説明

コンバージョンレンズ、コンバージョンレンズ装置、及び撮像装置

【課題】撮像装置本体にコンバージョンレンズを装着した状態で、通常の焦点距離域から、広角域及びマクロ域への切り換えを可能としたコンバージョンレンズ、コンバージョンレンズ装置を提供する。また、そのコンバージョンレンズ及びコンバージョンレンズ装置を用いた撮像装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成された一対の透明部材2,3と、一対の透明部材2,3に挟まれた密閉空間を有するように、一対の透明部材2,3を連結する連結部4と、密閉空間に充填される透明な液体7と、充填された透明な液体7を移動させることにより変形膜の曲率を変化させる曲率変化機構とから構成されるコンバージョンレンズとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイド及びマクロ機能を有するコンバージョンレンズ、コンバージョンレンズ装置、及びそれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバージョンレンズとして、スチルカメラやビデオなどの撮像装置において、例えば撮像レンズの物体側、すなわち前方に装着し、全系の焦点面を一定位置に維持した状態で撮像系全体の焦点距離を広角側に変化させるフロント装着方式のワイドコンバータが種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、主レンズ系であるズームレンズの物体側に装着して、レンズ全系の画角を広げることのできる広角コンバージョンレンズが記載されている。この広角コンバージョンレンズは、物体側に凸面を向けて配置される凹メニスカスレンズと、プラスチックの非球面レンズと、凹メニスカスレンズよりも像側に配置される凸レンズの3枚のレンズで構成される。
【0004】
また、コンバージョンレンズの種類の中には、凹レンズ1群(枚)のみからなるワイドエンドコンバータというものがある。この凹レンズ1群(枚)からなるワイドエンドコンバータを装着することで、広角端においてのみ、さらに焦点距離を広角側に変化され、より画角の大きな撮影が可能となる。
【特許文献1】特開2002−214529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイドエンドコンバータのようなレンズは、撮像装置本体のズームレンズ前面に装着するレンズ構成が簡単な為、安価且つ軽量化に適している反面、広角端においてしか焦点を合わせることができない。このため、望遠側での撮影をする場合、撮像装置本体からワイドエンドコンバータ自体を取り外さなければならない。
【0006】
さらに、コンバージョンレンズの種類の中には、マクロ撮影を可能とするクローズアップレンズというものもある。このクローズアップレンズにおいても、マクロ撮影と通常撮影の切り換えるために、撮像装置本体から取り付けては取り外すという作業が必要である。
【0007】
上述の点に鑑み、本発明は、撮像装置本体にコンバージョンレンズを装着した状態で、通常の焦点距離域から、広角域及びマクロ域への切り換えを可能としたコンバージョンレンズ、コンバージョンレンズ装置を提供するものである。また、そのコンバージョンレンズ及びコンバージョンレンズ装置を用いた撮像装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のコンバージョンレンズは、少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成された一対の透明部材と、一対の透明部材に挟まれた密閉空間を有するように、一対の透明部材を連結する連結部と、密閉空間に充填される透明な液体と、充填された透明な液体を移動させることにより前記変形膜の曲率を変化させる曲率変化機構とから構成される。
【0009】
本発明のコンバージョンレンズでは、一対の透明部材のうち、少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成されているので、曲率変化機構により、変形膜が凹状、平状、凸状に変形される。これにより、コンバージョンレンズの形状は、凹レンズ、平レンズ、凸レンズの種々の形状に変化される。
【0010】
また、本発明のコンバージョンレンズ装置は、少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成された一対の透明部材と、一対の透明部材に挟まれた密閉空間を有するように、一対の透明部材を連結する連結部と、密閉空間に充填される透明な液体と、充填された透明な液体の密閉空間内で移動させることにより変形膜の曲率を変化させる曲率変化機構とから構成されるコンバージョンレンズと、曲率変化機構を制御して、変形膜の曲率変化を制御する曲率制御手段とから構成される。
【0011】
本発明のコンバージョンレンズ装置では、変形膜を凹状、平状、凸状のいずれかに変形させる曲率変化機構を制御する曲率制御手段が備えられているので、コンバージョンレンズの形状は凹レンズから凸レンズまで連続的に変化される。
【0012】
また、本発明の撮像装置は、撮像光学系を有する撮像装置本体と、撮像装置本体の撮像光学系の物体側に装着されるコンバージョンレンズ装置を備え、前記コンバージョンレンズ装置は、少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成された一対の透明部材と、一対の透明部材に挟まれた密閉空間を有するように、一対の透明部材を連結する連結部と、密閉空間に充填される透明な液体と、充填された透明な液体を移動させることにより変形膜の曲率を変化させる曲率変化機構とから構成されるコンバージョンレンズと、曲率変化機構を制御する曲率制御手段とから構成される。
【0013】
本発明の撮像装置では、撮像装置本体に装着されたコンバージョンレンズ装置を構成するコンバージョンレンズが、凹レンズ、平レンズ、凸レンズの所望の形状に変化可能である。したがって、本発明の撮像装置では、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影が可能とされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンバージョンレンズを撮像装置本体に装着した状態で、通常撮影、ワイド撮影、マクロ撮影の切り換えが可能となり、撮像装置本体へのコンバージョンレンズの取り付け、取り外しの必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1に本発明の第1の実施形態に係るコンバージョンレンズの概略断面構成を示す。本実施形態例のコンバージョンレンズ1は、固体の平板からなる第1の透明部材2と、変形可能な変形膜からなる第2の透明部材3とからなる一対の透明部材と、一対の透明部材に挟まれた密閉空間に、透明な液体7が充填されて構成される。本実施形態例におけるコンバージョンレンズ1においては、一対の透明部材のうち、第1の透明部材2を物体側に配される面とし、第2の透明部材3を像側に配される面とする。そして、コンバージョンレンズ1は、第1の透明部材2を構成する固体の平板と第2の透明部材3の変形膜を境界面に持つ透明な液体7とからなる複合型ダブレットレンズとされる例である。
【0017】
第1の透明部材2である固体の平板は、例えば、ガラス、アクリル、プラスチック等の光透過性を有する透明な材料で構成され、両面平板状に構成されている。
【0018】
また、第2の透明部材3である変形可能な変形膜は、例えば、弾性を有するエラストマー膜等で構成され、光透過性を有する透明な膜で構成される。変形膜の材料としては、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、ウレタンゴムを用いることができる。
【0019】
そして、第1の透明部材2と第2の透明部材3とで挟まれた密閉空間を有するように、第1の透明部材2と第2の透明部材3を外周部で連結する連結部4が構成される。連結部4は、密閉空間内部に充填される液体7を液密に保持するように、第1の透明部材2と第2の透明部材3とを連結する。また、本実施形態例においては、連結部4は、伸縮性のある襞状の蛇腹構造とされており、この蛇腹構造は、例えば、気密性のある薄いアルミ箔をポリエチレンなどの樹脂でラミネートした柔軟性のあるシートを、熱融着などの手段で重ねて形成することができる。
【0020】
密閉空間に充填される液体7には、光透過性を有する透明な液体であり、例えば、揮発性の低いシリコーンオイルが用いられる。また、密閉空間に充填される液体7は、第2の透明部材3である変形膜を平面状に保持できる量に調整される。
【0021】
そして、このように連結部4で連結された第1の透明部材2の物体側の面と、第2の透明部材3の像側の面の外周部は、それぞれ第1の枠体5、第2の枠体6により固定されている。第2の枠体6に囲まれた領域により本実施形態例のコンバージョンレンズ1の主要部分である液体レンズが構成される。
【0022】
以上の構成を有するコンバージョンレンズ1は、図1に示すように、通常時においては、第2の透明部材3である変形膜は平状に保持されている。そして、本実施形態例のコンバージョンレンズ1では、第1の枠体5又は第2の枠体6を固定して、固定されていない方の枠体を引いたり、押したりすることにより、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3の曲率を変形させることができる。
【0023】
例えば、図2に示すように、第1の枠体5を固定し、第2の枠体6を矢印f1で示す方向に引く。そうすると、蛇腹構造の連結部が伸び、第2の枠体6に囲まれた範囲の第2の透明部材3が凹状に変形する。
【0024】
すなわち、密閉空間に充填された液体7の体積は一定であるから、外周部の第1の枠体5と第2の枠体6との間隔を広げることにより、液体7が外周部に移動する。このため、第1の枠体5及び第2の枠体6に囲まれた範囲の中央部の液体7の体積が減る。このとき、第1の透明部材2は固体の平板で構成されているので、図2に示すように、変形膜で構成された第2の透明部材3が凹状に変形するのである。これにより、コンバージョンレンズ1は、凹レンズのコンバージョンレンズとなる。
【0025】
また、今度は反対に、第1の枠体5又は第2の枠体6を固定して、固定されていない方の枠体を押す。例えば、図3に示すように、第1の枠体5を固定し、第2の枠体6を矢印f2で示す方向に押す。そうすると、蛇腹構造の連結部が縮み、第2の枠体6に囲まれた部分の第2の透明部材3が凸状に変形する。すなわち、密閉空間に充填された液体7の体積が一定であるから、外周部の第1の枠体5と第2の枠体6との間隔を縮めることにより、液体7が第1及び第2の枠体5,6で囲まれた範囲の中央部に移動する。このとき、第1の透明部材は、固体の平板で構成されるので、図3に示すように、変形膜である第2の透明部材3が凸状に変形するのである。これにより、コンバージョンレンズ1は、凸レンズのコンバージョンレンズとなる。
【0026】
このように、本実施形態例のコンバージョンレンズ1においては、第1の枠体5、第2の枠体6のどちらか一方を固定して、他方の枠体を引いたり、押したりすることで、第2の枠体6に囲まれた変形膜からなる第2の透明部材3の曲率を変えることができる。
【0027】
本実施形態例においては、第1の枠体5と、第2の枠体6と、蛇腹構造の連結部4とにより、曲率変化機構が構成される。
【0028】
以上に説明した本実施形態例のコンバージョンレンズ1は、スチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置本体の撮像光学系の前方に装着することによって用いられる。
次に、本実施形態例のコンバージョンレンズ1を撮像装置本体に装着した撮像装置において撮影可能な画像を、コンバージョンレンズ1の状態を示しながら説明する。本実施形態例のコンバージョンレンズ1は、第1の透明部材2が物体側、第2の透明部材3が像側になるように、撮像装置本体に装着される。
【0029】
図4は、本実施形態例のコンバージョンレンズ1を撮像装置本体に取り付けた場合に撮影される画像である。例えば、10倍のズーム機能を有する撮像装置本体にコンバージョンレンズ1を装着した例を示す。
【0030】
まず、図4B及び図4Cで示す画像は、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3が平状に保持されている場合に撮影された画像である。すなわち、図4B,図4Cにおいて、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3は、曲率を有していない。そして、図4Bが撮像装置本体の撮像光学系におけるワイド端、すなわち、一番焦点距離を短く設定したときに撮影される画像で、図4Cが撮像装置本体の撮像光学系におけるテレ端(本例においては、望遠10倍)、すなわち、一番焦点距離を長く設定したときに撮影される画像である。コンバーションレンズ1の第2の透明部材3が平面状に保持されている場合は、コンバージョンレンズ1は、屈折率を有さないので、撮像装置で撮影される画像は、コンバージョンレンズ1が装着されていないときと同様である。したがって、図4B,図4Cは、撮像装置本体が有する焦点距離域の画像そのものである。
【0031】
次に、図4Aに示す画像は、撮像装置本体が有する撮像光学系の焦点距離がワイド端とされており、さらに、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3である変形膜を、図2に示すように、凹状に変形させたときに撮影される画像である。撮像装置本体のワイド端において、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3を凹状に変形させることにより、例えば、画角をさらに広角0.7倍にまで広げることができる。このとき、コンバージョンレンズ1はワイドエンドコンバータの役割を果たしている。
【0032】
そして、図4Dに示す画像は、撮像装置本体が有する焦点距離を、テレ端である望遠10倍とし、さらに、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3である変形膜を、図3に示すように、凸状に変形させたときに撮影される画像である。本実施形態例では、撮像装置本体のテレ端において、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3を凸状に変形させることにより、マクロ撮影が可能とされる。このとき、コンバージョンレンズ1は、クローズアップレンズの役割を果たしている。
【0033】
以上のように、本実施形態例のコンバージョンレンズ1を撮像装置本体の撮像光学系の前面に装着した場合には、撮像装置本体から取り外すことなく、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影の切り換えが可能となる。
【0034】
次に、図5に本発明の第2の実施形態例に係るコンバージョンレンズの概略断面構成を示す。本実施形態例において、図1に対応する部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0035】
まず、本実施形態例のコンバージョンレンズ19は、第1の透明部材2と第2の透明部材3とを連結する連結部10が第1の透明部材2の外周部に設けられた枠体9と一体に構成されている。そして、第2の透明部材3の外周部はダイアフラム11を構成する。第2の透明部材3のうち、液体レンズを構成する主要部分と、ダイアフラム11を構成する外周部との境界であって、第2の透明部材3の液体7に接する面側には、仕切板12が構成されており、仕切板12の一部には、開口部12aが形成されている。また、ダイアフラム11を構成する第2の透明部材3表面には、支持部13が構成されている。この仕切板12は、密閉空間に充填された液体7を、ダイアフラム11を構成する外周部と、液体レンズを構成する主要部分とに完全に分離するものではなく、開口部12aが構成されることにより、液体7は、密閉空間の外周部と主要部分とを移動可能とされている。そして、仕切板12は、連結部10に一部連結されて構成されている。ダイアフラム11は、第2の透明部材3と一体に形成してもよいし、柔軟性を有する別部材により別途構成するものであってもよい。本実施形態例のコンバージョンレンズ19においては、ダイアフラム11及び支持部13により、曲率変化機構が構成される。
【0036】
本実施形態例のコンバージョンレンズ19においては、支持部13を押引することで、柔軟性を有するダイアフラム11が押引され、これに起因して、第2の透明部材3の曲率が変形する。
【0037】
例えば、図6に示すように、支持部13を矢印f3で示す方向に引いた場合においては、密閉空間に充填された液体7が、コンバージョンレンズ19の主要部分から仕切板12を隔てて外周部に移動する。このため、第2の透明部材3は、仕切板12を支点にして凹状にたわむ。仕切板12は、一部で連結部10に連結されているので、ダイアフラム11を引いた場合においても固定された状態が保持され、第2の透明部材3である変形膜の変形の支点となるのである。これにより、コンバージョンレンズ19は、凹レンズのコンバージョンレンズとなる。
【0038】
また、図7に示すように、支持部13を矢印f4で示す方向に押した場合には、密閉空間に充填された液体7が、外周部から仕切板12を隔ててコンバージョンレンズ19の主要部分に移動するので、第2の透明部材3は、仕切板12を支点にして凸状にたわむ。これにより、コンバージョンレンズ19は、凸レンズのコンバージョンレンズとなる。
【0039】
本実施形態例のコンバージョンレンズ19も、第1の実施形態のコンバージョンレンズ1と同様に、スチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置本体の撮像光学系の前方に取り付けて使用することができる。本実施形態例におけるコンバージョンレンズ19においても、撮像装置本体のワイド端でワイド撮影する場合においては、図6に示すように、支持部13を引いて、コンバージョンレンズ19を凹レンズとし、撮像装置本体のテレ端でマクロ撮影する場合においては、図7に示すように、支持部13押して、コンバージョンレンズ19を凸レンズとする。また、通常撮影する場合においては、コンバージョンレンズ19の支持部13には力を加えず、図5で示すように、第2の透明部材3が平状を保持するような構成とする。
【0040】
以上のように、本実施形態例のコンバージョンレンズ19を撮像装置本体に装着する場合には、支持部13に印加する力を調節してダイアフラム11を押引する。これにより、コンバージョンレンズ19の第2の透明部材3の曲率を変形させて、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影の切り換えをする。そして、本実施形態例のコンバージョンレンズ19においても、第1の実施形態と同様、コンバージョンレンズ19を撮像装置本体から取り外すことなく、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影の切り換えが可能となる。
【0041】
次に、図8に本発明の第3の実施形態例に係るコンバージョンレンズ20の概略断面構成を示す。本実施形態例において、図1及び図5に対応する部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0042】
本実施形態例におけるコンバージョンレンズ20は、第1の透明部材2と第2の透明部材3とを連結する連結部16が第1の透明部材2の外周部に設けられた第1の枠体14及び、第2の透明部材3の外周部に設けられた第2の枠体15と一体に構成されている。第1の枠体14及び、第2の枠体15は、第1の実施形態と同様に、それぞれ、第1の透明部材2の物体側の面と、第2の透明部材3の像側の面の外周部に固定されて設けられるものである。そして、本実施形態例においては、連結部16の一部に、例えば管状の液体移動部17が構成されている。この液体移動部17は、密閉空間に充填された液体7の移動を可能とするものであり、図示しない外部のポンプ機構等の駆動により、液体7の移動が制御される。この液体移動部17により、本実施形態例の曲率変化機構が構成される。
【0043】
本実施形態例では、外部のポンプ機構を駆動して、密閉空間に充填された液体7を移動させることにより、密閉空間に充填される液体7の体積を変化させることができる。これにより、変形可能な変形膜からなる第2の透明部材3の曲率が変化する。
【0044】
図9に示すように、例えば、外部のポンプ機構を駆動して、密閉空間に充填された液体7を矢印p1で示す方向に移動させる。そうすると、密閉空間に充填される液体7の体積が減少し、変形膜からなる第2の透明部材3は凹状にたわむ。これにより、コンバージョンレンズ20は、凹レンズのコンバージョンレンズとなる。
【0045】
反対に、図10に示すように、外部のポンプ機構を駆動して、密閉空間に液体7を矢印p2で示す方向に移動させる。密閉空間には、液体7が注入されることにより、密閉空間に充填される液体7の体積が増加し、変形膜からなる第2の透明部材3は、凸状にたわむ。これにより、コンバージョンレンズ20は、凸レンズのコンバージョンレンズとなる。
【0046】
本実施形態例のコンバージョンレンズ20も、第1の実施形態及び第2の実施形態のコンバージョンレンズ1,19と同様に、スチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置の撮像光学系の前方に装着して使用することができる。本実施形態例におけるコンバージョンレンズ20においても、撮像装置本体のワイド端でワイド撮影する場合においては、図9に示すように、密閉空間の液体7の体積を減少させて、コンバージョンレンズ20を凹レンズとし、撮像装置本体のテレ端でマクロ撮影する場合においては、図10に示すように、密閉空間の液体7の体積を増加させて、コンバージョンレンズ20を凸レンズとする。また、通常撮影する場合においては、第2の透明部材3が平状を保持するように液体7の体積を調節する構成とする。
【0047】
以上のように、本実施形態例のコンバージョンレンズ20を撮像装置本体に装着する場合は、密閉空間の液体7の体積を、液体移動部17を介して移動させることにより、コンバージョンレンズ20の第2の透明部材3の曲率を変化させて、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影の切り換えをする。このように、本実施形態例のコンバージョンレンズ20においても、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様、コンバージョンレンズ20を撮像装置本体から取り外すことなく、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影の切り換えが可能となる。
【0048】
第1の実施形態〜第3の実施形態においては、第1の透明部材2を両面平板状の固体の平板としたが、図11A〜Cに示すように、例えば物体側に凸状を有する固体レンズ18としてもよい。図11Aは図1のコンバージョンレンズ1を変形した例であり、図11Bが、図5のコンバージョンレンズ19を変形した例であり、図11Cが、図8のコンバージョンレンズ20を変形した例である。
【0049】
図11A〜Cに示すように、第1の透明部材を所望の形状を有する固体レンズ18とすることにより、例えば撮像される画像の収差等を低減することができる。さらには、第1の透明部材を、第2の透明部材と同様に、変形膜で構成する例としてもよい。すなわち、本発明のコンバージョンレンズにおいては、一対の透明部材のうち、少なくとも一方の透明部材が、変形可能な変形膜で構成されていればよく、レンズ設計により種々の組み合わせが可能である。
【0050】
以上に説明した第1〜第3の実施形態におけるコンバージョンレンズ1,19,20は、曲率変化機構を制御する曲率制御手段が備えられたコンバージョンレンズ装置として、実際の撮像装置本体の撮像光学系前面に装着されるものである。
以下に、コンバージョンレンズを曲率制御手段が備えられたコンバージョンレンズ装置とする具体的構成を説明する。
【0051】
図12,図13を用いて、第1の実施形態におけるコンバージョンレンズ1を用いた場合のコンバージョンレンズ装置の一実施形態について説明する。本実施形態例のコンバージョンレンズ装置47は、第1の実施形態例のコンバージョンレンズ1に代表されるように、曲率変化機構が蛇腹構造を有する連結部で構成されたコンバージョンレンズに適応可能なコンバージョンレンズ装置であり、図12は、そのコンバージョンレンズ装置47の概略分解図である。また、図13には、コンバージョンレンズ装置47を組み立てたときの概略断面構成を示す。
【0052】
本実施形態例のコンバージョンレンズ装置47は、調整リング21、レンズ枠22、可動板23、可動板固定リング24、本体取付部25とから構成される曲率制御手段と、コンバージョンレンズ1とから構成される。図12において、紙面左側を物体側、紙面右側を像側とする。すなわち、本体取付部25側が、撮像装置本体の撮像光学系前面に装着される側となる。
【0053】
調整リング21は、円筒部26と、その円筒部26の物体側の端部に形成されたフランジ部27とを有する。フランジ部27は、円筒部26と一体に形成され、内方に伸びるように形成されている。円筒部26の内面には、像側の端部から物体側に向けて、可動板23が載置される段差部28が設けられている。この段差部28は、後述するように可動板23の摺動面となる。そして段差部28より物体側の円筒部26の内面には、ネジ部29が設けられている。また、円筒部26の像側の端面には、ネジ穴30が複数個、等角間隔に設けられている。
【0054】
レンズ枠22は、円筒部31と、円筒部31の物体側の端部に、段差を形成するように内方に向って形成されるフランジ部33とを有する。円筒部31の外面には、ネジ部32が形成されており、調整リング21に形成されたネジ部29と螺合される構成となっている。また、円筒部31には、その像側の端部から軸方向に沿って伸びる複数の溝部35が形成されている。本実施形態例では、円筒部31に形成される溝35は、3箇所に等角間隔で形成されている。また、フランジ部33の内面には、コンバージョンレンズ1を固定するためのネジ穴34が、円筒部31の像側の端面には、本体取付部25を固定するためのネジ穴36がそれぞれ複数個、等角間隔に設けられている。
【0055】
本実施形態例で用いられるコンバージョンレンズ1は、図1に示したコンバージョンレンズ1である。したがって、コンバージョンレンズ装置47に用いられるコンバージョンレンズ1において、図1に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。このコンバージョンレンズ1の第1の枠体5には、図示されないネジ穴が構成されており、前述したレンズ枠22のフランジ部33に設けられたネジ穴34に対応してレンズ枠22に固定される。また、コンバージョンレンズ1の第2の枠体6には、後述する可動板23に固定するために用いられるネジ穴37が構成される。
【0056】
可動板23は、リング形状に形成されるリング部38と、その外周面に、複数個突設される支持ピン39とから構成される。この支持ピン39は、レンズ枠22の円筒部31に設けられた複数の溝35に係合し、調整リング21の段差部28に載置されるものであり、段差部28上部が支持ピン39の摺動面となる。このとき、調整リング21の円筒部26の像側の端面と、可動板23は面一の関係にある。また、可動板23のリング部38の複数箇所には、コンバージョンレンズ1の第2の外枠6のネジ穴37に対応する位置に設けられた複数のネジ挿入孔40が設けられている。このネジ挿入孔40を介して、第2の外枠6のネジ穴37にビスがねじ込まれることにより、可動板34とコンバージョンレンズ1が固定される。
【0057】
可動板固定リング24は、調整リング21と同じ直径を有するリング形状で構成され、その外周部の、調整リング21のネジ穴30に対応する位置に、ネジ挿入孔42が設けられている。また、可動板固定リング24は、調整リング21の円筒部26の厚みより少し大きく、調整リング21の内方に突き出すようなリング幅を有する。このような構成とすることにより、調整リング21の段差部28に載置された可動板23が、像側に飛び出さないように可動板固定リング24により固定される。すなわち、可動板23は、調整リング21の段差部28の摺動面と可動板固定リング24に狭持される。
【0058】
本体取付部25は、中央に円形開口部48を有する円板部43と、中央の円形開口部48の縁が像側に突出する突出部44とから形成され、突出部外周面には、ネジ45が形成されている。この突出部44外周面に形成されたネジ45が撮像装置本体の撮像光学系の前面、すなわち像側に取り付けられる。また、円形開口部48は、撮像装置本体の撮像光学系のレンズの形状に合わせて構成されるものであり、また、円板部43の直径は、調整リング21の直径と同じ大きさに構成される。円板部43の外周の、レンズ枠22に形成されたネジ穴36に対応する位置にネジ挿入孔46が設けられており、このネジ挿入孔46を介してレンズ枠22のネジ穴36にビスが挿入される。これにより、本体取付部25は、レンズ枠22に固定される。
【0059】
以上の構成により、コンバージョンレンズ装置47に組み込まれたコンバージョンレンズ1の第2の透明部材3が、凹状、平状、凸状に変形され、コンバージョンレンズ1が凹レンズ、平レンズ、凸レンズとされる。
【0060】
図14,図15を用いて、本実施形態例のコンバージョンレンズ装置47の動作を説明する。本実施形態例のコンバージョンレンズ装置47は、本体取付部25が、撮像装置本体の撮像光学系の前面(対物レンズ側)に取り付けられることにより、装着される。本体取付部25には、レンズ枠22が固定されているので、レンズ枠22も撮像装置本体に対して固定の状態が保持される。
【0061】
本実施形態例では、本体取付部25が固定の状態のコンバージョンレンズ装置47において、調整リング21とレンズ枠22は螺合する関係にあるので、調整リング21を回すことにより、調整リング21がレンズ枠22に対して相対的に光軸方向に可動される。
【0062】
例えば、図14は、調整リング21を、レンズ枠22が調整リング21に対して螺合される方向に回した時の概略断面構成である。可動板23の外周部に設けられた支持ピン39は、調整リング21の段差部28と可動板固定リング24に狭持され、また、レンズ枠22に形成された溝部35に係合された状態である。この状態で、調整リング21をレンズ枠22に螺合される方向に回したとき、調整リング21の段差部28上の摺動面が可動板23の支持ピン39に摺動しながら、可動板23と一体となって、レンズ枠22が螺合される方向、すなわち図14において、調整リング21が矢印x1に示す方向に移動する。支持ピン39が、調整リング21の段差部28と可動板固定リング24に狭持されているので、調整リング21と可動板23との相対位置は変化せず、支持ピン39は、レンズ枠22に形成された溝部35内を移動する。図14は、例えば、支持ピン39が溝部35の真ん中より像側にくるように、調整リング21が調整された例である。
【0063】
図14に図示する状態は、レンズ枠22と調整リング21の螺合量が最大限にされた状態を示す。この状態においては、レンズ枠22のフランジ部33に対して、可動板23の位置は、最大限に離れた位置とされる。コンバージョンレンズ1は、レンズ枠22のフランジ部33と、可動板23に固定されて取り付けられているので、コンバージョンレンズ1の第2の枠体6には、図2で示した矢印f3方向の力が発生する。そうすると、コンバージョンレンズ1の蛇腹構造が伸び、変形膜からなる第2の透明部材3が凹状に変形する。すなわち、この状態において、コンバージョンレンズ1は凹レンズのコンバージョンレンズとなる。
【0064】
次に、図15に、調整リング21を、レンズ枠22との螺合量が少なくなる方向に回した時の概略断面構成を示す。このとき、調整リング21の段差部28上の摺動面が可動板23の支持ピン39に摺動しながら、可動板23と一体となって、調整リング21がレンズ枠22との螺合量が少なくなる方向、すなわち矢印x2で示す方向に移動する。そして、支持ピン39が、調整リング21の段差部28と可動板固定リング23に狭持されているので、調整リング21と可動板23との相対位置は変化せず、支持ピン39は、レンズ枠22に形成された溝部35内を移動する。図15は、例えば、支持ピン39が、溝部35の真ん中よりも物体側にくるよう調整リング21が調整された例である。
【0065】
図15に図示する状態は、レンズ枠22と調整リング21の螺合量が最小限にされた状態を示す。この状態においては、レンズ枠22のフランジ部33に対して、可動板23の位置は、最も近づいた位置とされる。コンバージョンレンズ1は、レンズ枠22のフランジ部33と可動板23に固定されて取り付けられているので、コンバージョンレンズ1の第2の枠体6には、図3で示した矢印f4方向の力が発生する。そうすると、コンバージョンレンズ1の蛇腹構造が縮み、変形膜からなる第2の透明部材3が凸状に変形する。すなわち、この状態において、コンバージョンレンズ1は凸レンズのコンバージョンレンズとされる。
【0066】
また、本実施形態例においては、図14と図15で示す状態の、中間の状態になるように、調整リング21とレンズ枠22との螺合量を調整することにより、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3を平状とすることができる。
【0067】
本実施形態例のコンバージョンレンズ装置47においては、調整リング21を回して、調整リング21とレンズ枠22との螺合量を調整することにより、コンバージョンレンズ装置47内部に組み込まれたコンバージョンレンズ1のレンズ形状を凹状から凸状まで簡単に調整することができる。また、本実施形態例のコバンージョンレンズ装置47では、内部に組み込まれたコンバージョンレンズ1が液体レンズで構成されるものであり、変形膜である第2の透明部材3が変形することによりコンバージョンレンズ1の屈折率が変化されるものである。このため、調整リング21とレンズ枠22の螺合量を調整することで、変形膜である第2の透明部材3を、凹状から凸状まで連続的に変化させることができるので、コンバージョンレンズ1の屈折率の連続的な変化が可能となる。
【0068】
本実施形態例では、コンバージョンレンズ装置に組み込まれるコンバージョンレンズとして、蛇腹構造を有するコンバージョンレンズ1を用いる例としたが、図5に示すようなコンバージョンレンズ19を用いることもできる。コンバージョンレンズ19を用いる場合には、例えば、コンバージョンレンズ19の枠体9を、レンズ枠22のフランジ部33に固定し、同じくコンバージョンレンズ19の支持部13を、可動板23のリング部28に固定するようにすればよい。また、図8に示したコンバージョンレンズ20をコンバージョンレンズ装置に用いる場合には、曲率制御手段として、ポンプ機構を用いればよい。
【0069】
次に、図16,図17を用いて、図12のコンバージョンレンズ装置47が、撮像装置本体に装着された撮像装置について説明する。図16は、撮像装置100の外観の概略構成を示すものであり、例えばデジタルビデオカメラを例としたものである。
【0070】
図16に示す撮像装置100は、中空の外装ケース102内部に、撮像光学系が構成されるレンズ鏡胴、撮像素子、駆動制御回路等が備えられた撮像装置本体103と、コンバージョンレンズ装置47とから構成される。
【0071】
まず、撮像装置本体103を構成する外装ケース102は、横長の略直方体をなす中空の筐体からなり、長手方向を前後方向にした状態で使用されている。図16では図示されないが、外装ケース102の前部にレンズ鏡胴の撮像レンズが臨むように配設されている。レンズ鏡胴は、レンズ鏡胴内に配設された撮像光学系の光軸を水平方向に向けた状態で外装ケース102に収容されている。この例において、撮像光学系51の撮像レンズは、ズームレンズを構成するものである。外装ケース102の内部において、レンズ鏡胴の後部には後述する撮像素子が取り付けられている。そして、レンズ鏡胴の後方であって、外装ケース102の後方にはビューファインダ装置106が配置されている。
【0072】
外装ケース102の上部には、外付けビデオライトや外付けマイクロホン等のアクセサリーが着脱自在に装着されるアクセサリーシューを露出させる開口部が設けられている。アクセサリーシューは、ビューファインダ装置106の直前に配置されており、通常は、開口部を開閉するシューキャップ107によって着脱可能に覆われている。更に、外装ケース102の前面の下部には、ステレオ方式のマイクロホン108が内蔵されて設けられている。そして、図示しないが、レンズ鏡胴の前面の上部には、外装ケース102に一体的に設けられているフラッシュ装置の発光部が配置されている。
【0073】
外装ケース102の一方の側面には、この外装ケース102を把持するための把持部110が設けられている。この把持部110は、その内部に収納された、図には表れないメカデッキのカバー部材を兼ねている。この把持部110の上部を外側へ開くことにより、例えば内蔵されたメカデッキのカセット挿入口が露出され、テープカセット等の着脱操作が可能となっている。
【0074】
更に、把持部110の上部後方には、モード選択スイッチを兼ねる電源スイッチ112と、静止画の撮影を行うシャッタボタン113と、所定の範囲内で画像を連続的に拡大(テレ)又は縮小(ワイド)させるズームボタン114が設けられている。更に、電源スイッチ112の下方には、図には表れない録画ボタンが設けられている。また、図示しないが、電源スイッチ112の下方には録画ボタンが設けられており、その録画ボタンの横、即ち外装ケース102の背面には、携帯用電源であるバッテリー装置が着脱可能に装着されるバッテリー収納部が設けられている。
【0075】
外装ケース102の把持部110と反対側の面には、連結部材140を介して表示装置104が姿勢変更可能に取り付けられている。表示装置104は、例えば、ビューファインダやタッチパネルの機能を果たすものであり、液晶パネル等より構成されるものである。
【0076】
そして、上述した撮像装置本体の撮像光学系の前面、すなわち、撮像レンズ前面に、図12に示したコンバージョンレンズ装置47が取り付けられる。コンバージョンレンズ装置47の本体取付部25の突出部44外周に設けられたネジ45を、撮像装置本体103の撮像レンズが臨む前面の外周に設けられたネジに螺合することにより、コンバージョンレンズ装置47が撮像装置本体103に取り付けられる。
【0077】
図17に、撮像装置100の主要部分の概略構成を示すブロック図を示す。
撮像装置100は、撮像光学系51と、撮像光学系51を通して結像された被写体光を光電変換することにより、信号として出力する撮像素子56と、撮像素子56から送られた信号を処理する映像信号処理部50と、映像信号処理部50により所定の映像信号に処理された信号を、記録再生する映像信号記録/再生部52とから構成されている。
【0078】
撮像光学系51を構成する撮像レンズは、前述したように、ズームレンズを構成するものである。
撮像素子56は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complemenary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等により構成されている。
映像信号記録/再生部52は、例えばマイクロコンピュータ(CPU)を有する演算回路等を備えて構成されており、この映像信号記録/再生部52には映像信号処理部50の他、映像信号を記録する内部メモリ53、表示装置104を駆動するモニタ駆動部54、撮像光学系51を制御する制御部55等が接続されている。制御部55には、ズームボタン114の操作等、外部からの操作信号が入力され、制御部55からの信号により、撮像光学系51のレンズ位置が調整される。
【0079】
以上の構成を有する撮像装置100においては、コンバージョンレンズ装置47を装着した状態で、通常撮影、ワイド撮影、マクロ撮影が可能となる。
【0080】
まず、撮像装置100を用いて、通常撮影を行う場合を説明する。この場合、コンバージョンレンズ装置47を構成するコンバージョンレンズ1の第2の透明部材3が平状になるように、調整リング21を回して調整する。コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3が平状になったとき、コンバージョンレンズ1は、ワイド機能もマクロ機能も有さない。このため、撮像装置100に取り込まれる画像は、コンバージョンレンズ装置47を装着しない場合と同様の画像となり、撮像装置本体103で設定された撮像光学系の倍率設定で画像が撮影される。例えば、この場合に撮影される画像は、前述で用いた図4B,図4Cで示される。
【0081】
次に、撮像装置100を用いて、撮像装置本体103におけるワイド端で、ワイド撮影を行う場合を説明する。まず、ズームボタン114を操作して、ズームレンズを構成する撮像光学系51を操作することにより、撮像装置本体103の撮像光学系51の焦点距離が最小となる、ワイド端(広角端)とする。この状態において、コンバージョンレンズ装置47の調整リング21を回すことにより、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3が、凹状になるように調整する。第2の透明部材3が凹状とされることにより、コンバージョンレンズ1は、ワイド機能を有するワイドエンドコンバータとなるので、撮像装置100に取り込まれる画像の画角が広角側に拡大される。例えば、この場合に撮影される画像は、前述で用いた図4Aで示される。
そして、この場合、調整リング21を回して調整することにより、第2の透明部材3の曲率を、任意の曲率となるように連続的に変化させることができる。これにより、撮像装置本体103の撮像光学系51のワイド端において、最大画角まで、任意の画角で広角側に自由に倍率を変化させることができる。
【0082】
次に、撮像装置100を用いて、撮像装置本体103におけるテレ端で、マクロ撮影を行う場合を説明する。まず、ズームボタン114を操作して、ズームレンズを構成する撮像光学系51を操作することにより、撮像装置本体103の撮像光学系51の焦点距離が無限大となる、テレ端(望遠端)とする。この状態において、コンバージョンレンズ装置47の調整リング21を回すことにより、コンバージョンレンズ1の第2の透明部材3が、凸状になるように調整する。第2の透明部材3が凸状とされることにより、コンバージョンレンズ1は、マクロ機能を有するクローズアップレンズとなるので、より被写体に近づいて撮影することができる。例えば、この場合に撮影される画像は、前述で用いた図4Dで示される。また、この場合も、調整リング21を回して調整することにより、第2の透明部材3の曲率を、任意の曲率となるように連続的に変化させることができる。これにより、撮像装置本体103の被写体に近づける距離を自由に設定することができる。
【0083】
以上のように、本実施形態例のコンバージョンレンズ装置47、及びコンバージョンレンズ装置47を用いた撮像装置100によれば、撮像装置本体103の撮像光学系51の前面に装着されたコンバージョンレンズ装置47を装着したままの状態で、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影の切り換えができる。従来のワイドエンドコンバージョンレンズやクローズアップレンズは、使用しないときに撮像装置本体から取り外す必要があったが、本実施形態例では、コンバージョンレンズのレンズ形状を凹状、平状、凸状に自由に変化させることができるので、コンバージョンレンズの機能を目的毎に容易に切り換えることができ、撮像装置本体から取り外す手間がない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるコンバージョンレンズの概略断面構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるコンバージョンレンズの概略断面構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるコンバージョンレンズの概略断面構成図である。
【図4】A〜D 第1の実施形態のコンバージョンレンズを用いて撮影可能な画像を示す。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるコンバージョンレンズの概略断面構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるコンバージョンレンズの概略断面構成図である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるコンバージョンレンズの概略断面構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態におけるコンバージョンレンズの概略断面構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態におけるコンバージョンレンズの概略断面構成図である。
【図10】本発明の第3の実施形態におけるコンバージョンレンズの概略断面構成図である。
【図11】本発明の第1〜第3の実施形態におけるコンバージョンレンズの他の例を示す概略断面構成図である。
【図12】本発明の一実施形態におけるコンバージョンレンズ装置の分解図である。
【図13】本発明の一実施形態におけるコンバージョンレンズ装置の概略断面構成図である。
【図14】本発明の一実施形態におけるコンバージョンレンズ装置の動作を示す概略断面構成図である。
【図15】本発明の一実施形態におけるコンバージョンレンズ装置の動作を示す概略断面構成図である。
【図16】本発明の一実施形態における撮像装置の外観を示す概略構成図である。
【図17】本発明の一実施形態における撮像装置の主要構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
1,19,20・・・コンバージョンレンズ、2・・第1の透明部材、3・・第2の透明部材、4,10,16・・連結部、5・・第1の枠体、6・・第2の枠体、7・・液体、11・・ダイアフラム、12・・仕切板、13・・支持部、47・・コンバージョンレンズ装置、21・・調整リング、22・・レンズ枠、23・・可動板、24・・可動板固定リング、25・・本体取付部、100・・撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成された一対の透明部材と、
前記一対の透明部材に挟まれた密閉空間を有するように、前記一対の透明部材を連結する連結部と、
前記密閉空間に充填される透明な液体と、
前記充填された透明な液体を移動させることにより前記変形膜の曲率を変化させる曲率変化機構と
から構成されるコンバージョンレンズ。
【請求項2】
前記一対の透明部材のうち、物体側に位置する透明部材は固体の平板又は固体レンズにより構成され、像側に位置する透明部材は、前記変形膜により構成される請求項1記載のコンバージョンレンズ。
【請求項3】
前記連結部は、伸縮可能な襞状の蛇腹構造であり、前記蛇腹構造の連結部により、曲率変化機構が構成される請求項1記載のコンバージョンレンズ。
【請求項4】
前記変形膜が凹状、平状、凸状となるように前記変形膜の曲率が連続的に変化される請求項1記載のコンバージョンレンズ。
【請求項5】
少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成された一対の透明部材と、前記一対の透明部材に挟まれた密閉空間を有するように、前記一対の透明部材を連結する連結部と、前記密閉空間に充填される透明な液体と、前記充填された透明な液体を移動させることにより前記変形膜の曲率を変化させる曲率変化機構とから構成されるコンバージョンレンズと、
前記曲率変化機構を制御して、前記変形膜の曲率変化を制御する曲率制御手段と
から構成されるコンバージョンレンズ装置。
【請求項6】
少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成された一対の透明部材と、前記一対の透明部材に挟まれた密閉空間を有するように、前記一対の透明部材を連結する伸縮可能な襞状の蛇腹構造とされた連結部と、前記密閉空間に充填される透明な液体と、前記充填された透明な液体を移動させることにより前記変形膜の曲率を変化させる曲率変化機構とから構成されるコンバージョンレンズと、
前記コンバージョンレンズの一方の面側に接着固定されるレンズ枠と、
前記コンバージョンレンズの他方の面側に接着固定され、前記レンズ枠と相対的に可動される可動板とから構成される曲率制御手段と、
から構成されるコンバージョンレンズ装置。
【請求項7】
前記一対の透明部材のうち、物体側に位置する透明部材は、固体の平板または固体レンズにより構成され、像側に位置する透明部材は、前記変形膜により構成される
請求項5記載のコンバージョンレンズ装置。
【請求項8】
撮像光学系を有する撮像装置本体と、
少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成された一対の透明部材と、前記一対の透明部材に挟まれた密閉空間を有するように、前記一対の透明部材を連結する連結部と、前記密閉空間に充填される透明な液体と、前記充填された透明な液体を移動させることにより前記変形膜の曲率を変化させる曲率変化機構とから構成されるコンバージョンレンズと、前記曲率変化機構を制御する曲率制御手段とから構成され、前記撮像装置本体の撮像光学系の物体側に装着されるコンバージョンレンズ装置と
を含む撮像装置。
【請求項9】
撮像光学系を有する撮像装置本体と、
少なくとも一方が変形可能な変形膜により構成された一対の透明部材と、前記一対の透明部材に挟まれた密閉空間を有するように、前記一対の透明部材を連結する伸縮可能な襞状の蛇腹構造とされた連結部と、前記密閉空間に充填される透明な液体と、前記封入された透明な液体を密閉空間内で移動させることにより前記変形膜の曲率を変化させる曲率変化機構とから構成されるコンバージョンレンズと、前記コンバージョンレンズの一方の面に接着固定されるレンズ枠と、前記コンバージョンレンズの他方の面に接着固定され、前記レンズ枠と相対的に可動される可動板とから構成される曲率制御手段とから構成され、前記撮像装置本体の撮像光学系の物体側に装着されるコンバージョンレンズ装置と
を含む撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−251244(P2009−251244A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98534(P2008−98534)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】