説明

コンバイン

【課題】刈取部の昇降操作や車体の操向操作を行うレバー操作具の把持部にスイッチ操作具を設け、オペレータの意図しない刈取部の昇降作動又は車体の操向作動を防止するコンバインを提供することを課題としている。
【解決手段】レバー操作具54の把持部側に設けたスイッチ操作具64と、レバー操作具54のレバー操作を検出するレバー操作検出手段72,73,74,76と、該レバー操作検出手段72,73,74,76の検出結果に基づいて刈取部4の昇降及び車体の操向制御を行う制御部60とを備えたコンバインにおいて、スイッチ操作具64の押し操作が検出されている際は、レバー操作検出手段72,73,74,76の検出結果に基づく刈取部4の昇降又は車体の操向を規制する規制制御を行うように前記制御部60を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
操作レバーの把持部側にスイッチ操作具を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
レバー操作具の把持部側に設けたスイッチ操作具と、レバー操作具のレバー操作を検出するレバー操作検出手段と、該レバー操作検出手段の検出結果に基づいて刈取部の昇降及び機体の操向制御を行う制御部とを備えた特許文献1に示すコンバインが公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−131225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献のコンバインは、レバー操作具の把持部を握った状態でスイッチ操作具を押し操作可能であるため、刈取部の昇降操作や、車体の操向操作を行いながら、スイッチ操作具によるその他の操作を併せて行うことが容易であり、利便性が高い一方で、スイッチ操作具の押し操作の際、レバー操作具を誤って揺動させることにより、オペレータの意図しない刈取部の昇降又は車体の操向が行われる場合がある。
本発明は、刈取部の昇降操作や車体の操向操作を行うレバー操作具の把持部にスイッチ操作具を設け、オペレータの意図しない刈取部の昇降作動又は車体の操向作動を防止するコンバインを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明のコンバインは、第1にレバー操作具54の把持部側に設けたスイッチ操作具64と、レバー操作具54のレバー操作を検出するレバー操作検出手段72,73,74,76と、該レバー操作検出手段72,73,74,76の検出結果に基づいて刈取部4の昇降及び車体の操向制御を行う制御部60とを備えたコンバインにおいて、スイッチ操作具64の押し操作が検出されている際は、レバー操作検出手段72,73,74,76の検出結果に基づく刈取部4の昇降又は車体の操向を規制する規制制御を行うように前記制御部60を構成したことを特徴としている。
【0006】
第2に、車体の走行を検出する走行検出手段69及び刈取部4の駆動・駆動停止を行う駆動制御手段55を設け、制御部60が、車体の走行・走行停止に刈取部4の駆動・駆動停止を連動させる連動モードと、車体の走行・走行停止に関係無く刈取部4を駆動させる掻込モードとを有し、前記スイッチ操作具64の押し操作が検出された際には連動モードから掻込モードへの切換えを行うとともに走行検出手段69によって車体の走行停止が検出された場合にのみ上記規制制御を行うように前記制御部60を構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明のコンバインによれば、把持部側にスイッチ操作具を設けた場合において、スイッチ操作具の押し操作の際に誤ってレバー操作具を揺動操作した場合でも車体の操向又は刈取部の昇降は行われないため、オペレータの意図しない刈取部の昇降又は車体の操向が防止できるという効果がある。
【0008】
また、車体の走行を検出する走行検出手段及び刈取部の駆動・駆動停止を行う駆動制御手段を設け、制御部が、車体の走行・走行停止に刈取部の駆動・駆動停止を連動させる連動モードと、車体の走行・走行停止に関係無く刈取部を駆動させる掻込モードとを有し、前記スイッチ操作具の押し操作が検出された際には連動モードから掻込モードへの切換えを行うとともに走行検出手段によって車体の走行停止が検出された場合にのみ上記規制制御を行うようにすることにより、例えば、圃場の畦際において刈り残した穀稈の刈取作業をその場で車体を停止させて行うために、前記スイッチ操作具を押し操作して掻込モードへの切換を行った際に、レバー操作具が誤って揺動操作され、刈取部が畦に突き刺さったまま昇降されたり、刈取部がコンクリート製の畦に接触したりして刈取部が破損する事態が防止されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用したコンバインの全体斜視図である。
【図2】本コンバインの動力系統図である。
【図3】操縦部を示した図である。
【図4】マルチステアリングレバーの要部拡大図である。
【図5】調整パネルの平面図である。
【図6】制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】制御部が行う刈取クラッチの断続制御の構成を示す一覧表である。
【図8】昇降規制制御の処理フロー図である。
【図9】旋回規制制御の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用したコンバインの全体斜視図であり、図2は本コンバインの動力系統図である。本コンバインは、進行方向右(右)側に操縦部2を有するとともに、左右一対のクローラ式走行装置1,1(走行部)によって支持される走行機体3と、前記走行機体3の前方に配置された前処理部4(刈取部)とから構成されており、該前処理部4は、走行機体3に昇降自在に連結され且つ昇降シリンダの伸縮作動によって走行機体3に対して昇降駆動される。
【0011】
本コンバイン(車体)の前進時、前処理部4の刈刃5によって刈取られた圃場の穀稈は、前処理部4の搬送装置6によって走行機体3左部の脱穀装置7側まで搬送され、フィードチェーン15に渡される。フィードチェーン15は、受け取った穀稈を脱穀装置7の脱穀部10に沿って後方搬送する。穀稈は、この後方搬送過程で、脱穀部10の扱胴8及び処理胴9によって扱降ろされ(脱穀処理され)、排藁となり、排藁搬送体11によって走行機体3の後端部まで搬送される一方で、扱降ろされた処理物は選別部12に落下供給される。
【0012】
選別部12に供給された処理物は、揺動選別体13による揺動選別及び唐箕ファン14を用いて発生させる選別風による風選によって、一番物と、二番物と、藁屑等とに選別される。一番物は、籾等の穀粒として、揚穀ラセン16により、走行機体3右側半部の後側に設定されたグレンタンク17に搬送される、二番物は、還元ラセン18によって再び選別内に還元され、藁屑は、選別風によって走行機体3の後端部から機外に排出される。一方、排藁搬送体11によって、走行機体3の後部まで搬送された排藁は、そのまま、又は、後処理部19によって切断処理された後、機外に排出される。
【0013】
グレンタンク17内の穀粒は、全体が水平旋回及び上下揺動するように基端側が走行機体3の後端部右側に支持されたオーガ21を介して機外に排出される。ちなみに、グレンタンク17からオーガ先端側への穀粒の搬送は、グレンタンク17及びオーガ21内に設けられた複数の排出ラセン22によって行われる。
【0014】
本コンバインは、エンジン動力によって各部が駆動され、図2に示すように、まず、エンジン25で発生させた回転動力が出力軸23に出力される。出力軸23には、走行プーリ24と、排出プーリ26と、作業プーリ27とが一体回転するように設けられている。
【0015】
走行プーリ24の動力は、走行HST28(油圧式無段階変速装置)のポンプ軸である入力軸にベルト伝動され、無段階に変速伝動された後、走行トランスミッション29を介して、左右の各クローラ式走行装置1,1に伝動される。走行HST28は、上述のように無段階で走行変速を行う他、変速伝動動力の正逆転切換によって、車体の前後進切換を行う。走行トランスミッション29は、走行変速切換の他、油圧シリンダである旋回シリンダの伸縮作動等によって、左右のクローラ式走行装置1,1に伝動される回転動力の回転数を調整可能に構成され、該左右のクローラ式走行装置1,1の回転数調整を行う操向作動が前後進時に行われることによって、車体を左右旋回させる。
【0016】
排出プーリ26の動力は、上述のグレンタンク17内及びオーガ21内の複数の排出ラセン22にベルト伝動され、穀粒が排出されるようにグレンタンク17及びオーガ21等を駆動させる。ちなみに、この複数の排出ラセン22へのベルト伝動は、テンションプーリ等によりなる排出クラッチ31によって、断続される。
【0017】
作業プーリ27の動力は、作業伝動軸32にベルト伝動され、この作業伝動軸32の動力によって、前処理部4、フィードチェーン15、脱穀部10、選別部12、及び後処理部19が駆動される。具体的には、作業プーリ27と、作業伝動軸32と一体回転する作業伝動プーリ33とに掛け回された作業伝動ベルト34によって、エンジン25の動力が作業伝動軸32に伝動される。この作業伝動ベルト34には、作業伝動ベルト34のテンションを調整するテンションプーリから構成されて作業伝動軸32へのエンジン動力の伝動を断続させる作業クラッチ36が設けられている。
【0018】
前記作業伝動軸32に伝動された動力は、脱穀部10(具体的には扱胴8及び処理胴9)及び排藁搬送体11に伝動される一方で、作業伝動軸32と一体回転する伝動プーリ37に掛け回された伝動ベルト38によって、還元ラセン18の回転軸となって該還元ラセン18を駆動させる還元ラセン駆動軸39に伝動される。還元ラセン駆動軸39の動力は、後処理部19にベルト伝動される一方で、選別部駆動ベルト41によって、選別部12の各部(具体的には、揚穀ラセン16、揺動選別体13等)を駆動させる。
【0019】
また、この選別部駆動ベルト41は唐箕ファン14の回転軸にもなる伝動軸42と一体回転する伝動プーリ43に掛け回され、該伝動軸42の動力は、ギヤ伝動機構44にベルト伝動される。このようにして選別部12側からギヤ伝動機構44に伝動された動力は、フィードチェーン駆動軸46と、刈取伝動軸47とに各別にギヤ伝動される。
【0020】
フィードチェーン駆動軸46の動力によってフィードチェーン15は駆動され、前処理部4から受け取った穀稈を脱穀部10に沿って後方搬送する。
【0021】
刈取伝動軸47の動力は、刈取駆動軸48にベルト伝動され、前処理部4(具体的には刈刃5及び搬送装置6等)を駆動させ、穀稈の刈取作業及び搬送作業を行う。具体的には、刈取伝動軸47と一体回転する刈取伝動プーリ49と、刈取駆動軸48と一体回転する刈取駆動プーリ50とに掛け回される刈取伝動ベルト51によって、刈取駆動軸48にエンジン動力が伝動される。この刈取伝動ベルト51には、刈取伝動ベルト51のテンションを調整するテンションプーリより構成されて前処理部4側への動力伝動を断続させる刈取クラッチ52が設けられている。該刈取クラッチ52は、刈取クラッチモータ55によって断続操作され、この刈取クラッチモータ55はマイコン等から構成される後述の制御部60(図6参照)によって駆動が制御される。すなわち、刈取クラッチモータ55は、前処理部4の駆動・駆動停止を行う駆動制御手段を構成している。
【0022】
本コンバインの上述の伝動構成により、作業クラッチ36は、前処理部4、フィードチェーン15、脱穀部10、選別部12及び後処理部19へのエンジン動力の伝動を断続させ、作業クラッチ36の伝動下流側に設けられた刈取クラッチ52は、前処理部4へのエンジン動力の伝動を断続させる。
【0023】
図3は、操縦部を示した図である。前記操縦部2は、オペレータが着座する座席53と、座席53の前方に配置されたマルチステアリングレバー54(レバー操作具)と、座席53の側方に配置された主変速操作具である主変速レバー56と、主変速レバー56の外側側方(図示する例では左側方)に設けた副変速レバー57と、座席53の側方且つ主変速レバー56の後方に配置された作業クラッチ操作具である作業クラッチレバー58と、主変速レバー56と作業クラッチレバー58との間に配置されて前処理部4に関する各種操作具が設けられた調整パネル59とを備え、マルチステアリングレバー54と座席53との間には床面となるフロアステップ61が形成されている。
【0024】
主変速レバー56は、走行HST28側と連係機構等(図示しない)を介して機械的に連結され、ニュートラル位置からの前方揺動によって、走行HST28を前進走行側に増速作動させる一方で、ニュートラル位置からの後方揺動によって、走行HST28を後進走行側に増速作動させるが、主変速レバー56をニュートラル位置から前方に揺動可能な状態とするためには、主変速レバー56をニュートラル位置から左右一方側(図示する例では右側)に揺動操作する必要がある一方で、主変速レバー56をニュートラル位置から後方に揺動可能な状態とするためには、主変速レバー56をニュートラル位置から左右他方側に揺動操作する必要がある。すなわち、主変速レバー56は、走行変速操作及び前後進切換操作を前後揺動及び左右揺動によって行う操作具になる。
【0025】
作業クラッチレバー58は、前記作業クラッチ36に連係機構(図示しない)等を介して機械的に連結されており、該作業クラッチレバー58の前後揺動操作によって前記作業クラッチ36の断続操作が行われる。
【0026】
図4は、マルチステアリングレバーの要部拡大図である。マルチステアリングレバー54は、前後揺動操作且つ左右揺動操作可能に支持されており、この前後揺動操作によって前処理部4が昇降されるとともに左右揺動操作によって車体が左右旋回されるように、後述の制御部60によって、前処理部4の昇降制御及び車体の操向制御を行う。その他、マルチステアリングレバー54上部に形成されたグリップ(把持部)の左右及び前後箇所には、モーメンタリ動作する押し操作式のスイッチ62,63,64,66がそれぞれ設置されている。左右のスイッチは、車体の走行方向の左右微調整を行う調整スイッチ62,63であり、前側のスイッチは、後述する連動モードと掻込モードの切換を行う掻込スイッチ(スイッチ操作具)64であり、後側のスイッチは、ホーンの鳴動・鳴動停止操作を行うホーンスイッチ66である。
【0027】
図5は、調整パネルの平面図である。本コンバインは、刈取クラッチモータ55を介した刈取クラッチ52の断続制御を、制御部60によって行うが、調整パネル59には、この刈取クラッチ52の断続制御の状態切換を行う切換操作具である押しボタン式のオートクラッチスイッチ67が設けられており、該オートクラッチスイッチ67の押し操作毎に、刈取クラッチ52の断続制御状態が切換えられる。
【0028】
次に、図6乃至9に基づき、制御部の構成を説明する。
図6は、制御部の構成を示すブロック図である。
【0029】
コンバインに搭載された制御部60の入力側には、作業クラッチレバー58による作業クラッチ36の断続操作を検出する作業クラッチ断続操作検出手段である作業クラッチスイッチ68と、主変速レバー56の操作位置を検出することにより走行の有無及び車速を検出する走行検出手段である主変速レバーポテンショメータ69と、上述の掻込スイッチ64と、オートクラッチスイッチ67、前処理部4の昇降高さ位置を検出する昇降高さ検出手段である昇降ポテンショメータ71とが接続される他、さらに、制御部60の入力側には、マルチステアリングレバー54後方揺動操作を検出することにより前処理部4の上昇操作を検出する上昇操作検出手段である上昇スイッチ72と、マルチステアリングレバー54前方揺動操作を検出することにより前処理部4の下降操作を検出する下降操作検出手段である下降スイッチ73と、マルチステアリングレバー54左揺動操作を検出することにより車体の左旋回操作を検出する左旋回操作検出手段である左旋回スイッチ74と、マルチステアリングレバー54右揺動操作を検出することにより車体の右旋回操作を検出する右旋回操作検出手段である右旋回スイッチ76とが、マルチステアリングレバー54のレバー操作を検出するレバー操作検出手段として、接続されている。
【0030】
一方、制御部60の出力側には、作動油の供給・排出によって上述の昇降シリンダを伸縮作動させて前処理部4を昇降させる昇降手段である前記昇降バルブ77と、作動油の供給・排出によって上述の旋回シリンダを伸縮作動させて車体を左右旋回させる旋回手段である旋回バルブ78と、上述の刈取クラッチモータ55とが接続されている。
【0031】
図7は、制御部が行う刈取クラッチの断続制御の構成を示す一覧表である。制御部60は、刈取クラッチ52の断続制御状態として、刈取クラッチ52を切断状態で保持して前処理部4(具体的には刈刃5及び搬送装置6等)を駆動停止状態とする停止状態Aと、前処理部4の昇降に刈取クラッチ52の断続を連動させる昇降連動状態Cと、前処理部4の昇降高さを刈取クラッチ52の断続制御には連動させない昇降非連動状態Bとを有しており、この断続制御状態を、オートクラッチスイッチ67の押し操作時間に応じて、切換えるように制御部60を構成している。
【0032】
これに加えて、制御部60は、車体の走行・走行停止(さらに具体的には車体の前進走行・走行停止及び後進走行)に前処理部4の駆動・駆動停止を連動させる連動モードと、機体の走行・走行停止に関係無く前処理部4を駆動させる掻込モードとを有しており、掻込スイッチ64によって、連動モードと掻込モードのモード切換を行うように制御部60を構成している。
【0033】
そして、断続制御状態と、モード切換との関係について説明すると、断続制御状態が停止状態Aの場合には、連動モードと掻込モードの何れかのモードに切換えられているか否かに関係無く、制御部60は、刈取クラッチモータ55を介して刈取クラッチ52を切断状態に制御するように構成されている。
【0034】
このため、断続制御状態が停止状態Aとなっている際に、作業クラッチレバー58によって作業クラッチ36の接続操作を行うことにより、前処理部4の駆動を停止させた状態で、フィードチェーン15及び脱穀装置7(脱穀部10、選別部12及び後処理部19)のみを駆動させることが可能になり、この状態では、作業者が手作業でフィードチェーン15に穀稈を供給することにより、脱穀装置7での脱穀・選別処理を行う手扱ぎ作業を行うことが容易になる。
【0035】
また、停止状態A以外の断続制御状態(具体的には、昇降連動状態C又は昇降非連動状態B)時には、連動モードと掻込モードの何れかが制御部60を介して実行されるが、この停止状態A以外の断続制御状態時においても、作業クラッチスイッチ68によって作業クラッチ36の切断状態が検出されている際には、前処理部4側にエンジン動力が伝動される状態ではないため、制御部60は刈取クラッチ52を切断状態で保持する。
【0036】
また、停止状態A以外の断続制御状態時における刈取クラッチ52の断続制御ついて説明すると、掻込スイッチ64が押し操作されている場合には、制御部60は掻込モードへのモード切換を行う一方で、押し操作がされてない場合には、制御部60は連動モードへのモード切換を行う。
【0037】
停止状態A以外の断続制御状態時において、掻込モードへの切換が行われている場合には、車体の走行・走行停止や、前処理部4の昇降高さに関係無く、刈取クラッチモータ55を介して刈取クラッチ52を接続状態に制御する。
【0038】
また、制御部60は、昇降非連動状態Bであって且つ連動モードへの切換が行われている際に、車体の停止又は後進走行状態が主変速レバーポテンショメータ69によって検出されている場合には、刈取クラッチモータ55を介して刈取クラッチ52を切断状態に制御する一方で、車体の前進走行状態が主変速レバーポテンショメータ69によって検出されている場合には、刈取クラッチモータ55を介して刈取クラッチ52を接続状態に制御するように構成されている。
【0039】
制御部60は、昇降連動状態Cであって且つ連動モードへの切換が行われている際、車体の前進走行状態が主変速レバーポテンショメータ69によって検出されるとともに、前処理部4が所定高さ(刈取高さ)以下に下降されている状態であることが昇降ポテンショメータ71によって検出されている場合には、刈取クラッチモータ55を介して刈取クラッチ52を接続状態に制御するように構成されている。
【0040】
一方、制御部60は、昇降連動状態Cであって且つ連動モードへの切換が行われている際、車体の停止又は後進走行状態と、前処理部4の刈取高さ以上への上昇状態との何れか一方又は両方の状態が、主変速レバーポテンショメータ69及び昇降ポテンショメータ71によって検出されている場合には、刈取クラッチモータ55を介して刈取クラッチ52を切断状態に制御するように構成されている。
【0041】
ところで、本コンバインでは、上述したように、マルチステアリングレバー54のグリップに設けられた掻込スイッチ64を押し操作することによって、掻込モードへの切換を行うが、この際に、誤ってマルチステアリングレバー54を揺動させ、意図しない前処理部4の昇降や、クローラ式走行装置1,1の操向をさせてしまう場合がある。特に、掻込スイッチ64は、オペレータが操作し易いように、オペレータと対向するグリップ背面側に配されているため、掻込スイッチ64の押し操作力によって、マルチステアリングレバー54が前方に揺動されることがある。
【0042】
そして、この掻込モードへの切換操作は、圃場の畦際まで車体を走行させた際に、刈残した穀稈をその場で刈取るため等に行われること多く、このようにして畦際で前処理部4の昇降が意図せずに行われると、畦と前処理部4が接触して該前処理部4が破損してしまう可能性がある。特に、畦がコンクリート等である場合には、この問題が顕著である。また、畦が土等から成形される場合には、前処理部4の下端側のデバイダを畦に突刺して、より畦際に車体を位置させた状態で、掻込モードへの切換を行うこともあるが、この状態で、前処理部4が昇降されると、前処理部4のデバイダ等が破損する虞がある。
【0043】
このため、本コンバインでは、所定条件下において、マルチステアリングレバー54による前処理部4の昇降操作又は車体の操向操作(左右旋回操作)を規制する規制制御を、制御部60によって行う。ちなみに、この規制制御は、具体的には、前処理部4の昇降を規制する昇降規制制御と、車体の左右旋回を規制する旋回規制制御との2種類があり、それぞれ各別のサブルーチンによって実行される。
【0044】
次に、図8及び図9に基づいて、昇降規制制御と旋回規制制御とから構成される前記規制制御について説明する。
図8は、昇降規制制御の処理フロー図である。制御部60は昇降規制制御が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、上昇スイッチ72のON・OFFを検知し、上昇スイッチ72がONされてマルチステアリングレバー54による前処理部4の上昇操作が検出された場合にはステップS2に進み、昇降動作設定を「上昇」にセットし、ステップS6に進む。一方、ステップS1において上昇スイッチ72がOFF状態であって、マルチステアリングレバー54による前処理部4の上昇操作が検出されなかった場合には、ステップS3に進む。
【0045】
ステップS3では、下降スイッチ73のON・OFFを検知し、下降スイッチ73がONされてマルチステアリングレバー54による前処理部4の下降操作が検出された場合にはステップS4に進み、昇降動作設定を「下降」にセットしてステップS6に進む。一方、ステップS3において下降スイッチ73がOFF状態であって、マルチステアリングレバー54による前処理部4の下降操作が検出されなかった場合にはステップS5に進み、昇降動作設定を「停止」にセットし、ステップS6に進む。
【0046】
ステップS6では、作業クラッチスイッチ68のON・OFFを検知し、作業クラッチスイッチ68がONされて作業クラッチ36が接続されている場合にはステップS7に進む一方で、作業クラッチスイッチ68がOFFされて作業クラッチ36が切断されている場合にはステップS10に進む。
【0047】
ステップS7では、掻込スイッチ64のON・OFFを検知し、掻込スイッチ64が押し操作されてON作動し、掻込モードへの切換操作が行われている場合には、ステップS8に進む一方で、掻込スイッチ64の押し操作が解除されてOFF状態になり、連動モードに切換えられている場合には、ステップS10に進む。
【0048】
ステップS8では、主変速レバーポテンショメータ69により主変速レバー56の操作位置を検出し、車体が走行停止されるニュートラル位置に主変速レバー56が操作されていることが検出された場合(車体の走行停止が検出された場合)には、ステップS9に進む一方で、車体が走行停止されるニュートラル位置以外の位置に主変速レバー56が操作されていることが検出された場合(車体の走行が検出された場合)には、ステップS10に進む。ステップS9では、昇降動作設定を「停止」にセットしてステップS10に進む。
【0049】
ステップS10では、ステップS2,ステップS4,ステップS5又はステップS9でセットされた昇降動作設定に基づいて、前処理部4の昇降動作制御を昇降バルブ77を介して行い、その後、ステップS1に処理を戻す。
【0050】
すなわち、該昇降規制制御では、作業クラッチ36の接続と、掻込モードへのモード切換と、車体の走行停止とが全て検出されている場合には、ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS10と処理が進み、マルチステアリングレバー54による前処理部4の昇降操作がステップS1又はステップS3によって検出されている際にも、前処理部4は昇降されず、停止された状態で保持される。すなわち、前処理部4の昇降が規制(さらに具体的には禁止)される。
【0051】
図9は、旋回規制制御の処理フロー図である。制御部60は旋回規制制御が開始されると、ステップS11に進む。ステップS11では、左旋回スイッチ74のON・OFFを検知し、左旋回スイッチ74がONされてマルチステアリングレバー54による車体の左旋回操作が検出された場合にはステップS12に進み、旋回動作設定を「左旋回」にセットし、ステップS16に進む。一方、ステップS11において左旋回スイッチ74がOFF状態であって、マルチステアリングレバー54による車体の左旋回操作が検出されなかった場合には、ステップS13に進む。
【0052】
ステップS13では、右旋回スイッチ76のON・OFFを検知し、右旋回スイッチ76がONされてマルチステアリングレバー54による車体の右旋回操作が検出された場合にはステップS14に進み、旋回動作設定を「右旋回」にセットしてステップS16に進む。一方、ステップS13で右旋回スイッチ76がOFF状態であって、マルチステアリングレバー54による車体の右旋回操作が検出されなかった場合にはステップS15に進み、旋回動作設定を「停止」にセットし、ステップS16に進む。
【0053】
ステップS16では、作業クラッチスイッチ68のON・OFFを検知し、作業クラッチスイッチ68がONされて作業クラッチ36が接続されている場合にはステップS17に進む一方で、作業クラッチスイッチ68がOFFされて作業クラッチ36が切断されている場合にはステップS19に進む。
【0054】
ステップS17では、掻込スイッチ64のON・OFFを検知し、掻込スイッチ64が押し操作されてON作動し、掻込モードへの切換操作が行われている場合には、ステップS18に進み、旋回動作設定を「停止」にセットしてステップS19に進む。一方、ステップS17において掻込スイッチ64の押し操作が解除されてOFF状態になり、連動モードに切換えられている場合には、ステップS19に進む。
【0055】
ステップS19では、ステップS12,ステップS14,ステップS15又はステップS18でセットされた旋回動作設定に基づいて、車体の旋回動作制御を旋回バルブ78を介して行い、その後、ステップS11に処理を戻す。
【0056】
すなわち、該旋回規制制御では、作業クラッチ36の接続と、掻込モードへのモード切換とのいずれもが検出されている場合には、ステップS16→ステップS17→ステップS18→ステップS19と処理が進み、マルチステアリングレバー54による車体の旋回操作がステップS11又はステップS13によって検出されている際にも、車体は旋回せず、停止された状態で保持される。すなわち、車体の旋回が規制(さらに具体的には禁止)される。
【0057】
なお、規制制御として前記昇降規制制御又は旋回規制制御のいずれか一方のみ(例えば、昇降規制のみ)を実行するように制御部60を構成しても良い。
【符号の説明】
【0058】
4 前処理部(刈取部)
54 マルチステアリングレバー(レバー操作具)
55 刈取クラッチモータ(駆動制御手段)
60 制御部
64 掻込スイッチ(スイッチ操作具)
69 主変速レバーポテンショメータ(走行検出手段)
72 上昇スイッチ(レバー操作検出手段)
73 下降スイッチ(レバー操作検出手段)
74 左旋回スイッチ(レバー操作検出手段)
76 右旋回スイッチ(レバー操作検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバー操作具(54)の把持部側に設けたスイッチ操作具(64)と、レバー操作具(54)のレバー操作を検出するレバー操作検出手段(72),(73),(74),(76)と、該レバー操作検出手段(72),(73),(74),(76)の検出結果に基づいて刈取部(4)の昇降及び車体の操向制御を行う制御部(60)とを備えたコンバインにおいて、スイッチ操作具(64)の押し操作が検出されている際は、レバー操作検出手段(72),(73),(74),(76)の検出結果に基づく刈取部(4)の昇降又は車体の操向を規制する規制制御を行うように前記制御部(60)を構成したコンバイン。
【請求項2】
車体の走行を検出する走行検出手段(69)及び刈取部(4)の駆動・駆動停止を行う駆動制御手段(55)を設け、制御部(60)が、車体の走行・走行停止に刈取部(4)の駆動・駆動停止を連動させる連動モードと、車体の走行・走行停止に関係無く刈取部(4)を駆動させる掻込モードとを有し、前記スイッチ操作具(64)の押し操作が検出された際には連動モードから掻込モードへの切換えを行うとともに走行検出手段(69)によって車体の走行停止が検出された場合にのみ上記規制制御を行うように前記制御部(60)を構成した請求項1のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−188754(P2011−188754A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55331(P2010−55331)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】