説明

ゴム補強用繊維の製造方法

【課題】ゴムとの耐熱接着力および耐疲労性に優れたゴム補強用繊維の製造方法を提供すること。
【解決手段】合成繊維を、樹脂微粒子を含む処理液で処理する方法であって、該樹脂微粒子がコア部とシェル部からなるコアシェル構造を有し、コア部を構成するポリマーのガラス転移点温度が−20℃以下であり、シェル部を構成するポリマーのガラス転移点温度が60℃以上であるとともに、合成繊維を該処理液に含浸した後にシェル部を構成するポリマーのガラス転移点以上の温度で加熱処理することを特徴とする。さらには該樹脂微粒子のシェル部を構成するポリマーが水酸基またはカルボキシル基を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム補強用繊維の製造方法に関し、さらに詳しくはゴムに対する耐熱接着性の極めて高いゴム補強用繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムなどの各種材料の補強用として、繊維材料が広く用いられてきている。このように補強用途に繊維を用いる場合、各種材料と繊維間の接着が重要課題であり、各種接着剤が開発されてきた。しかし、特に優れた物理的特性を有する合成繊維などを使用する場合、まだまだその繊維の強力に比して接着性が不足しているという問題があった。ことにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート繊維で代表されるポリエステル繊維や、芳香族ポリアミド繊維等は、高強度、高ヤング率等の優れた物理的特性を有しており、補強用の繊維としては最適であるが、これら繊維はその表面が比較的不活性であるので、通常の接着剤ではゴムや樹脂等のマトリックスとの接着性が不十分となるという問題があった。
【0003】
このため現在では、脂肪族エポキシ化合物や、エチレン尿素、ブロックドイソシアネート化合物等の反応性の強い化学薬品を含む接着剤組成物が各種開発されてきている。例えば、特許文献1には、繊維の表面を種々の薬品を含む接着剤組成物であらかじめ処理し、さらにレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)系接着剤で処理する、2浴処理方法が提案され実用化されている。または、特許文献2に開示されているようなRFL系接着剤にブロックドイソシアネートと芳香族エポキシ化合物を添加した接着剤組成物のみで処理する、1浴処理方法が実用化されている。特に耐熱接着力を向上させるためには例えば特許文献3ではケイ酸アルカリ金属塩を含有することによる耐熱接着性に優れた接着剤組成物が開示されている。
【0004】
しかし、これらの接着剤組成物を用いた場合であっても、過加硫時等の熱が過剰にかかる条件下等では接着力が低下し、さらには使用によって繊維強度が低下し、繊維の物理的特性を充分に発揮させるにはまだ不十分であるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開昭54−73994号公報
【特許文献2】特開平10−46475号公報
【特許文献3】特開2004−83775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ゴムとの耐熱接着力および耐疲労性に優れたゴム補強用繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のゴム補強用繊維の製造方法は、合成繊維を、樹脂微粒子を含む処理液で処理する方法であって、該樹脂微粒子がコア部とシェル部からなるコアシェル構造を有し、コア部を構成するポリマーのガラス転移点温度が−20℃以下であり、シェル部を構成するポリマーのガラス転移点温度が60℃以上であるとともに、合成繊維を該処理液に含浸した後にシェル部を構成するポリマーのガラス転移点以上の温度で加熱処理することを特徴とする。さらには該樹脂微粒子のシェル部を構成するポリマーが水酸基またはカルボキシル基を有することが好ましい。
【0008】
また処理液が、ゴムラテックスを含有することや、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を含有すること、ポリエポキシド化合物及びブロックドイソシアネート化合物を含有することが好ましい。さらには該合成繊維が、ポリエポキシド化合物またはブロックドイソシアネート化合物による前処理糸であることや、ポリエステル繊維または芳香族ポリアミド繊維であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴムとの耐熱接着力および耐疲労性に優れたゴム補強用繊維の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は合成繊維をコアシェル構造を有する樹脂微粒子を含む処理液に含浸、加熱処理を行うゴム補強用繊維の製造方法である。
ここで本発明の製造方法で用いられる合成繊維には特に制限は無いが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル、ナイロン6、ナイロン66に代表される脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、およびポリビニルアルコール、ポリエチレンからなるポリマーを紡糸、延伸することにより得られる繊維であることが好ましい。これらの繊維は、高強力化を図るために、高粘度のポリマーを用い、高延伸倍率で延伸されたものであることが望ましい。
【0011】
合成繊維の形状は、特に制限されるものではなく、ヤーン、コード、不織布、織編物等種々の繊維集合形態で処理することができ、柔軟に本発明の製造プロセスを実施することが出来る。しかし特にはゴム補強用用途として、マルチフィラメントからなる合成繊維であることが好ましい。特に好ましくは、単糸太さが0.5〜6.0dtex、フィラメント数が180〜1000フィラメントであるフィラメント糸を使用し、30〜70T/10cmで下撚りを施し、これを2〜4本あわせて逆方向に30〜70T/10cmで上撚りを施したものである。また、その合計太さは1000〜10000dtex、特に好ましくは2200〜6600dtexであるものが好ましい。断面形状は、強度の点などから円形であることが好ましいが、接着性の観点から異型断面をとることも本方法では可能である。
【0012】
本発明で用いられる処理液は樹脂微粒子を含むものであり、樹脂微粒子がコア部とシェル部からなるコアシェル構造を有し、コア部を構成するポリマーのガラス転移点温度が−20℃以下であり、シェル部を構成するポリマーのガラス転移点温度が60℃以上であることを必須とする。コア部ポリマーのガラス転移温度としては−30℃以下であることがさらには−35〜−70℃の範囲であることがより好ましい。ガラス転移温度が−20℃より高い場合には、加熱処理時の繊維に対する含浸性が低下し、耐熱性向上効果を得ることができない。また、シェル部ポリマーのガラス転移温度としては80〜130℃であることがより好ましく、低すぎる場合には加熱処理前の繊維への処理液の含浸時の安定性が低下し、本発明の効果を安定して得ることができない。
【0013】
本発明で用いられる樹脂微粒子のコア部としては共役ジエンまたはアルキル基の炭素数が2〜8であるアルキルアクリレートあるいはそれらの混合物を重合させて得られたゴム状ポリマーであることが好ましい。ここでコア部の樹脂微粒子に占める割合は重量で50〜90重量%の範囲が適当である。
【0014】
さらにシェル部を構成するポリマーが水酸基またはカルボキシル基を有することが好ましい。このような基を有することにより、繊維のゴムに対する接着性をより向上させることが可能となる。またこのような樹脂微粒子を処理液中で安定して存在させるためには、水溶液、乳化物として用いることが好ましい。より具体的にはビニル重合性ポリマーなどが好ましく、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン等のビニル重合性モノマーをあげることができる。
【0015】
このようなコアシェル構造を有する樹脂微粒子は従来公知の方法により得ることができ、市販品のコアシェルポリマーの中から適切な物性を有する樹脂微粒子を選択して用いることも可能である。
【0016】
また、本発明で用いられる処理液はゴム/繊維間の接着力を向上させるために各種成分を含有することが好ましい。ゴムとの接着性を向上させるためには、処理液がゴムラテックスを含有すること、特にはレゾルシン・ホルマリン・ラテックス系の接着剤を含有することが好ましい。一方、繊維のゴム用接着剤との親和性を向上させるためには処理液がポリエポキシド化合物及びブロックドイソシアネート化合物を含有することが好ましい。
【0017】
本発明で好ましく用いられるゴムラテックスとしては、例えば、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・コポリマーラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロブレンゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンモノマーラテックス等であり、これらを単独、又は、併用することができる。なかでも、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスを単独、又は、他のものと併用するものが好ましい。併用使用の場合には、該ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスを全ラテックス重量の1/3量以上使用した場合が優れた性能のものが得られる。
【0018】
また、処理液がレゾルシン・ホルマリン・ラテックス系の接着剤を含有する場合、このようなレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス系接着剤(RFL)としては、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が、1:0.1〜1:8の範囲にあるものが、より好ましくは1:1〜1:4の範囲であるものであることが好ましい。ホルムアルデヒドの添加量が少なすぎるとレゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、接着剤層凝集力が低下することにより、接着性が低下するおそれがある。逆にホルムアルデヒドの添加量が多すぎると架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、被着体ゴムとの共加硫時にRFLとゴムとの相溶化が阻害され、接着性が低下すると共に処理後の接着剤層の収縮が顕著となり、界面での応力集中による界面剥離による接着力が低下する。
【0019】
レゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は、前記のコアシェルポリマーの添加割合によって変化するが、固形分量比で、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックス(RFL)が1:1〜1:15の範囲にあるものが好ましく、特に、1:3〜1:12の範囲にあるものが好ましく使用される。該ゴムラテックスの比率が少なすぎると処理された繊維が硬くなって耐疲労性が低下しやすくなり、また、接着剤組成物中のラテックス及び被着体であるゴムとの共加硫が不十分となり、接着性が低くなるおそれがあり、逆に、該ゴムラテックスの比率が多すぎると接着剤皮膜として充分な強度を得ることが出来ないため、満足な接着力やゴム付着率が得られないおそれがある。
【0020】
RFL系接着剤を主成分とした場合には、総固形分濃度が1〜30重量%の範囲であることが好適であり、さらには5〜20重量%の範囲であることであることが好ましい。接着剤組成物の濃度が前記範囲よりも低すぎると接着剤の付着量低下を招き、接着性が低下し、逆に、接着剤組成物の濃度が前記範囲よりも高すぎると固形分付着量が多くなりすぎるため繊維が硬くなって耐疲労性が低下する傾向にある。
【0021】
さらには合成繊維があらかじめポリエポキシド化合物またはブロックイソシアネートによる前処理糸であることが好ましい。そして特に好ましい方法は、合成繊維を、ポリエポキシド化合物及びブロックドイソシアネート化合物を含有する処理液(1)と、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を含有する処理液(2)の少なくとも2種の処理液で処理する、いわゆる2浴処理と呼ばれる処理方法であって、処理液(1)、処理液(2)のいずれか一方または両方に、コア部とシェル部からなるコアシェル構造である上記の樹脂微粒子を含有するものを用いることが好ましい。
【0022】
本発明で好ましく用いられるポリエポキシド化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、そのエポキシ基の含有量は、該ポリエポキシド化合物:100g当り0.2g当量以上を含有する化合物である。このような化合物としては、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンのごときハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酢酸、又は、過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート等を挙げることができる。これらのうち、特に多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物、すなわち、多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を発現することができるので好ましく例示される。
【0023】
かかるポリエポキシド化合物は、通常は水溶液、若しくは、乳化液として使用するものがよい。乳化液、又は、溶液にするには、例えば、かかるポリエポキシド化合物をそのまま、あるいは、必要に応じて少量の溶剤に溶解したものを、公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化、又は溶解することができる。
【0024】
また本発明で好ましく用いられるブロックドイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加化合物であり、加熱によりブロック成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生じるものであることが好ましい。ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフエニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいはこれらポリイソシアネートと活性水素原子を2個以上有する化合物、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等とをイソシアネート基(−NCO)とヒドロキシル基(−OH)の比が1を超えるモル比で反応させて得られる末端イソシアネート基含有のポリオールアダクトポリイソシアネート等が挙げられる。特にトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフエニルイソシアネートの如き芳香族ポリイソシアネートが優れた性能を発現するので好ましい。ブロックドイソシアネート化合物のブロック化剤としては、例えばフェノール,チオフェノール,クレゾール,レゾルシノール等のフェノール類、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類,フタル酸イミド類、カプロラクタム,バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類及び酸性亜硫酸ソーダ等がある。
【0025】
本発明は上記のような組成物と樹脂微粒子を含む処理液で合成繊維を処理する方法であるが、処理液の総固形分濃度は1〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、2〜20重量%の範囲である。総固形分濃度が低すぎると接着剤表面張力が増加し、繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することにより接着性が低下し、また、一方、該処理剤濃度が高すぎると生産コスト的に不利になるだけでなく、固形分付着量が多くなりすぎるため硬くなり耐疲労性が低下しやすい傾向にある。
【0026】
また、処理液中の樹脂微粒子は、処理液中の全固形成分中での樹脂微粒子の含有率が0.5〜10重量%であることが好ましく、最も好ましくは1〜5重量%であることが好ましい。すなわち樹脂微粒子の繊維に対する付着量は0.005〜2重量%、さらには0.01〜1重量%の範囲であることが好ましい。
【0027】
本発明の処理液は各種成分を水分散物として用いるために界面活性剤を用いることが好ましく、界面活性剤の含有量としては処理液の全固形分に対し、15重量%以下であり、好ましくは、1〜10重量%で用いるものであることが好ましい。界面活性剤の量が多すぎる場合には接着性が低下する傾向にある。
【0028】
さらに2浴処理で行う場合には、1浴目の処理液aの固形分付着量は、0.1〜10重量%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは、0.3〜7重量%の範囲、さらに好ましくは、0.5〜5重量%の範囲で付着せしめることが好ましい。さらには2浴目の処理液bの繊維に対する固形分付着量は、0.1〜20重量%の範囲で使用する方法が好ましく、さらに好ましくは、0.5〜10重量%の範囲で付着させる方法である。繊維に対する処理液の付着量を制御するためには、ローラーとの接触、ノズルからの噴霧による塗布、又は溶液への浸漬などの操作を経た後、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことが出来る。また付着量を上げるため、もしくは均一性を確保するために複数回付着させてもよい。
【0029】
本発明の製造方法は、上記のように合成繊維を処理液に含浸した後に、樹脂微粒子のシェル部を構成するポリマーのガラス転移点以上の温度で加熱処理を行う。さらには加熱処理温度としてはガラス転移点温度より5〜50℃高いことが好ましい。また処理温度としては10〜20℃であることが好ましく、時間的には30〜180秒の範囲であることが好ましい。温度は均一にするために熱風乾燥機を用いることが好ましい。
【0030】
本発明では、このようなコアシェル構造を有する樹脂微粒子をそのシェル部を構成するポリマーのガラス転移点以上の温度で加熱処理を行うことにより、処理液中では均一に分散が行われながら、熱処理後には繊維表面に強固に皮膜を形成することができる。
【0031】
このような本発明の製造方法によって得られたゴム補強用繊維はコアシェル構造を有する樹脂微粒子が処理剤中に均一に分散することによって、乾燥後の処理液の弾性を向上させ、耐熱接着性及び疲労性を高めることができる。このゴム補強用繊維は、例えばタイヤ、ベルトおよびホースなどの繊維補強されたゴム繊維複合体に用いられ、得られるゴム繊維複合体は高い接着性を有する高品質な特性を発揮するため、繊維補強ゴム製品として極めて有用である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでははない。尚、実施例および比較例において、評価方法は下記の方法により測定した。
【0033】
(1)コード剥離接着力
処理コードとゴムとの接着力を示すものである。天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムシート表層近くに5本のコードを埋め、150℃の温度で、30分間、50kg/cmのプレス圧力(初期値)、又は、180℃の温度で40分間、50kg/cmのプレス圧力(耐熱値)で加硫し、次いで、両端のコードを残し3本のコードをゴムシート面に対し90度の方向へ200mm/分の速度で剥離するのに要した力をN/3本で示したものである。
【0034】
(2)コード引抜接着力
処理コードとゴムとの剪断接着力を示すものである。コードを天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムブロック中に埋め込み、150℃の温度で、30分間、50kg/cmのプレス圧力(初期値)、又は、180℃の温度で20分間、50kg/cmのプレス圧力(耐熱値)で加硫し、次いで、コードを該ゴムブロックから200mm/分の速度で引き抜き、引き抜きに要した力をN/7mmで表示したものである。
【0035】
(3)コード疲労性(強力保持率)
未加硫ゴムに接着処理コード1本を埋め込み温度150℃で30分、50kg/cmの条件で加硫すると同時にゴムに接着させた試験片を用い、JIS L−1017のディスク疲労(グッドリッチ法)に従って、80℃雰囲気下、伸張率:+6.0%、圧縮率:−18.0、疲労回数:100万回の条件で行ったときの疲労前後の強力から強力維持率を評価した。
【0036】
[実施例1]
各処理液は以下の用にして調液した。
(1)一浴目用の処理液(1)
樹脂微粒子として、コア部がn−ブチルアクリレート、アリルメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレートを重合させて得られたゴム状ポリマーで、シェル部がメチルメタアクリレート、エチルアクリレートを重合させて得られたガラス状ポリマーであるコアシェルポリマーを用いた。このもののコア部を構成するポリマーのガラス転移点温度は−40℃であり、シェル部を構成するポリマーのガラス転移点温度は110℃であった。またシェル部を構成するポリマーは水酸基とカルボキシル基を有するため乳化物であった。
【0037】
一浴目用の処理液としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル(固形分濃度100%)、εカプロラクタムメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)(固形分濃度25%)、コアシェルポリマー(固形分濃度10%)、ビニルピリジンスチレンブタジエンターポリマーゴムラテックス(固形分濃度40.5%)を3.0重量部、13重量部、2.5重量部、84重量部の割合で混合し、総固形分濃度を10.0重量%とし、得られた処理液を一浴目用の処理液(1)とした。
【0038】
(2)一浴目用の処理液(a)
コアシェルポリマーを添加しない以外は処理液(1)と同じ組成とし、濃度調整のために水を添加した以外は同様にして一浴目用の処理液(a)を作成した。
【0039】
(3)二浴目用の処理液(2)
レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6、固形分濃度が65重量%であるレゾルシン・ホルマリン初期縮合物をアルカリ条件下溶解し9重量%水溶液とする。この上記9%初期縮合物50重量部に対し、40.5%ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターボリマーラテックス水乳化液420重量部添加する。この液にホルマリン3重量部、50重量%クレゾールノボラック型芳香族エポキシ化合物分散体を18重量部、33重量%アセトキシムブロックドジフエニルメタンジイソシアネート分散体を17重量部添加し、48時間熟成したのち、10%コアシェルポリマーを20重量部加え固形分濃度20重量%を二浴目用の処理液(2)とした。
【0040】
(4)二浴目用の処理液(b)
コアシェルポリマーを添加しない以外は処理液(2)と同じ組成とし、濃度調整のために水を添加した以外は同様にして二浴目用の処理液(b)を作成した。
【0041】
(ゴム補強用繊維の製造)
固有粘度が0.95のポリエチレンテレフタレートからなる1670dtex/384フィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、該マルチフィラメント糸に40T/10cmで下撚りを施し、これを2本合わせて40T/cmで上撚りを施して3340dtex/768フィラメントのコードを得た。
【0042】
該コードをコンビュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、タイヤコード処理機)を用いて、前記の処理液(1)に浸漬した後、130℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて、処理液(2)に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて、240℃の温度で1分間の熱処理を行った。得られたコードには、処理剤の固形分として、一浴目の処理液(1)が2.0重量%(樹脂微粒子は0.12%)、二浴目の処理液(2)が1.5重量%(樹脂微粒子は0.016%)付着していた。得られた処理コードを天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴム中に埋め込み、150℃の温度で30分間、及び、180℃の温度で60分間、加硫し前記の方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0043】
[実施例2]
一浴目の処理液(1)の替わりに処理液(a)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に併せて記す。
【0044】
[実施例3]
二浴目の処理液(2)の替わりに処理液(b)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に併せて記す。
【0045】
[比較例1]
一浴目の処理液(1)の替わりに処理液(a)を用い、2浴目の処理液(2)の替わりに処理液(b)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に併せて記す。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維を、樹脂微粒子を含む処理液で処理する方法であって、該樹脂微粒子がコア部とシェル部からなるコアシェル構造を有し、コア部を構成するポリマーのガラス転移点温度が−20℃以下であり、シェル部を構成するポリマーのガラス転移点温度が60℃以上であるとともに、合成繊維を該処理液に含浸した後にシェル部を構成するポリマーのガラス転移点以上の温度で加熱処理することを特徴とするゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項2】
該樹脂微粒子のシェル部を構成するポリマーが水酸基またはカルボキシル基を有する請求項1記載のゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項3】
処理液がゴムラテックスを含有する請求項1または2記載のゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項4】
処理液がレゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項5】
該合成繊維が、ポリエポキシド化合物またはブロックドイソシアネート化合物による前処理糸である請求項1〜4のいずれか1項記載のゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項6】
処理液がポリエポキシド化合物及びブロックドイソシアネート化合物を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載のゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項7】
樹脂微粒子の繊維への付着量が0.005〜2wt%である請求項1〜6のいずれか1項記載のゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項8】
合成繊維がポリエステル繊維または芳香族ポリアミド繊維である請求項1〜7のいずれか1項記載のゴム補強用繊維の製造方法。

【公開番号】特開2007−46210(P2007−46210A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234180(P2005−234180)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】