説明

ゴムストリップの製造方法、及び製造装置

【課題】ゴムストリップを周方向に螺旋状に重ねて巻き付けることにより生ゴム製品を形成するストリップワインド成形法に好適に採用でき、巻き付け後のゴムの収縮を抑制して生ゴム製品の品質を高める。
【解決手段】ゴム押出機3からのゴムGを圧延して巾狭帯状のゴムストリップGsを形成する圧延段階K2と、引取りロール5により引き取られた圧延手段4からのゴムストリップGsを、搬送テープ31を有する搬送コンベヤ6の前記搬送テープ31の一面に粘着保持して搬送する搬送段階K4とを含む。
圧延手段4をなす上下のカレンダロール4U、4Lは、その外周面をセラミックロール15により形成するとともに、その外周面の温度をカレンダロール4U、4L内蔵の冷却手段16により、30℃以下の低温に制御する。引取りロール5と搬送コンベヤ6との間に、ゴムストリップGsが拘束されずにU字状に弛んで垂下することにより該ゴムストリップGsが自由に収縮しうるシュリンク領域Yを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムストリップを周方向に螺旋状に重ねて巻き付けることにより所望断面形状の生ゴム製品を形成するストリップワインド成形法に好適に採用でき、巻き付け後のゴムの収縮(シュリンク)を抑制して生ゴム製品の品質を高めうるゴムストリップの製造方法、及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記ストリップワインド成形法を用いて所望断面形状の生ゴム製品を形成する装置として、例えば図4のものが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
この装置では、ゴム押出機aから吐出されるゴムを、上下のカレンダロールb、bにより圧延することで巾狭帯状の未加硫のゴムストリップcを連続的に形成するとともに、このゴムストリップcを、複数の案内ローラによって周回運動可能に案内された非伸長性の搬送テープdを有する搬送装置eに引き取ってタイヤ成形ドラムfまで搬送している。
【0004】
前記装置は、ゴムストリップcを非伸長性の搬送テープdの一面に粘着保持させて搬送するため、搬送途中での切断や変形の発生を抑制でき、生ゴム製品を効率よく安定して形成しうるという利点を有する。しかしながらこのものは、搬送の間、ゴムストリップcが搬送テープdに粘着されて拘束されるため、ゴムストリップcの収縮は、生ゴム製品形成後に発生する。その結果、生ゴム製品が前記ゴム収縮によってしだいに変形し、寸法変化や形状変化を招くなど生ゴム製品の品質を損ねるという問題が生じる。
【0005】
そこで従来は、図5に概念的に示すように、カレンダロールb、bからのゴムストリップcを搬送装置eに引き取る際、この搬送装置eの引き取り速度Vaを、カレンダロールbの速度Vbよりも遅く設定し、カレンダロールbと搬送装置eとの間で、ゴムストリップcをいったん強制的に収縮させることにより、生ゴム製品形成後の変形を減じている。
【0006】
【特許文献1】特許3322648号公報
【特許文献2】特開2002−137278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引き取り速度Vaを遅くする場合、圧延されたゴムストリップcがカレンダロールbから剥離し難くなる傾向となるため引き取り速度Vaを遅らすには限界があり、生ゴム製品形成後のゴム収縮を充分に減じることは難しい。
【0008】
特に近年、レース用のタイヤでは、路面とのグリップ性能を向上させるために、トレッドゴムに粘着性の高い低粘度の配合ゴムを使用する傾向がある。しかしこの配合ゴムは、カレンダロールに粘着する傾向が強いため、圧延成形するためには、引き取り速度Vaを逆に早めてゴムストリップをカレンダロールから強制的に引き剥がすことが必要となる。その結果、前述の強制的なゴム収縮が行えず、生ゴム製品形成後の変形がより大きくなるという問題が生じる。
【0009】
そこで本発明は、カレンダロールの外周面をセラミックロールで形成し、かつその表面を30℃以下に温度制御するとともに、搬送コンベヤに引き取るまでの間に、ゴムストリップが拘束されずにU字状に弛んで垂下するシュリンク領域を設けることを基本として、粘着性の高い低粘度の配合ゴムの場合にも、生ゴム製品形成後の変形を充分に減じることが可能となり、生ゴム製品の品質を高めうるゴムストリップの製造方法、及び製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1は、ゴムストリップの製造方法の発明であって、ゴム押出機の吐出口からゴムを連続的に吐出する吐出段階と、
前記吐出口の近傍に配される上下のカレンダロールを有する圧延手段により、前記吐出口からのゴムを圧延して巾狭帯状のゴムストリップを形成する圧延段階と、
前記圧延手段からのゴムストリップを引取りロールにより引き取る引取り段階と、
前記引取りロールからのゴムストリップを、案内ローラにより周回運動可能に案内される非伸長性の搬送テープを有する搬送コンベヤの前記搬送テープの一面に粘着保持して搬送する搬送段階とを含み、
かつ前記上下のカレンダロールは、少なくともゴムと接する外周面をセラミック材からなるセラミックロールで形成するとともに、
前記外周面の温度を、前記上下のカレンダロールに内蔵する冷却手段により、30℃以下の低温に制御するとともに、
前記引取りロールと搬送コンベヤとの間を、前記ゴムストリップが拘束されずにU字状に弛んで垂下することにより該ゴムストリップが自由に収縮しうるシュリンク領域としたことを特徴としている。
【0011】
又願請求項2は、ゴムストリップの製造装置の発明であって、吐出口からゴムを連続的に吐出するゴム押出機と、
前記吐出口の近傍に配され、かつ前記吐出口からのゴムを圧延して巾狭帯状のゴムストリップを形成する上下のカレンダロールを有する圧延手段と、
前記圧延手段の下流側に配され前記圧延手段からのゴムストリップを引き取る引取りロールと、
この引取りロールの下流側に配されかつ前記引取りロールからのゴムストリップを引き取って搬送する搬送コンベヤとを具えるとともに、
前記搬送コンベヤは、案内ローラにより周回運動可能に案内されかつ前記ゴムストリップを一面で粘着保持して搬送する非伸長性の搬送テープを有し、
しかも前記上下のカレンダロールは、少なくともゴムと接する外周面をセラミック材からなるセラミックロールで形成し、かつ前記外周面の温度を30℃以下に冷却する冷却手段を内蔵するとともに、
前記引取りロールと搬送コンベヤとの間を、前記ゴムストリップが拘束されずU字状に弛んで垂下することにより該ゴムストリップが自由に収縮しうるシュリンク領域としたことを特徴としている。
【0012】
又請求項3の発明では、前記上下のカレンダロールは、回転可能に枢支されかつ半径方向外面に取付面部を有するロール本体と、この取付面部に半径方向内面が取り付く前記セラミックロールとからなり
しかも前記冷却手段は、前記取付面部に凹設される周方向溝と、前記ロール本体の一端からのびかつ前記周方向溝に導通する第1の導通孔と、前記ロール本体の他端からのびかつ前記周方向溝に導通する第2の導通孔とからなりかつチラー水が通る冷却流路を具えることを特徴としている。
【0013】
又請求項4の発明では、前記ロール本体は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、かつセラミックロールの外周面は、表面粗さRaが1.01〜1.50μmの梨地面としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は叙上の如く、上下のカレンダロールを有する圧延手段の下流側に、引取りロールを介して、搬送テープの一面に粘着保持してゴムストリップを搬送する搬送コンベヤを設置するとともに、前記引取りロールと搬送コンベヤとの間に、ゴムストリップが拘束されずにU字状に弛んで垂下するシュリンク領域を形成している。
【0015】
このシュリンク領域では、ゴムストリップが、拘束されずにフリーとなるため自由にゴム収縮できる。即ち、搬送テープによる搬送に先駆けて、ゴムストリップに最大限のゴム収縮を自由に与えることができるため、生ゴム製品形成後におけるゴム収縮を大幅に抑制しうる。
【0016】
さらに本発明では、上下のカレンダロールの外周面をセラミックロールで形成するとともに、このセラミックロールの外周面の温度を30℃以下の低温に温度制御している。これにより、ゴムストリップのカレンダロールからの剥離性を高めることができる。即ち、引取りロールの引き取り速度を従来よりも遅らすことが可能となり、引き取りロールとカレンダロールとの間で、より大きなゴム収縮を強制的に与えることが可能となるなど、前記シュリンク領域の形成と相俟って、生ゴム製品の形成後の変形をさらに抑制することができる。
【0017】
又カレンダロールからの剥離性が高まるため、従来において引き取り速度を早めて強制剥離しなければ圧延できないような粘着性が高いゴムに対しても、引き取り速度を遅らせてゴム収縮を強制的に与えることが可能となり、前記シュリンク領域の形成と相俟って、生ゴム製品の形成後の変形を効果に抑制できる。
【0018】
又カレンダロールからの剥離性が高まるため、従来において、引き取り速度を早めても剥離が困難であった非常に粘着性が高いゴムに対しては、引き取り速度を早めることでカレンダロールから剥離しうる可能性が出てくる。即ち、ゴムストリップに使用可能なゴムの自由度を高めうる。しかも、この場合においても前記シュリンク領域での自由な収縮が機能しうるため、生ゴム製品の形成後の変形を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は本発明のゴムストリップの製造方法を実施するためのゴムストリップの製造装置の一例を示す側面図、図2はその主要部を誇張して示す概念図である。
【0020】
本発明のゴムストリップの製造方法は、図2に概念的に示すように、
(1)ゴム押出機3の吐出口2からゴムGを連続的に吐出する吐出段階K1と、
(2)前記吐出口2の近傍に配される圧延手段4により、前記吐出口2からのゴムGを圧延して巾狭帯状のゴムストリップGsを形成する圧延段階K2と、
(3)前記圧延手段4からのゴムストリップGsを引取りロール5により引き取る引取り段階K3と、
(4)前記引取りロール5からのゴムストリップGsを、案内ローラ30により周回運動可能に案内される非伸長性の搬送テープ31を有する搬送コンベヤ6の前記搬送テープ31の一面に粘着保持して搬送する搬送段階K4とを含み、又
(5)圧延手段4をなす上下のカレンダロール4U、4Lの外周面4Sの温度を、冷却手段16により、30℃以下の低温に制御するとともに
(6)前記引取りロール5と搬送コンベヤ6との間に、シュリンク領域Yを形成したことに特徴を有する。
【0021】
又前記製造方法を実施するゴムストリップの製造装置1(以下製造装置1という)は、図1、2に示すように、前記吐出口2からゴムGを連続的に吐出するゴム押出機3と、前記吐出口2からのゴムGを圧延してゴムストリップGsを形成する上下のカレンダロール4U、4Lを有する圧延手段4と、前記圧延手段4の下流側に配される引取りロール5と、この引取りロール5のさらに下流側に配され前記引取りロール5との間でシュリンク領域Yを形成する搬送コンベヤ6とを具える。
【0022】
前記ゴム押出機3は、ゴム投入口10Aを設けたシリンダ10内に、スクリュー軸11を収納した周知構造をなす。そして前記投入されるゴムGを、前記スクリュー軸11の駆動により可塑化しながら押進し、前記シリンダ10の前端に設ける押出しヘッド12の吐出口2から予備成形しながら連続的に吐出する。
【0023】
又前記圧延手段4は、本例では、前記押出しヘッド12に固定支持されるローラホルダ13と、このローラホルダ13に枢着される上、下のカレンダロール4U、4Lとを含み、各カレンダロール4U、4Lは、例えばギヤーなどの連係手段19(図3に示す)を介して互いに同速度で回転可能に連結される。又該カレンダロール4U、4L間には、前記吐出口2からのゴムGを、最終断面形状を有する前記ゴムストリップGsに圧延成形する間隙部Jが形成される。
【0024】
そして本発明では、前記上下のカレンダロール4U、4Lは、図3に示すように、それぞれ、少なくともゴムと接する外周面4Sを、セラミック材からなるセラミックロール15を用いて形成するとともに、前記外周面4Sの温度を30℃以下に冷却する冷却手段16を内蔵している。
【0025】
具体的には、各カレンダロール4U、4Lは、前記ローラホルダ13に軸受け片17を介して回転可能に枢支されかつ半径方向外面に取付面部18Sを設けたロール本体18と、前記取付面部18Sに半径方向内面が取り付く前記セラミックロール15とから形成される。前記セラミックロール15は、外周面15Sが前記外周面4Sをなす円筒状をなし、その内面が前記取付面部18Sに固定される。セラミックロール15に用いるセラミック材としては、アルミナ(Al)を少なくとも75%以上含む、アルミナ系ファインセラミックが好適であり、特に90%以上、さらには98%以上のものがより好適に採用される。又セラミックロール15の外周面15S(外周面4Sに相当)には、表面粗さRaが1.01〜1.50μmの梨地模様が形成された梨地面とするのが好ましい。
【0026】
又前記冷却手段16は、各ロール本体18の取付面部18Sに凹設されて周方向に連続してのびる周方向溝20と、前記ロール本体18の一端e1からのびかつ前記周方向溝20には開口部21Aで導通する第1の導通孔21と、前記ロール本体18の他端e2からのびかつ前記周方向溝20には開口部22Aで導通する第2の導通孔22とからなる冷却流路23を具える。前記第1、第2の導通孔21、22は、本例では、それぞれロール本体18の軸芯上を通る横孔18aと、この横孔18aから各前記開口部21A、22Aまで半径方向にのびる縦孔18bとからなり、各前記開口部21A、22Aは、周方向に位置を違えて形成される。又前記周方向溝20は、その半径方向外側が、前記取付面部18Sに取り付くセラミックロール15によって封止される。従って前記冷却手段16は、前記冷却流路23に冷却水が通ることにより、前記周方向溝20に隣接するセラミックロール15の外周面15S(外周面4Sに相当)を、30℃以下の低温に効果的に冷却しうる。なお本例では特に、前記セラミックロール15の厚さを、圧延圧力に耐えうる必要最小限の厚さ8.0mmに減じるとともに、ロール本体18を、例えばアルミなどの熱伝導性に優れる金属材で形成することにより、外周面15S(外周面4Sに相当)に対する冷却効果をさらに高めている。ここで、前記チラー水とは、冷凍機により例えば5〜10℃の低温で供給される低温水を意味し、冷凍機で冷却しない例えば25℃前後の一般的な冷却水(工業用水)とは区別される。
【0027】
次に、前記引取りロール5は、図2に示すように、前記圧延手段4により圧延成形されたゴムストリップGsを引取る駆動ローラであり、前記ゴムストリップGsのカレンダロール4U、4Lへの粘着状態に応じて、カレンダロール4U、4Lの周速度Vbよりも遅い周速度Va1或いは速い周速度Va2で駆動される。
【0028】
又前記搬送コンベヤ6は、案内ローラ30により周回運動可能に案内される非伸長性の搬送テープ31を具え、前記引取りロール5からのゴムストリップGsを、前記搬送テープ31の一面に粘着保持しながら本例ではタイヤ成形ドラムfに供給する供給位置Pまで搬送する。なお搬送テープ31としては、有機繊維を用いた非伸張性の補強用芯材の周囲を、未加硫ゴムとの粘着性に優れるポリエステル樹脂の表面層で被覆したものが好適に採用される。
【0029】
そして、前記引取りロール5と搬送コンベヤ6との間には、前記ゴムストリップGsが拘束されずにU字状に弛んで自由に垂下するシュリンク領域Yを形成している。このシュリンク領域Yでは、ゴムストリップGsが、拘束されずにフリーとなるため、自由にゴム収縮できる。従って、搬送テープ31による搬送に先駆け、前記ゴムストリップGsに、該ゴムストリップGsが要求する最大限のゴム収縮を自由に与えることができる。そのため搬送した後(本例では生ゴム製品を形成した後)におけるゴム収縮を大幅に抑制することができる。
【0030】
なお前記シュリンク領域YにおけるゴムストリップGsの弛み量が少なすぎると、ゴム収縮が不充分となり、過大となるとゴムストリップGsが床面などに接触するなどの不具合を招く。そのため本例では、前記U字部の下端位置Rを、上限位置R1と下限位置R2と間に規制する検出手段25を設けている。検出手段25は、本例では、前記上限位置R1、下限位置R2、及びその中間位置Rmに配される光センサS1、S2、Smを有し、下端位置Rが下限位置R2を下方側に超えたとき、前記搬送コンベヤ6の駆動ローラ30Aを駆動し、逆に下端位置Rが上限位置R1を上方側に超えたとき、前記搬送コンベヤ6の駆動ローラ30Aを停止する。
【0031】
又本発明では、前述の如く、上下のカレンダロール4U、4Lの外周面4Sを、それぞれセラミックロール15で形成するとともに、このセラミックロール15の外周面15S(4S)の温度を、30℃以下の低温に温度制御している。
【0032】
ここで、本発明者が研究した結果、圧延時のゴムストリップGsとカレンダロール4U、4Lとの粘着性は、セラミックロール15を用いることにより、表面をテフロン(登録商標)などの低摩擦樹脂でコーティングした場合に匹敵する優れた剥離性が得られることが判明した。又低摩擦樹脂を用いる場合に必然的に生じるコーティング厚さのバラツキに起因した圧延への影響、並びに摩耗寿命などの問題がなく、長期に亘って優れた品質で圧延成形しうることが判明した。特にセラミックロール15の外周面15Sを、表面粗さRaが1.01μm以上の梨地面とすることにより、剥離性がいっそう高められることが判明した。なお表面粗さRaが1.50μmを超えると、カレンダロールの精度が悪化するという問題が生じる。
【0033】
又近年、レース用のタイヤでは、路面とのグリップ性能を向上させるために、トレッドゴムに粘着性の高い配合ゴムを使用する傾向がある。しかしながらこの配合ゴムの場合、通常のゴムとは逆に、カレンダロール4U、4Lの外周面4Sの温度を下げることにより、該カレンダロール4U、4Lとの剥離性が高まることが判明した。これは、前記配合ゴムは低粘度であるため、温度上昇によって飴状に変形して、カレンダロール4U、4Lに付着してしまうためと推測される。従って、特にこのような配合ゴムに対しては、セラミックロール15の外周面15S(4S)の温度を、30℃以下の低温に制御することで、剥離性を大幅に向上させることが可能となる。なお外周面15S(4S)の温度が10℃を下回ると、前記外周面15S(4S)以外の面の温度が下がりすぎて露結などを発生させる恐れを招く。従って前記外周面15S(4S)の温度は10〜30℃の範囲で制御するのが好ましい。
【0034】
このように、カレンダロール4U、4Lにセラミックロール15を使用すること、及びその外周面15S(4S)の温度を30℃以下に制御することとの相乗作用により、ゴムストリップGsのカレンダロール4U、4Lからの剥離性を大幅に高めることができる。
【0035】
その結果、従来において引取りロールによる強制的なゴム収縮を行っていた配合ゴムに対しては、引取りロール5の引き取り速度を従来よりもさらに遅らすことが可能となり、引き取りロール5とカレンダロール4U、4Lとの間で、より大きなゴム収縮を強制的に与えることが可能となるなど、前記シュリンク領域の形成と相俟って、生ゴム製品の形成後の変形をさらに抑制することができる。
【0036】
又従来において引取りロールの引き取り速度を、カレンダロールよりも早めて強制剥離しなければ圧延できないような粘着性が高いゴムに対しても、例えば引き取り速度を遅らせてゴム収縮を強制的に与えることが可能となり、前記シュリンク領域の形成と相俟って、生ゴム製品の形成後の変形を効果に抑制できる。
【0037】
又従来において、引き取り速度を早めても剥離が困難であった非常に粘着性が高いゴムに対しても、引き取り速度を早めることでカレンダロールから剥離しうる可能性が出てくる。即ち、ゴムストリップに使用可能なゴムの自由度を高めうる。しかも、この場合においても前記シュリンク領域Yでの自由な収縮が機能しうるため、生ゴム製品の形成後の変形を抑制することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0039】
図1に示す構造をなす製造装置によってゴムストリップを形成するとともに、このゴムストリップを用いてトレッドゴムが形成された生タイヤ(タイヤサイズ180/55ZR17)を試作した。そして前記生タイヤのタイヤ赤道上における周長の経時変化を、前記図4、5に示す従来の製造方法によって形成されたゴムストリップを用いた場合(従来例)と比較するとともに、その結果を表1に記載した。
【0040】
なお前記周長は、従来例、実施例ともに、生タイヤ形成直後の周長を100とした指数で表示しており、数値が小さい方が、収縮が大でありタイヤ変形が大きいことを示す。なお経過時間は、生タイヤ形成直後からの経過時間(単位分)を意味する。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のゴムストリップの製造方法を実施するためのゴムストリップの製造装置の一例を示す側面図である。
【図2】その主要部を誇張して示す概念図である。
【図3】圧延手段を冷却手段とともに示す断面図である。
【図4】従来のゴムストリップの製造装置を例示する断面図である。
【図5】その主要部を誇張して示す概念図である。
【符号の説明】
【0043】
2 吐出口
3 ゴム押出機
4 圧延手段
4U、4L 上下のカレンダロール
4S 外周面
5 引取りロール
6 搬送コンベヤ
15 セラミックロール
16 冷却手段
18 ロール本体
18S 取付面部
20 周方向溝
21 第1の導通孔
22 第2の導通孔
23 冷却流路
30 案内ローラ
31 搬送テープ
G ゴム
Gs ゴムストリップ
K1 吐出段階
K2 圧延段階
K3 引取り段階
K4 搬送段階
Y シュリンク領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム押出機の吐出口からゴムを連続的に吐出する吐出段階と、
前記吐出口の近傍に配される上下のカレンダロールを有する圧延手段により、前記吐出口からのゴムを圧延して巾狭帯状のゴムストリップを形成する圧延段階と、
前記圧延手段からのゴムストリップを引取りロールにより引き取る引取り段階と、
前記引取りロールからのゴムストリップを、案内ローラにより周回運動可能に案内される非伸長性の搬送テープを有する搬送コンベヤの前記搬送テープの一面に粘着保持して搬送する搬送段階とを含み、
かつ前記上下のカレンダロールは、少なくともゴムと接する外周面をセラミック材からなるセラミックロールで形成するとともに、
前記外周面の温度を、前記上下のカレンダロールに内蔵する冷却手段により、30℃以下の低温に制御するとともに、
前記引取りロールと搬送コンベヤとの間を、前記ゴムストリップが拘束されずにU字状に弛んで垂下することにより該ゴムストリップが自由に収縮しうるシュリンク領域としたことを特徴とするゴムストリップの製造方法。
【請求項2】
吐出口からゴムを連続的に吐出するゴム押出機と、
前記吐出口の近傍に配され、かつ前記吐出口からのゴムを圧延して巾狭帯状のゴムストリップを形成する上下のカレンダロールを有する圧延手段と、
前記圧延手段の下流側に配され前記圧延手段からのゴムストリップを引き取る引取りロールと、
この引取りロールの下流側に配されかつ前記引取りロールからのゴムストリップを引き取って搬送する搬送コンベヤとを具えるとともに、
前記搬送コンベヤは、案内ローラにより周回運動可能に案内されかつ前記ゴムストリップを一面で粘着保持して搬送する非伸長性の搬送テープを有し、
しかも前記上下のカレンダロールは、少なくともゴムと接する外周面をセラミック材からなるセラミックロールで形成し、かつ前記外周面の温度を30℃以下に冷却する冷却手段を内蔵するとともに、
前記引取りロールと搬送コンベヤとの間を、前記ゴムストリップが拘束されずU字状に弛んで垂下することにより該ゴムストリップが自由に収縮しうるシュリンク領域としたことを特徴とするゴムストリップの製造装置。
【請求項3】
前記上下のカレンダロールは、回転可能に枢支されかつ半径方向外面に取付面部を有するロール本体と、この取付面部に半径方向内面が取り付く前記セラミックロールとからなり
しかも前記冷却手段は、前記取付面部に凹設される周方向溝と、前記ロール本体の一端からのびかつ前記周方向溝に導通する第1の導通孔と、前記ロール本体の他端からのびかつ前記周方向溝に導通する第2の導通孔とからなりかつチラー水が通る冷却流路を具えることを特徴とする請求項2記載のゴムストリップの製造装置。
【請求項4】
前記ロール本体は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、かつ前記セラミックロールの外周面は、表面粗さRaが1.01〜1.50μmの梨地面としたことを特徴とする請求項3記載のゴムストリップの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−184152(P2009−184152A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24190(P2008−24190)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】