説明

コーマ機

【課題】トップコームがフリースに突き刺さる際に、フリースが下方へ湾曲するように押されることを抑制し、繊維のピーシングをより円滑にする。
【解決手段】ニッパーフレーム14は、ニッパーシャフト22の往復回動によって、クッションプレート15の先端部15aがデタッチングローラ12に対して接近・離間するように前後に揺動する。ニッパーフレーム14にはトップコーム16及び所定のタイミングで開閉されるニッパーナイフ25が設けられている。トップコーム16は、励振手段により振動され、少なくともトップコーム16の先端部がフリースFに刺さる時点から刺し終わり時点まで振動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーマ機に係り、詳しくは上下一対のデタッチングローラから繰り出された先行フリースに、コーミングシリンダの回転によりコーミングされた後続フリースを接合しつつ、この後続フリースの後端部分をトップコームでコーミングするように構成されたコーマ機に関する。
【背景技術】
【0002】
コーマ機においては、供給されたラップをニッパー装置が後退した位置で把持し、該ラップの先端をコーミングシリンダに植設した針列(シリンダニードル)が梳ってラップから短繊維等(ネップ等の夾雑物を含む)を除去し、フリースとする。この作用をシリンダコーミングと呼ぶ。このフリースをニッパー装置の前進によってデタッチングローラへ向けて移動させる。このフリースの前進に対応してデタッチングローラを逆転させ、先に引抜いたフリース(先行フリース)を後退させ、該フリースの後端部と新たに梳られたフリース(後続フリース)の先端部とを重ね合わせる。この作用をピーシングと呼ぶ。その後、デタッチングローラを再び正転させて、前記先行フリースに接合した後続フリースを引き抜き、この時トップコームが該フリースの後端を梳る。この作用をトップコーミングと呼ぶ。コーマ機はシリンダコーミング、ピーシング及びトップコーミングを繰返す。そして、コーマ機においては、前記両コーミング作用及びピーシングの良否が製品の品質を決める大きな要因となる。
【0003】
両コーミング作用のうちトップコーミングがより重要であるといわれている。そして、トップコームを後続フリースに作用させる場合、ニッパーモーションに合わせてトップコームを該フリースに最適な深さで侵入させることが重要となる。従来、ニッパーユニットの前進端位置におけるデタッチングローラとトップコームとの間隔が予め設定された値に調整される時に、トップコームピンの突入の深さと角度とが適正な値になるように、トップコームホルダが下部ニッパーに調整回動可能に位置決めされる構成が開示されている(特許文献1参照。)。
【0004】
また、トップコームのニードル又はニードル間に短繊維やネップが付着、堆積すると、トップコームの効果的な作用が損なわれるようになる。そこで、トップコームのニードル又はニードル間に付着、堆積した短繊維やネップを圧力空気で吹き払う方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法では、圧力空気がコーミングプロセス及びピーシングプロセスに悪影響を及ぼさないように、圧力空気の供給を正確に規定された時点と正確に規定された時間間隔で制御するようになっている。
【特許文献1】特開平2−80623号公報
【特許文献2】特開平7−48724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の構成では、トップコームとフリースとの摩擦抵抗により、フリースが下方へ湾曲され、繊維のピーシングに悪影響を与える。また、ニッパーユニットの前進端位置におけるデタッチングローラとトップコームとの間隔が変更されるたびに、トップコームホルダの位置を調整する必要があるため、作業が面倒である。また、特許文献2のように、トップコームに付着、堆積(成長)した短繊維を、圧力空気の噴射で吹き払う方法では、圧力空気の噴射時点及び噴射時間を正確に制御しないと、圧力空気がフリースの一部を乱して、品質が悪化する。また、制御系の配線に加えて空圧回路が必要となり、構成が複雑になる。
【0006】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、トップコームがフリースに突き刺さる際に、フリースが下方へ湾曲するように押されることを抑制し、繊維のピーシングをより円滑にすることにある。また、第2の目的は、第1の目的を達成でき、かつトップコームに短繊維やネップ等が付着、堆積(成長)するのを抑制することができるコーマ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ニッパーフレームの揺動運動の後退途中でラップを把持し、コーミングシリンダの回転によりラップをコーミングして後続フリースとなし、揺動運動の前進途中でラップの把持を解放し、上下一対のデタッチングローラから繰り出された先行フリースに前記後続フリースを接合しつつ、その後続フリースの後端部分をトップコームでコーミングするように構成されたコーマ機であって、前記トップコームを振動させる励振手段と、前記励振手段の励振を制御する制御手段とを備えている。
【0008】
この発明では、トップコームがフリースに突き刺さるときに、トップコームを励振手段により振動(例えば、超音波振動)させれば、トップコームがフリースに刺さるときの抵抗が非常に小さくなり、トップコームが必要な深さまで刺さる。即ち、トップコームのコーム部(ニードルや歯等)がフリースに突き刺さる際のデタッチングローラとトップコームとの間隔調整の度に角度を微調整しなくても、コーム部がフリースに支障なく刺さり、トップコームによるコーミング作用を良好に行うことができる。そのため、トップコームがフリースの繊維を効率良く梳ることができ、フリースの品質が良くなる。また、トップコームがフリースに突き刺さる際に、フリースが下方へ湾曲するように押されることも抑制される。
【0009】
第2の目的を達成するため、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御手段は、前記ニッパーフレームの後退開始時点から前記励振手段の励振を中断した後、前記デタッチングローラからニッパー部に連なるフリースが切断された時点から、再び前記トップコームを振動させるように前記励振手段を制御する。この発明では、ニッパーフレームの後退開始時点からフリースが切断されるまでの間は、トップコームが振動されないため、トップコームは、トップコームに接触しながら相対移動するフリースに付着している短繊維やネップ等との摩擦抵抗が低くなり過ぎることがなく、短繊維等がフリースに連れられて製品に混じるのを抑制することができる。また、フリースが切断された時点からはトップコームに短繊維やネップ等が付着、堆積(成長)するのを抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記トップコームは、フリースを梳る複数のコーム部材と、前記コーム部材を支持する支持部材とを備え、前記励振手段は、その振動子が前記支持部材を振動させるように設けられている。ここで、「コーム部材」とは、トップコームの先端部を構成し、フリースに突き刺さった状態でフリースがデタッチングローラによって引き取られる際にフリースを梳る作用を行い、ニードル、針、歯、ピン等と呼ばれている部材を意味する。
【0011】
トップコームを振動させる場合、励振手段の振動子はトップコームに振動が伝達される部分を振動させれば、トップコーム以外の部分を振動させてもトップコームを振動させることはできるが、振動させる部分がトップコームから離れるほど、トップコームを振動させるのに必要なエネルギーが大きくなる。この発明では、振動子がトップコームを構成する支持部材を振動させるように設けられているため、小さなエネルギーでトップコームを振動させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記振動子は、ホーンを介して支持部材に剛体連結され、前記ホーンは前記支持部材に剛体連結される側が、偏平な直方体の一部を、基端側及び先端側の厚さがそれぞれ一定で、基端側の方が厚く、かつ基端側の一定厚みの部分と先端側の一定厚みの部分の中間部の厚さが先端側に向かって次第に薄くなるように内側に凸の曲面で切り欠かれた形状に形成されている。この発明では、ホーンを円錐状に形成した場合に比較して、全てのコーム部材を均一に振動させることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記トップコームは、フリースを梳る複数のコーム部材と、前記コーム部材を支持する支持部材とを備え、前記励振手段は、その振動子が前記コーム部材と直交する方向に延びる振動板を介して複数の前記コーム部材に対して連結されている。この発明では、複数のコーム部材を一つの振動子で効率良く振動させることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記励振手段は、その振動子が前記トップコームを前記フリースの移動方向と直交する方向に振動させるように設けられている。この発明では、振動子を支持部材の前側に配置してその先端を支持部材に剛体連結する構成に比較して、振動子の取り付け作業が容易になる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜請求項6に記載の発明によれば、トップコームがフリースに突き刺さる際に、フリースが下方へ湾曲するように押されることを抑制し、繊維のピーシングをより円滑にすることができる。また、請求項2に記載の発明によれば、前記の効果に加えて、トップコームに短繊維やネップ等が付着、堆積(成長)するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
図1(a),(b)に示すように、コーミングシリンダ11の前側上方近傍には上下一対のデタッチングローラ12が2組配設されている。デタッチングローラ12の後方、コーミングシリンダ11の上方にはニッパー装置13を構成するニッパーフレーム14が配設されている。ニッパーフレーム14は、その底部にクッションプレート15が設けられ、先端部にトップコーム16が固定されている。ニッパーフレーム14は、その前側部が支軸17及びヒンジリンク18を介してニッパーピボット19に吊り下げられるとともに、その後端部が支軸20及びニッパーレバー21を介してニッパーシャフト22に吊り下げられている。そして、ニッパーフレーム14は、ニッパーシャフト22の往復回動によって、クッションプレート15の先端部15aがデタッチングローラ12に対して接近・離間するように前後に揺動する構成になっている。
【0017】
クッションプレート15上には間欠的に回転して1回のコーミングに必要なラップLを送り出すフィードローラ23が設けられている。ニッパーフレーム14の中央部には支軸24が設けられ、支軸24には先端にニッパーナイフ25が固定されたニッパーアーム26が、その中央部において回動可能に支持されている。ニッパーアーム26の後端部には支軸27を介してスプリングロッド28が連結されている。スプリングロッド28のスプリングエンド28aは、機台フレーム29に対して回動可能、かつボルト31により固定されたブラケット30に支持されている。
【0018】
ニッパーナイフ25はニッパーフレーム14の前後進揺動運動によって所定のタイミングで開閉して、クッションプレート15と協同してラップLを挟持するようになっている。クッションプレート15及びニッパーナイフ25がニッパー部を構成する。スプリングロッド28は、ニッパーゲージの変更を行った場合に、ニッパーナイフ25の開閉のタイミングを調整するために使用される。
【0019】
トップコーム16は、ニッパーフレーム14の前側部に形成された溝に上下方向に移動可能に嵌挿されるとともに、保持部材(図示せず)によって所定位置に保持されるようになっている。トップコーム16は、フリースFを梳るコーム部材としての複数のニードル32と、ニードル32を支持する支持部材33とで構成されている。ニードル32は、別に形成した先端部32aを固着して形成されている。トップコーム16は、図示しない公知の構成でニッパーフレーム14に対して上下方向に移動調整可能となっており、ニードル32のトップコーミング時におけるフリースFへの侵入深さが調整可能となっている。
【0020】
ニッパーフレーム14にはトップコーム16を振動させる励振手段34が設けられている。励振手段34を構成する振動子35は、ニッパーフレーム14に固定されたブラケット36に支持されている。支持部材33は、振動子35により励振されるホーン37に剛体連結されている。ホーン37はほぼ円錐状に形成され、その先端においてロウ付けにより支持部材33の前面下部に剛体連結されており、支持部材33に剛体連結される面と反対側の面において振動子35に固定されている。ホーン37の先端面は振動子35の軸方向と直交する平面に形成され、ホーン37は支持部材33と垂直に設けられている。
【0021】
振動子35には所謂ランジュバン形振動子が使用され、図3に示すように、一対のリング状のピエゾ素子38a,38bを備えている。両ピエゾ素子38a,38b間にリング状の電極板39が配置され、ピエゾ素子38a,38bの電極板39と当接する側と反対側の面に当接する金属ブロック40,41を、図示しないボルトによって締め付け固定することにより振動子35が構成されている。ボルトは金属ブロック40に形成された図示しないねじ穴に、金属ブロック41側から螺合されている。両金属ブロック40,41はボルトを介して互いに導通された状態となっている。金属ブロック40の先端にはフランジ40aが形成され、金属ブロック40はフランジ40aにおいてブラケット36に固定されている。
【0022】
図3に示すように、電極板39は配線43aを介して機台の適宜箇所に固定された発振器42と接続され、発振器42の接地端子が配線43bを介して金属ブロック41に接続されている。即ち、振動子35は、発振器42に電気的に接続されている。振動子35、ホーン37及び発振器42によりトップコーム16を振動させる励振手段34が構成されている。発振器42はトップコーム16を人の可聴領域より高い周波数で振動させるように振動子35を励振させる。
【0023】
発振器42は、制御装置44により制御される。制御装置44は励振手段34の励振を制御する制御手段を構成する。制御装置44は、コーミングサイクルの全期間、発振器42に励振指令信号を出力するのではなく、間欠的に発振器42に励振指令信号を出力する。具体的には、トップコーム16の先端部、即ちニードル32がフリースFに刺さる時点から刺し終わり時点まで励振指令信号を出力し、ニッパーフレーム14の後退開始時点からその出力を中断した後、デタッチングローラ12からニッパー部に連なるフリースFが切断された時点から再びその出力を再開する。制御装置44は、コーミングシリンダ11の回転角度位置を等分(この実施形態では40等分)した値(インデックスと呼ばれる)に基づいて、励振指令信号の出力時期を設定する。
【0024】
次に前記のように構成された装置の作用を、図2を参照しながら説明する。図2(a)〜(h)は、コーミングサイクルにおけるコーミングシリンダ11、デタッチングローラ12、クッションプレート15、トップコーム16及びニッパーナイフ25の関係をインデックスと共に示す模式側面図である。なお、各図の枠の上側に描かれた数字が、その図の状態のインデックスを示す。
【0025】
コーマ機が運転されると、ニッパーシャフト22の往復回動に伴ってニッパーフレーム14が前後進揺動運動を行う。ニッパーナイフ25はニッパーフレーム14の前後進揺動運動によって所定のタイミングで開閉し、フィードローラ23によって供給されたラップLをクッションプレート15の先端部15aと協同して把持する。
【0026】
ニッパーフレーム14の後退途中でニッパーナイフ25が閉じたときに、シリンダ針列11aの前端がラップLと対向する状態になる。そして、その状態からニッパーフレーム14が後退を継続すると、図2(c)に示すように、シリンダ針列11aがラップLを梳る状態になり、シリンダコーミングが開始される。ニッパーフレーム14が最後退位置に達したインデックス40(=0)の状態では、図2(d)に示すように、シリンダ針列11aはまだラップLと係合しており、シリンダコーミングが継続されている。その状態からニッパーフレーム14が前進を再開して、図2(e)に示すインデックス2のときに、シリンダ針列11aとラップLとの係合が終了してコーミングシリンダによるコーミングが終了する。
【0027】
その後、デタッチングローラ12の逆転が開始され、先行フリースF1が後退されて、図2(f)に示す状態になる。その後、ニッパーフレーム14の前進が継続された状態でニッパーナイフ25が開き、フィードローラ23が所定量回転されてラップLが所定量送り出されて、図2(g)の状態になる。次にデタッチングローラ12の正転が開始され、先行フリースF1の引き取りが開始され、後続フリースF2が先行フリースF1に接合されて図2(h)に示す状態になる。この時、ニードル32がフリースFに突き刺さる。そして、更にニッパーフレーム14の前進が継続されて、図2(a)に示すようにニッパーフレーム14が前進端に達した時にデタッチングローラ12の正転が停止される。
【0028】
その後、デタッチングローラ12の回転が停止された状態でニッパーフレーム14が後退して、図2(b)の状態になる。その状態からさらにニッパーフレーム14が後退を継続し、後退途中でデタッチングローラ12からニッパー部に繋がるフリースが切断される。そして、再びシリンダ針列11aの前端がニッパー部から垂れ下がるラップLに対応する図2(c)の状態になる。
【0029】
図2(g)の状態から図2(h)の状態に移行する途中でフリースFに対してニードル32が突き刺さるのが開始され、ニッパーフレーム14が前進端に達した時にニードル32がフリースFに対して最も深く刺さった状態になる。制御装置44は、図2(g)の時点から図2(a)の時点になるまで、発振器42に励振指令信号を出力するため、発振器42が振動子35を励振させ、振動子35によってトップコーム16が振動される。振動子35は、所定の周波数(例えば、20kHz前後)で励振される。
【0030】
トップコーム16が振動されない状態では、ニードル32がフリースFに突き刺さる際の角度を適正な値に調整しないと、ニードル32とフリースFとの摩擦抵抗によって、ニードル32が適正な深さまで刺さらなかったり、フリースFが下側に凸の状態に湾曲したりする。その結果、ニッパーフレーム14の後退時におけるトップコーム16による効果的なコーミングが行われない。しかし、この実施形態では、ニードル32がフリースFに対して突き刺さるのが完了する時点までトップコーム16が振動されるため、ニードル32とフリースFとの摩擦抵抗が小さくなる。その結果、ニードル32がフリースFに突き刺さる際の角度が適正な角度でなくても、ニードル32がフリースFを下側に凸の状態に湾曲させることなく、適正な深さまで円滑に突き刺さり、トップコーム16による効果的なコーミングが行われる。
【0031】
また、制御装置44は、ニッパーフレーム14の後退開始時点から、デタッチングローラ12及びニッパー部間のフリースFが切れるまで、発振器42への励振指令信号の出力を中断し、フリースFが切れた時点から発振器42への励振指令信号の出力を再開する。ニッパーフレーム14の後退開始時からフリースFが切れる迄の間はトップコーム16によるトップコーミングが行われる期間であり、このときにニードル32の摩擦抵抗が低すぎると、短繊維やネップ等がニードル32に接触してもフリースFから除去されずに、デタッチングローラ12の正転時にフリースFとともに引き取られてしまう場合がある。しかし、この間はトップコーム16が振動されないため、そのような問題の発生が回避される。
【0032】
また、制御装置44は、デタッチングローラ12及びニッパー部間のフリースFが切れた後は、発振器42への励振指令信号の出力を再開する。トップコーミングの際にトップコーム16に付着した短繊維やネップを放置すると、トップコーミングの際に次第に成長して、トップコーム16がフリースFに突き刺さる際に支障を来す状態になる。フリースFが切断した後は、トップコーム16を振動させてもトップコーミングに悪影響を与えない。そして、トップコーム16を振動させることにより、トップコーム16に付着している短繊維やネップ等がトップコーム16から脱落して除去される。制御装置44は、ニッパーフレーム14の後退開始時点まで発振器42への励振指令信号の出力を維持する。
【0033】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)コーマ機は、トップコーム16を振動させる励振手段34と、励振手段34の励振を制御する制御装置44とを備えている。したがって、トップコーム16がフリースFに突き刺さるときに、トップコーム16を励振手段34により振動(例えば、超音波振動)させれば、トップコーム16がフリースFに刺さるときの抵抗が非常に小さくなり、トップコーム16が必要な深さまで支障なく刺さる。そのため、トップコーム16がフリースFに突き刺さる際に、フリースFが下方へ湾曲するように押されることが抑制され、繊維のピーシングが円滑に行われる。また、トップコームのコーム部(ニードルや歯等)がフリースに突き刺さる際のデタッチングローラとトップコームとの間隔調整の度に角度を微調整しなくても、コーム部がフリースに支障なく刺さり、トップコームによるコーミング作用を良好に行うことができる。そのため、トップコーム16がフリースFの繊維を効率良く梳ることができ、フリースFの品質が良くなる。
【0034】
(2)制御装置44は、トップコーム16の先端部(ニードル32)がフリースFに刺さる時点から刺し終わり時点まで、トップコーム16を振動させるように励振手段34を制御する。したがって、トップコーム16がフリースFに刺さるときの抵抗が非常に小さくなり、トップコーム16が必要な深さまで刺さる。
【0035】
(3)制御装置44は、ニッパーフレーム14の後退開始時点から励振手段34の励振を中断した後、デタッチングローラ12からニッパー部に連なるフリースFが切断された時点から、再びトップコーム16を振動させるように励振手段34を制御する。したがって、トップコーミングが行われている間は、トップコーム16が振動されないため、トップコーム16に接触しながら相対移動するフリースFに付着している短繊維やネップ等と、トップコーム16との摩擦抵抗が小さくなり過ぎることがなく、短繊維等がフリースに連れられて製品に混じるのを抑制することができる。また、トップコーミングが終了した後、トップコーム16が振動されるため、トップコーミングの際にトップコーム16に付着した短繊維やネップ等が除去され、トップコーム16に短繊維やネップ等が付着、堆積(成長)するのを抑制することができる。また、特許文献2のように圧力空気で短繊維等を吹き払う構成と異なり、吹き払った気流がコーミングシリンダ部の繊維を乱したり、フリースFの品質が悪化したりすることがない。
【0036】
(4)トップコーム16は、フリースFを梳る複数のニードル32と、ニードル32を支持する支持部材33とを備え、励振手段34は、その振動子35が支持部材33を振動させるように設けられている。したがって、トップコーム16以外の部分、例えば、ニッパーフレーム14を振動子35で振動させる構成に比較して、小さなエネルギーでトップコーム16を振動させることができる。
【0037】
(5)制御装置44は、コーミングシリンダ11の回転角度位置を等分(この実施形態では40等分)した値(インデックスと呼ばれる)に基づいて、励振指令信号の出力時期を設定する。したがって、トップコーム16の摩擦抵抗を必要なときだけ、容易に小さくすることができる。
【0038】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ ホーン37は、ほぼ円錐状に限らず、例えば、図4に示すように、支持部材33に剛体連結される側を偏平なほぼ直方体状に形成し、その幅方向がデタッチングローラ12の軸方向と平行になるように支持部材33に剛体連結してもよい。詳述すると、ホーン37は、支持部材33に剛体連結される側が、偏平な直方体の一部を、基端側及び先端側の厚さがそれぞれ一定で、基端側の方が厚く、かつ基端側の一定厚みの部分と先端側の一定厚みの部分の中間部の厚さが先端側に向かって次第に薄くなるように内側に凸の曲面で切り欠かれた形状に形成されている。即ち、ホーン37は、縦断面における形状が、途中から先端側に向かって二次曲線が対向する形状に形成されている。この場合、ホーン37がほぼ円錐状の場合に比較して、全てのニードル32を均一に振動させることができる。
【0039】
○ 振動子35が支持部材33を振動させる構成に代えて、図5に示すように、ホーン37の先端に、ニードル32と直交する方向に延びる振動板45を固定し振動板45に複数のニードル32が連結されている構成としてもよい。即ち、振動子35は振動板45を介して複数のコーム部材(ニードル32)に対して連結される。この構成では、複数のコーム部材を一つの振動子で効率良く振動させ易い。
【0040】
○ 振動子35を支持するブラケット36は、平板ではなく、剛性を高くするため、I形材やみぞ形材で構成してもよい。
○ 発振器42を各コーミングヘッドに設ける代わりに、制御装置44と同様に全てのコーミングヘッドの振動子35を1台の発振器42で励振させる構成にしたり、あるいは複数(例えば、2個又は3個)のコーミングヘッドで1台の発振器42を共用したりする構成にしてもよい。
【0041】
○ 励振手段34は、少なくともトップコーム16の先端部がフリースFに刺さる時点から刺し終わり時点まで、トップコーム16を振動させればよく、コーマ機の運転条件、例えば、ラップの繊維原料によっては、必ずしも振動を中断させなくてもよい。
【0042】
○ 制御装置44は、励振手段34によるトップコーム16の振動を中断させるように励振手段34を制御する代わりに、振動周波数を低くさせたり、共振周波数からずれた周波数で振動させたりするように制御してもよい。この場合、トップコーム16は、その先端部がフリースFに刺さる時点から刺し終わり時点までの間に比較して、振動周波数が変更されたときにおけるトップコームの摩擦抵抗が大きくなる。その結果、トップコーム16が短繊維等をフリースFから除去し易くなる。
【0043】
○ トップコーム16を振動させる方向は、フリースの移動方向に沿った方向に限らず、フリースの移動方向と直交する方向であってもよい。例えば、図6に示すように、ホーン37の先端が支持部材33の側面に剛体連結される状態となるように、振動子35をブラケット36を介してニッパーフレーム14に固定してもよい。この場合、振動子35を支持部材33の前側に配置してホーン37の先端を支持部材33に剛体連結する構成に比較して、振動子35の取り付け作業が容易になる。
【0044】
○ ニッパーフレーム14の前進開始時期や後退開始時期、あるいはニッパーナイフ25の開閉時期等は前記インデックスのときに限らない。
○ 振動子35は所望の周波数及び振幅が得られればよく、ランジュバン形振動子に限らない。また、圧電材料を用いて構成された振動子35に代えて、磁歪素子や超磁歪素子(圧電セラミック等)を用いて振動子を構成してもよい。
【0045】
○ ホーン37を設けずに、振動子35を振動させる部分に直接固定してもよい。
○ コーム部材は、線状に形成されたニードル32や針と呼ばれるものに限らず、板状(ブレイド状)に形成され、歯と呼ばれるものであってもよい。また、ニードル32は、別に形成した先端部32aを剛体連結した構成に限らず、基端から先端部まで同じ線材で形成した構成でもよい。
【0046】
○ ホーン37と支持部材33又は振動板45との剛体連結手段はろう付けに限定されず、ねじ締結などの適宜手段を用いることができる。
○ トップコーム16はニッパーフレーム14に固定され、ニッパーフレーム14と共に前後動する構成に限らない。例えば、トップコーム16がニッパーフレーム14に取り付けられ、前後運動はニッパーフレーム14と共に行い、上下運動はニッパーフレーム14とは別に積極的に行われる方式としたり、トップコームがニッパーフレームと独立して駆動される方式としたりしてもよい。
【0047】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)ニッパーフレームの揺動運動の後退途中でラップを把持し、コーミングシリンダの回転によりラップをコーミングして後続フリースとなし、揺動運動の前進途中でラップの把持を解放し、上下一対のデタッチングローラから繰り出された先行フリースに前記後続フリースを接合しつつ、この後続フリースの後端部分をトップコームでコーミングするように構成されたコーマ機において、
前記トップコームを振動させる励振手段を設け、少なくとも前記トップコームが前記フリースに刺さる時点から刺し終わり時点まで、前記トップコームを前記励振手段で振動させることを特徴とするコーマ機におけるトップコームの励振方法。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は一実施形態におけるコーマ機のコーミングヘッド部の側面図、(b)は部分拡大図。
【図2】(a)〜(h)はコーミングサイクルにおけるデタッチングローラ、トップコーム、ニッパー等の関係を示す模式図。
【図3】トップコーム及び励振手段を示す模式斜視図。
【図4】別の実施形態の振動子とトップコームの関係を示す模式斜視図。
【図5】別の実施形態の振動子とトップコームの関係を示す模式斜視図。
【図6】別の実施形態の振動子とトップコームの関係を示す模式斜視図。
【符号の説明】
【0049】
F…フリース、F1…先行フリース、F2…後続フリース、L…ラップ、11…コーミングシリンダ、12…デタッチングローラ、14…ニッパーフレーム、15…ニッパー部を構成するクッションプレート、15a…先端部、16…トップコーム、32…コーム部材としてのニードル、33…支持部材、34…励振手段、35…振動子、37…ホーン、44…制御手段としての制御装置、45…振動板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッパーフレームの揺動運動の後退途中でラップを把持し、コーミングシリンダの回転によりラップをコーミングして後続フリースとなし、揺動運動の前進途中でラップの把持を解放し、上下一対のデタッチングローラから繰り出された先行フリースに前記後続フリースを接合しつつ、その後続フリースの後端部分をトップコームでコーミングするように構成されたコーマ機であって、
前記トップコームを振動させる励振手段と、前記励振手段の励振を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするコーマ機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ニッパーフレームの後退開始時点から前記励振手段の励振を中断した後、前記デタッチングローラからニッパー部に連なるフリースが切断された時点から、再び前記トップコームを振動させるように前記励振手段を制御する請求項1に記載のコーマ機。
【請求項3】
前記トップコームは、フリースを梳る複数のコーム部材と、前記コーム部材を支持する支持部材とを備え、前記励振手段は、その振動子が前記支持部材を振動させるように設けられている請求項1又は請求項2に記載のコーマ機。
【請求項4】
前記振動子は、ホーンを介して支持部材に剛体連結され、前記ホーンは前記支持部材に剛体連結される側が、偏平な直方体の一部を、基端側及び先端側の厚さがそれぞれ一定で、基端側の方が厚く、かつ基端側の一定厚みの部分と先端側の一定厚みの部分の中間部の厚さが先端側に向かって次第に薄くなるように内側に凸の曲面で切り欠かれた形状に形成されている請求項3に記載のコーマ機。
【請求項5】
前記トップコームは、フリースを梳る複数のコーム部材と、前記コーム部材を支持する支持部材とを備え、前記励振手段は、その振動子が前記コーム部材と直交する方向に延びる振動板を介して複数の前記コーム部材に対して連結されている請求項1又は請求項2に記載のコーマ機。
【請求項6】
前記励振手段は、その振動子が前記トップコームを前記フリースの移動方向と直交する方向に振動させるように設けられている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のコーマ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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