説明

コーティング組成物並びにその製造及び使用方法

組成物は、水性連続液体相と、水性連続液体相中に分散したコア−シェル粒子とを含む。各コア−シェル粒子は、ポリマーコアを含み、ポリマーコアはポリマーコア上に配置された無孔の球状シリカ粒子から本質的になるシェルにより囲まれ、無孔の球状シリカ粒子は60ナノメートル以下の体積平均粒径を有する。基材をコートするためのこの組成物の製造法及び使用法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広範に、基材をコーティングするのに有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に適用することにより、所望の特性(例えば、洗浄の容易さ、保護の維持、長期にわたる性能、及び石鹸かすの堆積の阻害など)を有する保護層効果をもたらすことのできる組成物を開発するための、数多くの努力が存在してきた。環境問題を防ぐことができ及び/又は複合的適用プロセスを含み得る材料(例えば、揮発性有機溶媒)に依存して、このような用途のために多くの組成物が開発された。それ以上に、不十分な貯蔵寿命に関する問題は、このような組成物の製品開発者の悩みの種であった。
【0003】
したがって多くの製品について、典型的には所望の性能寄与、材料の環境親和性、満足のいく貯蔵寿命、及び比較的技術の未熟なユーザーによる使用のしやすさの間で性能の相殺が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯蔵安定性で、基材(例えば、浴室備品又は窓など)をコーティングすることのできる、特に、比較的技術の未熟なユーザーにも容易に取り扱うことのできる、汚れ及び染みの堆積からの長期間に及ぶ保護をもたらす環境親和性の組成物に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様において、本開示は、
水性連続液体相、及び
水性連続液体相中に分散したコア−シェル粒子を含む組成物であって、各コア−シェル粒子がポリマーコアを含み、ポリマーコアはこのポリマーコア上に配置された無孔の球状シリカ粒子から本質的になるシェルにより囲まれ、無孔の球状シリカ粒子は60ナノメートル以下の体積平均粒径を有する、組成物を提供する。一部の実施形態では、ポリマーコアは少なくとも1つのポリマーを含み、組成物中の少なくとも1つのポリマーの合計量に対する、組成物中の無孔の球状シリカ粒子の合計量の重量比は、85:15〜95:5の範囲である。他の実施形態では、組成物は更に界面活性剤を含む。一部の実施形態では、ポリマーコアは、ポリウレタン断片を含み得るフィルム形成熱可塑性ポリマーを含む。
【0006】
一部の実施形態では、前述の組成物は5未満のpH値を有する。一部の実施形態では、前述の組成物には針状シリカ粒子を含まない。他の態様では、本開示は物品の製造方法を提供し、方法は、組成物を基材の表面に適用することと、組成物を少なくとも部分的に乾燥させることを含む。一部の実施形態では、表面はガラス、金属、ガラス繊維、又はセラミックスのうちの少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、基材は、シャワー周り、バスタブ、トイレ、シンク、栓、窓及び鏡からなる群から選択される。一部の実施形態では、基材は、塗装表面又はクリアコート表面を含む。
【0007】
更に別の態様では、本開示は、前述の方法により製造される物品を提供する。
【0008】
更に別の態様では、本開示は、
無孔の球状シリカ粒子を含む第1水分散体と、ポリマー粒子を含む第2水分散体とを組み合わせて、7を超えるpH値を有するアルカリ性分散体を提供する工程、並びに
アルカリ性分散体を徐々に酸化させて、ポリマー粒子の大部分をコア−シェル粒子に変換させることによりコア−シェル粒子分散体を提供する工程、を含む方法であって、各コア−シェル粒子がポリマーコアを含み、ポリマーコアはこのポリマーコア上に配置された無孔の球状シリカ粒子から本質的になるシェルにより囲まれ、無孔の球状シリカ粒子は、60ナノメートル以下の体積平均粒径を有する、方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、組成物とプロトン化カチオン交換樹脂とを接触させることを更に含む。
【0009】
一部の実施形態では、本コア−シェル粒子分散体は、コア−シェル粒子分散体の合計重量に基づき0.1重量パーセント未満の針状シリカ粒子を含有する。前述の方法の一部の実施形態では、コア−シェル粒子分散体は針状シリカ粒子を含まない。
【0010】
有利なことに、本開示による組成物は、硬質表面を有する共通基材に適用した場合に、ミネラル染み及び石鹸の堆積(例えばこれらは家若しくはオフィスの中又は周辺に見られ得る)からの、長期にわたって有用なレベルの保護を提供する。更に、組成物は揮発性有機溶媒をほとんどあるいは全く含まないように配合してもよく、組成物は典型的には適用しやすく、また長期間にわたる貯蔵安定性を呈し得る。
【0011】
本出願では:
用語「ポリウレタン」は、少なくとも1つのポリウレタン部分を有する、任意の高分子材料を包含する;
用語「ポリウレタン部分」は、有機基により連結された少なくとも2つのウレタン及び/又は尿素基を指す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示による代表的な物品の断面概略図。
【図2】実施例112の組成物の顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示による組成物は、水性連続液体相と、分散した有機ポリマー粒子とを含み、分散した有機ポリマー粒子は粒子上にシリカ粒子シェルを有し、シリカ粒子は60nm以下の平均粒径を有する。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「シェル」は、ポリマーコアの表面上に配置され、この表面を覆う(例えば、密集して覆う)、無孔の球状シリカ粒子の集合を指す。無孔の球状シリカ粒子は、所望により他の粒子と共有結合してもよい。
【0015】
水性連続液体相は少なくとも5重量パーセントの水を含み、例えば水性連続液体相は、少なくとも50、60、70、80又は90重量パーセント又はそれ以上の水を含み得る。好ましくは水性連続液体相は有機溶媒、特に揮発性有機溶媒を本質的に含まないが(すなわち含有していたとしても水性連続液体相の合計重量に基づいて0.1重量パーセント未満である)、有機溶媒は、所望により微量に含んでもよい。存在する場合、有機溶媒は使用される量において好ましくは水混和性であるか、少なくとも水溶性であるべきであるが、これは必須では無い。有機溶媒の例としては、アセトン及び低分子量のエーテル及び/又はアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ジエチレン又はジプロピレングリコールメチル又はエチルエーテル、エチレン又はプロピレングリコールジメチルエーテル、及びトリエチレン又はトリプロピレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、及び酢酸メチルなどが挙げられる。
【0016】
ヘイズを最小化させるために、無孔の球状シリカ粒子は、60ナノメートル(nm)以下の体積平均粒径(すなわちD50)を有する。好ましくは無孔の球状シリカ粒子は、2〜60nmの範囲、より好ましくは1〜20nmの範囲、更により好ましくは2〜10nmの範囲の体積平均粒径を有する。シリカ粒子は、60nmを超える体積平均粒径と一致する任意の粒径分布を有してもよく、例えば粒径分布は単峰性又は多峰性であってよい。
【0017】
水性媒質中の無孔の球状シリカ粒子(ゾル)が当該技術分野において周知であり、市販されており、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Co.(Wilmington,DE)から商品名LUDOXで、Nyacol Co.(Ashland,MA)からNYACOLで、又はNalco Chemical Co.(Naperville,IL)からNALCOで、水又は水性アルコール溶液中のシリカゾルとして市販されている。体積平均粒径5nm、pH 10.5、及び公称固形分15重量パーセントである1つの有用なシリカゾルは、Nalco Chemical CoからNALCO 2326として入手可能である。他の有用な市販のシリカゾルとしては、Nalco Chemical Co.からNALCO 1115及びNALCO 1130として、Remet Corp.(Utica,NY)からREMASOL SP30として、及びE.I.du Pont de Nemours and CoからLUDOX SMとして入手可能なものが挙げられる。
【0018】
非水性球状シリカゾルは球状シリカゾル分散体であり、この場合液相は有機溶媒である。通常、シリカゾルは、連続的な液相の残りの成分と液相が相溶性であるよう選択する。通常、酸性化前に希釈するとコーティングが乏しくなったりあるいは不均一になったりする場合があることから、ナトリウム安定化した無孔の球状シリカ粒子は、エタノールなどの有機溶媒により希釈する前にまず酸性化するべきである。アンモニウムで安定化させたナノ粒子では、一般に希釈及び酸性化をいずれの順序で行ってもよい。
【0019】
ポリマーコアは、任意のポリマー、典型的には、ラテックスとして調製することができるポリマー、より典型的にはアルカリ性のpHに安定なラテックスとして調製することができるポリマーを、含むことができる。代表的なポリマーとしては、アクリル系ポリマー、スチレンポリマー、エチレンビニル酢酸コポリマー、ポリ酢酸ビニル、スチレンブタジエンゴム、ポリウレタン(ウレタン−アクリル系ポリマーを含む)、ポリエステル及びポリアミドが挙げられる。好ましくは、ポリマーはフィルム形成ポリマーである。ポリマーは熱硬化性又は熱可塑性であってよい。好ましくはポリマーは、ポリウレタン又はウレタン−アクリル系ポリマー(典型的にはポリウレタンとポリアクリル系の部分を有する)の場合、ポリウレタン部分を含む。これらを製造するのに好適なポリマーラテックス及び方法は、当該技術分野において広く既知であり、数多くのラテックスが市販されている。
【0020】
市販のポリマーラテックスの例としては、DSM NeoResins,Inc.(Wilmington,MA)からNEOREZ R−960、NEOREZ R−967、NEOREZ R−9036及びNEOREZ R−9699として市販されている水性脂肪族ポリウレタンエマルション;Essential Industries,Inc.(Merton,WI)からESSENTIAL CC4520、ESSENTIAL CC4560、ESSENTIAL R4100及びESSENTIAL R4188として市販されている水性アニオン性ポリウレタン分散体;Lubrizol,Inc.(Cleveland,OH)からSANCURE 843、SANCURE 898及びSANCURE 12929として市販されているポリエステルポリウレタン分散体;Lubrizol,Inc.からTURBOSET 2025として市販されている水性脂肪族自己架橋性ポリウレタン分散体;並びにBayer Material Science,LLC(Pittsburgh,PA)からBAYHYDROL PR240として市販されている水性アニオン性で共溶媒不含の脂肪族自己架橋性ポリウレタン分散体が挙げられる。
【0021】
ポリマー混合物は、ポリマーコアに包含され得る。例えば、個々のポリマーコアは、2つ以上のポリマーを含み得る。更に、組成物は2種類のポリマーコアを含有してもよく、各コアは異なる種類のポリマー(例えばアクリル系ラテックス及びポリウレタンラテックスを混合することにより得られるものなど)を含有してもよい。通常、ポリマーラテックス中の粒子は実質的に球状である。通常、ポリマーコアは1つ以上の水不溶性のポリマーを含むが、これは必須ではない。
【0022】
有用なポリマー粒径は、ラテックス及び他の分散体又はエマルションの通常の粒径を包含する。通常、ポリマー粒径は約0.01マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲、好ましくは0.01〜0.2マイクロメートルの範囲であるが、これは必須ではない。
【0023】
通常、コア−シェル粒子は、アルカリ性のpHに安定なポリマー粒子分散体と、アルカリ性球状シリカゾルとから調製され得る。通常、このようなポリマー粒子分散体は、pH値が5以下になるような酸性化により不安定になる。したがって、酸性化させながら水性ポリマー粒子分散体に無孔のアルカリ性球状シリカゾルを添加した場合に、低pH値で安定性のコア−シェル粒子を生じることは起こり得ない。
【0024】
シェル形成の実施のために、無孔の球状シリカ粒子は典型的にはポリマーコアよりも小さくあるべきであるが、これは必須ではない。例えば、ポリマー粒子の体積平均粒径(D50)は、球状シリカ粒子の体積平均粒径(D50)の、およそ少なくとも3倍大きくてもよい。より典型的には、ポリマー粒子の体積平均粒径は、通常、球状シリカ粒子の体積平均粒径のおよそ少なくとも5倍、少なくとも10倍、又は更には少なくとも50倍大きいものであるべきである。典型的なポリマー粒径に関し、1つ以上のポリマー粒子に対する無孔の球状シリカ粒子の重量比は、30:70〜97:3、好ましくは80:20〜95:5、及びより好ましくは85:15〜95:5の範囲である。
【0025】
理論に束縛されるものではないが、ポリマー粒子(例えば、ラテックス粒子)と無孔の球状シリカ粒子との水性液体ビヒクル分散体が徐々に酸化されるとき、最終的には、無孔の球状シリカ粒子は、分散体に安定性を提供することでポリマー粒子の凝集及び沈殿を低減又は予防するシェル(通常、少なくとも球状シリカ粒子の単層)を形成するのに十分な量で、ポリマーラテックス粒子表面に堆積すると考えられている。更に塩基の添加によりpHが上昇するにつれて、無孔の球状シリカ粒子がポリマーラテックス粒子から解離し、2種類の粒子の混合物を再生すると考えられている。
【0026】
各コア−シェル粒子は、シェルで囲まれたポリマーコアを含み、ここでシェルは、ポリマーコア上に配置された無孔の球状シリカ粒子から本質的になる。したがって、シェルは他の粒状物質、特に針状シリカ粒子を実質的に含まない。
【0027】
加えて、コーティングを容易にするために、本開示によるコーティング組成物は、好ましくはpH 5未満、より好ましくはpH 4未満、更により好ましくはpH 3未満である。操作を容易にするために、コーティング組成物は、好ましくは少なくともpH 1、より好ましくは少なくともpH 2である。一部の実施形態では、例えばこれらには、pH値が約5〜約7.5に調整された酸感受性基材を含んでもよいが、この基材は、コア−シェル粒子構造を台無しにする傾向があり得る。
【0028】
組成物は、pKが5未満、好ましくは2.5未満、より好ましくは1未満の酸で所望のpHレベルにまで酸性化することができる。有用な酸としては有機及び無機酸が挙げられ、例えば、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、メトキシ酢酸、ギ酸、プロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、HSO、HPO、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HClO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、及びCHOSOHが挙げられる。好ましい酸としては、HCl、HSO及びHPOが挙げられる。有機及び無機酸の組み合わせも使用することができる。5を超えるpKを有するより弱い酸の使用では、所望の特性(透過性、洗浄可能性及び/又は耐久性など)を有する均一のコーティングが得られない恐れがある。
【0029】
本開示による組成物は、所望により少なくとも1つの界面活性剤を含んでよい。本明細書で使用するとき、用語「界面活性剤」は、同じ分子上に親水性(極性)部分と疎水性(非極性)部分とを有し、組成物の表面張力を低下させ得る分子のことを言う。有用な界面活性剤の例としては:アニオン性界面活性剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステル、ポリエトキシル化アルキル(C12)エーテルサルフェート、アンモニウム塩、及び脂肪族水素サルフェートの塩);カチオン性界面活性剤(例えば、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド及びジ−タロージメチルアンモニウムクロリド);非イオン性界面活性剤(例えば、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、及びポリオキシエチレン(18)ラウリルエーテル);並びに両性界面活性剤(例えば、N−ココ−アミノプロピオン酸)が挙げられる。3M Company(St.Paul,MN)から商品名FLUORADで入手可能なもののようなシリコーン及びフッ素系界面活性剤も使用することができる。存在する場合、典型的には界面活性剤の量は、組成物の約0.1重量パーセント未満、好ましくは組成物の約0.003〜0.05重量パーセントの量である。
【0030】
組成物はまた、所望により抗菌剤を含有してもよい。数多くの抗菌剤が市販されている。例としては、Rohm and Haas Co.(Philadelphia,PA)から入手可能なKathon CG又はLX;1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン;2−フェノキシエタノール;メチル−p−ヒドロキシベンゾアート;プロピル−p−ヒドロキシベンゾアート;アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;及びベンゾイソチアゾリノンとして入手可能なものが挙げられる。
【0031】
本開示による組成物は、任意の好適な混合技術により製造してよい。1つの有用な技術としては、アルカリ性ポリマーラテックスと適切な粒径のアルカリ性球状シリカゾルとを組み合わせ、次いでpHを最終的に所望される程度に調整することが挙げられる。
【0032】
一部の実施形態では、組成物は、非球状シリカ粒子、多孔質シリカ粒子、及び添加架橋剤(例えば、ポリアジリジン又はオルトケイ酸塩)を含む様々な不純物を含まない。したがって、本開示による組成物は、0.1重量パーセント未満又は0.01重量パーセント未満の針状シリカ粒子を含有してもよいが、必要に応じそれらは針状シリカ粒子を含まない場合もある。
【0033】
本開示による組成物は、例えば、基材をコーティングするのに有用である。図1を参照すると、物品100は基材120を含み、基材120はその上に層110を有する。層110は、本開示による組成物を基材の表面に適用し、組成物から少なくとも部分的に水性連続液体相を除去することにより形成される。
【0034】
好適な基材としては、例えば、ガラス(例えば、窓(建築物及び自動車の窓など))及び光学素子(例えばレンズ及び鏡)、セラミックス(例えば、セラミックスタイル)、セメント、石、塗装表面及び/又はクリアコート表面(例えば自動車又は貨物自動車の車体又は密閉パネル、ボート表面、オートバイの部品、けん引トラック、雪上車、水上バイク、オフロード車、及びトラクタートレーラー)、装具、感圧接着剤で裏打ちされたプラスチック製保護被膜、金属(例えば、建築用柱、衛生器具)、ガラス繊維、熱硬化性ポリマー、シート形成化合物、熱可塑性材料(例えば、ポリカーボネート、アクリル系、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール性樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリスチレン、及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。更なる例示的な基材としては、バスタブ、トイレ、シンク、栓、鏡、窓が挙げられる。
【0035】
本開示による組成物は、塗装又はクリアコート表面を有する自動車パネルをコーティングするのに特に有用であり、例としては:ポリアクリル−ポリオール−ポリイソシアネート組成物(例えば、米国特許第5,286,782号(Lambら)に記載されているようなもの)、ヒドロキシ官能性アクリル−ポリオール−ポリイソシアネート組成物(例えば、米国特許第5,354,797号(Anderson,et al.)に記載されているようなもの)、ポリイソシアネート−カーボネート−メラミン組成物(例えば、米国特許第6,544,593号(Nagataら)に記載されているようなもの)、及び固形分高含有ポリシロキサン組成物(例えば、米国特許第6,428,898号(Barsottiら)に記載されているようなもの)が挙げられる。クリアコートは、保護性及び/又は光沢を高めるために塗装層上に適用される、透明な保護コーティングである(通常、架橋コーティングは有機ポリマーを含む)。クリアコートの例としては、PPG Industries(Pittsburgh,PA)からCERAMICLEARとして入手可能であるもの、及びE.I.du Pont de Nemours and Coから入手可能なウレタンアクリレートクリアーコートであるRK8014が挙げられる。
【0036】
一部の実施形態では、本開示による組成物は、基材上にコーティングし、少なくとも部分的に乾燥させると、汚れ及びその他の汚染物質の堆積を軽減させるという傾向により、洗浄可能性の改善を提供する。「洗浄可能な」とは、本開示による組成物が、乾燥及び硬化させられると、流水又は水の噴射と接触させることにより、組成物上を覆う汚染物質が容易に押しのけられることから容易に洗浄されるコーティングを提供し、これによりコーティングから大部分の汚染物質が除去されることを意味する。水シーティング(water sheeting)効果は、路上での水しぶき、雪、雪泥汚れ、石鹸かす、並びに雨水及びすすぎ水中のミネラルによる染みを、実質的にシートからはじき及び基材表面から流れ落とし、水が乾燥した後に堆積する汚染物質の量及び局在濃度を有意に軽減させる。
【0037】
一部の実施形態では、組成物は、引っかき傷、摩耗及び溶媒などが原因となって生じる損傷から基材を保護するのを助ける、磨耗耐性層を提供する。
【0038】
組成物は、ブラシコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、拭き取りコーティング、カーテンコーティング、輪転グラビアコーティング、スプレーコーティング、又はディップコーティングなどの従来のコーティング法を用いて物品上にコーティングすることが好ましい。説明を分かりやすくかつ簡単にすると、好ましい方法は、好適な織布又は不織布の布地、スポンジ又はフォームを使用してコーティング配合物を拭き取ることである。このような適用器具は好ましくは耐酸性であり、そのままの状態で親水性又は疎水性であってよいが、好ましくは親水性である。最終的な厚みと得られる外観を制御する他の方法は、任意の好適な方法を用いてコーティングを適用し、その後溶媒の一部を蒸発させ、過剰な組成物を流水により洗い流すものであり、一方、基材はそれでも組成物によって完全に又は実質的に濡れている。
【0039】
本開示による組成物は、干渉による目に見えるコーティングの色変化を避けるために、0.5〜50マイクロメートル、より好ましくは1〜10マイクロメートルの範囲で平均濡れ厚さを変化させて、好ましくは基材に均一に適用されるが、他の厚さを用いることもできる。
【0040】
最適な平均乾燥コーティング厚さは、コーティングされた具体的な組成物によって異なるが、例えば原子間力顕微鏡及び/又は表面形状測定によって推定されるコーティングの平均厚さは、一般的に0.05〜5マイクロメートル、好ましくは0.05〜1マイクロメートルである。この範囲を上回ると、典型的には乾燥コーティング厚さの変動によって光学的干渉効果がもたらされ、乾燥したコーティングには眼に見える、暗色の基材で特に目立つ干渉縞(虹効果)が生じる。この範囲を下回ると、環境的摩耗に曝される多くの乾燥コーティングに充分な耐久性を与える上で、コーティングの厚さが不適切になり得る。
【0041】
基材表面のコーティング後、得られる物品は、通常、高温加熱、放射線又は他の硬化方法を必要とすることなく、室温又は加温温度で乾燥させる。より高い温度では乾燥プロセスの速度は大きくなるが、こうした温度は通常は実用的でも便利でもなく、基材の損傷を避けるために注意を払わなければならない。
【0042】
好ましくは、本開示による組成物は、液体の形態で保存される場合には安定である。例えば、コーティング組成物はゲル化、不透明化せず、沈殿又は凝集した粒子も形成せず、顕著に劣化することもない。
【0043】
以降の非限定的な実施例によって本開示の目的及び利点を更に例示するが、これら実施例で引用される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0044】
特に記載がない限り、実施例及びこれ以降の明細書における部、割合、比率などはいずれも重量基準である。実施例において報告される全ての接触角は、度数で記録される静的接触角である。
【0045】
以下の実施例では以下の略号を使用する。
【0046】
NPS1:固形分16.2パーセント(公称固形分15パーセント)の水性コロイド状の球状シリカ分散体、NALCO Chemical Company(Naperville,IL)からNALCO 2326として入手可能;
NPS2:固形分16.5パーセント(公称固形分15パーセント)の水性コロイド状の球状シリカ分散体、NALCO Chemical CompanyからNALCO 1115として入手可能;
NPS3:固形分50パーセントの水性コロイド状の球状シリカ分散体、NALCO Chemical CompanyからNALCO 1050として入手可能;
NPS4:固形分20パーセントの水性コロイド状の非球状シリカ分散体、Nissan Chemical America Corporation(Houston,TX)からST−UPとして入手可能;
NPS5:固形分20パーセントの水性コロイド状の非球状シリカ分散体、Nissan Chemical America CorporationからST−PS−Sとして入手可能;
NPS6:固形分20パーセントの水性コロイド状の非球状シリカ分散体、Nissan Chemical America CorporationからST−PS−Mとして入手可能;
PU1:固形分33パーセントの水性脂肪族ポリウレタンエマルション、DSM NeoResins,Inc.(Wilmington,MA)からNEOREZ R−960として入手可能;
PU2:固形分40パーセントの水性脂肪族ポリウレタンエマルション、DSM NeoResins,Inc.からNEOREZ R−967として入手可能;
PU3:固形分40パーセントの水性脂肪族ポリウレタンエマルション、DSM NeoResins,Inc.からNEOREZ R−9036として入手可能;
PU4:固形分40パーセントの水性脂肪族ポリウレタンエマルション、DSM NeoResins,Inc.からNEOREZ R−9699として入手可能;
PU5:固形分35パーセントの水性アニオン性ポリウレタン分散体、Essential Industries,Inc.(Merton,WI)からESSENTIAL CC4520として入手可能;
PU6:固形分32パーセントの水性アニオン性ポリウレタン分散体、Essential Industries,Inc.からESSENTIAL CC4560として入手可能;
PU7:固形分33パーセントの水性アニオン性脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体、Essential Industries,Inc.からESSENTIAL R4100として入手可能;
PU8:固形分38パーセントの水性アニオン性脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体、Essential Industries,Inc.からESSENTIAL R4188として入手可能;
PU9:固形分32パーセントの水性脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体、Lubrizol,Inc.(Cleveland,OH)からSANCURE 843として入手可能;
PU10:固形分32パーセントの水性脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体、Lubrizol,Inc.からSANCURE 898として入手可能;
PU11:固形分40パーセントの水性脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体、Lubrizol,Inc.からSANCURE 12929として入手可能;
PU12:固形分36パーセントの水性脂肪族自己架橋ポリウレタン分散体、Lubrizol,Inc.からTURBOSET 2025として入手可能;
PU13:固形分40パーセントの、水性アニオン性で共溶媒不含の、脂肪族自己架橋ポリウレタン分散体、Bayer Material Science,LLC(Pittsburgh,PA)からBAYHYDROL PR240として入手可能;
PU14:固形分35パーセントの水性脂肪族ポリウレタンエマルション、DSM NeoResins,Inc.からNEOREZ R−2180として入手可能;
PA1:固形分42パーセントの水性脂肪族アクリル酸エマルション、DSM NeoResins,Inc.からNEOCRYL A−633として入手可能;
PA2:固形分44パーセントの水性脂肪族アクリル酸エマルション、DSM NeoResins,Inc.からNEOCRYL A−655として入手可能;
PA3:固形分45パーセントの水性脂肪族アクリル酸エマルション、DSM NeoResins,Inc.からNEOCRYL XK−90として入手可能;
PS1:固形分10.1パーセントの水性ポリスチレンエマルション;
HCl:塩酸、特に断りの無い限り、36.5〜38.0パーセント;
OA:シュウ酸
TP1:次のコーティングを有するアルミニウム製試験パネル:CORMAX 6EP eコート、708DM730プライマー、648DN027黒色ベースコート及びDu Pont RK8014クリアコート、ACT Laboratories(Hillsdale,MI)から入手;
TP2:次のコーティングを有するアルミニウム製試験パネル:CORMAX 6EP eコート、708DM730プライマー、648DN027白色ベースコート及びDu Pont RK8014クリアコート、ACT Laboratoriesから入手;
TP3:次のコーティングを有するアルミニウム製試験パネル:PC8000 eコート、615Sプライマー、Du Pont IMRON 6000 LOOO6H白色ベースコート及びDu Pont 3440Sクリアコート、ACT Laboratoriesから入手;
TP4:次のコーティングを有するスチール製試験パネル:不特定の自動車用eコート、765224EHプライマー、270AB921黒色ベースコート及びDu Pont RK8148クリアコート、ACT Laboratoriesから入手;
TP5:ポリ(メチルメタクリレート)製試験パネル;
TP6:ポリスチレン−ガラス繊維試験パネル。
【0047】
TP7:Cardinal Glass(Eden Prairie.MN)からのフロートガラス。
【0048】
接触角の測定
EM Science(Gibbstown,NJ)からOMNISOLVとして入手可能な、精製し、濾過した水を用いて静的水接触角測定(SWCA)を実施した。接触角分析器には、型番UNISLIDE SERIES A2500(Velmex,Inc.(Holcomb,NY)により製造)の水平位置決めデバイスを取り付けたゴニオメーター顕微鏡(Gaertner Scientific Corporation(Chicago,IL)から入手)を装備した、特注の手動装置を用いた。部品番号263(L.S.Starrett(Athol,MA))のマイクロメートルのシンブル、外筒及びスピンドルを用いて、先が平坦な針を有する1立方センチメートル(cm)注射器(Henke Sass Wolf GmbH(Tuttlinger,Germany)から入手)からおよそ0.5マイクロリットル(μL)容積の水滴を分散した。グリットの細かいサンドペーパーを用いて、注射針の先端を平端にした。注射器を2本のアームを有する支持台に取り付け、ネジクランクによって下げ、調節可能なプラットフォーム上で支持台を静止させて、水滴を試験試料に付着させた。小型の光源によって半透明の紙スクリーンの背後から水滴を照射した。4つのレベルネジによって調節できる円形のブルズアイ型水準器により接触角装置の水平を監視した。蒸着のおよそ30秒後に付着水滴の接触角を測定した。記録値は、各試験パネル上の少なくとも3種の別個の水滴に実施した測定の平均値である。
【0049】
石鹸かす混合物
砕いたIVORY石鹸(The Procter and Gamble Co.(Cincinnati,OH)、1.6グラム)を第1の容器内の熱した水道水(192グラム)に加え、次いでこの混合物を60℃にて30分にわたって超音波処理した。続いて人工皮脂(1.2グラム)を加え、この混合物を更に10分にわたって超音波処理した。熱した水道水(600グラム)、CLAIROL TOTALLY TWISTED HERBAL ESSENCEシャンプー(The Procter and Gamble Co.、1.6グラム)、CLAIROL COLOR ME HAPPY HERBAL ESSENCEコンディショナー(The Procter and Gamble Co.、4.0グラム)を第2の容器に充填し、次いで15秒にわたって撹拌した。このシャンプー溶液にオレイン酸(1.6グラム)を添加し、次いで溶液を更に15秒にわたって撹拌した。次いで、両方の溶液の内容物を組み合わせ、更に2時間にわたって混合した。
【0050】
(実施例1)
NPS1(1.992グラム(g))を4.404gの脱イオン水に手動で混合した。5.125gのPU1を、32.113gの脱イオン水に、均一になるまで22℃にて手動で混合することにより、固形分4.5パーセントのポリウレタン分散体のマスターバッチを調製した。希釈したNPSと、固形分4.5パーセントのPU1の0.787gを、均一になるまで22℃にて手動で混合することにより、9:1のシリカ:ポリウレタン比を有する分散体を調製した。これにHClを2滴添加し、この混合物を撹拌した。次いで分散体を希釈して、合計固形分0.5重量パーセントになるよう脱イオン水で希釈し、pH試験紙を用いてpHを測定した。
【0051】
(実施例2〜11)
実施例1に記載のものと同様のプロセスを用い、30.013gのNPS1を、66.014gの脱イオン水に、均一になるまで22℃にて手動で混合することにより、固形分5.32パーセントのNPS1のマスターバッチを調製した。固形分5.32パーセントのNPS1マスターバッチのアリコート(各およそ6.4g)を、好適な量の固形分4.5パーセントのポリウレタン分散体PU2及びPU5〜PU13と組み合わせた。合計固形分が0.50〜1.00パーセントでかつシリカ:ポリウレタン比が9:1〜7:3になるように各NPS:PU分散体を希釈した後、表1に記載のように、これらの混合物にHCl滴を添加した。実施例1〜11の組成を表1(下記)に記載する。
【0052】
【表1】

【0053】
1インチ×2インチ(2.54×5.08センチメートル(cm))のアルミニウム製切り取り試片の試験パネルTP1、TP2及びTP3にエタノールを吹き付け、試験分散体を適用する前に拭き取り乾燥させた。コーティングプロセスにおいて、各試験分散体の1滴を試験パネル上に配置し、次いで大判で矩形のフォームパッドスワブ(種類はCRITICAL SWAB(カタログ番号89022−984(VWR Scientific(West Chester,PA))))を用いて、パネルの長軸に複数ストローク拭き下ろした。試片を平らに寝かせ、22℃にて24時間にわたって乾燥させた。次いで各試片の長軸に沿って均一に間隔を空けた、3種の別個の液滴のそれぞれについて、静的水接触角(SWCA)を測定した。次いでBYK−Gardner Abrasion Tester(BYK−Gardner Company(Columbia,MD)から入手)を用い、濡れスポンジによる2回の摩耗サイクルを試片に施した。SWCAを再度測定し、次いで試片に更に8回の摩耗サイクルを施した後、SWCAを再度測定した。結果は全ての試験試片からの平均(AVG.)として表わし、標準偏差(SD)と共に、表2(下記)に記載する。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例12〜15及び比較例A〜B:
NPS1(2.069g)を、プラスチック製のボトル中で脱イオン水4.226gに混合した。これに固形分5.0パーセントのPU1の水溶液0.655gを加え、この分散体を均一になるまで22℃にて手動で混合した。HClを1滴添加し、均一になるまで分散体を再度手動で混合した。pH試験紙を用い、pH 3を記録した。この分散体のうち0.5gを2.5081gの脱イオン水で希釈し、合計固形分濃度0.885パーセントの試験溶液を得た。次いでこの試験溶液を、糸くず不含タオル−種類はKIM−WIPE EX−L(Kimberly−Clark Corp.(Roswell,GA))を用いて、試験パネルTP3及びTP4(測定値3インチ×4インチ(7.62×10.16cm))の半分に適用した。このパネルを22℃にて乾燥させ、次いで自動車の後部下側に取り付けた。30日にわたって自動車を運転した後、光沢計MICRO TRIGLOSS型(BYK−Gardner Company(Columbia,MD.))を用い、試験パネルに対し光沢測定を実施した。結果を表3(下記)に記録する。
【0056】
【表3】

【0057】
(実施例16)
NPS1(9.998g)を、プラスチック製のボトル中で脱イオン水21.992gに混合した。これに固形分4.5パーセントのPU1の水溶液3.939グラムを加え、この分散体を均一になるまで22℃にて手動で混合した。HClを10滴添加し、均一になるまで分散体を再度手動で混合した。pH試験紙を用い、1〜1.5のpHを記録した。この分散体のうち9.997グラムを40.002グラムの脱イオン水で希釈し、合計固形分濃度0.885パーセントの試験溶液を得た。pH試験紙を用い、pH 1.5を記録した。ポリエステル/レーヨンチーズクロス(Daego Company,Ltd.(South Korea)から入手)を用い、この分散体を自動車のボンネットの運転手側に適用した。ボンネットの乗客側には、3M多目的用マイクロファイバー布を用いて、比較材料として3M PERFORMANCE FINISH(3M Company(St.Paul,MN))を適用した。33日間運転した後、噴霧ホースを用いてボンネットを水で洗い流し、拭き取りはせずに22℃にて乾燥させた。前及び後の光沢測定値を表4(下記)に記載する。
【0058】
【表4】

【0059】
(実施例17〜26)
63.389gの脱イオン水に、31.049gのNPS1を均一になるまで22℃にて手動で混合することにより、固形分5.33パーセントのNPS1分散体のマスターバッチを調製した。固形分5パーセントのポリウレタンPU2及びPU5〜PU11の分散体を、そのまま適切な量の脱イオン水で希釈することにより調製した。この希釈ポリウレタンおよそ0.65gを、固形分5.33パーセントのNPS1マスターバッチおよそ6.3gに混合し、合計固形分5.25パーセントの混合物を得た。これらのナノ粒子シリカ−ポリウレタン分散体のそれぞれにHClを1滴加え、pH試験紙を用いてpHを記録した。KIM−WIPE EX−L拭き取り用品を用いて拭き下ろすことで、各コーティング液2滴でコーティングした、1インチ×2インチ(2.54cm×5.08cm)のTP2試験パネルに対し、これらの実施例の接触角を測定した。分散体を固形分2.5パーセントに希釈し、更なる試験パネルをコーティングした。接触角を再度測定した。結果を表5(下記)に記す。
【0060】
【表5】

【0061】
(実施例27)
固形分5.33パーセントのNPS1分散体9.042gを、1.010グラムの固形分5パーセントのPU8と混合する。この混合物1滴を、試験パネルTP3の1インチ×2インチ(2.54×5.08cm)アルミニウム試片に適用し、KIM−WIPE EX−L拭き取り用品を用いて塗り広げる。液滴は玉状になり、試片は濡れなかった。次いで固形分6.65パーセントのシュウ酸溶液を用いて、この混合物をpH試験紙により測定されるものとしてpH 2.5に酸性化した。酸性化した混合物の液滴を、KIM−WIPE EX−L拭き取り用品を用いて第2のTP3試片に簡単に塗り広げた。コーティングした試片の平均静的水接触角を測定したところ、23.0度であった。
【0062】
実施例101〜109及び比較例C
固形分5パーセントのPU1、NPS1、NPS2及びNPS3水分散体を調製し、続いて混合して9:1と8:2のシリカ:ポリウレタン比を得た。次いでHCl(1.0N)を滴加してpHを調整した。装置モデルMALVERN ZETASIZER NANO ZSシリーズ(Malvern Instruments Ltd.(Worcestershire,UK))の動的光散乱(DLS)により、粒径(Z平均)及び多分散指数(PDI)を得た。材料の屈折率(n=1.47)を仮定して、石英(1cm)キュベットを用い測定を実施した。全ての試料は25℃にて水中で測定した(n=1.33)。結果を表6(下記)に記す。
【0063】
【表6】

【0064】
実施例110〜113及び比較例D
概して実施例101に記載の方法により、シリカ:ポリウレタン比9:1でNPS2及びPU1の4つの分散体を調製し、HCl(1.0N)を用いてそれぞれpH値1.5、2.5、3.0及び4.0に調整した。粒径及びPDI値を表7に記載する。図2に示される、9:1比のNPS2:PU1試料(実施例112)の透過型電子顕微鏡(TEM)が粒子のコア−シェル特性を裏付ける。
【0065】
【表7】

【0066】
(実施例114〜117)
5ミリリットル(mL)の使い切り注射器に、ガラス綿と、それに続いてイオン交換樹脂(Dow Chemical Co.からAMBERLITE IR−120 PLUS(H)として入手可能)を充填することにより、カチオン性イオン交換カラムを作製した。次いで、充填した樹脂ベッドを、2ミリリットル(mL)の脱イオン水で2回洗った。9:1、8:2、7:3及び6:4比の一連のシリカ(NPS2):ポリウレタン(PU1)分散体を、概して実施例101に記載の方法により調製した。各分散体の一部(10g)に、pHが3.0になるまでカチオン性イオン交換カラム中を繰り返し通過させた。得られるコア−シェル粒径及びPDI値を、表8(下記)に記載する。
【0067】
【表8】

【0068】
実施例118〜121及び比較例E〜F
固形分濃度5パーセントの、NPS1又はNSP2とPU1とのシリカ:ポリウレタン(9:1)分散体を、実施例102に記載の方法に従って調製した。次いでHCl(1.0N)によりpHを2.0に調整した。KIM−WIPE EX−L拭取り用品を用いてこの分散体を試験パネルTP5及びTP6に適用し、22℃にて2時間にわたって乾燥させた。次いで試験片を石鹸かす混合物に浸し、取り出し、22℃にて15分にわたって乾燥させた。各パネルに対してこの浸しプロセスを更に3回繰り返した後、パネルを600mLの脱イオン水で洗い流した。
【0069】
この試料に、次いで低圧の水流での600mL/分の速度でのすすぎサイクルを3回実施した。各サイクル後に、試料を圧縮空気流で乾燥させた。次いで試料表面を視覚的に評価し、すすぎ後にも任意の石鹸かすが残留したままになっているかどうかを評価した。各コーティングの洗浄性能に対し、以下に定義するように1〜5段階で視覚的に採点した。
【0070】
【表9】

【0071】
結果を表9(以下)に報告する。
【0072】
【表10】

【0073】
実施例122〜126及び比較例G
PU1とNPS2とを、それぞれ表10に記載の比で混合することにより、実施例122〜126(10g試料)を調製した。イオン交換(IEX)又は酸添加により、表10に記載のpH値へと混合物を酸性化した。
【0074】
IEX手順のため(酸性化方法A)、使い切り注射器(5mL)に、ガラス綿と、続いて1〜2cmのAMBERLITE IR−120 PLUS(H)イオン交換樹脂を充填した。充填したビーズベッドを脱イオン水(2×2mL部分)で洗い、その後で所望のpH値が得られるまで、コーティング分散体の10グラム試料に樹脂ビーズを通過させた(複数回通過させる必要がある場合もある)。pH試験紙を用い、各通過プロセス後にpHをモニターした。
【0075】
別の方法としては、電磁撹拌器(酸性化方法B)を用いて撹拌プレート上で混合しながら、HPO(1.0M)により、記載のpHに到達するまでコーティング分散体を酸性化した。
【0076】
フロートガラス製パネル(3インチ×6インチ(7.6cm×15.2cm))を、KIM−WIPE EX−L紙製拭取り用品を用いて実施例の溶液でコーティングすることで、石鹸かす試験用の試験試料を調製した。コーティング前に、製造者の指示により水に溶解させた洗浄溶液(Alconox,Inc.(White Plains,NY)からのALCONOX POWDERED PRECISION CLEANER)により、ガラスパネルを洗浄した。試験の実施前に、試料は2時間超にわたって空気乾燥させた。調製した石鹸かす混合物を、スプレーボトルを用い各試料に3回適用した。試料を15分にわたって空気乾燥させた後、更に3回スプレーを適用した。このプロセスを合計で3回繰り返して適用した後、試料を脱イオン水(600mL/分)で洗い流し、乾燥させて1サイクルを完了した。実施例121のように洗浄性能評定を評価した。以下の表10に記載する。
【0077】
方法A=混合物をIEX樹脂により酸性化し、5日間にわたって25℃に保持した。
【0078】
方法B=混合物をHPO(1.0M)により酸性化し、直ちに使用した。
【0079】
方法C=混合物をIEX樹脂により酸性化し、12日間にわたって48℃に保持した。
【0080】
【表11】

【0081】
実施例127〜130及び比較例H〜J
洗浄性能の経時変化の効果を評価するために、表11の試料溶液130〜133(10g)を調製し、表10(上記)に記載したのと同様の手法に表11(下記)で、ただし、記載の時間にわたる経時変化を施して、試験した。
【0082】
方法A=混合物をIEX樹脂により酸性化し、5日間にわたって25℃に保持した。
【0083】
方法B=混合物をHPO(1.0M)により酸性化し、直ちに使用した。
【0084】
方法C=混合物をIEX樹脂により酸性化し、12日間にわたって48℃に保持した。
【0085】
【表12】

【0086】
実施例134〜159及び比較例H〜J
概して実施例118の方法により、下記の表12〜16に記載のように組成物を調製し、試験した。表12〜15では、濾過システム(Millipore Corporation(Billerica,MA)から入手)を通して濾過した脱イオン水をそのまま用い、AST Products(Billerica,MA)から製品番号VCA−2500XEとして入手可能なビデオ接触角分析計により、乾燥コーティングされた試料上で静的水接触角の測定を行った。報告される値は、液滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴の測定値の平均である。静的測定のための液滴容量は1マイクロリットルであった。表12〜15(下記)では、0.1NのHClを用いてpHを調整した。
【0087】
【表13】

【0088】
【表14】

【0089】
【表15】

【0090】
【表16】

【0091】
【表17】

【0092】
(実施例160〜169)
使い切り注射器(5mL)にガラス綿を充填し、続いてイオン交換樹脂を充填した。充填したビーズベッドを脱イオン水(2×2mL)で洗い、記載されたpHになるまで、10gの組成物溶液に樹脂ベッドを通過させた(表17ではIEXと記載)。別の方法としては、個々の成分を組み合わせ、撹拌プレート上で電磁撹拌器により混合しながら、HCl(1.0N)で酸性化することにより、組成物を調製した(表17ではHClと記載)。室温で保管している間、安定性又はゲル化について試料を定期的にモニターした。表17(下記)において、Sは容易に流動可能であることを意味し、Gはゲル化を意味し、Tは粘性が高いことを意味する。
【0093】
【表18】

【0094】
本明細書に引用した全ての特許及び刊行物は、その全文を参照することにより本明細書に組み込むこととする。当業者は、本開示の様々な修正及び変更を、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく行うことができ、また、本開示は、上記で説明した例示的な実施形態に過度に限定して理解すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性連続液体相、及び
前記水性連続液体相中に分散したコア−シェル粒子を含む組成物であって、各コア−シェル粒子がポリマーコアを含み、前記ポリマーコアは該ポリマーコア上に配置された無孔の球状シリカ粒子から本質的になるシェルにより囲まれ、前記無孔の球状シリカ粒子は60ナノメートル以下の体積平均粒径を有する、組成物。
【請求項2】
前記ポリマーコアが少なくとも1つのポリマーを含み、前記組成物中の前記少なくとも1つのポリマーの合計量に対する、前記組成物中の前記無孔の球状シリカ粒子の合計量の重量比が85:15〜95:5の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物のpH値が5未満である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーコアがフィルム形成熱可塑性ポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記フィルム形成熱可塑性ポリマーがポリウレタン部分を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が更に界面活性剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が針状シリカ粒子を含まない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物を基材表面に適用することを含む、物品の製造方法。
【請求項9】
前記表面がガラス、金属、ガラス繊維又はセラミックスのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基材がシャワー周り、バスタブ、トイレ、シンク、栓、窓及び鏡からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記基材が塗装表面又はクリアコート表面を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法により製造される物品。
【請求項13】
無孔の球状シリカ粒子を含む第1水分散体と、ポリマー粒子を含む第2水分散体とを組み合わせて、7を超えるpH値を有するアルカリ性分散体を提供する工程、並びに
前記アルカリ性分散体を徐々に酸化させて、前記ポリマー粒子の大部分をコア−シェル粒子に変換させることによりコア−シェル粒子分散体を提供する工程、を含む方法であって、各コア−シェル粒子がポリマーコアを含み、前記ポリマーコアは該ポリマーコア上に配置された無孔の球状シリカ粒子から本質的になるシェルにより囲まれ、前記無孔の球状シリカ粒子は60ナノメートル以下の体積平均粒径を有する、方法。
【請求項14】
前記コア−シェル粒子分散体が、前記コア−シェル粒子分散体の合計重量に基づき0.1重量パーセント未満の針状シリカ粒子を含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コア−シェル粒子分散体が針状シリカ粒子を含まない、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
組成物とプロトン化カチオン交換樹脂を接触させることを更に含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522110(P2012−522110A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503475(P2012−503475)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/027452
【国際公開番号】WO2010/114700
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】