説明

ゴムクローラ式エレクター

【課題】トンネル内に支保工の搬入と建て込みを行うエレクター1であって、斜路や不整地での走行性に優れると共に、ステージ3上に多くの機材を搭載することができるエレクター1を提供する。
【解決手段】揺動軸に支持された転輪を供えたゴムクローラ式のベースマシン2を用いる。また、エレクターブーム4やバスケットブーム5は、その基部をステージ3の前端部に固定されると共に、ステージ3の先端部から前方に向けて設ける。そして、フラットステージ3を広く設けることにより、ステージ3上に多くの機材を搭載することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの建設工事において支保工の搬入及び建て込みを行うエレクターに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの建設工事では、掘削したトンネルの壁面にアーチ状の支保工を一定の間隔で建て込む作業が行われ、エレクター又はエレクター台車と呼ばれる作業車両が用いられている。すなわち、自走可能なベースマシンに、支保工を把持して所定の位置に固定するエレクターブームと、作業者用のバスケットブームとを備えた車両である。
【0003】
建設作業の合理化が進むにつれて、エレクターは種々の付加機能を備えることとなった。例えば、特許文献1には、支保工の搬入と建て込みの両方の作業を行う機能を備えるエレクターが提案されている。これは、エレクターブームの先端で支保工を把持するガイドを、支保工を把持した状態で、90度以上旋回可能としたものである。そして、支保工を搬入する際には、支保工の円弧平面が進行方向に平行となるように把持し、建て込みの際には90度旋回させて、円弧平面がトンネルの断面と平行となるようにすることができる。
【0004】
また、特許文献1にはコンクリート吹付け装置のノズルを搭載していることが記載されている。したがって、ここに記載されたエレクターは、支保工の搬入及び建て込み作業に引き続いて、コンクリート吹付け作業を行うことが可能であるものと推察される。しかしながら、コンクリート吹付け作業を行うためには、非常に多くの機材を必要とし、これらの機材を搭載した台車をエレクターとは別に用意する必要がある。
【0005】
また、エレクターのベースマシンとしては、従来鉄クローラ式又はホイール式のものが使用されている。しかしながら、鉄クローラ式のエレクターは、エンジンルーム等の配置に制限が多く、全体の高さが高くなると共にフラットなステージを広く設けることができないという問題がある。また、走行時の衝撃が強いために、搭載した機械の消耗が早いという問題がある。
【0006】
さらに、ホイール式のエレクターは、斜路や不整地での走行が不向きであると共に、フラットステージの大きさが限定され、多くの機材を搭載することができないという問題がある。また、操舵性や視界の確保にも問題がある。
【特許文献1】特開平10−26000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の課題を解決したものであり、斜路や不整地での走行性に優れ、走行時に衝撃の少ないエレクターを提供することを目的とする。また、全高が低く抑えられ、フラットステージが広く、コンクリート吹付け作業に必要な多くの機材を搭載することができるエレクターを提供することを目的とする。そして、支保工の搬入及び建て込み作業に引き続いて、コンクリート吹付け作業を行うことが可能なエレクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るエレクターは、トンネル内に支保工を搬入すると共に建て込みを行うエレクターであって、自走可能なベースマシンと、該ベースマシンの上に設けられたステージと、2基のエレクターブーム及び2基のバスケットブームとを備え、前記ベースマシンがゴムクローラ式である手段を採用している。また、本発明の請求項2に係るエレクターは請求項1に記載のエレクターであって、前記ゴムクローラが、揺動軸に支持された転輪を備えている手段を採用している。
【0009】
また、本発明の請求項3に係るエレクターは、請求項1又は2に記載のエレクターであって、前記エレクターブーム及び前記バスケットブームが、その基部を前記ステージの前端部に固定されると共に、前記ステージの前端部から前方に向けて設けられている手段を採用している。また、本発明の請求項4に係るエレクターは、請求項1乃至3の何れかに記載のエレクターであって、前記の各ブームの他に、コンクリート吹付け用のロボットブームを備えている手段を採用している。また、本発明の請求項5に係るエレクターは、請求項1乃至4の何れかに記載のエレクターであって、前記ステージの上に、コードリール、電動コンプレッサー、急結剤供給装置及び急結剤補給装置が搭載されている手段を採用している。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエレクターは、上記の手段を採用することによって、斜路や不整地での走行性に優れ、走行時に衝撃の少ないエレクターとすることができる。また、全高が低く、フラットステージが広く、コンクリート吹付け作業に必要な多くの機材を搭載することができるエレクターとすることができる。そして、支保工の搬入及び建て込み作業に引き続いて、コンクリート吹付け作業を行うことが可能なエレクターとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図1〜3を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明のエレクター1を示す概略側面図であり、図2は概略平面図、図3はクローラ部を拡大して示す概略側面図である。
【0012】
本発明のエレクター1は、自走可能なベースマシン2と、このベースマシン2の上に設けられて種々の機材を搭載することができるステージ3と、2基のエレクターブーム4、4と、2基のバスケットブーム5、5と、コンクリート吹付け用のロボットブーム6等によって構成されている。
【0013】
ベースマシン2はゴムクローラ式であり、駆動輪22、従動輪23及び転輪24の周りにゴム製のクローラベルト25を装着している。そして、エンジン31の動力が駆動輪22を介して無端ベルトであるクローラベルト25に伝達され、ベースマシン2を走行させることができる。
【0014】
ベースマシン2等の重量は、クローラフレーム21に取付けられた複数の転輪24を介してクローラベルト25に掛かるようになっている。転輪24は揺動プレート27に回転自在に取付けられ、揺動プレート27はクローラフレーム21に揺動軸26を介して揺動自在に取付けられている。そして、クローラベルト25は、油圧シリンダー等を用いて常に最適な張力が加わるようになっている。
【0015】
このような構成により、ゴムクローラ式のベースマシン2は斜路や不整地での走行性に優れると共に、走行時の衝撃を少なくして、ステージ3に搭載された機材の消耗を少なくすることができる。また、エンジン31が履体の中間に収まるため、全体の高さを低く抑えることができると共に、フラットなステージを広くすることができる。
【0016】
また、エレクターブーム4、バスケットブーム5、及びロボットブーム6は、何れもその基部をステージ3の前端部に固定されると共に、ステージ3から遠ざかるように、ステージ3の先端部から前方に向けて設けられている。この結果、ブームを用いる作業は、何れもベースマシン2よりも前方で行われることになり、ステージ3の上に種々の機材を搭載することができる。なお、各ブームを使用する際は、アウトリガー7を用いて機体を安定に保持することができる。
【0017】
以上の結果、ステージ3の上には多くの機材、特にコンクリート吹付け作業に必要な機材を搭載することができる。具体的には図示のように、ケーブルリール32、電動コンプレッサー33、34、コンクリート吹付装置35、急結剤供給装置36、急結剤補給装置37等である。
【0018】
エレクターブーム4は、4〜8m程度の間で伸縮自在であると共に、60〜70度程度の旋回が可能であり、70〜80度程度の起伏が可能であるように構成されている。また、エレクターブーム4の先端には支保工を把持するガイド41が設けられている。ガイド41はブームに対して旋回、起伏及び回転が可能であり、支保工の建て込み作業を正確に行うことができる。
【0019】
バスケットブーム5は、6〜11m程度の間で伸縮自在であると共に、60度程度の旋回と70度程度の起伏が可能であるように構成されている。また、バスケットブーム5の先端には、作業員が操作を行うためのデッキ51が設けられている。デッキ51は、バスケットブーム5の起伏に対して、常時水平が保たれるようになっている。
【0020】
ロボットブーム6は、6〜11m程度の間で伸縮自在であると共に、100度程度の旋回と70度程度の起伏が可能であるように構成されている。また、ロボットブーム6の先端には、コンクリート吹付け用のノズル61が設けられている。ノズル61はブームに対して旋回、起伏及び回転が可能であり、トンネルの壁面に対するコンクリートの吹付け作業を自動的に行うことができる。
【0021】
ミキサー車で搬入されたコンクリートは、コンクリート吹付装置35に受け入れてホースでノズル61に送られる。そして、急結剤供給装置36から送られる急結剤と混合された後ノズル61から放出される。また、急結剤補給装置37に所定量の急結剤を準備しておくことにより、吹付け作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のエレクターの一例を示す概略側面図である。
【図2】本発明のエレクターの一例を示す概略平面図である。
【図3】図1のクローラ部を拡大して示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 エレクター
2 ベースマシン
3 ステージ
4 エレクターブーム
5 バスケットブーム
6 ロボットブーム
7 アウトリガー
21 クローラフレーム
22 駆動輪
23 従動輪
24 転輪
25 クローラベルト
26 揺動軸
27 揺動プレート
31 エンジン
32 ケーブルリール
33、34 電動コンプレッサー
35 コンクリート吹付装置
36 急結剤供給装置
37 急結剤補給装置
41 ガイド
51 デッキ
61 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に支保工を搬入すると共に建て込みを行うエレクターであって、
自走可能なベースマシンと、該ベースマシンの上に設けられたステージと、2基のエレクターブーム及び2基のバスケットブームとを備え、
前記ベースマシンがゴムクローラ式であることを特徴とするエレクター。
【請求項2】
前記ゴムクローラが、揺動軸に支持された転輪を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエレクター。
【請求項3】
前記エレクターブーム及び前記バスケットブームが、その基部を前記ステージの前端部に固定されると共に、前記ステージの先端部から前方に向けて設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクター。
【請求項4】
前記の各ブームの他に、コンクリート吹付け用のロボットブームを備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のエレクター。
【請求項5】
前記ステージの上に、コードリール、電動コンプレッサー、急結剤供給装置及び急結剤補給装置が搭載されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のエレクター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate