説明

ゴム組成物

【課題】DCBS同等のゴムとスチールコードとの接着特性を示し、タイヤのベルトコードやエッジクッション用ゴムなどに応用可能なDCBS代替品の開発。
【解決手段】(A)ジエン系ゴムを30重量部以上含むゴム成分100重量部、(B)ジチオサリチル酸0.1〜10重量部及び(C)有機金属塩を金属含有量として0.05〜0.5重量部含むゴム組成物並びにそれを用いた空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関し、更に詳しくはN,N’−ジシクロヘキシル−1,3−ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(DCBS)代替品としてジチオサリチル酸を配合した空気入りタイヤのベルトコードやベルトエッジクッションなどに用いるのに適したゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ用ゴム組成物の加硫促進剤としてDCBSなどの遅効性促進剤が汎用されて来たが(例えば非特許文献1参照)、DCBSは2006年1月13日に第一種監視化学物質に指定されたことから近年DCBS同等のゴムとスチールコードとの接着特性を示し、DCBS代替品としてタイヤのベルトコード用ゴムやベルトエッジクッション用ゴムなどに応用可能な加硫促進剤の開発が進められている。しかしながら、空気入りタイヤのベルトコードやベルトエッジクッションなどに用いるのに適したDCBSの代替品は未だ開発されるに至っていない。
【0003】
【非特許文献1】Ishikawa,Y.:Rubber Chem.Technol.,57,855(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的はDCBSと同等のゴムとスチールコードとの接着特性を示し、DCBS代替品としてタイヤのベルトコード用ゴム、ベルトエッジクッション用ゴムなどに応用可能な加硫促進剤を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、(A)ジエン系ゴムを30重量部以上含むゴム成分100重量部、(B)ジチオサリチル酸0.1〜10重量部及び(C)有機金属塩を金属含有量として0.05〜0.5重量部含んでなるゴム組成物並びにそれをベルトコード用ゴム及び/又はベルトエッジ用ゴムとして用いた空気入りタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加硫促進剤DCBS代替品として、ジチオサリチル酸と有機金属塩、更に必要に応じて、スルフェンアミド系の加硫促進剤を併用することによって、DCBSと同等以上のゴムとスチールコードとの接着特性を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく研究を進めた結果、接着配合系の加硫促進剤DCBS代替品として、ジチオサリチル酸及び有機金属を併用することにより、更に必要に応じスルフェンアミド系加硫促進剤を併用することによってDCBSと同等以上のゴムとスチールコードとの接着特性を得ることに成功した。
【0008】
本発明に天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、各種スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、水素化されたNBRなどのジエン系ゴムを30重量部以上、好ましくは50重量部以上含むゴム100重量部に対し、(B)ジチオサリチル酸0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、(C)有機金属塩を金属含有量として0.05〜0.5重量部、好ましくは0.1〜0.3重量部、更に必要に応じ(D)スルフェンアミド系化合物0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部を配合する。これらのゴム組成物は、空気入りタイヤのベルトコード用ゴム、ベルトエッジクッション用ゴムなどとして用いることができる。
【0009】
本発明において(B)成分として使用するジチオサリチル酸は、市販の公知の化合物であり、その構造は以下の通りである。このジチオサリチル酸の配合量が少ないと、ゴム組成物とスチールコードとの接着性が不充分で好ましくなく、逆に多いと加硫度が上がりすぎるので好ましくない。
【0010】
【化1】

【0011】
本発明において(C)成分として使用する有機金属塩を形成する有機酸としては、例えばネオデカン酸、ステアリン酸、ナフテン酸、ロジン酸、トール油酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、例えばホウ酸三ネオデカン酸などのホウ素含有有機酸などのコバルト塩などをあげることができる。有機金属塩の配合量が少ないとスチールコードとの接着性が低下するので好ましくなく、逆に多いと加工性が悪化したり、加硫ゴムの物性が低下するので好ましくない。
【0012】
本発明の好ましい態様では、前記成分(A),(B)及び(C)に加えて、ゴム成分(A)100重量部に対し0.1〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部のスルフェンアミド系化合物(D)を配合する。この配合量が少ないと加硫度が上がらないので好ましくなく、逆に多いと加硫度が上がりすぎるので好ましくない。スルフェンアミド系化合物(D)は加硫促進剤などに使用されている市販の公知化合物で、具体例としてはN−シクロヘキシル−1,3−ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−ブチル−1,3−ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−1,3−ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドなどがあげられる。
【0013】
本発明に係るゴム組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0014】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0015】
実施例1〜2及び比較例1〜4
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉型ミキサーで7.5分間混練してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0016】
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で148℃で45分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。
【0017】
物性評価試験法
引張り試験
100%モジュラス(M100)、破断強度(TB)及び破断伸び(EB)はJIS K6251に準拠して測定した。
【0018】
ワイヤASTM(ブランク、100℃×48時間老化及びPC)
ワイヤ接着性:ASTM(D1871)に準拠してプラスメッキワイヤーと未加硫ゴムをメーキングして引抜試験を行い、引抜力(N)とゴム付着率(%)を得た。引抜力とゴム付着率が大きいほどゴムとワイヤの接着性が良いことを示す。
老化後の接着性:老化(100℃・48時間)後の試験片を用いて引抜試験を行い、引抜力(N)とゴム付着率(%)でゴムとワイヤの接着性を評価した。
プレッシャークッカー試験後の接着性:プレッシャークッカー試験機に130℃,95%RH,48時間の条件下で試験した試験片を用いて引抜試験を行い、引抜力(N)とゴム付着性(%)でゴムとワイヤの接着性を評価した。
【0019】
【表1】

【0020】
表I脚注
*1:天然ゴム(RSS#3)
*2:東海カーボン(株)製シースト30
*3:東邦亜鉛(株)製銀嶺R
*4:日本油脂(株)製ビーズステアリン酸YR
*5:FLEXSYS(株)製SANTOFLEX6PPD
*6:ローディア(株)製マノボンドC225(Co含有率22.5%)
*7:アクゾノーベル(株)製クリステックス HS OT 20
*8:大内新興化学工業(株)製ノクセラーDZ−G
*9:大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS−P
*10:関東化学(株)製ジチオサリチル酸
【0021】
*11:関東化学(株)製ジチオジプロピオン酸
【0022】
【化2】

【0023】
*12:大内新興化学工業(株)製2−ベンゾチアジルジスルフィド
【0024】
【化3】

【0025】
以上の通り、ジチオジプロピオン酸系(比較例2及び3)やベンゾチアジルジスルフィド系(比較例4)に比べ、本発明に従ってジチオサリチル酸を用いた場合(実施例1及び2)には耐熱老化後のワイヤ接着性に優れ、DCBS系やジチオジプロピオン酸系やベンゾチアジルジスルフィド系に比べプレッシャークッカー(PC)試験後のワイヤ接着性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、ジチオサリチル酸及び有機金属塩並びに、場合によってはスルフェンアミド系化合物を用いることによって、DCBS代替品としてタイヤのベルトコードゴムやベルトエッジクッションゴム用の接着特性を与えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジエン系ゴムを30重量部以上含むゴム成分100重量部、(B)ジチオサリチル酸0.1〜10重量部及び(C)有機金属塩を金属含有量として0.05〜0.5重量部含んでなるゴム組成物。
【請求項2】
(D)スルフェンアミド系化合物0.1〜5重量部を更に含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物をベルトコード用ゴム及び/又はベルトエッジクッション用ゴムに用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2008−127536(P2008−127536A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317331(P2006−317331)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】