説明

コーティングされた組織工学スカフォールド

本発明は、スカフォールドの空隙の中に部分的に浸透する少なくとも1つの表面上のコーティングを備えるスカフォールドに関する。本発明は、更に、部分的に浸透した癒着防止吸収性膜層を備えるスカフォールドに関する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、概して、組織修復及び再生、並びに組織修復及び再生用デバイスに関する。本発明は、スカフォールド構造体の中に部分的に浸透するコーティングを少なくとも一面に有するスカフォールドに関する。特に、組織工学スカフォールドの一面上に、部分的に浸透した癒着防止コーティング、即ち、癒着を防止するための癒着防止吸収性膜層を有する組織工学スカフォールド。その組織工学スカフォールドは、組織工学スカフォールドの他の表面上に、細胞の成長を導き、かつ組織の集積を向上させるための第2のコーティングを更に有することができる。
【0002】
〔発明の背景〕
筋骨格組織などの組織への損傷は、外科的介入による修復を必要とする場合がある。このような修復は、損傷組織の縫合によって、及び/又はインプラントを損傷組織に噛み合わせることによって影響を受けることができる。インプラントは、損傷組織に構造上の支持を提供することができ、その上に細胞が成長することが可能な基材としての役割を果たすので、治癒を促進することができる。
【0003】
腹壁への損傷は、多くの場合外科的修復を必要とする組織傷害の一種である。腹壁の内層が衰弱して膨張又は断裂すると、深刻な事態となる危険性がある病状が発生する可能性がある。腹部の内層が弱体化した領域を突き抜けて、風船状の嚢を形成する。これは、順次、腸係蹄又は腹部組織を嚢の中に滑り込ませ、痛み、及びその他の深刻な事態となる危険性がある健康障害を引き起こす可能性がある。
【0004】
このような状態は、通常、突き出た臓器又は臓器の突き出た部分を正常な位置に戻す外科的処置によって治療される。多くの場合、メッシュ状パッチと癒着防止バリアを組み合わせて使用して、突出した部位を修復する。
【0005】
患部内への埋め込みに伴うストレスに耐えるのに十分な構造的完全性を有しており、更には、組織の成長、及び成長中の組織との一体化を促進する能力、並びに癒着を防止する能力を有する、生体適合性の組織修復インプラントの継続的必要性が存在する。このような生体適合性の組織修復インプラントは、あらゆるタイプの組織断裂の修復にとって望ましいが、特に、腹壁への組織損傷の修復にとって望ましい。部分的に浸透した癒着防止コーティング、又は癒着を防止するための膜層を備える、組織工学スカフォールドなどのデバイスは特に望ましく、このようなデバイスは、更に、細胞の成長を導き、組織集積を向上させ、かつその他の治療的有用性を提供することができる第2のコーティングも有するデバイスを含む。
【0006】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される部及び百分率はすべて、特に明記しない限り、重量対重量基準である。
【0007】
〔発明の簡単な概要〕
本発明は、腹壁への組織損傷などの組織損傷を修復する外科的処置において適用可能な、スカフォールド等のデバイスに関する。このデバイスは、一般に、補強することができるスカフォールドと、そのスカフォールドの少なくとも1つの表面上のコーティングと、を有する。コーティングは、好ましくは癒着防止材料、即ち、癒着防止コーティングである。あらゆる理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、癒着防止コーティングの抗癒着特性は、器官及び/又はその他の内部構造が、デバイスが埋め込まれる傷害組織に癒着するのを防止する又は阻止すると信じている。デバイスは、スカフォールド及びスカフォールド表面上に、細胞の成長を促進し、かつ組織の集積を向上させるといった治療的有用性を提供する、1つ以上の別個のコーティング、即ち、癒着防止コーティング以外の1つ以上のコーティングを更に備えてもよい。これらの更なるコーティングは、癒着防止材でコーティングされていないスカフォールドの表面上にあるのが好ましい。デバイスは、生物活性物質、細胞、細分化された組織、及び細胞可溶化物によって更に増強され得る。
【0008】
本発明の一態様において、スカフォールドは、部分的に浸透した吸収性癒着防止膜層等の、スカフォールド構造体の中に部分的に浸透する癒着防止コーティング又は層を有する。癒着防止コーティング又は層は、スカフォールドが埋め込まれる傷害組織に内部構造が癒着するのを阻止する又は防止するためのバリアを提供する。癒着防止コーティング又は層は、好ましくは吸収性である。本発明の更なる実施形態において、スカフォールドの各表面はコーティングを有し、例えば、第1の表面は、スカフォールド構造体の中に部分的に浸透する癒着防止コーティングを有し、第2の表面は、細胞の成長を導き、かつ組織の集積を高める層又はコーティングを有する。
【0009】
スカフォールドの材料は織り材料又は不織材料であってもよい。スカフォールドは、織り材料又は不織材料を安定化させることができる補強材を更に有してもよく、補強材の一例はメッシュである。本発明のいくつかの実施形態は、メッシュを備えない吸収性又は非吸収性の織り材料又は不織材料、メッシュを備える吸収性の織り材料又は不織材料、及びメッシュを備える非吸収性の織り材料又は不織材料に関する。
【0010】
本発明の一実施形態は、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、酸化再生セルロース(「ORC」)、及びこれらの組み合わせを有する、吸収性膜層及び/又は癒着防止バリアであってもよい親水性コーティングと、疎水性材料を含むスカフォールドの組み合わせを含む。コーティング材はスカフォールドの中に部分的に浸透し、このことは、コーティング、即ち、吸収性膜層又は癒着防止バリアをスカフォールドに保持するための接着剤又はフィルムを完全に排除する、あるいはそれらの量又は数を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スカフォールド構造体と、スカフォールド構造体の中に部分的に浸透した癒着防止バリアと、を有する、本発明の実施形態によるデバイスの透視図。
【図2】特に、スカフォールド構造体と、スカフォールド構造体の中に部分的に浸透した癒着防止バリアとの間の境界面を示している、図1に示されるデバイスの拡大透視図。
【図3】本発明の実施形態による、CMC/ORCコーティングを有するメッシュ補強不織布スカフォールドの、一連の走査型電子顕微鏡(「SEM」)画像。
【図4】本発明の実施形態による、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(「EDC」)架橋CMC/ORCコーティングを有するメッシュ補強不織布スカフォールドの一連のSEM画像。
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
デバイスは、1つ以上の表面と、スカフォールド内に1つ以上の、好ましくは複数の空隙を画定する外表面を備える複数の繊維を有する構造体と、を有するスカフォールドを有する。層を形成するコーティング材は、スカフォールドの少なくとも1つの表面上に存在して、表面の又は表面に近接する少なくとも1つの空隙、好ましくは、表面の又は表面に近接する空隙全てを充填する。したがって、コーティングはスカフォールド構造体の中に部分的に浸透する。
【0013】
本発明の態様において、スカフォールドは上面及び/又は下面を有し、この上面及び/又は下面の上には1つ以上のコーティング又は層が存在する。本発明の更なる態様において、スカフォールドの1つの表面には、癒着を防止するために、吸収性膜などの癒着防止コーティング又は層がコーティングされる。この吸収性膜は、スカフォールド構造体の中に部分的に浸透してもよい。このデバイスは、スカフォールドの材料の構成成分として、及び/又はスカフォールドの1つ以上の表面上、好ましくは癒着防止コーティングを有さないスカフォールドの表面上のコーティング若しくは層の一部としてのいずれかで、生物活性物質と、細胞と、細分化された組織と、細胞可溶化物とを更に有してもよい。一実施形態では、スカフォールド表面上のコーティングは、治癒の間に内臓器官がスカフォールド及び/又は傷害組織に癒着しないように保護するという点で、癒着防止層である。
【0014】
スカフォールドの中に部分的に浸透することによって、吸収性膜などのコーティング材がスカフォールドと一体化する本発明の実施形態が、図1及び図2に示されている。図1及び図2を参照すると、スカフォールド1は、この実施形態では複数の繊維2を有する、繊維構造体を有し、スカフォールド1は、複数の繊維2内に1つ以上の空隙3を有する。図1及び図2の実施形態では、繊維2は不織布構造体であるが、しかしながら、繊維は織繊維又は不織繊維であり得ることは理解されるべきである。繊維2は外表面4を有し、空隙3は、一般に、繊維2の外表面4によって画定される。混ぜ合わされた繊維2は、空隙3であるすき間を形成するので、様々な混ぜ合わされた繊維2の外表面4は、スカフォールド1内に1つ以上の空隙3を画定する。
【0015】
本発明の更なる実施形態では、スカフォールドは補強材によって補強される。図1の実施形態では、スカフォールドは空隙3の一部又は全ての中に補強材5を有している。本発明において有用な補強材5の例は、スカフォールド構造体に支持を提供するメッシュ繊維である。エチコン社(Ethicon, Inc.)(米国ニュージャージー州サマービル(Somerville))(「Ethicon」)から入手可能な、ウルトラプロ(ULTRAPRO)メッシュ補強ポリグラクチン910不織布スカフォールドを、本発明に使用してもよい。
【0016】
図1及び図2に示されるように、スカフォールド1は、一般に、上面6と下面7とを有する。図1及び図2に示される実施形態では、デバイスは、癒着防止コーティングであってもよい第1のコーティング8と、第2のコーティング9とを含む。図1を参照すると、吸収性膜などの第1のコーティング8は、上面6に又は上面6に近接して存在し、成長中の細胞及び向上した組織の集積などの治療的有用性を提供するコーティングであり得る第2のコーティング9は、下面7に又は下面7に近接して存在する。第1のコーティング8は、ヒアルロン酸と、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)と、酸化再生セルロース(「ORC」)と、これらの組み合わせとを含んでもよい。図2に詳しく示されるように、癒着防止コーティングなどの第1のコーティング8は、このコーティング8の一部又は全てが、スカフォールド構造体の上面6の又は上面6に近接する少なくとも1つの空隙3を充填し、かつスカフォールド1の繊維2が、癒着防止コーティング8の中に部分的に入り込むように、スカフォールド1内に部分的に浸透する。本発明の複数の態様において、第1のコーティング8、例えば癒着防止コーティングは、スカフォールド1の上面6の又は上面6に近接する空隙3の全てを、連続層として、充填する。コーティングは、スカフォールドの上面の全てを覆ってもよく、スカフォールドの上面のほぼ全てを覆ってもよく、又はスカフォールドの上面の一部を覆ってもよい。本発明の一実施形態では、典型的には癒着防止コーティングであるコーティング8は親水性であり、疎水性の外表面4を有する繊維2などのスカフォールドの材料は疎水性である。親水性コーティング材と疎水性のスカフォールドの材料との組み合わせは、スカフォールド構造体の中、即ち空隙の中へのコーティング材の部分的な浸透を提供し、このことは、吸収性膜及び/又は癒着防止バリアなどのコーティングをスカフォールドの表面に適用するための接着剤又は別個のフィルムの必要性を解消する。
【0017】
一実施形態において、吸収性膜などの、癒着防止コーティングを形成するコーティング材は、ヒアルロン酸又はCMCと、インターシード(INTERCEED)(登録商標)及びサージセル(SURGICEL)(登録商標)(エチコン社(Ethicon, Inc.)から入手可能)等のORCとの組み合わせと、を有する。更なる実施形態では、コーティング材は、ORCを有する又は有さない、ヒアルロン酸とCMCの組み合わせで形成される。癒着防止コーティングは、典型的には、約1.5%〜約5%、例えば約2%のヒアルロン酸、及び/又は、約1%〜約10%、例えば約1.5%のCMCを有し、ヒアルロン酸とCMCのいずれか又は両方は、最大約5%のORC、例えば約0.1%〜約5%のORC、好ましくは約0.5%のORCと混合されてもよい。コーティングは、例えば、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、及びこれらの組み合わせ等のアルコールを含有する溶液中の、好ましくは濃度約50%〜約95%のEDCを含むEDCによる架橋によって安定化されてもよく。好ましい架橋剤は、約1%のEDCと、約10nMのグルタルアルデヒドと、約0.1%〜約2%のジビニルスルホンとを有するアルコール溶液を含む。
【0018】
癒着防止コーティングは、スカフォールド構造体に付着して、デバイス又は埋め込まれた後の傷害組織に癒着する内臓器官にバリアを提供するのに十分な厚さであってもよい。例えば、吸収性膜などの癒着防コーティング材の厚さは、約5μm〜約250μmであってもよい。デバイス上のその他のコーティングもまた、約5μm〜約250μmの厚さを有してもよい。スカフォールド構造体、即ち、繊維及び空隙、の中へのコーティング材の浸透深さは、好ましくは約1μm〜約100μmである。したがって、コーティング材は、スカフォールドの材料の繊維ウェブの空隙の中に、スカフォールドの上面又は下面、即ち、コーティングが適用されるスカフォールドの表面から測定して約1μm〜約100μmの距離だけ浸透してもよい。
【0019】
本発明の一実施形態では、スカフォールドは生体適合性ポリマーから形成され得る。本発明による生体適合性の組織インプラント又はスカフォールドデバイスを作製するために、様々な生体適合性ポリマーを使用することができる。この生体適合性ポリマーは、合成ポリマー、天然ポリマー、又はこれらの組み合わせであることができる。本明細書で使用される用語「合成ポリマー」は、たとえそのポリマーが天然由来の生体材料から製造された場合でも、天然では見られないポリマーを指す。用語「天然ポリマー」は、天然由来のポリマーを指す。スカフォールドが少なくとも1種類の合成ポリマーを含む実施形態では、好適な生体適合性の合成ポリマーには、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレンフマレート)、コポリ(エーテル−エステル)、シュウ酸ポリアルキレン、ポリアミド、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルソエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、ポリオキサエステル含有アミン基、ポリ(アンヒドリド)、ポリホスファゼン、及びこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマーを挙げることができる。本発明で用いるのに好適な合成ポリマーとしては、コラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギン酸、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、リボ核酸、デオキシリボ核酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド及びこれらの組み合わせに見られる配列に基づく生合成ポリマーを更に挙げることができる。非吸収性生体適合性ポリマー、例えば、フッ素含有ポリオレフィン(例えば、エチコン社(Ethicon, Inc.)から商品名プロノヴァ(PRONOVA)(登録商標)で入手可能な、ポリフッ化ビニリデンとフッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンの共重合体の混合物)、ポリエチレン、又はポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、及びナイロン−6、ナイロン−66、又はナイロン−12等のナイロンとしても知られるポリアミドをスカフォールドに使用することもできる。
【0020】
スカフォールドは、繊維の連結を形成するためにニードルパンチされた、平均長さが約5cm、そして平均直径が15μmの繊維から作られたフェルトの形状の織物であってもよい。スカフォールドはまた不織布であってもよく、複数の実施形態による不織布のスカフォールドは厚さ約1mmであり、かつ約75mg/ccの密度を有する。
【0021】
上述のように、スカフォールドは補強材を含んでもよい。補強材は、例えば、織物構造、編物構造、縦編み(即ち、レース状の)構造、不織布構造、及び編み上げ構造を有する、任意の吸収性又は非吸収性繊維製品を含んでもよい。複数の実施形態において、補強材はメッシュ状構造を有する。補強材の機械的特性は、材料の密度又は材質、材料の編み方又は織り方の種類、材料の厚さを変化させることにより、又は材料の中に粒子を埋め込むことにより、変化させることができる。補強材の機械的特性は、メッシュなどの補強材内に、繊維が互いに物理的に結合された部位、又は、例えば、接着剤又はポリマー等の他の薬剤と物理的に結合された部位、を作り出すことにより、変化させることができる。補強材は、単繊維、織り糸、糸、紐、又は繊維の束であることができる。これらの繊維は、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、トリメチレンカーボネート(TMC)、これらの共重合体又はブレンド等の生体吸収性材料などの、任意の生体適合性材料で製造され得る。これら繊維等の補強材は、絹及びコラーゲンベースの材料などの天然ポリマーに基づく任意の生体適合性材料からも製造され得る。複数の実施形態において、繊維は、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ(ビニルアルコール)、及びこれらの組み合わせ等の、非吸収性である任意の生体適合性繊維からも製造され得る。一実施形態において、繊維は、ラクチドとグリコリドの95:5共重合体から形成される。
【0022】
更なる実施形態では、補強材を形成する繊維は、生体吸収性ガラスで製造され得る。バイオガラス、ケイ酸塩含有リン酸カルシウムガラス、又は、吸収時間を制御するために様々な量の固体粒子が添加されたリン酸カルシウムガラスは、ガラス繊維に紡いで補強材として使用することができる材料の例である。生体吸収性ガラスに添加することができる好適な固体粒子には、鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
更なる実施形態では、自己組織、同種異系組織、及び異種組織から得ることができるような移植組織片を使用して、スカフォールドを形成することができる。非限定例として、皮膚、軟骨、骨膜、軟骨膜、滑膜、筋膜、腸間膜、及び腱等の組織を、生体適合性のスカフォールドを形成するための移植組織片として使用することができる。同種異系組織を使用するいくつかの実施形態では、一部の成体組織に伴う免疫原性を避けるために、胎児又は新生児の組織を使用することができる。
【0024】
1種類以上の生物活性剤を、スカフォールド内に組み込んでもよく、及び/若しくはスカフォールドに適用してもよく、並びに/又は生活組織に適用してもよい。生物活性剤は、スカフォールドに生存組織を加えるに先立ってスカフォールドに組み込まれるか、又はスカフォールド上にコーティングされることが好ましい。生物活性剤は、スカフォールド構造体内に存在してもよく、あるいは、生物活性剤は、本明細書に記載のコーティング、例えば吸収性癒着防止層又は膜などの、スカフォールドの表面に適用されるコーティング、又はコーティング材の構成成分であってもよい。生物活性剤は、傷害部位に存在した場合に、冒された組織の治癒及び/又は再生を促進する様々なエフェクターを含むことができる。治癒を促進する又は早める化合物又は薬剤であることに加え、エフェクターには、感染を防止する化合物又は薬剤(例えば、抗菌剤及び抗生物質)、炎症を低減する化合物又は薬剤(例えば、抗炎症剤)、並びに、免疫システムを抑制する化合物又は薬剤(例えば、免疫抑制剤)を挙げることもできる。
【0025】
本発明のデバイス内に存在し得る他の種類のエフェクターには、異種又は自己増殖因子(heterologous or autologous growth factors)、タンパク質(マトリクスタンパク質を含む)、ペプチド、抗体、酵素、血小板、多血小板血漿、糖蛋白質、ホルモン、サイトカイン、グリコサミノグリカン、核酸、鎮痛剤、ウイルス、ウイルス粒子、及び細胞型、が挙げられる。同じ又は異なる機能を有する1つ以上のエフェクターがデバイス内に組み込まれてもよいことが理解される。また、当業者によって理解されるべきその他のエフェクターを本発明のデバイスに含めることができるので、本明細書に記載のエフェクターは非限定例である。
【0026】
好適なエフェクターの例には、傷害組織又は損傷組織の治癒及び/又は再生を促進することで知られる、数多くの異種又は自己増殖因子も含まれる。これら増殖因子をスカフォールドの中に直接組み込むことができ、又は別の方法としては、スカフォールドは、例えば、血小板等の増殖因子源を含むことができる。本明細書で使用するとき、「生物活性剤」は次のうち1種類以上を含むことができる:走化性物質、治療薬(例えば、抗生物質、ステロイド系及び非ステロイド系麻酔薬及び抗炎症薬、免疫抑制剤等の拒絶反応抑制剤、及び抗癌剤)、種々のタンパク質(例えば、短期ペプチド(short term peptides)、骨形成タンパク質、糖タンパク質、及びリポタンパク質)、細胞接着メディエーター、生物活性リガンド、インテグリン結合配列、リガンド、様々な成長及び/又は分化剤及びそれらのフラグメント(例えば、上皮細胞増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(例えば、bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン由来増殖因子(例えば、IGF−1、IGF−II)及び形質転換増殖因子(例えば、TGF−βI−III)、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、骨形態形成タンパク質(例えば、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−12)、ソニック・ヘッジホッグ、増殖分化因子(例えば、GDF5、GDF6、GDF8)、組み換えヒト増殖因子(例えば、MP52)、軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP−1)、特異的増殖因子のアップレギュレーションに影響を及ぼす小分子、テネイシン−C、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、デコリン、トロンボエラスチン、トロンビン由来ペプチド、ヘパリン結合ドメイン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、DNAフラグメント、及びDNAプラスミド。好適なエフェクターには、同様に、上記薬剤の作用薬及び拮抗薬が挙げられる。増殖因子はまた、上記増殖因子の組み合わせを含むことができる。更に、増殖因子は、血液中の血小板によって供給される自己増殖因子であることができる。血小板からの増殖因子は、様々な増殖因子の混合物であってもよい。他の物質が整形外科の分野において治癒的価値を有する場合は、これら物質の少なくともいくつかは本発明において用途があると期待され、このような物質は、明示的に別段に制限された場合を除き、「生物活性剤」及び「生物活性剤」の意味に含められるべきである。
【0027】
デバイス内、例えばスカフォールド構造体内に存在することができるタンパク質には、例えば、スカフォールド構造体内の内部に格納されている血小板等の細胞又はその他の生物源から分泌されるタンパク質、並びに、デバイス内に単離型で存在するタンパク質、が挙げられる。単離型タンパク質は、典型的には、純度約55%以上のタンパク質、即ち、細胞タンパク質、分子、残屑等から単離されたタンパク質である。いくつかの実施形態において、単離されたタンパク質は、少なくとも約65%純度のものであり、最も好ましくは少なくとも約75%〜約95%純度のものである。上記にかかわらず、約55%を下回る純度を有するタンパク質もまた本発明の範囲内であると考慮されることは、当業者には理解されよう。本明細書で使用するとき、用語「タンパク質」は、糖タンパク質、リポタンパク質、プロテオグリカン、ペプチド、及びこれらの断片を包含する。エフェクターとして有用なタンパク質の例には、プレイオトロフィン、エンドセリン、テネイシン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、ビトロネクチン、V−CAM、I−CAM、N−CAM、セレクチン、カドヘリン、インテグリン、ラミニン、アクチン、ミオシン、コラーゲン、マイクロフィラメント、中間径フィラメント、抗体、エラスチン、フィブリン、及びこれらの断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
生活組織もまた、スカフォールド構造体の構成成分としてなど、本明細書に記載のデバイスに含めることができる。供給源は様々であることができ、組織は様々な形状を有することができるが、一実施形態では、組織は、組織再生の有効性を高め、かつ治癒反応を促進する微細分化された組織断片の形態である。別の実施形態では、生活組織は、組織再生及び/又は再形成の能力がある生存細胞を含有する健常組織から採取可能な、組織切片又はストリップの形態であることができる。
【0029】
デバイスは、細胞、例えばスカフォールド構造体の中に組み込まれる細胞、を更に有してもよい。本発明によるエフェクターとしてとしての機能を果たすことができる好適な細胞型には、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、線維芽細胞、幹細胞、(胚幹細胞、間充織幹細胞、及び成体組織から単離される幹細胞)、多能性細胞、軟骨細胞前駆体、軟骨細胞、内皮細胞、マクロファージ、白血球、含脂肪細胞、単球、形質細胞、マスト細胞、臍帯細胞、胎盤細胞、間質細胞、上皮細胞、筋芽細胞、腱細胞、靭帯維芽細胞(ligament fibroblasts)、神経細胞、骨髄細胞、滑膜細胞、脂肪組織由来前駆細胞、末梢血前駆細胞、遺伝子組換え細胞、軟骨細胞とその他の細胞の組み合わせ、骨細胞とその他の細胞の組み合わせ、滑膜細胞とその他の細胞の組み合わせ、骨髄細胞とその他の細胞の組み合わせ、間葉細胞とその他の細胞の組み合わせ、間質細胞とその他の細胞の組み合わせ、幹細胞とその他の細胞の組み合わせ、胚幹細胞とその他の細胞の組み合わせ、成体組織から単離された前駆細胞とその他の細胞の組み合わせ、末梢血前駆細胞とその他の細胞の組み合わせ、成体組織から単離される幹細胞とその他の細胞の組み合わせ、遺伝子組換え細胞とその他の細胞の組み合わせ、が挙げられるが、これらに限定されない。整形外科の分野において、治癒的価値を有する又は治療上の効用を有することが発見された可能性があるその他の細胞は、本明細書の範囲内にあるものとし、そのような細胞は、本デバイスの中に組み込むことができる細胞に含まれるべきである。
【0030】
スカフォールドは、目的とする少なくとも1つの遺伝子産物をコード化する核酸、ウイルス、又はウイルス粒子を、特定の細胞又は細胞型に導入する遺伝子治療技術においても使用することができる。したがって、生物学的エフェクターは、核酸(例えば、DNA、RNA、又はオリゴヌクレオチド)、ウイルス、ウイルス粒子、又は非ウイルスベクターであることができる。ウイルス及びウイルス粒子は、DNA又はRNAウイルスであってもよく、DNA又はRNAウイルス由来であってもよい。本発明の複数の実施形態では、遺伝子産物は、タンパク質、ポリペプチド、干渉リボ核酸(iRNA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0031】
適用可能な核酸及び/又はウイルス剤(即ち、ウイルス又はウイルス粒子)がスカフォールドの中に組み込まれた時点で、続いて、生物学的反応の種類を顕在化させるために、特定部位の中にデバイスを埋め込むことができる。次に、核酸又はウイルス剤は細胞に取り込まれることでき、この核酸又はウイルス剤がコード化する任意のタンパク質が、この細胞によって局所的に生成され得る。一実施形態では、核酸又はウイルス剤は、細分化組織懸濁液の組織片内の細胞に取り込まれることでき、又は、代替実施形態では、核酸又はウイルス剤は、傷害組織部位を取り囲む組織の中の細胞に取り込まれることできる。生成されるタンパク質は、上記の種類のタンパク質であることができ、又は、損傷若しくは疾患を治癒する、感染と闘う、若しくは炎症反応を軽減する組織の能力を向上させるのを容易にする同様のタンパク質であることができることを、当業者は認識されよう。組織修復過程又はその他の通常の生物学的過程に悪影響を与える可能性がある不必要な遺伝子産物の発現を阻止するために、核酸を使用することも可能である。DNA、RNA、及びウイルス剤は、多くの場合、遺伝子発現ノックアウトとしても知られるこのような発現阻止機能を達成するために使用される。
【0032】
当業者は、生物活性剤の性質が、医科学の原理及び該当の治療目的に基づいて、外科医によって決定され得ることが理解されるであろう。生物活性剤又はエフェクターを、デバイス又はデバイスのスカフォールド構造体の製造中又は製造後、あるいは、デバイスの外科的置換の前、その最中、又は後に、スカフォールド構造体等のデバイスの中に組み込むことができることも理解される。
【0033】
スカフォールドを提供し、次に、好ましくは液状のコーティング材を適用して、スカフォールドの少なくとも1つの表面上にコーティング材を塗布することによって、デバイスを作製する。次に、スカフォールドの表面上でコーティングを乾燥し、かつ硬化して、例えば図1及び図2にスカフォールドの上面6として示されるような、コーティングとインターフェースをとるスカフォールドの表面にある及び/又は該表面に近接している空隙に一部浸透した、スカフォールド表面上の膜又は層を形成する。
【0034】
下記の実施例は本発明の原理及び実践の説明のためであり、これらに限定されるものではない。本発明の範囲及び趣旨内の多くの追加の実施形態は、ひとたびこの開示の利益を得ると、当業者に明らかになるであろう。
【0035】
〔実施例〕
実施例1:メッシュ補強不織布スカフォールドの製造
メッシュ補強90/10ポリ(グリコリド−コ−ラクチド)(PGA/PLA)不織布スカフォールドを製造した。商標名ウルトラプロ(ULTRAPRO)(エチコン(Ethicon))で市販のポリプロピレン/ポリグレカプロン−25メッシュを補強構造体として使用し、90/10 PGA/PLA不織布フェルト(エチコン)は三次元繊維構造体であった。1枚の不織布フェルトをメッシュの各面上に定置し、次に、この構造体をニードルパンチして、フェルトの90/10 PGA/PLA繊維とメッシュとの連結を形成した。メッシュ補強スカフォールドは、厚さ1.03mm、密度71mg/ccであった。
【0036】
実施例2:部分的に浸透した癒着防止バリアを備えるメッシュ補強不織布スカフォールドの製造
実施例1で作製したメッシュ補強スカフォールドの片面に、EDC架橋した、又はしていない、1.5%(w/w)のCMCと、0.5%(w/w)のORCとを含む癒着防止バリアの薄いコーティング、即ち、層又はフィルムをコーティングした。コーティングされたデバイスを以下のように作製した。まず、水100Xグラムの中にCMC1.5グラムを室温で溶解して、カルボキシメチルセルロース(タイプ:7HFPH、ロット:89726、ハーキュレス社(Hercules, Inc.)、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington, DE))の1.5%(w/w)溶液を調製した。次に、酸化再生セルロース(エチコン(Ethicon))0.5グラムをCMC溶液100mLに混合した。実施例1で作製した5×6cmメッシュ補強スカフォールドを、ステンレス製ストレッチ枠に定置して、コーティング用の平面を準備した。CMC/ORC混合物3.3グラムを、スカフォールドの片面に均一に塗布した。コーティングされたスカフォールドを一晩空気乾燥し、その後、二等分に均等に切断した。コーティングされたスカフォールドの一方を架橋し、他方は架橋しなかった。癒着防止バリアを架橋するために、コーティングされたスカフォールドを、95%EtOHの中で10mg/mLのEDCで3時間インキュベートし、95%EtOHで2回洗浄し、空気乾燥した。
【0037】
実施例3:部分的に浸透した癒着防止バリアを備える生体適合性の生体吸収性メッシュ補強吸収性不織布スカフォールドの製造
生体吸収性ポリジオキサノンメッシュ補強90/10 PGA/PLA不織布スカフォールドを製造した。ポリジオキサノンメッシュを補強構造体として使用し、90/10 PGA/PLA不織布フェルトは三次元繊維構造体であった。フェルトをメッシュの両面上に定置し、次に、この構造体をニードルパンチして、フェルトの90/10 PGA/PLA繊維とメッシュとの連結を形成した。ポリジオキサノンメッシュ補強スカフォールドは、厚さ1.0mm、密度70mg/ccであった。実施例2に記載の工程に従って、ポリジオキサノンメッシュ補強スカフォールドをCMC/ORC癒着防止バリアでコーティングした。
【0038】
実施例4:部分的に浸透した癒着防止バリアを備える生体適合性の生体吸収性メッシュ補強吸収性不織布スカフォールドの製造
商標名ウルトラプロ(ULTRAPRO)(エチコン(Ethicon))として販売されているポリプロピレン/ポリグレカプロン−25メッシュで補強したポリエチレンテレフタレート不織布スカフォールドを製造した。ウルトラプロ(ULTRAPRO)メッシュを補強構造体として使用し、非吸収性ポリエチレンテレフタレート(PET)フェルトは三次元繊維構造体であった。フェルトをメッシュの両面上に定置し、次に、この構造体をニードルパンチして、フェルトのPET繊維とメッシュとの連結を形成した。ウルトラプロ(ULTRAPRO)メッシュ補強スカフォールドは、厚さ1.0mm、密度70mg/ccであった。実施例2に記載の工程に従って、ウルトラプロ(ULTRAPRO)メッシュ補強スカフォールドをCMC/ORC癒着防止バリアでコーティングした。
【0039】
実施例5:SEM評価
実施例2に従って作製したコーティングされたスカフォールドの試料を顕微鏡のスタッドの上に取り付け、EMS 550スパッターコーターを使用して金の薄層でコーティングした。JEOL JSM−5900LV SEMを使用してSEM分析を実施した。各試料に関して表面及び断面を調べた。SEMは、不織布/メッシュ複合体のCMC/ORCでコーティングされた外層を示した。
【0040】
図3は、CMC/ORCでコーティングされたウルトラプロ(ULTRAPRO)メッシュ補強バイクリル(vicryl)不織布スカフォールド(架橋していない)のSEM画像を示している。SEM画像9は、癒着防止コーティング8の一部又は全てがスカフォールド構造体の上面6の又は上面6に近接した少なくとも1つの空隙3を充填するように、スカフォールド構造体内に部分的に浸透している癒着防止コーティング8と、癒着防止コーティング8の中に部分的に入り込んでいるスカフォールドの繊維2とを示している。繊維2と、空隙3と、癒着防止コーティング8との間の相互作用が、図3のSEM画像9に示されるデバイスの断面図の一部の400x倍率である、図3のSEM画像10により詳細に示されている。SEM画像10では、癒着防止コーティング8は空隙3を充填して示されており、繊維2は癒着防止コーティングの中に入り込んでいる。図3のSEM画像11は、繊維2を有する癒着防止コーティング8を有するスカフォールドの上面を示す。
【0041】
図4は、EDC架橋CMC/ORCでコーティングされたウルトラプロ(ULTRAPRO)メッシュ補強バイクリル不織布スカフォールドのSEM画像を示している。SEM画像12は、癒着防止コーティング8の一部又は全てがスカフォールド構造体の上面6の又は上面6に近接した少なくとも1つの空隙3を充填するように、スカフォールド構造体内に部分的に浸透している癒着防止コーティング8と、癒着防止コーティング8の中に部分的に入り込んでいるスカフォールドの繊維2とを示している。繊維2と、空隙3と、癒着防止コーティング8との間の相互作用が、図4のSEM画像12に示されるデバイスの断面図の一部の750x倍率である、図4のSEM画像13により詳細に示されている。SEM画像13では、癒着防止コーティング8は空隙3を充填して示されており、繊維2は癒着防止コーティングの中に入り込んでいる。SEM画像13は、繊維2の外表面4、及び癒着防止コーティング10と外表面4の境界面を更に示している。図4のSEM画像14は、繊維2を有する癒着防止コーティング8を有するスカフォールドの上面を示す。
【0042】
実施例6:ウサギの側壁癒着モデル研究
正中開腹術を実施した。盲腸及び腸を体外に露出させ、指圧を加えて全表面上に漿膜下出血を引き起こした。損傷した腸を、点状出血が観察されるまで、10.16cm×10.16cm(4”×4”)の4層の滅菌ガーゼで軽く擦りむいた。次に、盲腸及び腸を正常な解剖学的位置に戻した。右横腹壁上で腹膜及び腹横筋の5×3cm領域を除去して欠損を形成した。その後、実施例2で作製した、試験試料である架橋CMC/ORCでコーティングされたウルトラプロ(ULTRAPRO)メッシュ補強ポリグラクチン910不織布スカフォールドを、縫合技術を用いて欠損に適用した。外科的対照には試験材料を与えなかった。標準的な方法で腹壁及び皮膚を閉じた。
【0043】
全ての対照は、擦りむいた盲腸の側壁欠損部への癒着を示した。架橋CMC/ORCでコーティングされたウルトラプロ(ULTRAPRO)メッシュ補強ポリグラクチン910不織布スカフォールドで治療された3匹の動物の全ては、擦りむいた盲腸の側壁欠損部への癒着を示さなかったことが観察された。
【0044】
実施例7:異なる濃度のCMCによるメッシュ補強不織布スカフォールのコーティング
実施例1で作製したメッシュ補強90/10 PGA/PLA不織布スカフォールドの片面に、濃度の異なる5種類のCMCを含む癒着防止バリアの薄いコーティング、即ち、層又はフィルムをコーティングした。コーティングされたデバイスを次のように作製した。CMC(タイプ:7HFPH、ロット:77146、ハーキュレス社(Hercules, Inc.)、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington, DE))の0.5、1.0、2.5、5.0、及び10mg/mL溶液を室温で調製した。各溶液を、ステンレス製ストレッチ枠で平坦に伸張されたメッシュ補強スカフォールドの片面にコーティングした。コーティングされたスカフォールドを一晩空気乾燥した。コーティングされたスカフォールドを、実施例5に記載のように走査型電子顕微鏡(SEM)で評価した。CMCは、濃度10mg/mLで十分に無傷な層を形成することが見出された。
【0045】
本発明はその詳細な実施形態に関して図示及び説明が行われたが、当業者には、当該形態及び詳細におけるさまざまな変更は、本請求発明の主旨及び範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろう。
【0046】
〔実施の態様〕
(1) デバイスにおいて、
a)1つ以上の表面を有するスカフォールドであって、前記スカフォールドが、外表面を備える複数の繊維と、前記繊維の前記外表面によって画定される1つ以上の空隙と、を含む、スカフォールドと、
b)前記スカフォールドの少なくとも1つの表面上のコーティングと、を含み、
前記コーティングが少なくとも1つの空隙を充填する、デバイス。
(2) 前記繊維が疎水性であり、前記コーティングが親水性である、実施態様1に記載のデバイス。
(3) 前記コーティングが、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、実施態様1に記載のデバイス。
(4) 前記コーティングが酸化再生セルロースを更に含む、実施態様3に記載のデバイス。
(5) 前記材料が架橋によって安定化する、実施態様3に記載のデバイス。
(6) 前記材料が、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩によって架橋される、実施態様5に記載のデバイス。
(7) 前記スカフォールドが補強材を更に備える、実施態様1に記載のデバイス。
(8) 前記補強材が、吸収性又は非吸収性繊維製品である、実施態様7に記載のデバイス。
(9) 前記補強材が、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、トリメチレンカーボネート(TMC)、これらの共重合体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される生体吸収性材料を含む、実施態様8に記載のデバイス。
(10) 前記生体吸収性材料がラクチドとグリコリドとの共重合体である、実施態様9に記載のデバイス。
【0047】
(11) 前記補強材が天然ポリマーに基づく生体適合性材料を含む、実施態様7に記載のデバイス。
(12) 前記補強材が、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ(ビニルアルコール)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非吸収性生体適合性繊維を含む、実施態様7に記載のデバイス。
(13) 前記補強材が生体吸収性ガラスを含む、実施態様7に記載のデバイス。
(14) 前記コーティングが癒着防止バリアを提供する、実施態様1に記載のデバイス。
(15) 前記コーティングが、約5μm〜約250μmの厚さを有する、実施態様1に記載のデバイス。
(16) 前記コーティングが、前記コーティングが適用される前記スカフォールドの前記表面から前記スカフォールドの前記空隙の中に約1μm〜約100μm浸透する、実施態様1に記載のデバイス。
(17) 前記スカフォールドが生体適合性ポリマーを含む、実施態様1に記載のデバイス。
(18) 前記生体適合性ポリマーが、脂肪族ポリエステル類、ポリ(アミノ酸)類、ポリ(プロピレンフマレート)、コポリ(エーテル−エステル)類、シュウ酸ポリアルキレン類、ポリアミド類、チロシン誘導ポリカーボネート類、ポリ(イミノカーボネート)類、ポリオルソエステル類、ポリオキサエステル類、ポリアミドエステル類、アミン基を含有するポリオキサエステル類、ポリ(アンヒドリド)類、ポリホスファゼン類、並びにコラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン類、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギン酸、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、リボ核酸類、デオキシリボ核酸類、ポリペプチド類、タンパク質類、多糖類、ポリヌクレオチド類、ポリオレフィン類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリアミド類、及びこれらの組み合わせに見られる配列に基づく生合成ポリマーからなる群から選択される、実施態様17に記載のデバイス。
(19) 前記スカフォールドが移植組織片を使用して形成される、実施態様1に記載のデバイス。
(20) 1つ以上の生物活性剤を更に含む、実施態様1に記載のデバイス。
【0048】
(21) 生活組織を更に含む、実施態様1に記載のデバイス。
(22) 前記スカフォールド構造体に組み込まれる細胞を含む、実施態様1に記載のデバイス。
(23) 前記細胞が、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、線維芽細胞、幹細胞、多能性細胞、軟骨細胞前駆体、軟骨細胞、内皮細胞、マクロファージ、白血球、含脂肪細胞、単球、形質細胞、マスト細胞、臍帯細胞、胎盤細胞、間質細胞、上皮細胞、筋芽細胞、腱細胞、間膜線維芽細胞、神経細胞、骨髄細胞、滑膜細胞、脂肪組織由来前駆細胞、末梢血前駆細胞、遺伝子組換え細胞、成体組織から単離される前駆細胞、及びこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、実施態様22に記載のデバイス。
(24) 遺伝子治療技術に用いられる生物学的エフェクターを更に含む、実施態様1に記載のデバイス。
(25) 前記生物学的エフェクターが、核酸、ウイルス、ウイルス粒子、及び非ウイルスベクターからなる群から選択される、実施態様24に記載のデバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスにおいて、
a)1つ以上の表面を有するスカフォールドであって、前記スカフォールドが、外表面を備える複数の繊維と、前記繊維の前記外表面によって画定される1つ以上の空隙と、を含む、スカフォールドと、
b)前記スカフォールドの少なくとも1つの表面上のコーティングと、を含み、
前記コーティングが少なくとも1つの空隙を充填する、デバイス。
【請求項2】
前記繊維が疎水性であり、前記コーティングが親水性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記コーティングが、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コーティングが酸化再生セルロースを更に含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記材料が架橋によって安定化する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記材料が、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩によって架橋される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記スカフォールドが補強材を更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記補強材が、吸収性又は非吸収性繊維製品である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記補強材が、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、トリメチレンカーボネート(TMC)、これらの共重合体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される生体吸収性材料を含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記生体吸収性材料がラクチドとグリコリドとの共重合体である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記補強材が天然ポリマーに基づく生体適合性材料を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項12】
前記補強材が、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ(ビニルアルコール)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非吸収性生体適合性繊維を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項13】
前記補強材が生体吸収性ガラスを含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項14】
前記コーティングが癒着防止バリアを提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記コーティングが、約5μm〜約250μmの厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記コーティングが、前記コーティングが適用される前記スカフォールドの前記表面から前記スカフォールドの前記空隙の中に約1μm〜約100μm浸透する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記スカフォールドが生体適合性ポリマーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記生体適合性ポリマーが、脂肪族ポリエステル類、ポリ(アミノ酸)類、ポリ(プロピレンフマレート)、コポリ(エーテル−エステル)類、シュウ酸ポリアルキレン類、ポリアミド類、チロシン誘導ポリカーボネート類、ポリ(イミノカーボネート)類、ポリオルソエステル類、ポリオキサエステル類、ポリアミドエステル類、アミン基を含有するポリオキサエステル類、ポリ(アンヒドリド)類、ポリホスファゼン類、並びにコラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン類、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギン酸、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、リボ核酸類、デオキシリボ核酸類、ポリペプチド類、タンパク質類、多糖類、ポリヌクレオチド類、ポリオレフィン類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリアミド類、及びこれらの組み合わせに見られる配列に基づく生合成ポリマーからなる群から選択される、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記スカフォールドが移植組織片を使用して形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
1つ以上の生物活性剤を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
生活組織を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記スカフォールド構造体に組み込まれる細胞を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記細胞が、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、線維芽細胞、幹細胞、多能性細胞、軟骨細胞前駆体、軟骨細胞、内皮細胞、マクロファージ、白血球、含脂肪細胞、単球、形質細胞、マスト細胞、臍帯細胞、胎盤細胞、間質細胞、上皮細胞、筋芽細胞、腱細胞、間膜線維芽細胞、神経細胞、骨髄細胞、滑膜細胞、脂肪組織由来前駆細胞、末梢血前駆細胞、遺伝子組換え細胞、成体組織から単離される前駆細胞、及びこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
遺伝子治療技術に用いられる生物学的エフェクターを更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記生物学的エフェクターが、核酸、ウイルス、ウイルス粒子、及び非ウイルスベクターからなる群から選択される、請求項24に記載のデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−507609(P2011−507609A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539599(P2010−539599)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/085451
【国際公開番号】WO2009/085548
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】