説明

コンバイン

【課題】重量検出手段を新たなものと交換した際に、自動的に重量検出手段固有の情報を書き換えることができ、設定作業を容易にすることができるコンバインを提供する。
【解決手段】選別後の穀粒を貯留するグレンタンク17と、グレンタンク17の重量を検出する重量センサ32と、重量センサ32からの信号を入力して、グレンタンク17内の穀粒の排出前と排出後の重量差に基づいて穀粒の収穫量を演算する演算部55を有する制御装置52と、収穫量の演算を許可する収穫情報スイッチ80と、を備えるコンバイン1において、制御装置52は、収穫情報スイッチ80が操作されたとき、重量センサ32の固有情報を取得し、この取得した今回の固有情報が以前に取得して記憶した前回の固有情報と異なる場合は、記憶する重量センサ32の固有情報を前回の固有情報から今回の固有情報に書き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレンタンクの重量を検出する重量検出手段を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、選別後の穀粒をグレンタンク内に貯溜して、その貯溜した穀粒を排出オーガにより外部へ排出可能としたコンバインは公知となっている。そのなかには、グレンタンクをその一側下部を支点として若干揺動可能に設けて、重量検出手段をグレンタンクの他側下部に配置し、グレンタンクの重量を重量検出手段により検出可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなコンバインにおいて、制御装置は、グレンタンクの正確な重量を重量検出手段の検出値に基づいて得るために、この重量検出手段が有する、固有の感度や測定範囲等を含む固有情報を記憶していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−55051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のようなコンバインにおいては、重量検出手段を故障等のために新たなものと交換する場合には、その都度に新たな重量検出手段が有する固有情報を制御装置に入力して、制御装置に記憶させる重量検出手段の固有情報を書き換える必要があった。また、この際には、別途用意した電子計算機を制御装置に一時的に接続し、この電子計算機により新たな重量検出手段の固有情報を制御装置に入力しなければならなかった。そのため、重量検出手段の交換時の作業が面倒なものとなっていた。
【0005】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、重量検出手段の交換時の作業を容易に行うことができるコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、選別後の穀粒を貯留するグレンタンクと、該グレンタンクの重量を検出する重量検出手段と、前記重量検出手段からの信号を入力して、該グレンタンク内の穀粒の排出前と排出後の重量差に基づいて穀粒の収穫量を演算する演算部を有する制御装置と、収穫量の演算を許可する演算許可手段と、を備えるコンバインであって、前記制御装置は、演算許可手段が操作されたとき、前記重量検出手段の固有情報を取得し、この取得した今回の固有情報が以前に取得して記憶した前回の固有情報と異なる場合は、記憶する重量検出手段の固有情報を前回の固有情報から今回の固有情報に書き換えるものである。
【0008】
請求項2においては、選別後の穀粒を貯溜するグレンタンクと、該グレンタンクの重量を検出する重量検出手段と、前記重量検出手段からの信号を入力して、該グレンタンク内の穀粒の排出前と排出後の重量差に基づいて穀粒の収穫量を演算する演算部を有する制御装置と、エンジンを始動させるエンジン始動手段と、を備えるコンバインであって、前記制御装置は、前記エンジン始動手段が操作されたとき、前記重量検出手段の固有情報を取得し、この取得した今回の固有情報が以前に取得して記憶した前回の固有情報と異なる場合は、記憶する重量検出手段の固有情報を前回の固有情報から今回の固有情報に書き換えるものである。
【0009】
請求項3においては、前記固有情報は、前記重量検出手段の固体識別情報と、前記重量検出手段に関するパラメータ情報とを含み、前記制御装置は、前記今回の固有情報と前記前回の固有情報との異同を前記重量検出手段の固体識別情報に基づいて判定するものである。
【0010】
請求項4においては、前記制御装置は、前記グレンタンク内の穀粒の排出前と排出後の重量差に基づいて穀粒の収穫量を演算した後、前記重量検出手段の検出値に基づき基準値との誤差を修正するよう調整を行うものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、制御装置がグレンタンクの正確な重量を重量検出手段の検出値に基づいて得るために必要な固有情報が今回取得したものと前回取得したものとで異なる場合、即ち重量検出手段が交換された場合、穀粒の収穫量を演算するよりも前に、制御装置に記憶される重量検出手段の固有情報が自動的にかつ正確に書き換えられる。したがって、制御装置に重量検出手段を交換する都度に、重量検出手段の固有情報を注意しながら手動で入力して書き換えずに済み、重量検出手段の交換時の作業を容易に行うことができる。しかも、交換後の重量検出手段の固有情報を入力し忘れることがなくなり、穀粒の収穫量の演算時に、グレンタンクの正確な重量を得ることができる。
【0013】
請求項2においては、制御装置がグレンタンクの正確な重量を重量検出手段の検出値に基づいて得るために必要な固有情報が今回取得したものと前回取得したものとで異なる場合、即ち重量検出手段が交換された場合、制御装置に記憶される重量検出手段の固有情報が自動的にかつ正確に書き換えられる。したがって、制御装置に重量検出手段を交換する都度に、重量検出手段の固有情報を注意しながら手動で入力して書き換えずに済み、重量検出手段の交換時の作業を容易に行うことができる。しかも、交換後の重量検出手段の固有情報を入力し忘れることがなくなり、グレンタンクの正確な重量を得ることができる。
【0014】
請求項3においては、重量検出手段に関する今回の固有情報と前回の固有情報との異同を速やかに判定することができる。したがって、重量検出手段の交換時の作業を円滑に行うことができる。
【0015】
請求項4においては、収穫演算処理中に重量検出手段の測定範囲の基準値がずれた場合であっても次回の収穫演算処理においてグレンタンクの正確な重量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した平面図。
【図3】グレンタンクの構成を示した正面図。
【図4】制御ブロック図。
【図5】収穫量演算処理のフローチャート図。
【図6】収穫量演算処理のフローチャート図。
【図7】別の実施形態に係る刈取量演算処理のフローチャート図。
【図8】別の実施形態に係る刈取量演算処理のフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について図1及び図2を用いて説明する。
なお、以下において、図1中における矢印Aの指す方向を前とし、前後方向を規定する。また、かかる前後方向と水平方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0018】
コンバイン1は、機体フレーム10に対して、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、穀粒貯溜部6と、排藁処理部7と、エンジン部8と、運転部9等とから構成される。
【0019】
走行部2は、機体フレーム10の下部に設けられる。走行部2には、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置11等が設けられる。走行部2は、クローラ式走行装置11が駆動することにより機体を走行させるように構成される。
【0020】
刈取部3は、機体フレーム10の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草装置12と、引起装置13と、切断装置14と、搬送装置15等とから構成される。刈取部3は、分草装置12により圃場の穀稈を分草し、引起装置13により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置14により引き起こし後の穀稈の株元を切断し、搬送装置15により切断後の穀稈を脱穀部4側へ搬送するように構成される。
【0021】
脱穀部4は、機体フレーム10の左側前部であって、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェン16と、図示せぬ扱胴等とから構成される。脱穀部4は、刈取部3から搬送される穀稈を受け継いで、フィードチェン16により排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の穀稈を前記扱胴等により脱穀し、その脱穀処理物を選別部5へ落下させるように構成される。
【0022】
選別部5は、機体フレーム10の左側部であって、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、脱穀部4から落下した脱穀処理物を揺動選別及び風選別により、穀粒と、穂付粒や未脱粒と、排藁と、塵埃等とに選別する。そして、選別部5は、選別した穀粒を穀粒貯溜部6へ搬送し、穂付粒及び未脱粒を脱穀部4へ搬送し、排藁及び塵埃等を外部へ排出するように構成される。
【0023】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム10の右側後部であって、脱穀部4及び選別部5の右側方に設けられる。穀粒貯溜部6は、グレンタンク17と、穀粒排出装置50等とから構成される。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送される穀粒をグレンタンク17に貯溜するとともに、グレンタンク17に貯溜される穀粒を穀粒排出装置50により機体の外部へ排出するように構成される。
【0024】
排藁処理部7は、機体フレーム10の後部であって、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、図示せぬ排藁搬送装置や排藁切断装置等とから構成される。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送される脱穀済みの穀稈を、前記排藁搬送装置で受け継いで排藁として外部へ排出し、または前記排藁切断装置に搬送して切断した後に機体の外部へ排出するように構成される。
【0025】
エンジン部8は、機体フレーム10の右側部であって、穀粒貯溜部6の前方に設けられる。エンジン部8は、エンジン8a等を有して、エンジン8aの動力を駆動源とする各部の装置に適宜の伝達機構を介して当該エンジン8aの動力を伝達し、各部の装置を駆動させるように構成される。
【0026】
運転部9は、機体フレーム10の右側前部であって、刈取部3の搬送装置15の右側方に設けられる。運転部9は、キャビン18と、座席19と、ハンドル20と、後述の表示装置85と、操作ペダルや操作レバーや後述の収穫情報スイッチ80等の操作具類と、操作パネル等とから構成される。運転部9は、キャビン18により座席19やハンドル20や表示装置85等とが覆われるように構成される。
【0027】
このようにして、コンバイン1は、運転部9での操作具類の操作によって、エンジン部8のエンジン8aの動力を各部の装置に伝達して、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3から搬送された穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部6において選別部5で選別処理された穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0028】
次に、穀粒貯溜部6のグレンタンク17及び穀粒排出装置50の構成について、図1から図4を用いて説明する。
【0029】
グレンタンク17は、選別部5による選別後の穀粒を貯溜するものである。平面視において長手方向を前後方向として機体フレーム10上に設けられ、脱穀部4及び選別部5の右側方かつ運転部9の後方に配置される。グレンタンク17は、後部で穀粒排出装置50の一部(縦排出オーガ71)に回動可能に支持され、前部が脱穀部4及び選別部5に対して近接または離間する左右方向に移動するように構成される。
【0030】
穀粒排出装置50は、グレンタンク17に貯溜される穀粒を機体の外部へ排出するものである。穀粒排出装置50は、図1及び図2に示すように、排出コンベア60と、排出オーガ70等とを備える。
【0031】
排出コンベア60は、図2に示すように、スクリューコンベアで構成され、長手方向を前後方向としてグレンタンク17内の底部に配置される。排出コンベア60は、エンジン8aと伝動機構を介して接続される。そして、排出コンベア60は、エンジン8aからの動力により回転して、グレンタンク17内の底部で穀粒を後方へ搬送するように構成される。
【0032】
排出オーガ70は、縦排出オーガ71と、横排出オーガ72等とで構成される。縦排出オーガ71は、縦(上下)方向に延在するように、グレンタンク17の後方に配置される。横排出オーガ72は、横(前後及び左右)方向に延在するように、グレンタンク17や脱穀部4等の上方を移動可能に配置される。排出オーガ70の不使用時には、横排出オーガ72は、脱穀部4の前上部付近に配置されたオーガレスト75に載置される。
【0033】
縦排出オーガ71は、その下端部で排出コンベア60と接続される。横排出オーガ72は、その一端部で縦排出オーガ71の上端部と接続される。そして、排出オーガ70は、縦排出オーガ71を排出コンベア60に連動させ、横排出オーガ72を縦排出オーガ71に連動させて、排出コンベア60からの穀粒を縦排出オーガ71、横排出オーガ72の順に搬送し、横排出オーガ72の他端部に備えた排出口から外部へ排出するように構成される。
【0034】
排出コンベア60は、図2に示すように、スクリューコンベアで構成され、グレンタンク17の底部で、長手方向を前後方向へ向けて配設される。排出コンベア60は、エンジン8aと伝動機構を介して連結され、エンジン8aの動力により軸心回りに回動することによって、グレンタンク17に貯溜された穀粒をグレンタンク17の後部へ搬送するように構成される。
【0035】
次に、制御装置52について図4を用いて説明する。
【0036】
制御装置52は運転部9等に配置される。制御装置52は、CPU等の演算部55、RAMやROM等の記憶部54を備える。制御装置52は、重量センサ32、水分センサ35、収穫情報スイッチ80、エンジンスターター90と接続される。制御装置52は、また、表示装置85と接続される。
【0037】
ここで、重量センサ32は、グレンタンク17の重量を検出する重量検出手段であり、本実施形態においてはロードセル型のセンサで構成される。図3に示すように、重量センサ32は、グレンタンク17の前部の下方に配置される。
【0038】
重量センサ32は、記憶部56を有する。この記憶部56には、重量センサ32が固有する固有情報が記憶されている。重量センサ32の固有情報には、製造メーカ名や型番やシリアルナンバー等の固体識別情報(ID)、感度や測定範囲等の特性情報等が含まれる。
【0039】
ここで、固体識別情報とは、重量センサ32がそれぞれ有する固有の識別情報であり、例えばID番号である。
感度とは、重量センサ32の物理的な歪に対する電子的な数値(重量)の相関を示す値であり、横軸に物理的な歪及び縦軸に重量を取ったときの傾きを示す。
測定範囲とは、重量センサ32がそれぞれ有する測定できる重量の下限から上限までの範囲を示す。
【0040】
水分センサ35は、グレンタンク17内に貯溜される穀粒の水分量を検出する水分量検出手段である。図3に示すように、水分センサ35は、グレンタンク17内の上部に配置される。
【0041】
収穫情報スイッチ80は、収穫量の演算を許可する演算許可作手段である。収穫情報スイッチ80は、ON/OFFの切換可能に構成される。収穫情報スイッチ80は、収穫情報スイッチ80は、運転部9に配置される。ただし、収穫情報スイッチ80は、収穫量を得るためだけの手段ではなく、収穫作業時における圃場の状況等の他の収穫情報収集を可能にする手段でもある。
【0042】
なお、制御装置52は、後述するように、重量センサ32により検出されたグレンタンク17の重量を得て、前記穀粒の収穫量の演算をグレンタンク17内に貯溜した穀粒の穀粒排出装置50による排出前と排出後におけるグレンタンク17の重量差に基づいて行う。
【0043】
エンジンスターター90は、エンジン8aを始動させるためのエンジン始動手段である。エンジンスターター90は、キーによる回動式もしくはボタン式で、ON/OFFの切換可能に構成される。エンジンスターター90がONされるとエンジン8aが始動し、エンジンスターター90がOFFされるとエンジン8aが停止するようになっている。
【0044】
表示装置85は、制御装置52により演算された穀粒の収穫量を表示する表示する手段である。表示装置85は、運転部9に配置される。
【0045】
そして、制御装置52は、各種センサの検出値や、各種センサの設定値や、各種センサからの入力情報に基づく演算処理プログラム等を記憶部54に記憶している。さらに、制御装置52は、グレンタンク17の正確な重量を設置した重量センサ32の検出値に基づいて得るために、この重量センサ32が有する、固有の感度や測定範囲等を含む固有情報を記憶部54に記憶している。
【0046】
次に、収穫作業時における、制御装置52の収穫演算処理について、図5及び図6のフローチャートを用いて説明する。
【0047】
まず、制御装置52は、収穫情報スイッチ80がONであるか否かについて判断する(ステップS10)。
制御装置52は、収穫情報スイッチ80がOFFであった場合には、収穫情報収集を行わず、通常作業の運転を行い(ステップS15)、収穫量を含む収穫情報収集に関する制御を終了する。
制御装置52は、収穫情報スイッチ80がONであった場合には、収穫量を含む収穫情報の収集を許可し、重量センサ32の固有情報を当該重量センサ32の記憶部56から取得する(ステップS20)。
【0048】
次に、制御装置52は、収穫量を求めるために、記憶部54が記憶している固有情報と、重量センサ32が記憶部56に記憶している固有情報とが一致しているか否かを判断する(ステップS30)。この際、制御装置52は、重量センサ32の固有情報のうち、固体識別情報のみを用いて、双方の記憶部54・56に記憶されている固有情報が一致するかを判断する。ただし、制御装置52が、重量センサ32の固有情報(その中の全情報)を用いて、双方の記憶部54・56に記憶されている固有情報が一致するかを判断するようにしてもよい。
その結果により、制御装置52は、重量センサ32が交換されたか否かを判断する。
つまり、制御装置52は、記憶部54が記憶している固有情報と、重量センサ32が記憶部56に記憶している固有情報とが一致する場合には、重量センサ32が交換されていないと判断する。この場合、制御装置52は、記憶部54に記憶する固有情報を更新しない。
制御装置52は、記憶部54が記憶している固有情報と、重量センサ32が記憶部56に記憶している固有情報とが一致しない場合には、重量センサ32が交換されたと判断する。この場合、制御装置52は、記憶部54に記憶する固有情報を、以前に取得して記憶した前回の固有情報から現在取得した今回の固有情報に書き換えて更新する(ステップS35)。
【0049】
次に、制御装置52は、コンバイン1が収穫作業中であるか否かを判断する(ステップS40)。ここで、制御装置52は、具体的には例えば、重量センサ32から逐次得るグレンタンク17の重量の単位時間あたりの変化量が一定量以上であるとき、収穫作業中であると判断し、前記変化量が一定量未満であると、収穫作業中ではないと判断する。または、刈取部3または脱穀部4が駆動しているか否かによって、収穫作業中であるか否か収穫作業中であるか否か判断してもよい。
制御装置52は、コンバイン1が収穫作業中である場合には、繰り返しステップS40の処理を行う。
制御装置52は、収穫作業中でない場合には、例えば予め設定された経過時間等の設定条件を満たした後、収穫作業が終了したものと判断し、そのときの重量センサ32からの検出値に基づいて、収穫作業終了時におけるグレンタンク17の第一重量W1を取得し(ステップS50)、取得した第一重量W1を記憶部54に記憶する(ステップS60)。
ここでの第一重量W1は、グレンタンク17自体やその付属物の重量に、収穫作業で収穫してグレンタンク17内に貯溜した穀粒の重量を加えた重量となる。
【0050】
次に、制御装置52は、穀粒をグレンタンク17から穀粒排出装置50により外部へ排出する排出作業中であるか否かを判断する(ステップS70)。ここで、制御装置52は、具体的には例えば、エンジン8aから穀粒排出装置50への動力を断接する排出クラッチがオーガレバー等の穀粒排出操作手段により入操作されているとき、排出作業中であると判断し、穀粒排出操作手段により切操作されているとき、排出作業中はないと判断する。または、重量センサ32から逐次得るグレンタンク17の重量の単位時間あたりの減少量が一定量以上であるとき、排出作業中であると判断し、前記減少量が一定量未満であるとき、排出作業中はないと判断する。
制御装置52は、排出作業中である場合には、繰り返しステップS70の処理を行う。
制御装置52は、排出作業中でない場合には、排出作業が終了したと判断し、そのときの重量センサ32からの検出値に基づいて、穀粒排出後におけるグレンタンク17の第二重量W2を取得し(ステップS80)、取得した第二重量W2を制御装置52の記憶部54に記憶する(ステップS90)。
ここでの第二重量W2は、グレンタンク17自体やその付属物の重量となる。通常は空の状態におけるグレンタンク17の重量となる。
【0051】
次に、重量センサ32の固有情報のうち特性情報を記憶部56より取得し、制御装置52により感度補正等を行う。(ステップS100)。
次に、制御装置52は、第一重量W1と第二重量W2との差、即ち貯溜した穀粒の排出前と排出後におけるグレンタンク17の重量差に基づいて、グレンタンク17からの穀粒排出量、即ち穀粒の収穫量を演算し(ステップS110)、その演算した収穫量(排出量)を表示装置85に表示させる(ステップS120)。
ここでは、穀粒の収穫量がグレンタンク17から排出された全穀粒の排出量に相当することから、制御装置52は穀粒の収穫量を第一重量W1から第二重量W2を減じることにより求める。
最後に、空の状態におけるグレンタンク17の重量を演算して(ステップS130)、制御を終了する。ステップS130において空の状態におけるグレンタンク17の重量を検出し、前記重量に基づき基準値であるゼロ点との誤差を修正する。これにより、収穫演算処理中に重量センサ32の測定範囲の基準値がずれた場合であっても次回の収穫演算処理においてグレンタンク17の正確な重量を得ることができる。
【0052】
なお、制御装置52が、ステップS40の結果により第一重量W1を取得して記憶するのではなく、収穫作業中か否かの判断の後、さらにグレンタンク17内の穀粒の排出が穀粒排出装置50により開始されたか否かを判断し、その結果により第一重量W1を取得して記憶するようにしてもよい。この構成では、制御装置52は、具体的には例えば、前記排出クラッチが穀粒排出操作手段により入操作されたとき、穀粒の排出が開始されたと判断する。
【0053】
そして、制御装置52は、穀粒の排出が開始されていない場合には、第一重量W1を取得しない。
制御装置52は、穀粒の排出が開始された場合には、ステップS20とステップS30と同様の処理を再度繰り返し、その後に第一重量W1を取得して記憶する。
よって、この場合には、重量センサ32の固有情報が、収穫量の演算が開始される前に、複数回(二回)確認されることとなる。したがって、穀粒の収穫量の演算時に、制御装置52はグレンタンク17の正確な重量を確実に得ることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態に係るコンバイン1は、選別後の穀粒を貯留するグレンタンク17と、グレンタンク17の重量を検出する重量センサ32と、重量センサ32からの信号を入力して、グレンタンク17内の穀粒の排出前と排出後の重量差に基づいて穀粒の収穫量を演算する演算部55を有する制御装置52と、収穫量の演算を許可する収穫情報スイッチ80と、を備えるコンバイン1において、制御装置52は、収穫情報スイッチ80が操作されたとき、重量センサ32の固有情報を取得し、この取得した今回の固有情報が以前に取得して記憶した前回の固有情報と異なる場合は、記憶する重量センサ32の固有情報を前回の固有情報から今回の固有情報に書き換えるものである。
このように構成することにより、制御装置52がグレンタンク17の正確な重量を重量センサ32の検出値に基づいて得るために必要な固有情報が今回取得したものと前回取得したものとで異なる場合、即ち重量センサ32が交換された場合、穀粒の収穫量を演算するよりも前に、制御装置52に記憶される重量センサ32の固有情報が自動的にかつ正確に書き換えられる。したがって、制御装置52に重量センサ32を交換する都度に、重量センサ32の固有情報を注意しながら手動で入力して書き換えずに済み、重量センサ32の交換時の作業を容易に行うことができる。しかも、交換後の重量センサ32の固有情報を入力し忘れることがなくなり、穀粒の収穫量の演算時に、グレンタンク17の正確な重量を得ることができる。
【0055】
また、固有情報は、重量センサ32の固体識別情報と、重量センサ32に関するパラメータ情報とを含み、
制御装置52は、今回の固有情報と前回の固有情報との異同を重量センサ32の固体識別情報に基づいて判定するものである。
このように構成することにより、重量センサ32に関する今回の固有情報と前回の固有情報との異同を速やかに判定することができる。したがって、重量センサ32の交換時の作業を円滑に行うことができる。
【0056】
次に、別の実施形態に係る制御装置52の収穫量演算処理のフローチャートについて図7及び図8を用いて説明する。
【0057】
この場合、エンジンスターター90がONされると(ステップS150)、制御装置52は重量センサ32の固有情報を取得する(ステップS20)。ステップS20以降の演算処理は前述の演算処理と同一の処理であるから説明を省略する。
【0058】
以上のように、本実施形態に係るコンバイン1は、選別後の穀粒を貯溜するグレンタンク17と、このグレンタンク17の重量を検出する重量センサ32と、重量センサ32からの信号を入力して、グレンタンク17内の穀粒の排出前と排出後の重量差に基づいて穀粒の収穫量を演算する演算部55を有する制御装置52と、エンジン8aを始動させるエンジンスターター90と、を備えるコンバイン1であって、制御装置52は、エンジンスターター90が操作されたとき、重量センサ32の固有情報を取得し、この取得した今回の固有情報が以前に取得して記憶した前回の固有情報と異なる場合は、記憶する重量センサ32の固有情報を前回の固有情報から今回の固有情報に書き換えるものである。
このように構成することにより、制御装置52がグレンタンク17の正確な重量を重量センサ32の検出値に基づいて得るために必要な固有情報が今回取得したものと前回取得したものとで異なる場合、即ち重量センサ32が交換された場合、制御装置52に記憶される重量センサ32の固有情報が自動的にかつ正確に書き換えられる。したがって、制御装置52に重量センサ32を交換する都度に、重量センサ32の固有情報を注意しながら手動で入力して書き換えずに済み、重量センサ32の交換時の作業を容易に行うことができる。しかも、交換後の重量センサ32の固有情報を入力し忘れることがなくなり、グレンタンク17の正確な重量を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 コンバイン
6 穀粒貯溜部
17 グレンタンク
32 重量センサ(重量検出手段)
50 穀粒排出装置
52 制御装置
54 記憶部
55 演算部
56 記憶部
60 排出コンベア
70 排出オーガ
80 収穫情報スイッチ(演算許可手段)
85 表示装置
90 エンジンスターター(エンジン始動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別後の穀粒を貯留するグレンタンクと、該グレンタンクの重量を検出する重量検出手段と、前記重量検出手段からの信号を入力して、該グレンタンク内の穀粒の排出前と排出後の重量差に基づいて穀粒の収穫量を演算する演算部を有する制御装置と、収穫量の演算を許可する演算許可手段と、を備えるコンバインであって、
前記制御装置は、演算許可手段が操作されたとき、前記重量検出手段の固有情報を取得し、この取得した今回の固有情報が以前に取得して記憶した前回の固有情報と異なる場合は、記憶する重量検出手段の固有情報を前回の固有情報から今回の固有情報に書き換えるコンバイン。
【請求項2】
選別後の穀粒を貯溜するグレンタンクと、該グレンタンクの重量を検出する重量検出手段と、前記重量検出手段からの信号を入力して、該グレンタンク内の穀粒の排出前と排出後の重量差に基づいて穀粒の収穫量を演算する演算部を有する制御装置と、エンジンを始動させるエンジン始動手段と、を備えるコンバインであって、
前記制御装置は、前記エンジン始動手段が操作されたとき、前記重量検出手段の固有情報を取得し、この取得した今回の固有情報が以前に取得して記憶した前回の固有情報と異なる場合は、記憶する重量検出手段の固有情報を前回の固有情報から今回の固有情報に書き換えるコンバイン。
【請求項3】
前記固有情報は、前記重量検出手段の固体識別情報と、前記重量検出手段に関するパラメータ情報とを含み、
前記制御装置は、前記今回の固有情報と前記前回の固有情報との異同を前記重量検出手段の固体識別情報に基づいて判定する請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御装置は、前記グレンタンク内の穀粒の排出前と排出後の重量差に基づいて穀粒の収穫量を演算した後、前記重量検出手段の検出値に基づき基準値との誤差を修正するよう調整を行う請求項1または請求項2に記載のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−167110(P2011−167110A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32824(P2010−32824)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】