説明

コールドオフセット印刷用紙

【課題】填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量が少ない中性抄造においても、裏抜けが少なく、吸水性の表裏差が少なく、パイリングおよびネッパリが少ない印刷適性に優れた、特に新聞用紙に適するコールドオフセット印刷用紙を提供すること。
【解決手段】本発明のコールドオフセット印刷用紙は、原紙上に水溶性高分子物質を含有する表面塗工剤を塗工乾燥したコールドオフセット印刷用紙であって、前記原紙が疎水性基を有するとともにカチオン性基の少なくとも一部が4級化されてなる両イオン性共重合体を有効成分とする製紙用内添サイズ剤を含有し、かつ、表面塗工剤の塗工量が0.05〜2g/m(両面の合計量)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性の表裏差が少なく、印刷適性に優れたコールドオフセット印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
コールドオフセット印刷用紙の品質に対する要求は年々高度になってきている。コールドオフセット印刷では浸透乾燥型インキを用いるため、印刷が反対面から透けて見える現象、いわゆる「裏抜け」を防止することについては年々要求レベルが高くなっている。中でも低坪量で軽量に製造される新聞用紙においては、裏抜けは最も重要な品質の1つである。裏抜けを少なくするためには、紙の不透明度を上げることが最も効果的であることが知られている。紙の不透明度を上げる方法としては、比散乱係数が高く不透明度の上昇効果が大きい填料を配合し、紙中灰分を上昇させることが有効である。特に炭酸カルシウムは、比散乱係数が高く、紙料と比較して安価である点などで有利であることから、新聞用紙の中性抄造への移行が進んでいる現在、紙中における炭酸カルシウムの配合量は徐々に増加する傾向にある。
【0003】
しかし、炭酸カルシウムなどの紙中の填料の増加は繊維間結合を形成できる繊維量が減少することから、紙の強度を著しく低下させる。また近年においては生産性の向上を意図して、抄紙機の高速化・広幅化が進んでいるが、抄紙機が高速化するほど、原料がワイヤー上に歩留まらず、白水系に流出する、いわゆる歩留りの低下が起こる。さらに、ネットワークを作る繊維量が減少することから、ワイヤー上の歩留まりはいっそう低下する。
【0004】
また、填料、特に炭酸カルシウムを多量に用いる最近の抄造方法では、内添サイズ剤として知られる中性ロジンを使用した場合には、中性ロジンの効果が著しく低下することが知られており、必要なサイズ性(吸水抵抗性)を確保するために、大量の中性ロジンの添加が必要となり、抄紙系の汚れや薬品コストの上昇が問題になる。また、中性ロジンはサイズ性の発現のために、硫酸アルミニウムの添加が必要となるが、硫酸アルミニウムを増配すると、抄紙系のpHが低下して炭酸カルシウムが溶解し、抄紙機で石膏が析出して、欠陥や断紙の要因となる。
【0005】
内添サイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー)を用いた場合には、添加量が多いと抄紙機の汚れが問題になることに加え、サイズ性の立ち上がりが遅いため、サイズプレスでの吸液量が増加し、アフタードライヤーの乾燥負荷が増大することから抄速が低下する問題や、摩擦係数が著しく低下することから用紙品質に悪影響を与える問題がある。また、ASA(アルケニルコハク酸無水物)を用いた場合には、添加量が多いと中性ロジン、AKD以上に抄紙機が汚れやすく、欠陥や断紙が頻発する問題があった。
【0006】
そこで、これまでに、中性抄紙において用いることのできるサイズ剤として、スチレン同族体と(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステルとの共重合体をアルキルハライドで4級化して得られる疎水性基含有カチオン性ポリマーの4級化物からなるサイズ剤(特許文献1参照)が提案されている。さらに、前記サイズ剤において用いた4級化剤種やカチオン性モノマー種を最適化することにより、サイズ効果だけでなく成紙の強度や摩擦係数の向上をも図ったサイズ剤も知られている。具体的には、前記共重合体をアルキルハライドに代えてエピハロヒドリンで4級化して得られる疎水性基含有カチオン性ポリマーの4級化物からなるサイズ剤(特許文献2参照)や、スチレン類と(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアミノアクリルアミドまたはこれらの4級塩等とを構成モノマーとする共重合体からなるサイズ剤(特許文献3参照)が提案されている。
【0007】
上記したAKD、ASA、特許文献1〜3のサイズ剤は、いずれもカチオン性であるために、硫酸バンドなどの定着剤を使用しなくても、アニオン帯電性のパルプ繊維に自己定着して紙へのサイズ性を付与するものであり、中性抄紙あるいはアルカリ抄紙が可能である。
【0008】
また、さらなるサイズ効果の向上を目指し、疎水性モノマーとカチオン性モノマー類を共重合する際にロジン誘導体を所定量共存させて得られる、ロジン結合型カチオン性重合体からなるサイズ剤(特許文献4参照)も提案されている。このサイズ剤では、ポリマー中に導入されたロジンのバルキーな構造がパルプ繊維への定着後に高い疎水性を付与することができ、加えて、ロジン環のカルボキシル基が炭酸カルシウムと相互作用することによりポリマー自体が不溶化してカチオン基による定着が一層促進される。そのため、サイズ効果の大幅な向上が可能になる。
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3のカチオン性サイズ剤は、填料として多量の炭酸カルシウムを使用した中性抄紙またはアルカリ抄紙においては、パルプ繊維への定着性や定着後の疎水化に改善の余地が大きく、充分に満足しうるサイズ効果が得られないのが現状であった。また、特許文献4のサイズ剤では、ロジン結合型カチオン性重合体の分子量が添加するロジン量の影響を受けやすいため、該重合体のパルプへの自己定着能、すなわちサイズ効果はロジン添加量によって左右されやすいという欠点があった。さらに、特許文献4のサイズ剤は、主鎖のポリマー中へのロジン導入量が少ない場合や未反応ロジンが残存した場合には、炭酸カルシウムと相互作用して疎水化に寄与するポリマー成分が少なくなり、サイズ効果の発現が不充分となる場合があった。
【0010】
また、特許文献1〜4のサイズ剤を含め従来のカチオン性サイズ剤では、実際の抄造系内において存在する多種多様なアニオン性の物質、いわゆるアニオントラッシュとも相互作用する可能性があり、そのような場合、パルプ繊維への自己定着が阻害され、効果的にサイズ性を発現しにくくなるという問題も有している。特に、硫酸バンド添加量が少ない中性抄紙においては、アニオントラッシュ量が増加する傾向があるので、この問題がより顕著に現れることになる。
【0011】
また、新聞用紙の上記した課題以外に、吸水度の表裏差改善がある。抄紙機で製造された紙は、少なからず抄紙機の装置構成に由来する表面性(平滑性)などの表裏差がある。表裏差が大きい原紙に、表裏同量の表面塗工剤を塗工した場合、原紙の表面性に起因する塗料の浸透程度等が異なるため、吸水性に表裏差が発生する。
【0012】
コールドオフセット印刷は、浸透乾燥型インキを使用しアフタードライヤーを持たない印刷機において、版上の疎水部に湿し水が、親水部にインキが供給され、ブランケットを介して紙に転写される印刷方法である。良好な印刷適性を確保するには、紙はブランケットを介して、一定量の水分を吸収する(吸水する)ことが重要である。紙が湿し水を吸いやすい場合、版上の親水部に湿し水が供給不足になり、親水部にインキが供給され、非画線部にインキが付着する問題が発生する場合がある。一方、紙が湿し水を吸いにくい場合、版上の親水部に必要以上に湿し水が余るようになり、インキと混ざり合いインキが乳化し、紙へのインキ着肉不良が発生する場合がある。このように、印刷機に適した一定の範囲の吸水性をコントロールすることが重要である。
【0013】
吸水性をコントロールする方法の1つとして、原紙への表面塗工剤の塗工を挙げることができ、例えば表面塗工剤として水溶性高分子物質と表面サイズ剤を併用する方法がある(特許文献5)。この様な塗工剤を用いて、紙の吸水性の表裏差を小さくするためには、表裏差のある原紙の両面において塗工剤の塗工量を変更することが考えられる。しかし、表面サイズ剤の塗工量が表裏で調整されることにより、吸水性の表裏差は小さくなるが、同時に水溶性高分子物質の塗工量の表裏差が生じるため、表面強度の表裏差が発生し、印刷機上で強度が弱い面で紙向けや紙粉によるパイリングが発生する場合がある。また、澱粉、ポリビニルアルコール、あるいはポリアクリルアミド等の水溶性高分子物質の塗工量が多い面では、湿潤状態で紙表面の粘着性が増加して印刷時にブランケットに貼り付き断紙を誘発したりするといったネッパリトラブルが発生しやすくなる。
【0014】
吸水性をコントロールする他の方法として、原紙への内添サイズ剤の添加と表面塗工剤の塗工を併用して、サイズ度をコントロールする方法がある。しかし、前述の通り、裏抜けを良好にするために原紙灰分を多くした条件では、公知の内添サイズ剤を使用しても必要な原紙の吸水性を得ることは困難であり、表面塗工剤を塗工しても吸水性の表裏差を改善するには不十分であった。
【0015】
【特許文献1】米国特許第2964445号明細書
【特許文献2】特開昭48−11407号公報
【特許文献3】特開平3−167397号公報
【特許文献4】特開2001−73292号公報
【特許文献5】特開2007−119944公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明の主たる課題は、填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量が少ない中性抄造においても、吸水性の表裏差が少なく、パイリングおよびネッパリが少ない印刷適性に優れた、特に新聞用紙に適するコールドオフセット印刷用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の印刷用紙は以下の構成を特徴とする。
(1)請求項1に係る発明のコールドオフセット印刷用紙は、原紙に製紙用内添サイズ剤と填料を含有し、原紙上に水溶性高分子物質を含有する表面塗工剤を塗工乾燥したコールドオフセット印刷用紙であって、
前記製紙用内添サイズ剤が疎水性基を有するとともにカチオン性基の少なくとも一部が4級化されてなる両イオン性共重合体を有効成分とし、前記表面塗工剤の塗工量が0.05〜2g/m(両面の合計量)であることを特徴とする。
(2)請求項2に係る発明のコールドオフセット印刷用紙は、前記両イオン性共重合体が疎水性モノマー(A)、カチオン性モノマー(B)、およびアニオン性モノマー(C)を必須とし、かつ前記モノマー(C)のアニオン当量が前記モノマー(B)のカチオン当量の0.1〜90%である単量体成分を重合して得られるものであり、そのカチオン性基の4級化率が40モル%以上であることを特徴とする。
(3)請求項3に係る発明のコールドオフセット印刷用紙は、前記表面塗工剤が表面サイズ剤を含有し、かつ表面サイズ剤の塗工量が、固形分で0.004〜0.5g/m(両面の合計量)であることを特徴とする。
(4)請求項4に係る発明のコールドオフセット印刷用紙は、前記填料が炭酸カルシウムであることを特徴とする。
(5)請求項5に係る発明のコールドオフセット印刷用紙は、新聞用紙であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、次の効果が奏される。
【0019】
(1)填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量の少ない中性抄造においても、特定の製紙用内添サイズ剤を含有することで優れたサイズ性を付与することができる。
(2)上記内添サイズ剤に加え、適量の表面塗工剤を塗工することにより、吸水性の表裏差が少なく、コールドオフセット印刷時にパイリングおよびネッパリが少なく印刷適性に優れ、裏抜けが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明で用いられる製紙用内添サイズ剤は、疎水性基を有するとともにカチオン性基の少なくとも一部が4級化されてなる両イオン性共重合体を有効成分とするものであり、当該両イオン性共重合体の中でも、4級化率が特定以上で、アニオン当量とカチオン当量の比率が所定範囲にある両イオン性共重合体であり、本発明の印刷用紙は、このような製紙用内添サイズ剤と中性ロジンサイズ剤とを、パルプスラリーに添加して湿式抄造したものである。
【0021】
1.両イオン性共重合体
本発明で用いられる製紙用内添サイズ剤は、疎水性基を有するとともに、カチオン性基の少なくとも一部が4級化されてなる両イオン性共重合体を有効成分とする。これにより、填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量の少ない中性抄造においても、効率的にサイズ性を付与することができる。しかも、実際の抄造系内に存在するアニオントラッシュとの相互作用が少ない点でも、パルプ繊維に良好に自己定着し、効果的にサイズ性を発現することが期待される。このように、本発明で用いる製紙用内添サイズ剤は、炭酸カルシウム量やアニオントラッシュ量の多い中性抄造条件においても、非常に効率よく優れたサイズ性を付与できるものである。
【0022】
本発明で用いられる製紙用内添サイズ剤がこのような効果を発現するのは、前記両イオン性共重合体が、パルプに自己定着するとともに炭酸カルシウムと相互作用する部位を一つのポリマー分子内に持ち、かつ、ポリマー内およびポリマー間でイオン的な錯体を形成しうるからであると推測される。つまり、一分子内に前述の部位を持つことにより、パルプと炭酸カルシウムの効率的な疎水化が可能となり、また、イオン的な錯体を形成することにより、巨大化した分子の集合体の構造を持つことが可能になり、その結果、パルプ繊維への物理的な歩留まりの向上や、アニオントラッシュなどとの相互作用が緩和されることによる自己定着能の向上などが達成されて、効果的なサイズ発現が可能になっていると考えられる。
【0023】
具体的には、炭酸カルシウムが存在し、硫酸バンドが存在しないか使用量の少ない中性抄造条件において、炭酸カルシウムの水分散液はその希釈状態やpHによって粒子表面電荷が異なり、また、炭酸カルシウム粒子の分散性向上のためにアニオン性のポリマーが添加される場合があることから、炭酸カルシウムと相互作用させる官能基としては、炭酸カルシウムが正電荷を有するときにはカルボキシル基などのアニオン性基が有効であり、負電荷を有するときにはアミノ基やアンモニウム基といったカチオン性基が有効であると考えられる。そして、スチレン、アルキル基を有する(メタ)アクリレートなどといった疎水部を持ったモノマーに、該モノマーと共重合しやすいカチオン性モノマーおよびアニオン性モノマーをともに共重合させることにより、あらゆる表面電荷状態の炭酸カルシウムと相互作用する両イオン性部位が導入されて、効率よく優れたサイズ性を付与することができると考えられる。
【0024】
(単量体成分)
前記両イオン性共重合体は、疎水性モノマー(A)、カチオン性モノマー(B)、およびアニオン性モノマー(C)を必須とする単量体成分を重合して得られるものであることが好ましい。この両イオン性共重合体は、疎水性モノマー(A)に由来する疎水性基と、カチオン性モノマー(B)に由来するカチオン性基と、アニオン性モノマー(C)に由来するアニオン性基とを有するものである。
前記疎水性モノマー(A)としては、スチレン類、(メタ)アクリル酸のC〜C14アルキルエステル(炭素数1〜14のアルキルのエステル)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、例えば(メタ)アクリロニトリル等も使用することができる。疎水性モノマー(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。なお、本明細書においては、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸またはメタクリル酸の総称を意味するものである。同様に、「(メタ)アクリル」は「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリロ」は「アクリロ」または「メタクリロ」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」は「アリル」または「メタリル」を、それぞれ意味する。
【0025】
前記スチレン類としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸のC〜C14アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの脂肪族炭化水素エステルのほか、脂環系や芳香族系の炭化水素基を含有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
前記カチオン性モノマー(B)としては、3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、3級アミノ基含有(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、例えば、1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド等のカチオン性モノマーも使用することができる。カチオン性モノマー(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
前記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
また、前記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド;メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。
前記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレートなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリレート;メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミドや前記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、前述した3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドまたは3級アミノ基含有(メタ)アクリレートを後述する4級化剤(例えば、塩化メチル、塩化ベンジル、硫酸メチル、エピクロルヒドリンなど)を用いて4級化したモノ4級塩基含有モノマーが挙げられる。具体的には、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリエチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0029】
前記アニオン性モノマー(C)としては、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。アニオン性モノマー(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記α,β−不飽和カルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、およびこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)等が挙げられる。
前記α,β−不飽和スルホン酸類としては、例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)等が挙げられる。
【0030】
前記単量体成分においては、前記アニオン性モノマー(C)のアニオン当量が前記カチオン性モノマー(B)のカチオン当量の0.1〜90%であることが好ましく、より好ましくは5〜50%、さらに好ましくは5〜20%であるのがよい。つまり、前記単量体成分を重合してなる前記両イオン性共重合体は、カチオン当量が多く、アニオン当量の少ない方がサイズ効果を発現し易いのである。カチオン当量がアニオン当量と近似した値もしくは同じ値であるか、カチオン当量がアニオン当量よりも小さい場合(具体的には、カチオン当量に対するアニオン当量の比率(百分率)が90%を超える場合)、共重合体のアニオン部位とカチオン部位とがイオン的に強く相互作用し過ぎることにより活性なイオン基が減少する。その結果、パルプ繊維へのカチオンの定着作用を低下させたり、疎水部位と親水部位の配向バランスが悪くなったりする等の要因から、効率良くサイズ性を発現しにくくなる傾向があるので、上記比率の範囲のアニオン性モノマー(C)のアニオン当量が必要である。
【0031】
従って、前記単量体成分におけるカチオン当量に対するアニオン当量の比率と同様、単量体成分を重合してなる両イオン性共重合体におけるカチオン当量に対するアニオン当量の比率も、前記と同じ範囲であることが好ましい。例えば、単量体成分の重合がビニル結合によりなされるよう単量体成分を選択した場合など、重合にカチオン性基およびアニオン性基が関与しない場合には、両イオン性共重合体におけるカチオン当量に対するアニオン当量の比率は、単量体成分におけるカチオン当量に対するアニオン当量の比率と一致することとなる。
前記単量体成分における各必須モノマーの含有割合は、カチオン性モノマー(B)のカチオン当量に対するアニオン性モノマー(C)のアニオン当量の比率が前述した範囲になるように設定することが望ましく、それ以外の点では特に制限はない。例えば、単量体成分全量に対して、疎水性モノマー(A)は60〜90重量%程度、カチオン性モノマー(B)は9〜40重量%程度、アニオン性モノマー(C)は1〜10重量%程度であることが好ましい。
【0032】
前記単量体成分は、さらに必要に応じ、前述した疎水性モノマー(A)、カチオン性モノマー(B)、およびアニオン性モノマー(C)のほかに、本発明の効果を損なわない範囲において、その他のモノマーを含有させることもできる。その他のモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなアミノ基を含有しない水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、iso−プロピル(メタ)アクリルアミドのようなアミノ基を含有しないアミド基含有モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メチルビニルエーテル等が挙げられる。その他のモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
(重合)
前記単量体成分の重合は、特に制限されるものではなく、例えば、バルク重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することができる。また、各モノマーや開始剤等の仕込み方法も、一括、分割、部分滴下、全量滴下など公知の方法を適宜採用すればよい。また、重合を行う際の媒体(溶媒)も、重合方法等に応じて公知のものから適宜選択すればよい。
前記重合に用いることのできる重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、その他の開始剤を適宜選択すればよい。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス開始剤を用いることもできる。重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、特に限定されず、適宜設定すればよい。
【0034】
前記アゾ系重合開始剤としては、例えば、アゾビスメチルブチロニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩等が挙げられる。
前記過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過硫酸ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物等が挙げられる。
前記レドックス開始剤としては、例えば、前述した過酸化物と、亜硫酸ナトリウム、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、3級アミン類などの還元剤とを併用すればよい。
【0035】
また、前記重合は、粘度上昇を防止して反応を円滑に行うために、必要に応じて、連鎖移動剤の存在下で行うこともできる。連鎖移動剤としては、油溶性、水溶性の連鎖移動剤を適宜選択することができるが、一般的には、親油性の有機溶剤中で重合する場合には油溶性連鎖移動剤が、逆に親水性の有機溶剤中で重合する場合には水溶性連鎖移動剤が好ましい。また、油溶性連鎖移動剤と水溶性連鎖移動剤を併用しても差し支えない。連鎖移動剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、単量体成分全量に対して1〜5重量%程度が好ましい。
前記油溶性連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸ドデシルなどのメルカプタン類;(メタ)アリルメタクリレートのような疎水性アリル化合物;クメン、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン等が挙げられる。
前記水溶性連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオリンゴ酸、チオグリコール酸、およびこれらの塩などのメルカプタン類;(メタ)アリルアルコール、(メタ)アリルアミン、(メタ)アリルスルホン酸、およびこれらの塩などの親水性アリル化合物;エタノールアミン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0036】
(4級化)
前記両イオン性共重合体は、そのカチオン性基の少なくとも一部が4級化されてなるものであり、両イオン性共重合体のカチオン性基の4級化率は40モル%以上であることが好ましく、より好ましくは50〜100モル%であるのがよい。4級化率が40モル%未満であると、抄紙pHが高い場合にパルプ繊維と填料(炭酸カルシウム)への効率的な疎水性付与効果が得られないおそれがある。
前記両イオン性共重合体のカチオン性基を4級化するに際しては、前記単量体成分を重合した後に得られた共重合体を4級化剤で4級化してもよいし、前記単量体成分のカチオン性モノマー(B)として4級アンモニウム基含有モノマーを用いて重合するようにしてもよい。
【0037】
4級化に際し用いることのできる4級化剤としては、例えば、硫酸ジメチル、炭酸ジメチル、塩化メチル、塩化アリル、塩化ベンジル、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エチレンクロルヒドリン、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシドール、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等の1種もしくは2種以上が挙げられる。これらの中でも、エピクロルヒドリン、塩化ベンジルが好ましい。
【0038】
(平均分子量)
前記両イオン性共重合体の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000であることが好ましく、より好ましくは30,000〜600,000であるのがよい。重量平均分子量が10,000未満であると、サイズ剤の歩留まりが著しく低下してサイズ効果が得られにくくなる傾向があり、一方、1,000,000を超えると、抄紙の乾燥工程においてサイズ剤が紙中に効率よく拡散されなくなるため、サイズ剤成分が紙中で不均一に存在してサイズ効果が低下するおそれがある。
【0039】
(その他)
本発明で用いられる製紙用内添サイズ剤は、前記両イオン性共重合体を有効成分とするものであればよく、例えば、前記両イオン性共重合体そのものであってもよいし、該共重合体を含む溶液または分散液(例えば、前記重合および4級化により得られた反応液など)であってもよい。
【0040】
2.原紙
本発明の印刷用紙は、前記両イオン性共重合体をパルプスラリーに添加し、これを湿式抄造した原紙上に、表面塗工剤を塗工乾燥することにより製造される。
(添加量)
本発明における両イオン性共重合体の対パルプ絶乾重量当たりの添加量としては、通常0.05〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.3重量部含有することが好ましい。
【0041】
(パルプ)
前記パルプスラリーを構成するパルプ繊維は、特に制限はなく、NBKP、LBKPなどの木材パルプ;TMPやGPなどの機械パルプ;脱墨パルプ(DIP)等の製紙用に通常使用されるもののほか、リンターパルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、ワラなどの非木材パルプ;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維等を使用できる。特に新聞用紙では、全パルプ乾燥重量に対し脱墨パルプが50重量%以上であることが好ましい。
【0042】
(填料)
前記パルプスラリーには填料を配合することができる。填料としては、酸性抄紙あるいは中性抄紙において一般に使用されている填料であればよく、特に限定されるものではない。例えば、中性抄紙では、クレー、シリカ、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料が単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。
【0043】
本発明では、両イオン性共重合体が炭酸カルシウムへの作用に優れていること、炭酸カルシウムが安価であり且つ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。炭酸カルシウムとしては、内添サイズ剤との相互作用により、裏抜けが顕著に改善する紡錘状、ロゼッタ型の形質炭酸カルシウムが好ましい。また、炭酸カルシウム−シリカ複合物(特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に記載の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)も使用可能である。また酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。填料の配合量としては、不透明度等の点から、パルプ重量に対して2〜30重量%が好ましい。
【0044】
また、本発明では、紙中灰分が10%以上であることが望ましい。紙中灰分が10%以上であると、比較的低分子量の既存サイズ剤は、比表面積が大きい填料に吸着されてしまい、サイズ性を確保しにくくなることから大量の添加が必要となり、それに伴う弊害が大きくなるためである。
【0045】
(その他添加剤)
前記パルプスラリーには、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの内添紙力増強剤;アクリルアミドとアミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン性澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウム共重合物などの濾水性及び/又は歩留まり向上剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などの内添サイズ剤;紫外線防止剤、退色防止剤などの助剤などを添加してもよい。
【0046】
(抄紙方法)
本発明の印刷用紙の原紙は、特に、中性抄造により得られる中性抄紙であることが、本発明の効果を有意に発揮させることができる点で好ましい。
抄紙機の型式は特に限定は無く、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ギャップフォーマー抄紙機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できる。プレス線圧は通常の操業範囲内で用いられる。
【0047】
3.表面塗工剤
本発明では、水溶性高分子物質を含有する表面塗工剤の塗工乾燥が必須である。
(塗工装置)
本発明の表面塗工剤を原紙表面に塗工する装置には、特に限定は無く、2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、ナイフコーターなどの公知の装置を適宜選定して用いることができる。表面塗工方式としては、液膜転写方式であり、高濃度で塗工可能で、サイズ効果の発現が良好なゲートロールサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレスを使用するのが好ましい。
【0048】
(水溶性高分子物質)
水溶性高分子物質は特に限定は無く、例えば、生澱粉や、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉などの変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコールなどの変性アルコール、スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどを単独又は併用できる。その中でも表面強度向上効果とサイズ性のバランスから、本発明にはヒドロキシエチル化澱粉の塗布が最も好ましい。
【0049】
(表面サイズ剤)
本発明では、表面塗工剤中に表面サイズ剤を含有することが好ましい。表面サイズ剤は特に限定は無く、スチレンアクリル酸、スチレンマレイン酸、オレフィン系化合物、カチオン性サイズ剤などの表面サイズ剤を併用塗布することができるが、本発明ではカチオン性表面サイズ剤が好ましく用いられる。炭酸カルシウムが填料として使用される中性抄造ではカチオン性を示す硫酸バンドの使用量が少ないため、カチオン性の表面サイズ剤はより紙の表面付近に留まりやすく、紙のサイズ性が向上する。サイズ性が向上すれば、オフセット印刷時に水のしみ込みが少なくなるため、表面強度をより高く維持することができる。このようなカチオン性表面サイズ剤としては、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(なお(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/またはメタクリル酸)を意味する。)、スチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、n−ブチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、プロピレン/マレイン酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、α−オレフィン−マレイン酸系共重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの共重合体は、ナトリウム塩、カリウム塩、あるいはアンモニウム塩として使用してもよい。
【0050】
(塗工量)
本発明の表面塗工剤の塗工量は、0.05〜2g/m(両面の合計量)の範囲にあることが重要である。塗工量を0.05g/m(両面)以上とすることにより、コールドオフセット印刷用紙の表面強度を十分に高くすることができる。一方、塗工量が2g/m(両面)を超えた場合、コールドオフセット印刷用紙特有の問題であるネッパリ問題(用紙が大量印刷された際、塗工材料がブランケットに転移、蓄積することにより引き起こされる粘着性トラブル)が生じやすくなる。表面塗工剤の塗工量は、より好ましくは0.1〜2.0g/m2、更に好ましくは0.2〜1.5g/mである。
【0051】
(その他成分)
表面塗工剤中には、上記の他、分散剤、保水剤、消泡剤等の各種助剤を添加してもよい。また、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、サチンホワイト、プラスチックピグメント、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ等の無機または有機顔料を、必要に応じて単独又は2種類以上併用して使用できる。
【0052】
本発明の表面塗工剤中の表面サイズ剤の塗工量は、固形分で0.004〜0.5g/mであることが好ましい。さらに好ましくは0.005〜0.3g/mである。表面サイズ剤の塗工量が少なすぎる場合、内添サイズ剤を併用した場合でも、コールドオフセット印刷用紙に必要な表面サイズ性が得られにくい。一方、塗工量が多すぎる場合、コールドオフセット印刷用紙特有の問題であるネッパリ問題が生じやすくなる。本発明では上記の範囲であることにより、高いサイズ性が得られるとともにネッパリの問題を改善することができる。より好ましい表面サイズ剤の塗工量は、0.01〜0.2g/mの範囲である。
表面塗工剤中の水溶性高分子物質の塗工量は、0.04〜1.8g/mが好適である。
【0053】
(カレンダー)
表面塗工剤の塗工後、カレンダー処理を施してもよい。カレンダーは通常の操業範囲内の線圧で用いられるが、嵩高な紙を製造する観点から、紙の平滑性を維持できる範囲でなるべく低線圧が好ましく、また、ソフトニップカレンダーが好ましい。
【0054】
4.作用
本発明において優れた効果が得られる理由は次のように推測される。原紙に疎水性基を有するとともにカチオン性基の少なくとも一部が4級化されてなる両イオン性共重合体を有効成分とする製紙用内添サイズ剤を含有させることにより、既存の内添サイズ剤ではなし得なかったサイズ性を効果的に発現させることができる。そのため、表面サイズ性が表面塗工剤中の表面サイズ剤にのみに依存することがなくなり、表裏の表面性が異なる一般的な原紙を用いた場合でも、表面塗工剤を塗工後の表面サイズ性の表裏差を小さくすることができる。また、表面塗工剤の表裏の塗工量を大幅に変更する必要がなくなり、所定の表面塗工剤の塗工量(0.05〜2g/m;両面の合計量)を塗工することにより、表面強度、ネッパリの表裏差も改善できる。
【0055】
5.種類、用途
本発明の印刷用紙の種類は、コールドオフセット印刷用紙である以外は特段の制限はない。コールドオフセット印刷用紙の中では、印刷速度が速い新聞用紙において、特に本発明は効果的である。新聞用紙の坪量は30〜60g/m程度、好ましくは35〜55g/mである。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を、コールドオフセット印刷用新聞用紙に関する実施例を挙げて説明するが、当然のことながら、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中、部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部及び重量%を示す。また、薬品添加率については、特に指定が無い場合は、固形分の添加率を示す。有姿と指定している場合は、固形分ではなく薬品そのものの添加率を示す。例えば1%濃度の薬品を固形分で0.2%添加する場合、有姿では20%添加となる。
なお、以下の実施例および比較例において、共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより下記の条件で測定した。
カラム:昭和電工(株)製「Asahipak GF−7M HQ」、「Asahipak GF−310 HQ」
機器:昭和電工(株)製「GPC SYSTEM−21H」
【0057】
<評価方法>
得られた新聞用紙を下記の方法により評価し、結果を表1に示す。
(紙中灰分):JIS P 8251、ISO 1762に準拠して測定した。
(点滴吸水度):吸水性の指標として、J.TAPPI 33の試験方法に準拠し、滴下水量1μLで測定した。数値が大きいほど、サイズ性が良好であることを示す。測定は、新聞用紙のF面、W面の両方について行い、吸水度の表裏差が10secを超えるものを“表裏差が大きい(×)”、5〜10secのものを“表裏差が小さい(○)”、5secより小さいものを“表裏差が極めて小さい(◎)”と判断した。
【0058】
(ブランケット紙粉パイリング):新聞用紙について、ブランケット紙粉パイリング量の評価は以下のようにして行った。オフセット印刷機で、湿し水膜圧0.9μm、印面濃度1.15、印刷速度600rpm、インキは墨インキ(商品名:Newsking、東洋インキ製造社)で行った。2万部印刷後にブランケット非画線部(面積200cm)に付着した紙粉を、エタノールを用いて掻きとり、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、乾燥して重量を測定し、100cm2当たりの紙粉量に換算して評価した。パイリング紙粉量が50mg/100cmを超える場合、“劣る(×)”、30〜50mg/100cmの場合、“実用上問題はない(○)”、30mg/100cmを下回る場合、“良好(◎)”と判断した。なお、紙粉量の測定はコールドオフセット印刷用紙のF面、W面に両方について行い、平均値を用いた。
【0059】
(ネッパリ強度):新聞用紙を4×6cmに2枚切り取り、塗布面を温度20℃の水に5秒間浸漬後、塗工面同士を密着させた。外側両面に新聞用紙原紙を重ね、50kg/cmの圧力でロールに通し、25℃、60%RHで24時間調湿した。3×6cmの試料片とした後、引っ張り試験機で、引っ張り速度30mm/minの条件で測定を行った。測定値が大きいほど、剥がれにくい(逆の言い方をすると、粘着性が強い)ことを意味する。ネッパリ強度が100mN/3cmを超えるものを、“剥離性が劣る(×)”、100mN/3cm以下のものを、“剥離性が良好である(○)”、50mN/3cm以下のもの“剥離性が極めて良好である(◎)”とした。
【0060】
<内添サイズ剤の製造>
(1)合成例1
疎水性モノマーとしてスチレン30重量部、ブチルアクリレート50重量部、カチオン性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド3重量部、アニオン性モノマーとしてメタクリル酸1重量部、イタコン酸1重量部からなる単量体成分と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン2重量部と、溶媒としてメチルイソブチルケトン50重量部とを4つ口フラスコに入れ、85℃まで加熱した後、開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2.5重量部を加え、次いで90℃で3時間重合させた。次に、水300重量部および90%酢酸水7.7重量部を加えて水溶化した後、加熱蒸留してメチルイソブチルケトンを留去させた。その後、85℃で4級化剤としてエピクロルヒドリン8.5重量部を添加して同温度で3時間反応させた。このとき、反応後の反応液は完全に水溶化していた。次いで、冷却し、水で希釈して、疎水性基を有する両イオン性共重合体を含む固形分20重量%の水溶液を得、これを製紙用内添サイズ剤(1)とした。
なお、単量体成分におけるアニオン性モノマーのアニオン当量をカチオン性モノマーのカチオン当量に対する比率(百分率)で示すと24%、また、得られた内添サイズ剤中の共重合体について、そのカチオン性基の4級化率は80モル%、重量平均分子量は26×10であった。
【0061】
(2)合成例2
疎水性モノマーとしてスチレン50重量部、ブチルメタクリレート26重量部、カチオン性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド6重量部、アニオン性モノマーとしてメタクリル酸1重量部、アクリル酸1重量部、無水マレイン酸1重量部からなる単量体成分と、連鎖移動剤としてチオグリコール酸1.5重量部と、溶媒としてイソプロパノール50重量部とを4つ口フラスコに入れ、85℃まで加熱した後、開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル2.5重量部を加え、次いで90℃で3時間重合させた。次に、水300重量部および90%酢酸水9重量部を加えて水溶化した後、加熱蒸留してイソプロパノールを留去させた。その後、85℃で4級化剤としてジメチル硫酸13.5重量部を添加して同温度で3時間反応させた。このとき、反応後の反応液は完全に水溶化していた。次いで、冷却し、水で希釈して、疎水性基を有する両イオン性共重合体を含む固形分20重量%の水溶液を得、これを製紙用内添サイズ剤(2)とした。 なお、単量体成分におけるアニオン性モノマーのアニオン当量をカチオン性モノマーのカチオン当量に対する比率(百分率)で示すと34%、また、得られた内添サイズ剤中の共重合体について、そのカチオン性基の4級化率は80モル%、重量平均分子量は35×10であった。
【0062】
<コールドオフセット印刷用新聞用紙の製造例>
[実施例1]
DIP(濾水度180ml)80部、TMP(濾水度100ml)15部、及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、濾水度600ml)5部を混合離解して調製したパルプスラリーに、対パルプ固形分に対し有姿0.5%の液体硫酸バンド、対パルプ固形分0.5%のカチオン変性澱粉、対パルプ固形分0.05%の合成例1で得られた内添サイズ剤(1)、対パルプ固形分20%の軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)、対パルプ固形分100ppmの歩留まり向上剤を順次添加した後、このスラリーを1%まで希釈した。この試料を、ツインワイヤー型抄紙機を用いて抄紙速度1200m/分で抄紙して坪量42g/m2となるように中性抄紙して新聞用紙原紙を得た。得られた原紙は、紙面pHが6.5、灰分が13.0%であった。この原紙にゲートロールコーターを用いて、ヒドロキシエチル化澱粉及びカチオン性表面サイズ剤(スチレン/アクリル酸エステル共重合体)からなる表面塗工剤(ヒドロキシエチル化澱粉の固形分濃度6.0%、表面サイズ剤の固形分濃度0.30%)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に塗工して、コールドオフセット印刷用新聞用紙を得た。ヒドロキシエチル化澱粉とカチオン性表面サイズ剤の塗工量は、それぞれ0.80g/m(両面)及び0.040g/m(両面)であった。得られた新聞用紙について、前述の方法で、点滴吸水度、ブランケット紙粉パイリング量、ネッパリ強度を測定した。
【0063】
[実施例2]
ヒドロキシエチル化澱粉及びカチオン性表面サイズ剤からなる表面塗工剤(ヒドロキシエチル化澱粉の固形分濃度6.0%、表面サイズ剤の固形分濃度2.4%)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に塗工した以外は、実施例1と同様の方法で、コールドオフセット印刷用新聞用紙を得た。その際のヒドロキシエチル化澱粉とカチオン性表面サイズ剤の塗工量は、それぞれ0.80g/m(両面)及び0.32g/m(両面)であった。
【0064】
[実施例3]
ヒドロキシエチル化澱粉及びカチオン性表面サイズ剤からなる表面塗工剤(ヒドロキシエチル化澱粉の固形分濃度6.0%、表面サイズ剤の固形分濃度0.035%)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に塗工した以外は、実施例1と同様の方法で、コールドオフセット印刷用新聞用紙を得た。その際のヒドロキシエチル化澱粉とカチオン性表面サイズ剤の塗工量は、それぞれ0.80g/m(両面)及び0.0045g/m(両面)であった。
【0065】
[実施例4]
製紙用内添サイズ剤(1)に代えて合成例2で得られた製紙用内添サイズ剤(2)を、対パルプ固形分0.05%添加した以外は、実施例1と同様にコールドオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0066】
[実施例5]
対パルプ固形分0.02%の合成例1で得られた内添サイズ剤(1)を添加し、ヒドロキシエチル化澱粉及びカチオン性表面サイズ剤からなる表面塗工剤(ヒドロキシエチル化澱粉の固形分濃度9.0%、表面サイズ剤の固形分濃度0.9%)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に塗工した以外は、実施例1と同様の方法で、コールドオフセット印刷用新聞用紙を得た。その際のヒドロキシエチル化澱粉とカチオン性表面サイズ剤の塗工量は、それぞれ1.9g/m(両面)及び0.096g/m(両面)であった。
【0067】
[実施例6]
対パルプ固形分0.07%の合成例1で得られた内添サイズ剤(1)を添加し、ヒドロキシエチル化澱粉及びカチオン性表面サイズ剤からなる表面塗工剤(ヒドロキシエチル化澱粉の固形分濃度1.5%、表面サイズ剤の固形分濃度0.20%)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に塗工した以外は、実施例1と同様の方法で、コールドオフセット印刷用新聞用紙を得た。その際のヒドロキシエチル化澱粉とカチオン性表面サイズ剤の塗工量は、それぞれ0.045g/m(両面)及び0.0056g/m(両面)であった。
【0068】
[比較例1]
ヒドロキシエチル化澱粉及びカチオン性表面サイズ剤からなる表面塗工剤(ヒドロキシエチル化澱粉の固形分濃度10.0%、表面サイズ剤の固形分濃度0.18%)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に塗工した以外は、実施例1と同様の方法で、コールドオフセット印刷用新聞用紙を得た。その際のヒドロキシエチル化澱粉とカチオン性表面サイズ剤の塗工量は、それぞれ2.2g/m(両面)及び0.040g/m(両面)であった。
【0069】
[比較例2]
ヒドロキシエチル化澱粉及びカチオン性表面サイズ剤からなる表面塗工剤(ヒドロキシエチル化澱粉の固形分濃度1.0%、表面サイズ剤の固形分濃度0.13%)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に塗工した以外は、実施例1と同様の方法で、コールドオフセット印刷用新聞用紙を得た。その際のヒドロキシエチル化澱粉とカチオン性表面サイズ剤の塗工量は、それぞれ0.040g/m(両面)及び0.0050g/m(両面)であった。
【0070】
[比較例3]
製紙用内添サイズ(1)のかわりに中性ロジンサイズ剤を対パルプ固形分0.6%添
加した以外は、実施例1と同様の方法でコールドオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
上記表1の両イオン性共重合体の添加率は、パルプ固形分に対する添加率を示している。表1から次のことが示されている。
(ア)実施例1及び4は、吸水性の表裏差、パイリング及びネッパリの全ての評価結果が優れていることを示している。実施例1及び4は、両イオン性共重合体の添加率が0.05%、澱粉及びサイズ剤を含有する表面塗工剤の塗工量が0.84g/mと同じで、両イオン性共重合体の合成例が異なっている。このことから、原紙にカチオン性基の少なくとも一部が4級化されてなる両イオン性共重合体を含有し、原紙上に表面塗工剤の所定の塗工量を含有させれば、全ての評価結果が優れたものとなることが示されている。
【0073】
(イ)実施例2、3及び5、6は、吸水性の表裏差、パイリング及びネッパリの評価結果の一部が優れ、一部が良好であることを示している。実施例2及び3は、両イオン性共重合体の添加率が0.05%、澱粉の塗工量が0.80g/mと同じで、実施例3のサイズ剤の塗工量が実施例2のそれより非常に少ない点で異なっている。一方、実施例5は、両イオン性共重合体の添加率が0.02%、澱粉とサイズ剤の塗工量が1.90g/m、0.096g/mであって、両イオン性共重合体の添加量が少ないが表面塗工剤の塗工量を多くすることで、上記の評価結果が得られていると考えられる。実施例6は、両イオン性共重合体の添加率が0.07%、表面塗工剤の塗工量が0.0506g/mであって、表面塗工剤の塗工量は少ないが両イオン性共重合体の添加量が多いことにより、上記の評価結果が得られていると考えられる。これらのことから、上述したように、原紙にカチオン性基の少なくとも一部が4級化されてなる両イオン性共重合体を含有し、原紙上に表面塗工剤の所定の塗工量を含有させれば、評価結果の一部が優れ、一部が良好なものとなることが示されている。
【0074】
(ウ)比較例1及び2は、吸水性の表裏差、パイリング及びネッパリの評価結果の一部が劣っていることを示している。比較例1及び2は、両イオン性共重合体の添加率が0.05%で実施例1〜4と同じであるが、表面塗工剤の塗工量が2.24g/m、0.045g/mであって、実施例1〜4の塗工量0.05〜2g/m(両面の合計量)の範囲から外れている。また、比較例3は表面塗工剤の塗工量が0.84g/mであって、実施例1及び4の塗工量と同じであるが、両イオン性共重合体の添加率が0%であるために、吸水性の表裏差が劣ったものとなっている。
【0075】
(エ)実施例1〜6及び比較例1〜3を概観すると、原紙に両イオン性共重合体を含有し、且つ表面塗工剤の塗工量が0.05〜2g/m(両面の合計量)の範囲であれば、吸水性の表裏差、パイリング及びネッパリの評価結果が優れたもの(一部は良好)となることがわかる。なお、両イオン性共重合体は0.02〜0.07%と少ない添加量でも、これらの効果に作用を発揮することがわかる。
(オ)実施例1〜6及び比較例1〜3の紙中灰分が13%であるから、全ての実施例および比較例は裏抜けの問題がない。
【0076】
以上の実施例1〜6及び比較例1〜3の評価結果から、本発明は、原紙に填料、例えば、炭酸カルシウムを混合しても、製紙用内添サイズ剤として一部が4級化されてなる両イオン性共重合体を含有させ、更に、原紙上に0.05〜2g/m(両面の合計量)塗工量の表面塗工剤を塗工することで、裏抜けが少なく、吸水性の表裏差が少なく、パイリングおよびネッパリが少ない印刷適性に優れたコールドオフセット印刷用紙が得られることから、上述した本発明の課題を達成していることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙に製紙用内添サイズ剤と填料を含有し、原紙上に水溶性高分子物質を含有する表面塗工剤を塗工乾燥したコールドオフセット印刷用紙であって、
前記製紙用内添サイズ剤が疎水性基を有するとともにカチオン性基の少なくとも一部が4級化されてなる両イオン性共重合体を有効成分とし、前記表面塗工剤の塗工量が0.05〜2g/m(両面の合計量)であることを特徴とするコールドオフセット印刷用紙。
【請求項2】
前記両イオン性共重合体が疎水性モノマー(A)、カチオン性モノマー(B)、およびアニオン性モノマー(C)を必須とし、かつ前記モノマー(C)のアニオン当量が前記モノマー(B)のカチオン当量の0.1〜90%である単量体成分を重合して得られるものであり、そのカチオン性基の4級化率が40モル%以上であることを特徴とする請求項1に記載のコールドオフセット印刷用紙。
【請求項3】
前記表面塗工剤が表面サイズ剤を含有し、かつ表面サイズ剤の塗工量が、固形分で0.004〜0.5g/m(両面の合計量)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコールドオフセット印刷用紙。
【請求項4】
前記填料が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコールドオフセット印刷用紙。
【請求項5】
前記コールドオフセット印刷用紙が新聞用紙であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコールドオフセット印刷用紙。


【公開番号】特開2010−31392(P2010−31392A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191718(P2008−191718)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】