コーティング装置
【課題】コーティング品質に優れた粉粒体製品を効率的に収率よく製造することができコーティング装置を提供する。
【解決手段】回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、胴体部1a1、1b1、1c1の直径が、軸方向他端側に位置するものほど大きくなっている(1a1<1b1<1c1)。粉粒体粒子に対するコーティング処理の初期段階の処理を行う処理室1aは、胴体部1a1の直径が最も小さいため、処理室1a内での粉粒体層Mの層高さを相対的に小さくして所定の処理を行うことができる。粉粒体粒子に対するコーティング処理の最終段階の処理を行う処理室1cは、胴体部1c1の直径が最も大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1c1の周速は最も大きくなる。そのため、処理室1cでは、スプレーノズル5cによるスプレー液の噴霧速度を大きくして、効率的な処理を行うことができる。
【解決手段】回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、胴体部1a1、1b1、1c1の直径が、軸方向他端側に位置するものほど大きくなっている(1a1<1b1<1c1)。粉粒体粒子に対するコーティング処理の初期段階の処理を行う処理室1aは、胴体部1a1の直径が最も小さいため、処理室1a内での粉粒体層Mの層高さを相対的に小さくして所定の処理を行うことができる。粉粒体粒子に対するコーティング処理の最終段階の処理を行う処理室1cは、胴体部1c1の直径が最も大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1c1の周速は最も大きくなる。そのため、処理室1cでは、スプレーノズル5cによるスプレー液の噴霧速度を大きくして、効率的な処理を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、食品、農薬等の粉粒体のコーティング、混合、乾燥等を行なうコーティング装置に関し、特に、軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品、農薬等の錠剤、ソフトカプセル、ペレット、顆粒、その他これらに類するもの(以下、これらを総称して粉粒体という。)にフィルムコーティングや糖衣コーティング等を施すために、回転ドラムを備えたコーティング装置が使用されている。
【0003】
この種のコーティング装置は、一般にパンコーティング装置とも呼ばれ、例えば下記の特許文献1、2に記載されているように、回転ドラムは多角筒状又は円筒状の胴体部と、該胴体部から前後方向に延びる前壁部及び後壁部とを備え、水平な軸線回りに回転可能に配置される。胴体部の全周又は周囲複数箇所には多孔部で構成された通気部が設けられ、各通気部の外周側を通気ジャケットがそれぞれ覆って通気チャンネルが構成される。各通気チャンネルは、回転ドラムの回転に伴って所定位置に来たときに給気ダクト又は排気ダクトと連通し、これにより所定温度に温度制御された処理気体、例えば乾燥空気が給気ダクトから通気チャンネル及び通気部を介して回転ドラム内に給気され、また、回転ドラム内の乾燥空気が通気部及び通気チャンネルを介して排気ダクトに排気される。回転ドラムが所定方向に回転すると、回転ドラム内に粉粒体層(粉粒体粒子の転動床)が形成される。そして、回転ドラムの内部に配置されたスプレーノズルから粉粒体層に向けて膜剤液等のスプレー液が噴霧され、コーティング処理が行われる。
【0004】
上記のコーティング装置はいわゆるバッチ式(回分式)のものであるが、例えば下記の特許文献3〜5に記載されているように、縦長の回転ドラムの内部に軸線方向に沿って複数の処理ゾーンを設け、粉粒体粒子を回転ドラムの軸方向一端側から軸方向他端側に漸次に移送しながら、連続的に各処理ゾーンで所定の処理を施す連続式のコーティング装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−97853号公報
【特許文献2】特許2726062号公報
【特許文献3】特表2007−500527号公報
【特許文献4】特表平8−509858号公報
【特許文献5】特公昭44−2813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、連続式のコーティング装置では、回転ドラムの軸線を傾斜させ、あるいは、回転ドラムの内部に螺旋状の搬送路を設け、回転ドラムの回転に伴って粉粒体を軸方向一端側から軸方向他端側に漸次に移送する構成にしている。しかしながら、回転ドラム内における粉粒体粒子の移送速度にはばらつきが大きく、各処理ゾーンでの粉粒体粒子の滞留時間が異なるので、粉粒体粒子に対する膜材液の噴霧、展延、乾燥状態等が不均一になり、コーティング品質が劣る不良製品粒子が多く発生するという問題がある。
【0007】
また、特許文献3では、各処理ゾーンを仕切りディスクで分離し、一の処理ゾーンから隣接する他の処理ゾーンに粉粒体粒子を移送する際に仕切ディスクの通路を開放するようにしているが、粉粒体粒子が仕切ディスクの通路に挟まって割れ等が生じるという問題がある。
【0008】
本発明の課題は、コーティング品質に優れた粉粒体製品を効率的に収率よく製造することができコーティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、回転ドラムの内部に収容された粉粒体粒子に対して、液材の添加と処理気体の通気を含む処理を施して被覆層を形成するコーティング装置において、回転ドラムは、軸線方向に沿って区画された複数の処理室を備えており、粉粒体粒子は軸方向一端側の処理室から軸方向他端側の処理室に順次に移送されて所定の処理を施され、複数の処理室は、それぞれ個別に正転及び逆転可能であり、各処理室は、該処理室内で粉粒体粒子の処理を行うときは正転駆動され、該処理室内での粉粒体粒子の処理が終了したときに逆転駆動され、該処理室内の粉粒体粒子を軸方向他端側に隣接する処理室又は回転ドラムの外部に移送する構成を提供する。
【0010】
上記構成において、処理室の逆転に伴い、該処理室内の粉粒体粒子を案内して軸方向他端側に隣接する処理室又は回転ドラムの外部に移送する移送部材を各処理室に設けても良い。
【0011】
上記構成において、複数の処理室に対して、それぞれ個別に処理気体の通気を行う構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、複数の処理室に、それぞれ膜材液を噴霧するスプレーノズルを配置するようにしても良い。
【0013】
上記構成において、複数の処理室は、それぞれ多角筒形又は円筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の処理室の胴体部の直径が、軸方向一端側の処理室の胴体部の直径よりも大きいものとすることができる。
【0014】
あるいは、上記構成において、複数の処理室は、それぞれ軸方向他端側に向かって漸次拡径した多角円錐筒形又は円錐筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の処理室の胴体部の平均直径が、軸方向一端側の処理室の胴体部の平均直径より大きいものとすることができる。
【0015】
上記構成において、回転ドラムの軸線を水平方向に対して傾斜させても良い。
【発明の効果】
【0016】
回転ドラムを軸線方向に沿って複数の処理室に区画すると共に、各処理室を個別に正転及び逆転可能とし、各処理室内での粉粒体粒子の処理が終了したときに、該処理室を逆転駆動して、該処理室内の粉粒体粒子を軸方向他端側に隣接する処理室又は回転ドラムの外部に移送する構成としたので、各処理室において粉粒体に対する所定の処理が確実にかつ均質に行われ、コーティング品質に優れた粉粒体製品を収率よく製造することができる。また、処理室毎に回転数を個別的に制御できるので、処理に最適な回転数を選択して、処理品質と処理効率を高めることができる。さらに、処理室の逆転により粉粒体粒子を移送する構成であるので、粉粒体の詰まりによる割れ等の発生も起こらない。
【0017】
複数の処理室に対して、それぞれ個別に処理気体の通気を行うことにより、及び/又は、複数の処理室に、それぞれ膜材液を噴霧するスプレーノズルを配置することにより、処理室毎に通気条件及び/又はスプレー条件を個別的に制御して、より最適で効率的な処理を行うことができる。
【0018】
複数の処理室が、それぞれ多角筒形又は円筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の処理室の胴体部の直径が、軸方向一端側の処理室の胴体部の直径よりも大きい構成とすることにより、あるいは、複数の処理室が、それぞれ軸方向他端側に向かって漸次拡径した多角円錐筒形又は円錐筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の処理室の胴体部の平均直径が、軸方向一端側の処理室の胴体部の平均直径より大きい構成とすることにより、コーティング処理の初期段階の処理を胴体部の直径が最も小さい処理室で行い、コーティングの最終段階の処理を胴体部の直径が最も大きい処理室で行うことができる。コーティング処理の初期段階の処理を胴体部の直径が最も小さい処理室で行うと、処理室内での粉粒体層の層高さを相対的に小さくして所定の処理を行うことができ、これにより、粉粒体粒子が脆い物性を有するものであっても、重力等の影響に起因する割れや欠けが発生することを低減することができる。また、コーティングの最終段階の処理を胴体部の直径が最も大きい処理室で行うと、回転数が同じであっても、胴体部の周速が大きくなるため、スプレーノズルによる液材の噴霧速度を大きくして、効率的な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図3】第2の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図4】第3の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図5】第3の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図6】第4の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図7】第5の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図8】第5の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図9】第6の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図10】第7の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図11】第7の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図12】第8の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図13】第9の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図14】第9の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図15】第10の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図16】第11の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図17】第11の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図18】第12の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図19】図7及び図8に示す第5の実施形態に係るコーティング装置のより具体的な構成例を示す断面図である。
【図20】図19のY部とZ部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1及び図2は、第1の実施形態に係るコーティング装置Aを示している。この実施形態のコーティング装置Aは、水平方向の軸線回りに回転する回転ドラム1と、回転ドラム1を収容するケーシング2とを備えている。
【0022】
回転ドラム1は、軸線方向に沿って区画された複数の処理室、例えば3つの処理室1a、1b、1cを備えており、これに対応して、ケーシング2も軸線方向に沿って区画された複数の収容室、例えば3つの収容室2a、2b、2cを備えている。回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、それぞれ、ケーシング2の収容室2a、2b、2cに回転自在に収容され、図示されていない回転駆動装置によって個別に正転及び逆転駆動される。
【0023】
この実施形態において、回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、それぞれ、軸方向に均一径の多角筒形又は円筒形の胴体部1a1、1b1、1c1を有し、胴体部1a1、1b1、1c1は、それぞれ、多孔板で形成されている。また、胴体部1a1、1b1、1c1は、それぞれ、全周に亘って通気部を有しており、個別に設けられた排気ダクト3a(3b、3c)の排気口3a1(3b1、3c1)と所定位置で気密に摺接する。
【0024】
ケーシング2の収容室2a、2b、2cには、それぞれ、給気ダクト4a、4b、4cが接続されており、給気ダクト4a、4b、4cから収容室2a、2b、2c内に供給された熱風等の処理気体は、胴体部1a1、1b1、1c1の通気部から処理室1a、1b、1c内に入り、処理室1a、1b、1c内の粉粒体層Mを通過して、排気口3a1(3b1、3c1)から排気ダクト3a(3b、3c)に排気される。
【0025】
また、回転ドラム1の処理室1a、1b、1cには、それぞれ、液材、例えば膜材液等のスプレー液を噴霧するスプレーノズル5a、5b、5cが設置される。
【0026】
被覆層を形成すべき錠剤等の粉粒体は、回転ドラム1の軸方向一端の開口部から処理室1aの内部に投入される。そして、処理室1aが図示されていない回転駆動機構により正転駆動されると、処理室1aの正転に伴い、内部の粉粒体粒子が攪拌混合されて粉粒体層(転動床)Mが形成される。そして、粉粒体層Mに対して、スプレーノズル5aからスプレー液が噴霧される。粉粒体層Mに噴霧されたスプレー液は、処理室1aの正転に伴う粉粒体層Mの攪拌混合作用によって、各粉粒体粒子の表面に展延される。粉粒体粒子の表面に展延されたスプレー液は、処理室1aの内部に供給される処理気体(温風等)によって乾燥される。この処理気体は、給気ダクト4aから収容室2aの内部空間を介して処理室1a内に流入し、粉粒体層Mの中を通過して、排気口3a1から排気ダクト3aに排気される。処理気体が粉粒体層Mの中を通過することにより、各粉粒体粒子の表面に展延されたスプレー液が斑なく均一に乾燥されて被覆層が形成される。
【0027】
処理室1aにおいて、上記の所定の処理が終了し、粉粒体粒子の表面に被覆層が形成されると、処理室1aが回転駆動機構により逆転駆動され、処理室1aの逆転に伴い、処理室1a内の粉粒体粒子が、軸方向他端側に隣接する処理室1bに移送される。これは、例えば、処理室1aの逆転に伴い、処理室1a内の粉粒体粒子を案内して処理室1bに移送する移送部材を処理室1aの内壁に突出状に設けることによって実現することができる(図19の移送部材20、21、22を参照)。
【0028】
粉粒体粒子が処理室1aから処理室1bに移送されると、処理室1bが図示されていない回転駆動機構により正転駆動される。そして、処理室1bに設置されたスプレーノズル5bから、処理室1aで用いるスプレー液とは異なる成分のスプレー液が粉粒体粒子の被覆層(第1被覆層)の表面に噴霧され、上記と同様の態様で、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成される。
【0029】
処理室1bにおいて、上記の所定の処理が終了し、粉粒体粒子の表面に第1及び第2被覆層が形成されると、処理室1bが回転駆動機構により逆転駆動され、処理室1bの逆転に伴い、処理室1b内の粉粒体粒子が、軸方向他端側に隣接する処理室1cに移送される。そして、処理室1cが図示されていない回転駆動機構により正転駆動され、処理室1cに設置されたスプレーノズル5cから、処理室1bで用いるスプレー液とは異なる成分のスプレー液が粉粒体粒子の第2被覆層の表面に噴霧され、上記と同様の態様で、第2被覆層の表面に第3被覆層が形成される。
【0030】
処理室1cにおいて、上記の所定の処理が終了し、粉粒体粒子の表面に第1〜第3被覆層が形成され、所望の粉粒体製品として完成されると、処理室1cが回転駆動機構により逆転駆動され、処理室1cの逆転に伴い、処理室1c内の粉粒体製品が回転ドラム1の軸方向他端の開口部から外部に排出される。
【0031】
コーティング装置Aによる上記のコーティング処理は、バッチ式(回分式)で行っても良いし、連続式で行っても良い。バッチ式で行う場合は、例えば、所定量の粉粒体粒子を回転ドラム1の処理室1aに投入し、処理室1a〜1cでの一連の処理を順次に行って外部に排出した後、次の所定量の粉粒体粒子を回転ドラム1の処理室1aに投入して同様の処理を繰り返す。連続式で行う場合は、例えば、処理室1aでの粉粒体粒子の処理が終了し、粉粒体粒子を処理室1aから処理室1bに移送した後、次の粉粒体粒子を処理室1aに投入し、処理室1a及び処理室1bで粉粒体粒子の処理と同時並行的に行う。そして、処理室1a及び処理室1bでの粉粒体粒子の処理が終了し、粉粒体粒子を処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cに移送した後、次の粉粒体粒子を処理室1aに投入し、処理室1a、処理室1b及び処理室1cで粉粒体粒子の処理と同時並行的に行う。処理室1a、処理室1b及び処理室1cでの粉粒体粒子の処理が終了し、粉粒体粒子を処理室1aから処理室1b、処理室1から処理室1cに移送し、粉粒体製品を処理室1cから外部に排出すると、さらに次の粉粒体粒子を処理室1aに投入し、処理室1a、処理室1b及び処理室1cで粉粒体粒子の処理と同時並行的に行い、以後、同様の操作を繰り返す。
【0032】
また、コーティング装置Aは、回転ドラム1の回転数、給気条件及びスプレー液の噴霧条件等を処理室1a、1b、1c毎に個別的に制御することにより、各処理室1a、1b、1cでの処理を最適かつ効率的に行うことができ、これにより、コーティング品質に優れた粉粒体製品を効率的に収率よく製造することができる。
【0033】
図3は、第2の実施形態に係るコーティング装置A1示している。この実施形態のコーティング装置A1において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第1の実施形態のコーティング装置Aに準じるので、重複する説明を省略する。
【0034】
図4及び図5は、第3の実施形態に係るコーティング装置A2を示している。この実施形態のコーティング装置A2において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、金属板等からなるカバー6によって外周側から覆われている。カバー6は、ケーシング2の収容室2a、2b、2cの内部にそれぞれ固定的に配設されたカバー部6a、6b、6cからなり、カバー部6a、6b、6cは、それぞれ、給気ダクト4a、4b、4c及び排気ダクト3a、3b、3cと連通している。給気ダクト4a(4b、4c)からカバー部6a(6b、6c)内に供給された熱風等の処理気体は、胴体部1a1(1b1、1c1)の通気部から処理室1a(1b、1c)内に入り、処理室1a(1b、1c)内の粉粒体層Mを通過して、排気ダクト3a(3b、3c)に排気される。第1の実施形態のコーティング装置Aに比べ、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)の外周がカバー6で覆われているので、熱量の損失が少なく、乾燥効率が高くなると共に、カバー6(6a、6b、6c)内に洗浄液を溜めて回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)を洗浄することができ、より少ない洗浄液量で回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)を効率的に洗浄することができる。また、処理室1a(1b、1c)は排気ダクト3a(3b、3c)と摺接しないので{給気ダクト4a(4b、4c)とも摺接しない。}、該摺接部の摩耗による給排気洩れ等の問題も生じない。その他の事項は、第1の実施形態のコーティング装置Aに準じるので、重複する説明を省略する。
【0035】
図6は、第4の実施形態に係るコーティング装置A3示している。この実施形態のコーティング装置A3において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第3の実施形態のコーティング装置A2に準じるので、重複する説明を省略する。
【0036】
図7及び図8は、第5の実施形態に係るコーティング装置Bを示している。この実施形態のコーティング装置Bにおいて、回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、胴体部1a1、1b1、1c1の直径が、軸方向他端側に位置するものほど大きくなっている(1a1<1b1<1c1)。粉粒体粒子に対するコーティング処理の初期段階の処理を行う処理室1aは、胴体部1a1の直径が最も小さいため、処理室1a内での粉粒体層Mの層高さを相対的に小さくして所定の処理(第1被覆層の形成)を行うことができる。これにより、粉粒体粒子が脆い物性を有するものであっても、重力等の影響に起因する割れや欠けが発生することが低減される。処理室1aで第1被覆層が形成された粉粒体粒子は、粒子径がやや大きくなった状態で処理室1bに移送されて所定の処理(第2被覆層の形成)が行われるが、処理室1bは、胴体部1b1の直径が処理室1aよりも大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1b1の周速は処理室1aよりも大きくなる。そのため、処理室1bでは、スプレーノズル5bによるスプレー液の噴霧速度を処理室1aよりも大きくして、効率的な処理を行うことができる。また、処理室1bで第2被覆層が形成された粉粒体粒子は、粒子径が更に大きくなった状態で処理室1cに移送されて所定の処理(第3被覆層の形成)が行われるが、処理室1cは、胴体部1c1の直径が処理室1bよりも大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1c1の周速は処理室1bよりも大きくなる。そのため、処理室1cでは、スプレーノズル5cによるスプレー液の噴霧速度を処理室1bよりも更に大きくして、効率的な処理を行うことができる。その他の事項は、第1の実施形態のコーティング装置Aに準じるので、重複する説明を省略する。
【0037】
図9は、第6の実施形態に係るコーティング装置B1示している。この実施形態のコーティング装置B1において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第5の実施形態のコーティング装置Bに準じるので、重複する説明を省略する。
【0038】
図10及び図11は、第7の実施形態に係るコーティング装置B2を示している。この実施形態のコーティング装置B2において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、金属板等からなるカバー6によって外周側から覆われている。カバー6は、ケーシング2の収容室2a、2b、2cの内部にそれぞれ固定的に配設されたカバー部6a、6b、6cからなり、カバー部6a、6b、6cは、それぞれ、給気ダクト4a、4b、4c及び排気ダクト3a、3b、3cと連通している。給気ダクト4a(4b、4c)からカバー部6a(6b、6c)内に供給された熱風等の処理気体は、胴体部1a1(1b1、1c1)の通気部から処理室1a(1b、1c)内に入り、処理室1a(1b、1c)内の粉粒体層Mを通過して、排気ダクト3a(3b、3c)に排気される。その他の事項は、第5の実施形態のコーティング装置Bに準じるので、重複する説明を省略する。
【0039】
図12は、第8の実施形態に係るコーティング装置B3示している。この実施形態のコーティング装置B3において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第7の実施形態のコーティング装置B2に準じるので、重複する説明を省略する。
【0040】
図13及び図14は、第9の実施形態に係るコーティング装置Cを示している。この実施形態のコーティング装置Cにおいて、回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、それぞれ、軸方向他端側に向かって漸次拡径した多角円錐筒形又は円錐筒形の胴体部1a1、1b1、1c1を有し、胴体部1a1、1b1、1c1の平均直径(最大直径と最小直径との平均値)が、軸方向他端側に位置するものほど大きくなっている(1a1<1b1<1c1)。粉粒体粒子に対するコーティング処理の初期段階の処理を行う処理室1aは、胴体部1a1の平均直径が最も小さいため、処理室1a内での粉粒体層Mの層高さを相対的に小さくして所定の処理(第1被覆層の形成)を行うことができる。これにより、粉粒体粒子が脆い物性を有するものであっても、重力等の影響により割れや欠けが発生することが低減される。処理室1aで第1被覆層が形成された粉粒体粒子は、粒子径がやや大きくなった状態で処理室1bに移送されて所定の処理(第2被覆層の形成)が行われるが、処理室1bは、胴体部1b1の平均直径が処理室1aよりも大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1b1の周速は処理室1aよりも大きくなる。そのため、処理室1bでは、スプレーノズル5bによるスプレー液の噴霧速度を処理室1aよりも大きくして、効率的な処理を行うことができる。また、処理室1bで第2被覆層が形成された粉粒体粒子は、粒子径が更に大きくなった状態で処理室1cに移送されて所定の処理(第3被覆層の形成)が行われるが、処理室1cは、胴体部1c1の平均直径が処理室1bよりも大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1c1の周速は処理室1bよりも大きくなる。そのため、処理室1cでは、スプレーノズル5cによるスプレー液の噴霧速度を処理室1bよりも更に大きくして、効率的な処理を行うことができる。その他の事項は、第1の実施形態のコーティング装置Aに準じるので、重複する説明を省略する。
【0041】
図15は、第10の実施形態に係るコーティング装置C1示している。この実施形態のコーティング装置C1において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第9の実施形態のコーティング装置Cに準じるので、重複する説明を省略する。
【0042】
図16及び図17は、第11の実施形態に係るコーティング装置C2を示している。この実施形態のコーティング装置C2において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、金属板等からなるカバー6によって外周側から覆われている。カバー6は、ケーシング2の収容室2a、2b、2cの内部にそれぞれ固定的に配設されたカバー部6a、6b、6cからなり、カバー部6a、6b、6cは、それぞれ、給気ダクト4a、4b、4c及び排気ダクト3a、3b、3cと連通している。給気ダクト4a(4b、4c)からカバー部6a(6b、6c)内に供給された熱風等の処理気体は、胴体部1a1(1b1、1c1)の通気部から処理室1a(1b、1c)内に入り、処理室1a(1b、1c)内の粉粒体層Mを通過して、排気ダクト3a(3b、3c)に排気される。その他の事項は、第9の実施形態のコーティング装置Cに準じるので、重複する説明を省略する。
【0043】
図18は、第12の実施形態に係るコーティング装置C3示している。この実施形態のコーティング装置C3において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第11の実施形態のコーティング装置C2に準じるので、重複する説明を省略する。
【0044】
図19及び図20は、図7及び図8に示す第5の実施形態に係るコーティング装置Bのより具体的な構成例を示している。回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、それぞれ、ケーシング2の収容室2a、2b、2c内で、支持ローラ7により回転自在に支持される。同図に示す構成例では、処理室1a、1b、1cの胴体部1a1、1b1、1c1の軸方向両端部に断面逆L字形の支持部材8を固定し、支持部材8の軸線Xと平行な円筒部8aの外周を支持ローラ7で支持するようにしている。支持ローラ7はローラ軸7aに軸受で回転自在に支持され、ローラ軸7aはケーシング2に固定された支持部材7bに支持される。
【0045】
収容室2aと収容室2bを仕切るケーシング2の隔壁21と支持部材8との間は、シール部10によってシールされる。図19(b)に拡大(Z部の拡大)して示すように、この構成例において、シール部10は、支持部材8の円筒部8aの外周に軸方向に離隔した状態で固定された一対の環状のシールリング10aと、隔壁21の内周に固定された環状のシールリング10bとを備え、一対のシールリング10a、シールリング10b及び円筒部8aの外周とでラビリンスシール(非接触シール)を形成する。収容室2bと収容室2cを仕切るケーシング2の隔壁21と支持部材8との間も、同様の構成のシール部10によってシールされる。
【0046】
処理室1aの軸方向他端側の開口部1a2と処理室1bの軸方向一端側の端壁1b3との間は、シール部11によってシールされる。図19(a)に拡大(Y部の拡大)して示すように、この構成例において、シール部11は、開口部1a2の外周に軸方向に離隔した状態で固定された一対の環状のシールリング11aと、処理室1bの端壁1b3の内周に固定された環状のシールリング11bとを備え、一対のシールリング11a、シールリング11b及び開口部1a2の外周とでラビリンスシール(非接触シール)を形成する。処理室1bの軸方向他端側の開口部1b2と処理室1cの軸方向一端側の端壁1c3との間も、同様の構成のシール部11によってシールされる。
【0047】
収容室2aの外壁22と処理室1aの軸方向一端側の開口部1a3との間は、シール部12によってシールされる。この構成例において、シール部12は、上述したシール部10やシール部11と同様の構成のラビリンスシールである。収容室2cの外壁22と処理室1cの軸方向他端側の開口部1c2との間も、同様の構成のシール部12によってシールされる。
【0048】
また、処理室1a、1b、1cには、処理室1a、1b、1cの逆転に伴い、処理室1a、1b、1c内の粉粒体粒子を案内して軸方向他端側に移送する移送部材20、21、22がそれぞれ設けられている。移送部材20は、処理室1aの内壁に突出状に設けられ、この構成例では、処理室1aの胴体部1a1から軸方向他端側の傾斜状の端壁部1a4を経て開口部1a2に至る形態を有している。移送部材20は、少なくとも胴体部1a1から端壁部1a4に亘る部分が軸線Xに対して所定方向に傾斜しており、これにより、処理室1aの逆転時に、処理室1a内の粉粒体粒子が移送部材20に沿って開口部1a2の側に流れて処理室1bに移送される。移送部材21も、移送部材20と同様に、処理室1bの内壁に突出状に設けられ、この構成例では、処理室1bの胴体部1b1から軸方向他端側の傾斜状の端壁部1b4を経て開口部1b2に至る形態を有している。移送部材21は、少なくとも胴体部1b1から端壁部1b4に亘る部分が軸線Xに対して所定方向に傾斜しており、これにより、処理室1bの逆転時に、処理室1b内の粉粒体粒子が移送部材21に沿って開口部1b2の側に流れて処理室1cに移送される。移送部材22も、移送部材20と同様に、処理室1cの内壁に突出状に設けられ、この構成例では、処理室1cの胴体部1c1から軸方向他端側の傾斜状の端壁部1c4を経て開口部1c2に至る形態を有している。移送部材22は、少なくとも胴体部1c1から端壁部1c4に亘る部分が軸線Xに対して所定方向に傾斜しており、これにより、処理室1cの逆転時に、処理室1c内の粉粒体粒子が移送部材22に沿って開口部1c2の側に流れて回転ドラム1の外部に移送される。また、これらの移送部材20、21、22は、処理室1a、1b、1cの正転時に、粉粒体粒子を混合攪拌するバッフルとしても機能する。
【0049】
移送部材20、21、22の胴体部1a1、1b1、1c1に対応する部分の軸方向長さは、処理室1a、1b、1cの内部に配置されるバッフル(攪拌羽根)との協働関係等や、処理室1a、1b、1cの内部にその他の案内部材を配置する場合は、該案内部材との協働関係も考慮して、処理室1a、1b、1c内の粉粒体粒子が効果的に移送されるように適宜の寸法に設定すれば良い。この点から、移送部材20、21、22の胴体部1a1、1b1、1c1に対応する部分は、胴体部1a1、1b1、1c1の軸方向全領域に亘って延在する場合もあるし、省略される場合もある。
【0050】
この構成例における回転ドラム1の処理室1a、1b、1cの支持構造、シール構造及び粉粒体粒子の移送構造は、図1及び図2に示す第1の実施形態に係るコーティング装置A、図3に示す第2の実施形態に係るコーティング装置A1、図4及び図5に示す第3の実施形態に係るコーティング装置A2、図6に示す第4の実施形態に係るコーティング装置A3、図9に示す第6の実施形態に係るコーティング装置B1、図10及び図11に示す第7の実施形態に係るコーティング装置B2、図12に示す第8の実施形態に係るコーティング装置B3、図13及び図14に示す第9の実施形態に係るコーティング装置C、図15に示す第10の実施形態に係るコーティング装置C1、図16及び図17に示す第11の実施形態に係るコーティング装置C2、図18に示す第12の実施形態に係るコーティング装置C3にも同様に適用できる。
【0051】
また、以上に説明した実施形態に係るコーティング装置において、ケーシング2を収容室2a、2b、2cに区画することなく、処理室1a、1b、1cに対して共通の収容室とし、この共通の収容室に1本又は複数本の給気ダクトから処理気体を供給する構成とすることにより、処理室1a、1b、1cに対する給気を共通化しても良い。また、処理室1a、1b、1cからの排気を共通化することも可能である。
【0052】
また、処理室1a、1b、1cにおいて、スプレーノズル5a、5b、5cから噴霧するスプレー液は、相互に異なる種類のものであっても良いし、スプレーノズル5a、5b、5cのうち少なくとも2つのスプレーノズルから噴霧するスプレー液は、相互に同じ種類のものであっても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 回転ドラム
1a、1b、1c 処理室
3a、3b、3c 排気ダクト
4a、4b、4c 給気ダクト
5a、5b、5c スプレーノズル
7 移送部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、食品、農薬等の粉粒体のコーティング、混合、乾燥等を行なうコーティング装置に関し、特に、軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品、農薬等の錠剤、ソフトカプセル、ペレット、顆粒、その他これらに類するもの(以下、これらを総称して粉粒体という。)にフィルムコーティングや糖衣コーティング等を施すために、回転ドラムを備えたコーティング装置が使用されている。
【0003】
この種のコーティング装置は、一般にパンコーティング装置とも呼ばれ、例えば下記の特許文献1、2に記載されているように、回転ドラムは多角筒状又は円筒状の胴体部と、該胴体部から前後方向に延びる前壁部及び後壁部とを備え、水平な軸線回りに回転可能に配置される。胴体部の全周又は周囲複数箇所には多孔部で構成された通気部が設けられ、各通気部の外周側を通気ジャケットがそれぞれ覆って通気チャンネルが構成される。各通気チャンネルは、回転ドラムの回転に伴って所定位置に来たときに給気ダクト又は排気ダクトと連通し、これにより所定温度に温度制御された処理気体、例えば乾燥空気が給気ダクトから通気チャンネル及び通気部を介して回転ドラム内に給気され、また、回転ドラム内の乾燥空気が通気部及び通気チャンネルを介して排気ダクトに排気される。回転ドラムが所定方向に回転すると、回転ドラム内に粉粒体層(粉粒体粒子の転動床)が形成される。そして、回転ドラムの内部に配置されたスプレーノズルから粉粒体層に向けて膜剤液等のスプレー液が噴霧され、コーティング処理が行われる。
【0004】
上記のコーティング装置はいわゆるバッチ式(回分式)のものであるが、例えば下記の特許文献3〜5に記載されているように、縦長の回転ドラムの内部に軸線方向に沿って複数の処理ゾーンを設け、粉粒体粒子を回転ドラムの軸方向一端側から軸方向他端側に漸次に移送しながら、連続的に各処理ゾーンで所定の処理を施す連続式のコーティング装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−97853号公報
【特許文献2】特許2726062号公報
【特許文献3】特表2007−500527号公報
【特許文献4】特表平8−509858号公報
【特許文献5】特公昭44−2813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、連続式のコーティング装置では、回転ドラムの軸線を傾斜させ、あるいは、回転ドラムの内部に螺旋状の搬送路を設け、回転ドラムの回転に伴って粉粒体を軸方向一端側から軸方向他端側に漸次に移送する構成にしている。しかしながら、回転ドラム内における粉粒体粒子の移送速度にはばらつきが大きく、各処理ゾーンでの粉粒体粒子の滞留時間が異なるので、粉粒体粒子に対する膜材液の噴霧、展延、乾燥状態等が不均一になり、コーティング品質が劣る不良製品粒子が多く発生するという問題がある。
【0007】
また、特許文献3では、各処理ゾーンを仕切りディスクで分離し、一の処理ゾーンから隣接する他の処理ゾーンに粉粒体粒子を移送する際に仕切ディスクの通路を開放するようにしているが、粉粒体粒子が仕切ディスクの通路に挟まって割れ等が生じるという問題がある。
【0008】
本発明の課題は、コーティング品質に優れた粉粒体製品を効率的に収率よく製造することができコーティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、回転ドラムの内部に収容された粉粒体粒子に対して、液材の添加と処理気体の通気を含む処理を施して被覆層を形成するコーティング装置において、回転ドラムは、軸線方向に沿って区画された複数の処理室を備えており、粉粒体粒子は軸方向一端側の処理室から軸方向他端側の処理室に順次に移送されて所定の処理を施され、複数の処理室は、それぞれ個別に正転及び逆転可能であり、各処理室は、該処理室内で粉粒体粒子の処理を行うときは正転駆動され、該処理室内での粉粒体粒子の処理が終了したときに逆転駆動され、該処理室内の粉粒体粒子を軸方向他端側に隣接する処理室又は回転ドラムの外部に移送する構成を提供する。
【0010】
上記構成において、処理室の逆転に伴い、該処理室内の粉粒体粒子を案内して軸方向他端側に隣接する処理室又は回転ドラムの外部に移送する移送部材を各処理室に設けても良い。
【0011】
上記構成において、複数の処理室に対して、それぞれ個別に処理気体の通気を行う構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、複数の処理室に、それぞれ膜材液を噴霧するスプレーノズルを配置するようにしても良い。
【0013】
上記構成において、複数の処理室は、それぞれ多角筒形又は円筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の処理室の胴体部の直径が、軸方向一端側の処理室の胴体部の直径よりも大きいものとすることができる。
【0014】
あるいは、上記構成において、複数の処理室は、それぞれ軸方向他端側に向かって漸次拡径した多角円錐筒形又は円錐筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の処理室の胴体部の平均直径が、軸方向一端側の処理室の胴体部の平均直径より大きいものとすることができる。
【0015】
上記構成において、回転ドラムの軸線を水平方向に対して傾斜させても良い。
【発明の効果】
【0016】
回転ドラムを軸線方向に沿って複数の処理室に区画すると共に、各処理室を個別に正転及び逆転可能とし、各処理室内での粉粒体粒子の処理が終了したときに、該処理室を逆転駆動して、該処理室内の粉粒体粒子を軸方向他端側に隣接する処理室又は回転ドラムの外部に移送する構成としたので、各処理室において粉粒体に対する所定の処理が確実にかつ均質に行われ、コーティング品質に優れた粉粒体製品を収率よく製造することができる。また、処理室毎に回転数を個別的に制御できるので、処理に最適な回転数を選択して、処理品質と処理効率を高めることができる。さらに、処理室の逆転により粉粒体粒子を移送する構成であるので、粉粒体の詰まりによる割れ等の発生も起こらない。
【0017】
複数の処理室に対して、それぞれ個別に処理気体の通気を行うことにより、及び/又は、複数の処理室に、それぞれ膜材液を噴霧するスプレーノズルを配置することにより、処理室毎に通気条件及び/又はスプレー条件を個別的に制御して、より最適で効率的な処理を行うことができる。
【0018】
複数の処理室が、それぞれ多角筒形又は円筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の処理室の胴体部の直径が、軸方向一端側の処理室の胴体部の直径よりも大きい構成とすることにより、あるいは、複数の処理室が、それぞれ軸方向他端側に向かって漸次拡径した多角円錐筒形又は円錐筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の処理室の胴体部の平均直径が、軸方向一端側の処理室の胴体部の平均直径より大きい構成とすることにより、コーティング処理の初期段階の処理を胴体部の直径が最も小さい処理室で行い、コーティングの最終段階の処理を胴体部の直径が最も大きい処理室で行うことができる。コーティング処理の初期段階の処理を胴体部の直径が最も小さい処理室で行うと、処理室内での粉粒体層の層高さを相対的に小さくして所定の処理を行うことができ、これにより、粉粒体粒子が脆い物性を有するものであっても、重力等の影響に起因する割れや欠けが発生することを低減することができる。また、コーティングの最終段階の処理を胴体部の直径が最も大きい処理室で行うと、回転数が同じであっても、胴体部の周速が大きくなるため、スプレーノズルによる液材の噴霧速度を大きくして、効率的な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図3】第2の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図4】第3の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図5】第3の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図6】第4の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図7】第5の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図8】第5の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図9】第6の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図10】第7の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図11】第7の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図12】第8の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図13】第9の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図14】第9の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図15】第10の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図16】第11の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図17】第11の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す断面図である。
【図18】第12の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示す斜視図である。
【図19】図7及び図8に示す第5の実施形態に係るコーティング装置のより具体的な構成例を示す断面図である。
【図20】図19のY部とZ部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1及び図2は、第1の実施形態に係るコーティング装置Aを示している。この実施形態のコーティング装置Aは、水平方向の軸線回りに回転する回転ドラム1と、回転ドラム1を収容するケーシング2とを備えている。
【0022】
回転ドラム1は、軸線方向に沿って区画された複数の処理室、例えば3つの処理室1a、1b、1cを備えており、これに対応して、ケーシング2も軸線方向に沿って区画された複数の収容室、例えば3つの収容室2a、2b、2cを備えている。回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、それぞれ、ケーシング2の収容室2a、2b、2cに回転自在に収容され、図示されていない回転駆動装置によって個別に正転及び逆転駆動される。
【0023】
この実施形態において、回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、それぞれ、軸方向に均一径の多角筒形又は円筒形の胴体部1a1、1b1、1c1を有し、胴体部1a1、1b1、1c1は、それぞれ、多孔板で形成されている。また、胴体部1a1、1b1、1c1は、それぞれ、全周に亘って通気部を有しており、個別に設けられた排気ダクト3a(3b、3c)の排気口3a1(3b1、3c1)と所定位置で気密に摺接する。
【0024】
ケーシング2の収容室2a、2b、2cには、それぞれ、給気ダクト4a、4b、4cが接続されており、給気ダクト4a、4b、4cから収容室2a、2b、2c内に供給された熱風等の処理気体は、胴体部1a1、1b1、1c1の通気部から処理室1a、1b、1c内に入り、処理室1a、1b、1c内の粉粒体層Mを通過して、排気口3a1(3b1、3c1)から排気ダクト3a(3b、3c)に排気される。
【0025】
また、回転ドラム1の処理室1a、1b、1cには、それぞれ、液材、例えば膜材液等のスプレー液を噴霧するスプレーノズル5a、5b、5cが設置される。
【0026】
被覆層を形成すべき錠剤等の粉粒体は、回転ドラム1の軸方向一端の開口部から処理室1aの内部に投入される。そして、処理室1aが図示されていない回転駆動機構により正転駆動されると、処理室1aの正転に伴い、内部の粉粒体粒子が攪拌混合されて粉粒体層(転動床)Mが形成される。そして、粉粒体層Mに対して、スプレーノズル5aからスプレー液が噴霧される。粉粒体層Mに噴霧されたスプレー液は、処理室1aの正転に伴う粉粒体層Mの攪拌混合作用によって、各粉粒体粒子の表面に展延される。粉粒体粒子の表面に展延されたスプレー液は、処理室1aの内部に供給される処理気体(温風等)によって乾燥される。この処理気体は、給気ダクト4aから収容室2aの内部空間を介して処理室1a内に流入し、粉粒体層Mの中を通過して、排気口3a1から排気ダクト3aに排気される。処理気体が粉粒体層Mの中を通過することにより、各粉粒体粒子の表面に展延されたスプレー液が斑なく均一に乾燥されて被覆層が形成される。
【0027】
処理室1aにおいて、上記の所定の処理が終了し、粉粒体粒子の表面に被覆層が形成されると、処理室1aが回転駆動機構により逆転駆動され、処理室1aの逆転に伴い、処理室1a内の粉粒体粒子が、軸方向他端側に隣接する処理室1bに移送される。これは、例えば、処理室1aの逆転に伴い、処理室1a内の粉粒体粒子を案内して処理室1bに移送する移送部材を処理室1aの内壁に突出状に設けることによって実現することができる(図19の移送部材20、21、22を参照)。
【0028】
粉粒体粒子が処理室1aから処理室1bに移送されると、処理室1bが図示されていない回転駆動機構により正転駆動される。そして、処理室1bに設置されたスプレーノズル5bから、処理室1aで用いるスプレー液とは異なる成分のスプレー液が粉粒体粒子の被覆層(第1被覆層)の表面に噴霧され、上記と同様の態様で、第1被覆層の表面に第2被覆層が形成される。
【0029】
処理室1bにおいて、上記の所定の処理が終了し、粉粒体粒子の表面に第1及び第2被覆層が形成されると、処理室1bが回転駆動機構により逆転駆動され、処理室1bの逆転に伴い、処理室1b内の粉粒体粒子が、軸方向他端側に隣接する処理室1cに移送される。そして、処理室1cが図示されていない回転駆動機構により正転駆動され、処理室1cに設置されたスプレーノズル5cから、処理室1bで用いるスプレー液とは異なる成分のスプレー液が粉粒体粒子の第2被覆層の表面に噴霧され、上記と同様の態様で、第2被覆層の表面に第3被覆層が形成される。
【0030】
処理室1cにおいて、上記の所定の処理が終了し、粉粒体粒子の表面に第1〜第3被覆層が形成され、所望の粉粒体製品として完成されると、処理室1cが回転駆動機構により逆転駆動され、処理室1cの逆転に伴い、処理室1c内の粉粒体製品が回転ドラム1の軸方向他端の開口部から外部に排出される。
【0031】
コーティング装置Aによる上記のコーティング処理は、バッチ式(回分式)で行っても良いし、連続式で行っても良い。バッチ式で行う場合は、例えば、所定量の粉粒体粒子を回転ドラム1の処理室1aに投入し、処理室1a〜1cでの一連の処理を順次に行って外部に排出した後、次の所定量の粉粒体粒子を回転ドラム1の処理室1aに投入して同様の処理を繰り返す。連続式で行う場合は、例えば、処理室1aでの粉粒体粒子の処理が終了し、粉粒体粒子を処理室1aから処理室1bに移送した後、次の粉粒体粒子を処理室1aに投入し、処理室1a及び処理室1bで粉粒体粒子の処理と同時並行的に行う。そして、処理室1a及び処理室1bでの粉粒体粒子の処理が終了し、粉粒体粒子を処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cに移送した後、次の粉粒体粒子を処理室1aに投入し、処理室1a、処理室1b及び処理室1cで粉粒体粒子の処理と同時並行的に行う。処理室1a、処理室1b及び処理室1cでの粉粒体粒子の処理が終了し、粉粒体粒子を処理室1aから処理室1b、処理室1から処理室1cに移送し、粉粒体製品を処理室1cから外部に排出すると、さらに次の粉粒体粒子を処理室1aに投入し、処理室1a、処理室1b及び処理室1cで粉粒体粒子の処理と同時並行的に行い、以後、同様の操作を繰り返す。
【0032】
また、コーティング装置Aは、回転ドラム1の回転数、給気条件及びスプレー液の噴霧条件等を処理室1a、1b、1c毎に個別的に制御することにより、各処理室1a、1b、1cでの処理を最適かつ効率的に行うことができ、これにより、コーティング品質に優れた粉粒体製品を効率的に収率よく製造することができる。
【0033】
図3は、第2の実施形態に係るコーティング装置A1示している。この実施形態のコーティング装置A1において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第1の実施形態のコーティング装置Aに準じるので、重複する説明を省略する。
【0034】
図4及び図5は、第3の実施形態に係るコーティング装置A2を示している。この実施形態のコーティング装置A2において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、金属板等からなるカバー6によって外周側から覆われている。カバー6は、ケーシング2の収容室2a、2b、2cの内部にそれぞれ固定的に配設されたカバー部6a、6b、6cからなり、カバー部6a、6b、6cは、それぞれ、給気ダクト4a、4b、4c及び排気ダクト3a、3b、3cと連通している。給気ダクト4a(4b、4c)からカバー部6a(6b、6c)内に供給された熱風等の処理気体は、胴体部1a1(1b1、1c1)の通気部から処理室1a(1b、1c)内に入り、処理室1a(1b、1c)内の粉粒体層Mを通過して、排気ダクト3a(3b、3c)に排気される。第1の実施形態のコーティング装置Aに比べ、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)の外周がカバー6で覆われているので、熱量の損失が少なく、乾燥効率が高くなると共に、カバー6(6a、6b、6c)内に洗浄液を溜めて回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)を洗浄することができ、より少ない洗浄液量で回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)を効率的に洗浄することができる。また、処理室1a(1b、1c)は排気ダクト3a(3b、3c)と摺接しないので{給気ダクト4a(4b、4c)とも摺接しない。}、該摺接部の摩耗による給排気洩れ等の問題も生じない。その他の事項は、第1の実施形態のコーティング装置Aに準じるので、重複する説明を省略する。
【0035】
図6は、第4の実施形態に係るコーティング装置A3示している。この実施形態のコーティング装置A3において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第3の実施形態のコーティング装置A2に準じるので、重複する説明を省略する。
【0036】
図7及び図8は、第5の実施形態に係るコーティング装置Bを示している。この実施形態のコーティング装置Bにおいて、回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、胴体部1a1、1b1、1c1の直径が、軸方向他端側に位置するものほど大きくなっている(1a1<1b1<1c1)。粉粒体粒子に対するコーティング処理の初期段階の処理を行う処理室1aは、胴体部1a1の直径が最も小さいため、処理室1a内での粉粒体層Mの層高さを相対的に小さくして所定の処理(第1被覆層の形成)を行うことができる。これにより、粉粒体粒子が脆い物性を有するものであっても、重力等の影響に起因する割れや欠けが発生することが低減される。処理室1aで第1被覆層が形成された粉粒体粒子は、粒子径がやや大きくなった状態で処理室1bに移送されて所定の処理(第2被覆層の形成)が行われるが、処理室1bは、胴体部1b1の直径が処理室1aよりも大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1b1の周速は処理室1aよりも大きくなる。そのため、処理室1bでは、スプレーノズル5bによるスプレー液の噴霧速度を処理室1aよりも大きくして、効率的な処理を行うことができる。また、処理室1bで第2被覆層が形成された粉粒体粒子は、粒子径が更に大きくなった状態で処理室1cに移送されて所定の処理(第3被覆層の形成)が行われるが、処理室1cは、胴体部1c1の直径が処理室1bよりも大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1c1の周速は処理室1bよりも大きくなる。そのため、処理室1cでは、スプレーノズル5cによるスプレー液の噴霧速度を処理室1bよりも更に大きくして、効率的な処理を行うことができる。その他の事項は、第1の実施形態のコーティング装置Aに準じるので、重複する説明を省略する。
【0037】
図9は、第6の実施形態に係るコーティング装置B1示している。この実施形態のコーティング装置B1において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第5の実施形態のコーティング装置Bに準じるので、重複する説明を省略する。
【0038】
図10及び図11は、第7の実施形態に係るコーティング装置B2を示している。この実施形態のコーティング装置B2において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、金属板等からなるカバー6によって外周側から覆われている。カバー6は、ケーシング2の収容室2a、2b、2cの内部にそれぞれ固定的に配設されたカバー部6a、6b、6cからなり、カバー部6a、6b、6cは、それぞれ、給気ダクト4a、4b、4c及び排気ダクト3a、3b、3cと連通している。給気ダクト4a(4b、4c)からカバー部6a(6b、6c)内に供給された熱風等の処理気体は、胴体部1a1(1b1、1c1)の通気部から処理室1a(1b、1c)内に入り、処理室1a(1b、1c)内の粉粒体層Mを通過して、排気ダクト3a(3b、3c)に排気される。その他の事項は、第5の実施形態のコーティング装置Bに準じるので、重複する説明を省略する。
【0039】
図12は、第8の実施形態に係るコーティング装置B3示している。この実施形態のコーティング装置B3において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第7の実施形態のコーティング装置B2に準じるので、重複する説明を省略する。
【0040】
図13及び図14は、第9の実施形態に係るコーティング装置Cを示している。この実施形態のコーティング装置Cにおいて、回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、それぞれ、軸方向他端側に向かって漸次拡径した多角円錐筒形又は円錐筒形の胴体部1a1、1b1、1c1を有し、胴体部1a1、1b1、1c1の平均直径(最大直径と最小直径との平均値)が、軸方向他端側に位置するものほど大きくなっている(1a1<1b1<1c1)。粉粒体粒子に対するコーティング処理の初期段階の処理を行う処理室1aは、胴体部1a1の平均直径が最も小さいため、処理室1a内での粉粒体層Mの層高さを相対的に小さくして所定の処理(第1被覆層の形成)を行うことができる。これにより、粉粒体粒子が脆い物性を有するものであっても、重力等の影響により割れや欠けが発生することが低減される。処理室1aで第1被覆層が形成された粉粒体粒子は、粒子径がやや大きくなった状態で処理室1bに移送されて所定の処理(第2被覆層の形成)が行われるが、処理室1bは、胴体部1b1の平均直径が処理室1aよりも大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1b1の周速は処理室1aよりも大きくなる。そのため、処理室1bでは、スプレーノズル5bによるスプレー液の噴霧速度を処理室1aよりも大きくして、効率的な処理を行うことができる。また、処理室1bで第2被覆層が形成された粉粒体粒子は、粒子径が更に大きくなった状態で処理室1cに移送されて所定の処理(第3被覆層の形成)が行われるが、処理室1cは、胴体部1c1の平均直径が処理室1bよりも大きいため、回転数が同じであっても、胴体部1c1の周速は処理室1bよりも大きくなる。そのため、処理室1cでは、スプレーノズル5cによるスプレー液の噴霧速度を処理室1bよりも更に大きくして、効率的な処理を行うことができる。その他の事項は、第1の実施形態のコーティング装置Aに準じるので、重複する説明を省略する。
【0041】
図15は、第10の実施形態に係るコーティング装置C1示している。この実施形態のコーティング装置C1において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第9の実施形態のコーティング装置Cに準じるので、重複する説明を省略する。
【0042】
図16及び図17は、第11の実施形態に係るコーティング装置C2を示している。この実施形態のコーティング装置C2において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、金属板等からなるカバー6によって外周側から覆われている。カバー6は、ケーシング2の収容室2a、2b、2cの内部にそれぞれ固定的に配設されたカバー部6a、6b、6cからなり、カバー部6a、6b、6cは、それぞれ、給気ダクト4a、4b、4c及び排気ダクト3a、3b、3cと連通している。給気ダクト4a(4b、4c)からカバー部6a(6b、6c)内に供給された熱風等の処理気体は、胴体部1a1(1b1、1c1)の通気部から処理室1a(1b、1c)内に入り、処理室1a(1b、1c)内の粉粒体層Mを通過して、排気ダクト3a(3b、3c)に排気される。その他の事項は、第9の実施形態のコーティング装置Cに準じるので、重複する説明を省略する。
【0043】
図18は、第12の実施形態に係るコーティング装置C3示している。この実施形態のコーティング装置C3において、回転ドラム1(処理室1a、1b、1c)は、水平方向に対して所定角度で傾斜した軸線Xを有している。回転ドラム1の軸線Xが傾斜していることにより、処理室1aから処理室1b、処理室1bから処理室1cへの粉粒体粒子の移送及び処理室1cから外部への粉粒体製品の排出がより円滑に行われる。その他の事項は、第11の実施形態のコーティング装置C2に準じるので、重複する説明を省略する。
【0044】
図19及び図20は、図7及び図8に示す第5の実施形態に係るコーティング装置Bのより具体的な構成例を示している。回転ドラム1の処理室1a、1b、1cは、それぞれ、ケーシング2の収容室2a、2b、2c内で、支持ローラ7により回転自在に支持される。同図に示す構成例では、処理室1a、1b、1cの胴体部1a1、1b1、1c1の軸方向両端部に断面逆L字形の支持部材8を固定し、支持部材8の軸線Xと平行な円筒部8aの外周を支持ローラ7で支持するようにしている。支持ローラ7はローラ軸7aに軸受で回転自在に支持され、ローラ軸7aはケーシング2に固定された支持部材7bに支持される。
【0045】
収容室2aと収容室2bを仕切るケーシング2の隔壁21と支持部材8との間は、シール部10によってシールされる。図19(b)に拡大(Z部の拡大)して示すように、この構成例において、シール部10は、支持部材8の円筒部8aの外周に軸方向に離隔した状態で固定された一対の環状のシールリング10aと、隔壁21の内周に固定された環状のシールリング10bとを備え、一対のシールリング10a、シールリング10b及び円筒部8aの外周とでラビリンスシール(非接触シール)を形成する。収容室2bと収容室2cを仕切るケーシング2の隔壁21と支持部材8との間も、同様の構成のシール部10によってシールされる。
【0046】
処理室1aの軸方向他端側の開口部1a2と処理室1bの軸方向一端側の端壁1b3との間は、シール部11によってシールされる。図19(a)に拡大(Y部の拡大)して示すように、この構成例において、シール部11は、開口部1a2の外周に軸方向に離隔した状態で固定された一対の環状のシールリング11aと、処理室1bの端壁1b3の内周に固定された環状のシールリング11bとを備え、一対のシールリング11a、シールリング11b及び開口部1a2の外周とでラビリンスシール(非接触シール)を形成する。処理室1bの軸方向他端側の開口部1b2と処理室1cの軸方向一端側の端壁1c3との間も、同様の構成のシール部11によってシールされる。
【0047】
収容室2aの外壁22と処理室1aの軸方向一端側の開口部1a3との間は、シール部12によってシールされる。この構成例において、シール部12は、上述したシール部10やシール部11と同様の構成のラビリンスシールである。収容室2cの外壁22と処理室1cの軸方向他端側の開口部1c2との間も、同様の構成のシール部12によってシールされる。
【0048】
また、処理室1a、1b、1cには、処理室1a、1b、1cの逆転に伴い、処理室1a、1b、1c内の粉粒体粒子を案内して軸方向他端側に移送する移送部材20、21、22がそれぞれ設けられている。移送部材20は、処理室1aの内壁に突出状に設けられ、この構成例では、処理室1aの胴体部1a1から軸方向他端側の傾斜状の端壁部1a4を経て開口部1a2に至る形態を有している。移送部材20は、少なくとも胴体部1a1から端壁部1a4に亘る部分が軸線Xに対して所定方向に傾斜しており、これにより、処理室1aの逆転時に、処理室1a内の粉粒体粒子が移送部材20に沿って開口部1a2の側に流れて処理室1bに移送される。移送部材21も、移送部材20と同様に、処理室1bの内壁に突出状に設けられ、この構成例では、処理室1bの胴体部1b1から軸方向他端側の傾斜状の端壁部1b4を経て開口部1b2に至る形態を有している。移送部材21は、少なくとも胴体部1b1から端壁部1b4に亘る部分が軸線Xに対して所定方向に傾斜しており、これにより、処理室1bの逆転時に、処理室1b内の粉粒体粒子が移送部材21に沿って開口部1b2の側に流れて処理室1cに移送される。移送部材22も、移送部材20と同様に、処理室1cの内壁に突出状に設けられ、この構成例では、処理室1cの胴体部1c1から軸方向他端側の傾斜状の端壁部1c4を経て開口部1c2に至る形態を有している。移送部材22は、少なくとも胴体部1c1から端壁部1c4に亘る部分が軸線Xに対して所定方向に傾斜しており、これにより、処理室1cの逆転時に、処理室1c内の粉粒体粒子が移送部材22に沿って開口部1c2の側に流れて回転ドラム1の外部に移送される。また、これらの移送部材20、21、22は、処理室1a、1b、1cの正転時に、粉粒体粒子を混合攪拌するバッフルとしても機能する。
【0049】
移送部材20、21、22の胴体部1a1、1b1、1c1に対応する部分の軸方向長さは、処理室1a、1b、1cの内部に配置されるバッフル(攪拌羽根)との協働関係等や、処理室1a、1b、1cの内部にその他の案内部材を配置する場合は、該案内部材との協働関係も考慮して、処理室1a、1b、1c内の粉粒体粒子が効果的に移送されるように適宜の寸法に設定すれば良い。この点から、移送部材20、21、22の胴体部1a1、1b1、1c1に対応する部分は、胴体部1a1、1b1、1c1の軸方向全領域に亘って延在する場合もあるし、省略される場合もある。
【0050】
この構成例における回転ドラム1の処理室1a、1b、1cの支持構造、シール構造及び粉粒体粒子の移送構造は、図1及び図2に示す第1の実施形態に係るコーティング装置A、図3に示す第2の実施形態に係るコーティング装置A1、図4及び図5に示す第3の実施形態に係るコーティング装置A2、図6に示す第4の実施形態に係るコーティング装置A3、図9に示す第6の実施形態に係るコーティング装置B1、図10及び図11に示す第7の実施形態に係るコーティング装置B2、図12に示す第8の実施形態に係るコーティング装置B3、図13及び図14に示す第9の実施形態に係るコーティング装置C、図15に示す第10の実施形態に係るコーティング装置C1、図16及び図17に示す第11の実施形態に係るコーティング装置C2、図18に示す第12の実施形態に係るコーティング装置C3にも同様に適用できる。
【0051】
また、以上に説明した実施形態に係るコーティング装置において、ケーシング2を収容室2a、2b、2cに区画することなく、処理室1a、1b、1cに対して共通の収容室とし、この共通の収容室に1本又は複数本の給気ダクトから処理気体を供給する構成とすることにより、処理室1a、1b、1cに対する給気を共通化しても良い。また、処理室1a、1b、1cからの排気を共通化することも可能である。
【0052】
また、処理室1a、1b、1cにおいて、スプレーノズル5a、5b、5cから噴霧するスプレー液は、相互に異なる種類のものであっても良いし、スプレーノズル5a、5b、5cのうち少なくとも2つのスプレーノズルから噴霧するスプレー液は、相互に同じ種類のものであっても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 回転ドラム
1a、1b、1c 処理室
3a、3b、3c 排気ダクト
4a、4b、4c 給気ダクト
5a、5b、5c スプレーノズル
7 移送部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラムの内部に収容された粉粒体粒子に対して、液材の添加と処理気体の通気を含む処理を施して被覆層を形成するコーティング装置において、
前記回転ドラムは、軸線方向に沿って区画された複数の処理室を備えており、粉粒体粒子は軸方向一端側の前記処理室から軸方向他端側の前記処理室に順次に移送されて所定の処理を施され、
前記複数の処理室は、それぞれ個別に正転及び逆転可能であり、
前記各処理室は、該処理室内で粉粒体粒子の処理を行うときは正転駆動され、該処理室内での粉粒体粒子の処理が終了したときに逆転駆動され、該処理室内の粉粒体粒子を軸方向他端側に隣接する前記処理室又は前記回転ドラムの外部に移送することを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記処理室の逆転に伴い、該処理室内の粉粒体粒子を案内して軸方向他端側に隣接する前記処理室又は前記回転ドラムの外部に移送する移送部材が前記各処理室に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記複数の処理室に対して、それぞれ個別に前記処理気体の通気が行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記複数の処理室に、それぞれ前記液材を噴霧するスプレーノズルが配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記複数の処理室は、それぞれ多角筒形又は円筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の前記処理室の胴体部の直径が、軸方向一端側の前記処理室の胴体部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のコーティング装置。
【請求項6】
前記複数の処理室は、それぞれ軸方向他端側に向かって漸次拡径した多角円錐筒形又は円錐筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の前記処理室の胴体部の平均直径が、軸方向一端側の前記処理室の胴体部の平均直径より大きいことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のコーティング装置。
【請求項7】
前記回転ドラムの軸線が水平方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のコーティング装置。
【請求項1】
回転ドラムの内部に収容された粉粒体粒子に対して、液材の添加と処理気体の通気を含む処理を施して被覆層を形成するコーティング装置において、
前記回転ドラムは、軸線方向に沿って区画された複数の処理室を備えており、粉粒体粒子は軸方向一端側の前記処理室から軸方向他端側の前記処理室に順次に移送されて所定の処理を施され、
前記複数の処理室は、それぞれ個別に正転及び逆転可能であり、
前記各処理室は、該処理室内で粉粒体粒子の処理を行うときは正転駆動され、該処理室内での粉粒体粒子の処理が終了したときに逆転駆動され、該処理室内の粉粒体粒子を軸方向他端側に隣接する前記処理室又は前記回転ドラムの外部に移送することを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記処理室の逆転に伴い、該処理室内の粉粒体粒子を案内して軸方向他端側に隣接する前記処理室又は前記回転ドラムの外部に移送する移送部材が前記各処理室に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記複数の処理室に対して、それぞれ個別に前記処理気体の通気が行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記複数の処理室に、それぞれ前記液材を噴霧するスプレーノズルが配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記複数の処理室は、それぞれ多角筒形又は円筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の前記処理室の胴体部の直径が、軸方向一端側の前記処理室の胴体部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のコーティング装置。
【請求項6】
前記複数の処理室は、それぞれ軸方向他端側に向かって漸次拡径した多角円錐筒形又は円錐筒形の胴体部を有し、軸方向他端側の前記処理室の胴体部の平均直径が、軸方向一端側の前記処理室の胴体部の平均直径より大きいことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のコーティング装置。
【請求項7】
前記回転ドラムの軸線が水平方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のコーティング装置。
【図19】
【図20】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−183528(P2012−183528A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29435(P2012−29435)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]