説明

コード巻き取り装置

【課題】 様々な配置態様で様々な箇所からコードを引き出すことができ、しかもこれを、シンプルな構造の共用部品により実現できるコード巻き取り装置を提供する。
【解決手段】 コード巻き取り装置20は、回転不能な取付軸21と、取付軸21に回転自在に支持されるコードリール22と、コードリール22に巻き付けられるコード23と、コードリール22の一方の側面に形成されたゼンマイバネ収納凹所24に収納されたゼンマイバネ25とを備える。ゼンマイバネ25は内端を取付軸21に係合させ、外端をコードリール22に係合させている。コードリール22には、巻き方向が互いに反対のゼンマイバネ25の外端に適合する2種類の係合部29a、29bが形成されている。巻き方向の異なるゼンマイバネ25を使い分けることにより、ゼンマイバネ25の蓄勢力によるコードリール22の回転方向を切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気掃除機などに用いられるコード巻き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内蔵電池でなく商用電源からの電力で駆動する電気掃除機は、室内を広く移動させるため、長いコードを必要とする。不使用時、長いコードをきちんと収納するため、電気掃除機にはゼンマイバネの力でコードを巻き取るコード巻き取り装置を配備するのが一般的である。
【0003】
電気掃除機は機種によってコード巻き取り装置の位置や姿勢が様々に変わり、コードの引き出し方向及び引き出し位置は一様には定まらない。場合によっては、巻き方向が逆のゼンマイバネを用いる必要も生じる。そこで、共用化された部品を使いながら、コードを上側から出したり、下側から出したりすることが可能なコード巻取り装置が提案されている。特許文献1に記載されたものがそれである。
【特許文献1】特開平11−335006号公報(第4頁−第5頁、図1−図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたコード巻き取り装置は、コードリール、回転軸、ゼンマイバネ、及びバネケースの連結関係を変化させ、また回転軸とバネケースのいずれを回転不能とするかによって上側引き出しと下側引き出しを切り替えるものであって、構造が複雑であり、部品コストや組立コストの上昇を避けがたい。本発明はこの点に鑑みなされたものであり、様々な配置態様で様々な箇所からコードを引き出すことができ、しかもこれを、シンプルな構造の共用部品により実現できるコード巻き取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するために本発明は、回転不能な取付軸と、この取付軸に回転自在に支持されるコードリールと、内端を前記取付軸に係合させ、外端を前記コードリールに係合させたゼンマイバネと、前記コードリールに巻き付けられ、引き出されるときのコードリール回転を通じて前記ゼンマイバネを蓄勢し、この蓄勢力を解放して得られるコードリール回転により巻き取られるコードとを備えたコード巻き取り装置において、前記ゼンマイバネの外端とこれを係合させるコードリール側の係合部とは、ゼンマイバネの巻き方向が特定方向であるときのみ係合可能な形状にするとともに、前記コードリールには、巻き方向が互いに反対のゼンマイバネの外端に適合する2種類の係合部を形成したことを特徴としている。
【0006】
この構成によると、コードリールにどちらの巻き方向のゼンマイバネでも係合させられるので、部品に手を加えることなく、コードリールをどちらの方向にでもゼンマイバネの蓄勢力で回転させることができる。しかも構造は至ってシンプルであり、故障の懸念がない。
【0007】
(2)また本発明は、上記構成のコード巻き取り装置が、電気掃除機の給電用に用いられるものであることを特徴としている。
【0008】
この構成によると、コードリールの配置される位置と、コードの引き出される位置に応じて、コードリールの付勢回転方向を任意に設定できるから、電気掃除機の多種多様な設計に対し、コード巻き取り装置は共通仕様のもの一つで間に合わせることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、コードリールをどちらの方向にでもゼンマイバネの蓄勢力で回転させることのできるコード巻き取り装置を、部品を共通化したシンプルな構成で実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図に基づき説明する。図1は電気掃除機の概略構成図である。電気掃除機1の掃除機本体10は電動送風機11を内蔵し、正面側に吸込口12を有する。吸込口12にはサクションホース13の一端が接続される。サクションホース13の他端には吸気管14が接続される。吸気管14はサクションホース13に接続される側の端にハンドル15を有し、他方の端に吸込口体16を接続する。吸込口12から電動送風機11に到る風路の中には前段集塵部17と後段集塵部18が配置される。前段集塵部17はサイクロン方式で粗塵を捕捉するものであり、後段集塵部18はフィルターユニット19で細塵を捕捉するものである。
【0011】
電動送風機11を駆動すると吸込口体16から気流が吸い込まれる。気流は吸気管14からサクションホース13を経て前段集塵部17に入り、そこで高速旋回して粗塵を遠心分離する。粗塵を分離した気流は後段集塵部18のフィルターユニット19で細塵を捕捉された後、電動送風機11に吸い込まれ、掃除機本体10に設けた図示しない排気口より排出される。前段集塵部17の容器に塵埃が溜まったときは容器を取り出して塵埃を捨てる。後段集塵部18のフィルターユニット19が目詰まりしたときはフィルターユニット19を取り出して目詰まりを解消する。
【0012】
掃除機本体10の内部には、電動送風機11に給電するコードを巻き取るコード巻き取り装置20が電動送風機11に並ぶ形で配設されている。最初に、従来のコード巻き取り装置がどのような構造を備えていたかを図9−図15に基づき説明する。
【0013】
図9に示すコード巻き取り装置20は4つの主要部品を備える。その1は掃除機本体10に回転不能に保持される取付軸21であり、その2は取付軸21に回転自在に支持されるコードリール22aであり、その3はコードリール22aに巻き付けられるコード23(図10参照)であり、その4はコードリール22aの一方の側面に形成したゼンマイバネ収納凹所24に収納されるゼンマイバネ25である。ゼンマイバネ25は内端を取付軸21に係合させ、外端をコードリール22aに係合させている。この他コード巻き取り装置20には、コード23を通じて供給される電流を取り出すスリップリングとブラシの組み合わせや、コードリール22aの巻き取り回転を止めるブレーキ装置も付属するが、これらは周知のものなので説明は省略する。
【0014】
図9に見られるように、ゼンマイバネ25は内端が直角に折り曲げられており、この折り曲げ部26を取付軸21のスリット27に係合させている。ゼンマイバネ25の外端にはコの字形のフック部28が形成されており、このフック部28を、ゼンマイバネ収納凹所24の1箇所に形成されたノーズ状の係合部29aに係合させている。ゼンマイバネ25の巻き方向は、図11に見られるように、フック部28を始点とした場合、時計方向である。このため、コードリール22aを反時計方向に回転させるとゼンマイバネ25に復元エネルギーが蓄勢される。ゼンマイバネ25に復元エネルギーが蓄勢された時点でコードリール22aのブレーキを解除すれば、ゼンマイバネ25は蓄勢力でコードリール22aを時計方向に回転させ、コード23はコードリール22aに巻き取られることになる。
【0015】
ゼンマイバネ25の巻き方向が上記のようであって、取付軸21が水平に配置されているものとすれば、ゼンマイバネ25に蓄勢するためのコード23の引き出し方向は、図12において矢印イか矢印ロのようになる。
【0016】
コードリール22aをそのまま裏返すことができれば、矢印イと左右対称方向にコード23を引き出し、また矢印ロと左右対称方向にコード23を引き出すことが可能になる。しかしながら、コードリール22aの片面(ゼンマイバネ収納凹所24のある側と反対側の面)にはスリップリングとブラシの組み合わせが置かれており、コードリール22aを裏返すと給電系統の設計をすべて見直す必要が生じるので、この方策は実現性に欠ける。そのため、コードリール巻き取り装置20の構成を図13−図15に見られるようにして、矢印イと左右対称方向に、また矢印ロと左右対称方向にコード23を引き出せるようにしている。
【0017】
図13に示すコード巻き取り装置20は、コードリール22aとは構造の異なるコードリール22bを有している。すなわちコードリール22bには、リール回転方向に関しノーズの突出方向が係合部29aと逆になった係合部29bが形成されている。係合部29bにゼンマイバネ25のフック部28を係合させようとしても、フック部28の向きが図11のままでは係合させられない。図14のようにゼンマイバネ25の表裏を逆転し、フック部28の向きを変える必要がある。すなわちコードリール22aの係合部29aにはゼンマイバネ25の巻き方向が図11の方向であるときのみフック部28が係合可能であり、コードリール22bの係合部29bにはゼンマイバネ25の巻き方向が図14の方向であるときのみフック部28が係合可能である。
【0018】
図14において、ゼンマイバネ25の巻き方向は、フック部28を始点とした場合、反時計方向である。このため、コードリール22bを時計方向に回転させるとゼンマイバネ25に復元エネルギーが蓄勢される。ゼンマイバネ25に復元エネルギーが蓄勢された時点でコードリール22bのブレーキを解除すれば、ゼンマイバネ25は蓄勢力でコードリール22aを反時計方向に回転させ、コード23はコードリール22aに巻き取られることになる。
【0019】
ゼンマイバネ25の巻き方向が上記のようであって、取付軸21が水平に配置されているものとすれば、ゼンマイバネ25に蓄勢するためのコード23の引き出し方向は、図15において、矢印ハか矢印ニのようになる。矢印ハは図12の矢印イと左右対称方向であり、矢印ニは図12の矢印ロと左右対称方向である。
【0020】
本発明は、コード巻き取り装置20において、図2に示す構造のコードリール22を用いた点が特徴である。すなわちコードリール22は、図12のコードリール22aの係合部29aと、図15のコードリール22bの係合部29bを一身に備える。
【0021】
このようにコードリール22には、巻き方向が互いに反対のゼンマイバネ25の外端に適合する2種類の係合部29a、29bが形成されている。従って、図11の巻き方向のゼンマイバネ25をゼンマイバネ収納凹所24に収納し、フック28を係合部29aに係合させて使用することもでき、図14の巻き方向のゼンマイバネ25をゼンマイバネ収納凹所24に収納し、フック28を係合部29bに係合させて使用することもできる。前者の場合、コードリール22を反時計方向に回転させるとゼンマイバネ25に復元エネルギーが蓄勢される。この条件に適合するコード23の引き出し方向は矢印イ、ロである。後者の場合、コードリール22を時計方向に回転させるとゼンマイバネ25に復元エネルギーが蓄勢される。この条件に適合するコード23の引き出し方向は矢印ハ、ニである。
【0022】
上記の意味するところは、コードリール22を構成要素とするコード巻き取り装置20は、ゼンマイバネ収納凹所24が掃除機本体10の左右どちらを向いていても、下側からのコード引き出しと上側からのコード引き出しを選択できるということである。つまり図3の構成のように電動送風機11が右側、コード巻き取り装置20が左側の配置であって、ゼンマイバネ収納凹所24が左側を向いている場合、図11の巻き方向のゼンマイバネ25を用いれば、掃除機本体10のコード引出口30は、図4に見られるように下側に形成されることになり、図14の巻き方向のゼンマイバネ25を用いれば、コード引出口30は図5に見られるように上側に形成されることになる。また図6の構成のように電動送風機11が左側、コード巻き取り装置20が右側の配置であって、ゼンマイバネ収納凹所24が右側を向いている場合、図14の巻き方向のゼンマイバネ25を用いれば、掃除機本体10のコード引出口30は、図7に見られるように下側に形成されることになり、図11の巻き方向のゼンマイバネ25を用いれば、コード引出口30は図8に見られるように上側に形成されることになる。
【0023】
このように、コードリール22にどちらの巻き方向のゼンマイバネ25でも係合させられるので、部品に手を加えることなく、ゼンマイバネ25の蓄勢力でコードリール22をどちらの方向にでも回転させることができる。
【0024】
またゼンマイバネ25の巻き方向について言えば、右巻きのゼンマイバネを裏返せば左巻きのゼンマイバネとして使用できるから、単一の設計のゼンマイバネ25を図3のコード巻き取り装置20にも図6のコード巻き取り装置20にも使用できる。すなわちゼンマイバネ25は汎用性を備えた部品としての位置づけが可能である。
【0025】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は電気掃除機などに用いられるコード巻き取り装置に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電気掃除機の概略構成図
【図2】コードリールの正面図
【図3】コード巻き取り装置の配置例を示す掃除機本体の上面図
【図4】図3の掃除機本体のコード引出口の配置例を示す後面図
【図5】図3の掃除機本体のコード引出口の異なる配置例を示す後面図
【図6】コード巻き取り装置の他の配置例を示す掃除機本体の上面図
【図7】図6の掃除機本体のコード引出口の配置例を示す後面図
【図8】図6の掃除機本体のコード引出口の異なる配置例を示す後面図
【図9】従来のコード巻き取り装置の正面図
【図10】図9のA−A断面図
【図11】ゼンマイバネの正面図
【図12】コードリールの正面図
【図13】従来の他のコード巻き取り装置の正面図
【図14】ゼンマイバネの正面図
【図15】コードリールの正面図
【符号の説明】
【0028】
1 電気掃除機
10 掃除機本体
11 電動送風機
13 サクションホース
14 吸気管
16 吸込口体
17 前段集塵部
18 後段集塵部
20 コード巻き取り装置
21 取付軸
22 コードリール
23 コード
24 ゼンマイバネ収納凹所
25 ゼンマイバネ
26 折り曲げ部
28 フック部
29a、29b 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転不能な取付軸と、この取付軸に回転自在に支持されるコードリールと、内端を前記取付軸に係合させ、外端を前記コードリールに係合させたゼンマイバネと、前記コードリールに巻き付けられ、引き出されるときのコードリール回転を通じて前記ゼンマイバネを蓄勢し、この蓄勢力を解放して得られるコードリール回転により巻き取られるコードとを備えたコード巻き取り装置において、
前記ゼンマイバネの外端とこれを係合させるコードリール側の係合部とは、ゼンマイバネの巻き方向が特定方向であるときのみ係合可能な形状にするとともに、前記コードリールには、巻き方向が互いに反対のゼンマイバネの外端に適合する2種類の係合部を形成したことを特徴とするコード巻き取り装置。
【請求項2】
電気掃除機の給電用に用いられるものであることを特徴とする請求項1に記載のコード巻き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−312518(P2006−312518A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135748(P2005−135748)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】