説明

ゴム組成物

【課題】 従来の改良ポリブタジエンゴムの長所をそのまま保持しつつ、硬度及び弾性(特に低伸長化での弾性)などの特性に優れたゴム組成物を提供する。
【解決手段】 (A)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム成分10〜80重量%、(B)水分の濃度が調節された、1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程を含んで得られた補強ポリブタジエンゴム成分5〜60重量%、および(C)加硫可能なエラストマ−からなるマトリックス中に、熱可塑性ポリアミドが微細繊維状に分散しているものを含む繊維強化ゴム成分5〜70重量%からなるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なゴムであって、産業用自動車タイヤなどの部材に好適な高硬度、高弾性率ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界においては、省資源、省エネルギーの観点から、ゴムの硬度、弾性、耐摩耗性、機械的性質、及び動的特性(発熱特性やtanδ)を改良することが検討されてきた。このようなゴムとして、高シス−1,4−ポリブタジエン(以下「高シスポリブタジエン」)のマトリックス中にシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(SPBD)を分散させた改良ポリブタジエンゴムが提案された(特公昭49−17666号(特許文献1))。このポリブタジエンゴムは、SPBDが高シスポリブタジエンのマトリックス中に繊維状に分散した構造を有しているため、従来のゴム、例えば高シスポリブタジエン単味のゴム等と比較して硬度及び弾性が高く耐屈曲亀裂成長性に優れているという特徴を有している。
【0003】
このため、この改良ポリブタジエンを用いたタイヤ部材も各種提案されている。このようなものとして、例えばトレッドに使用した例(特公昭63−1355号(特許文献2))やサイドウォールに使用した例(特公昭55−17059号(特許文献3))等がある。
【0004】
特許2763480号公報(特許文献4)には、シンジオ結晶を含有するジエン系ゴム成分と充填剤、イオウを配合してなる高硬質ゴム組成物をベース部に用いた産業用トラクッシュタイヤが開示されている。特開平6−192479号公報(特許文献5)には、熱可塑性ポリアミド短繊維とジエン系ゴムとを化学結合してなるマスターバッチゴム、ジエン系ゴム、カーボンブラック、ノボラック型変性フェノール系樹脂を含有するゴム組成物が開示されている。
【0005】
しかし、フォークリフト用タイヤ、ソリッドタイヤ、あるいは、ビードフィラ−やチェーファーなどビードゴムなどには、走行安定性、形状維持、低ロス化の観点から、低伸長時での弾性率、硬度などがさらに高いゴム組成物が望まれていた。
【0006】
一般にラジアルタイヤでは、高速耐久性や高速操縦性の点からスチールコードも使用されている。スチールコードを使用する場合、タイヤ走行時にスチールコード近傍のゴムに非常に大きな歪み集中が生じやすい。従って、スチールコード用ゴムとしては高弾性率で金属との接着性に優れることが必要とされる。有機繊維コードを用いるラジアルタイヤ、バイアスタイヤにおいても耐久性の観点からコード用ゴムとしては高弾性率のものが好ましい。
【0007】
高弾性率のゴムを得る方法としては従来から種々の方法が試みられている。カーボンブラックを多量配合する方法は、加工工程でのゴムのまとまりが悪いこと、混練や押出時に電力負荷が増大すること、配合物MLが大きくなるので押出成形時に困難が伴うため好ましくない。硫黄を多量配合する方法は、硫黄がブルームすること、架橋密度の増大によって亀裂成長が速くなる等の欠点を有する。熱硬化性樹脂の添加は、熱硬化性樹脂がコードコーティングゴムとして一般的に用いられる天然ゴムやジエン系ゴムとの相溶性が低いので分散不良になりやすく耐クラック性に劣る。また、従来公知のタイヤコードコーティングゴム組成物はグリーンストレングスが小さく、成形加工性の点からさらにグリーンストレングスの大きいものが要求されている。
【0008】
特開2002−47376(特許文献6)には、(A)特定の天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム成分10〜80重量%、(B)特定の補強ポリブタジエンゴム成分5〜60重量%、並びに(C)特定の繊維強化ゴム成分5〜70重量%からなるゴム組成物であって、(B)成分が還元比粘度が0.5〜4であるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを主成分とする沸騰n−ヘキサン不溶分1〜30重量%と、高シス−1,4−ポリブタジエンを主成分とする沸騰n−ヘキサン可溶分70〜99重量%からなる補強ポリブタジエンゴムであり、(C)成分が加硫可能なエラストマ−からなるマトリックス中に、主鎖にアミド基を有する熱可塑性ポリマーが微細繊維状に分散しており、該熱可塑性ポリマーがマトリックスと結合している繊維強化ゴムであって、硬度及び弾性(特に低伸長化での弾性)などの特性に優れたポリブタジエンゴムが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特公昭49−17666号公報
【特許文献2】特公昭63−1355号公報
【特許文献3】特公昭55−17059号公報
【特許文献4】特許2763480号公報
【特許文献5】特開平6−192479号公報
【特許文献6】特開2002−47376公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の改良ポリブタジエンゴムの長所をそのまま保持しつつ、硬度及び弾性(特に低伸長化での弾性)などの特性に優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(A)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム成分10〜80重量%、(B)補強ポリブタジエンゴム成分5〜60重量%、並びに(C)繊維強化ゴム成分5〜70重量%からなるゴム組成物であって、該(B)成分及び(C)成分が下記の特徴を有するゴム組成物に関する。
(B)成分:(a)(1)水分の濃度が調節された、1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR3(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン、及び、
(b)上記シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエン
を混合することを特徴とする補強ポリブタジエンゴム成分。
(C)成分:(c−1)加硫可能なエラストマ−からなるマトリックス中に、熱可塑性ポリアミドが微細繊維状に分散しており、該熱可塑性ポリアミドがマトリックスと結合している繊維強化ゴム、(c−2)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム及び(c−3)カーボンブラックを配合してなる繊維強化ゴム組成物。
【0012】
また、本発明は、当該(a)(2)の1,3−ブタジエンを1,2重合する工程の重合温度が−5〜50℃であることを特徴とする上記のゴム組成物に関する。
【0013】
本発明は、当該(a)で得られたビニル・シス−ポリブタジエンの沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)が10〜60重量%であることを特徴とする上記のゴム組成物に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、高硬度、高弾性率、低ロス性、低圧縮歪に優れているゴム組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のゴム組成物の(A)成分としては、天然ゴム、ジエン系合成ゴムが挙げられる。具体的には、天然ゴム、高シスポリブタジエンゴム、低シスポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴムなどのジエン系ゴム等があげられる。これらの中でも、天然ゴムが好ましい。又、これらのゴムをエポキシ変性、シラン変性、マレイン変性などをしたものも用いられる。
【0016】
本発明のゴム組成物の(B)成分は、(a)(1)水分の濃度が調節された、1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR3(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン、及び、
(b)上記シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエン
を混合することにより製造される。
【0017】
(a)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
炭化水素系溶媒としては,トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、上記のオレフィン化合物やシス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。1,3−ブタジエンモノマ−そのものを重合溶媒として用いてもよい。
【0018】
中でも、トルエン、シクロヘキサン、あるいは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物などが好適に用いられる。
【0019】
次に1,3−ブタジエンと前記溶媒とを混合して得られた混合媒体中の水分の濃度を調節する。水分は前記媒体中の有機アルミニウムクロライド1モル当たり,好ましくは0.1〜1.0モル,特に好ましくは0.2〜1.0モルの範囲である。この範囲以外では触媒活性が低下したり,シス1,4構造含有率が低下したり,分子量が異常に低下又は高くなったり,重合時のゲルの発生を抑制することができず,このため重合槽などへのゲルの付着が起り,更に連続重合時間を延ばすことができないので好ましくない。水分の濃度を調節する方法は公知の方法が適用できる。多孔質濾過材を通して添加・分散させる方法(特開平4−85304号公報)も有効である。
【0020】
水分の濃度を調節して得られた溶液には有機アルミニウム化合物を添加する。有機アルミニウム化合物としては,トリアルキルアルミニウムやジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、アルキルアルミニウムジクロライド等である。
【0021】
具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムを挙げることができる。
【0022】
さらに、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのような有機アルミニウムハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機アルミニウム化合物も含まれる。これらの有機アルミニウム化合物は、二種類以上併用することができる。
有機アルミニウム化合物の使用量の具体例としては,1,3−ブタジエンの全量1モル当たり0.1ミリモル以上,特に0.5〜50ミリモルが好ましい。
【0023】
次いで,有機アルミニウム化合物を添加した混合媒体に可溶性コバルト化合物を添加してシス1,4重合する。可溶性コバルト化合物としては,炭化水素系溶媒を主成分とする不活性媒体又は液体1,3−ブタジエンに可溶なものであるか又は,均一に分散できる,例えばコバルト(II)アセチルアセトナート,コバルト(III )アセチルアセトナートなどコバルトのβ−ジケトン錯体,コバルトアセト酢酸エチルエステル錯体のようなコバルトのβ−ケト酸エステル錯体,コバルトオクトエート、コバルトナフテネート、コバルトベンゾエートなどの炭素数6以上の有機カルボン酸のコバルト塩,塩化コバルトピリジン錯体、塩化コバルトエチルアルコール錯体などのハロゲン化コバルト錯体などを挙げることができる。可溶性コバルト化合物の使用量は1,3−ブタジエンの1モル当たり0.001ミリモル以上,特に0.005ミリモル以上であることが好ましい。また可溶性コバルト化合物に対する有機アルミニウムクロライドのモル比(Al/Co)は10以上であり,特に50以上であることが好ましい。また,可溶性コバルト化合物以外にもニッケルの有機カルボン酸塩,ニッケルの有機錯塩,有機リチウム化合物,ネオジウムの有機カルボン酸塩,ネオジウムの有機錯塩を使用することも可能である。
【0024】
シス1,4重合する温度は0℃を超える温度〜100℃,好ましくは10〜100℃、更に好ましくは20〜100℃までの温度範囲で1,3−ブタジエンをシス1,4重合する。重合時間(平均滞留時間)は10分〜2時間の範囲が好ましい。シス1,4重合後のポリマー濃度は5〜26重量%となるようにシス1,4重合を行うことが好ましい。重合槽は1槽,又は2槽以上の槽を連結して行われる。重合は重合槽(重合器)内にて溶液を攪拌混合して行う。重合に用いる重合槽としては高粘度液攪拌装置付きの重合槽,例えば特公昭40−2645号に記載された装置を用いることができる。
【0025】
本発明のシス1,4重合時に公知の分子量調節剤,例えばシクロオクタジエン,アレン,メチルアレン(1,2−ブタジエン)などの非共役ジエン類,又はエチレン,プロピレン,ブテン−1などのα−オレフィン類を使用することができる。又重合時のゲルの生成を更に抑制するために公知のゲル化防止剤を使用することができる。シス1,4−構造含有率が一般に90%以上,特に95%以上であることが好ましい。
【0026】
ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃,以下,MLと略す)10〜130,特に15〜80が好ましい。実質的にゲル分を含有しない。
【0027】
5%トルエン溶液粘度(Tcp)が150〜250であることが好ましい。
【0028】
前記の如くして得られたシス1,4重合物に1,3−ブタジエンを添加しても添加しなくてもよい。そして,一般式AlR3 で表せる有機アルミニウム化合物と二硫化炭素,必要なら前記の可溶性コバルト化合物を添加して1,3−ブタジエンを1,2重合してビニル・シスポリブタジエンゴム(VCR)を製造する。一般式AlR3 で表せる有機アルミニウム化合物としてはトリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,トリn−ヘキシルアルミニウム,トリフェニルアルミニウムなどを好適に挙げることができる。有機アルミニウム化合物は1,3−ブタジエン1モル当たり0.1ミリモル以上,特に0.5〜50ミリモル以上である。二硫化炭素は特に限定されないが水分を含まないものであることが好ましい。二硫化炭素の濃度は20ミリモル/L以下,特に好ましくは0.01〜10ミリモル/Lである。二硫化炭素の代替として公知のイソチオシアン酸フェニルやキサントゲン酸化合物を使用してもよい。
【0029】
1,2重合する温度は−5〜100℃が好ましく,特に−5〜50℃が好ましい。1,2重合する際の重合系には前記のシス重合液100重量部当たり1〜50重量部,好ましくは1〜20重量部の1,3−ブタジエンを添加することで1,2重合時の1,2−ポリブタジエンの収量を増大させることができる。重合時間(平均滞留時間)は10分〜2時間の範囲が好ましい。1,2重合後のポリマー濃度は9〜29重量%となるように1,2重合を行うことが好ましい。重合槽は1槽,又は2槽以上の槽を連結して行われる。重合は重合槽(重合器)内にて重合溶液を攪拌混合して行う。1,2重合に用いる重合槽としては1,2重合中に更に高粘度となり,ポリマーが付着しやすいので高粘度液攪拌装置付きの重合槽,例えば特公昭40−2645号公報に記載された装置を用いることができる。
【0030】
得られたビニル・シス−ポリブタジエンの沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)が10〜60重量%、特に30〜40であることが好ましく、特に30〜50重量%が好ましい。
【0031】
重合反応が所定の重合率に達した後,常法に従って公知の老化防止剤を添加することができる。老化防止剤の代表としてはフェノール系の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT),リン系のトリノニルフェニルフォスファイト(TNP),硫黄系の4.6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)などが挙げられる。単独でも2種以上組み合わせて用いてもよく,老化防止剤の添加はVCR100重量部に対して0.001〜5重量部である。次に重合停止剤を重合系に加えて停止する。例えば重合反応終了後,重合停止槽に供給し,この重合溶液にメタノール,エタノールなどのアルコール,水などの極性溶媒を大量に投入する方法,塩酸,硫酸などの無機酸,酢酸,安息香酸などの有機酸,塩化水素ガスを重合溶液に導入する方法などの,それ自体公知の方法である。次いで通常の方法に従い生成したビニル・シスポリブタジエン(以下、VCRと略)を分離,洗浄,乾燥する。
【0032】
このようにして得られたビニル・シス−ポリブタジエンの沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)が10〜60重量%であることが好ましく、特に30〜50重量%が好ましい。
沸騰n−ヘキサン可溶分はミクロ構造が90%以上のシス1,4−ポリブタジエンである。
【0033】
このようにして得られたVCRを分離取得した残部の未反応の1,3−ブタジエン,不活性媒体及び二硫化炭素を含有する混合物から蒸留により1,3−ブタジエン,不活性媒体として分離して,一方,二硫化炭素を吸着分離処理,あるいは二硫化炭素付加物の分離処理によって二硫化炭素を分離除去し,二硫化炭素を実質的に含有しない1,3−ブタジエンと不活性媒体とを回収する。また,前記の混合物から蒸留によって3成分を回収して,この蒸留から前記の吸着分離あるいは二硫化炭素付着物分離処理によって二硫化炭素を分離除去することによっても,二硫化炭素を実質的に含有しない1,3−ブタジエンと不活性媒体とを回収することもできる。前記のようにして回収された二硫化炭素と不活性媒体とは新たに補充した1,3−ブタジエンを混合して使用される。
【0034】
本発明による方法で連続運転すると,触媒成分の操作性に優れ,高い触媒効率で工業的に有利にVCRを連続的に長時間製造することができる。特に,重合槽内の内壁や攪拌翼,その他攪拌が緩慢な部分に付着することもなく,高い転化率で工業的に有利に連続製造できる。
【0035】
(b)シス−ポリブタジエンの製造
上記(a)(1)の製造方法、すなわち、シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程と同様にして製造できる。
【0036】
得られたシス−ポリブタジエンは、シス1,4−構造含有率が一般に90%以上,特に95%以上であることが好ましい。
【0037】
ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃,以下,MLと略す)10〜130,特に15〜80が好ましい。実質的にゲル分を含有しない。
【0038】
5%トルエン溶液粘度(Tcp))が30〜250であることが好ましい。
【0039】
(a)ビニル・シス−ポリブタジエンと(b)シス−ポリブタジエンとを溶液混合して得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムにおける(A)と(B)の割合は(A)/(B)=10〜50重量%/90〜50重量%であることが好ましい。
【0040】
本発明のゴム組成物の(C)成分は、(c−1)加硫可能なエラストマ−からなるマトリックス中に、熱可塑性ポリアミドが微細繊維状に分散しており、該熱可塑性ポリアミドがマトリックスと結合している繊維強化ゴム、(c−2)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム及び(c−3)カーボンブラックを配合してなる繊維強化ゴム組成物である。(c−1)成分のマトリックスを形成する加硫可能なエラストマーとしては、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を挙げることができる。これらの中でも天然ゴムが好ましい。又、これらのゴムをエポキシ変性したものや、シラン変性、或いはマレイン化したものも用いられる。
【0041】
上記のマトリックスには、ポリオレフィンを含有してもよい。ポリオレフィンは、80〜250℃の融点を有することがこのましく、又、50℃以上のビカット軟化点、特に50〜200℃のビカット軟化点をもつものも好ましい。
【0042】
このようなポリオレフィンとしては、炭素数2〜8のオレフィンの単独重合体や共重合体、及び、炭素数2〜8のオレフィンと、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体、炭素数2〜8のオレフィンと、酢酸ビニル、アクリル酸或いはそのエステル、メタアクリル酸或いはそのエステルとの共重合体、炭素数2〜8のオレフィンと、ビニルシラン化合物などとの共重合体が挙げられる。
【0043】
具体的には、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンのブロックまたはランダム共重合体、線状低密度ポリエチレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1などのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル共重合体、アクリル酸、アクリル酸メチルなどとの共重合体、エチレンとビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどとの共重合体、エチレンあるいはプロピレンとスチレン共重合体等がある。又、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリオレフィンも好ましく用いられる。これらのポリオレフィンは1種のみ用いてもよく、2種以上を組合せてもよい。
【0044】
上記のマトリックス中に微細繊維状に分散しマトリックスと結合している該熱可塑性ポリアミドとしては、主鎖中にアミド基を有する熱可塑性ポリマーである。シランカップリング剤で変性されたものが好ましい。
【0045】
主鎖にアミド基を有する熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性ポリアミド及び尿素樹脂が挙げられる。融点が135℃〜350℃のものが好ましく、150℃〜300℃が特に好ましい。
【0046】
熱可塑性ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−ナイロン66共重合体、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、キシリレンジアミンとアジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などとの重縮合体、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどとテレフタル酸の重縮合体、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどとイソフタル酸の重縮合体等が挙げられる。
【0047】
これらの熱可塑性ポリアミドの内、最も好ましいものとしては融点160〜265℃の熱可塑性ポリアミドが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−ナイロン66共重合体、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン11、及びナイロン12等が挙げられる。
【0048】
(c−1)のマトリックスが加硫可能なエラストマ−とポリオレフィンから形成する場合は、加硫可能なエラストマ−中にポリオレフィンが島状に分散した構造を採っていてもよく、又、その逆にポリオレフィン中に加硫可能なエラストマ−が島状に分散した構造を採っていてもよい。各成分はその界面で互いに結合していることが好ましい。
【0049】
主鎖にアミド基を有する熱可塑性ポリマーは、その殆どが微細な繊維として上記マトリックス中に分散している。具体的には、その70重量%、好ましくは80重量%、特に好ましくは90重量%以上が微細な繊維として分散している。該繊維は、平均繊維径が1μm以下であることが好ましい。
【0050】
上記の(c−1)繊維強化ゴムは、例えば、特開平8−3368号公報に記載の工程により製造できる。即ち、工程1:マトリックスを調製する工程、工程2:主鎖にアミド基を有する熱可塑性ポリマーを結合剤と反応させる工程、工程3:上記マトリックスと、結合剤と反応させた熱可塑性ポリマーとを溶融、混練する工程、工程4:得られた混練物を、熱可塑性ポリマーの融点以上の温度で押出し、次いで熱可塑性ポリマーの融点より低い温度で延伸及び/又は圧延する工程により製造できる。溶融、混練は、樹脂やゴムの混練に通常用いられている装置で行うことができる。例えば、バンバリー型ミキサー、ニーダー、ニーダーエキストルーダー、オープンロール、一軸混練機、二軸混練機等が挙げられる。
【0051】
結合剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ノボラック型アルキルフェノールホルムアルデヒド初期縮合物、レゾール型アルキルフェノールホルムアルデヒド初期縮合物、ノボラック型フェノールホルムアルデヒド初期縮合物、レゾール型フェノールホルムアルデヒド初期縮合物、不飽和カルボン酸及びその誘導体、有機過酸化物等、高分子のカップリング剤として通常用いられているものを用いることができる。これら中で、(シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルアルコキシシラン、ビニルトリアセチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−〔N−(β−メタクリロキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム(クロライド)〕プロピルメトキシシラン、並びにスチリルジアミノシラン等、ビニル基、アルキロキシ基等他から水素原子を奪って脱離し易い基及び/又は極性基を有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。結合剤としてシランカップリング剤を用いる際は、有機過酸化物を併用することができる。
【0052】
熱可塑性ポリマー成分は、予め結合剤と溶融混練して反応させてから上記マトリックスと溶融混練してもよいし、結合剤の存在下で上記マトリックスと溶融混練してもよい。
【0053】
熱可塑性ポリマー成分に対する結合剤の場合は、熱可塑性ポリマー成分と結合剤の合計量を100重量%としたとき、0.1〜5.5重量%の範囲が好ましい。
【0054】
この工程において、マトリックスと熱可塑性ポリマー成分とを溶融、混練する温度は、熱可塑性ポリマー成分の融点以上が好ましい。融点よりも低い温度で溶融、混練を行っても、混練物は、マトリックス中に熱可塑性ポリマー成分の微細な粒子が分散した構造にはならない。又、混練温度は、ポリオレフィンの融点又はビカット軟化点以上の温度であることが好ましい。
【0055】
上記工程で得られた混練物を、紡糸口金或いはインフレーションダイ又はTダイから押出し、次いでこれを延伸又は圧延する。この工程においては、紡糸又は押出によって、混練物中の熱可塑性ポリマー成分の微粒子が繊維に変形する。この繊維は、それに引続く延伸又は圧延によって延伸処理され、より強固な繊維となる。従って、紡糸及び押出は、熱可塑性ポリマー成分の融点以上の温度で実施し、延伸及び圧延は熱可塑性ポリマー成分の融点よりも低い温度で実施することが好ましい。
【0056】
紡糸又は押出、及びこれに引続く延伸或いは圧延は、例えば、混練物を紡糸口金から押出して紐状乃至糸状に紡糸し、ドラフトを掛けつつボビン等に巻取る等の方法で実施できる。ここでドラフトを掛けるとは、紡糸速度よりも巻取速度を高くとることをいう。巻取速度/紡糸速度の比(ドラフト比)は1.5〜100の範囲とすることが好ましい。
【0057】
この工程は、この他、紡糸した混練物を圧延ロール等で連続的に圧延することによっても実施できる。更に、混練物をインフレーション用ダイやTダイから押出し、ドラフトを掛けつつロール等に巻取ることによっても実施できる。又、ドラフトを掛けつつロールに巻取る代わりに圧延ロール等で圧延してもよい。
【0058】
延伸或いは圧延後の上記(c−1)繊維強化ゴムは、ペレットとすることが好ましい。ペレットとすることによって、下記の(c−2)天然ゴム、ジエン系ゴム、及び(c−3)カーボンブラック等と、均一に混練しやすくなる。
【0059】
本発明の(C)成分の繊維強化ゴム組成物には、上記の(c−1)繊維強化ゴムと共に、(c−2)天然ゴム及び/又はジエン系ゴム、並びに(c−3)カーボンブラックを配合してなるものが好ましい。
【0060】
前記の(c−2)ジエン系ゴムとしては、高シス−1,4−ポリブタジエン、低シス−1,4−ポリブタジエン、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−イソブチレン共重合体等が挙げられる。(c−3)カーボンブラックとしては、粒子径90μm以下、ジブチルフタレート(DBP)吸油量70ml/100g以上のものが好適に使用される。例えばHAF、FF、FEF、GPF、SAF、ISAF、SRF等の各種カーボンブラックが使用される。
【0061】
前記熱可塑性ポリマーの量が前記下限より少ないと、MLが小さく加硫物の弾性率及び屈曲回数の大きいゴム組成物が得られず、熱可塑性ポリマーの量が前記上限より多いと、組成物のMLが大きくなり、加工が難しくなる。天然ゴム又はポリイソプレンの配合割合が前記範囲外であると加硫物の屈曲回数が小さくなる傾向にある。カーボンブラックの量が前記下限より少ないと加硫物のピコ摩耗指数が小さくなり、カーボンブラックの量が前記上限より多いと組成物のMLが大きくなる。
【0062】
本発明の上記の(C)繊維強化ゴム組成物は、前記各成分をバンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール、二軸混練機等の混練機を用い、混合することで得られる。混練温度は、当該繊維強化熱可塑性組成物中の微細な短繊維を構成する熱可塑性ポリマーの融点よりは低いことが好ましい。熱可塑性ポリマーの融点より高い温度で混練すると、繊維強化熱可塑性組成物中の微細な短繊維が溶けて球状の粒子等に変形する場合がある。
【0063】
(C)繊維強化ゴム組成物はペレット状のものが好ましい。ペレット状の繊維強化ゴム組成物は(A)成分及び(B)の成分と均一に混練でき、微細な繊維が均一に分散した組成物が得られやすい。
【0064】
本発明の各成分の配合割合は、(A)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム成分10〜80重量%、好ましくは、10〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%(B)補強ポリブタジエンゴム成分5〜60重量%、好ましくは、5〜50重量%、特に好ましくは10〜50重量%、並びに(C)繊維強化ゴム成分5〜70重量%、好ましくは20〜70重量%である。
【0065】
本発明のゴム組成物は、以下の工程で製造することが好ましい。すなわち、加硫可能なエラストマ−、ポリオレフィン及び主鎖にアミド基を有する熱可塑性ポリマーを混練し、ポリオレフィンの連続相に加硫可能なエラストマ−が分散しているマトリックスに主鎖にアミド基を有する熱可塑性ポリマーが微細繊維状に分散しているペレットを調整する第1工程、さらに、加硫可能なエラストマ−を添加して混練し、加硫可能なエラストマ−の連続相にポリオレフィンが分散しているマトリックスの相構造が転移したマスターバッチを調整する第2工程、さらに、補強ポリブタジエンゴム成分を添加して混練する第3工程ことからなる工程で製造することが好ましい。
【0066】
本発明のゴム用組成物には加硫剤等の添加剤が配合される。加硫剤としては公知の加硫剤、例えばイオウ、有機過酸化剤、含イオウ化合物等を使用することができる。加硫剤をゴム組成物に配合する方法については特に制限はなく、それ自体公知の配合方法を採用することができる。加硫剤とともに、ホワイトカーボン、活性化炭酸カルシウム、超微粉けい酸マグネシウム、ハイスチレン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、石油樹脂等の補強剤、各種グレードの炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、亜鉛華、けいそう土、再生ゴム、粉末ゴム、エボナイト粉末等の充填剤、アルデヒド、アンモニア類、アルデヒド・アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメート類、キサンテート類等の加硫促進剤、金属酸化物、脂肪酸等の加硫促進助剤、アミン・アルデヒド類、アミン・ケトン類、アミン類、フェノール類、イミダゾール類、含イオウ系或いは含リン系老化防止剤、ナフテン系、アロマティック系、パラフィン系のプロセス油等を、この発明の効果を損なわない範囲で配合して組成物を調製することができる。特に、この発明の組成物には、ゴム100重量部に対して1〜30重量部のプロセス油を配合するのが好ましい。
【0067】
本発明のゴム組成物の加硫温度は100〜190℃程度が好ましい。但し加硫温度は、ゴム組成物中の微細な繊維を構成する熱可塑性ポリマーの融点よりも低い温度である必要がある。この熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加硫を行うと、繊維強化熱可塑性ゴム組成物の調製時に形成された繊維が溶けてしまい、加工性に優れ、加硫物の引張弾性率の大きいゴム組成物が得られない場合がある。
【0068】
この発明の組成物は、加硫物のM10が30kg/cm2以上、好ましくは100〜30kg/cm2、あるいは、3Mpa以上、好ましくは10〜3Mpa、硬度が85以上、好ましくは150〜85、圧縮永久歪(CS)が70%以下など、低伸長時での弾性率が大きく、タイヤなどが優れている特性を有している。
【0069】
産業用タイヤ、乗用車、バス、トラック、飛行機等のタイヤ部材、特にビードフィラーやチェーファーゴム、電線保護カバー、側溝ゴムジョイント、ゴムシート、防振ゴム、コンベアーベルトなどに用いることができる。
【0070】
(1)1,2ポリブタジエン結晶繊維含有量;2gのビニル・シスポリブタジエンゴムを200mlのn−ヘキサンにて4時間ソックスレー抽出器によって沸騰抽出した抽出残部を重量部で示した。
(2)1,2ポリブタジエン結晶繊維の融点;沸騰n−ヘキサン抽出残部を示差走査熱量計(DSC)による吸熱曲線のピーク温度により決定した。
(3)結晶繊維形態;ビニル・シスポリブタジエンゴムを一塩化硫黄と二硫化炭素で加硫し、加硫物を超薄切片で切り出して四塩化オスミウム蒸気でビニル・シスポリブタジエンのゴム分の二重結合を染色して、透過型電子顕微鏡で観察して求めた。
(4)ビニル・シスポリブタジエンゴム中のゴム分のミクロ構造;赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス740cm-1、トランス967cm-1、ビニル910cm-1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
(5)ビニル・シスポリブタジエンゴム中のゴム分のトルエン溶液粘度;25℃における5重量%トルエン溶液の粘度を測定してセンチポイズ(cp)で示した。
(6)ビニル・シスポリブタジエンゴム中のゴム分の[η];沸騰n−ヘキサン可溶分を乾燥採取し、トルエン溶液にて30℃の温度で測定した。
(7)ムーニー粘度;JIS K6300に準じて100℃にて測定した値である。
(8)ダイ・スウェル;加工性測定装置(モンサント社、MPT)を用いて配合物の押出加工性の目安として100℃、100sec-1のせん断速度で押出時の配合物の径とダイオリフィス径(但し、L/D=1.5mm/1.5mm)の比を測定して求めた。
(9)グリーンモジュラス;未加硫ゴムを3号ダンベルに打ち抜いて試験片とし、室温、200mm/minの引張速度で測定した。
(10)引張弾性率;JIS K6301に従い、引張弾性率M300を測定した。
(11)金属との接着強さ;ASTM D2229に準じて測定した。
【実施例】
【0071】
(B成分)
(実施例1)
(a)ビニル・シスポリブタジエンの製造
窒素ガスで置換した内容1.5Lの撹拌機つきステンレス製反応槽中に重合溶液1.0L(ブタジエン;31.5wt%、2‐ブテン類;28.8wt%、シクロヘキサン;39.7wt%)を入れ、水1.7mmol、ジエチルアルミニウムクロライド2.9mmol、二硫化炭素0.3mmol、シクロオクタジエン13.0mmol、コバルトオクトエート0.005mmolを加え、40℃で20分間撹拌し、1,4シス重合を行った。この時少量のシスポリブタジエン重合液を反応槽より取り出し、乾燥した後得られたシス−ポリブタジエンゴムのトルエン溶液粘度を測定したところ175であった。その後、ブタジエン150ml、水1.1mmol、トリエチルアルムニウムクロライド3.5mmol、コバルトオクトエート0.04mmolを加え、40℃で20分間撹拌し、1,2シンジオ重合を行った。これに老化防止剤エタノール溶液を加えた。その後、未反応のブタジエン及び2‐ブテン類を蒸発除去し、収量66gで、HI;40.5%のビニル・シスポリブタジエンを得た。このうち58gのビニル・シスポリブタジエンをシクロヘキサンに溶解させ、ビニル・シスポリブタジエンスラリーを作製した。
【0072】
(b)シスポリブタジエンの製造
窒素ガスで置換した内容1.5Lの撹拌機つきステンレス製反応槽中に、重合溶液1.0L(ブタジエン;31.5wt%、2‐ブテン類;28.8wt%、シクロヘキサン;39.7wt%)を入れ、水1.7mmol、ジエチルアルミニウムクロライド2.9mmol、シクロオクタジエン20.0mmol、コバルトオクトエート0.005mmolを加え、60℃で20分間撹拌し、1,4シス重合を行った。これに老化防止剤エタノール溶液を加えて重合を停止した。その後、未反応のブタジエン及び2‐ブテン類を蒸発除去し、81gのムーニー粘度 29.0、トルエン溶液粘度48.3のシスポリブタジエンを得た。この操作を2回実施し、合わせて162gのシス−ポリブタジエンをシクロヘキサンに溶解させ、シス−ポリブタジエンシクロヘキサン溶液を作製した。
【0073】
(a)+(b)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
窒素ガスで置換した内容5.0Lの攪拌機つきステンレス製反応槽中に前述で述べたシスポリブタジエン162gが溶解したシス−ポリブタジエンシクロヘキサン溶液を入れ、そこに前述で述べたビニル・シスポリブタジエン58gを含むビニル・シスポリブタジエンシクロヘキサンスラリーを撹拌しながら添加した。スラリー添加後1時間撹拌した後、105℃で60分間真空乾燥して、(a)+(b)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム220gを得た。この重合体混合物は、ML;61.1、HI;11.9%であった。
【0074】
(C成分)繊維強化ゴム成分の調製ポリエチレン(宇部興産株式会社製、F522)、天然ゴム(NR、SMR−L)、ナイロン6(宇部興産株式会社製、宇部ナイロン1030B、融点215〜220℃、分子量30,000)を用いた。ポリエチレンは、100重量部に対し、0.5重量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び0.1重量部の4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリン酸n−ブチルエーテルと溶融混練して変性した。ナイロン6は、100重量部に対し、1.0重量部のN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランと溶融混練して変性した。
【0075】
先ず、上記のようにして変性したポリエチレン100重量部を、天然ゴム100重量部とバンバリー型ミキサーで混練しマトリックスを調製した。これを170℃でダンプ後ペレット化した。次いで、このマトリックスとナイロン6の100重量部を、240℃に加温した二軸混練機で混練し、混練物をペレット化した。得られた混練物を245℃にセットした一軸押出機で紐状に押出し、ドラフト比10で引取りつつペレタイザーでペレット化した。得られたペレットをo−ジクロルベンゼンとキシレンの混合溶媒中で還流して、ポリオレフィン及びNRを除去し、残った繊維の形状や直径を電子顕微鏡で観察したところ、平均繊維径0.2μmの繊維で有ることが確認できた。得られたペレット50重量部、油展S−SBR(日本ゼオン製)150重量部、ISAF カーボン 50重量部の割合で配合して(C)成分を調製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム成分10〜80重量%、(B)補強ポリブタジエンゴム成分5〜60重量%、並びに(C)繊維強化ゴム成分5〜70重量%からなるゴム組成物であって、該(B)成分及び(C)成分が下記の特徴を有するゴム組成物。
(B)成分:(a)(1)水分の濃度が調節された、1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR3(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン、及び、
(b)上記シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエン
を混合することを特徴とする補強ポリブタジエンゴム成分。
(C)成分:(c−1)加硫可能なエラストマ−からなるマトリックス中に、熱可塑性ポリアミドが微細繊維状に分散しており、該熱可塑性ポリアミドがマトリックスと結合している繊維強化ゴム、(c−2)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム及び(c−3)カーボンブラックを配合してなる繊維強化ゴム組成物。
【請求項2】
当該(a)(2)の1,3−ブタジエンを1,2重合する工程の重合温度が−5〜50℃であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
当該(a)で得られたビニル・シス−ポリブタジエンの沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)が10〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
当該(a)(1)のシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエンの5%トルエン溶液粘度(Tcp))が150〜250であることを特徴とする請求項1〜3に記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2007−31569(P2007−31569A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217128(P2005−217128)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】