説明

コールドオフセット用新聞印刷用紙

【課題】多色カラー高品位印刷方式における浸透乾燥性インキを用いたコールドオフセット印刷時のガサツキトラブルを改善し、しかも良好な印刷作業性及びカラー印刷品質を有するコールドオフセット用新聞印刷用紙を提供する。
【解決手段】原紙に表面処理剤を塗布、乾燥してなるコールドオフセット用新聞印刷用紙において、原紙に無定形シリカおよび/または無定形シリケートを内添し、紙表面の三次元表面粗さ測定における中心高さより10μm以上深い凹部の面積率Bを2.0%以下、且つ印刷後不透明度を90%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコールドオフセット用新聞印刷用紙に関し、特にコールドオフセット型印刷輪転機を用いた高精細印刷や高彩色印刷といった高品位多色カラー印刷において、印刷品質に優れ、印刷工程における作業性が良好であるコールドオフセット用新聞印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年印刷技術の進歩に伴い印刷品質の高度化が要求されている。現在の印刷方式の主流であるオフセット印刷はブランケットを介して印刷用紙に印刷する方式を採用するので網点再現性の欠陥が発生することは少なく、その結果印刷品質の優れた印刷物を得ることができる。また、オフセット印刷においては紙表面の平滑性に合せたスクリーン線数を選ぶことができるので、非塗工紙など比較的平滑度の低い紙に印刷しても優れた印刷品質を得ることができる。
【0003】
しかし、より高精細な印刷画像を得るためにはインキ転移不良を改善すること、すなわち版或いはブランケットの画線部から紙へのインキ転移率を向上させることが要求される。インキの転移率はインキの性質、インキの供給量、紙表面の平滑性、紙のインキ受理性、印圧等の条件によって決まる。したがって、オフセット印刷に用いられる版が精度よく作成されていても、紙表面の平滑度が低いと網点のサイズを小さくすることができず、網点の再現性が悪くなり、印刷面が視感的にがさついて見えるガサツキトラブルが発生する。
【0004】
また、ガサツキトラブル等のインキ転移不良に影響する紙の平滑性は一般的に王研式平滑度(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5−2:2000)またはベック平滑度(JIS P 8119:1998)等では相関は得られない。これは上記の平滑度は紙にゴム板を押し当て、その隙間から空気が漏れ出る速度や一定量の空気が漏れ出るのに要する時間を測定することによって評価するものであり、微細な凹凸を計測することが不可能であることによる。
【0005】
また、微細な凹凸を示す指標として十点平均粗さ(JIS B 0601:2001)が挙げられるが、これは平均粗さを求める際に面積の広い凹部も狭い凹部も同様に一点の凹部として計算されるので、これもまた相関は得られない。
【0006】
ツインワイヤー抄紙機の抄紙工程において、ドライヤーパートを出た紙は表面が粗く、ラフな肌をしているため印刷適性が悪い。このため、抄紙工程においては紙表面の平滑性を向上させ、且つ、紙厚をコントロールする目的で紙をカレンダーに通すカレンダー処理が行われている(特許文献1)。しかし、カレンダー処理では王研式平滑度やベック平滑度は改善されるが、微細な凹凸を改善するのは困難であり、また紙厚が薄くなり、密度が高くなってしまい、不透明度が低下してしまう。
【0007】
また、表面性および印刷後不透明度を改善して印刷品質を向上させるために填料を高配合することも行われている(特許文献2)。しかし、填料の高配合は表面強度及び剛度を低下させるので好ましくない。
【0008】
また、ラテックス等の親油性の物質を紙表面に塗布することによってインキ着肉性を向上させる技術も一般的に知られている(特許文献3)。しかし、親油性物質を大量に塗布することは印刷版の汚れを招くので、インキ着肉性を向上させる手段として親油性物質のみに頼るのは好ましくない。
【0009】
また、脱水比率等抄紙条件を適性に管理することによって地合を向上させることも行われている(特許文献4、5)。しかし生産効率や作業性の点から、抄紙条件のみでガサツキトラブルを改善することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-217800号公報
【特許文献2】特開2007-261223号公報
【特許文献3】特開2007-63705号公報
【特許文献4】特開2007-10828号公報
【特許文献5】特開平11-100789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、多色カラー高品位印刷方式における浸透乾燥性インキを用いたコールドオフセット印刷時のインキ転移不良、特にガサツキトラブルを改善し、良好な印刷作業性及びカラー印刷品質を有するコールドオフセット用新聞印刷用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究の結果、印刷ブランケットの弾力性に追随することのできない紙表面の微細な凹凸がオフセット印刷での高精細印刷に重要な影響を及ぼすことを確認し、紙表面の三次元表面粗さ測定における中心高さより10μm以上深い凹部の面積率および印刷後不透明度を特定の範囲に制御することによりガサツキトラブルを抑制し、良好な印刷作業性と印刷品質を有するコールドオフセット用新聞印刷用紙を完成させた。
【0013】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)原紙に表面処理剤を塗布、乾燥してなるコールドオフセット用新聞印刷用紙において、原紙に無定形シリカおよび/または無定形シリケートを内添し、紙表面の三次元表面粗さ測定における中心高さより10μm以上深い凹部の面積率が2.0%以下、且つJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.45:2000に準じて測定した印刷後不透明度が90%以上であることを特徴とするコールドオフセット用新聞印刷用紙。
【0014】
(2)上記凹部の面積率が0.5%以下であることを特徴とする(1)に記載のコールドオフセット用新聞印刷用紙。
【0015】
(3)前記表面処理剤が顔料と接着剤を主成分とし、該顔料100質量部に対して接着剤を固形分換算で10〜300質量部含有し、該表面処理剤の片面当たりの塗布量が0.3〜1.4g/mであることを特徴とする(1)または(2)に記載のコールドオフセット用新聞印刷用紙。
【0016】
(4)前記顔料が炭酸カルシウムを60質量%以上含有することを特徴とする(1)〜(3)に記載のコールドオフセット用新聞印刷用紙。
【0017】
(5)前記接着剤が澱粉および/またはラテックスであることを特徴とする(1)〜(4)に記載のコールドオフセット用新聞印刷用紙。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコールドオフセット用新聞印刷用紙は、高い印刷後不透明度および印刷作業性を維持しながら、ガサツキトラブルの発生を抑制することができるので、オフセット印刷により高精細な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明における紙表面の三次元表面粗さ測定における中心高さより10μm以上深い凹部の面積率を示す図である。
【図2】本発明における紙表面の三次元表面粗さ測定における中心高さより10μm以上深い凹部の面積率と十点平均粗さの違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、コールドオフセット型高品位印刷において使用される用紙の表面特性がガサツキトラブルに与える影響について鋭意検討した。その結果、高精細印刷などの高品位印刷において、紙表面の微細な粗さを制御することによって高い印刷後不透明度を保ちながらガサツキトラブルを抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
本発明のコールドオフセット用新聞印刷用紙は、紙表面の微細な凹凸、具体的には5×5mmの測定面積において、測定ピッチ5μmで測定した紙表面の三次元粗さにおける中心高さより10μm以上深い凹部の面積率が2.0%以下であることを特徴とする。該面積率は0.5%以下であることがより好ましい。凹部の面積率が2.0%を超えると紙表面とブランケットの接触が不良となりガサツキトラブルが発生する。以下本発明では5×5mmの測定面積において、測定ピッチ5μmで測定した紙表面の三次元粗さにおける中心高さより10μm以上深い凹部を「三次元粗さ」と定義する。カレンダー等による表面処理で王研式平滑度(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5−2:2000)またはベック平滑度(JIS P 8119:1998)等は改善されるが、印刷後不透明度が低下するだけではなく、測定ピッチ5μmでの測定で得られる微細な凹凸は残り、ガサツキトラブルが発生する。これは、王研式平滑度またはベック平滑度等の一般的な平滑度が、広範囲にわたる紙表面の特性を測定すること、地合またはワイヤーマーク等が測定値に影響を及ぼすこと、紙にゴム板を押し当て、その隙間から空気が漏れ出る速度や一定量の空気が漏れ出るのに要する時間を計測するものであるので微細な凹凸を計測することは困難であることによる。また、同様に紙表面の微細な凹凸の評価方法として十点平均粗さ(JIS B 0601:2001)も挙げられるが、これは平均粗さを求める際に広い凹部も狭い凹部も同様に一点の凹部として計算されるので、この方法もまたガサツキトラブルとの相関は得られない。
すなわち、十点平均粗さは最高から5番目までの山頂(R1、R2、R3、R4、R5)の標高の平均値と、最深から5番目までの谷底(R6、R7、R8、R9、R10)の標高の平均値との差(凹凸の高さ)であり、凹部の面積率を評価することはできない。
【0022】
高い印刷後不透明度を保ちながらカレンダー処理等では改善できない紙表面の三次元粗さを改善する手段の1つとしては、パルプ種の選択が挙げられる。パルプに関しては、機械パルプ及び/または古紙パルプを配合することが好ましく、配合率としては、機械パルプと古紙パルプの合計が全パルプに対し90質量部以上であることが好ましい。資源の有効利用の点から古紙パルプは50質量部以上配合することが好ましい。機械パルプとしては、グラウンドウッドパルプ、リファイニンググラウンドウッドパルプ、サーモメカニカルパルプ、プレッシャライズドグラウンドウッドパルプ等が挙げられ、これらのパルプから1種類又は2種類以上用いられ、例えばクラフトパルプ5質量部、古紙パルプ70質量部に対し、サーモメカニカルパルプ12質量部、リファイニンググラウンドウッドパルプ8質量部、グラウンドウッドパルプ5質量部等の様に適宜配合される。また、パルプのフリーネスは低い程好ましく、紙料調成時の薬品添加前混合パルプのフリーネスが250mlCSF(カナダ標準フリーネス、以下単にCSFと略す)以下であることが好ましい。
【0023】
また、原紙に填料を内添することも三次元粗さを制御する手段の1つであり、印刷後不透明度向上の観点からも無定形シリカおよび/または無定形シリケートの内添は必須要件である。本発明において使用される無定形シリカとしては、例えばホワイトカーボンや含水珪酸が例示できる。また、無定形シリケートとしては、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸アルミニウムソーダ、含水珪酸マグネシウム等、一般式xMO・ySiO、xMO・ySiO、xM・ySiO等(ここで、MはAl、Ca、Mg、Na等である。x、yは任意の正の数である。)で表される珪酸塩および/または二酸化珪素と金属酸化物とからなるものが例示できる。さらに、内添填料として炭酸カルシウム、カオリン、タルク等他の填料の併用も可能である。しかし、これらの填料は無定形シリカや無定形シリケートに比べ吸油能力が低いため、無定形シリカ、無定形シリケートを用いないで高い印刷後不透明度を得ようとすると填料添加率が高くなり、紙の強度が低下する。以上の理由から填料添加率は好ましくは1質量%以上15質量%以下、更に好ましくは5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0024】
本発明において使用される無定形シリカ及び無定形シリケートに関しては、吸油量が360〜500mL/100gであることが好ましい。吸油量が360mL/100gを下回ると充分な吸油量が得られず、印刷後不透明度が低下するおそれがある。吸油量が500mL/100gを超えると印刷インキのビヒクル吸収速度が速くなり過ぎ、印刷面のインキタックの急激な上昇が起こり、印刷機上のロールにインキのトラレが発生するおそれがある。なお、吸油量はJIS K 5101−13−1:2004に準じて測定した値である。また、該無定形シリカ及び無定形シリケートの平均粒子径は15〜40μmであることが好ましい。平均粒子径が15μmを下回ると抄紙機での歩留が悪化するおそれがあり、40μmを上回るとブランケットパイリングが発生するおそれがある。なお、この平均粒子径は、分散剤を0.2質量%添加した填料スラリーをレーザー式粒度分布測定装置(商品名:「Microtrac」、日機装株式会社製)にて粒度分布を測定し得られたメディアン径のことをいう。
【0025】
紙の密度のバラツキによる地合の乱れを防ぎ、紙表面の三次元粗さを改善するためには、紙幅方向の紙料の濃度調整が可能であるヘッドボックスあるいはハイドローリック型のヘッドボックスを用いることが好ましい。濃度調整型のヘッドボックスはスライスリップ開度を調整することなく紙料濃度を調整することで紙幅方向の密度プロファイルを調整することが可能であり、ハイドローリック型ヘッドボックスは空気を使わず紙料の押し込み圧で噴射するため、新聞用紙のような高速抄紙で良好な地合を得るために極めて好適である。また、濃度調整型のヘッドボックスは、濃度調整装置が後工程での紙密度検出装置からのデータに基づきフィードバック制御する機構が設けられているものがより好ましい。
【0026】
また、原紙中の微細繊維の分布状態の制御も三次元粗さを制御する手段の1つである。地合を改善し三次元粗さを改善するためには原紙の厚さ方向での数平均繊維長0.2mm以下の微細な繊維分の分布率が重要であり、即ち原紙の紙層中央から両表層側へ15質量%、計30質量%部分で全層平均の分布率よりも高くなっていることが好ましい。ギャップフォーマーにより形成される原紙中において微細繊維の分布を好ましい状態に形成するには、原紙抄造時にワイヤー間の原料濃度が2質量%に至るまでの脱水量比率(トップワイヤー/ボトムワイヤー)を0.85〜1.15とすることが好ましい。
【0027】
紙の密度のバラツキによる印刷後不透明度の悪化および地合の乱れを防ぎ紙表面の三次元粗さを改善するためには、プレス部においてニップ幅の広いシュープレスを用いるのが好ましい。また、シュープレスは脱水能力も高く、その点からも新聞用紙のような高速抄紙には極めて好適である。
【0028】
さらに、印刷後不透明度を向上させカレンダー処理等では改善できない紙表面の三次元粗さを改善する手段の一つとしては、表面処理剤の塗布及びその塗布方法が挙げられる。これはカレンダー処理等では改善できない三次元粗さを表面処理剤によって埋めるためである。塗工方法としては、ニップ圧により表面処理剤を深く浸透させることができるので、ゲートロールコーター、サイズプレス、キャレンダーコーター等のロールコーターが好ましい。また、ロールコーターでのニップ圧は強いほど好ましいが、コーターのロールのたわみの問題から35kg/cm〜60kg/cmが好ましい。また、ゲートロールコーターを使用する場合においては、アウターロール/アプリケーターロールの周速比は高いほど好ましく、1.0以上が好ましい。
【0029】
表面処理剤に関しては、クリア塗工処理も可能であるが、印刷品質向上の観点からも顔料塗工処理を行うことが好ましく、塗布量としては0.3〜1.4g/mであることが好ましい。表面処理剤の塗布量が1.4g/mを超えるとインキセットが悪くなるだけでなく、パイリングも悪くなるため好ましくない。塗布量が0.3g/m未満であると不透明度向上に効果がなく、高品位な印刷適性が得られなくなるおそれがある。
【0030】
表面処理剤中に用いられる顔料としては、特に限定されないが、炭酸カルシウムを用いるのが好ましい。本発明において全顔料中に占める炭酸カルシウムの割合は60質量%以上であることが好ましい。該割合が60質量%未満であると、インキセット及び白色度が不良となるおそれがあり好ましくない。炭酸カルシウムは針状、柱状、球状、紡錘状、立方体状等のモルフォロジーをとるが、中でも紡錘状及び立方体状のものがセットオフ改善に効果があるため好ましい。すなわち、紡錘状及び立方体状軽質炭酸カルシウムは塗工層中で疎な構造をとりやすく、インキ中のビヒクル分を吸収する能力が高いためセットオフ抑制効果が高く、また、構造的に適正な摩擦係数が発現し易い。炭酸カルシウムの粒子径は、小さいほうが塗工層のポア径が小さくなり、また、比表面積が大きくなるため、セットオフ及び不透明度に有利となる。また、三次元粗さを効率的に埋めることが可能である。さらに、カオリンやタルク、サチン、水和珪酸、有機顔料等他の顔料と併用することも可能である。
【0031】
本発明で使用する表面処理剤には上記顔料とともに、顔料に対する接着性能を向上させ、パイリングなどに代表される表面強度に纏わるトラブルを回避するとともに紙強度を向上させるための接着剤として澱粉および/またはラテックスを配合することが好ましい。
【0032】
なお、本発明で使用する接着剤には、澱粉および/またはラテックスと共にカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース化合物、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール化合物やカゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類などの通常の塗工紙用接着剤を一種類以上併用しても良い。
【0033】
上記澱粉類としては、酵素変性澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、疎水化澱粉などが例示される。その他、消泡剤類、スライムコントロール剤類、染料、表面サイズ剤等一般的な表面処理剤用の助剤を配合しても差し支えない。
【0034】
本発明において使用されるラテックスとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の合成ラテックス類が例示でき、いずれも好適に用いることができる。ラテックスのガラス転移温度(以下、Tgと称する)としては−50〜20℃のものが好ましい。このTg範囲にあるものは常温では粘着性を発現し、無機顔料/填料への接着性が良好となるが分子の極性が非常に低く、強親水性のセルロース繊維への接着性が発現しにくいため、セルロース繊維との接着力が高いポリアクリルアミドや澱粉等の水溶性高分子類と併用し、水溶性高分子類のみでは弱い顔料/填料への接着性をカバーする働きを持つ。本発明のような低塗布量の場合にはこのラテックスと水溶性高分子類の相互の働きの効果が大きく影響する。ラテックスとしてはコアシェル型が望ましい。低Tgラテックスは造膜性が高く、常温でもゴム状であるため粘着性を発現し易く、顔料間を接着する能力が高い。ただし、ブランケットに貼り付き易く、ネッパリが発生し易い。一方、高Tgラテックスは、接着強度は弱いものの、ネッパリが発生しにくい。本発明のコアシェル型ラテックスはシェルを高Tgとし、コアを低Tgとしている。この構造では、ラテックス粒子の表層が大きく影響しているネッパリを抑制しながらも、コアのTgに由来する良好な造膜性、粘着性により顔料の接着強度を向上できる。シェルのTgは0〜20℃が好ましく、コアのTgは−50〜0℃が好ましい。シェルのTgが0℃未満では、粘着性が強過ぎるためネッパリが発生し易くなり、20℃を超えると顔料の接着強度が低下してしまう。コアのTgが−50℃未満では強撥水成分であるスチレン量が少なくなってしまうため、吸水着肉が悪化し、0℃を超えると顔料接着能力が不足し、強度発現性が悪化する。なお、濃度勾配型と呼ばれる粒子の内部から外部への組成が連続的に変化しているラテックスについても同様の効果があるが、コアシェル型のほうがより明確にTg制御の影響が現れるため好ましい。
【0035】
顔料100質量部に対する接着剤の配合部数は、10〜300質量部であることが好ましい。接着剤の配合部数が10質量部を下回ると表面強度が低下して、オフセット印刷に耐えられないおそれがある。また、接着剤の配合部数が300質量部を上回るとインキセットが低下し、紙面汚れが発生するおそれがある。
【0036】
表面処理剤を原紙に塗布した後、湿潤塗工層を乾燥する方法としては、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥などの各種方式が採用できる。
【0037】
本発明のコールドオフセット用新聞印刷用紙の製造に関しては、表面処理剤の塗工層を形成後に、各種キャレンダー装置にて平滑化処理が施されるが、かかるキャレンダー装置としては、スーパーキャレンダー、ソフトキャレンダー、グロスキャレンダー、コンパクトキャレンダー、マットスーパーキャレンダー、マットキャレンダーなどの一般に使用されているキャレンダー装置が適宜使用される。キャレンダー仕上げ条件としては、剛性ロールの温度、キャレンダー圧力、ニップ数、ロール速度、キャレンダー前水分などが要求される品質に応じて適宜選択される。さらに、キャレンダー装置は、コーターと別であるオフタイプとコーターと一体になっているオンタイプがあるが、どちらにおいても使用できる。使用するキャレンダー装置の材質は、剛性ロールでは、金属もしくは、その表面に硬質クロムメッキなどで鏡面処理したロールである。また、弾性ロールはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリレート樹脂などの樹脂ロール、コットン、ナイロン、アラミド樹脂などを成形したロールが適宜使用される。なお、キャレンダーによる仕上げ後の新聞印刷用紙の調湿、加湿のための水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置などを適宜組み合わせて使用することも可能である。またキャレンダーのニップ圧としては、紙厚低下による不透明度低下のおそれがあるため、50kN/m以下が好ましく、45kN/m以下がさらに好ましい。
【0038】
本発明にかかるコールドオフセット用新聞印刷用紙の原紙は、以下の如くして得られる。まず、原料パルプとして好適なフリーネスに調節された化学パルプ(NBKP、LBKP等)、機械パルプ(GP、CGP、RGP、PGW、TMP等)、古紙パルプ(DIP等)が前記の好適な配合率で混合されて、紙料の調成が行なわれる。次いで、紙料中に前記填料が適宜添加され、さらに必要に応じて、紙力増強剤、歩留り向上剤、強化ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤などの内添サイズ剤、耐水化剤、紫外線防止剤などの一般に公知公用の抄紙用薬品が添加されて、前記の好適な装置を備えた抄紙機により抄紙して原紙が製造される。原紙の坪量としては60g/m以下、より好ましくは35〜52g/m程度としたときに、本発明が所望とする効果が極めて顕著に発揮されるので、特に望ましい。
【0039】
本発明のコールドオフセット用新聞印刷用紙は、坪量50g/m以下で白色度が55%以上、好ましくは57%以上、更に好ましくは60%以上である。白色度は高い程印刷発色コントラストを得られるため、カラー印刷では特に高い程良い。
【0040】
上記したように本発明のコールドオフセット用新聞印刷用紙は印面品質、特に印刷後不透明度向上およびガサツキトラブル抑制に極めて優れた効果を発揮し、良好な印刷作業性を得ることが可能となる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。勿論、本発明はそれらの例に限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
以下の例においてコールドオフセット用新聞印刷用紙について、下記の物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0042】
(ガサツキ)
各実施例及び比較例で得たコールドオフセット用新聞印刷用紙について、画線率10%(面積率)で製版したアルミ版をセットしたオフセット輪転機(東芝機械株式会社製)を使用して墨単色刷りを行い、5000部印刷を行った後、印刷面のガサツキを目視評価した。評価は次の3段階評価で行った。
<評価基準>
◎:ガサツキが全く認められない。
○:ガサツキが殆ど認められない。
×:ガサツキが認められる。
【0043】
(平滑度)
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5−2:2000に準拠して測定を行った。
【0044】
(十点平均粗さ)
JIS B 0651:2001に想定される触針式表面粗さ測定器(小坂研究所製)を用いてJIS B 0601:2001に準拠して測定を行った。
【0045】
(三次元粗さ凹部面積率)
各実施例及び比較例で得たコールドオフセット用新聞印刷用紙を株式会社キーエンス製レーザー式三次元粗さ計「KS-1100」を用い、測定ピッチ5μmで三次元粗さを測定した。得られた三次元粗さデータについて、株式会社アイ・スペック製画像処理/解析ソフトウェア「IOMate2007」を用い、三次元粗さデータを256階調の濃度データとして画像化した。得られた画像平面の中心高さより10μm以上深い凹部を2値化処理により抽出し、凹部の面積率を計算した。
【0046】
(印刷後不透明度)
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.45:2000に準拠して測定を行った。
<評価基準>
90%未満であると満足な印面は得られない。
【0047】
(インキ着肉性)
各実施例及び比較例で得たコールドオフセット用新聞印刷用紙を前記オフセット輪転機でオフセット用印刷インキ(東洋インキ製造株式会社製レオエコーY)を用いて600rpmの速度で印刷した。得られた印刷物のインキ着肉性を4段階で目視評価した。
<評価基準>
◎:非常に優れる
○:優れる
△:やや問題あり
×:問題あり
なお、評価が△と×のものは、実用上問題がある。
【0048】
(インキセット)
各実施例及び比較例で得たコールドオフセット用新聞印刷用紙を短冊状に切り、サンプル台紙(OK特アートポスト 256g/m)に横並びに貼り付けたものを作成する。インキ練り用のゴムロールを4胴目にセットしたRI印刷試験機(石川島産業機械社製)にて該当する金属ロールとの間でオフセット輪転機用新聞印刷インキ(NEWS WEBMASTER/プロセス墨G2:サカタインクス株式会社製)を0.5cc練った後、インキ練り用のゴムロールを2胴目に移動し、新たに4胴目に比較的平滑性の高いインキ転写用片面塗工紙を巻いたゴムロールを装着し、2胴目で印刷を行う。4胴目のロールにタッチした時点で一旦回転を止め、そこから一定時間毎に2cmずつ4胴目のロールにインキを転写し、その転写濃度変化を目視評価した。評価は5段階で行った。
<評価基準>
5:印刷終了後のコールドオフセット用新聞印刷用紙の表面を転写した片面塗工紙のインキ濃度が著しく低かった。
4:印刷終了後のコールドオフセット用新聞印刷用紙の表面を転写した片面塗工紙のインキ濃度が明確に低かった。
3:印刷終了後のコールドオフセット用新聞印刷用紙の表面を転写した片面塗工紙のインキ濃度が実用上問題のないレベルであった。
2:印刷終了後のコールドオフセット用新聞印刷用紙の表面を転写した片面塗工紙のインキ濃度がやや高かった。
1:印刷終了後のコールドオフセット用新聞印刷用紙の表面を転写した片面塗工紙のインキ濃度が明確に高かった。
なお、評価が3未満のものは、実用上問題がある。
【0049】
(ドライピック)
上記と同様にして各実施例及び比較例で得たコールドオフセット用新聞印刷用紙を貼り付けたサンプル台紙を作成し、RI印刷試験機にて、印刷インキ(SMX タック グレード15:東洋インキ製造社製)を0.4cc使用して印刷を行い、印刷面のピッキングの程度を目視評価した。評価は次の5段階評価で行った。
<評価基準>
5:表面強度が極めて高かった。
4:表面強度が高かった。
3:実用上問題が無い表面強度が確保された。
2:表面強度が低かった。
1:表面強度が極めて低かった。
なお、評価が3未満のものは、実用上問題がある。
【0050】
(ウェットピック)
上記ドライ表面強度試験と同様にして、各実施例及び比較例で得たコールドオフセット用新聞印刷用紙を貼り付けたサンプル台紙を作成し、RI印刷試験機にて、湿らせたガーゼで水を付けたゴムロールで新聞用紙面に水を付けた後、直ちに印刷インキ(SMX タック グレード15:東洋インキ製造社製)を0.5cc使用して印刷を行い、印刷面のピッキングの程度を目視評価した。評価は次の5段階評価で行った。
<評価基準>
5:繊維の取られが全くみられず、白抜けが発生しない。
4:ごくわずかに繊維の取られが発生し、白抜け部がわずかに(1〜5個所程度)みられる。
3:一部で繊維の取られが発生するが、実用上問題のないレベル。
2:全面で繊維の取られがみられ、白抜け部面積率が5%未満。
1:全面で繊維の取られがみられ、白抜け部面積率が5%以上。
なお、評価が3未満のものは、実用上問題がある。
【0051】
(実施例1)
原紙:針葉樹クラフトパルプ5部、サーモメカニカルパルプ8部、リファイニンググラウンドウッドパルプ5部、グラウンドウッドパルプ2部、脱墨古紙パルプを80部の割合で混合して離解し、レファイナーでフリーネス200mlCSFに調製したパルプスラリーに、対絶乾パルプ当りカチオン化澱粉(商品名:「P3Y」、PIRAAB STARCH Co.,Ltd.製)を0.5%、填料として無定形シリカ(I)を6%添加し、硫酸バンドで抄紙pHを8に調整した。得られた紙料を、リール前に設置された紙密度計からのフィードバック機能を持つ濃度調整型ヘッドボックス(商品名:コンセプトIV−MH、三菱重工業社製)及びシュープレス(商品名:エクステンディドニッププレス、三菱重工業社製)を備えたギャップフォーマー形式(商品名:MHフォーマー、三菱重工業社製)の抄紙機でワイヤー間の原料濃度が2質量%に至るまでの脱水量比率(トップワイヤー/ボトムワイヤー)が1.0となるように抄紙した。
塗工:塗液として、炭酸カルシウム(A)100質量部に対し、酸化変性トウモロコシ澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ株式会社製)35質量部、スチレン−ブタジエン共重合体(コア−シェル型)(商品名:T−2500F、JSR株式会社製)8質量部を水中で混合して、固形分濃度10%の顔料分散液を調製し、この塗液をゲートロールコーター(三菱重工業社製)にて、乾燥後の塗布量が片面あたり1.2g/mとなるようにニップ圧を50kg/cm、アウターロール/アプリケーターロールの周速比が1.2で両面塗工、乾燥し、ソフトカレンダー(三菱重工業社製)を用い、ニップ圧30kN/mにてカレンダー処理を行って、コールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
なおここで、上記無定形シリカ(I)は、珪酸ソーダと硫酸との二段中和反応より製造した平均粒子径25μmの無定形シリカであり、製造後そのまま乾燥することなく填料に用い、上記炭酸カルシウム(A)は、炭酸ガスと石灰乳との反応による炭酸ガス法により製造した平均粒径0.8μmのカルサイト系紡錘状軽質炭酸カルシウムであり、製造後そのまま乾燥することなく表面処理剤に用いた。
【0052】
(実施例2)
抄紙工程において、填料として無定形シリケートの添加を6%とした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。なおここで、上記無定形シリケートは、珪酸ソーダ、硫酸バンド及び硫酸との二段中和反応より製造した平均粒子径25μmの無定形シリケートであり、製造後そのまま乾燥することなく填料に用いた。
【0053】
(実施例3)
抄紙工程において、填料として無定形シリカ(I)6%の替わりに、無定形シリカ(I)を3%、および前記無定形シリケートを3%添加した以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。なおここで、上記無定形シリケートは、珪酸ソーダ、硫酸バンド及び硫酸との二段中和反応より製造した平均粒子径25μmの無定形シリケートであり、製造後そのまま乾燥することなく填料に用いた。
【0054】
(実施例4)
抄紙工程において、填料として無定形シリカ(I)6%の替わりに、無定形シリカ(I)を5%、および炭酸カルシウム(商品名:オプチカルHP、イメリス株式会社製、平均粒子径1.5μm)を3%添加した以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0055】
(実施例5)
抄紙工程において、パルプスラリーのフリーネスを300mlCSFとした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0056】
(実施例6)
抄紙工程において、填料として無定形シリカ(I)の添加を15%とした以外は、実施例1と同じようにしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0057】
(実施例7)
抄紙工程において、抄紙機のプレスがロールプレス(三菱重工業社製)である以外は実施例1と同じようにしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0058】
(実施例8)
抄紙工程において、ワイヤー間の原料濃度が2質量%に至るまでの脱水量比率(トップワイヤー/ボトムワイヤー)が1.5となるように抄紙した以外は、実施例1と同じようにしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0059】
(実施例9)
抄紙工程において、ワイヤー間の原料濃度が2質量%に至るまでの脱水量比率(トップワイヤー/ボトムワイヤー)が0.6となるように抄紙した以外は、実施例1と同じようにしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0060】
(実施例10)
塗工工程において、表面処理剤として、顔料を炭酸カルシウム(A)100質量部の替わりにカオリン(商品名:ミラグロスJ、シール株式会社製)100質量部とした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0061】
(実施例11)
塗工工程において、表面処理剤として、顔料を炭酸カルシウム(A)100質量部の替わりに炭酸カルシウム(A)80質量部、カオリン(商品名:ミラグロスJ、シール株式会社製)20質量部とした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0062】
(実施例12)
塗工工程において、表面処理剤として、接着剤を酸化変性トウモロコシ澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ株式会社製)35質量部、スチレン−ブタジエン共重合体(コア−シェル型)(商品名:T−2500F、JSR株式会社製)8質量部の替わりに酸化変性トウモロコシ澱粉150質量部とし、表面サイズ剤(商品名:OT−25T、荒川化学株式会社製)を5質量部添加した以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0063】
(実施例13)
塗工工程において、表面処理剤として、接着剤を酸化変性トウモロコシ澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ株式会社製)35質量部、スチレン−ブタジエン共重合体(コア−シェル型)(商品名:T−2500F、JSR株式会社製)8質量部の替わりにスチレン−ブタジエン共重合体20質量部とした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0064】
(実施例14)
塗工工程において、塗布量を0.6g/mとした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0065】
(実施例15)
塗工工程において、塗布量を0.1g/mとした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0066】
(実施例16)
塗工工程において、塗液を酸化変性トウモロコシ澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ株式会社製)の10%水溶液とし、塗布量を0.6g/mとした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0067】
(実施例17)
塗工工程において、塗布量を2.0g/mとし、コーターのニップ圧を40kg/cmとした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0068】
(実施例18)
抄紙工程において、パルプの配合を針葉樹クラフトパルプ30部、サーモメカニカルパルプ10部、脱墨古紙パルプを60部とし、パルプフリーネスを150mlCSFとした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0069】
(実施例19)
抄紙工程において、抄紙pHを5とした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0070】
(比較例1)
塗工工程において、表面処理剤を塗布しなかった以外は実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0071】
(比較例2)
抄紙工程において、填料として無定形シリカ(I)の替わりに、炭酸カルシウム(商品名:オプチカルHP、イメリス株式会社製、平均粒子径1.5μm)を添加した以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0072】
(比較例3)
抄紙工程において、パルプの配合を針葉樹クラフトパルプ100部とした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0073】
(比較例4)
塗工工程において、コーターのニップ圧を20kg/cmとした以外は、実施例1と同様にしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0074】
(比較例5)
抄紙工程において、ワイヤー間の原料濃度が2質量%に至るまでの脱水量比率(トップワイヤー/ボトムワイヤー)が1.5となるように、プレスがロールプレス(三菱重工業社製)である抄紙機で抄紙した以外は、実施例1と同じようにしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0075】
(比較例6)
抄紙工程において、ワイヤー間の原料濃度が2質量%に至るまでの脱水量比率(トップワイヤー/ボトムワイヤー)が0.6となるように、プレスがロールプレス(三菱重工業社製)である抄紙機で抄紙した以外は、実施例1と同じようにしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0076】
(比較例7)
抄紙工程において、パルプの配合を針葉樹クラフトパルプ30部、サーモメカニカルパルプ10部、脱墨古紙パルプを60部とし、パルプフリーネスを400mlCSFとし、プレスがロールプレス(三菱重工業社製)である抄紙機で抄紙した以外は、実施例1と同じようにしてコールドオフセット用新聞印刷用紙を得た。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
実施例1〜19は、紙表面の三次元粗さにおいて中心高さより10μm以上深い凹部の面積率が2.0%以下であり、且つ印刷後不透明度が90%以上であり、填料に無定形シリカ及び/或いは無定形シリケートを用いクリア表面処理剤或いは顔料表面処理剤を塗布していたので、高い印面品質と印刷作業性を両立することができた。
これに対し、比較例1及び3〜7は、紙表面の三次元粗さにおいて、中心高さより10μm以上深い凹部の面積率が2.0%を超えており、ガサツキで満足する結果が得られなかった。比較例2は、填料に無定形シリカ或いは無定形シリケートを用いなかったので、印刷後不透明度が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
表1〜4から明らかなように本発明の実施例は、比較例に比べ、ガサツキトラブル抑制を含む印刷品質及び印刷作業性を両立することができ、コールドオフセット用新聞印刷用紙としての適性に優れていた。
【符号の説明】
【0083】
A 紙の粗さの中心高さ
B 中心高さより10μm以上深い凹部の面積
R1、R2、R3、R4、R5 最高から5番目までの山頂の標高
R6、R7、R8、R9、R10 最深から5番目までの谷底の標高

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙に表面処理剤を塗布、乾燥してなるコールドオフセット用新聞印刷用紙において、原紙に無定形シリカおよび/または無定形シリケートを内添し、紙表面の三次元表面粗さ測定における中心高さより10μm以上深い凹部の面積率が2.0%以下、且つJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.45:2000に準じて測定した印刷後不透明度が90%以上であることを特徴とするコールドオフセット用新聞印刷用紙。
【請求項2】
上記凹部の面積率が0.5%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコールドオフセット用新聞印刷用紙。
【請求項3】
前記表面処理剤が顔料と接着剤を主成分とし、該顔料100質量部に対して接着剤を固形分換算で10〜300質量部含有し、該表面処理剤の片面当たりの塗布量が0.3〜1.4g/mであることを特徴とする請求項1または2に記載のコールドオフセット用新聞印刷用紙。
【請求項4】
前記顔料が炭酸カルシウムを60質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜3に記載のコールドオフセット用新聞印刷用紙。
【請求項5】
前記接着剤が澱粉および/またはラテックスであることを特徴とする請求項1〜4に記載のコールドオフセット用新聞印刷用紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−180506(P2010−180506A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25468(P2009−25468)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】