82bが左右軸芯周りで内方側(後側)に揺動可能に支持されている。後側の側壁部材83aの上部には、左右のヒンジ122を介して後側の板状部材83bが左右軸芯周りで内方側(前側)に揺動可能に支持されている。左側の側壁部材84aには、前後のヒンジ123を介して左側の板状部材84bが前後軸芯周りで内方側(右側)に揺動可能に支持されている。右側の側壁部材85aの上部には、前後のヒンジ124を介して右側の板状部材85bが前後軸芯周りで内方側(左側)に揺動可能に支持されている。
【0028】
前記前側および後側板状部材82b,83bの折り畳んだ状態での前後長さ(起立姿勢での上下高さ)は、グレンタンクFの上端開口の右および左の辺の長さよりも短く、グレンタンクFの上端開口の右および左の辺の長さの半分よりも長い長さに設定され、右側および左側板状部材84b,85bの折り畳んだ状態での左右長さ(起立姿勢での上下高さ)は、グレンタンクFの上端開口の前および後の辺の長さよりも短く、グレンタンクFの上端開口の前および後の辺の長さの半分よりも長い長さに設定されている。
【0029】
前記前側の板状部材82b、後側の板状部材83b、左側の板状部材84b、右側の板状部材85bが起立した状態で、左側の板状部材84bと前側の板状部材82bとを連結する左前側の連結金具125、右側の板状部材85bと前側の板状部材82bとを連結する右前側の連結金具126、左側の板状部材84bと後側の板状部材83bとを連結する左後側の連結金具127、右側の板状部材85bと後側の板状部材83bとを連結する右後側の連結金具128が、それら上端部の角部に備えられている。
【0030】
コンバインの運転時において、図5(b)に示すように、前記前側の板状部材82b、後側の板状部材83b、左側の板状部材84b、右側の板状部材85bを上方に向けて起立させ、左前側の連結金具125によって隣接する各板状部材84b,82bを互いに連結し、右前側の連結金具126によって隣接する各板状部材85b,82bを互いに連結し、左後側の連結金具127によって隣接する各板状部材84b,83bを互いに連結し、右後側の連結金具128によって隣接する各板状部材85b,83bを互いに連結する。
【0031】
このとき、前側の側壁部材82aおよび前側の板状部材82bが前側の側壁部82を構成し、後側の側壁部材83aおよび後側の板状部材83bが後側の側壁部83を構成し、左側の側壁部材84aおよび左側の板状部材84bが左側の側壁部84を構成し、右側の側壁部材85aおよび右側の板状部材85bが右側の側壁部85を構成する。
【0032】
このように、各板状部材82b,83b,84b,85bを起立姿勢にすることにより、グレンタンクFの容量を大幅に増大させることができる。また、図5に示すように、各板状部材82b,83b,84b,85bを起立姿勢にしたときに、ボルトやピン等によって隣接する各板状部材82b,83b,84b,85bに亘ってゴム製の塞ぎ部材86を取り付ける。これにより、隣接する各板状部材82b,83b,84b,85bの側端部同士の間の隙間を塞いで、各板状部材82b,83b,84b,85bの側端部同士の間の隙間から穀粒がこぼれることを防止できる。
【0033】
本構成では、各板状部材82b,83b,84b,85bを起立姿勢にしたときに、ボルトやピン等によって隣接する各板状部材82b,83b,84b,85bに亘ってゴム製の塞ぎ部材86を取り付ける。しかし、別の手段として、各板状部材82b,83b,84b,85bの一側端部に、ゴム製の塞ぎ部材86をその一部が外方側に突出する態様で取り付け、各板状部材82b,83b,84b,85bを起立姿勢にして連結金具125,126,127,128で連結するときに、各板状部材82b,83b,84b,85bに取り付けられた塞ぎ部材86が、それらに隣接する各板状部材82b,83b,84b,85bに接触し、連結金具125,126,127,128の連結により圧縮され、隣接する各板状部材82b,83b,84b,85bの側端部同士の間の隙間を塞ぐように構成してもよい。
【0034】
コンバインの格納時において、図5(a)に示すように、連結金具125〜128による隣接する各板状部材82b,83b,84b,85bの連結を解除し、前側の板状部材82b、後側の板状部材83b、左側の板状部材84b、右側の板状部材85bを内方側に向けて折り畳む。折り畳む順番は、前側および後側の板状部材82b,83bを折り畳んだ後に、右側の板状部材85bを折り畳み、最後に左側の板状部材84bを折り畳む。このとき、前側の板状部材82b、後側の板状部材83b、左側の板状部材84b、右側の板状部材85bが、天井面部87(天井部の一例)を構成する。このように、各板状部材82b,83b,84b,85bを折畳姿勢にすることにより、グレンタンクF内に塵埃が侵入することを防止できる。尚、4枚の板状部材82b,83b,84b,85bを折り畳んだ状態では、グレンタンクFの上端開口の前後および左右中央部において、4枚の板状部材82b,83b,84b,85bが上下に重なり合った状態になる。
【0035】
(揚送スクリューコンベヤ)
図3〜図6に示すように、脱穀部EとグレンタンクFの間には、1番スクリュー(図示しない)で搬送された1番物を揚送して、グレンタンクFに供給する揚送スクリューコンベヤ80(縦搬送装置の一例)が設けられている。
【0036】
前記揚送スクリューコンベヤ80は、その揚送スクリューコンベヤ80の途中で根元側部分88(下側部分の一例)に対し先端側部分89(上側部分の一例)を折り曲げ可能に構成してあり、先端側部分89と根元側部分88とを上下方向に沿った直線状にすることにより、揚送スクリューコンベヤ80を穀粒を揚送スクリューコンベヤ80の上部の排出口80aからグレンタンクF内に供給する作業姿勢に切り換え、根元側部分88に対して先端側部分89を横向き(図4の紙面右向き)とした屈曲状にすることにより、揚送スクリューコンベヤ80を揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aが作業姿勢での揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aよりも低くなる格納姿勢に切り換えるように構成してある。
【0037】
具体的に説明すると、図6に示すように、根元側部分88は、根元側スクリュー軸88aおよび根元側オーガ筒88bを備えている。先端側部分89は、先端側スクリュー軸89aおよび先端側オーガ筒89bを備えている。尚、先端側オーガ筒89bに対して揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aが形成された先端排出部を先端側スクリュー軸89aの軸芯周りに回動可能(向き変更可能)に取り付けてある。図3および図5(b)に示すように、排出口80aが形成された先端排出部は、斜め外方下向きに傾斜した形状に形成され、その排出口80aは横方向(前後方向)に幅広に形成されている。これにより、グレンタンクFへの穀粒排出時には、排出口80aからの穀粒が各板状部材82b,83b,84b,85bにより増大された貯留空間の上部における前後および左右中央部に向けて排出される。
【0038】
前記根元側スクリュー軸88aの先端に形成した根元側スクリュー軸88aの長手方向に延びる一対の根元側係合部90aと、先端側スクリュー軸89aの基端に形成した先端側スクリュー軸89aの径方向に延びる一対の先端側係合部90bとが、先端側部分89を伸展移動(閉じ移動)した作業姿勢では根元側スクリュー軸88aおよび先端側スクリュー軸89aが連動回転するように噛合い、先端側部分89を折畳移動(開き移動)した格納姿勢では根元側スクリュー軸88aおよび先端側スクリュー軸89aが離間して噛合いが解除されるドッグクラッチ90を構成してある。
【0039】
前記先端側部分89は、根元側オーガ筒88bの先端の右側に備えられた前後向きの回動支点X3によって折畳可能に支承されている。先端側オーガ筒89bの根元には、第2平板部材95が取り付けられている。第2平板部材95は、穀粒の流動を許容する開口95aと、先端側スクリュー軸89aの根元を支持する支持部95bとを有する。第2平板部材95には、回動軸部91aを有する開閉ハンドル91が回動可能かつ引出可能に支承されている。
【0040】
前記根元側オーガ筒88bの先端には、第1平板部材92が取り付けられている。第1平板部材92は、開閉ハンドル91に係合可能な切欠92aと、穀粒の流動を許容する開口92bと、根元側スクリュー軸88aの先端を支持する支持部92cとを有する。
【0041】
つまり、先端側部分89を伸展移動した状態で巻きバネ93の付勢力に抗して開閉ハンドル91を下方に引き出して第1平板部材92を乗り越えて挟みつける位置に回動操作することにより、先端側部分89を伸展移動した作業姿勢にロックできる。開閉ハンドル91を第1平板部材92の切欠92aの位置に回動操作することにより、巻きバネ93の付勢力によって第1平板部材92の切欠92aを通して開閉ハンドル91を上方に引き戻してロック解除となり、先端側部分89を折畳移動した格納姿勢に操作することができる。
【0042】
(揚送スクリューコンベヤおよび板状部材の姿勢)
図3〜図5に示すように、コンバインの運転時には、先端側部分89を格納姿勢から作業姿勢にし、各板状部材82b,83b,84b,85bを折畳姿勢から起立姿勢にし、揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aが形成された先端排出部を90度回動させて、排出口80aをグレンタンクFに向ける。
【0043】
このとき、揚送スクリューコンベヤ80の上部の排出口80aは、各板状部材82b,83b,84b,85b(グレンタンクFの各側壁部82,83,84,85)の上端部に形成された開口94よりも高く、且つ平面視で各板状部材82b,83b,84b,85bの上端部に形成された開口94の内方側に入り込む状態に位置している。よって、揚送スクリューコンベヤ80の駆動によって、穀粒を揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aからグレンタンクFの開口94を通してグレンタンクF内に供給することができる。
【0044】
また、各板状部材82b,83b,84b,85bを折畳姿勢から起立姿勢にすることによって、各板状部材82b,83b,84b,85bがグレンタンクFの各側壁部82,83,84,85を構成するので、各板状部材82b,83b,84b,85bを姿勢変更するだけの簡単な操作でグレンタンクFの容量を増大させることができる。
【0045】
しかも、グレンタンクFの上下高さを高くすることにより、グレンタンクFの容量を増大させるので、畦際を刈取走行するときに、グレンタンクFの各側壁部82〜85が畦際に立つ樹木等に接触したり、路上走行するときに、グレンタンクFの各側壁部82〜85が道路の側部に立つ電柱等に接触して、グレンタンクFが損傷することがなくなる。
【0046】
揚送スクリューコンベヤ80の先端側部分89には、連結部材RAが取り付けられ、板状部材84bには、ボルト129が挿通される長孔(図示しない)を有する連結部材RBが取り付けられている。このように、連結部材RBに長孔を設けるのは、先端側部分89が作業姿勢のときの連結部材RBに対するボルト129の位置と先端側部分89が格納姿勢のときの連結部材RBに対するボルト129の位置とが異なるためである。
【0047】
前記先端側部分89を作業姿勢から格納姿勢に姿勢変更するときには、ボルト129を緩めて、連結金具125〜128による隣接する各板状部材82b〜85b同士の連結を解除し、各板状部材82b〜85bを起立姿勢から折畳姿勢に姿勢変更し、排出口80aが形成された先端排出部を90度回動して排出口80aを後ろ向きとし、先端側部分89を作業姿勢から格納姿勢に姿勢変更し、ボルト129を締め付ける。この場合、ボルト129を緩めるだけで、連結部材RA,RBを介して先端側部分89と同時に板状部材84bを姿勢変更することができる。
【0048】
前記先端側部分89を格納姿勢から作業姿勢に姿勢変更するときには、ボルト129を緩めて、先端側部分89を格納姿勢から作業姿勢に姿勢変更し、各板状部材82b〜85bを折畳姿勢から起立姿勢に姿勢変更し、排出口80aが形成された先端排出部を90度回動して排出口80aを横外向きとし、連結金具125〜128によって隣接する各板状部材82b〜85b同士を互いに連結し、ボルト129を締め付ける。これら姿勢変更時に、連結部材RBに対するボルト129の位置変更が連結部材RBに形成された長穴により許容される。
【0049】
先端側部分89を格納姿勢に姿勢変更した状態では、各板状部材82b,83b,84b,85bがグレンタンクFの天井面部87を構成するので、各板状部材82b,83b,84b,85bを姿勢変更するだけの簡単な操作でグレンタンクF内に塵埃が侵入することを防止できる。また、グレンタンクFおよび揚送スクリューコンベヤ80の上下高さを低くすることができるので、コンバインを格納するときに揚送スクリューコンベヤ80が邪魔にならない。
【0050】
また、揚送スクリューコンベヤ80の先端側部分89と板状部材84bとに亘って連結部材RA,RBを設けてあるので、揚送スクリューコンベヤ80の先端側部分89が連結部材RA,RBを介してグレンタンクFの天井面部87に載置され、揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aがグレンタンクFの天井面部87に直接載置されることになる。
【0051】
さらに、図4および図5(a)に示すように、平面視で、揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aが形成された先端排出部が右側の側壁部85から横外側に突出しないようにしてある。これにより、畦際を刈取走行するときに、揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aが畦際に立つ樹木等に接触したり、路上走行するときに、揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aが道路の側部に立つ電柱等に接触することがなくなる。
【0052】
(穀粒排出部)
図1,図2に示すように、穀粒排出部Gは、グレンタンクFの底面部81に前後方向に沿って装備された底部スクリューコンベヤ41と、底部スクリューコンベヤ41の搬送終端部から上方に向けて延設されかつ縦軸芯X2周りに回転可能な縦送りスクリューコンベヤ42と、縦送りスクリューコンベヤ42の上部から横外方に向けて延設されかつ横軸芯X1周りに起伏揺動可能な排出オーガ43と、縦送りスクリューコンベヤ42を横軸芯X1周りに回転駆動して該縦送りスクリューコンベヤ42に接続する排出オーガ43を横軸芯X1周りに旋回駆動するする電動モータ45と、排出オーガ43を縦軸芯X2周りに起伏揺動駆動する油圧シリンダ44と、を備えている。
【0053】
前記各板状部材82b〜85bを起立姿勢にし、先端側部分89を作業姿勢にした状態で、油圧シリンダ44および電動モータ45の駆動によって排出オーガ43の排出口43cをトラックの荷台等の上方に位置させる。エンジン46から底部スクリューコンベヤ41の底部スクリュー軸41aへの伝動を入り切りする排出クラッチ47を入り操作することにより、グレンタンクFに貯留されている穀粒をトラックの荷台等に排出する。
【0054】
〔第2実施形態〕
この実施形態では、第1実施形態の構成と異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明を省略する。
【0055】
(揚送スクリューコンベヤ)
図9に示すように、揚送スクリューコンベヤ100は、第1搬送筒101と、その第1搬送筒101にスライド可能に内嵌された第2搬送筒102と、第1搬送筒101の内部に設けられた第1搬送スクリュー103と、第2搬送筒102の内部に設けられた第2搬送スクリュー104と、を備えている。第2搬送筒102の先端側には、側方に開口された排出口100aが配設されている。
【0056】
前記第2搬送筒102の外周部には、上下方向に沿う溝105aを有するフラットバー105が長手方向に沿って固着されている。第1搬送筒101の先端側には、先端が溝105aに入り込む態様で調節ボルト106が取り付けられている。第2搬送筒102を第1搬送筒101に対して伸長移動操作し、揚送スクリューコンベヤ100を伸長状態にすると、調節ボルト106が溝105aの長手方向の一端部に当接してそれ以上の移動を規制する。また、第2搬送筒102を第1搬送筒101に対して短縮移動操作し、揚送スクリューコンベヤ100を短縮状態にすると、調節ボルト106が溝105aの長手方向の他端部に当接してそれ以上の移動を規制する。さらに、調節ボルト106が第1搬送筒101に対する第2搬送筒102の回り止めになっている。
【0057】
前記第2搬送筒102の外周部で第2搬送筒102の軸芯を挟んでフラットバー105とは反対側には、ラック溝107aを有するラック107が長手方向に沿って固着されている。第1搬送筒101の先端側には、電動モータ108が取り付けられている。電動モータ108には、ラック溝107aに噛合するピニオン109が連結されている。電動モータ108の駆動によって、ピニオン109が回転し、ピニオン109に連係するラック107およびそのラック107を固着した第2搬送筒102が長手方向に沿って移動する。したがって、電動モータ108、ピニオン109、ラック107等が、第2搬送筒102を第1搬送筒101に対して伸長移動操作および短縮移動操作する伸縮駆動機構110を構成する。
【0058】
前記第1搬送スクリュー103は、駆動軸111に相対回転可能に支持された第1筒軸112と、この第1筒軸112の外周部に全長に亘って設けられた第1スクリュー体(第1スクリュー羽根)113と、を備えている。第1筒軸112は、基端側の第1パイプ112aと、中間側の第2パイプ112bと、先端側の筒状部材112cと、を備えている。第1スクリュー体113は、その基端側部分が第1パイプ112aに固着されると共に、基端側部分以外の部分と第2パイプ112bとの間に一定の間隔を隔てて巻きつけられている。
【0059】
前記第2搬送スクリュー104は、駆動軸111に一体回動可能で駆動軸111に対して長手方向にスライド可能な中間軸114と、この中間軸114に一体回動可能で中間軸114と同軸状の第2筒軸115と、この第2筒軸115の外周部に全長に亘って固着された第2スクリュー体(第2スクリュー羽根)116と、を備えている。
【0060】
前記第1筒軸112の筒状部材112cは、第2搬送スクリュー104の中間軸114と第2筒軸115との間に嵌合されている。筒状部材112cには、ボール穴112dが形成されている。中間軸114の外周部には、等ピッチの螺旋溝114aが形成されている。そして、ボール穴112dと螺旋溝114aとに亘って伝動ボール117が嵌め込まれている。
【0061】
前記第2搬送筒102を第1搬送筒101に対して短縮移動操作すると、筒状部材112cのボール穴112dに取り付けられた伝動ボール117が中間軸114に形成された螺旋溝114aに案内されて、第1搬送スクリュー103が第2搬送スクリュー104に対して相対回転しながら第2搬送スクリュー104に入り込む。
【0062】
このとき、第1スクリュー体113の基端側部分以外の部分と第2パイプ112bとの間に一定の間隔が形成されかつ螺旋溝114aのピッチを第1搬送スクリュー103および第2搬送スクリュー104のスクリューピッチと略同一に設定してあるので、第1搬送スクリュー103が第2搬送スクリュー104に入り込むときに、その第2搬送スクリュー104における第2筒軸115が、第1搬送スクリュー103における第1スクリュー体113と第2パイプ112bとの間に入り込むとともに、第2搬送スクリュー104における第2スクリュー体116が、第1搬送スクリュー103における第1スクリュー体113の間に入り込むことになる。
【0063】
前記第1搬送スクリュー103が第2搬送スクリュー104から抜け出すときに、その第2搬送スクリュー104における第2筒軸115が、第1搬送スクリュー103における第1スクリュー体113と第2パイプ112bとの間から抜け出すとともに、第2搬送スクリュー104における第2スクリュー体116が、第1搬送スクリュー103における第1スクリュー体113の間から抜け出すことになる。
【0064】
よって、第1搬送スクリュー103が第2搬送スクリュー104に入り込んだり、第1搬送スクリュー103が第2搬送スクリュー104から出てくるときに、第1搬送スクリュー103が第2搬送スクリュー104に接触することはない。
【0065】
(揚送スクリューコンベヤおよび板状部材の姿勢)
図7に示すように、コンバインの運転時には、伸縮駆動機構110の作動によって第2搬送筒102を第1搬送筒101に対して伸長移動操作して、揚送スクリューコンベヤ100を伸長状態に切り換え、各板状部材82b,83b,84b,85bを起立姿勢にする。このとき、揚送スクリューコンベヤ100の上部の排出口100aは、各板状部材82b,83b,84b,85b(グレンタンクFの各側壁部82,83,84,85)の上端部に形成された開口94よりも高く、且つ平面視で各板状部材82b,83b,84b,85bの上端部に形成された開口94の内方側に入り込む状態に位置している。
【0066】
図8に示すように、コンバインの格納時には、各板状部材82b,83b,84b,85bを起立姿勢から折畳姿勢にし、伸縮駆動機構110の作動によって第2搬送筒102を第1搬送筒101に対して短縮移動操作して、揚送スクリューコンベヤ100を短縮状態に切り換える。このとき、揚送スクリューコンベヤ100の上部の排出口100aは、グレンタンクFの天井面部87よりもやや高い位置に位置している。
【0067】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、揚送スクリューコンベヤ80の先端側部分89と板状部材84bとに亘って連結部材RA,RBを設けて、揚送スクリューコンベヤ80の先端側部分89が連結部材RA,RBを介してグレンタンクFの天井面部87に載置され、揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aがグレンタンクFの天井面部87に直接載置される構成を例示したが、揚送スクリューコンベヤ80の先端側部分89がグレンタンクFの天井面部87に直接載置されるようにしてもよい。このとき、平面視で、揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aが右側の側壁部85から横外側に若干突出してもよい。このように、揚送スクリューコンベヤ80の排出口80aが突出しても排出口80aはグレンタンクFの上部に位置しているので、それほど邪魔にならない。
【0068】
(2)上記実施形態では、前側及び後側の板状部材82b,83bを折り畳んだ後に、右側の板状部材85bを折り畳み、最後に左側の板状部材84bを折り畳むように構成した例を示したが、折り畳む順番は異なる順番であってもよく、例えば、左側及び右側板状部材84b,85bを折り畳んだ後に、前側及び後側の板状部材82b,83bを折り畳むように構成してもよく、これ以外の順番で折り畳むように構成してもよい。
【0069】
(3)上記実施形態では、ボルト129を緩めることで、連結部材RA,RBを介して先端側部分89と同時に板状部材84bを姿勢変更できるように構成した例を示したが、ボルト129を取り外して、先端側部分89と板状部材84bとを別々に姿勢変更するように構成してもよい。
【0070】
(4)上記実施形態では、揚送スクリューコンベヤ80の先端側部分89を根元側部分88に対して機体右側の横向きに折り曲げ可能に構成した例を示したが、揚送スクリューコンベヤ80の先端側部分89を根元側部分88に対して折り曲げる方向として異なる方向を採用してもよく、例えば揚送スクリューコンベヤ80の先端側部分89を根元側部分88に対して機体前側、機体後側、又は機体左側(脱穀部E側)に折り曲げ可能に構成してもよい。
【0071】
(5)上記実施形態で示した揚送スクリューコンベヤ80の折り曲げ構造や揚送スクリューコンベヤ100の伸縮構造はその一例として示したものであり異なる折り曲げ構造や異なる伸縮構造を採用してもよい。
【0072】
(6)上記実施形態では、縦搬送装置としての揚送スクリューコンベヤ80,100を折り曲げ構造や伸縮構造で作業姿勢と格納姿勢に姿勢変更可能に構成した例を示したが、縦搬送装置を作業姿勢と格納姿勢に姿勢変更する構造として折り曲げ構造や伸縮構造以外の構造を採用してもよく、例えば揚送スクリューコンベヤの先端側部分を根元側部分に対して着脱自在に構成することで作業姿勢と格納姿勢に姿勢変更するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、普通型コンバインだけでなく自脱型コンバインにも適応可能である。
【符号の説明】
【0074】
80,100 縦搬送装置
80a,100a 排出口
82〜85 側壁部
82b〜85b 板状部材
86 塞ぎ部材
87 天井部
88 下側部分
89 上側部分
F グレンタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレンタンクの各側壁部の上部に板状部材を夫々揺動可能に設け、
前記各板状部材を内方側に向けて折り畳むことにより、前記各板状部材が前記グレンタンクの天井部を構成すると共に、前記各板状部材を上方に向けて起立させて前記グレンタンクの上部を開放することにより、前記各板状部材が前記グレンタンクの側壁部を構成して前記グレンタンクの容量を増大させるように構成してあり、
穀粒を移送する縦搬送装置を設け、前記各板状部材を起立させた状態において、穀粒を前記縦搬送装置の上部の排出口からグレンタンク内に供給する作業姿勢と、前記各板状部材を折り畳んだ状態において、前記縦搬送装置の排出口が前記作業姿勢での縦搬送装置の排出口よりも低くなる格納姿勢とに、前記縦搬送装置を姿勢変更可能に構成してあるコンバイン。
【請求項2】
前記縦搬送装置の途中で該縦搬送装置の下側部分に対し該縦搬送装置の上側部分を折り曲げ可能に構成してあり、
前記上側部分と前記下側部分とを上下方向に沿った直線状にすることにより、前記縦搬送装置を作業姿勢に切り換え、前記下側部分に対して前記上側部分を横向きとした屈曲状にすることにより、前記縦搬送装置を格納姿勢に切り換えるように構成してある請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記各板状部材を折り畳んだ状態において、前記上側部分を前記天井部に載置した姿勢を、前記格納姿勢としてある請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記縦搬送装置を伸縮可能に構成してあり、
前記縦搬送装置を上方に伸長することにより、前記縦搬送装置を前記作業姿勢に切り換え、前記縦搬送装置を下方に短縮することにより、前記縦搬送装置を前記格納姿勢に切り換えるように構成してある請求項1に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記各板状部材を上方に向けて起立させた状態で、隣接する前記各板状部材の側端部同士の間の隙間を塞ぐ塞ぎ部材を設けてある請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−142851(P2011−142851A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5283(P2010−5283)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】