説明

コーヒーオイルの製造方法

【課題】従来のコーヒーオイルの欠点であるアロマ品質の悪さとコスト高を改善したコーヒーオイル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】焙煎コーヒー豆を粉砕し加水してコーヒーオイルを油滴として含むO/Wエマルジョンを形成させ、該O/Wエマルジョンを含む液を遠心分離してコーヒー粗オイルを得、該粗オイルに解乳化処理を施してコーヒーオイルを分離回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーオイル及びその製造方法に関する。より詳細には、焙煎コーヒー豆からコーヒー粗オイルを得、このコーヒー粗オイルから効率よく、簡便にコーヒーオイル(精油)を分離精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料、ゼリー、チューインガム、キャンディー等の食品、口中清涼剤、練り歯磨き、芳香剤、化粧品等の香粧品、医薬品、及びタバコ等に対して、好ましい香りを付与するために、植物精油が多用されている。植物精油は、一般に、水蒸気蒸留法、有機溶媒抽出法、超臨界抽出法、圧搾法などにより採油されている。
【0003】
例えば、コーヒーオイル(コーヒー精油ともいう)の場合、焙煎コーヒー豆から水蒸気蒸留法、圧搾法、超臨界流体抽出法などの抽出方法を用いて得られることが知られており、具体的には、コーヒー豆を2軸型エクストルーダーに装填し、加熱しつつ押圧してオイル成分を分離抽出するコーヒー有効成分の抽出方法(特許文献1)や、コーヒーを焙煎する工程と、焙煎した前記コーヒー豆を圧搾装置内において20℃〜80℃に保持しながら圧搾する工程と、前記コーヒー豆からオイル成分であるコーヒーオイルを分離する工程とを含むコーヒーオイルの製造方法(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−126935号公報
【特許文献2】特開2008−125483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の採油方法では、熱履歴が大きく香気成分の品質低下を伴うことがある、雑味成分が一緒に採取されることがある、採油時に大量の水と接触するために濁りが発生することがある、水や有機溶剤の存在により香味成分の力価低下を伴うことがあるなどの理由により、必ずしも品質的に満足できるコーヒーオイルを得ることができない。特に、焙煎コーヒー豆から精油を分離する場合、油細胞に蓄えられた精油を分離するのが困難であり、結果としてアロマ品質の悪さやコスト高を招くことになっていた。
【0006】
本発明の目的は、従来のコーヒーオイルの欠点であるアロマ品質の悪さとコスト高を改善することができる、コーヒーオイルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、焙煎コーヒー豆を粉砕して加水混合して遠心分離することによりO/Wエマルジョンのコーヒーオイル含有部(以下、「粗オイル」という)を得、このエマルジョンを解乳化して油相を分離回収することで簡便にコーヒーオイルが得られること、及び粗オイルの解乳化には凍結解凍が有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に限定されるものではないが、(1)〜(3)の製造方法を提供する。
(1)以下の工程;
焙煎コーヒー豆を粉砕し加水してコーヒーオイルを油滴として含むO/Wエマルジョンを形成させる工程1、
該O/Wエマルジョンを含む液を遠心分離してコーヒー粗オイルを得る工程2、
該粗オイルに解乳化処理を施す工程3、及び
油相を分離回収する工程4
を含む、コーヒーオイルの製造方法。
(2)工程3における解乳化処理が凍結解凍処理である、(1)に記載の方法。
(3)工程2における粗オイルが、焙煎コーヒー豆の湿式粉砕物にストリッピング処理を施した後のスラリーを三相分離して得られるオイル部である、(2)に記載の方法。
【0009】
別の側面によれば、本発明は(4)のコーヒーオイルを提供する。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の方法により得られるコーヒーオイル。
別の側面によれば、本発明は(5)のコーヒー製品を提供する。
(5)(4)に記載のコーヒーオイルを含有する、コーヒー製品。
【発明の効果】
【0010】
O/Wエマルジョンを解乳化させてコーヒーオイルを分離する本発明の方法では、分離された油がフロックになったり再びエマルジョン化したりすることがほとんどないので、煩雑な作業を要することなく、短時間で効率よくコーヒーオイルを製造することができる。
【0011】
また、凍結解凍による解乳化を用いた本発明の方法では、解乳化のための薬品添加を必要とせず、採油のための加温を必要としないので、非常にアロマ品質に優れたコーヒーオイルを製造することができる。さらに、特別な装置を要しない点でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、コーヒーオイルの製造方法を提供する。当該製造方法は、焙煎コーヒー豆を粉砕し加水して混合強攪拌し、水相中にコーヒーオイル(精油)を微細単量体相液滴として分散させる、すなわちO/Wエマルジョンを形成させる工程1と、工程1の液を遠心分離してコーヒー粗オイルを得る工程2と、前記粗オイルに解乳化処理を施す工程3と、油相を分離回収する工程4を含む。以下、それぞれの工程について好適な実施の形態について説明する。
【0013】
(O/Wエマルジョンを形成させる工程1)
本発明に使用されるコーヒー豆は、特に限定されず、焙煎したコーヒー豆であれば、いずれの方法によって得られたものでも良い。例えば、コーヒー豆の栽培樹種は、アラビカ種、カネフォラ種、リベリカ種などが挙げられ、品種としては、モカ、ブラジル、コロンビア、グァテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、キリマンジャロなどが挙げられる。
【0014】
コーヒー生豆の焙煎は、一般的な焙煎機(水平ドラム型焙煎機)を用いて行うことができ、また、焙煎方法は、加熱方法で分類すると、直火、熱風、遠赤外線、マイクロウェーブなどを用いることができる。また、焙煎度は、米国方式の8段階の呼称で、ライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティーロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストのいずれであっても用いることができるが、深く焙煎した方がコーヒーオイルが溶出し易いことから、焙煎コーヒー豆としては、シティーロースト以上に焙煎されたコーヒー豆を用いることが好ましい。なお、使用する豆は、産地・品種・焙煎度の異なるものを複数混合して使用することもできる。
【0015】
このような焙煎コーヒー豆を粉砕し加水して混合強攪拌し、水相中に精油を微細単量体相液滴として分散させることにより、O/Wエマルジョンを形成させる。焙煎コーヒー豆の粉砕は乾式粉砕、湿式粉砕のいずれによっても行うことができるが、水相中に精油を分散させるには湿式粉砕が効率的であり、また香気の飛散が防止されやすいことから好ましい。特に、湿式粉砕により焙煎コーヒー豆を粉砕する場合、粉砕時の温度上昇および香気飛散を防止するため、粉砕中に加水を続け、焙煎コーヒー豆と水の最終的な比率を目的とする比率になるように制御しながら粉砕することが好ましい。粉砕機として、例えばフィッツミル(FITZPATRICK社製)、コミトロール(アーシェル社製)などを挙げることができる。
【0016】
焙煎コーヒー豆の粉砕粒度について特に制限はないが、精油成分が溶出しやすい大きさまで細胞を破壊することが好ましい。この観点から、焙煎コーヒー豆を、平均粉砕粒度が0.1mm〜4mm程度まで粉砕するのが好ましく、0.1mm〜2mm程度まで粉砕するのがさらに好ましい。なお、粉砕コーヒー豆の平均粉砕粒度(粒径)は、例えばロータップ篩振とう機((株)タナカテック社製)を用いて測定することができる。
【0017】
焙煎コーヒー豆の粉砕物への加水には、水道水、イオン交換水、脱酸素水、純水、地下水などを使用することができ、これらの水に安定剤やpH調整剤などを添加して使用することもできる。コーヒー豆と水の比率(重量)は、好ましくは1:3〜1:100、より好ましくは1:5〜1:50、さらに好ましくは1:5〜1:20、特に好ましくは1:5〜1:10程度である。
【0018】
このようにして得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物と水の混合物を強攪拌して、水相中に精油を液滴として分散させる。攪拌条件は、O/Wエマルジョンが形成される条件であれば特に制限されない。また、撹拌条件は、攪拌羽根の大きさ等により条件が変わるので、攪拌条件を画一的に規定することはできないが、目安を示すと、例えばbamixモデル133を用いた場合、11600〜16000rpm、1〜20分間程度である。また、攪拌時の温度を30℃以上(好ましくは30〜60℃、より好ましくは30〜50℃、さらに好ましくは30〜45℃)に加温すると、粗オイルを含有する焙煎コーヒー豆と水の混合物の粘度が低下するので、より効率的に粗オイルを得ることができる。O/Wエマルジョンが形成されているかどうかの判断は、粗オイルを水に入れたときに容易に分散するかどうかで判断できる。
【0019】
本発明の工程1における焙煎コーヒー豆の粉砕物と水とを強攪拌して得られる混合物として、ストリッピング処理後のスラリーや水蒸気処理後のスラリーなどを用いることもできる。ここで、ストリッピング処理とは、熱源とスラリーを向流接触させて精留することにより、スラリー中の揮発性成分を気相に濃縮する処理をいい、その装置としては、SCC(Spinning Cone Column、フレーバーテック社製)などを例示できる。例えば、湿式粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物と水の混合物(スラリーともいう)に、ストリッピング処理や水蒸気蒸留を施してアロマ成分含有凝縮液を回収し、残ったスラリーを本発明の工程2以降の工程に供することにより、コーヒーオイルを得る。これにより、従来は廃棄されるのみであったストリッピング処理後の粗オイルを有効に利用することができる。
【0020】
(粗オイルを得る工程2)
工程1で得られたO/Wエマルジョンを含む液を遠心分離してコーヒーオイル含有部(粗オイル)を得る。遠心分離機としては、粗オイルを分離可能な機能を有するものであれば特に制限されず、バッチ式の遠心分離機や連続的に処理することができる三相分離機を用いることができるが、三相分離機を用いることが好ましい。このような遠心分離機として、CRPX918(アルファラバル社製)が例示できる。三相分離機を用いると、効率よくa)粗オイル、b)エキス、c)コーヒー残渣(不溶性微粒子、スラッジともいう)に分離することができ、目的とするa)粗オイルを簡便に分別することができる。遠心分離によって粗オイルを分離するときには、2000〜10000Gの遠心力を与えるのが好ましい。なお、浮上した粗オイルは、必要に応じてデカンテーションなどの公知の操作を行い、分離回収することができる。
【0021】
(O/Wエマルジョンを解乳化する工程3)
工程3では、工程2において回収された粗オイルのO/Wエマルジョンを解乳化して油分を分離することにより、清澄化されたコーヒーオイル(精油)を得る。解乳化の方法は特に制限されないが、コーヒーの粗オイルには、固形分、水分が多く含まれるために、電場をかけても、遠心分離等の物理的な力を加えても精油の分離は生じない、つまり解乳化が行われないことがわかっている。エタノールを加ることによって精油を抽出する方法があるが、精油がエタノールで希釈されることになり香気の力価が低下するため好ましくない。エタノールで抽出した後にエタノールを揮発させて精油成分のみを採油した場合にも、加温に伴い精油の香気成分が消失する懸念がある。
【0022】
本発明者らの検討によると、粗オイルのO/W型のエマルジョンに凍結解凍処理を施すことで、簡便に効果的に乳化破壊(解乳化)が生じることがわかった。このとき、エマルジョンが不安定となり、遠心力や静置などの分離を促す力を作用させることで油水分離が生じ、精油を簡単に分離できることが判明した。したがって、本発明の解乳化処理としては、凍結解凍処理を用いることが好ましい。
【0023】
凍結解凍処理において、その凍結条件は、粗オイル全体が凍結される条件であれば特に制限されない。過冷却を起こさずに、氷の結晶が成長する最大氷結晶生成帯(0〜−5℃)の通過時間を長くなるように凍結条件を設定すると、水相が凍結する際に氷の結晶が大きく成長して粗大化し、油滴同士が押さえつけられて部分合一を起こし、乳化破壊が起こり易くなると考えられる。したがって、好ましい凍結条件として、コーヒー粗オイルの中心温度が0℃から−5℃(最大氷結晶生成帯)を通過する時の凍結速度の下限が1℃/分(好ましくは0.5℃/分、より好ましくは0.1℃/分)となるような凍結条件を例示することができる。
【0024】
解凍条件にも特に制限はなく、凍結した粗オイル全体が溶解する条件であればよい。凍結により部分合一した油滴が油相の溶融によって合一を起こすことで、完全な乳化破壊が生じる。解凍は、空気解凍(自然解凍)、流水中での解凍、加温による解凍など、いずれの方法によって行ってもよい。解凍時間を短縮する必要がある場合、流水中で解凍したり、加温して解凍することが有効である。加温する場合、コーヒーオイルの品質劣化を防止するため、オイル部の中心部分の温度が50℃程度以下(好ましくは45℃程度以下、より好ましくは40℃程度以下)となるように加温するのが好ましい。また、減圧ニーダー等を使用して、解凍を促進させてもよい。
【0025】
(油相を分離する工程4)
工程3の解乳化によりエマルジョンが不安定となり、油相が上に水相が下に分離する。このまま静置して分離を促進してもよいが、遠心力を掛けて分離を促進するのが好ましい。遠心分離処理としては、2000〜10000G程度の遠心力を与えるのが好ましい。遠心分離後、油相と水相の界面が極めて明確に分離されるので、デカンテーションなどの公知の操作を行い、上層(油相)を容易に分離回収することができ、精製されたコーヒーオイル(清澄化コーヒーオイル)を簡便に得ることができる。
【0026】
このように、本発明の方法は、O/Wエマルジョンを生成させ、当該エマルジョンを解乳化してコーヒーオイルを採油することを特徴とする。オイル部分にその他の成分がコンタミしたり、好ましい態様の一つであるストリッピング処理で得られるエキス部分にオイル成分がコンタミすることがほとんどないので、非常に品質のよいコーヒーオイルや副産物としてのエキスを製造することができる。
【0027】
(コーヒー製品の製造方法)
本発明で得られるコーヒーオイルは、飲料、ゼリー、チューインガム、キャンディー等の食品、口中清涼剤、練り歯磨き、芳香剤、化粧品等の香粧品、医薬品、及びタバコ等に対して、好ましい香りを付与するための風味増強剤として用いられる。特に、本発明で得られるコーヒーオイルを長期保存可能な容器詰コーヒー飲料や水や湯で溶解して飲用する粉末コーヒー(可溶性コーヒー製品、インスタントコーヒーとも呼ばれる)などのコーヒー製品に添加して用いると、雑味や苦味を伴うことなく、コーヒーの好ましいコクや香りのみを増強することができ、淹れたてのコーヒーの味を再現したようなコーヒー飲料となる。
【0028】
コーヒーオイルの添加方法やコーヒーオイルを配合した食品の製造方法等、従来公知の方法を採用することができるが、コーヒーオイル含有飲料の製造方法について説明する。
コーヒー飲料の一般的な製造方法として例えば、焙煎したコーヒー豆を粉砕し、これを熱水で抽出して得た抽出液に糖液,牛乳,乳製品、その他の添加物を加えて調合した後、これを均質化、加熱殺菌、容器に充填し、最後に高温高圧(レトルト)殺菌して製品とする方法が挙げられる。本発明のコーヒーオイルを用いたコーヒー飲料の製造においても、基本的には常法に従って製造することができるが、コーヒーオイルがコーヒー飲料中で安定に存在するように、エマルジョン化した形態でコーヒー飲料に含有させることが重要である。
【0029】
コーヒーオイルのエマルジョン化は、コーヒーオイルに乳化剤、必要に応じて純水等を加えて混合して予備的に乳化したのち、ホモジナイザー等で高圧下でホモジナイズすることによって行われる。予備乳化したものを高圧ホモジナイザー処理してコーヒーオイルのエマルジョンを得、これをコーヒー飲料の調合液(コーヒー抽出液、牛乳・乳製品、砂糖、香料などを混合したもの)に添加してもよいし、予備乳化したものをコーヒー飲料の調合液と混合してから高圧ホモジナイザー処理してもよい。
【0030】
コーヒーオイルのエマルジョン化に用いられる乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレン脂肪酸エステル、レシチン、キラヤ抽出物等が挙げられる。予備乳化の条件は特に制限されないが、温度40〜70℃(好ましくは50〜60℃)、回転数2500〜3500rpm(好ましくは3000rpm)、10〜30分間(好ましくは15〜25分間)攪拌する操作を例示できる。また、高圧ホモジナイズ処理としては、圧力100〜250kgf/cm2(好ましくは100〜200kgf/cm2 )程度の操作を例示できる。
【0031】
コーヒーオイルの添加量は、コーヒーオイルの質(力価)や所望するコーヒー製品の香味により適宜設定すればよいが、通常、最終製品中におけるコーヒーオイルの濃度が10〜100ppm、好ましくは30〜50ppmとなるように添加する。
【0032】
このように得られるコーヒーオイルをエマルジョンの形で含有するコーヒー飲料の調合液を加熱殺菌し、容器に充填した後、さらに必要に応じてレトルト殺菌等を行ってコーヒーオイル含有飲料とする。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1.コーヒーオイルの製造
焙煎コーヒー豆(アラビカ種、L値約20)に5〜10倍量(重量比)の水を混合し、コミトロール(アーシェル社製)を用いて湿式粉砕してコーヒースラリーを得た。コーヒースラリをSCC(フレーバーテック社製)に通し、下部より出てきたスラリーをデカンタによりコーヒー粕部とエキス部に分割し、さらにエキス部を三相遠心分離に掛け、粗オイル部、清澄化エキス部、コーヒー微粒子部(スラッジ)の三相に分離した。
【0034】
粗オイル部を回収した後、10Lコンテナ等に詰め、−20℃の冷凍庫で24時間凍結処理を行った。完全に凍結したのを確認した後、粗オイルを取り出し、自然溶解により溶解した。完全に溶解したのを確認した後、遠心分離(6500rpm、30分)にかけ、油相を回収して清澄化コーヒーオイルを得た。物性評価を行ったところ、粘度(B型粘度計(BROOKFIELD社、DV-II+Pro)、測定温度25℃)は110mPa/sであり、濁度(LaMotte社、2020eTURBIDIMETER)は938NTUであった。
【0035】
また、このコーヒーオイルを各種温度(−20℃、5℃、23℃、37℃)で4週間保存し、その香味と外観を官能評価で、酸化の度合いを基準油脂分析試験法による酸化値の測定により評価した。結果を表1に示す。いずれの温度においても風味に大きな変化はなく、また酸化の度合いもほとんど変化せず、本発明で得られたコーヒーオイルが安定性に優れることが示唆された。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例2.コーヒーオイル含有飲料の製造
焙煎コーヒー豆(アラビカ種、L値約21)に10倍量(重量比)の水(90℃)を加えてドリップ抽出し、コーヒー抽出液を得た。この抽出液約0.3Lに、所定量(表2)のグラニュー糖及び重曹を加え、pHを約6に調整した(コーヒー液)。
【0038】
次に、実施例1で得られたコーヒーオイル0.7g/Lと乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル:0.5g/L、グリセリン脂肪酸エステル:0.1g/L)、カゼインNa(1.6g/L)、脱脂粉乳2.0g/L及び水を混合して溶解させた後、ホモゲナイザーにて予備乳化(均質化)を行い、コーヒーオイルエマルジョンを得た(温度60℃、圧力150kgf/cm)。
【0039】
コーヒー液とコーヒーオイルエマルジョンと、残りの原材料(生乳、コーヒーエキス、香料)を加えた後、高圧ホモジナイザーを用いて温度60℃、圧力200kgf/cmの条件で均質化処理を行った(コーヒー調合液のBrix:8.6、pH:6.3に調整)。このコーヒー飲料の調合液を、缶容器(190mL)に充填し、巻き締めを行った後、124℃、20分程度の高温高圧(レトルト)殺菌を行って、コーヒーオイル含有飲料を製造した。なお、比較として、コーヒーオイルを配合しないこと以外は同様にして製造したコーヒー飲料を得た。コーヒー飲料製品1Lあたりの配合組成は表2の通りである。
【0040】
【表2】

【0041】
専門パネラー7名にて官能評価を行い、コーヒー感の強さ、ボディ感(コク感)の強さ好ましさの2項目について、合議によりその強さを評価した。結果を表3に示す。本発明のコーヒーオイルを添加したコーヒー飲料は、ミドルからラストにかけてのコーヒー香りが芳醇であった。また、香りだけでなく全体的なコーヒーの呈味もアップしていた。すなわち、本発明のコーヒーオイルを用いると、雑味や苦味を伴うことなくコーヒー感やボディ感を増強することができ、淹れたてのコーヒーの味を再現したようなコーヒー飲料が得られることが示唆された。
【0042】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程;
焙煎コーヒー豆を粉砕し加水してコーヒーオイルを油滴として含むO/Wエマルジョンを形成させる工程1、
該O/Wエマルジョンを含む液を遠心分離してコーヒー粗オイルを得る工程2、
該粗オイルに解乳化処理を施す工程3、及び
油相を分離回収する工程4
を含む、コーヒーオイルの製造方法。
【請求項2】
工程3における解乳化処理が凍結解凍処理である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程2における粗オイルが、焙煎コーヒー豆の湿式粉砕物にストリッピング処理を施した後のスラリーを三相分離して得られるオイル部である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により得られるコーヒーオイル。
【請求項5】
請求項4に記載のコーヒーオイルを含有する、コーヒー製品。