説明

コークスケーキ押出し性の推定方法およびコークスの製造方法

【課題】コークスケーキの押出し性を推定するに当たり、その推定精度をさらに向上することができるコークスケーキ押出し性の推定方法を提供する。
【解決手段】室炉式コークス炉で配合炭を乾留して得られるコークスケーキの炉外への押出し性を、試験コークス炉を用いて推定するに当たり、該試験コークス炉で前記配合炭を乾留して得られるコークスケーキ3の内部に発生する、前記試験コークス炉の壁面に平行な向きの亀裂成分の量に基づいて、前記室炉式コークス炉におけるコークスケーキの押出し性を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の石炭を配合した配合炭にてコークスを製造するに際し、石炭の配合を管理するために、配合炭を乾留して得たコークスケーキのコークス炉からの押出し性を簡便にかつ精度良く推定する方法およびこの方法を利用したコークスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高炉用コークスは、高炉の安定操業の観点から、強度、粒度および気孔率などの特性の安定したものが求められ、中でも強度は特に重要な特性とされている。このようなコークスの製造では、複数種の石炭からなる配合炭を原料として使用するため、石炭の選択および配合方法が重要となる。
【0003】
通常の室炉式コークス炉において、石炭層は、炉壁レンガを介して加熱されるため、炉壁面に近い部分の石炭から順次乾留されてコークスケーキを形成する。そして、乾留終了後には、コークスケーキ自体が炉幅方向(水平方向)に収縮するため、炉壁とコークスケーキとの間、およびコークスケーキ中心部に隙間が生じる。この乾留後の製品コークスは、押出し機により機械的に炉外へと排出されるが、上記炉壁とコークスケーキとの隙間により、生成したコークスは押出し機を介してコークス炉から容易に排出することができる。
【0004】
ここで、コークスの収縮量が不十分な場合など、コークスケーキの押出し性が悪化すると、コークスケーキが炉窯内で滞留して炉外へ押出せなくなるなどの、コークスケーキの押出し不良を生じることになる。コークスケーキの押し出し不良が発生すると、炉外へコークスケーキを排出するのに時間がかかるため生産性が低下することに加え、押出し機のプッシャーロッドからコークスケーキを介して炉壁に大きな横圧がかかり、場合によってはコークス炉の炉壁を損傷するという重大なトラブルに発展する。
【0005】
このコークスケーキの押出し性には、該ケーキ内部の亀裂が影響を及ぼすと考えられるが、従来、実際に操業しているコークス炉は勿論のこと、試験コークス炉においても、コークスケーキ内部の亀裂の状態を直接に測定することは困難であった。
【0006】
この点、配合炭の揮発分が一定でコークス強度も一定などの条件下では、コークスケーキ中の亀裂が増加すればコークス粒径が小さくなる傾向があるため、コークス粒径などの間接的な値を用いてコークスケーキ中の亀裂の状態を推定することが可能であるが、高い精度で推定することは難しい。
【0007】
また、試験炉にて乾留を行ってコークスとしたサンプルについて、冷却して室温の状態でコークスケーキ中の亀裂を測定する際に、例えば、特許文献1に開示されているように、脱着式の炉壁を備えた容器内で石炭を乾留し、透過X線像により乾留後のコークスケーキ内部の亀裂を求めることが可能である。この方法によって、定性的には亀裂の低減により押出し性は良くなるものの、ある領域内の亀裂を全て評価しているために押出し性の推定精度をさらに高めることが難しいところに課題を残していた。さらに、特許文献1に開示された方法では、コークスの断面を、収縮の解析領域と亀裂の解析領域に分割して解析するため、1つの領域として解析した場合に比べ解析が煩雑になり、また領域を分けるための閾値の設定により解析結果が異なる場合がある、といった改善点があった。
【特許文献1】特開2005−68296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、コークスケーキの押出し性を推定するに当たり、簡便な手法を用いながら、その推定精度をさらに向上するための方途を与えることにあり、さらには、高精度でコークスケーキの押出し性を推定することによってコークスの安定した製造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記目的の実現に向けた研究の中で、コークスケーキ中の亀裂のなかでも、特に炉壁と平行な向きの亀裂成分が、コークスケーキの押出し性に大きく影響していることを知見し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)室炉式コークス炉で配合炭を乾留して得られるコークスケーキの炉外への押出し性を、試験コークス炉を用いて推定するに当たり、該試験コークス炉で前記配合炭を乾留して得られるコークスケーキの内部に発生する、前記試験コークス炉の壁面に平行な向きの亀裂成分の量に基づいて、前記室炉式コークス炉におけるコークスケーキの押出し性を推定することを特徴とするコークスケーキ押出し性の推定方法。
【0011】
(2)試験コークス炉にて配合炭を乾留して得られるコークスケーキの内部に発生する、前記試験コークス炉の壁面に平行な向きの亀裂成分の量と、同配合炭を乾留して得られるコークスケーキの押出し性との関係を、予め求めておき、室炉式コークス炉にて配合炭を乾留してコークスを製造するに際し、前記炉の壁面に平行な向きの亀裂成分の量とコークスケーキの押出し性との関係に基づいて、炉の壁面に平行な向きの亀裂成分の量を調整することにより、室炉式コークス炉におけるコークスケーキの押出し性を管理することを特徴とするコークスの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コークスケーキの押出し性を高精度でかつ簡便に推定することができるため、この高精度の推定結果を利用してコークスの安定した製造が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るコークスケーキの押出し性の推定方法について、図面を参照して具体的に説明する。
本発明では、試験コークス炉で配合炭を乾留して得られるコークスケーキについて、その内部の亀裂量を測定することが前提であり、コークスケーキの内部の亀裂量は、例えば、透過X線像を用いて求める。
【0014】
すなわち、配合炭の乾留を行うコークス炉としては、測定の容易な小規模の、試験コークス炉を用いることが好ましい。この試験コークス炉の内部に、炉容器2を配置し、この炉容器2は、一般の室炉式コークス炉の炉壁に相当する。炉容器2は後述するように、対向配置した一対の加熱板2aおよび2bを有し、加熱板2aおよび2b間に装入した配合炭に対して、室炉式コークス炉の炉幅に相当する方向、すなわち加熱板2aおよび2bと直交する方向に加熱を施すことが可能である。このように配合炭に対して加熱を施して乾留を行うことによって、コークスケーキ3が得られ、この乾留の過程にてコークスケーキ3の内部には、亀裂(図1では図示せず)が生じる。
【0015】
かくして得られたコークスケーキ3を炉容器2ごと取外し、これを図1に示す透過X線装置1にセットする。透過X線装置1においては、加熱板2aおよび2bと直交しコークスケーキを高さ方向に分断する断面を透過X線像として撮影する。当該断面の向きは、室炉式コークス炉における炉幅方向に相当し、すなわち石炭の乾留が進行する方向であり、以下、炉幅方向と称する。なお、加熱板2aおよび2bには、黒鉛などのX線を透過する材料を用いるか、もしくは加熱板を脱着式とすることが好ましい。
【0016】
ここで、透過X線装置1は、加熱板2aおよび2bを挟んで対向配置したX線管4及び検出器5と、制御変換部6とで構成されている。X線管4及び検出器5は、炉幅方向に並ぶ相対位置を保持したまま、図1の破線で示す円軌道上を同期して移動可能に設けてある。制御演算部6は、X線管4及び検出器5の移動を制御するとともに、検出器5により測定したX線の強度から、X線管4及び検出器5が移動する過程での各部位の透過率を算出し、コークスケーキ3の炉幅方向の断層を2次元の透過X線像データとして演算する装置である。
【0017】
そして、制御演算部6で演算した2次元の透過X線像データは、画像解析装置7で2次元の透過X線像として表示される。例えば、図2は画像解析装置7で表示されたコークスケーキ3の炉幅方向での2次元の透過X線像であり、X線の透過率に対応した濃淡で表示される。
【0018】
コークスケーキ3は、炉幅方向およびこの方向と直交する炉高方向に収縮し、通常、炉幅方向での収縮率は30%未満であり、また炉高方向での収縮率は20%未満である。このため、亀裂の解析は、加熱板2aおよび2bから炉幅の15%を除いた領域であって、且つ炉高方向が底部から石炭装入高さの80%までの中間領域に限定して行うことが好ましい。
【0019】
図3は、図2の透過X線像に基づき、所定の閾値を用いて2値化処理を行った亀裂解析領域の像であり、白部分がコークスであり、黒部分が亀裂8a、8b・・・である。
【0020】
この図3を利用して亀裂の解析領域における亀裂8a、8b・・・の各亀裂について、それぞれ炉幅方向の成分と炉高方向の成分に分離し、各方向での亀裂の長さおよび幅から亀裂の面積を求めることができる。
例えば、図4に亀裂を簡略化して示すように、各亀裂について、炉幅方向の亀裂成分は長さ:Lcosθおよび幅:Wcosθから面積:LWcosθとして求められ、そして炉高方向の亀裂成分は長さ:Lsinθおよび幅:Wsinθから面積:LWsinθとして求められる。
【0021】
なお、図4におけるL、Wおよびθは、次のようにして求める。すなわち、図3に示される亀裂8aと亀裂8bとの交点のように3本以上の亀裂が交わっている点を起点として亀裂を短い単位亀裂の集合したものと考えれば、その単位亀裂については平均の長さL、平均の幅Wおよび断面での水平方向に対する亀裂の角度θについては測定により容易に求めることができる。解析面積中の全単位亀裂について上述のL、Wおよびθを求め、例えば炉高方向の亀裂長さであれば単位亀裂のLsinθを足し合わせればよい。
【0022】
この断面で炉高方向の亀裂とは、炉の壁面に対して平行の亀裂成分であり、この種の亀裂成分は、コークスケーキを炉長方向に押出す際にコークスケーキを炉幅方向に分断するためコークスケーキが炉幅方向に広がり易くなり、炉壁との摩擦を増大させて押出し性を低下させる原因となる。
【0023】
一方、上記測定で炉幅方向に伸びる亀裂は、炉壁に対して垂直な成分であり、コークスケーキの押出し時にコークスケーキを炉幅方向に広がり易くする作用は極めて少ない。すなわち、図3において、主に炉高方向の成分による亀裂8aと、主に炉幅方向の成分による亀裂8bとは、コークスケーキの押出し性に関して全く異なる影響を示すのである。
【0024】
次に、このようにして求めた上記炉高方向の亀裂成分、すなわち試験コークス炉で配合炭を乾留した時に生成する炉壁と平行な向きの亀裂成分量を変数として、上記配合炭を室炉式コークス炉で乾留して得た、コークスケーキを押出した際の押出し力との関係を予め実測しておく。この関係を予め求めておけば、上記のように、炉壁に対して平行な亀裂成分量を算出することにより、室炉式コークス炉でのコークスケーキの押出し性を精度良く推定できるようになる。
【0025】
また、従来の、コークスケーキ内部の亀裂をその方向により分離せずに推定した場合に比べて、コークスケーキを押出す際のケーキの広がり易さに影響する、炉壁と平行な亀裂成分量のみを算出すればよいため、コークスの押出し性の推定を高精度かつ簡便に行うことができる。ここで、炉壁に対して平行な亀裂量としては、上記の方法に従って炉高方向の亀裂成分の長さおよび幅から求めた面積を使用したが、それぞれの解析領域での単位面積当たりで指数化してもよい。
【0026】
ここで、上記の実施形態では、コークスケーキ3の炉幅方向の一断面を撮影する(1枚の透過X線像を表示する)ことによりコークスケーキ3の炉壁と平行な向きの亀裂量を求める手法を示したが、図1にて示したX線管4および検出器5をコークスケーキ3の厚み方向(図1の紙面表裏方向)に移動し、先に撮影した一断面と平行する複数の断面について上記の操作を繰り返すことによって、算出する炉壁と平行な向きの亀裂量をコークスケーキ3の厚み方向で平均化すれば、測定精度をさらに向上できるため好ましい。
【0027】
上記の方法では、試験コークス炉にて配合炭を乾留して得られるコークスケーキの炉壁と平行な向きの亀裂量を求めれば、室炉式コークス炉でのコークスケーキの押出し性を精度良く推定できるようになるため、逆に、炉壁と平行な向きの亀裂量を調整することによって、室炉式コークス炉での押出し性を管理することができる。ここで、炉壁と平行な向きの亀裂量を調整するには、配合炭の流動性を向上させることや炭化度分布の幅を狭くすることが有効である。
【0028】
なお、室炉式コークス炉でのコークスケーキの押出し性は、同炉内でコークスが滞留する押詰りの頻度、押出し時に押出しラムが過負荷で停止する押止りの頻度、押出しラムを駆動させるために必要な電力もしくは電流、押出時にラムに加わる力などにて、評価することができる。
【実施例】
【0029】
上記の実施形態で示したコークスケーキの押出し性の推定方法について、以下に図5を参照してより具体的に詳述する。なお、図5において、図1で示した構成と同一の構成要素には、同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
さて、この実施例では、図5に示すコークスケーキ3の亀裂量測定用の小型試験コークス炉(L×W×H:114mm×190mm×120mm:容器2)を用いて、40kg規模の乾留炉において、表1に示す乾留条件の下で乾留を行った。なお、試験コークス炉の容器2は、レンガ製の加熱板2aおよび2bと、底板10及び天板11とから構成される。
【0031】
【表1】

【0032】
上記の試験コークス炉にて乾留後、この試験コークス炉の容器2を透過X線像の撮影装置(X線管4および検出器5)を所定の位置にセットして透過X線像を撮影した。なお、透過X線像は、コークスケーキ3の端面から10mm間隔で10断面を撮影した。
【0033】
透過X線像は、制御演算部6を介して、画像処理装置7に入力される。この画像解析装置7では、図2に示したように、X線の透過率に対応した濃淡で表された2次元画像を表示する。
【0034】
ここで、使用している190m幅の試験コークス炉の容器2は、通常コークスケーキの収縮量が40mm以下であることから、加熱板2aおよび2b(炉壁)から20mmの範囲は除外した中心150mm部分とし、高さ方向を底板10(炉底)から100mmの範囲とした領域で解析を行った。この亀裂量の評価では、図3に示したように、コークス(カーボン)の部分と亀裂(空隙)の部分を2値化により区別できるようにして行った。この画像を用いて亀裂8a、8b・・・についてそれぞれ長さL、幅Wおよび炉底面に対する角度θを、上述したところに従って求めた。
【0035】
上記方法により測定した各亀裂について、図4に示すように、炉幅方向(すなわち炉壁に対して垂直な方向)の成分LcosθおよびWcosθ、炉高方向(すなわち炉壁に対して平行な方向)の成分Lsinθ、Wsinθとして、各亀裂を方向により成分分離した。
【0036】
次に、石炭の配合条件を変えた複数のコークスケーキ3(No.1〜15)の押出し性を評価した結果について表2に示す。すなわち、表2では、性状の異なった15種類のコークスケーキ3について、上述した透過X線測定方法により、亀裂量として解析領域の単位面積あたりの亀裂面積(%)を定量化した。そして、同一の石炭配合で3日間操業し、室炉式コークス炉の多くの窯の中から炉壁の損傷などがなくカーボンの付着も少ない窯を事前に10窯選定しておき、基準配合のコークスケーキの押出し電流値を100としたときの相対値として、15種類のコークスケーキについて実験期間中の押出し性指数を求めた。
【0037】
なお、実験期間中は石炭水分を6.5%の一定とし、一窯当たりの装炭量も一定とした。コークス炉の稼働率は120%で一定とし、全消費時間も一定で操業した。ここで、前記の押出し性指数は、コークス押出し時における押出し機の負荷の大きさを示すものであり、押出し性指数が大きいと、コークスが押出しにくくなる。
【0038】
【表2】

【0039】
表2の結果に基づいて、15種類のコークスケーキ3の押出し性指数と、透過X線像での解析領域単位面積当たりの亀裂面積との関係について整理した結果を、図6に示す。炉壁に平行な亀裂の面積が増加すると、押出し性指数もそれに伴って増加しているのに対し、炉壁に垂直な亀裂の面積と押出し性指数との間には、明確な関係はみられないことがわかる。従来の亀裂評価方法では、これらの亀裂を一律に評価したものであるため、その推定精度はどうしても低くなる。
【0040】
ここで、コークスケーキ3における炉壁と平行な向きの亀裂の面積に基づいた、押出し性の推定値は、下記の(1)式にて求めることができる。

(押出し性指数の推定値)=a×(炉壁と平行な向きの亀裂面積)+b
なお、aおよびbは定数であり、コークス炉等の条件により異なるが、いくつかのケースで上記のような実験を行えば求めることができる。ここでは、上記実験の押出し性指数(−)と、透過X線像での解析領域単位面積当たりの炉壁に平行な亀裂の面積(%)とを用い、a=17.3、b=−17.1とした。
【0041】
図7は、上記(1)式に基づいて算出した押出し性指数の推定値と実際に実験時に測定された押出し性指数との関係を示しているが、この図7から、両者が良好に一致していることが分かる。そして表3は、本発明に係る炉壁に対して平行な亀裂面積を測定した方法と従来の全亀裂面積を測定した方法および炉壁に対して垂直な亀裂面積を測定した方法について、押出し性指数との相関を比較したものであるが、本発明に係る炉壁と平行な向きの亀裂を測定した方法が、他の従来の方法などに比較して、相関係数が高くコークスケーキ3の押出し性に大きな影響を及ぼすため、コークスケーキ3の押出し性の推定に大変効果的であることがわかる。
【0042】
【表3】

【0043】
また、上記した図6の関係をみると、コークスケーキ中の炉壁と平行な向きの亀裂の面積を低減することによって、コークス炉での押出し負荷を低減できることが分かる。そこで、炉壁と平行な向きの亀裂の面積を低減するため、配合炭性状との関係を検討した。
【0044】
すなわち、配合炭に使用した各単味炭はJIS M 8816に示されるビトリニット組織の反射率分布を測定するとともに、平均反射率Ro(%)を求めた。また、微細組織分析を行い、イナート量等を定量化した。JIS M 8801に示されるギーセラーブラストメーター法により、最高流動度Mf(log ddpm)を測定して単味炭の品位として用いた。
【0045】
各単味炭毎のビトリニットの反射率分布および微細組織分析によるビトリニットの割合を測定することによって、各単味炭の配合割合が決まれば、所定の配合での配合炭のビトリニットの反射率分布を求めることができる。この段階では、加熱等による化学反応等は生じていないため、上記の操作は精度良くまた比較的容易に行うことが可能である。この配合炭のビトリニットの反射率分布について、正規分布を仮定してその分布の幅σRoを求めた。
【0046】
いくつかの配合炭において、平均品位(平均反射率Ro、最高流動度MFおよびイナート量)一定の条件下で反射率分布幅σRoとコークスケーキ中の炉壁と平行な向きの亀裂の面積との関係を調べた。その結果を、図8に示すように、平均品位一定の条件下では、配合炭の反射率分布の幅σRoを低減すれば、炉壁と平行な向きの亀裂の面積低減が可能であることがわかる。
【0047】
したがって、例えば、配合炭の性状により炉壁と平行な向きの亀裂の面積を制御し、コークスケーキの押出し性を管理値以下に抑えることが可能である。なお、配合炭の炭化度分布σRo以外に配合炭の平均品位(Ro、MFおよびイナート量)についても、品位と炉壁にと平行な向きの亀裂の面積との関係を予め求めておくことによって、コークスケーキの押出し性の管理に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るコークスケーキの亀裂量を測定するための装置構成を示す図である。
【図2】撮影した透過X線像を示す図である。
【図3】撮影した透過X線像のうち亀裂解析領域を示す図である。
【図4】コークスケーキの亀裂量の測定に用いた試験コークス炉の容器を示す図である。
【図5】コークスケーキの亀裂量の解析方法を示す図である。
【図6】炉壁と平行な向きの亀裂の面積と押出し性指数との関係を示す図である。
【図7】炉壁と平行な向きの亀裂の面積から求めた押出し性指数の推定値と、測定された押出し性指数との関係を示す図である。
【図8】配合炭の反射率分布の幅と炉壁と平行な向きの亀裂の面積との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 透過X線装置
2 炉容器
2a、2b 加熱板(炉壁)
3 コークスケーキ
4 X線管
5 検出器
6 制御演算部
7 画像解析装置
8a、8b 亀裂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室炉式コークス炉にて配合炭を乾留して得られるコークスケーキの炉外への押出し性を、試験コークス炉を用いて推定するに当たり、該試験コークス炉にて前記配合炭を乾留して得られるコークスケーキの内部に発生する、前記試験コークス炉の壁面に平行な向きの亀裂成分の量に基づいて、前記室炉式コークス炉におけるコークスケーキの押出し性を推定することを特徴とするコークスケーキ押出し性の推定方法。
【請求項2】
試験コークス炉にて配合炭を乾留して得られるコークスケーキの内部に発生する、前記試験コークス炉の壁面に平行な向きの亀裂成分の量と、同配合炭を乾留して得られるコークスケーキの押出し性との関係を、予め求めておき、室炉式コークス炉にて配合炭を乾留してコークスを製造するに際し、前記炉の壁面に平行な向きの亀裂成分の量とコークスケーキの押出し性との関係に基づいて、炉の壁面に平行な向きの亀裂成分の量を調整することにより、室炉式コークス炉におけるコークスケーキの押出し性を管理することを特徴とするコークスの製造方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−332312(P2007−332312A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167623(P2006−167623)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】