説明

コンピュータおよびコンピュータ処理方法

【課題】リモート処理が実行される遠隔地のコンピュータの電源状態は、従来は完全にONとなり、実際の処理に不要なデバイスまでONになるのでその分、電力を浪費する。
【解決手段】遠隔地のコンピュータ110上にデバイス状態制御部112とリモート処理保存部113を設けることで、必要なデバイスのみONとして電力をロスすることなくリモート処理を実行させる。必要なデバイスの電源状態指定とリモート処理内容は無線データパケット101にて小型情報端末100からコンピュータ110に送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠隔地にあるコンピュータを任意の電源状態に変更してソフトウェア処理を実行させるのに必要なデータパケット、コンピュータ内装置とその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔地のコンピュータでソフトウェア処理を実行させる方法としては特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
図7はこの従来手法における実施形態の構成図である。701は遠隔地にあるメインコンピュータであり、メインコンピュータ701は711で示すOS、712で示すメール処理プログラム、713で示す実行管理プログラム、714、715で示すアプリケーションで構成される。702はユーザがメールを送信するための端末コンピュータである。
【0004】
次にその動作について説明する。ユーザは端末コンピュータ702からソフトウェア処理を記述したメールをネットワーク703経由でメインコンピュータ701に送信する。メール処理プログラム712を用いてメールを受信したコンピュータ701は、実行管理プログラム713においてメールを解析し、抽出したソフトウェア処理を実行する。このとき、ソフトウェア処理に必要なアプリケーション714、715が呼び出される。
【0005】
この従来技術においてはメールというデータパケット形態をとっており、遠隔地コンピュータがOFFの状態でも、メールを受けることでコンピュータをONにしてメールに記述されたソフトウェア処理を実行することも可能と考えられる。
【特許文献1】特開2003−29976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の従来の構成では、ソフトウェア処理を実行する遠隔地のコンピュータの電源状態は完全にONとなる。遠隔地コンピュータにディスプレイやワイヤレスモジュールが備わっており、実行させたいリモート処理にそれらのデバイスが不要であってもそれらのデバイス電源はONとなり、その分電力を浪費してしまうという問題点を有する。
【0007】
本発明はこの従来の問題点を解決するもので、遠隔地から依頼された処理に必要なデバイスのみONとできる仕組みをコンピュータ側に持ち、リモート処理内容を含めたデバイス電源状態指示を無線データパケットにてユーザが行う。この無線データパケットはユーザが所有するPDA(Personal Digital Assistance)などの小型の情報処理装置から遠隔地のコンピュータに対して送信される。これによりOFF状態になっている遠隔地のコンピュータにおいて必要なデバイスのみ電源ONとして電力をロスすることなくリモート処理を実行させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、無線データパケット受信部と、コンピュータ内の各デバイスの電源状態を制御するデバイス状態制御部と、コンピュータで処理内容の保存を行うリモート処理保存部と、前記処理内容の保存先である記憶装置と、前記記憶装置に保存された前記処理内容を実行するOS部と、を備えることを特徴とするコンピュータであり、
遠隔地にあるコンピュータで必要最低限のデバイスのみONとしてリモート処理を実行する。このため全デバイスON状態のコンピュータを使用する場合に比べて省電力でリモート処理を実行できるという作用を有する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記無線データパケット受信部が受信する無線データパケットは、遠隔地のコンピュータに処理させる内容であるリモート処理データならびにデバイスのIDと電源状態のペアが記述されていることを特徴としたものであり、
処理を実行するコンピュータから遠隔地にいるユーザは処理内容と処理に必要なデバイスの電源状態を無線データパケット内で指定できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、遠隔地にあるコンピュータで処理を実行させる際にそのコンピュータが完全にONの状態に比べて少ない電力で処理を済ませられるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態におけるコンピュータの構成図である。
【0012】
図1において、111はリモート処理パケットの受信部、112はコンピュータに含まれるデバイスの電源状態を変更するデバイス状態制御部、113はコンピュータ上で実行したい処理を保存するリモート処理保存部である。デバイス状態制御部112、リモート処理保存部113、およびHDD121からアクセス可能な記憶装置を114に示す。120、121、130、131、132、140、141、142、150、151、152はデバイス状態制御部112が制御するデバイスを示す。HDDデバイス121には、122で示すOSがあらかじめ導入されている。なお、120から152で示すデバイス構成はコンピュータの種類・用途によって変更される可能性がある。100はリモート処理パケットを送信する小型情報処理端末であり、コンピュータ110は小型情報処理端末100の遠隔地に存在する。101はコンピュータに送信されるリモート処理パケットである。リモート処理パケット101はコンピュータ110に直接送信される場合と、102で示されるネットワークを経由して送信される場合の両方が考えられる。
【0013】
図2はリモート処理パケットの構成図である。
【0014】
図2において、200は本パケットがリモート処理パケットであることを示すリモート処理パケット識別子、210は遠隔地にあるコンピュータ上で実行したい処理内容を含むリモート処理データである。220は電源状態を変更したいコンピュータ上のデバイスの数を示す。221、223はコンピュータ上のデバイスを特定するデバイスID、222、224はそのデバイスに設定したい電源状態を示すデバイス状態である。このデバイスID、デバイス状態のペアは、指定デバイス数220で示される個数分だけ存在する。230は本リモート処理パケットの終端を示すパケット終端識別子である。
【0015】
図3は記憶装置114の構成図である。
【0016】
図3において、300はデバイスID、デバイス名、デバイス電源設定可能状態、デフォルト電源状態から成るデバイス状態設定テーブルである。301はコンピュータ上のデバイスを特定するデバイスID、302はデバイスIDに対応するデバイス名、303はそのデバイスに対して設定できる電源状態であるデバイス電源設定可能状態、304はそのデバイスに対してデフォルトで設定されるデフォルト電源状態を示す。310はデバイスをデフォルトの状態に設定してよいかを示すデバイス状態自動制御許可フラグ格納領域、311はデバイス状態自動制御を実行する際に用いる時間設定を納めるデバイス状態自動制御移行時間格納領域、321はリモート処理パケットに含まれるリモート処理データをバッチファイルとして保存するためのリモート処理バッチファイル保存領域である。(304、310、311については、実施の形態2で詳述する。)
以上のように構成されたコンピュータついて、図1、図2、図3を用いてその動作を説明する。
【0017】
まず、ユーザは遠隔地にあるコンピュータ110に対してデバイス電源状態の変更あるいは処理の実行を求める場合に所有する小型情報処理端末100からリモート処理パケット101を送信する。コンピュータ110はリモート処理パケット101を無線データパケット受信部111にて受信する。リモート処理パケット101にリモート処理データ210が含まれる場合、リモート処理保存部113は記憶装置114のリモート処理バッチファイル保存領域321にリモート処理データ210をバッチファイルとして保存する。HDDデバイス121に格納されるOS122は、起動時にこのリモート処理バッチファイルを自動的に実行するよう設定されている。
【0018】
次にデバイス状態制御部112は、リモート処理パケット101が持つデバイスIDとデバイス状態を読み込み、読み込んだデバイスIDで指定されるデバイスを読み込んだデバイス状態に設定する。
【0019】
以上の動作を、フローチャート図4、図5を用いて説明する。まず、無線データパケット受信部で受信された無線データパケットはステップ401においてデバイス状態制御部に渡される。デバイス状態制御部112は、ステップ402においてその無線データパケットがリモート処理パケットであるかを確認し、そうでなければ何も処理せずに終了する。受信したデータパケットがリモート処理パケットであった場合、そのリモート処理パケット内にリモート処理データが含まれているかをステップ403で調べる。リモート処理データが含まれていない場合、ステップ405へスキップする。含まれている場合、リモート処理保存手順420にジャンプする。リモート処理保存部はステップ421においてリモート処理パケットからリモート処理データを読み込み、ステップ422において読み込んだリモート処理データをバッチファイルとして、記憶装置のリモート処理バッチファイル保存領域に保存する。次にデバイス状態制御部はステップ405において、リモート処理パケットから電源状態を変更したいデバイスの数Mを読み込む。ステップ407においてデバイスIDとデバイス状態のペアを読み込み、ステップ408において読み込んだデバイスIDに対応するデバイスを読み込んだデバイス状態に設定する。ステップ407、408はM回実行された後、処理は終了する。
【0020】
CPU120、HDD121の電源状態がONに設定された場合、HDDに導入されているOSは図5にあるリモート処理バッチファイル実行手順を開始する。まずステップ502においてOSはリモート処理バッチファイル保存領域にデータが存在するか調べる。データが存在しない場合、処理を終了する。データが存在する場合、ステップ503でリモート処理バッチファイル保存領域からリモート処理バッチファイルを読み込み、ステップ504において読み込んだリモート処理バッチファイルを実行する。
【0021】
以上のように本実施の形態によれば、遠隔地にあるコンピュータにおいてリモート処理を実行させる場合、その処理に必要なデバイスのみONとすることを可能にする。従って、リモート処理実行時のコンピュータの消費電力を低減させることが可能である。例えばOFF状態にある遠隔地のコンピュータにネットワーク接続が必要なバッチ処理を依頼する場合、処理に必要なCPU、HDD、WLANのみONとし、その他の消費電力の大きいディスプレイなどはOFF状態を維持する。これにより全てのデバイスがONになっているときより少ない電力でリモート処理を実行することができる。
【0022】
なお、リモート処理パケットを送信する小型情報処理端末の代わりにコンピュータを使用したり、コンピュータ110の有する機能をPDAのようなバッテリー駆動の情報端末に実装することも考えられる。バッテリー容量の制限が厳しい情報端末でリモート処理を行う場合、本実施の形態1における省電力性はとりわけ有効である。
【0023】
また、リモート処理を行うことは必須ではなく、単に遠隔地にあるコンピュータの必要なデバイスのみONにすることも考えられる。OSの起動には時間がかかるが、OFF状態にあるコンピュータにあらかじめCPU、HDDをONとするリモート処理パケットを送信しておけば、ユーザがコンピュータの近くに到着するとすぐにOS上で作業を開始できるというメリットが発生する。
【0024】
また、図1におけるコンピュータの概念を拡大し、コンピュータシステムが自動車に実装されており、各デバイスをエンジン、空調とする場合、ユーザがエンジンをアイドリング状態、空調を適切な温度に設定するリモート処理パケットをあらかじめエンジン停止状態にある自動車に実装されているデバイス状態制御部に送信しておくことで、ユーザが自動車の近くに到着した時にはすぐ快適に出発できる環境を自動車側に整えておくことも応用として考えられる。
【0025】
(実施の形態2)
図1、図2、図3を用いて動作を説明する。まず情報端末100を持つユーザがコンピュータ110を手元で使用中であり、デバイス状態自動制御フラグ310が立っているものとする。このとき情報端末100はコンピュータ110が現在の動作状態を維持できるようコンピュータ110に対し、ネットワーク経由ではなくて直接にかつ定期的にリモート処理パケット101を送信する。このときのリモート処理パケット101は、リモート処理パケット識別子200とパケット終端識別子230さえ有していれば良い。デバイス状態制御部はデバイス状態自動制御移行時間格納領域311で設定される時間より長い時間リモート処理パケットを受けなかった場合、全デバイスをデバイス状態設定テーブル300にあるデフォルト電源状態304で示される電源状態に変更する。
【0026】
以上の動作をフローチャート図6で説明する。デバイス状態制御部112はステップ601においてデバイス状態自動制御移行時間格納領域で設定されている時間を読み込む。次にその時間より長い時間間隔でリモート処理パケットを受信していないことをステップ602で調べる。受信している場合は何もしない。受信していない場合、ステップ603においてデバイス状態自動制御許可フラグ格納領域にあるフラグの状態を調べる。フラグがたっていない場合は何もしない。フラグがたっている場合はステップ604において状態を変更させるデバイス数Nをデバイス状態設定テーブルから取得する。次にステップ606においてデバイス状態設定テーブルにあるデフォルト電源状態を読み込み、ステップ607においてそのデフォルト電源状態となるようデバイスを設定する。ステップ606、607はN回繰り返される。
【0027】
以上のように本実施の形態によれば、ユーザがコンピュータから離れた場合に、OSが標準としてサポートしない省電力の状態を設定することができる。例えばユーザの所有する情報端末からのリモート処理パケットを受けなくなったコンピュータは、CPUやUSBの動作レベルを落としたり画面はつけたままだがバックライトの輝度を落としたりするといった柔軟な省電力設定が可能となる。
【0028】
なお、ユーザが離れた場合にコンピュータを省電力させるのではなく、ユーザが使用していなかったデバイスをONにしたりCPUの動作レベルをあげるなどして電力をより消費させることも無論可能である。
【0029】
また、図1におけるコンピュータの概念を拡大し、各デバイスを家庭に存在する家電とみなしコンピュータシステムを家電の電源状態を管理するシステムとした場合を考える。ユーザが家庭から離れるときにユーザの持つ小型情報端末からのリモート処理パケットを家庭内にあるデバイス状態制御部は受信しなくなるためデバイスはデフォルト電源状態に設定され、例えば照明を防犯のために明るくしたり暖房の設定温度を下げて保持するなどの柔軟な設定が可能となることも応用として考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にかかるコンピュータシステムを特定の電源状態に設定して処理を実行するためのデータパケットおよびコンピュータシステム制御方法は、遠隔地にあるコンピュータシステムで処理を実行させる際にコンピュータシステムが完全にONの状態と比較して少ない電力で処理を実行できるという効果を有し、コンピュータシステムの遠隔管理操作における省電力の実施方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1におけるコンピュータの構成図
【図2】リモート処理パケットの構成図
【図3】記憶領域の構成図
【図4】デバイス状態制御手順とリモート処理保存手順のフローチャート
【図5】リモート処理バッチファイル実行手順のフローチャート
【図6】デバイス状態自動制御手順のフローチャート
【図7】従来手法における実施形態の構成図
【符号の説明】
【0032】
100 小型情報処理端末
101 リモート処理パケット
110 コンピュータ
111 パケット受信部
112 デバイス状態制御部
113 リモート処理保存部
114 記憶装置
122 OS部
120、121、130、131、132、140、141、142、150、151、152 コンピュータ内のデバイス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線データパケット受信部と、
コンピュータ内の各デバイスの電源状態を制御するデバイス状態制御部と、
コンピュータで処理内容の保存を行うリモート処理保存部と、
前記処理内容の保存先である記憶装置と、
前記記憶装置に保存された前記処理内容を実行するOS部と、
を備えることを特徴とするコンピュータ。
【請求項2】
前記無線データパケット受信部が受信する無線データパケットは、
遠隔地のコンピュータに処理させる内容であるリモート処理データならびにデバイスIDと電源状態のペアが記述されていることを特徴とする請求項1記載のコンピュータ。
【請求項3】
前記デバイス状態制御部は、
コンピュータ内の各デバイスを無線データパケットに指示される電源状態に設定し、また無線データパケットを一定時間受信しない場合はコンピュータ内の各デバイスの電源状態を前記記憶装置に記録されているデフォルト電源状態に設定することを特徴とする請求項1、2記載のコンピュータ。
【請求項4】
前記リモート処理保存部は、
無線データパケットに記述されるリモート処理データをコンピュータのOSが起動時に処理するバッチファイルとして保存することを特徴とする請求項1、2記載のコンピュータ。
【請求項5】
前記記憶装置は、
コンピュータ内デバイスのIDと実際のデバイス名とそのデバイスに設定可能なデバイス電源設定可能状態とデフォルト電源状態を記述したデバイス状態設定テーブルと、
一定時間無線データパケットがなければ各デバイスをデフォルト電源状態に設定するか否かのフラグを格納するデバイス状態自動制御許可フラグ格納領域と、
一定時間を設定するデバイス状態自動制御移行時間格納領域と、前記リモート処理保存部が保存するバッチファイルを格納するリモート処理バッチファイル保存領域と、
から構成されることを特徴とする請求項1、4記載のコンピュータ。
【請求項6】
前記OS部は、前記記憶装置にある前記リモート処理バッチファイル保存領域を調べてバッチファイルが保存されている場合には、起動時にそのバッチファイルを実行することを特徴とする請求項1、4、5に記載のコンピュータ。
【請求項7】
遠隔地におけるコンピュータ処理方法であって、
無線データパケット受信手順と、
コンピュータ内の各デバイスの電源状態を制御するデバイス状態制御手順と、
コンピュータで処理内容の保存を行うリモート処理保存手順と、
前記処理内容を実行するリモート処理バッチファイル実行手順と、
を備えることを特徴とするコンピュータ処理方法。
【請求項8】
前記無線データパケット受信手順にて受信する無線データパケットには、
遠隔地のコンピュータに処理させる内容であるリモート処理データと各デバイスのIDと電源状態のペアが記述されていることを特徴とする請求項7記載のコンピュータ処理方法。
【請求項9】
前記デバイス状態制御手順は、
コンピュータ内の各デバイスを無線データパケットに指示される電源状態に設定することを特徴とする請求項7記載のコンピュータ処理方法。
【請求項10】
無線データパケットを一定時間受信しない場合はコンピュータ内の各デバイスの電源状態を記憶装置に記録されるデフォルト電源状態に設定するというデバイス状態自動制御手順を持つことを特徴とする請求項7、9記載のコンピュータ処理方法。
【請求項11】
前記リモート処理保存手順は、
無線データパケットに記述されるリモート処理データをコンピュータのOSが起動時に処理するバッチファイルとして保存することを特徴とする請求項7、8記載のコンピュータ処理方法。
【請求項12】
前記リモート処理バッチファイル実行手順は、
記憶装置にあるリモート処理バッチファイル保存領域を調べてバッチファイルが保存されている場合は起動時にそのバッチファイルを実行することを特徴とする請求項7、10に記載のコンピュータ処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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