説明

コーヒー粕の処理方法

【課題】本発明の目的は、従来有効利用の難しかったコーヒー粕を、効率的且つ簡便に処理するための方法を提供することである。
【解決手段】以下の第1工程及び第2工程を経てコーヒー粕を処理してメタンガスに変換する:コーヒー粕を、メタン発酵汚泥又はその液体画分との共存下、60℃以上で加熱処理することによってコーヒー粕の可溶化処理を行う第1工程;及び上記第1工程で得られた可溶化処理物に対して上記第1工程に供したコーヒー粕の乾燥重量の5〜10倍相当量の希釈媒体を添加してメタン発酵処理を行う第2工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー粕を、効率的且つ簡便に処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焙煎したコーヒー豆からコーヒー成分を抽出した後の残留物であるコーヒー粕は国内で集中・安定して発生するバイオマスであり、その有効利用が求められている。飲料工場では、通常大量のエネルギーを使用しているため、発生したコーヒー粕からエネルギーを回収し、飲料生産時に利用することができれば理想的である。
【0003】
ところが、通常のバイオマスとは異なり、コーヒー粕は炭水化物と油分が主体の特殊なバイオマスであり、硬く可溶化されにくいため、通常のメタン発酵処理に供しても、バイオガス化効率は50%と低いのが実情である。このバイオガス化効率を向上させるため、前処理として粉砕する方法も報告されているが(例えば、特許文献1参照)、粉砕装置が別途必要であるし、粉砕工程で大量の電力を消費するという問題がある。
【0004】
更に、従来、コーヒー粕を可溶化処理及びメタン発酵処理に供すると、脂肪酸等の低分子化の進行に応じて、芳香族カルボン酸であるコーヒー酸などの発酵阻害物が生じ、メタン発酵が阻害されるという問題点があった。そのため、コーヒー粕の可溶化率を下げる、或いは可溶化処理及びメタン発酵処理に供するコーヒー粕の量を低減せざるを得ないのが現状であり、効率的にコーヒー粕をメタン発酵処理する技術が確立できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−218981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有効利用が求められているコーヒー粕を効率的かつ簡便に処理して、エネルギーに変換する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、次の第1工程及び第2工程を経てコーヒー粕を処理することによって、極めて効率的にコーヒー粕を処理してバイオガスに変換できることを見出した。
第1工程:コーヒー粕を、メタン発酵汚泥又はその液体画分との共存下、60℃以上で加熱処理することにより、コーヒー粕の可溶化処理を行う。
第2工程:上記第1工程で得られた可溶化処理物に対して上記第1工程に供したコーヒー粕の乾燥重量の5〜10倍相当量の希釈媒体を添加してメタン発酵処理を行う。
【0008】
本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる処理方法である:
項1. 下記第1工程及び第2工程を含む、コーヒー粕の処理方法:
コーヒー粕を、メタン発酵汚泥又はその液体画分との共存下、60℃以上で加熱処理することにより、コーヒー粕の可溶化処理を行う第1工程、及び
上記第1工程で得られた可溶化処理物に対して上記第1工程に供したコーヒー粕の乾燥重量の5〜10倍相当量の希釈媒体を添加してメタン発酵処理を行う第2工程。
項2. 第2工程において、可溶化処理物及び希釈媒体の投入、及びメタン発酵汚泥又はその液体画分の排出を連続的又は逐次行いながら、メタン発酵処理を行う、項1に記載の処理方法。
項3. 第1工程において、第2工程のメタン発酵処理により得られるメタン発酵汚泥又はその液体画分を使用し、コーヒー粕の可溶化処理を行う、項1又は2に記載の処理方法。
項4. 第2工程において、希釈媒体として水を使用して可溶化処理物の希釈が行われる、項1乃至3のいずれかに記載の処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の処理方法によれば、コーヒー粕の処理方法における従来の問題点、即ち、メタン発酵時の発酵阻害を解決し、極めて効率よく且つ簡便に、コーヒー粕を利用したメタン発酵が可能になる。
【0011】
また、本発明の処理方法は、従来可溶化しにくくバイオガス化効率が低かったコーヒー粕を、十分に効率的にエネルギーに変換できるため、資源の有効利用の観点からも、産業上非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のコーヒー粕の処理方法のフローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の処理方法は、下記第1工程及び第2工程を含有することを特徴とする:
第1工程:コーヒー粕を、メタン発酵汚泥又はその液体画分との共存下、60℃以上で加熱処理することにより、コーヒー粕の可溶化処理を行う。
第2工程:上記第1工程で得られた可溶化処理物に対して上記第1工程に供したコーヒー粕の乾燥重量の5〜10倍相当量の希釈媒体を添加してメタン発酵処理を行う。
【0014】
以下、本発明の処理方法について、詳述する。
処理対象物
本発明では、コーヒー粕を処理対象物とする。本発明の処理対象となるコーヒー粕は、乾燥された状態のものであってもよく、また含水状態のものであってもよい。また、本発明の処理方法に供される処理対象物は、コーヒー粕以外に、コーヒー抽出時に使用したフィルター(濾紙)、他の食品残渣、食品加工時に生じる廃棄物等の有機廃棄物が含まれていてもよい。本発明の処理方法は、このような有機廃棄物についても、コーヒー粕と共に、エネルギー(メタンガス)に変換することができる。
【0015】
また、本発明の処理方法に供されるコーヒー粕は、第1工程に先立って、必要に応じて、コーヒー粕を微粉化処理に供してもよい。
【0016】
第1工程
本発明の第1工程では、コーヒー粕の可溶化処理を行う。具体的には、本第1工程において、コーヒー粕を、メタン発酵汚泥又はその液体画分との共存下、60℃以上で加熱処理することにより、コーヒー粕を可溶化処理する。本第1工程によって、コーヒー粕に含まれる有機物が、メタン細菌により利用可能な程度にまで低分子化され、可溶化される。
【0017】
メタン発酵汚泥とは、メタン発酵中又メタン発酵後の汚泥であり、通常のメタン発酵を行っているメタン発酵槽内から得ることができる。同一系内で原料を有効利用し、第2工程後のメタン発酵の廃棄による環境負荷を軽減するために、可溶化処理に使用されるメタン発酵汚泥としては、後述する第2工程におけるメタン発酵処理中又はメタン発酵後の汚泥を利用することが望ましい。
【0018】
また、メタン発酵汚泥の液体画分とは、メタン発酵汚泥を固液分離することにより得られる液体画分であり、メタン発酵汚泥を膜濾過処理や遠心分離等の公知の固液分離処理することにより得ることができる。
【0019】
本第1工程において、コーヒー粕の可溶化のために、メタン発酵汚泥又はその液体画分のいずれを使用してもよいが、メタン発酵汚泥を循環利用する場合はメタン発酵槽内の固形物濃度が上昇する恐れがあることから、好ましくはメタン発酵汚泥の液体画分である。
【0020】
コーヒー粕の可溶化処理は、コーヒー粕とメタン発酵汚泥又はその液体画分との共存下、即ちこれらを混合した状態で加熱処理することにより行われる。コーヒー粕と、メタン発酵汚泥又はその液体画分との混合比については、特に制限されるものではないが、コーヒー粕の乾燥重量100重量部当たり、メタン発酵汚泥又はその液体画分を100〜10000重量部、好ましくは200〜5000重量部、更に好ましくは500〜2000重量部が例示される。
【0021】
可溶化処理時の温度条件については、60℃以上であればよいが、コーヒー粕の可溶化効率を更に向上させるには、好ましくは70〜95℃程度、更に好ましくは70〜80℃程度が挙げられる。一般的に、60℃以上の温度条件ではメタン細菌は生育できないため、60℃以上の温度条件によって行われる可溶化処理では、メタン発酵汚泥又はその液体画分中のメタン細菌以外の微生物又は物質によって、コーヒー粕の可溶化が行われると考えられる。
【0022】
また、可溶化処理時の加熱時間としては、コーヒー粕とメタン発酵汚泥又はその液体画分との混合比、加熱温度等に応じて適宜設定されるが、例えば、1〜72時間、好ましくは4〜48時間、更に好ましくは12〜24時間が例示される。
【0023】
本第1工程における可溶化処理において、加熱温度の維持には、重油、都市ガス、電力等をエネルギー源として利用してもよいが、後述する第2工程で発生するメタンガスを用いて、熱と電力を得るコジェネレーション手段(ガスエンジン、燃料電池等)により得られる排熱を利用することが望ましい。
【0024】
なお、本発明において、「可溶化」とは、コーヒー粕に含まれる固形有機物の全てが水中に可溶化している程度に低分子化されていることに限らず、コーヒー粕に含まれる不溶化固形有機物の内、好ましくは5重量%以上程度、より好ましくは10重量%以上程度が水に溶ける程度まで低分子化される状態となることにより、水に溶けるところまでは低分子化されない固形有機物を含め第2工程でメタン発酵されやすい状態となることを意味する。
【0025】
斯くして得られたコーヒー粕の可溶化処理物は、後述する第2工程に供される。
【0026】
このような可溶化処理を経ることにより、コーヒー粕についてセルロースの部分分解や可溶化がなされているため、後述する第2工程のメタン発酵処理において、大量の熱エネルギーを必要とせずに、コーヒー粕を効率よく分解処理してメタンガスに転換することが可能となる。なお、本第1工程により得られた可溶化処理物には、可溶化率が高い反面、コーヒー酸等のメタン発酵阻害物が多量に遊離しているが、本発明によれば、後述する第2工程によってメタン発酵処理を行うことにより、メタン発酵が阻害されることなく、コーヒー粕由来の有機物が分解され、効率的にメタンガスが生成される。
【0027】
第2工程
第2工程では、上記第1工程で得られた可溶化処理物に対して上記第1工程に供したコーヒー粕の乾燥重量の5〜10倍相当量の希釈媒体を添加してメタン発酵処理を行う。
【0028】
本第2工程において、メタン発酵に供される可溶化処理物は、上記第1工程に供したコーヒー粕の乾燥重量の5〜10倍相当量、好ましくは7〜10倍相当量の希釈媒体と混合される。つまり、本第2工程では、上記第1工程で得られた可溶化処理物が、最終的に上記量の希釈媒体と共に、メタン発酵菌又はこれを含むメタン発酵汚泥と混合されてメタン発酵される。希釈媒体の量が上記範囲よりも低い場合には、メタン発酵により生じる発酵阻害物によってメタン発酵の進行が阻害され、希釈媒体の量が上記範囲よりも多い場合には、メタン細菌の栄養源の濃度が低くなりメタン発酵の進行が遅くなる。
【0029】
本第2工程において、可溶化処理物を希釈する希釈媒体としては、メタン発酵に悪影響を及ぼすものでない限り、特に制限されないが、例えば、水道水、工場排水、生物学的排水処理施設からの余剰汚泥(活性汚泥)または処理水等が挙げられ、好ましくは水道水、工場排水等が挙げられる。また、当該希釈媒体は、微生物や固形物等が含まれていない、或いは除去されているものが好適に使用される。
【0030】
メタン発酵槽内への可溶化処理物及び希釈媒体の供給は、可溶化処理物と希釈媒体を個別にメタン発酵槽に供給する方法;メタン発酵槽の前段で予め可溶化処理物と希釈媒体とを混合したものを投入する方法;可溶化処理物及び希釈媒体の一方を配管を介してメタン発酵槽へ供給し、他方をメタン発酵槽の供給口から投入する方法等によって行うことができる。
【0031】
メタン発酵処理は、従来公知のメタン発酵菌及びメタン発酵槽を用いて嫌気性雰囲気で行うことができる。具体的には、上記第1工程で得られた可溶化処理物と上記範囲の希釈媒体を、メタン発酵菌を含むメタン発酵汚泥に添加し、嫌気性雰囲気を維持することによって行われる。
【0032】
メタン発酵処理は、上記第1工程で得られた可溶化処理物が上記範囲の希釈媒体で希釈されている状態で行われる限り、そのメタン発酵処理の発酵方式については、特に制限されない。具体的には、本第2工程における発酵方式としては、可溶化処理物及び希釈媒体をメタン発酵槽内に入れ、その後メタン発酵槽内に原料(可溶化処理物及び希釈媒体)を投入せずにメタン発酵を完結させる方式(回分式);可溶化処理物及び希釈媒体をメタン発酵槽内に逐次投入し、メタン発酵槽内のメタン発酵汚泥(メタン発酵処理物)又はその液体画分を抜き出さない方式(流加式);メタン発酵槽内へ可溶化処理物及び希釈媒体を投入しながら、メタン発酵槽内のメタン発酵汚泥(メタン発酵処理物)又はその液体画分を抜き出す方式(連続式);メタン発酵槽内へ可溶化処理物及び希釈媒体を投入し、メタン発酵槽内のメタン発酵汚泥(メタン発酵処理物)又はその液体画分を所定時間毎に抜き出して、新たにメタン発酵槽内に可溶化処理物及び希釈媒体を投入する方式(半連続式)のいずれであってもよい。
【0033】
これらの発酵方式の中でも、連続式及び半連続式は、メタン発酵中に、メタン発酵槽から発酵阻害物を排出できるので、発酵阻害物を効率的に除去することができ、ひいては、高いメタン発酵効率を得ることが可能となるため、好適である。即ち、本第2工程におけるメタン発酵処理の好適な一態様として、可溶化処理物及び希釈媒体の投入、及びメタン発酵汚泥(メタン発酵処理物)又はその液体画分の排出を連続的又は逐次行いながら、メタン発酵を行う方法が挙げられる。とりわけ、可溶化処理物及び希釈媒体の投入、及びメタン発酵汚泥の液体画分の排出を連続的又は逐次行いながら、メタン発酵を行う方法は、メタン発酵汚泥に残存する有機物については継続してメタン発酵処理に供することができ、メタンガス生成量を増大させるため、特に好適である。
【0034】
ここで、メタン発酵槽内からメタン発酵汚泥(メタン発酵処理物)から液体画分のみを排出させる方法についても、特に制限はないが、例えば、メタン発酵槽に、液体画分を透過し、且つ固体画分を透過しない膜を備えた膜分離手段を設け、当該膜分離手段を介してメタン発酵槽内のメタン発酵汚泥から液体画分を排出する方法が挙げられる。
【0035】
本第2工程におけるメタン発酵処理の温度条件は、用いるメタン発酵菌の種類に応じて広い温度範囲から適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、一般には20〜60℃程度であればよく、例えば、35℃程度のいわゆる中温でも、55℃程度のいわゆる高温でもよい。
【0036】
本第2工程におけるメタン発酵処理の処理時間としては、処理対象となる可溶化処理物の量、使用するメタン発酵菌の種類、発酵温度、発酵形態等によって異なり、一律に規定することはできないが、通常10〜30日、好ましくは10〜20日、更に好ましくは10〜14日を挙げることができる。ここで、メタン発酵処理を連続式又は半連続式で行う場合には、上記処理時間は、投入される希釈媒体のメタン発酵槽内における滞留時間を意味する。
【0037】
本第2工程におけるメタン発酵処理は、嫌気性雰囲気で行われる。嫌気性雰囲気の調製・維持は、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水素、天然ガス、メタン、都市ガス等を用いて行うことができる。また、必要に応じて、硫化ナトリウム等の酸素除去剤を使用してもよい。
【0038】
斯くしてメタン発酵処理を行うことにより、第1工程で得られた可溶化処理物をメタンガスに効率的に変換することができる。本第2工程で発生するメタンガスは、バイオガスとして回収することにより、発電して排熱エネルギーとして利用できる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において使用したメタン発酵槽膜透過液は、固液分離膜によってメタン発酵汚泥から分離された液体である。
【0040】
実施例1
コーヒー粕100g(含水率60%)と300gのメタン発酵槽膜透過液の混合液合計400gを可溶化槽(容量400ml、温度80℃、嫌気)に添加して、24時間可溶化処理を行った。
【0041】
次いで、得られた可溶化処理物400gに水300gを加え、メタン発酵汚泥5000mlを含むメタン発酵槽(容量5000ml、固液分離膜を装着、温度55℃、嫌気)に投入し、24時間メタン発酵処理を行った。24時間後に、メタン発酵槽に装着されている固液分離膜を介して、メタン発酵汚泥の液体画分500gを抜き取った。うち300gは上記可溶化に用い、200gは廃棄した。また別途メタン発酵槽から毎日200gの汚泥を抜き取り余剰汚泥として廃棄した。
【0042】
上記可溶化処理とメタン発酵処理を2ヶ月間継続して行ったところ、1日平均3276mlのバイオガス(メタン濃度60%)を得ることができた。COD換算でのバイオガス化率は71%となった。
【0043】
この結果から、コーヒー粕の可溶化処理物に発酵阻害物が含まれていても、希釈水と共にメタン発酵処理に供し、メタン発酵汚泥の液体画分を抜き取ることによって、コーヒー粕が高濃度であっても安定的にバイオガス化できることが確認された。
【0044】
比較例1
コーヒー粕30g(含水率60%)と370gの水の混合液合計400gをメタン発酵汚泥5000mlを含むメタン発酵槽(容量5000ml、固液分離膜を装着、温度55℃、嫌気)に投入し、24時間メタン発酵処理を行った。24時間後に、メタン発酵槽に装着されている固液分離膜を介して、メタン発酵汚泥の液体画分200gを抜き取った。別途、メタン発酵汚泥を200g引き抜き余剰汚泥として廃棄した。このメタン発酵処理を2ヶ月間継続して行ったところ、1日平均533mlのバイオガス(メタン濃度60%)を得ることができた。COD換算でのバイオガス化率は50%となった。
【0045】
この結果から、コーヒー粕をそのままメタン発酵処理に供しても、十分にメタン発酵が進行しないことが確認された。
【0046】
比較例2
コーヒー粕30g(含水率60%)と370gのメタン発酵槽膜透過液の混合液合計400gを可溶化槽(容量400ml、温度80℃、嫌気)に添加して、24時間可溶化処理を行った。
【0047】
次いで、得られた可溶化処理物400gを、メタン発酵汚泥5000gを含むメタン発酵槽(容量5000ml、固液分離膜を装着、温度55℃、嫌気)に投入し、24時間メタン発酵処理を行った。24時間後に、メタン発酵槽に装着されている固液分離膜を介して、メタン発酵汚泥の液体画分200mlを抜き取った。別途、メタン発酵汚泥を200g引き抜き余剰汚泥として廃棄した。
【0048】
上記可溶化処理とメタン発酵処理を2ヶ月間継続して行ったところ、1日平均769mlのバイオガス(メタン濃度60%)を得ることができた。COD換算でのバイオガス化率は72%となった。
【0049】
本結果から、メタン発酵処理に先立って可溶化処理を行うことによって、メタン発酵処理のみを行う場合(比較例1)に比して、COD換算でのバイオガス化率は22%向上したが、比較例2の条件では、1日当たりのコーヒー粕の処理量が少なく、設備容量当たりの処理効率が悪い。
【0050】
比較例3
コーヒー粕100g(含水率60%)と300gのメタン発酵槽膜透過液の混合液合計400gを可溶化槽(容量400ml、温度80℃、嫌気)に添加して、24時間可溶化処理を行った。
【0051】
次いで、得られた可溶化処理物400gを、メタン発酵汚泥5000gを含むメタン発酵槽(容量5000ml、固液分離膜を装着、温度55℃、嫌気)に投入し、24時間メタン発酵処理を行った。24時間後に、メタン発酵槽に装着されている固液分離膜を介して、メタン発酵汚泥の液体画分200mlを抜き取った。別途、メタン発酵汚泥を200g引き抜き余剰汚泥として廃棄した。
【0052】
上記可溶化処理とメタン発酵処理を2ヶ月間継続して行ったところ、1日平均1934mlのバイオガス(メタン濃度60%)を得ることができた。COD換算でのバイオガス化率は55%となった。
【0053】
本結果から、メタン発酵処理に先立って可溶化処理を行う際に、単に、1日当たりのコーヒー粕の処理量を増やすと、コーヒー粕のバイオガス化率は低下することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記第1工程及び第2工程を含む、コーヒー粕の処理方法:
コーヒー粕を、メタン発酵汚泥又はその液体画分との共存下、60℃以上で加熱処理することにより、コーヒー粕の可溶化処理を行う第1工程、及び
上記第1工程で得られた可溶化処理物に対して上記第1工程に供したコーヒー粕の乾燥重量の5〜10倍相当量の希釈媒体を添加してメタン発酵処理を行う第2工程。
【請求項2】
第2工程において、可溶化処理物及び希釈媒体の投入、及びメタン発酵汚泥又はその液体画分の排出を連続的又は逐次行いながら、メタン発酵処理を行う、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
第1工程において、第2工程のメタン発酵処理により得られるメタン発酵汚泥又はその液体画分を使用し、コーヒー粕の可溶化処理を行う、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
第2工程において、希釈媒体として水を使用して可溶化物の希釈が行われる、請求項1乃至3のいずれかに記載の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−206737(P2011−206737A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79261(P2010−79261)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】