説明

コーティング組成物用硬化剤(II)

【課題】エポキシ樹脂との反応で使用する際、比較的長いポットライフを特徴とするコーティング組成物又は被覆剤を形成する、水性エポキシ樹脂系用硬化剤を提供する。
【解決手段】エポキシ化ポリアルキレンオキシド、エポキシ化芳香族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の混合物を反応させて第一中間生成物を得、第一中間生成物とポリアミンを反応させて第二中間生成物を得、第二中間生成物と化合物(F)を反応させて得られる水性エポキシ樹脂系用硬化剤。ただし、化合物(F)は式(I):


[式中、R1 及び R2 は、相互に独立して、水素、飽和の直鎖又は分枝アルキル基、或いは C6H5、OH、OR3 基を表し、R3 は、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝アルキル基である。]に相当するカルボニル含有化合物からなる群から選ばれ、第二中間生成物中に存在する一級アミノ基の少なくとも 1 %、多くとも 99 %が反応しなくてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮傾向が比較的小さいコーティング組成物に関する。このようなコーティング組成物は、エポキシ樹脂と本発明の特殊な硬化剤との反応によって得られる。本発明の硬化剤は、エポキシ化ポリアルキレンオキシド、エポキシ化芳香族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の混合物を反応させて第一中間生成物を得、続いて、この第一中間生成物とポリアミンを反応させて第二中間生成物を得、最後に、第二中間生成物と特定の構造を有するカルボニル含有化合物を反応させることによって得られる。
【背景技術】
【0002】
米国特許第 4,608,405 号明細書は、エポキシ樹脂用硬化剤を記載している。これらの硬化剤は、以下のように製造される:二塩基性フェノールのジグリシジルエーテル、脂肪族ジヒドロキシポリエーテルのジグリシジルエーテル及び二塩基性フェノールの反応によって得られた第一中間化合物であるジエポキシ化合物(a)と、一級アミノ基含有ポリアミン(b)を反応させて、第二中間化合物を得る。ただし、ジエポキシ化合物(a)中に存在する事実上全てのエポキシ基は、ポリアミン(b)と実質上定量的に反応する。次いで、得られた第二中間化合物を、モノエポキシド又はモノカルボン酸からなる群から選ばれた化合物(c)と反応させる。ただし、ポリアミン(b)の一級アミノ基の少なくとも全てが、化合物(c)と反応し、第三中間化合物を形成する。最後に、第三中間化合物は、ギ酸、酢酸又はプロピオン酸のような揮発性酸の添加によってイオン化合物に転化される。米国特許第 4,608,405 号明細書の開示によれば、このイオン化合物は、水性エポキシ樹脂系用硬化剤である。
【0003】
国際公開第 93/21250 号パンフレットは、遊離アミノ基を含むエポキシ樹脂硬化剤の水性エマルションの製造方法を記載している。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂とアミノ官能性化合物の付加生成物である。
【0004】
欧州特許出願公開第 253,405 号明細書は、カチオン性エポキシ樹脂含有組成物を記載している。これらの組成物は、ポリオールのジグリシジルエーテル及び二塩基性フェノールのジグリシジルエーテルを含む成分(a)と、二塩基性フェノール(b)、及び任意にキャッピング剤(c)を反応させて、末端オキシラン環含有エポキシ樹脂を形成することによって製造される。次いで、これらの末端オキシラン環は、求核試薬との反応、及びその過程での有機酸及び水の添加によって、カチオン基に転化される。
【0005】
欧州特許出願公開第 1,518,875 号明細書は、エポキシ化ポリエチレンオキシド、エポキシ化ポリプロピレンオキシド及びポリエチレンプロピレンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のエポキシ化ポリアルキレンオキシド(a)、ビスフェノール A エポキシド及びビスフェノール F エポキシドからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のエポキシ化芳香族ヒドロキシ化合物(b)、及びビスフェノール A 及びビスフェノール F からなる群から選ばれる少なくとも 1 種の芳香族ヒドロキシ化合物(c)の混合物を反応させて中間生成物を得、次いで、この中間生成物とポリアミン(E)とを反応させることによって得られる、水性エポキシ樹脂系用硬化剤を記載している。
【特許文献1】米国特許第 4,608,405 号明細書
【特許文献2】国際公開第 93/21250 号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第 253,405 号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第 1,518,875 号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、エポキシ樹脂との反応で使用する際、比較的長いポットライフを特徴とするコーティング組成物又は被覆剤を形成する、水性エポキシ樹脂系用硬化剤を提供することである。
【0007】
ポットライフの終点は、混合物粘度の著しい上昇によって表される。また、硬化剤は、水中で自己乳化し、水又は水含有系中で、添加された液状エポキシ樹脂を乳化することができる。
【0008】
本発明が解決しようとする別の課題は、エポキシ樹脂との反応で使用する際、特に収縮する傾向が低いことを特徴とするコーティング組成物又は被覆剤を形成する、水性エポキシ樹脂系用硬化剤を提供することである。本発明が解決しようとするもう 1 つの課題は、短い乾燥時間後に確かな硬度を発現する、水性エポキシ樹脂系用硬化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
エポキシ樹脂と特殊な硬化剤の反応によって得られるコーティング組成物が、あらゆる点で見事にこれらの要求を満たすことが、意外にも見出された。この硬化剤は、エポキシ化ポリアルキレンオキシド、エポキシ化芳香族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の混合物を反応させて第一中間生成物を得、次いで、この第一中間生成物とポリアミンを反応させて第二中間生成物を得、最後に、第二中間生成物とカルボニル含有化合物を反応させることによって得られる。
【0010】
第一の態様では、本発明は、
(A)エポキシ化ポリエチレンオキシド、エポキシ化ポリプロピレンオキシド及びポリエチレンプロピレンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のエポキシ化ポリアルキレンオキシド、
(B)ビスフェノール A エポキシド及びビスフェノール F エポキシドからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のエポキシ化芳香族ヒドロキシ化合物、及び
(C)ビスフェノール A 及びビスフェノール F からなる群から選ばれる少なくとも 1 種の芳香族ヒドロキシ化合物
の混合物を反応させて第一中間生成物(Z1)を得、続いて、この第一中間生成物(Z1)とポリアミン(E)を反応させて第二中間生成物(Z2)を得、最後に、第二中間生成物(Z2)と少なくとも 1 種の化合物(F)を反応させることによって得られる水性エポキシ樹脂系用硬化剤であって、化合物(F)が一般式(I):
【化1】

[式中、置換基 R1 及び R2 は、相互に独立して、水素、飽和の直鎖又は分枝 C1〜22 アルキル基、或いは C6H5、OH、OR3 基を表し、R3 は、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜22 アルキル基である。]
に相当するカルボニル含有化合物からなる群から選ばれ、第二中間生成物(Z2)中に存在する一級アミノ基の少なくとも 1 %、多くとも 99 %が反応しなくてもよい水性エポキシ樹脂系用硬化剤に関する。
【0011】
本発明の硬化剤の極めて優れた特性を考慮して、本発明の硬化剤を使用して得られたクリヤラッカーのポットライフが優れていることが特に指摘される。本出願の実施例の表 1 の硬化剤に基づくクリヤラッカー組成物を用いて、このクリヤラッカーは 60 分後でもまだ容易に塗布でき、無色透明のラッカーが得られる。ポットライフの終点は、混合物粘度の著しい上昇を特徴とし、初期濃度の 3 倍超に粘度が上昇する事実によって明らかに表される。
【0012】
本発明はまた、クリヤラッカー、コーティング組成物などを製造するための本発明の硬化剤の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
化合物(A)
本発明において、エポキシ化ポリエチレンオキシドは、ポリエチレンオキシドの 2 個の末端 OH 基を、例えばエピクロロヒドリンとの反応により、オキシラン基に転化することによって得られる化合物であると理解される。使用されるポリエチレンオキシドは、80〜3,000 の平均分子量を有し得、当業者に既知であるように、エチレンオキシドの C2〜18 アルキレンジオールによる重合開始によって製造され得る。
【0014】
本発明において、エポキシ化ポリプロピレンオキシドは、ポリプロピレンオキシドの 2 個の末端 OH 基を、例えばエピクロロヒドリンとの反応により、オキシラン基に転化することによって得られる化合物であると理解される。使用されるポリプロピレンオキシドは、110〜3,000 の平均分子量を有し得、当業者に既知であるように、プロピレンオキシドの C2〜18 アルキレンジオールによる重合開始によって製造され得る。
【0015】
本発明において、ポリエチレンプロピレンオキシドは、ポリエチレンプロピレンオキシドの 2 個の末端 OH 基を、例えばエピクロロヒドリンとの反応により、オキシラン基に転化することによって得られる化合物であると理解される。使用されるポリエチレンプロピレンオキシドは、80〜3,000 の平均分子量を有し得る。ポリエチレンプロピレンオキシドは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合によって得られる化合物であり、2 反応体の共重合は、当業者に既知であるように、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドの C2〜18 アルキレンジオールによる共重合開始によって同時に又はブロック的に行われる。
化合物(A)は、単独で又は互いの混合物として使用してよい。
【0016】
化合物(B)
本発明において、ビスフェノール A エポキシドは、常に、ビスフェノール A とエピクロロヒドリンとの反応によって得られる化合物、及び/又はそれをビスフェノール A との更なる反応により重合することによって得られる化合物であると理解される。従って、これらの化合物は、ビスフェノール A ジグリシジルエーテル又は一般にエポキシ樹脂としても知られる。市販品は、Epikote 828、1001、1002、1003、1004(Shell 製)である。
使用されるビスフェノール A エポキシドの分子量は、好ましくは、300〜3,000 の範囲である。
【0017】
本発明において、ビスフェノール F エポキシドは、常に、ビスフェノール F とエピクロロヒドリンとの反応によって得られる化合物、及び/又はそれをビスフェノール F との更なる反応により重合することによって得られる化合物であると理解される。従って、これらの化合物は、ビスフェノール F ジグリシジルエーテル又は一般にビスフェノール F エポキシ樹脂としても知られる。
使用されるビスフェノール F エポキシドの分子量は、好ましくは、270〜3,000 の範囲である。
化合物(B)は、単独で又は互いの混合物として使用してよい。
【0018】
化合物(C)
ビスフェノール A は当業者に既知であり、以下の式によって特徴付けられる。
【化2】

ビスフェノール F も当業者に既知である。
化合物(C)は、単独で又は互いの混合物として使用してよい。
【0019】
化合物(D)
1 つの態様において、化合物(D)は、化合物(A)、(B)及び(C)に加えて、後にポリアミン(E)と反応させて中間生成物(Z2)を形成する中間生成物(Z1)の調製に使用される。化合物(D)は、トリオールのトリグリシジルエーテル及びジオールのジグリシジルエーテルからなる群から選ばれる化合物である。以下に、化合物(D)の基礎になる適当なジオール及びトリオールの例を挙げる:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、グリセロール及びトリメチロールプロパン。
化合物(D)は、単独で又は互いの混合物として使用してよい。
【0020】
明確にするために、本発明はまた、水性エポキシ樹脂系用硬化剤に関することを指摘しておく。これらの硬化剤は、
(A)エポキシ化ポリエチレンオキシド、エポキシ化ポリプロピレンオキシド及びポリエチレンプロピレンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のエポキシ化ポリアルキレンオキシド、
(B)ビスフェノール A エポキシド及びビスフェノール F エポキシドからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のエポキシ化芳香族ヒドロキシ化合物、
(C)ビスフェノール A 及びビスフェノール F からなる群から選ばれる少なくとも 1 種の芳香族ヒドロキシ化合物、及び
(D)トリオールのトリグリシジルエーテル及びジオールのジグリシジルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも 1 種の化合物
の混合物を反応させて第一中間生成物(Z1)を得、続いて、この第一中間生成物(Z1)とポリアミン(E)を反応させて第二中間生成物(Z2)を得、最後に、第二中間生成物(Z2)と少なくとも 1 種の化合物(F)を反応させることによって得られる。ただし、化合物(F)はカルボニル含有化合物からなる群から選ばれ、第二中間生成物(Z2)中に存在する一級アミノ基の少なくとも 1 %、多くとも 99 %は反応しなくてもよい。
【0021】
化合物(E)
本発明において使用されるポリアミン(E)は、1 分子あたり少なくとも 2 個の一級アミノ基を含むアミンである。更なる他のアミノ基が、任意に存在してもよい。脂肪族、芳香族、脂肪族-芳香族、脂環式及び複素環式のジアミン及びポリアミンを、化合物(E)として使用してよい。
【0022】
下記は、適当な化合物(E)の例である:ポリエチレンアミン類(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなど)、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、3,3,5-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、3,5,5-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、ビス-(3-アミノプロピル)-アミン、N,N'-ビス-(3-アミノプロピル)-1,2-エタンジアミン、N-(3-アミノプロピル)-1,2-エタンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ポリ(アルキレンオキシド)ジアミン及びトリアミン類(例えば、Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine D-2000、Jeffamine D-4000、Jeffamine T-403、Jeffamine EDR-148、Jeffamine EDR-192、Jeffamine C-346、Jeffamine ED-600、Jeffamine ED-900、Jeffamine ED-2001)、メタ-キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、トルエンジアミン、イソホロンジアミン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス-(アミノメチル)-シクロヘキサン、メチレン架橋によって結合されたポリ(シクロヘキシル芳香族)アミン類の混合物(MBPCAA としても知られる)、及びポリアミノアミド類。ポリエチレンアミン類、特にジエチレントリアミンがとりわけ好ましい。
化合物(E)は、単独で又は互いの混合物として使用してよい。
【0023】
1 つの態様において、化合物(E)は、アミン(E*)と組み合わせて使用してよい。アミン(E*)は、アミン(E)の定義に分類されないアミンである。このようなアミン(E*)の例は、1 分子あたり 1 個だけの一級アミノ基を有するアミンであり、以下に例を挙げる:シクロヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、アニリン、Jeffamine M 2070、Jeffamine M 600、エタノールアミン。
【0024】
アミン(E)及びアミン(E*)の混合物を使用する場合、このような混合物中のアミン(E)の割合は、少なくとも 10 重量%、好ましくは少なくとも 40 重量%、より好ましくは少なくとも 60 重量%である。
1 つの好ましい態様では、化合物(E*)を含まない 1 種以上の化合物(E)を使用する。
【0025】
化合物(F)
本発明において、カルボニル含有化合物(F)は、一般式(I):
【化3】

[式中、置換基 R1 及び R2 は、相互に独立して、水素、飽和の直鎖又は分枝 C1〜22 アルキル基、或いは C6H5、OH、OR3 基を表し、R3 は、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜22 アルキル基である。]
に相当する化合物から選ばれる。
【0026】
1 つの態様では、式(I)の化合物は、置換基 R1 及び R2 が各々飽和 C1〜22 アルキル基を表し、それらがカルボニル炭素原子と共に環を形成するように、互いに結合してよい(即ち環状になってよい)という更なる条件に従う。この場合、カルボニル基に対するα位に存在する CH2 基の 1 個が、置換基 -O- に置き換わっており、これは、化学的に、化合物(I)が、ラクトン、例えば、γ-ブチロラクトン又はε-カプロラクトンであることを意味する。
【0027】
別の態様では、式(I)の化合物は、置換基 R1 及び R2 が各々飽和 C1〜22 アルキル基を表し、それらが、カルボニル炭素原子に対するα位に置換基としてアミノ基又は OH 基を有してよいという更なる条件に従う。このような化合物(I)の例は、α-ヒドロキシカルボン酸又はα-アミノカルボン酸である。
【0028】
もう 1 つの態様では、式(I)の化合物は、置換基 R1 及び R2 が一緒になって酸素を表してよいという更なる条件に従う。この場合、化合物(I)は二酸化炭素である。
【0029】
適当な化合物(F)の例は、カルボン酸及びその無水物、カルボン酸エステル、アセトン、ホルムアルデヒド、ケトン、カーボネート、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、二酸化炭素である。
【0030】
中間生成物(Z1)の調製
1 つの態様では、中間生成物(Z1)の調製において、化合物(A)及び(B)は、0.1:1〜5:1 のモル比で使用される。
別の態様では、中間生成物(Z1)の調製において、化合物(A)及び(B)(これらの化合物は、各々、1 分子あたり 2 個のオキシラン基を含む)の合計の、化合物(C)(この化合物は、1 分子あたり 2 個の OH 基を含む)に対するモル比は、1.1:1〜10:1 に調整される。即ち、化合物(A)及び(B)の合計のオキシラン環の、化合物(C)の反応性水素原子に対する当量比は、1.1:1〜10:1 の値に調整される。
【0031】
別の態様では、即ち、少なくとも 1 種の化合物(D)も中間生成物(Z2)の調製において使用する場合、中間生成物(Z1)の調製において、化合物(A)、(B)及び(D)(これらの化合物は、各々、1 分子あたり 2 個のオキシラン基を含む)の合計の、化合物(C)(この化合物は、1 分子あたり 2 個の OH 基を含む)に対するモル比は、1.1:1.0〜10.0:1.0 に調整される。即ち、化合物(A)、(B)及び(D)の合計のオキシラン環の、化合物(C)の反応性水素原子に対する当量比は、1.1:1.0〜10.0:1.0 の値に調整される。
【0032】
明確にするために、以下の説明を提示する:用語「当量比」は、当業者によく知られている。当量の概念の背景にある基本概念は、反応に関係する各物質について、目的とする反応に関与する反応性基が考慮されることである。当量比を示すことによって、使用される化合物(x)及び(y)の種々の反応性基全てが互いに必要とする比を表現できる。これに関連して、反応性基が最も小さい反応性基であると理解されることを考慮するのは重要である。即ち、反応性基の概念は、官能基の概念と同じではない。H-酸化合物の場合、これは、例えば、OH 基又は NH 基はこのような反応性基を表すが、同じ窒素原子に配置した 2 個の反応性水素原子を有する NH2 基はこのような反応性基を表さないことを意味する。この場合、官能基 NH2 は 2 個の反応性基、即ち水素原子を含むので、官能基 NH2 内の 2 個の水素原子を反応性基として見なすのが適切である。
【0033】
1 つの態様において、中間生成物(Z1)の調製は、触媒、より好ましくはトリフェニルホスフィン又はヨウ化エチルトリフェニルホスホニウムの存在下で行われる。触媒は、化合物(A)、(B)及び(C)の合計量に基づいて、約 0.01〜1.0 重量%の量で使用される。中間生成物のエポキシ分(%EpO)は、好ましくは 10 %EpO 以下、より好ましくは 5 %EpO 未満である。エポキシ分の定義及びその分析測定に関する情報は、本出願の実施例に見出すことができる。
【0034】
中間生成物(Z2)の調製
既に記載したとおり、中間生成物(Z2)は、中間生成物(Z1)とポリアミン(E)との反応によって調製される。
1 つの態様において、中間生成物(Z1)及びポリアミン(E)は、(E)のアミノ窒素原子上の反応性水素原子の、中間生成物(Z1)のオキシラン基に対する当量比が、4:1〜100:1 の範囲であり、同時にオキシラン基の一級アミンに対する比が、少なくとも 1:1.01 であるような量で使用される。
【0035】
中間生成物(Z1)とポリアミンの反応は、ポリアミン、好ましくはジエチレントリアミン 1 分子が、基本的に、中間生成物(Z1)のエポキシ基の 1 つと反応することが確実となるように、ポリアミンを過剰に初めに導入することによって好ましくは行われる。過剰なアミンは、可能な限り低い遊離アミン含有量を維持するために留去され得る。
【0036】
本発明の硬化剤の製造
本発明の硬化剤を製造するために、中間生成物(Z2)を少なくとも 1 種の化合物(F)と反応させる。ただし、中間生成物(Z2)中に存在する一級アミノ基の少なくとも 1 %、多くとも 99 %が反応しなくてもよい。
好ましい態様では、中間生成物(Z2)中に存在する一級アミノ基の少なくとも 25 %、多くとも 75 %が反応しなくてもよい。
特に好ましい態様では、中間生成物(Z2)中に存在する一級アミノ基の少なくとも 40 %、多くとも 60 %が反応しなくてもよい。
【0037】
コーティング組成物の製造
本発明はまた、本発明に従った上記の硬化剤とエポキシ化合物(G)とを、水性媒体中で撹拌しながら混合して反応させることによって得られる、クリヤラッカー、コーティング組成物などの製造方法に関する。
【0038】
エポキシ化合物(G)は、1 分子あたり平均で少なくとも 2 個の末端エポキシ基又はエポキシ側基を含むポリエポキシドである。これらのエポキシ化合物は、飽和及び不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族及び複素環式化合物であってよく、ヒドロキシル基を含んでもよい。それらは、混合及び反応条件下で面倒な副反応を生じない置換基、例えばアルキル又はアリール置換基、エーテル基などを含んでもよい。これらのエポキシ化合物は、好ましくは、多価、好適には二価の、アルコール、フェノール、これらフェノールの水素化生成物及び/又はノボラック(一価又は多価フェノールと、アルデヒド、より好ましくはホルムアルデヒドとの、酸触媒存在下での反応生成物)に基づくポリグリシジルエーテルである。これらのエポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは、160〜3,200、より好ましくは 170〜830 である。ある物質のエポキシ当量は、1 モルのオキシラン環を含む物質の量(g)である。
【0039】
好ましい多価フェノールは、以下の化合物である:レゾルシノール、ヒドロキノン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノール A)、ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノール F)の異性体混合物、テトラブロモビスフェノール A、4,4'-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4'-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルジフェニルプロパン、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノール、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エーテル、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-スルホンなど、及び上記化合物の塩素化及び臭素化生成物。ビスフェノール A が最も好ましい。
【0040】
多価アルコールのポリグリシジルエーテルも、適当な化合物(G)である。このような多価アルコールの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール類(n = 1〜20)、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、グリセロール及びビス-(4-ヒドロキシシクロへキシル)-2,2-プロパンである。
【0041】
他の適当な化合物(G)は、エピクロロヒドリン又は類似エポキシ化合物と、脂肪族、脂環式又は芳香族ポリカルボン酸、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び二量化リノレン酸との反応によって得られた、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルである。例は、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル及びヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルである。
種々のエポキシ化合物(G)の混合物も使用してよい。
【0042】
加えて、当業者に既知の添加剤及び/又は加工助剤を、コーティング組成物の製造に使用してもよい。上記のように、本発明の硬化剤は、エポキシ化合物(G)と水性媒体中で反応する。添加剤及び加工助剤の例は、顔料、セメント、砂利、脱気剤、消泡剤、分散助剤、沈澱防止剤、促進剤、遊離アミン、流れ制御剤、導電性改良剤を含む。
【0043】
コーティング組成物の層厚さに関する限り、本発明の硬化剤を、0.01〜10 mm、好ましくは 0.05〜3 mm の層厚さのためのコーティング組成物に使用してよい。
【0044】
また、本発明の硬化剤の使用により実現された、硬化組成物の非常に低い収縮傾向は、顔料含有率を高く調整することによって更に低くすることができる。
【0045】
本発明は更に、本発明に従った上記硬化剤とエポキシ化合物(G)との水性媒体中での反応、及び生じた生成物の硬化によって得られる硬化組成物にも関する。
【0046】
1 つの態様では、硬化組成物はフロアコーティング剤である。好ましい態様では、これらのフロアコーティング剤は、0.4 mm を超える層厚さで 3 %未満(23 ℃/50 %相対空気湿度で測定)の長期収縮率を有する。
【実施例】
【0047】
測定方法
エポキシ分(%EpO)
化合物のオキシラン基(エポキシ基)含有量を、エポキシ滴定によって測定した。得られたエポキシ分(%EpO)は、試料 100 g 中に存在するオキシラン酸素のグラム数を示している。
【0048】
滴定は以下の原理に基づく。
過剰なテトラエチルアンモニウムブロミドを含む溶液を、オキシラン環を含む試料に添加する。次いで、混合物を、氷酢酸中過塩素酸溶液で滴定すると、等モル量の臭化水素が放出される。臭化水素は、開環反応によりオキシラン環と反応し、対応するブロモヒドリンを形成する。
【化4】

クリスタルバイオレットを指示薬として使用する。測定は、水、塩基及びアミンが存在しないことを前提としている。
【0049】
以下の試薬を使用した:(1)0.1 N の氷酢酸中過塩素酸(Merck 製)、(2)テトラエチルアンモニウムブロミド 100 g の氷酢酸 400 ml 溶液としてのテトラエチルアンモニウムブロミド(Fluka 製)、(3)クリスタルバイオレット(Merck 製)。指示薬溶液は、0.2 g のクリスタルバイオレットを 100 ml の氷酢酸に溶解することによって調製した。
【0050】
手順
オキシラン環を含む試料 0.2〜0.5 g を、三角フラスコに導入する。試料を 50 ml の無水アセトンに溶解する。次いで、10 ml のテトラエチルアンモニウムブロミド溶液(上記参照)及び 3 滴のクリスタルバイオレット溶液(上記参照)を添加する。混合物を、0.1 N の氷酢酸中過塩素酸で滴定する。青から緑に色が変化したときを、終点とする。測定誤差を防ぐため、実際の滴定の前にブランクテスト(オキシラン化合物不存在)を行う。
【0051】
評価
エポキシ分%EpO を、以下の式により計算する。
%EpO = [(a-b)×0.160]/E
[式中、a は滴定に要した 0.1 N の HClO4 溶液(ml)であり、b はブランクテストで要した 0.1 N の HClO4 溶液(ml)であり、E は試料重量(g)である。]
【0052】
エポキシ当量(EEW)
エポキシ当量(EEW)は、エポキシ分から以下のように計算できる。
16×100/%EpO = EEW
EEW は、g/当量で表される。
【0053】
略語
以下で使用する略語は、次の意味を有する。
EEW:エポキシ当量(上記参照)
MW:平均分子量
【0054】
実施例 1
44 g の ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(EEW 326、MW 652)を、室温で、46.2 g のビスフェノール A ジグリシジルエーテル(Chemres E20、Cognis 製、EEW 194)、14.0 g のビスフェノール A 及び 0.1 g のトリフェニルホスフィンと混合した。得られた混合物を 160 ℃まで加熱し、エポキシ分が 3.85 %になるまで、その温度で約 3 時間撹拌した。次いで、混合物を 60 ℃まで冷却し、121.4 g のジエチレントリアミンを、その温度で添加した。発熱反応が収まった後、反応混合物を 160 ℃まで 2 時間かけて再加熱した。過剰なジエチレントリアミンを、遊離アミンが留去されてなくなるまで、減圧下で留去した(200 ℃までの塔底温度、10 mbar 以下の圧力)。その後、混合物を 80 ℃まで冷却し、13.7 g のプロピレンカーボネートを発熱を考慮して滴加した。160 ℃で更に 4 時間反応させた後、98.9 g の水を撹拌しながら反応混合物に添加した。
247.5 g の透明な琥珀色の液体を得た。粘度(ブルックフィールド粘度計、10 r.p.m.、40 ℃)は 1,220 mPas であった。
【0055】
実施例 2
44 g の ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(EEW 326、MW 652)を、室温で、46.2 g のビスフェノール A ジグリシジルエーテル(Chemres E20、Cognis 製、EEW 194)、14.0 g のビスフェノール A 及び 0.1 g のトリフェニルホスフィンと混合した。得られた混合物を 160 ℃まで加熱し、エポキシ分が 3.85 %になるまで、その温度で約 3 時間撹拌した。次いで、混合物を 60 ℃まで冷却し、121.4 g のジエチレントリアミンを、その温度で添加した。発熱反応が収まった後、反応混合物を 160 ℃まで 2 時間かけて再加熱した。過剰なジエチレントリアミンを、遊離アミンが留去されてなくなるまで、減圧下で留去した(200 ℃までの塔底温度、10 mbar 以下の圧力)。その後、混合物を 80 ℃まで冷却し、11.6 g のブチロラクトンを発熱を考慮して滴加した。90 ℃で更に 2 時間反応させた後、97.5 g の水を撹拌しながら反応混合物に添加した。
243.7 g の透明な琥珀色の液体を得た。粘度(ブルックフィールド粘度計、10 r.p.m.、40 ℃)は 1,440 mPas であった。
【0056】
実施例 3
44 g の ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(EEW 326、MW 652)を、室温で、46.2 g のビスフェノール A ジグリシジルエーテル(Chemres E20、Cognis 製、EEW 194)、14.0 g のビスフェノール A 及び 0.1 g のトリフェニルホスフィンと混合した。得られた混合物を 160 ℃まで加熱し、エポキシ分が 3.85 %になるまで、その温度で約 3 時間撹拌した。次いで、混合物を 60 ℃まで冷却し、121.4 g のジエチレントリアミンを、その温度で添加した。発熱反応が収まった後、反応混合物を 160 ℃まで 2 時間かけて再加熱した。過剰なジエチレントリアミンを、遊離アミンが留去されてなくなるまで、減圧下で留去した(200 ℃までの塔底温度、10 mbar 以下の圧力)。その後、混合物を 90 ℃まで冷却し、89.5 g の水を撹拌しながら添加した。そして、反応混合物を 50 ℃まで冷却し、1.9 g の二酸化炭素を、フリット D2 を備えたガス分配管を通し、1 時間にわたってゆっくりと添加した。溶解した二酸化炭素は、装置全体を再計量することによって測定した。
226 g の透明な琥珀色の液体を得た。粘度(ブルックフィールド粘度計、10 r.p.m.、40 ℃)は 2,020 mPas であった。
【0057】
比較例 1
44 g の ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(EEW 326、MW 652)を、室温で、46.2 g のビスフェノール A ジグリシジルエーテル(Chemres E20、Cognis 製、EEW 194)、14.0 g のビスフェノール A 及び 0.1 g のトリフェニルホスフィンと混合した。得られた混合物を 160 ℃まで加熱し、エポキシ分が 3.95 %になるまで、その温度で約 2 時間撹拌した。次いで、混合物を 60 ℃まで冷却し、91.1 g のジエチレントリアミンを、その温度で添加した。発熱反応が収まった後、反応混合物を 160 ℃まで 2 時間かけて再加熱した。過剰なジエチレントリアミンを、遊離アミンが留去されてなくなるまで、減圧下で留去した(200 ℃までの塔底温度、10 mbar 以下の圧力)。その後、混合物を 90 ℃まで冷却し、89.5 g の水を撹拌しながら添加した。
205.6 g の透明な琥珀色の液体を得た。粘度(ブルックフィールド粘度計、10 r.p.m.、40 ℃)は 2,140 mPas であった。アミン価は 134 であった。
【0058】
性能試験
1. クリヤラッカー特性
実施例 1〜3 の硬化剤(硬化剤の 60 %水溶液)及び比較例 1 の硬化剤(硬化剤の 60 %水溶液)を、表 1 に示した量の成分番号 1〜3 と混合してクリヤラッカーを製造した(使用した成分番号 1〜3 のナンバリングは、表 1 の 1 列目に記載される。)。
このために、均一なエマルションが形成されるまで、成分番号 1(エポキシ樹脂)及び成分番号 2 (硬化剤の 60 %水溶液)を、木製スパチュラを用いて手動で撹拌しながら、ガラスビーカー内で成分番号 3(水)と十分に混合した。次いで、エマルションをコーティングナイフ(0.1 mm)で窓ガラスに塗布し、20 ℃で硬化させるために静置した。1 日及び 7 日後、エリクセン型 299 振子硬度試験器を用いて、ケーニッヒ振子硬度(DIN 53157)を測定した。
各々の場合において、ポットライフの終点は、初期濃度の 3 倍を超すエマルション粘度の著しい上昇に表れた。ポットライフは、各々の場合において約 60 分であった。得られたラッカーは、無色透明であった。タックフリー時間(小さなガラス玉又はガラス粉がフィルムに付着しなくなるまでの時間)は、各々の場合において約 1 時間であった。
【0059】
【表1】

【0060】
表 1 の 1 行目の列上部の E1、E2 などは、以下の意味を有する。
E1 は、列 E1 のクリヤラッカー組成物が、成分番号 2(硬化剤)として実施例 1 の化合物を含むことを意味する。
E2 は、列 E2 のクリヤラッカー組成物が、成分番号 2(硬化剤)として実施例 2 の化合物を含むことを意味する。
E3 は、列 E3 のクリヤラッカー組成物が、成分番号 2(硬化剤)として実施例 3 の化合物を含むことを意味する。
C1 は、列 C1 のクリヤラッカー組成物が、成分番号 2(硬化剤)として比較例 1 の化合物を含むことを意味する。
列 E1、E2 などに記載されている数字は、使用した成分の量をグラムで表している。
硬化混合物のポットライフは、20 ℃で保持した容器内での、ブルックフィールド DV II、スピンドル RV 7、20 r.p.m. を用いた連続的粘度測定によって決定した。ポットライフの終点では、20,000 mPas の粘度に達した。
【0061】
2. 収縮率を測定するためのフロアコーティング組成物
実施例 1〜3 の硬化剤(硬化剤の 60 %水溶液)及び比較例 1 の硬化剤(硬化剤の 60 %水溶液)を、表 2 に記載した量の液状成分(成分番号 6、7、8、9 及び 10)と混合し、Pendraulik 撹拌機を用いて均一化した。次いで、顔料(成分番号 2、3、4、5 及び 11)を順次均一に撹拌しながら混入し、Pendraulik 撹拌機を用いて約 20 分間分散させた。
その後、成分番号 12 及び 13 を混合物に添加し、Pendraulik 撹拌機を用いて約 4 分間均一化した。
【0062】
配合において使用した成分番号 1〜13 のナンバリングは、表 2 の 1 列目に記載される。
Foammaster 223 を成分番号 6 として使用した。この製品は消泡剤である(Cognis 製)。
Loxanol DPN を成分番号 7 として使用した。この製品は開放時間延長剤である(Cognis 製)。
Dowanol TPM を成分番号 8 として使用した。この製品は補助溶媒である(Cognis 製)。
DSX 1550 を成分番号 9 として使用した。この製品は増粘剤である(Cognis 製)。
Chemres E95 を成分番号 12 として使用した。この製品はエポキシ樹脂である(Cognis 製)。
【0063】
各々の場合において、充填材のバインダーに対する一定比を 4.2:1 に調整した。長期収縮率を測定するために、得られたフロアコーティング組成物を既成のテフロン型(長さ 150 mm、幅 20 mm、深さ 3 mm)に注ぎ、23 ℃/50 %相対空気湿度に調節された槽内に硬化するため静置した。長期収縮率を、7、14 及び 28 日後に、ノギスを用いて測定し、初期長さ 150 mm に対する減少率として表した。
【0064】
【表2】

【0065】
表 2 の 1 行目の列上部の E1、E2 などは、表 1 で定義したのと同じ意味を有する:E1 は、列 E1 のクリヤラッカー組成物が、成分番号 1(硬化剤)として実施例 1 の化合物を含むことを意味する;E2 は、列 E2 のクリヤラッカー組成物が、成分番号 1(硬化剤)として実施例 2 の化合物を含むことを意味する、など。
列 E1、E2 などに記載されている数字は、使用した成分に基づく量をグラムで表しており、「ベース塗料の合計」、「合計」及び「総計」は精算の行である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ化ポリエチレンオキシド、エポキシ化ポリプロピレンオキシド及びポリエチレンプロピレンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のエポキシ化ポリアルキレンオキシド、
(B)ビスフェノール A エポキシド及びビスフェノール F エポキシドからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のエポキシ化芳香族ヒドロキシ化合物、及び
(C)ビスフェノール A 及びビスフェノール F からなる群から選ばれる少なくとも 1 種の芳香族ヒドロキシ化合物
の混合物を反応させて第一中間生成物(Z1)を得、続いて、この第一中間生成物(Z1)とポリアミン(E)を反応させて第二中間生成物(Z2)を得、最後に、第二中間生成物(Z2)と少なくとも 1 種の化合物(F)を反応させることによって得られる水性エポキシ樹脂系用硬化剤であって、化合物(F)が一般式(I):
【化1】

[式中、置換基 R1 及び R2 は、相互に独立して、水素、飽和の直鎖又は分枝 C1〜22 アルキル基、或いは C6H5、OH、OR3 基を表し、R3 は、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜22 アルキル基である。]
に相当するカルボニル含有化合物からなる群から選ばれ、第二中間生成物(Z2)中に存在する一級アミノ基の少なくとも 1 %、多くとも 99 %が反応しなくてもよい水性エポキシ樹脂系用硬化剤。
【請求項2】
式(I)の化合物が、置換基 R1 及び R2 が各々飽和 C1〜22 アルキル基を表し、それらがカルボニル炭素原子と共に環を形成するように、互いに結合してよい(即ち環状になってよい)という更なる条件に従うことを特徴とする、請求項1に記載の硬化剤。
【請求項3】
カルボニル基に対するα位に存在する CH2 基の 1 個が、置換基 -O- に置き換わっていることを特徴とする、請求項2に記載の硬化剤。
【請求項4】
式(I)の化合物が、置換基 R1 及び R2 が各々飽和 C1〜22 アルキル基を表し、それらが、カルボニル炭素原子に対するα位に置換基としてアミノ基又は OH 基を有してよいという更なる条件に従うことを特徴とする、請求項1に記載の硬化剤。
【請求項5】
式(I)の化合物が、置換基 R1 及び R2 が一緒になって酸素を表してよいという更なる条件に従うことを特徴とする、請求項1に記載の硬化剤。
【請求項6】
ポリアミン(E)としてジエチレントリアミンを使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化剤。
【請求項7】
化合物(A)としてエポキシ化ポリプロピレンオキシドを使用することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化剤。
【請求項8】
化合物(B)としてビスフェノール A エポキシドを使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の硬化剤。
【請求項9】
化合物(C)としてビスフェノール A を使用することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の硬化剤。
【請求項10】
第二中間生成物(Z2)と化合物(F)の反応において、(Z2)中に存在する一級アミノ基の少なくとも 10 %、多くとも 60 %が反応しなくてもよいことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の硬化剤。
【請求項11】
クリヤラッカー、コーティング組成物などの製造のための請求項1〜10のいずれかに記載の硬化剤の使用。
【請求項12】
水性媒体中での請求項1〜10のいずれかに記載の硬化剤とエポキシ化合物(F)の反応によって得られる、クリヤラッカー、コーティング組成物などの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって得られる硬化組成物。
【請求項14】
フロアコーティング組成物であることを特徴とする請求項13に記載の硬化組成物。
【請求項15】
0.4 mm を超える層厚さで 3 %未満(23 ℃/50 %相対空気湿度で測定)の長期収縮率を有することを特徴とする、請求項14に記載のフロアコーティング組成物。

【公開番号】特開2007−2251(P2007−2251A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172748(P2006−172748)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】