説明

コーティングされたハニカム体を製造するための方法

本発明は、チャネル(7)を有し、そのチャネルを通して排気ガスのストリームが流れることができる、金属層(3)から製造され、コーティング(2)が提供される、金属製ハニカム体(1)を製造するための方法に関する。このようなハニカム体は、好ましくは、自動車の内燃エンジンの排気ガスシステムにおいて、触媒保持体、フィルター、ミキサー、および/または吸着体として使用される。本発明による方法は、コーティング(2)の2段階の適用を含み、非常に有益なコーティングされた金属製ハニカム体(1)の製造を可能にし、大きなコーティング面積および低い流れ抵抗により特徴付けられる。同時に、本発明による方法は、より少ないコーティングを使用してハニカム体(1)における非常に大きな表面積を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネルを有し、そのチャネルを通して排気ガスのストリームが流れることができる、金属層から製造され、コーティングが提供される、ハニカム体を製造するための方法に関する。この種類のハニカム体は、好ましくは、自動車の内燃エンジンの排気システムにおいて、触媒基板、フィルター、ミキサー、および/または吸着体として使用される。
【背景技術】
【0002】
典型的に、ハニカム体はウォシュコートでコーティングされている。従来、ウォシュコートは酸化アルミニウムを含み、ハニカム体におけるチャネル壁の表面積を増加させるために使用される。触媒基板の場合、ウォシュコートは触媒的に活性な物質を保持する。特に、ウォシュコートの多孔性構造により、表面積の増加が得られる。大きな表面積により、ハニカム体を通過する排気ガスが、そのハニカム体における触媒的に活性な物質と接触する可能性が増加する。それにより、ハニカム体の触媒活性が改良される。
【0003】
ハニカム体に導入されるコーティングの量は、通常、ハニカム体におけるチャネル壁の表面積の増加が最大となるように選択される。ハニカム体に導入されるコーティングが少なければ、表面積の増加が少ししか得られない。また、ハニカム体におけるコーティングの量が多ければ、そのコーティングが、ウォシュコートによる表面積の増加の効果を発揮できないような程度まで、ハニカム体におけるチャネルを遮断する。ハニカム体の通過可能なチャネル断面のサイズはコーティングの過剰な量により低減され、それによって、ハニカム体の流れ抵抗が増加する。ハニカム体における一部のチャネルが完全に遮断され得る危険性さえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この状況を出発点として、本明細書に提示される本発明の目的は、従来技術に関して説明した問題を少なくとも軽減することである。特に、本発明は、コーティングされた金属製ハニカム体、およびコーティングの点で従来の公知のコーティングされた金属製ハニカム体より利点を有する金属製ハニカム体を製造する方法を示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は独立請求項の特徴に係る方法によって達成される。さらなる有益なハニカム体を製造する方法の実施形態はそれぞれの従属請求項に示される。請求項に別々に提示されている特徴は、任意の技術的に有意な方法において組み合わされてもよく、特に図面と併せた詳細な説明からの例示的事項により補足されてもよく、本発明のさらなる変形の実施形態が生じてもよい。
【0006】
コーティングを有する金属製ハニカム体を製造するための本発明による方法は、少なくとも以下の工程:
a)少なくとも1つの少なくとも部分的に波形の金属層を提供する工程と、
b)コーティングでの少なくとも1つの金属層のうちの少なくとも1つの第1のコーティング工程であって、少なくとも1つの金属層の部分的領域はコーティングされていない、工程と、
c)チャネルを有するハニカム構造を形成するように少なくとも1つの金属層を配置し、それにより、少なくとも1つの金属層のうちのコーティングされていない部分的領域の間に接触点を生成する工程と、
d)接触点のうちの少なくとも一部に材料結合点を形成し、それにより、ハニカム体(1)を形成する工程と、
を有する。
【0007】
工程a)において金属層を提供する場合、好ましくは複数の平滑な金属層および複数の波形の金属層が提供される。波形の金属層は、例えば正弦波形状を有してもよい。しかしながら、矩形の波形、ギザギザの波形または蛇行した波形などの異なる波形でもよい。工程b)において、部分的領域がコーティングを有さないように、層の少なくとも一部が、(第1の)コーティングを有して提供される。2つの異なる種類の層(例えば波形の層および平滑な層)が使用される場合、例えば第1の種類の層(例えば平滑な層)はコーティングされていない状態であってもよく、第2の種類の層(例えば波形の層)は対応してコーティングされてもよい。この目的のために、コーティングは、付与の間、前記部分的領域にコーティングを付与できないように、またはコーティングしない目的の領域をマスクするように付与されてもよい。これらの領域は、例えばコーティングが金属層の所定の領域のみに接着することを確実にする、接着防止層を用いて覆われてもよい。コーティングは、コーティングをしない目的の領域を覆うマスク上で噴霧してもよい。
【0008】
工程b)の別の実施形態において、層の一部の領域に液体を付与してもよく、その層は保護層を示すので、それらの局所的領域において後で付与されるコーティングが置き換わるか、または接着を防止する。
【0009】
本発明に使用されている意味において用語「コーティングされていない(bare)」とは、特に、コーティングされていないか、またはコーティングされていない領域上にコーティングが無視できるほどの量のみ存在することを意味する。工程c)において、工程a)において提供される金属層は好ましくは、スタックとして配置され、平滑な層および波形の層が互いに交互に重なって配置される。次いでこのような層のスタックの1つ以上が巻かれ、コイル状にされ、および/または積み重ねられ、チャネルを有するハニカム構造を形成する。これにより、平滑な金属層と波形の金属層との間に一点のパターンの接触点が生じる。すなわち、どこであろうと、波形の金属層の波形は最大部を有する。これらの最大部の右および左に、各々、三角形のクロッチが存在する。工程d)において、金属層の間の結合点は、工程c)において得られた接触点の一部に形成される。結合点は、好ましくは、接触点の最大50%、特に接触点の最大10%で形成される。結合点は、ろう付けまたは溶接された結合点として具現化される。この目的のために、ろう付け材料が、例えば、ハニカム体に導入され、ろう付けされた結合点が熱処理により生成される。ろう付け材料は、例えば毛細管力によってクロッチに導入されてもよい。工程c)の前でも、または工程b)の前でも、ろう付け材料または接着剤を有する金属層を提供してもよく、この接着剤は、工程d)の前または工程d)においてろう付け材料を与えることを容易にする。
【0010】
コーティング領域およびコーティングされていない領域の種々のパターンは、波形の層および/または平滑な層の上に提供され得る。好ましくは、例えば、平滑な層は完全にコーティングされず、波形の層は一部の領域においてコーティングされていない。波形の層は、例えば最大の領域(波形の先端および/または波形の溝)においてコーティングされなくてもよい。このように、ハニカム構造の巻かれるか、コイル状にされるか、または積み重ねられた後の互いに対する層の配置に関わらず、層のコーティングされていない領域のみが互いに接触点を形成することを確保してもよい。
【0011】
さらに、コーティングされた領域およびコーティングされていない領域が、波形の層および平滑な層の両方に生成されてもよい。次いで層のコーティングされていない領域のみが接触点を形成することを確保するために、互いに対する層の配置によるコーティングされていない領域とコーティングされた領域との正確な一致および使用される層が巻かれるか、または積み重ねられるシステムが必要となる。
【0012】
本発明に係る方法の別の実施形態において、工程c)において生成されるハニカム構造の少なくとも1つの端面に近接して配置される領域は、平滑な層と波形の層のいずれも工程b)においてコーティングされない。層の一端から延びる、規定の幅、例えば20mm[ミリメートル]以下、好ましくは10mm[ミリメートル]以下および特に好ましくは5mm[ミリメートル]以下の幅を有するストリップが、好ましくは、平滑な層および波形の層の両方においてコーティングされていない。材料結合点は、工程d)において、特にハニカム構造の少なくとも1つの端面に近接して有益に形成される。正確にこれらの領域はコーティングされていないか、またはコーティングを含まないので、層の間にコーティングされていない接触点を得ることが可能である。
【0013】
さらに、コーティングされた領域およびコーティングされていない領域は、波形の層および平滑な層の両方の層の一端に近接して生成されてもよく、そうでなければ層は完全にコーティングされる。次いで、コーティングされていない領域、コーティングされた領域の正確な一致、巻かれるシステムまたは積み重ねるシステムおよび互いに対する層の配置を必要とするが、工程d)において層のコーティングされていない領域のみに接触点が形成されるかどうかに関わらず、工程b)において最大量のコーティングを付与してもよい。
【0014】
工程c)の後、ハニカム構造におけるコーティングされていない接触点およびコーティングされた接触点の両方が存在する場合、波形の層および/または平滑な層は、波形の形状がコーティングのさらなる厚さを少なくとも部分的に埋め合わせるように設計されてもよい。これは、例えば、変化可能な波形の高さによってなされ得る。例として、コーティングされていない接触点の領域より、コーティングされた接触点の領域で波形の層が、より短い波形の高さで与えられてもよい。この種類の波形は、例えばオフセットした波形のロールによりなされてもよい。
【0015】
本発明による方法の別の実施形態において、ハニカム構造は、工程d)の後、工程e)において仕上げ処理に供される。この文脈において用語「仕上げ処理」とは、ハニカム構造のアクティブな処理を意味し、最終的な適用(例えば排気システム)におけるハニカム体の挿入の前に行われる。特に、この場合における処理は、例えば排気ガスによるハニカム体の使用の間に生じる、ハニカム体の劣化を含まない。
【0016】
処理は、例えばコーティングされた領域および/またはコーティングされていない領域を粗面化することを含む。処理はまた、コーティングをドープすること、および/またはコーティングを付与もしくは除去することを含む。
【0017】
本発明による方法の特に好ましいバージョンにおいて、コーティングでのハニカム体の第2のコーティングは、工程d)の後、工程e)として行われる。
【0018】
従って、工程d)の後、(第2の)コーティングでのハニカム体の第2のコーティングは、工程e)において行われる。ここで、工程b)および工程e)において付与されるコーティングはまた、異なる種類であってもよく、および/または異なる機能を有してもよい。ここで、多くの場合、工程b)およびe)におけるコーティングは補足的および/または重ね合わせ的である場合であり得る。特に、厚いコーティング厚さの場合、工程d)の障害となり得、ここで、ハニカム体のコーティングは、数回(またはさらに多く)の段階で実施されてもよい。
【0019】
本発明による別の実施形態において、工程b)において付与されるコーティングに関して、工程e)におけるコーティング操作の一部として、触媒的に活性な材料を単に変化させてもよい。特に、工程e)において触媒的に活性な貴金属でコーティングを変化させるか、またはドープしてもよい。これに関して、工程e)におけるコーティング操作の間、新たなコーティングは付与されなくてもよい。工程d)は、通常、ろう付け炉において実施される。これは、貴金属の充填を少なくとも部分的に再分散できる、高温を伴う。これは、工程d)の後でのみ、工程e)において、貴金属の充填を付与することにより回避されてもよい。
【0020】
工程e)において、ハニカム体における少なくとも1つの金属層の全ての曝露された表面積がコーティングを有して提供されるように、少なくとも1つの金属層がコーティングを有して提供されることが特に好ましい。この曝露された表面積は、金属層の間の接触点を除いて、または接触点にすぐ近接する領域を除いて金属層の表面積全体である。例として、工程e)におけるコーティングは、浸漬浴を使用して付与されてもよい。特に、ここで、第2のコーティング操作の間、ハニカム体の全体よりむしろ、ハニカム体の部分的容積においてのみ、ハニカム体に完全なコーティングを提供してもよい。例として、ハニカム体の一端から開始する、ハニカム体の軸部分の方向に延びるハニカム体の部分的容積においてのみ、第2のコーティングを付与してもよい。
【0021】
単一のコーティング工程でコーティングが提供されるハニカム体と比べて、本発明によるハニカム体は、コーティング厚さが、クロッチの外側より、クロッチの領域内において著しく薄いという主要な利点を有する。工程b)における第1のコーティング操作の間、クロッチはまだ形成されていない。毛細管力のおかげでクロッチに蓄積するコーティングを有さずに、大量のコーティングを付与することが可能となる。クロッチが毛細管現象によりコーティングでほぼ完全に充填されるので、後でハニカム体において生じる表面積の確実な減少のために、クロッチの領域内におけるコーティングの蓄積は望まれない。工程e)において、著しく少量のコーティングが第2のコーティング操作の間に付与される。一方で、このように、実際に、クロッチの領域内にコーティングが存在することを確保することも可能であり、その結果として、ここでも、効果的な表面積の増加が存在する。他方で、クロッチの領域内におけるコーティングの蓄積による表面積の減少は不必要ではない。
【0022】
本発明に係る方法の別の重要な有益な態様は、ハニカム体の金属層の間の材料結合点の生成が、この方法によりかなり簡略化されることである。工程b)によるハニカム体の金属層で得られるコーティングされていない領域のおかげで、金属層の間の接触点は各々、コーティングされておらず、すなわち既に説明したように、それらは、無視できるほどの量のコーティングしかないか、または全くない(すなわちコーティングされていない)。従って、接触点がコーティングされている場合より、工程d)において著しくより有効な結合点を形成することが可能である。
【0023】
本発明による方法はまた、ウォシュコートが工程b)およびe)の1つに付与される場合、有益である。このようなウォシュコートは、特に、ハニカム体における触媒的に活性な材料の表面積および/または配置を増加させるために使用される。本発明による方法と併せて、それらは、特に非常に大きな程度までハニカム体のチャネル壁の表面積を増加させることができる。
【0024】
工程b)およびe)の1つにおいて、以下のコーティング:選択的触媒還元のためのSCRコーティング、NO吸着コーティング、3方向触媒を有するコーティングのうちの少なくとも1つを付与することがさらに可能である。
【0025】
SCRコーティングは、還元剤、典型的にアンモニアを用いる窒素酸化物の選択的触媒還元を可能にする。還元剤を用いる窒素酸化物の選択的触媒還元は、典型的に、250℃以上の温度で行われる。SCRコーティングの存在により、この温度を低下させることができ、結果として、より低い温度でも選択的触媒還元が行われる。
【0026】
本発明に係る方法は、SCRコーティングが工程b)およびe)のうちの1つに付与される場合、特に有益である。なぜなら、このように、SCR触媒として特に有益な方法で使用され得るハニカム体を製造することが可能だからである。SCR触媒は、可能な限り強固な構造でなければならない。従って、既に付与されているコーティングによって妨害されずに工程d)において材料結合点が形成され得ることは有益である。同時に、SCR触媒において、可能な限り、コーティングされていない金属製領域が存在しないようにすべきである。通常、アンモニアは、排気システムにおいてコーティングされていない金属製領域で酸化する。次いで、このアンモニアは、窒素酸化物を還元する目的のための還元剤としてもはや使用され得ない。本発明に係る方法の工程e)における第2のコーティング工程により、ハニカム体においてコーティングされていない領域が存在しないことを確保することができる。
【0027】
さらに、3方向触媒のためのコーティングが、工程b)およびe)のうちの1つに付与されてもよい。3方向触媒において、一酸化炭素および炭化水素は酸化され、窒素酸化物は並行して還元される。
【0028】
さらに、工程b)およびe)のうちの1つにおいて、吸着体のためのコーティングを付与してもよい。窒素酸化物の変換が行われ得ない特定の作動条件が排気システムに広がる場合、NO吸着体は、排気ガスに含まれる窒素酸化物を吸着する。作動条件が、変換が行われ得るように再度変化する場合、窒素酸化物は再度放出される。
【0029】
また、この方法において、工程b)における第1のコーティング操作の間、金属層に付与されるコーティングの量は、工程b)の後で、ハニカム体において、1リットルのハニカム体の容積当たり100〜250グラムのコーティング、好ましくは1リットルのハニカム体の容積当たり180〜220グラムのコーティングになるようにしてもよい。このような量のコーティングにより、コーティングのおかげで金属層の表面積が大いに増加する。このような量のコーティングが、最終的にコイル状にされるか、巻かれるか、および/または積み重ねられた後にハニカム構造に導入される場合、コーティングは、クロッチの大部分の領域に蓄積する。従って、本発明に係る方法は、このような量のコーティングを金属製ハニカム体の金属層にコーティングを導入する特に有益な方法である。
【0030】
ここで、さらに、工程e)における第2のコーティング操作の間、ハニカム体に導入されるコーティングの量は、ハニカム体におけるコーティングの量が、ハニカム体容積の20〜50g/l増加する量であってもよい。このような量のウォシュコートもまた、ハニカム体のクロッチに生じるコーティングの望まれない蓄積を有さずに仕上げられたハニカム体に導入されてもよい。
【0031】
本発明に係る方法は特に、工程a)において、少なくとも1つの平滑な不織部および少なくとも1つの波形の金属箔が提供される場合、工程c)の前に、平滑な不織部と波形の金属箔の交互からなる少なくとも1つのスタックが形成され、次いでこのスタックは工程c)において巻かれるか、またはコイル状にされることで有益となる。
【0032】
この種類の金属製不織部は、特に、排気ガスにおける煤粒子をトラップし、変換するために使用される。コーティングと併せて不織部を使用することによって、コーティングがSCRコーティングである場合、微粒子のトラップと特に効果的であるSCR触媒との組み合わせを形成することが可能である。特に、ここで、波形の金属箔のみを、工程b)における第1のコーティング操作の間、コーティングしてもよい。さらなる改良として、波形の金属箔は、金属製不織部上の排気ガスのストリームを偏向させる偏向構造を有してもよく、それにより、排気ガスのストリームからの粒子が金属製不織部に捕捉される。
【0033】
工程e)において付与される少量のコーティングもまた、不織材料の個々のワイヤ、フィラメントなどの適切なコーティングを可能にする。工程b)において付与される場合、多量のコーティングは、コーティングで不織部を完全に充填し、その結果として、不織部に固有の作用が損失する。
【0034】
さらに、本発明に係るハニカム体は、少なくとも1つの少なくともコイル状にされるか、巻かれるか、または積み重ねられ、少なくとも部分的に波形の金属層を有する場合、少なくとも1つの金属層は接触点および材料結合点を有し、これにより、チャネル壁、接触点の領域、クロッチが、金属層の間に形成され、ハニカム体のチャネル壁は、クロッチ内の第1のコーティング厚さおよびクロッチの外側の第2のコーティング厚さを有するコーティングが提供され、第2のコーティング厚さは第1のコーティング厚さより大きい。
【0035】
この種類のハニカム体は、特に大きな内部表面積により特定される。さらなる利点および特徴は、既に本発明による方法と併せて詳細に記載されている。
【0036】
特に、第2のコーティング厚さは、第1のコーティング厚さの2倍または3倍以上であってもよい。
【0037】
本発明に係るハニカム体は、少なくとも2つの金属層が存在する場合、および少なくとも2つの金属層が少なくとも1つの平滑な金属製不織部および少なくとも1つの波形の金属箔である場合、特に利点がある。
【0038】
この種類のハニカム体は、特に、SCR触媒および粒子トラップの組み合わせとして適切であり、その利点は、本発明に係る方法と併せて詳細に既に同様に記載されている。
【0039】
本発明に係るハニカム体はまた、開口粒子分離器である場合、特に有益である。開口粒子分離器は、粒子分離器の排気ガス入口側と排気ガス出口側との間に連続した壁が存在しないという事実によって特定される。開口粒子分離器の開放性は、特定の直径の粒子が粒子分離器を通して滴り得るという事実によって記載され得る。このような開口粒子分離器に対するさらなる情報は、出願人による以前の出願、例えば国際公開A−02/00326号に見出され得る。本発明に係る方法によってコーティングされる開口粒子分離器は、特に有益である。なぜなら、詳細に既に記載されている方法は、ハニカム体の開放性を確保するのに役立つからである。
【0040】
本発明に係るハニカム体はまた、閉じたフィルターであってもよい。閉じたフィルターは、通常、閉じたフィルターを通過する排気ガスのストリームが、必ずかつ確実に少なくとも1つのフィルター層を通過しなければならないという事実により特定される。そのフィルター層は、例えば、フィルターの入口側からフィルターの出口側まで移動するように、多孔性材料によって形成される。閉じたフィルターは、多くの場合、フィルターの1つの側(内側または外側)で閉じられ、外側で開口しているチャネルを有する。フィルターを通過する排気ガスは、入口側におけるチャネル開口と出口側におけるチャネル開口との間のチャネル壁を通過しなければならない(「壁面流フィルター」とも称される)。
【0041】
このようなハニカム体は、特に自動車の排気ガスシステムにおいて、特に自動車の内燃エンジンからの排気ガス中の窒素酸化物を変換するためのSCR触媒と称されるものに使用され得る。
【0042】
本発明に係るハニカム体と併せて記載されている利点および特徴は、本発明に係る方法を説明および改良するために同様に使用され得る。
【0043】
本発明および関連技術は図面を参照して以下により詳細に記載される。図面は特に好ましい例示の実施形態を示すが、本発明はそれらに限定されない。特に図面、および特に例示した比率は単に概略である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は本発明によるハニカム体である。
【図2】図2は本発明によるハニカム体のハニカム構造の詳細である。
【図3】図3は本発明によるハニカム体を形成するための金属層である。
【図4】図4は閉じたフィルターとして具現化される本発明によるハニカム体である。
【図5】図5は開口粒子分離器として具現化される本発明によるハニカム体である。
【図6】図6は本発明による方法に関連して処理される、波形の金属層および平滑な金属の詳細である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は本発明によるハニカム体1を示す。これは、金属層3によって形成されるチャネル7を含むハニカム構造6を有する。金属層3はチャネル7のためのチャネル壁11を形成する。さらに、ハニカム体1はケーシング15を有する。図1におけるハニカム体1の場合、ハニカム体1のハニカム構造6は巻かれ、ここで、層の3つの個々のスタック17が一緒にねじられる。
【0046】
図2は本発明によるハニカム体1のハニカム構造6の詳細を表す。金属層3もまた、図2に見られ得る。ここで、それぞれの平滑な金属製の不織部9および波形の金属箔10は、一方の上に他方が積み重ねられて示されている。平滑な不織部9および波形の金属箔10は共に、ハニカム構造6のチャネル7のチャネル壁11を形成する。平滑な不織部9および波形の金属箔10は、互いに接触点5を有する。結合点8は接触点5の一部に形成される。接触点5および結合点8の領域において、平滑な不織部9と波形の金属箔10との間にクロッチ16が存在する。チャネル7を画定するチャネル壁11にはコーティング2が提供される。接触点5、結合点8の領域、および/またはクロッチ16の領域において、コーティング2は第1の厚さ12を有する。平滑な不織部9および波形の金属箔10の残りの領域において、コーティング2は第2のコーティング厚さ13を有する。第2のコーティング厚さ13は、第1のコーティング厚さ12より著しく厚い。図2において、第2のコーティング厚さ13より薄い第1のコーティング厚さ12により、排気ガスが通過できるチャネル7に面するコーティング2のより大きな効果的な表面積18が得られることが見られ得る。
【0047】
図1に示すハニカム体1の実施形態は、本発明による方法によって製造され得る。図1に示すハニカム体1の実施形態を実施するために、全ての金属層3、すなわち平滑な不織部9および波形の金属箔10の両方には、本発明による方法の工程b)における第1のコーティング操作の間にコーティング2が提供されなければならない。金属層3の部分的な領域4はコーティングされていないままである。次いで工程c)において、平滑な不織部9および波形の金属箔10は、チャネル7、接触点5およびチャネル壁11を有するハニカム構造6が得られるように配置されなければならない。次いで接触点5において材料結合点8が工程d)において形成される。この後、ハニカム体1の第2のコーティングが工程e)において行われる。第1のコーティング厚さ12は、工程e)における第2のコーティング操作によってのみ、工程b)の後でもコーティングされていなかった平滑な不織部9および波形の金属箔10の部分的領域4において得られる。第2のコーティング厚さ13は、第1のコーティング操作と第2のコーティング操作とを合わせることによって平滑な不織部9および波形の金属箔10の残りの領域において得られる。従って、第2のコーティング厚さ13は、第1のコーティング厚さ12より厚い。
【0048】
図3において、本発明による方法の工程b)の結果として得られる金属層3を平面図において示す。この金属層3はコーティング領域14においてコーティング2を有する。さらに、コーティングされていない(すなわちコーティングが提供されていない)部分的領域4が存在する。この部分的領域4は、金属層3の間の接触点5の場所に正確に提供され(図2を参照)、本発明による方法の工程c)において得られる。
【0049】
図4は、閉じたフィルター20として具現化される本発明によるハニカム体1を示す。ハニカム体1は、複数の波形の金属箔10および複数の平滑な不織部9を有する。ここで選択されるハニカム体1の断面図において、波形の金属箔10は、側部からの断面として示されているので、波形が現されていない。波形の金属箔10および平滑な不織部9は、入口側23から出口側24までハニカム体1を通して延びるチャネルを形成する。それぞれのチャネルは、チャネルプラグ22によって出口側24または入口側23で閉じられる。入口で閉じられておらず、従って開口している各チャネルは、好ましくは、閉じられていない(すなわち、出口で開口している)チャネルよって完全に囲まれる。入口側23から出口側24までハニカム体1を通過する排気ガスは、必ず平滑な不織部9を通過しなければならない。
【0050】
図5は、粒子分離器19として具現化されるハニカム体1を示す。ハニカム体1は、複数の波形の金属箔10および複数の平滑な不織部9を有する。ここで選択されるハニカム体1の断面図において、波形の金属箔10は、側部からの断面として示されているので、波形が現されていない。波形の金属箔10および平滑な不織部9は、入口側23から出口側24までハニカム体1を通して延びるチャネルを形成する。波形の金属箔10は、各々、偏向構造21を有して提供され、その偏向構造21は、チャネル7を通過する排気ガスのストリームを、平滑な不織部9の方向に少なくとも部分的に偏向する。従って、大部分の排気ガスは、入口側23から出口側24を通って平滑な不織部9を通過する。この種類の開口粒子分離器19の完全な遮断はなくてもよい。なぜなら、平滑な不織部9の完全な遮断が存在する場合、排気ガスは、入口側23から出口側24まで個々のチャネル7に沿って開口粒子分離器19を直接通過できるからである。
【0051】
例として、図6は、平滑な金属層25および波形の金属層26を示し、それらはハニカム構造を得るために処理され得る。平滑な金属層25および波形の金属層26は各々、コーティング2が提供されたコーティング領域14およびコーティングされていない領域4を有する。接触点5は、コーティング領域14およびコーティングされていない領域4の両方で形成される。しかしながら、材料結合点は、コーティングされていない領域4においてのみ形成されるべきである。コーティングされていない領域4は各々、平滑な金属層25および波形の金属層26の端部27の近く(例えば多くても10mmで端部に隣接し、その端部に平行に広がっている端部領域)に形成され、端部27から開始して幅28にわたって延びる。後で巻かれるか、または積み重ねられるハニカム構造の場合、端部27は端面を形成する。コーティングされていない領域4およびコーティング領域14において接触点5が存在するので、間隔の差が、隣接する平滑な金属層25および/または波形の金属層26の間に生じる場合がある。これらの間隔の差を埋め合わせるために、波形の金属層26が、コーティングされた接触点5の領域において第1の波形高さ29を有して、およびコーティングされていない接触点5の領域において第2の波形高さ30を有して提供されてもよく、第2の波形高さ30は第1の波形高さ29より低く、および/またはコーティング2の厚さを少なくとも部分的に埋め合わせてもよい。
【0052】
このように、本発明は、チャネルを有し、そのチャネルを通して排気ガスのストリームが流れることができる、金属層から製造され、コーティングが提供される、ハニカム体を製造するための方法に関する。この種類のハニカム体は、好ましくは、自動車の内燃エンジンの排気システムにおいて、触媒基板、フィルター、ミキサー、および/または吸着体として使用される。本発明による方法は、コーティングの2段階の適用を含み、特に大きなコーティング表面積および低い流れ抵抗によって特定される、有益なコーティングされた金属製ハニカム体の製造を可能にする。同時に、本発明による方法により、特に、少量のコーティングを有するハニカム体における表面積の増加が達成され得る。
【符号の説明】
【0053】
1 ハニカム体
2 コーティング
3 金属層
4 部分的領域
5 接触点
6 ハニカム構造
7 チャネル
8 結合点
9 不織部
10 金属箔
11 チャネル壁
12 第1のコーティング厚さ
13 第2のコーティング厚さ
14 コーティング領域
15 ケーシング
16 クロッチ
17 層のスタック
18 表面積
19 粒子分離器
20 閉じたフィルター
21 偏向構造
22 チャネルプラグ
23 入口側
24 出口側
25 平滑な金属層
26 波形の金属層
27 端部
28 幅
29 第1の波形高さ
30 第2の波形高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング(2)を有する金属製ハニカム体(1)を製造するための方法であって、少なくとも以下の工程:
a)少なくとも1つの少なくとも部分的に波形の金属層(3)を提供する工程と、
b)コーティング(2)での少なくとも1つの前記金属層(3)のうちの少なくとも1つの第1のコーティング工程であって、少なくとも1つの前記金属層(3)の部分的領域(4)はコーティングされていない、工程と、
c)チャネル(7)を有するハニカム構造(6)を形成するように少なくとも1つの前記金属層(3)を配置し、それにより、少なくとも1つの前記金属層(3)のうちのコーティングされていない前記部分的領域(4)の間に接触点(5)を生成する工程と、
d)前記接触点(5)のうちの少なくとも一部に材料結合点(8)を形成し、それにより、ハニカム体(1)を形成する工程と、を含む方法。
【請求項2】
工程d)の後、前記ハニカム体(1)は工程e)において仕上げ処理に供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コーティング(2)での前記ハニカム体(1)の第2のコーティングが、工程d)の後、工程e)として行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程e)は、前記ハニカム体(1)における少なくとも1つの前記金属層(3)の全ての曝露された表面積が、前記ハニカム体(1)の少なくとも部分的容積において、コーティング(2)を有して提供されるように実施される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも工程b)およびe)のうちの1つにおいて、ウォシュコートが付与される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)における前記第1のコーティング操作の間、前記金属層(3)に付与されるコーティングの量は、工程b)の後で、前記ハニカム体(1)における1リットルのハニカム体の容積当たり100〜250グラムのコーティング(2)であるようになる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程e)における前記第2のコーティング操作の間、前記ハニカム体(1)に導入されるコーティング(2)の量は、前記ハニカム体(1)におけるコーティング(2)の量が1リットルのハニカム体の容積当たり20〜50グラム増加するようになる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)において、少なくとも1つの平滑な金属製不織部(9)および少なくとも1つの波形の金属箔(10)が提供され、工程c)の前に、平滑な不織部(9)と波形の金属箔(1)の交互からなる層の少なくとも1つのスタック(17)が形成され、次いでこのスタックは工程c)において巻かれるか、またはコイル状にされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくともコイル状にされるか、巻かれるか、または積み重ねられる、少なくとも1つの少なくとも部分的に波形の金属層(3)を有するハニカム体(1)であって、少なくとも1つの前記金属層(3)は接触点(5)および分子結合点(8)を有し、これにより、チャネル壁(11)およびクロッチ(16)が前記結合点(8)の領域に形成され、前記ハニカム体(1)の前記チャネル壁(11)は、前記クロッチ(16)内の第1のコーティング厚さ(12)および前記クロッチ(16)の外側の第2のコーティング厚さ(13)を有するコーティング(2)を有して提供され、前記第2のコーティング厚さ(13)は前記第1のコーティング厚さ(12)より厚い、ハニカム体(1)。
【請求項10】
少なくとも2つの金属層(3)が存在し、前記少なくとも2つの金属層は少なくとも1つの平滑な金属製不織部(9)および少なくとも1つの波形の金属箔(10)である、請求項9に記載のハニカム体(1)。
【請求項11】
前記ハニカム体(1)は、開口粒子分離器または閉じたフィルターである、請求項9または10に記載のハニカム体(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524652(P2012−524652A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506462(P2012−506462)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055164
【国際公開番号】WO2010/122006
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(500038927)エミテック ゲゼルシヤフト フユア エミツシオンス テクノロギー ミツト ベシユレンクテル ハフツング (156)
【Fターム(参考)】