説明

コーヒードリッパー

【課題】カップに多目の注湯を行ってもコーヒーバッグに入れたコーヒー粉がカップに溜まったコーヒー液に浸漬せず、かつ、カップ上に安定して載置することができ、また、製造も容易なコーヒードリッパーを提供する。
【解決手段】コーヒードリッパー1は、コーヒー粉Pを封入したコーヒーバッグ10を狭持体20の内側に貼着狭持しておき、狭持体20およびコーヒーバッグ10の上部を開いた状態でカップCに載置するとコーヒー粉Pに湯を注いでコーヒーを入れることができるものであり、狭持体20は2枚のシート部材21の縁部を貼着してなり、少なくとも内側が上辺部2から下辺部3に向かって末広がりの形状を有し、狭持体20をカップCに載置したときのコーヒーバッグ10の底部12は、カップCに溜まった通常量のコーヒー液に浸漬しない位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー粉が封入されたコーヒーバッグを狭持体の内側に貼着狭持したコーヒードリッパーであり、狭持体およびコーヒーバッグの上部を開いた状態でカップに載置してコーヒー粉に湯を注いでコーヒーを入れることができるようにしたコーヒードリッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコーヒー豆を挽いてコーヒー粉にしたものを使用してコーヒーを入れる方法に蒸気圧の差によって湯を吸引する仕組みを利用したコーヒーサイフォンにコーヒー粉と湯または水を入れて加熱することによってコーヒーを抽出する方法やドリップ内に濾紙を置き、濾紙の内側に入れたコーヒー粉に注湯して、コーヒー粉および濾紙を通った湯を滴下させるドリップ式などの方法がある。
このうちドリップ式の方法は、コーヒー粉に注湯する際に、先ずコーヒー粉を蒸らし、均等かつ十分に膨潤させ、その後全体に徐々にあるいは数回に分けて注湯するものであり、簡単でありながらコーヒーの味や香りを良く出すことができるので広く利用されている。このドリップ式によるコーヒーをより簡単にどこでも楽しめるようにした製品として、コーヒー粉を入れたコーヒーバッグを紙やプラスチックなどで作った保持体に保持させたいわゆる使い捨てのコーヒードリッパーがある。
【0003】
このコーヒードリッパーの例として、コーヒーを入れる際に保持体とともにコーヒーバッグの上縁部を開いてカップに取り付けたり、カップの上に載せたりしてからコーヒー粉の上に注湯することにより、コーヒーをドリップ式で入れることができるようにしたものがある。
【0004】
このようなコーヒードリッパーには、注湯の途中であってもカップに溜まったコーヒーの量が多くなるとコーヒーバッグがコーヒー液に浸漬したままになってしまうタイプのものがある。ところがコーヒー粉がコーヒー液に浸漬したままになると、本来ならばドリップ式によって得られるはずの優れた味や香りが損なわれがちになる。
【0005】
そこで、注湯の途中からコーヒー粉がカップのコーヒー液に浸漬したままにならないようにするコーヒードリッパーの例として、特許文献1や特許文献2に記載されたものがある。
【特許文献1】特開平10−14771号公報
【特許文献2】特開2002−17574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、コーヒー粉を収容したコーヒーバッグの両側で中央よりも下に係止部材が設けられており、この係止部材を構成する係止片に形成された係止用凹部がコーヒーカップの上縁部に係止できるようになっている。しかしながら、コーヒーカップの上縁部に係止用凹部の上端が係止した状態では、この係止用凹部の上端はコーヒーバッグの下端部よりも中央部に近い位置にあるため、少し多目に注湯したときにはコーヒーバッグの下端部がコーヒー液に浸ってしまうことがあるという問題点がある。また、コーヒーバッグの両側に設けた係止部材は、注湯の際にはコーヒーバッグの片側でコーヒーカップに係止してコーヒーバッグを支持し、2つの係止片のそれぞれに1箇所ずつ形成された係止用凹部の上端および折れ線に重量による複雑な負荷が掛かるので、紙製である場合には湯を含んで重くなったコーヒーバッグを支持することが不安定になり得るという問題点もある。
【0007】
一方、特許文献2の技術は、前記特許文献1に記載されたコーヒーバッグと同様のコーヒーバッグの両側に係止部材を設けてある点は特許文献1の技術と同じであるが、コーヒーバッグの両側それぞれに係止片が2枚ずつ設けられており、それぞれに係止用凹部が形成されている。これにより、注湯のためにカップに取り付けた際にはコーヒーバッグをその両側で支持し、負荷が4箇所の係止用凹部を介して掛かるようになっているので、係止部材が紙製であっても湯を含んで重くなったコーヒーバッグの支持が特許文献1のものよりも安定するが、コーヒーカップの上縁部が係止用凹部の上端に当接し、係止用凹部を介して掛かった負荷が係止用凹部および折り線に複雑に掛かることは特許文献1の技術と同様である。
【0008】
また、この係止用凹部は各係止片の上下2箇所で係止片の下辺から上辺に向かうように形成されているので、下方に形成された係止用凹部であってもその上端は、コーヒーバッグの下端部から中央部に寄った位置にあるので、多目に注湯したときにはコーヒーバッグの下端部がコーヒー液に浸ってしまうことがあるという問題点が特許文献1と同様にある。
【0009】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、多目の注湯を行ってもコーヒーバッグに入れたコーヒー粉がカップに溜まったコーヒー液に浸漬せず、かつ、カップ上に安定して載置することができ、また、簡単な構造で製造の機械化が容易なコーヒードリッパーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1] コーヒー粉(P)が封入されたコーヒーバッグ(10)を狭持体(20)の内側に貼着狭持したコーヒードリッパー(1)であり、前記狭持体(20)および前記コーヒーバッグ(10)の上部を開いた状態でカップ(C)に載置して前記コーヒー粉(P)に湯を注いでコーヒーを入れることができるようにしたコーヒードリッパー(1)において、
前記狭持体(20)は2枚のシート部材(21,21)の縁部を貼着してなり、少なくとも内側が上辺部(2)から下辺部(3)に向かって末広がりの形状を有し、
前記狭持体(20)をカップ(C)に載置したときの前記コーヒーバッグ(10)の底部(12)は、カップ(C)に溜まった通常量のコーヒー液に浸漬しない位置にあることを特徴とするコーヒードリッパー(1)。
【0011】
[2] コーヒー粉(P)が封入されたコーヒーバッグ(10)を狭持体(20)の内側に貼着狭持したコーヒードリッパー(1)であり、前記狭持体(20)および前記コーヒーバッグ(10)の上部を開いた状態でカップ(C)に載置して前記コーヒー粉(P)に湯を注いでコーヒーを入れることができるようにしたコーヒードリッパー(1)において、
前記狭持体(20)は2枚のシート部材(21,21)の縁部を貼着してなり、少なくとも内側が上辺部(2)から下辺部(3)に向かって末広がりの形状を有し、
前記2枚のシート部材(21,21)は、それぞれの両側の側縁部(22)に形成された互いに貼着するための相互貼着部(220)と、それぞれの上縁部(23)に形成され、前記コーヒーバッグ(10)の開口部(11)を挟んで閉じるように貼着するための閉じ貼着部(230)と、該閉じ貼着部(230)よりも下方で前記コーヒーバッグ(10)を貼着して保持するための保持貼着部(240)とを有し、
前記2枚のシート部材(21,21)および前記コーヒーバッグ(10)には、前記閉じ貼着部(230)を切り取って前記狭持体(20)および前記コーヒーバッグ(10)の上部を開くための切取用のミシン目(26)を有し、
前記狭持体(20)をカップ(C)に載置したときの前記コーヒーバッグ(10)の底部(12)は、カップ(C)に溜まった通常量のコーヒー液に浸漬しない位置にあることを特徴とするコーヒードリッパー(1)。
【0012】
[3] 前記コーヒーバッグ(10)は、不織布であることを特徴とする[1]または[2]に記載のコーヒードリッパー(1)。
【0013】
[4] 前記コーヒーバッグ(10)は開口部(11)から底部(12)に向かって尻すぼまりの形状を有する袋体であることを特徴とする[1],[2]または[3]に記載のコーヒードリッパー(1)。
【0014】
[5] 前記狭持体(20)は、側面に放熱孔(25)が穿設されたことを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載のコーヒードリッパー(1)。
【0015】
前記本発明は次のように作用する。
コーヒードリッパー(1)は、コーヒー粉(P)が封入されたコーヒーバッグ(10)がその開口部(11)を狭持体(20)の閉じ貼着部(230)に挟まれて閉じられ、コーヒーバッグ(10)全体は狭持体(20)の内側に収められているので、コーヒーを入れるときには先ず切取用のミシン目(26)から上縁部(23)を切り離す。こうして上縁部(23)を切り離すと、閉じ貼着部(230)に貼着狭持されているコーヒーバッグ(10)の上部も切り取られる。
【0016】
コーヒーバッグ(10)は、閉じ貼着部(230)による狭持体(20)への貼着状態が失われる。しかし、コーヒーバッグ(10)は、その側面を保持貼着部(240)によって狭持体(20)に貼着されて保持されているので、狭持体(20)から脱落することはない。
【0017】
上縁部(23)を切り離した狭持体(20)は、次に、折り線(27,27)に沿って狭持体(20)およびコーヒーバッグ(10)の上部を開くように折る。これにより、狭持体(20)の上方からはコーヒーバッグ(10)の開口部(11)が臨まれるとともに、狭持体(20)の下辺部(3)側も広げられるので、下辺部(3)をカップ(C)の上縁に載せることができる。
【0018】
このようにしてカップ(C)に載置したコーヒードリッパー(1)の上から、コーヒーバッグ(10)内のコーヒー粉(P)に湯を注ぐことにより、カップ(C)にコーヒーをいれることができる。
【0019】
湯を注ぐとコーヒー粉(P)が湯を含んでコーヒーバック(10)が重くなるが、コーヒードリッパー(1)は、狭持体(20)の下辺部(3)側が広げられており、カップ(C)の上縁に当接している下辺部(3)の4箇所でほぼ均等にその重量を分散して受けるので、湯を注いでいる間、コーヒードリッパー(1)はカップ(C)上に安定して載置されている。
【0020】
さらに、コーヒーバッグ(10)は、開口部(11)から底部(12)に向かって尻すぼまりの形状を有する袋体であるので、中に入れてあるコーヒー粉(P)がコーヒーバッグ(10)内で片寄ることなくコーヒーバッグ(10)の下部に集まるので、より安定してカップ(C)上に載置しておくことができる。
【0021】
カップ(C)に載置したコーヒードリッパー(1)は、コーヒーバッグ(10)の底部(12)の位置が狭持体(20)の下辺部(3)の近傍の所定位置にある。この所定位置は、カップ(C)に溜まった通常量のコーヒー液に浸漬しない位置である。この位置はまた、飲料を入れたカップ(C)を持ったときに、カップ(C)の中の飲料がこぼれにくい程度の液面の位置でもある。通常、カップ(C)に飲料を入れるときは、多目に入れたとしてもカップ(C)を持ったときにこぼれるほどには入れないので、前記所定位置にコーヒーバッグ(10)の底部(12)が位置するコーヒードリッパー(1)によれば、コーヒーを入れている途中からコーヒーバッグ(10)内のコーヒー粉(P)がカップ(C)に溜まった通常量のコーヒー液に浸漬してしまうことがない。なお、狭持体(20)の側面に放熱孔(25,25)を穿設したものの場合には、コーヒーを入れている間は、狭持体(20)の内側に籠もる熱および蒸気の一部が放熱孔(25,25)から外部に放出される。
【0022】
このようにして、ドリップ式による優れた味と香りとを持ったコーヒーを簡単にいれることができる。特に、コーヒーバッグ(10)を不織布にすることにより、コーヒーバッグ(10)の素材がもつ臭いが入れたコーヒーに移ってしまうことがなくなり、コーヒー自体の香りを楽しむことができる。また、上記のように構造が簡単なものであるので、製造における機械化が容易である。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるコーヒードリッパーによれば、通常ではカップに入れたコーヒー液の液面に到達しない位置にコーヒーバッグの底部が位置するので通常の範囲で多目の注湯を行ってもコーヒーバッグに入れたコーヒー粉がカップに溜まったコーヒー液に浸漬せず、味、香りともに良好なコーヒーを提供することができる。
【0024】
また、コーヒーバッグは、尻すぼまりの形状をした袋体であるので中に入れたコーヒー粉の片寄りを容易に均すことができ、また、コーヒードリッパーは、末広がりの形状になっているので、カップの上縁に安定して載置することができる。
【0025】
また、コーヒーバッグを収容している狭持体は2枚のシート部材の縁部を貼着しただけのものであるので、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
本実施の形態にかかるコーヒードリッパー1は、コーヒー粉Pが封入されたコーヒーバッグ10を狭持体20の内側に貼着狭持したコーヒードリッパー1であり、カップCにコーヒーを入れるときには狭持体20およびコーヒーバッグ10の上部を開いた状態にしてカップCに載置することにより、コーヒー粉Pに上から湯を直接に注いでコーヒーを入れることができるようにしたものである。すなわち、ドリップ式でコーヒーを入れるときに使用するコーヒードリッパーとフィルターとコーヒー粉Pとを一組にしたようなものである。
【0027】
図1から図4までに示すように、狭持体20は同一形状の2枚のシート部材21,21の縁部を貼着したものである。シート部材21は、紙や合成樹脂などを使用することができる。
【0028】
2枚のシート部材21,21は、それぞれの両側の側縁部22の最外縁部分に相互貼着部220が形成されている。この相互貼着部220は、シート部材21,21同士を貼着するための部分である。また、シート部材21,21それぞれの上縁部23の最上縁部分には、閉じ貼着部230が形成されている。この閉じ貼着部230は、シート部材21,21同士を貼着するとともにコーヒーバッグ10の開口部11を挟んだ状態で閉じて貼着するので、コーヒーバッグ10に入れたコーヒー粉Pはコーヒーバッグ10内に封入される。
【0029】
また、シート部材21には、コーヒーバッグ10の側面を貼着して保持するための保持貼着部240が上縁部23よりも下方に設けられている。図4に示すように、この保持貼着部240は、コーヒーバッグ10の側面の幅方向にその一部を貼着するように、後述する折り線27,27の間で帯状に設けてもよいし、帯状ではなく、多数のスポット状に設けてもよい。これらの貼着部220,230,240における貼着は、加熱によるヒートシールである。
【0030】
シート部材21は、前記相互貼着部220と閉じ貼着部230とを貼着した状態での内側の形状が上辺部2から下辺部3に向かって末広がりになっている。また、保持貼着部240より下方には、放熱孔25,25が2つ穿設されている。これら放熱孔25,25は、コーヒーを入れるためにカップCに湯を注いでいる際に発生する熱および蒸気の一部を逃がすためのものである。これにより、コーヒードリッパー1内の温度と湿度を適度に保つことができる。放熱孔25,25は、図面上では保持貼着部240より下方に2つ穿設して例示したが、穿設する位置と数は例示した態様に限られない。また、これら放熱孔25,25は、必ずしも設ける必要はない。
【0031】
シート部材21には、上縁部23を閉じ貼着部230もろとも切り取ることを容易にした切取用のミシン目26が形成されている。この切取用のミシン目26は、閉じ貼着部230にコーヒーバッグ10を挟んで貼着した後に形成されるものであり、したがって、コーヒーバッグ10にも同様に切り取りを容易にするための切取用のミシン目16が形成されている。
【0032】
これら切取り用のミシン目16,26に沿って上縁部23を切り取ることにより、コーヒーを入れるために狭持体20およびコーヒーバッグ10の上部を開くことができる。このように上縁部23を切り取っても、コーヒーバッグ10は、保持貼着部240によってシート部材21に貼着されて保持されているので、シート部材21から脱落してしまうことはない。
【0033】
また、シート部材21には、放熱孔25,25を間にしてこれらよりも側縁部22,22寄りに1本ずつ折り線27,27が設けられている。これらの折り線27,27は、上辺部2側から下辺部3まで直線状に設けられている。折り線27,27は、コーヒーを入れるときに上縁部23を切り取った後に、狭持体20を立体形状にするためにシート部材21をこれら折り線27,27の所で折り曲げるためのものである。
【0034】
折り線27,27の上端から上辺部2までは切込み28,28が入っている。これにより、シート部材21を折り曲げる際に折り線27,27の上端から上辺部2までの部分に影響されることなく、折り線27,27に沿ってきれいに容易に折り曲げることができる。
【0035】
閉じ貼着部230に開口部11を貼着されて狭持体20の内側に貼着狭持されるコーヒーバッグ10は、その開口部11から底部12に向かって尻すぼまりの形状を有する袋体である。このコーヒーバッグ10は、無臭で濾過性のあるポリプロピレンなどの不織布によって作られている。コーヒーバッグ10は不織布以外に濾紙などでもよいが、紙などの場合にはその臭いが入れたコーヒー液に移ってしまうこともあるので、無臭で濾過性のある不織布が好ましい。
【0036】
コーヒーバッグ10は、コーヒーを入れるために狭持体20の上縁部23を切り取って狭持体20およびコーヒーバッグ10の上部を開き、狭持体20を立体形状にしてカップCに載せたときに、底部12が狭持体20の下辺部3よりも下方の所定位置より上方に位置するような長さのものである。この所定位置とは、コーヒードリッパー1に湯を注いでいる途中でコーヒーバッグ10内のコーヒー粉PがカップCに溜まった通常量のコーヒー液に浸漬しない位置である。すなわち、コーヒーを入れる者が通常それ以上にコーヒー液をカップCに溜めないような位置である。例えば、コーヒー液を入れたカップCを通常の注意を払って持ったときに、カップCの中のコーヒー液がこぼれない程度の液面の位置である。
【0037】
底部12の位置がこのような位置にあることにより、通常はコーヒーバッグ10内のコーヒー粉PがカップCに溜まった通常量のコーヒー液に浸漬してしまうことがないので、味、香りともに優れた十分な量のコーヒーを入れることができる。
【0038】
次に作用を説明する。
コーヒードリッパー1を製造するには、所定の形状に形成され、相互貼着部220、閉じ貼着部230、および保持貼着部240を設けた狭持体20,20の保持貼着部240にコーヒーバッグ10をヒートシールして貼着する。次に、コーヒーバッグ10の開口部11を開いてコーヒー粉Pをコーヒーバッグ10に入れる。次に、相互貼着部220および閉じ貼着部230をヒートシールして貼着する。最後に切取用のミシン目16,26を入れる。これらの各工程は、容易に機械化することができ、機械化により製造中の衛生面を著しく向上させることができる。
このように製造されたコーヒードリッパー1は、コーヒー粉Pが封入されたコーヒーバッグ10の開口部11が狭持体20,20の閉じ貼着部230,230の間に挟まれてそれらに貼着されている。コーヒーバッグ10全体は狭持体20の内側に収められている。この状態のコーヒードリッパー1は、あまり厚みがないので嵩張らない。とくに、コーヒーバッグ10内のコーヒー粉Pをコーヒーバッグ10内であまり片寄らないようにすることにより厚みがより薄くなり多数のコーヒードリッパー1を収容するのに都合がよくなる。
【0039】
このコーヒードリッパー1によってコーヒーを入れるときには、先ず狭持体20の上部の上縁部23を切り離す。狭持体20には、切取用のミシン目26が形成されているので、切取用のミシン目26を境にして一方の手で上縁部23側を摘み、もう一方の手で他の部分を摘んでちぎるようにして容易に切り離すことができる。このとき、切取用のミシン目26と一致してコーヒーバッグ10にも切取用のミシン目16が形成されているので、上縁部23を切り離すと、コーヒーバッグ10の上部も切り取られる。
【0040】
上縁部23を切り離したコーヒードリッパー1は、カップCに載置して湯をコーヒー粉Pに注ぐことができるように、上辺部2側および下辺部3側を開く。狭持体20には折り線27,27が形成されているので、これら折り線27,27に沿って折るようにして、コーヒードリッパー1を開く。このようにコーヒードリッパー1を開いても、コーヒーバッグ10は、開口部11からやや下方で両側が狭持体20,20の保持貼着部240,240に貼着されて保持されているので、狭持体20,20とともに開口部11が大きく開く。
【0041】
このようにして開いたコーヒードリッパー1は、コーヒーバッグ10が尻すぼまりの形状をしているので、軽く揺するだけでコーヒー粉Pがコーヒーバッグ10内であまり片寄らないように均すことができる。図1および図2に示すように、カップCの上縁に載せたコーヒードリッパー1は、その下辺部3の4箇所がカップCの上縁に載るので、安定している。また、開口部11の内側にはコーヒーバッグ10内に均されたコーヒー粉Pを臨むことができる。
【0042】
このようにしてカップCにコーヒードリッパー1を載置して、開口部11の上からコーヒーバッグ10内のコーヒー粉Pに湯を注ぐことにより、カップCにコーヒーをいれることができる。コーヒー粉Pに湯を注ぐと、コーヒー粉Pは湯を含んで重くなる。また、注がれる湯の動きによってコーヒー粉Pの均された状態が変わる。しかし、コーヒーバッグ10は開口部11から底部12に向かって尻すぼまりの形状をしているので、湯がコーヒーバッグ10から滴下するとともにコーヒー粉Pも片寄ることなくコーヒーバッグ10の下部に戻るので重くなったコーヒー粉Pの重心の位置変化があまりない。さらに、コーヒードリッパー1は、狭持体20の下辺部3側が広げられており、カップCの上縁に当接している下辺部3の4箇所でほぼ均等にその重量を分散して受けることができる。したがって、湯を注いでいる間、コーヒードリッパー1はカップC上に安定して載置しておくことができる。
【0043】
コーヒーを入れている間は、狭持体20の内側に籠もる熱および蒸気の一部が狭持体20の側面に穿設された放熱孔25,25から外部に放出される。
【0044】
通常、コーヒーを入れるときは、不注意の場合を除いてカップCになみなみと入れることはなく、カップCに入れたコーヒー液を慎重にならずとも手に持ってこぼれない程度に入れる。カップCに載置したコーヒードリッパー1は、コーヒーバッグ10の底部12の位置が狭持体20の下辺部3よりも下方で、前記のカップCに入れたコーヒー液を慎重にならずとも手に持ってこぼれない程度に入れた液面よりも上方の所定位置にある。このため、コーヒードリッパー1に湯を注いでいる途中でコーヒーバッグ10内のコーヒー粉PがカップCに溜まった通常量のコーヒー液に浸漬してしまうことがない。したがって、ドリップ式で入れたコーヒーの本来の味と香りを損なうことがない。さらに、コーヒーバッグ10が不織布なので、素材自体に臭いがなく、コーヒーバッグ10の素材がもつ臭いが入れたコーヒーに移ってしまうことがなくなり、コーヒー自体の香りをよりよく楽しむことができる。
【0045】
このように本実施の形態にかかるコーヒードリッパー1によれば、ドリップ式による優れた味と香りとを持ったコーヒーを簡単にいれることができる。
【0046】
また、コーヒードリッパー1の狭持体20は簡単な形状の2枚のシート部材21,21を貼着したものであるので、製造が容易である。
【0047】
なお、前記実施の形態においては、切取用のミシン目26から下方に切込み28を入れて、狭持体20,20とともに開口部11を大きく開く際に容易に開けるようにしてあるが、切込み28を入れずに、下辺部3から延びる折り線27をミシン目26に至るようにしてもよい。
【0048】
また、2つの側縁部22,22は、一方(図1および図2においては右側の側縁部22、図3および図4においては左側の側縁部22)の幅が狭くなっているが、他方の側縁部22と同様に幅を広くし、あるいは、幅の広い部分を形成することにより、コーヒードリーッパー1をより摘み易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコーヒードリッパーの使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るコーヒードリッパーの使用状態を示す平面図である。
【図3】図1のコーヒードリッパーにおける狭持体を示す正面図である。
【図4】図3の狭持体とコーヒーバッグとの貼着関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
C…カップ
P…コーヒー粉
1…コーヒードリッパー
2…上辺部
3…下辺部
10…コーヒーバッグ
11…開口部
12…底部
16…切取用のミシン目
20…狭持体
21…シート部材
22…側縁部
23…上縁部
25…放熱孔
26…切取用のミシン目
27…折り線
28…切込み
220…相互貼着部
230…閉じ貼着部
240…保持貼着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー粉が封入されたコーヒーバッグを狭持体の内側に貼着狭持したコーヒードリッパーであり、前記狭持体および前記コーヒーバッグの上部を開いた状態でカップに載置して前記コーヒー粉に湯を注いでコーヒーを入れることができるようにしたコーヒードリッパーにおいて、
前記狭持体は2枚のシート部材の縁部を貼着してなり、少なくとも内側が上辺部から下辺部に向かって末広がりの形状を有し、
前記狭持体をカップに載置したときの前記コーヒーバッグの底部は、カップに溜まった通常量のコーヒー液に浸漬しない位置にあることを特徴とするコーヒードリッパー。
【請求項2】
コーヒー粉が封入されたコーヒーバッグを狭持体の内側に貼着狭持したコーヒードリッパーであり、前記狭持体および前記コーヒーバッグの上部を開いた状態でカップに載置して前記コーヒー粉に湯を注いでコーヒーを入れることができるようにしたコーヒードリッパーにおいて、
前記狭持体は2枚のシート部材の縁部を貼着してなり、少なくとも内側が上辺部から下辺部に向かって末広がりの形状を有し、
前記2枚のシート部材は、それぞれの両側の側縁部に形成された互いに貼着するための相互貼着部と、それぞれの上縁部に形成され、前記コーヒーバッグの開口部を挟んで閉じるように貼着するための閉じ貼着部と、該閉じ貼着部よりも下方で前記コーヒーバッグを貼着して保持するための保持貼着部とを有し、
前記2枚のシート部材および前記コーヒーバッグには、前記閉じ貼着部を切り取って前記狭持体および前記コーヒーバッグの上部を開くための切取用のミシン目を有し、
前記狭持体をカップに載置したときの前記コーヒーバッグの底部は、カップに溜まった通常量のコーヒー液に浸漬しない位置にあることを特徴とするコーヒードリッパー。
【請求項3】
前記コーヒーバッグは、不織布であることを特徴とする請求項1または2に記載のコーヒードリッパー。
【請求項4】
前記コーヒーバッグは、開口部から底部に向かって尻すぼまりの形状を有する袋体であることを特徴とする請求項1,2または3に記載のコーヒードリッパー。
【請求項5】
前記狭持体は、側面に放熱孔が穿設されたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載のコーヒードリッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−136767(P2008−136767A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328072(P2006−328072)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(306033128)有限会社新栄物産 (1)
【Fターム(参考)】