説明

コードレス記録のための装置と方法および3個の特定ECGリードの電気通信伝送とそのプロセス

この発明はコードレス記録、電気通信伝送およびECG装置(1)と診断較正センター(2)を使っての3個の特定ECGリードの処理のための装置と方法とに関するものであって、標準ECGリードの再構築が行われる。再構築パラメータは前以って各患者についての較正により決定される。緊急の場合には、ECG装置(1)を使って患者(3)が3個の特定ECGリードの記録を行い、携帯電話(4)を使って診断較正センター(2)へ記憶されたデータを送信する。患者は記録とデータの送信を音・光表示器の助けを借りてトレースすることができる。診断較正センター(2)は受信携帯電話(7)と14電極を具えたECG装置(8)に接続されたコンピューター(6)を有している。10個の電極が標準12チャンネルECGケーブルにアースされており、残りの4個は3個の特定ECGリードの記録に使われかつECG装置(1)上の組合せ電極と同じに配列された組合せ電極を具えた別個のボックス(9)に纏められる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は医療電子の分野に関するものであり、より詳しくは心電計などの生体電気信号の測定記録装置に関するものである。
【0002】
この発明は商業電気通信ネットワークを介してのデータ回集、処理および伝送に係るものである。国際特許分類(IPC)によれば、この発明は治療目的での測定記録のための方法と装置とを規定するA61B 5/00のカテゴリーに入るものである。
【0003】
より特定すると、この発明は心電計などの身体または器官の生体電気的変化の測定または記録装置を規定するA61B 5/04のカテゴリーに入るものである。
【背景技術】
【0004】
どうであろうとも患者に自分自身で自分のECGを記録して商業電気通信ネットワーク(携帯または固定電話線)を介して遠隔診断センターの自分の心臓医に送ることを可能とする緊急心臓診断のためのシステムの概念はよく知られている。すなわち、受信されたECGおよび患者との会話に基づいて、心臓医は(a)緊急介入が必要か否か、(b)介入が患者自身で行うことができるかどうかまたは(c)患者の状態が緊急医療介入を必要とするか否かを決めることができ、対応する行動をとる。
【0005】
最初の症状の発生から医療処置までの最も危険な期間を最小にすることが重要である(Lenfant C.他:国立心臓病警告プログラムについての考察、Clin Crdiol.1990年8月13日(8 Suppl 8:VIII9−11)。上記の緊急心臓診断においてECG信号を記録し伝送するための種々の解決を与える多くの特許や製品がある。アメリカ特許第4,889,134号 Greenwold他、1989年;アメリカ特許第5,226,431号 Bible他、1993年;アメリカ特許第5,321,618号 Gessman、1994年;アメリカ特許第5,966,692号 Langer他、1999年;PCT WO 01/70105号A2、B.Bojovic、2001年;TELESCAN MEDICAL SYSTEMS社(TELESCAN MEDICAL SYSTEMS 26424 Table Meadow Road、Auburn、CA 9560)の「Instant Memory Recorder」;REYNOLDS MEDICAL社(REYNOLDS MEDICAL社 John Tate Road、Hertford SG13 7NW イギリス)の「CardioCall Event Recorder」、およびAEROTEL(AEROTEL社 5 Hazoref st. Holon 58856 イスラエル)の「Heartwiev P−12」。解決法は3通りのグループに分けられる。
【特許文献1】アメリカ特許第4,889,134号
【特許文献2】アメリカ特許第5,226,431号
【特許文献3】アメリカ特許第5,321,618号
【特許文献4】アメリカ特許第5,966,692号
【特許文献5】WO 01/70105号
【0006】
(1)第1のグループは1または2個の標準ECGリードの記録を送る解決法を含んでいる。このグループの移動レコーダーは非常に小さくかつ組合せ電極(ケーブルは必要ない)を具えている。これがこのグループの利点である。記録は患者の胸上に装置を簡単な保持によりまたは指を組合せ電極上に置くことにより行われる。患者にとって自分のECGの1または2個のリードを記録するのに迅速で簡単な方法である。
【0007】
しかし1または2個のECG信号の記録は律動不調を患っている患者(心臓病を患っている患者人口の約20%である)へのこれら装置の適用を制約する。このグループの典型的な装置としてはREYNOLDS MEDICALの「CardioCall Event Recorder」がある。
【0008】
(2)第2のグループは標準12−リードECGの直接記録と伝送を可能とする解決法であり、冠状動脈症診断を使って患者に適用されるものである。すなわちそのような患者にあっては緊急診断には完全標準12−リードECGが必要である。これら装置のあるものは全12標準ECGリード(通常10電極、つまりケーブル)の記録のためにフルセットの電極とケーブルとを装備している。記録の間患者は自分自身で自分の身体にタッチする。このグループの代表的なものとしては、TELESCAN MEDICAL SYSTEMの「12 Lead Memory ECG Recorder」がある。
【0009】
他の方法としてはより少数の電極を使うものであって、電極は記録中に移動される。例えば、4個の電極が使われている場合には、標準ECGリードI、II、III(患者の腕と脚)の位置に3個が配置され、4番目の電極は、胸リードV1−V6の記録のために、記録中6胸位置のそれぞれに移動されなけれがならない(アメリカ特許第4,889,134号、Greenwold他、1989年)。
【0010】
3個のケーブル接続電極と4個のボタン型組合せ電極)を使った方法はAEROTELによる装置「Heartwiev P−12」に見られる。12−リードの記録は3通りのステップで行なわれる。リードD1、D2、D3、aVR、aVL、aVF、V1、V2は第1のステップで記録される。V3、V4は第2ステップ、V5、V6は第3ステップである。
【0011】
このグループの共通の不利な点は比較的複雑でありかつ記録作業が長いことであり、自分で行うには不便である点である。特に心臓病を患っている患者にはそうである。また電極の位置決めが正確でないので、顕著なエラーが起き易い。
【0012】
(3)第3のグループはより少数の特定リードが記録される解決法であり、爾後この記録に基づいて、全12標準ECGリードが計算再構築される。12標準ECGリードおよび/または4個の電極を使って得られた記録特定リードに基づいたベクトル心電図のx,y,zリードの再構築の方法はアメリカ特許第4,850,370号(G.E.Dower、1989年)に記載されている。この方法は電気的な心臓活動の双極子近似に基づいていて、寸法が3x12で経験的に決定される行列定数の普遍的な変換行列Tを使用する。
【特許文献6】アメリカ特許第4,850,370号
【0013】
従来のECGリード
【数1】

は変換行列Tに特殊リード
【数2】

において記録された信号を乗算することにより得られる。全ての患者のための普遍的な変換行列は患者個々の特性についての情報を含んでいないので、これが標準ECGリード信号の再構築において大きなエラーを来すのである。
【0014】
個々の変換行列を導入することによるこの方法の改善についてはScherer、J.A.他によるJournal of Electrocardiology,v22,Suppl,pp,128,1989年があり、アメリカ特許第5,058,598号(J.M.Niklas他、1993年)において応用されている。そこでは各患者のための個別変換行列の手段が変換行列定数のセグメント計算とともに提案されている(ECG信号がセグメントに分割され、各セグメントのための定数が個々に計算される)。
【非特許文献1】Scherer、J.A.他によるJournal of Electrocardiology,v22,Suppl,pp,128,1989年
【0015】
個々の変換行列により標準ECGリード信号を再構築するということは、各患者について基本的な(較正)記録をすることが必要だということを意味しており、これが行列定数計算に使用される。普遍的変換行列を使う方法に比べて、この解決法によるエラーは顕著に低減される。両方法の主たる欠点は提案された電極配列と共に記録にケーブルを必要とする点であり、これは自己適用、特に心臓病を患っている患者には非常に不便である。
【0016】
標準ECGリードの再構築が個別変換行列を使って行われる方法もある(Scherer,J.A.他、Journal of Electrocardiology,v22,Suppl,pp.128,1989年)。しかし組合せ電極を具えた移動ECG装置、つまりケーブルが使われないこの方法はPCT特許 WO 01/70105号A2、B.Bojovic、2001年に開示されている。
【0017】
この装置は迅速で容易な特定ECGリードの記録と個別変換行列を用いた12標準ECGリードの再構築を可能としている。しかし組合せ電極の使用に起因する電極の配列における制約により、患者の身体上への電極の最適な配列を不可能としており、信号再構築におけるエラーが顕著となる。
【0018】
全3グループに見られる追加的な問題は、記録中におけるECG信号の基線迷走が起きることである。第3のグループの装置にとっては、特定リードの記録中での基線迷走は12標準ECGリードの再構築の手順における主たる診断エラーを齎すので、この影響は特に好ましくないのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
この発明は、コードレス記録、電気通信伝送および3個の特定ECGリードの処理のための装置と方法の構築問題を解決しようとするものである。これは組合せ電極を具えた移動ポケット装置の使用を示唆するものであって、その内3個の電極は制御ユニットに接続された増幅器のアクティブ入力端に接続されている。その内の1個はパッシブであり、1個はアースに接続されている。
【0020】
正確に定義された記録手順、伝送と処理とにより、この発明は装置を使って迅速・簡単で正確なコードレス自己記録(患者自身による)、3個のECGリードの伝送、標準12リードECG記録の取得を可能とするものである。
【0021】
この処理の間、12リードECG記録は満足な精度をもって再構築され、電極の誤った位置決めに起因するエラーの可能性を回避し、記録中の所謂基線迷走に起因する主たる診断エラーも回避するのである。装置の適用は、心臓虚血(冠動脈疾患−CAD)の診断とともに、心臓病の広範囲に可能とされる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この発明はコードレス記録、電気通信伝送および3個の特定ECGリードの処理のための方法と装置を提供するものである。3個の特定のECGリードの記録は移動装置によって行なわれ、該移動装置は厳密に定義された組合せ電極の配列を有しており、リモートコンピューターへの伝送の後の記録は標準ECGリードの全12信号の再構築を可能とするものである。
【0023】
かくして組合せ電極を具えた装置の使用の容易さが高記録精度と組み合わされる。これは今まで記録にケーブルを使用した装置でのみ可能であった。該システムは静的な診断較正センターと組合せ電極を具えた移動ECG装置を有している。診断較正センターはコンピューターを対応するソフトウェアと一緒に有しており、コンピューターは携帯電話と14電極を具えた較正ECG装置とに接続されている。
【0024】
較正装置は患者の12標準および3個の特定ECGリードの同時記録に使用される。特定リードの記録は、患者が組合せ電極を具えた移動ECG装置で記録している間に自分自身を使うようにして行われる。記録されたデータに基づいて、患者の変換行列が計算されてデータベースに記憶される。取得された行列は電話を介して患者が送信する毎に12標準ECGリードの計算に使われる。3個の特定の記録はリードは組合せ電極を具えた移動ECG装置を使って自分自身で行われる。
【0025】
3個の特定のリードの記録を使っての12標準ECGリードの再構築の精度は、移動装置中での厳密に定義された組合せ電極の配列と記録の特殊な方法により達成される。再構築のアルゴリズムは、心臓筋肉の分散された電気的活動が低伝導環境に埋没された時間変化電気双極子(心臓双極子)により近似できる、という仮定に基づいている。
【0026】
心臓の双極子は3個の非共通平面突起により定義されるベクトルである。であるから3個の非共通平面方向に対応するいずれかの3個の点、つまり同じ面上にない3個のECGリード、での電位の記録に基づいて決定できる。一旦心臓ベクトルが決定されたら、いずれかの点、いうなれば12標準ECGリード、における電位は計算するのが容易である。
【0027】
心臓双極子の計算は不要である。記録された特定リードと標準ECGリードとの間の直接接続が代わりに確立できる。これにより標準ECGリードは、記録された特定のリードと変換行列を定義する係数との、線型組合せとして得られる。しかしエラー源の詳細な分析とその低減なしでのこの解決法の直接応用では再構築の結果が比較的乏しい。分析によると、考慮に入れなければならない2個の主要ななエラー源がある。
【0028】
(a)モデルエラー。3個の特定リードの記録に基づく標準ECGリードの再構築システムは心臓の電気的活動の双極子表現に基づいている。しかし心臓の双極子は分散心臓電気活動の多極子拡張における最初のターム(term)であり、この近似は心臓から充分な距離にある記録点についてのみ有効である。心臓に近い点にあっては、多極子拡張における高いオーダータームの存在の故に、電位が非双極子含有により顕著に影響されるのである。
【0029】
(b)変換行列計算エラー。変換行列Tの実際的な計算は12標準ECGリード
【数3】

と3個の特殊リード
【数4】

の同時記録とそれに続く最小二乗法による方程式
【数5】

の解により行われる。電位の記録におけるエラーは変換行列係数の計算のエラーを招く。分析によると、特定リード記録点のベクトルが直交ならば、該エラーは最小となるだろう。
【0030】
最後に、モデルエラー(a)と変換行列計算エラー(b)とを考慮に入れて、全エラーを最小にするためには、特定リード記録のための組合せ電極の配列に関して2通りの要求がある。
【0031】
第1の要求は特定リードの電極位置をできるだけ心臓から離すことである。第2の要求は、記録点の位置のベクトルができるだけ直交に近くなるように、電極を配列することである。組合せ電極を具えた、つまりケーブルなしで、移動ECG装置を使って特定リードの記録を行う場合には、両要求を同時に満足することはできない。
【0032】
ここで提案される解決は、組合せ電極を具えた移動ECG装置の使用により課せられる制約の範囲内で上記の要求を最も満たす最適構造である。移動ECG装置は、2個の電極が左右の手の指に接触できしかも2個の電極が患者の胸に同時に接触するように設計される。患者の手は心臓(電気的活動の源として)から2個の記録点を離間させる柔軟な要素として使われる。これに際しては全3個の特定リードの記録のための基準点として右手の指に接触する電極を使用する。
【0033】
患者の胸と電気的に接触している電極は患者の胸上の限られた領域内に定められた位置にセットされる。このように電極位置を配列しかつ基準点を選ぶことにより、モデルエラー(a)と変換行列計算エラー(b)の最適最小化が達成された。
【0034】
特定及び標準ECGリードの信号記録におけるさらなる問題は記録された信号の基線迷走の影響である。全ての種類のECG装置を使ってのECG信号の記録中にこの問題は起きるものであるが、移動ECG装置の場合にはより顕著である。これは記録状態がより困難だからであり、特に患者が自分のECGを記録することを意図した装置では困難である。
【0035】
記録された特定リードの再構築により標準ECGリードを取得するシステムが関係する場合には、特定リードの記録中の基線迷走問題の除去はシステムの適切な機能のためには非常に重要である。この発明は組合せ電極を具えた移動ECG装置による特定リードの記録中での基線迷走の制御を、記録処理を自動的に制御・管理するデジタル制御ユニットにより、確立するものである。
【0036】
装置を記録状態に入れた瞬間から前に特定された範囲に基線の信号が入る瞬間まで特徴のある音信号が放出される。信号の緩和時間により規定される次の期間に他の特徴のある音信号が放出されて、記録がまもなく始まるであろうことを患者に報せるのである。記録それ自体は第3の特徴ある音信号で表示される。作業中いずれかの段階で顕著な基線迷走が起きると、作業が始めから反復される。かくして患者は特定リードの高品質記録を送信することができ、これにより標準ECGリードの正確な再構築が可能となる。
【0037】
上記した組合せ電極の配列、その位置決め、記録された信号の基線迷走を回避する上記のシステムは標準ECGリードの再構築におけるエラーを最小にし、記録の精度を標準ECG装置と同じにする。組合せ電極を具えた装置の使用の容易さが記録のケーブルを使用する装置の高い精度と組み合わされるのである。
【発明の効果】
【0038】
上記したような記録の方法、電極配列および位置決め、および記録の制御手順により標準12ECGリードの高正確再構築のための条件を与えるものである。かくしてこの発明は組合せ電極を使用した装置の使用の簡単さと記録にケーブルを使用した装置の高精度とを組み合わせたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1に示すのは移動ECG装置1で3個の特定ECGリードを記録しかつそれらを診断較正センター2に送信する装置である。診断較正センター2では受信した特定リードに基づいて標準ECGリードのコンピューター使用再構築が行われる。該再構築を行うには、前の較正により各患者についての対応する再構築パラメータを決定する必要がある。
【0040】
緊急の場合の3個の特定のリードの記録はECG装置1を使って患者3により行われる。患者は携帯電話4により記憶されたデータを診断較正センター2におくる。該携帯電話は通信ケーブル5を使ってECG装置1に接続される。音・光表示器があって、データの記録・送信プロセスを患者がモニターするのを助ける。診断較正センター2は適宜なソフトウェアを含んだコンピューター6を装備しており、該コンピューターは受信携帯電話7と14電極を具えたECG装置8とに接続されている。
【0041】
10個の電極が12−リードECGケーブルに纏められており、残りの4個は3個の特定ECGリードの記録に使われかつ別個のボックス9に纏められている。組合せ電極はECG装置1における電極と全く同じに配列されている。
【0042】
この実施例では、携帯電話4、7を介してのデータ送信が示されているが、データ伝送が固定電話線を使ってモデムの助けにより行われても、またはECG装置1と携帯電話4との間の通信にケーブル5の代わりにコ−ドレス通信が使われても、方法そのものは変わらない。
【0043】
較正作業に際して、最初のステップは較正装置を使っての12標準および3個の特定ECGリードの同時記録である。
【0044】
第2のステップにおいては、コンピューター6上の対応するソフトウェアによる再構築パラメータの決定が行われる。パラメータ計算のためのソフトウェアは最小二乗偏差法の応用に基づいている。再構築パラメータは変換行列として組織されており、標準および特定ECGリード間の線型変換を定義している。
【0045】
各患者の変換行列は別個に計算されて、コンピューター6のメモリーのデータベースに記録される。爾後コンピューター6のソフトウェアの助けにより、この行列は、緊急の場合に患者自身により記録されて携帯電話4を介して診断較正センター2に送られた3個の特定のリードに基づいて、12標準ECGリードの再構築に使われる。
【0046】
コンピューター6上のソフトウェアにより、コンピューターモニターおよび/またはプリンター上に再構築ECGリードが表示される。この作業を正確に行うには、ECG装置8に接続されたボックス9上の電極が移動装置1中の電極と同じ配列であることが必要である。また較正中の患者の身体上での電極の位置決めは緊急の場合における移動装置を使った記録中の電極の位置決めと同じであることが必要である。
【0047】
ECG装置1中の組合せ電極の配列の構成を図2に示す。5個の組合せ電極があり、そのうち2個(電極AとB)は装置の前側に位置しており、3個(電極C、D、E)は装置の後側に位置している。前側の押ボタン10はデータの記録と送信プロセスに使われる。
【0048】
患者3の胸上へのECG装置1の位置決めと記録作業を図3に示す。該装置は患者の胸上に縦に位置決めされ、これにより電極C、D、Eが患者の胸に同時に接触する。記録の間装置は右手の指で電極A上に保持され、左手の指は電極B上に保持される。
【0049】
図4にECG装置1と増幅器入力点における記録電極の接続構成を示す。装置の電気的部分は増幅ユニット11とデジタル制御ユニット12とから構成されている。増幅ユニット11は3個の増幅器(111〜113)を有しており、3個の特定リードの信号を増幅する。
【0050】
右手と電気的接触している電極Aは、3個の全ての増幅器つまり記録リードの共通基準点を表わすように、接続されている。電極B、C、Dは増幅器111〜113のアクティブ記録点に接続されている。電極Eは3個の全ての増幅器の共通アースに接続されている。かくして電極Aは残りの電極B、C、Dの電位を記録する基準(パッシブ)点を表わしている。
【0051】
方法が適切に機能するためには、患者の身体上の特定リード記録点の位置が較正プロセスおよび再構築がそれに基づいて記録される間におけるものと同じであることが必要である。これには、図2に示すECG装置1上での電極の配列が較正装置のボックス9上での電極の配列と同じであることが必要である。
【0052】
また図3に示す記録手順がECG装置1とECG装置8を使うとき、つまりボックス9の記録電極を位置決めするときと同じに行われることが必要である。基本配列(A−右手、B−左手、C、D、E−胸)に加えて、同じ患者について較正中の胸上の位置が移動装置を使っての記録中の位置になるべく近く保たれることが重要である。これにより電極位置の変化に起因する再構築エラーを最小にすることができる。
【0053】
装置の前側上での電極A、Bの配列は任意でよいが、図3に示すように(A−右手、B−左手)使用されることが必要である。電極Eの位置(共通アース)は任意にするかまたは電極の構成が他の方法で解決される場合は除外してもよい。ボックス9の場合には、従来は患者の右足上に位置された較正装置の残りの増幅器の共通アースを電極Eの代りに使うことができる。
【0054】
患者の胸との電気的接触を与えているアクティブ電極(C、D)は全システムの適正な機能のために不可欠である。図5にアクティブ電極の位置を図示する。アクティブ電極C、Dは左右の乳頭線13、14の間の領域で患者の胸上に配置される。これらの電極は、前正中線の方向と共に、30〜90度の角度θをなす(図6)。共通アースを表す電極Eの位置は任意であるが、記録位置において患者の胸に対して保持されて移動ECG装置の機械的安定性を与えるように選ぶのが便利である。
【0055】
ECG装置1の増幅ユニット11の作用は制御ユニット12により制御・管理される。ECG装置1を記録位置に置いた瞬間から、制御ユニット12は増幅器111〜113の出力端における信号レベルをチェックする。信号レベルが特定の作用範囲±2.5mVの外にある限りは、患者が容易に記憶できる特徴ある音信号が放出される。
【0056】
信号レベルが前記の作用範囲に入った瞬間から他の特徴ある音信号が5秒間放出される。この信号は記録がすぐに始まることを患者に通報する。この記録遅れ時間(5秒)はほぼ増幅信号安定化の時定数により決り、かつ増幅器の周波数応答により左右される。
【0057】
第3の特徴ある音信号は記録プロセスそのものを示す。もし上記した手順のいずれかの段階で基線の迷走が起きたら、制御ユニット12が事象を探知して全手順が最初からくり返される。記録プロセスを制御する手順により、患者は特定リードの高品質記録を行なうことができ、標準ECGリードの正確な再構築が可能となる。
【0058】
増幅器の作用範囲の変更および記録遅れ時間が発明に影響を及ぼすことはない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明は心臓病診断医療の分野において広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】コードレス記録、電話通信送信および3個の特定ECGリードのための装置の斜視図である。
【図2】移動ECG装置上の組合せ電極の配列の斜視図である。
【図3】患者の胸上への移動ECG装置の位置決めと記録手順を示す図である。
【図4】組合せ電極を具えた移動ECG装置の斜視図である。
【図5】移動ECG装置の電気回路図である。
【図6】移動ECG装置、つまりその電極の患者の胸上への位置決めを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1、8: ECG装置
2 : 診断較正センター
3 : 患者
4、7: 携帯電話
5 : 通信ケーブル
6 : コンピューター
9 : ボックス
12 : 制御ユニット
13、14: 乳頭線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体の測定部位に配置するのに適しており、それにより所定の較正行列との組合せのための特定ECG信号を抽出してECGを構築する携帯装置であって、患者の胸の測定部位への電気的接触に適した第1と第2の組合せアクティブ電極と、患者の左手の測定部位への電気的接触に適した第3の組合せアクティブ電極とを含んでなる少なくとも3個の組合せアクティブ電極と、患者の右手の測定部位への電気的接触に適した組合せ基準電極とを有してなることを特徴とする携帯装置。
【請求項2】
測定部位において左右の乳頭線間に配置されかつ前正中線に対して約30〜約90度の角度で交差する線中に位置するように、第1と第2の組合せアクティブ電極が配列されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1と第2の組合せアクティブ電極が携帯装置の第1の側に配置され、第3の組合せアクティブ電極が携帯装置の第1の側と異なる側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1と第2の組合せアクティブ電極が携帯装置の第1の側に配置され、組合せ基準電極が携帯装置の第1の側と異なる側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
さらに組合せアース電極が設けられていて、測定部位において組合せアース電極が患者の胸と電気的接触していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第1と第2の組合せアクティブ電極と組合せアース電極とが全て携帯装置の第1の側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
さらに設けられている増幅ユニットが第1、第2および第3の増幅器を有しており、各増幅器が第1、第2および第3の組合せアクティブ電極との接続に適した第1の入力ノードと、組合せ基準電極との接続に適した基準ノードと、組合せアース電極との接続に適したアースノードを具えていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
さらに設けられている制御ユニットが第1、第2、第3の増幅器の出力を受け、かつ該出力が所定の範囲の内外いずれにあるかを表示することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
制御ユニットがECG記録状態の表示を与えることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
ECGが標準12−リードECGであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
携帯装置を具えた出先ユニットと診断センターとを有しており、該携帯装置は測定部位において患者の身体に装着するのに適していて、それにより所定の較正行列と結合するための特定ECG信号を抽出するものであり、さらに上記携帯装置が少なくとも3個の組合せアクティブ電極と組合せ基準電極とを有しており、アクティブ電極が測定部位において患者の胸への電気的接触に適した第1、2の組合せアクティブ電極と測定部位において患者の左手への電気的接触に適した第3の組合せアクティブ電極とを含んでおり、基準電極が測定部位において患者の右手への電気的接触に適しており、診断センターが出先ユニットと通信しかつ3個の組合せアクティブ電極からの信号を受信して、それらと所定の較正行列とから患者のECGを形成することを特徴とする患者のECG構築用診断システム。
【請求項12】
測定部位において左右の乳頭線間に配置されてかつ前正中線に対して約30〜約90度の角度で交叉する線中に位置するように、第1、第2の組合せアクティブ電極が配置されていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
第1、第2の組合せアクティブ電極が携帯装置の第1の側に配置され、第3の組合せアクティブ電極が携帯装置の第1の側と異なる側に配置されていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
第1、第2の組合せアクティブ電極が携帯装置の第1の側に配置され、組合せ基準電極が携帯装置の第1の側と異なる側に配置されていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
さらに設けられている組合せアース電極が、測定部位において、患者の胸と電気的接触するように配置されていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
第1、第2の組合せアクティブ電極と組合せアース電極とが全て携帯装置の第1の側に配置されていることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
さらに設けられている増幅ユニットが第1、第2、第3の増幅器を有しており、各増幅器が、第1、第2、第3の組合せアクティブ電極への接続に適した第1の入力ノードと、組合せ基準電極への接続に適した基準ノードと、組合せアース電極への接続に適したアースノードとを有していることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
さらに設けられている制御ユニットが第1、第2、第3の増幅器の出力を受け、かつ該出力が所定の範囲の内外いずれにあるかを表示することを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
制御ユニットがECG記録状態の表示を与えることを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
出先ユニットが診断センターと通信する通信ユニットを有していることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項21】
通信ユニットが移動電話装置であることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
通信ユニットがモデムであることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
ECGが標準12−リードECGであることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項24】
患者ECGを構築する方法であって、患者の身体の測定部位に第1〜第3の組合せアクティブ電極と組合せ基準電極とを有した携帯装置を配置し、第1、第2の組合せアクティブ電極から患者の胸から出される第1、第2の電気信号を抽出し、第3の組合せアクティブ電極から患者の左手から出される第3の電気信号を抽出し、組合せ基準電極から患者の右手から出される基準信号を抽出し、抽出された信号に対応する信号を診断センターに通信し、診断センターにおいて通信された信号を所定の較正行列と組み合わせて患者のECGを構築することを特徴とする患者ECG構築方法。
【請求項25】
測定部位において、第1、第2の組合せアクティブ電極が左右の乳頭線の間で胸に配置され、かつ前正中線に約30〜約90度の角度で交叉する線中に位置していることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
測定部位において、少なくとも患者の左右の手が患者の胸に配置された移動装置との電気的接触を構成するように、患者の両腕が折り重ねられることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
第1、第2の組合せアクティブ電極が携帯装置の第1の側に配置され、第3の組合せアクティブ電極が携帯装置の第1の側と異なる側に配置されていることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
第1、第2の組合せアクティブ電極が携帯装置の第1の側に配置され、組合せ基準電極が携帯装置の第1の側と異なる側に配置されていることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項29】
さらに第1〜第3の電気信号が所定範囲の内外のいずれにあるかの表示を与えることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項30】
さらにECG記録状態の表示を与えることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項31】
ECGが標準12−リードECGであることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項32】
電極配列と実質的に移動装置のそれと同じ増幅ノード配列とを有した較正装置を使って所定の較正行列が得られることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項33】
移動装置と同じ患者身体上の位置でかつ実質的に同じやり方である較正装置を使って所定の較正行列が得られることを特徴とする請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−502679(P2007−502679A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524127(P2006−524127)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/YU2004/000020
【国際公開番号】WO2005/018447
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(506056550)
【出願人】(506056561)
【出願人】(506056572)
【Fターム(参考)】